(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053881
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】成形用基材
(51)【国際特許分類】
D04H 1/544 20120101AFI20240409BHJP
D04H 1/541 20120101ALI20240409BHJP
【FI】
D04H1/544
D04H1/541
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160365
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】津村 達彦
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA09
4L047BA12
4L047BB02
4L047BB09
4L047BC03
4L047CB01
4L047CC14
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】
剛性に富む外装材を調製可能な、成形用基材を提供する。
【解決手段】
繊維基材層を備えた成型用基材において、構成繊維に芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維(以降、芯鞘型複合繊維と略すことがある)を含む繊維基材層が、・構成繊維として、芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維に加え、ポリエステル系樹脂繊維も含んでいるという構成、および、・芯鞘型複合繊維の鞘部であるポリプロピレン系樹脂に加え、ポリプロピレン系樹脂接着成分によっても、繊維基材層の構成繊維同士が接着一体化しているという構成、を有することによって、剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供できる
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材層を備えた成型用基材であって、
前記繊維基材層は、芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維、および、ポリプロピレン系樹脂接着成分を含んでおり、
前記芯鞘型複合繊維における鞘部および前記ポリプロピレン系樹脂接着成分は、前記繊維基材層の構成繊維同士を接着一体化している、
成型用基材。
【請求項2】
前記芯鞘型複合繊維における鞘部および前記ポリプロピレン系樹脂接着成分は、同一組成の樹脂である、請求項1記載の成型用基材。
【請求項3】
前記繊維基材層を構成する繊維に占める前記芯鞘型複合繊維の質量百分率が、70質量%以下である、請求項1または2記載の成型用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、成形用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両下面の凹凸を減らして走行時の空気抵抗を抑制する、タイヤの飛び石から車両を保護する、ロードノイズを低減するなどの目的のため、車両下部に外装材の一種であるアンダーボディーシールド材(以降、アンダーボディーシールド材をUBSと略すことがある)や、車体のホイールハウスに装着されるホイールハウスライナー材が設けられている。また、UBSやホイールハウスライナー材には、付着した雪や氷が剥がれ落ち易いという機能も求められている。
【0003】
このようなUBSやホイールハウスライナー材など外装材の構成部材として、本願出願人はこれまで特開2021-181671(特許文献1)に記載したように、芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維を含んだ繊維基材層を備えた成形用基材について検討してきた。特許文献1にかかる成型用基材は、当該芯鞘型複合繊維を含む繊維基材層を備えていることによって、付着した雪や氷が剥がれ落ち易い外装材を実現可能な、成形用基材を提供できるものであり、繊維基材層を構成する繊維質量に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が、70質量%よりも多いことによって、引張強さと高温雰囲気下での曲げ強さに富むものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1に開示されているような従来技術にかかる成形用基材は、
1.車体を軽量化するという要望をかなえるため、外装材の軽量化が求められることがある。軽量な外装材を実現するため、目付の軽い繊維基材層を備える成形用基材を用いて外装材を調製したところ、当該外装材は、引張強さが大きく低下することがあった。
また、
2.前述の質量百分率を70質量%以下に調整した繊維基材層を備える成形用基材を用いて外装材を調製したところ、当該外装材は、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに劣ることがあった。
【0006】
以上のように、従来技術にかかる成型用基材を用いて調製した外装材は剛性がなお十分でなかった。そのため、このような剛性に劣る外装材は、引張強さに劣るため成形時や、冬季の氷雪下を走行する際に付着した雪や氷が外装材を破損させる原因となる、また、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに劣るため夏場など高温雰囲気下で意図せず変形するなど、その剛性がなお十分でなく、使用に耐えないものとなる恐れがあった。
【0007】
そのため、更に剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材の提供が求められた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、
「(請求項1)繊維基材層を備えた成型用基材であって、
前記繊維基材層は、芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維、および、ポリプロピレン系樹脂接着成分を含んでおり、
前記芯鞘型複合繊維における鞘部および前記ポリプロピレン系樹脂接着成分は、前記繊維基材層の構成繊維同士を接着一体化している、
成型用基材。」
であり、
別の本願発明は、
「(請求項2)前記芯鞘型複合繊維における鞘部および前記ポリプロピレン系樹脂接着成分は、同一組成の樹脂である、請求項1記載の成型用基材。」
であり、
更に別の本願発明は、
「(請求項3)前記繊維基材層を構成する繊維に占める前記芯鞘型複合繊維の質量百分率が、70質量%以下である、請求項1または2記載の成型用基材。」
である。
【発明の効果】
【0009】
本願出願人が検討を続けた結果、繊維基材層を備えた成型用基材において、構成繊維に芯部がポリエステル系樹脂であり鞘部がポリプロピレン系樹脂である芯鞘型複合繊維(以降、芯鞘型複合繊維と略すことがある)を含む繊維基材層が、
・構成繊維として、芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維に加え、ポリエステル系樹脂繊維も含んでいるという構成、
・芯鞘型複合繊維の鞘部であるポリプロピレン系樹脂に加え、ポリプロピレン系樹脂接着成分によっても、繊維基材層の構成繊維同士が接着一体化しているという構成、
を有することによって、更に剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供できることを見出した。
【0010】
この理由は完全に明らかになっていないが、以下の効果が発揮されるためだと考えられる。
【0011】
剛性に富む外装材を提供するためには、外装材を調製するため使用する成型用基材を成す繊維基材層が形状安定性に優れる材料により構成されている必要がある。
本願発明にかかる繊維基材層は、強度ならびに耐熱性に富むポリエステル系樹脂を芯部に含有する芯鞘型複合繊維を含んでいる。そのため、当該芯鞘型複合繊維が繊維基材層の骨格としての役割を担うことで、本願発明にかかる繊維基材層は形状安定性に富む。
【0012】
また、本願発明にかかる繊維基材層は、鞘部に融点の高い(例えば、80℃よりも高い)ポリプロピレン系樹脂を含有する芯鞘型複合繊維を含んでいる。そのため、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)においても、当該芯鞘型複合繊維の鞘成分による繊維基材層の構成繊維同士の接着一体化が維持されることで、本願発明にかかる繊維基材層は高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)でも形状安定性に富む。
【0013】
それに加え、本願発明にかかる繊維基材層は、強度ならびに耐熱性に富むポリエステル系樹脂繊維を含んでいる。そのため、芯鞘型複合繊維に加え当該ポリエステル系樹脂繊維もまた、繊維基材層の骨格としての役割を担うことができる。その結果、本願発明にかかる繊維基材層は更に形状安定性に富み、当該繊維基材層を備えた本願発明にかかる成型用基材を用いて調製した外装材は、引張強さが向上している。
【0014】
そして、本願発明にかかる繊維基材層は、構成繊維同士を接着一体化する成分として、融点の高い(例えば、80℃よりも高い)ポリプロピレン系樹脂接着成分を含んでいる。そのため、芯鞘型複合繊維の鞘成分に加え当該ポリプロピレン系樹脂接着成分によっても、より強固に繊維基材層の構成繊維同士の接着一体化が維持されている。その結果、本願発明にかかる繊維基材層は更に形状安定性(特に、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での形状安定性)に富み、当該繊維基材層を備えた本願発明にかかる成型用基材を用いて調製した外装材は、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さが向上している。
【0015】
なお、前述した芯鞘型複合繊維は構成繊維と交点や接点をなす部分においてのみ、繊維基材層における構成繊維同士の接着一体化を成すものであるのに対し、ポリプロピレン系樹脂接着成分は、繊維基材層における構成繊維同士の交点や接点以外の部分(例えば、構成繊維同士が離間している部分)でも、当該構成繊維同士の間にまたがり存在できるため、構成繊維同士の間隔を固定できる。この点からも、当該繊維基材層は、更に形状安定性(特に、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での形状安定性)に富む。
【0016】
また、芯鞘型複合繊維における鞘部およびポリプロピレン系樹脂接着成分が、同一組成の樹脂である場合には、繊維基材層の構成繊維同士がより強固に接着一体化でき、引張強さと高温雰囲気下での曲げ強さがより向上しているものである。
以上から、当該繊維基材層を備えた本願発明にかかる成型用基材によって、更に剛性に富む外装材を提供できる。
【0017】
なお、上述した本願発明にかかる成型用基材を用いて調製した外装材は、特許文献1などの従来技術にかかる成形用基材を用いて調製した外装材より、高温雰囲気下でもより高い剛性を発揮できるという特性を有している。そのため、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が70質量%以下である成形用基材を用いて調製した外装材であっても、引張強さが大きく低下するという問題、および、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに劣るという問題が発生し難い。
【0018】
以上から、本願発明にかかる成型用基材によって、更に剛性に富む外装材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本願発明で説明する各種測定は特に記載や規定のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。そして、本願発明で説明する各種測定結果は特に記載や規定のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。また、本願発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0020】
本願発明でいう繊維基材層とは、例えば、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編み物などの布帛由来の、繊維同士が絡み合い構成されたシート状の形状を有する繊維の層をいう。繊維基材層を含んでいることによって、柔軟性に富み金型などへ追従し易いため成形性に優れる成形用基材を提供できる。より成形性に優れる成形用基材を提供できるよう、成形用基材を構成する繊維基材層は、繊維同士がランダムに絡み合った繊維ウェブや不織布からなる層であるのが好ましく、繊維ウェブや不織布のみで構成されているのがより好ましい。
【0021】
繊維基材層は、鞘部がポリプロピレン系樹脂であり芯部がポリエステル系樹脂である芯鞘型複合繊維を含んでいる。繊維基材層が当該芯鞘型複合繊維を含んでいることによって、剛性に富み、付着した雪や氷が剥がれ落ち易い外装材を実現可能な成形用基を提供できる。
【0022】
本願発明に係る芯鞘型複合繊維の鞘部を構成する、ポリプロピレン系樹脂の種類は周知のものを採用でき、例えば、ポリプロピレンやポリメチルペンテン、あるいは、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリプロピレンなどを採用できる。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。
【0023】
また、本願発明に係る芯鞘型複合繊維の芯部を構成する、ポリエステル系樹脂の種類は周知のものを採用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂などを採用できる。ポリエステル系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。なお、本願発明に係る芯鞘型複合繊維の芯部を構成するポリエステル系樹脂の融点は、鞘部を構成するポリプロピレン系樹脂の融点よりも高い。
【0024】
芯鞘型複合繊維の繊維断面における、芯部と鞘部の面積比率は適宜調整できるが、1:9~9:1であることができ、2:8~8:2であることができ、3:7~7:3であることができ、4:6~6:4であることができる。
【0025】
芯鞘型複合繊維の繊維長や繊度などの各種値は、本願発明に係る課題を解決できる成形用基材を提供できるよう適宜調整する。繊度は1~100dtexであることができ、1.5~50dtexであることができ、2~30dtexであることができ、3~10dtexであることができる。
【0026】
また、短繊維など特定の長さを有する繊維であることができ、その繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、繊維長が150mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な連続長を有する繊維(メルトブロー不織布の構成繊維やスパンボンド不織布の構成繊維などを含む概念である)であってもよい。しかし、ポリエステル系樹脂繊維と芯鞘型複合繊維とが、均一的に交絡してなる繊維基材層となることで、剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供し易いことから、芯鞘型複合繊維は短繊維であるのが好ましい。
【0027】
なお、当該芯鞘型複合繊維は顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。特に、芯部および鞘部ともに顔料が練り込み調製された芯鞘型複合繊維であると、成形時に白化し難い成型用基材を提供でき好ましい。
【0028】
繊維基材層は構成繊維として、前述した芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維を含んでいる。ポリエステル系樹脂繊維は強度ならびに耐熱性に富む繊維であり、当該ポリエステル系樹脂繊維は繊維基材層の骨格としての役割を担う。その結果、本願発明にかかる繊維基材層は更に形状安定性に富み、引張強さが向上した外装材を調製可能な成形用基材を提供できる。
【0029】
ポリエステル系樹脂繊維の態様は適宜調整でき、一種類のポリエステル系樹脂で構成された単繊維、複数種類のポリエステル系樹脂で構成された複合繊維(例えば、芯部がポリエチレンテレフタレートで鞘部が低融点ポリエチレンテレフタレートの芯鞘型繊維など)であっても良い。特に、更に形状安定性に富み、引張強さが向上した外装材を調製可能な成形用基材を提供できるよう、ポリエステル系樹脂繊維としてより強度に富むポリエステル系樹脂単繊維を採用するのが好ましい。
【0030】
なお、ポリエステル系樹脂繊維は、ステープル繊維の態様である以外にも、フィブリル状の部分を備えた繊維であっても良い。しかし、ポリエステル系樹脂繊維と芯鞘型複合繊維とが、均一的に交絡してなる繊維基材層となることで、剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供し易いことから、芯鞘型複合繊維およびポリエステル系樹脂繊維は共に短繊維のステープル繊維であるのが好ましい。
【0031】
本願発明に係るポリエステル系樹脂繊維を構成する、ポリエステル系樹脂の種類は周知のものを採用でき、例えば、前述した芯鞘型複合繊維の芯部を構成するポリエステル系樹脂を採用できる。特に、芯鞘型複合繊維における鞘部およびポリプロピレン系樹脂接着成分によって、繊維基材層の構成繊維同士がより強固に接着一体化されることで、高温雰囲気下での曲げ強さが向上し、更に剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供できる。そのため、ポリエステル系樹脂繊維に含まれているポリエステル系樹脂と、芯鞘型複合繊維の芯部を構成するポリエステル系樹脂とは、同一組成の樹脂(特に、共にポリエチレンテレフタレート)であるのが好ましい。
【0032】
また、ポリエステル系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。
【0033】
ポリエステル系樹脂繊維の繊維長や繊度などの各種値は、本願発明に係る課題を解決できる成形用基材を提供できるよう適宜調整する。繊度は1~100dtexであることができ、1.5~50dtexであることができ、2~30dtexであることができ、3~10dtexであることができる。
【0034】
また、ポリエステル系樹脂繊維は短繊維など特定の長さを有する繊維であることができ、その繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、繊維長が150mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な連続長を有する繊維(メルトブロー不織布の構成繊維やスパンボンド不織布の構成繊維などを含む概念である)であってもよい。
【0035】
なお、当該ポリエステル系樹脂繊維は顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。特に、顔料が練り込み調製されたポリエステル系樹脂繊維であると、成形時に白化し難い成型用基材を提供でき好ましい。
【0036】
なお、繊維基材層中に芯鞘型複合繊維が均一に分布し存在しているのが好ましい。具体的には、繊維基材層における、一方の主面を含んだ部分を構成する繊維質量に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率(質量%)と、もう一方の主面を含んだ部分を構成する繊維質量に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率(質量%)と、両主面間の中間部分を構成する繊維質量に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率(質量%)とが、同等の値を示す繊維基材層であるのが好ましい。例えば、±10質量%以内の差であるのが好ましく、±5質量%以内の差であるのが好ましく、同一の値であるのが最も好ましい。
【0037】
同様に、繊維基材層中にポリエステル系樹脂繊維が均一に分布し存在しているのが好ましい。具体的には、繊維基材層における、一方の主面を含んだ部分を構成する繊維質量に占めるポリエステル系樹脂繊維の質量百分率(質量%)と、もう一方の主面を含んだ部分を構成する繊維質量に占めるポリエステル系樹脂繊維の質量百分率(質量%)と、両主面間の中間部分を構成する繊維質量に占めるポリエステル系樹脂繊維の質量百分率(質量%)とが、同じ値を示す繊維基材層であるのが好ましい。
【0038】
このような態様の繊維基材層であると、剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供でき好ましい。このような繊維基材層を備える成形用基材は、後述するように芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維とを混綿する工程を有する乾式法によって調製される、乾式不織布由来の繊維基材層を備える成形用基材であることによって、調製可能である。
【0039】
繊維基材層は芯鞘型複合繊維やポリエステル系樹脂繊維以外にも、一種類の有機樹脂から構成された他の有機繊維や、複数種類の有機樹脂から構成された他の有機繊維、あるいは、ガラス繊維などの無機繊維を含んでいてもよい。
【0040】
このような他の有機繊維として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)などを挙げることができ、公知の有機樹脂一種類又は複数種類から構成できる。
【0041】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0042】
また、これらの有機樹脂は、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、加熱を受け発泡する粒子、無機粒子、酸化防止剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0043】
繊維基材層を構成する繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0044】
繊維基材層は、例えば、繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0045】
更に、構成繊維を絡合および/または一体化させることができる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダによって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0046】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0047】
本願発明にかかる繊維基材層では、芯鞘型複合繊維における鞘部が繊維基材層の構成繊維同士を接着一体化している。このような態様を有する繊維基材層は、芯鞘型複合繊維を混綿してなる繊維ウェブを加熱工程へ供し、芯鞘型複合繊維における鞘部の少なくとも一部を溶融させ放冷することによって、調製可能である。
【0048】
加えて、本願発明にかかる繊維基材層では、ポリプロピレン系樹脂接着成分もまた繊維基材層の構成繊維同士を接着一体化している。本願発明にかかるポリプロピレン系樹脂接着成分は、構成繊維同士を接着一体化している、いわゆるバインダとしての働きを担うものである。バインダ液に分散し含まれているポリプロピレン系樹脂が溶融してなるものであっても、ポリプロピレン系樹脂単繊維が溶融してなるものであってもよい。
【0049】
しかし、繊維基材層の構成繊維であるポリエステル系樹脂繊維と芯鞘型複合繊維、そして、ポリプロピレン系樹脂単繊維(特に、短繊維のステープル繊維)とを均一的に交絡でき、その後、芯鞘型複合繊維の鞘成分に加えポリプロピレン系樹脂単繊維を溶融させ、繊維基材層の構成繊維同士が均一的に接着一体化している繊維基材層を調製できる。それによって、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さが向上している外装材を調製可能な成型用基材を提供し易いことから、ポリプロピレン系樹脂単繊維由来のポリプロピレン系樹脂接着成分であるのが好ましい。このような態様を有する繊維基材層は、ポリプロピレン系樹脂単繊維(より好ましくは、短繊維であるポリプロピレン系樹脂単繊維)を混綿してなる繊維ウェブを加熱工程へ供し、ポリプロピレン系樹脂単繊維を溶融させ放冷することによって、調製可能である。このとき、ポリプロピレン系樹脂単繊維が全溶融した場合(繊維基材層が当該ポリプロピレン系樹脂の融点以上の温度に加熱された場合)には、ポリプロピレン系樹脂単繊維は不定形に伸びる線形状を有する態様に変形し得る。
【0050】
本願発明に係るポリプロピレン系樹脂接着成分の種類は周知のものを採用でき、例えば、前述した芯鞘型複合繊維の鞘部を構成するポリプロピレン系樹脂を採用できる。特に、繊維基材層の構成繊維同士が均一的に接着一体化している繊維基材層となることで、高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さが向上している外装材を調製可能な成型用基材を提供し易いことから、ポリプロピレン系樹脂接着成分を構成するポリプロピレン系樹脂と、芯鞘型複合繊維の鞘部を構成するポリプロピレン系樹脂とは、同一組成の樹脂(特に、共にポリプロピレン)であるのが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の融点は80℃よりも高いことができ、90℃よりも高いことができ、100℃よりも高いことができる。
【0051】
なお、当該ポリプロピレン系樹脂単繊維は顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。特に、顔料が練り込み調製されたポリプロピレン系樹脂単繊維であると、成形時に白化し難い成型用基材を提供でき好ましい。
【0052】
成型用基材が備える繊維基材層に占める、芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維の質量比率は適宜調整できる。10:90~90:10であることができ、20:80~80:20であることができ、30:70~70:30であることができ、40:60~60:40であることができ、50:50であることができる。また、成型用基材が備える繊維基材層を構成している、構成繊維(例えば、芯鞘型複合繊維とポリエステル系樹脂繊維)とポリプロピレン系樹脂接着成分の質量比率は適宜調整できる。10:90~90:10であることができ、20:80~80:20であることができ、30:70~70:30であることができ、40:60~60:40であることができ、50:50であることができる。
【0053】
繊維基材層が、一方の主面を含んだ部分、もう一方の主面を含んだ部分、両主面間の中間部分を有しており、少なくとも、一方の主面を含んだ部分の密度は、前記両主面間の中間部分の密度よりも高いのが好ましい。このような態様の繊維基材層を備える成型用基材であることによって、より付着した雪や氷が剥がれ落ち易い外装材を実現可能な、成形用基材を提供できる。更に、このような態様の繊維基材層を備える成型用基材であることによって、より吸音性能や遮音性能、剛性に優れる外装材を実現可能であるという、副次的な効果をより効果的に奏する成形用基材を提供できる。
【0054】
なお、繊維基材層に、密度の高い主面を含んだ部分を形成する方法は適宜調整する。例えば、布帛の主面へ加熱ロールを施し熱あるいは熱と圧力を作用させ主面を含んだ部分を高密度化する方法、布帛の主面へ加熱ロールを施し熱あるいは熱と圧力を作用させ主面を含んだ部分を多孔フィルム状となるように溶融させて高密度化する方法、布帛の主面へバインダや添加剤を付与することで主面を含んだ部分を高密度化する方法などを挙げることができる。特に、主面を含んだ部分の通気度を下げ高密度化する場合には、熱と圧力を同時に作用させるのが好ましい。
【0055】
主面を構成する芯鞘型複合繊維の鞘部およびポリプロピレン系樹脂単繊維が溶融したことで、密度の高い主面を含んだ部分が形成されているのが好ましい。当該主面では溶融した鞘部およびポリプロピレン系樹脂単繊維によって、主面に存在する空隙の一部が閉塞し通気度が下がり高密度化していることで、更には、当該主面では溶融した鞘部およびポリプロピレン系樹脂単繊維が多孔フィルム状となっており通気度が下がり高密度化していることで、より吸音性能や遮音性能、剛性に優れる外装材を実現可能であるという、副次的な効果をより効果的に奏する成形用基材を提供できる。
【0056】
なお、繊維基材層における高密度化している部分は、通気度が低下した部分となる。
【0057】
繊維基材層の、例えば、厚み、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。厚みは、0.2~15mmであることができ、0.3~10mmであることができ、1~5mmであることができる。また、目付は、例えば、10~2000g/m2であることができ、30~1500g/m2であることができる。なお、本願発明において厚みとは主面と垂直方向へ20g/cm2圧縮荷重をかけた時の当該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0058】
成形用基材の厚みは適宜選択するが、20mm以下であることができ、10mm以下であることができ、5mm以下であることができる。一方、厚みの下限値は適宜調整するが、0.5mm以上であるのが現実的である。成形用基材の目付は適宜選択するが、2000g/m2以下であることができ、1500g/m2以下であることができる。一方、目付の下限値は適宜調整するが、10g/m2以上であるのが現実的であり、30g/m2以上であるのが好ましく、40g/m2以上であるのが好ましく、50g/m2以上であるのが好ましく、100g/m2以上であるのが好ましい。
【0059】
本願発明の成形用基材は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などカバー材を備えていてもよい。カバー材の種類は成形用基材に求められる物性によって適宜選択できるが、例えば、布帛、多孔フィルムあるいは無孔フィルム、多孔発泡体あるいは無孔発泡体などであることができる。カバー材の目付や厚みならびに空隙率などの各種構成は、求められる物性によって適宜選択できる。特に、剛性に富み、付着した雪や氷が剥がれ落ち易い外装材を実現可能な成形用基を提供し易いことから、スパンボンド不織布であるのが好ましい。また、より付着した雪や氷が剥がれ落ち易い外装材を実現可能な、成形用基材を提供し易いことから、スパンボンド不織布を両主面に備えた成形用基材であるのが好ましい。
【0060】
なお、成形用基材にカバー材を設ける方法は適宜選択できるが、バインダによって接着一体化している態様、成形用基材の主面を溶融させカバー材を積層することで、当該主面を構成する成分(例えば、芯鞘型複合繊維の鞘部やポリプロピレン系樹脂接着成分)によって接着している態様、カバー材の主面を溶融させ成形用基材と積層することで当該主面を構成する成分によって接着している態様などであることができる。
【0061】
成形用基材は、主面にプリント層や、プリント層上に更にトップコート層を備えていても良い。プリント層とは成形用基材の少なくとも一方の主面上に存在し、主として成形用基材の意匠性および/または触感を向上させる役割を担う樹脂の層を指す。プリント層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、成形用基材は一種類のプリントのみを有するものであっても、プリントを構成する樹脂の種類や顔料の種類あるいは有無など配合が異なる複数種類のプリントを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、プリントが主面全面に存在する態様や、部分的に存在している態様であることができる。
【0062】
また、トップコート層とは成形用基材の少なくとも一方の主面上に存在し、主として成形用基材の主面を保護する役割を担う樹脂の層を指す。トップコート層は樹脂以外にも、上述した添加剤を含有していてもよい。なお、成形用基材は一種類のトップコートのみを有するものであっても、トップコートを構成する樹脂の種類など配合が異なる複数種類のトップコートを有するものであってもよい。その存在態様も適宜調整でき、主面全面に存在する態様や、部分的に存在している態様であることができる。
【0063】
プリントならびにトップコート層を構成する樹脂の種類は適宜選択できる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成形時に適度に軟化するため、金型へ追従し、成形性に優れる成形用基材を提供できることから、プリントまたはトップコート層がアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましく、プリントおよびトップコート層がアクリル系樹脂を含んでいるのがより好ましい。
【実施例0064】
以下、実施例によって本願発明を具体的に説明するが、これらは本願発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
(比較例1)
芯部が融点258℃のポリエチレンテレフタレートであり、鞘部が融点164℃のポリプロピレンである芯鞘型複合繊維A(繊度:4.4dtex、繊維長:51mm、芯成分および鞘成分ともに黒色顔料が練り込まれている、以降、芯鞘型複合繊維Aと称する)と、融点258℃のポリエチレンテレフタレート単繊維(繊度:6.6dtex、繊維長:76mm、以降、PET単繊維と称する)を用意した。
芯鞘型複合繊維A80質量%と、PET単繊維20質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。そして、繊維ウェブの一方の主面からもう一方の主面へ向かいニードルパンチ処理を施すことで、ニードルパンチウェブを調製した。
ニードルパンチウェブを加熱温度190℃に調整した加熱ロール間(加熱ロール間のクリアランス:3mm)へ供した。更に、端部を固定した状態で、200℃の加熱炉で4分間の熱セットを行い、成形用基材(目付:1.2kg/m2、厚み:7mm)を調製した。
また、調製した成形用基材を、遠赤外線炉(炉内温度200℃)にて3分間加熱した後、直ちに50℃の表面温度に調整した平板プレス機へ供し、厚さが5mmとなるように加圧した。次いで、平板プレス機から取り出し放冷することで、成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.2kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0066】
(比較例2)
芯鞘型複合繊維A70質量%と、PET単繊維30質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例1と同様にして成形用基材(目付:1.2kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.2kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0067】
(比較例3)
使用する繊維ウェブの目付を軽量化したこと以外は、比較例1と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。このようにして調製した比較例1~3の成形用基材では、溶融した芯鞘型複合繊維の鞘部によって、成型用基材が備える繊維基材層の構成繊維同士が接着一体化していた。
また、成形用基材における両主面を含んだ部分は、芯鞘型複合繊維の鞘部が溶融したことにより多孔フィルム状であり高密度化しており、いずれも、両主面間の中間部分の密度よりも高いものであった。
【0068】
(実施例1)
融点164℃のポリプロピレン単繊維(繊度:4.4dtex、繊維長:51mm、以降、PP単繊維と称する)を用意した。
芯鞘型複合繊維A70質量%と、PET単繊維20質量%、そして、PP単繊維10質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例3と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0069】
(実施例2)
芯鞘型複合繊維A70質量%と、PET単繊維15質量%、そして、PP単繊維15質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例3と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0070】
(実施例3)
芯鞘型複合繊維A70質量%と、PET単繊維10質量%、そして、PP単繊維20質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例3と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0071】
(実施例4)
使用する繊維ウェブの目付を軽量化したこと以外は、実施例3と同様にして成形用基材(目付:0.9kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:0.9kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0072】
(比較例4)
芯鞘型複合繊維A70質量%とPP単繊維30質量%とを混綿し、カード機へ供することで繊維ウェブを調製した。
このようにして調製した繊維ウェブを用いたこと以外は、比較例3と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱と加圧することで成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0073】
このようにして調製した実施例1~4および比較例4の成形用基材では、溶融した芯鞘型複合繊維の鞘部および全溶融し不定形に伸びる線形状を有する態様のPP単繊維由来のポリプロピレン(ポリプロピレン系樹脂接着成分、以降、PP接着成分と称することがある)によって、成型用基材が備える繊維基材層の構成繊維同士が接着一体化していた。
また、成形用基材における両主面を含んだ部分は、芯鞘型複合繊維の鞘部およびPP単繊維が溶融したことにより多孔フィルム状であり高密度化しており、いずれも、両主面間の中間部分の密度よりも高いものであった。
【0074】
以上のようにして調製した成形用基材および平板形状を有する外装材の、構成と各種物性の評価結果を合わせ表1にまとめた。なお、調製した平板形状を有する外装材は、以下の評価方法へ供することで、その物性を評価した。
【0075】
(引張強さの評価方法)
平板形状を有する外装材から採取した試料を、JIS K6251:2017に記載のダンベル1号形状に試験片を採取し、チャック間90mmとなるよう引張測定機に取り付けた。そして、引張速度200mm/minで最大点荷重を測定し、引張強さ(単位:N)を求めた。
比較例1で調製した成形用基材を加熱加圧成形してなる平板形状を有する外装材が発揮した引張強さ(基準引張強さと称する)を基準として、基準引張強さ300N以上の引張強さを発揮した平板形状を有する外装材を「○」と評価し、基準引張強さ300N未満の引張強さしか発揮しなかった平板形状を有する外装材を「×」と評価した。
【0076】
なお、評価結果は表中の「引張強さ」欄に記載した。
(高温雰囲気下での曲げ強さの評価方法)
80℃の雰囲気下でJIS K7171のプラスチック曲げ特性の求め方に記載されている測定器を使用し、平板形状を有する外装材から採取した試料(縦:150mm、横:50mm)を80℃の雰囲気下に1時間放置後、支点間距離100mmの条件で設置し、その支点間の中心に対して、先端半径5mmの圧子を用いて20mm/minの速度で荷重を加え、圧子を10mm変位させた際の荷重である曲げ強さ(単位:N)を求めた。
比較例1で調製した成形用基材を加熱加圧成形してなる平板形状を有する外装材が発揮した曲げ強さ(基準曲げ強さと称する)を基準として、基準曲げ強さ以上の曲げ強さを発揮した平板形状を有する外装材を「○」と評価し、基準曲げ強さ未満の曲げ強さしか発揮しなかった平板形状を有する外装材を「×」と評価した。
【0077】
なお、評価結果は表中の「加熱時曲げ強さ」欄に記載した。
(白化の評価方法)
200℃に加熱した雄型と雌型の間(クリアランス:5mm)へ成形用基材を挟み込み加熱すると共に加圧することで、成形用基材に挟まれ形成されている角度が60°となるよう折り曲げ変形させた。次いで、雄型と雌型間から取り出し放冷することで、成形用基材を加熱加圧成形してなる「<」字形状を有する外装材を調製した。調製した外装材における成形用基材由来の当該60°の角度を成している部分やその周辺に、白く変色して見える部分が存在しているか否かを目視で確認した。
目視で確認した結果、白く変色して見える部分が存在していなかった成形用基材を「○」と評価した。一方、目視で確認した結果、白く変色して見える部分が存在していた成形用基材を「×」と評価した。
【0078】
なお、評価結果は表中の「白化の評価」欄に記載した。
【0079】
【0080】
比較例1~比較例3で調製した外装材の物性を評価した結果から、以下のことが判明した。
・比較例1と比較例2~3とを比較した結果から、従来技術にかかる構成を備える成型用基材を用いて調製した外装材では、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が70質量%以下となると、高温雰囲気下での曲げ強さに劣るものであった。
・比較例2と比較例3とを比較したところ、比較例2で調製した外装材よりも比較例3で調製した外装材は引張り強さに劣っていた。そのため、目付の低い繊維基材層を備える成形用基材を用いて調製した外装材は、引張り強さに劣るものであった。
【0081】
更に、比較例3と比較例4とを比較したところ、以下のことが判明した。
・比較例3と比較例4とを比較した結果から、ポリプロピレン系樹脂接着成分を有する繊維基材層を備える成形用基材を用いて調製した外装材は、高温雰囲気下での曲げ強さに優れるものの、引張強さに劣るものであった。
【0082】
以上の各比較例に対し、本願発明の構成を満足する実施例1~4の成形用基材は、引張強さと高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに優れる外装材を調製可能なものであった。
【0083】
また、本願発明の構成を満足することによって、繊維基材層の目付が軽量である場合であっても、また、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が70質量%以下である場合であっても、剛性に富む外装材を調製可能な成形用基材を提供できることが判明した。
【0084】
(実施例5~8)
表2中に記載する繊維配合となるように混綿した繊維ウェブを用いたこと以外は、実施例3と同様にして各種成形用基材(いずれも、目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該各種成形用基材を加熱加圧成形してなる平板形状を有する外装材(いずれも、目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0085】
(実施例9)
芯部が融点258℃のポリエチレンテレフタレートであり、鞘部が融点164℃のポリプロピレンである芯鞘型複合繊維(繊度:6.0dtex、繊維長:51mm、芯成分および鞘成分ともに黒色顔料が練り込まれている、以降、芯鞘型複合繊維Bと称する)を用意した。
芯鞘型複合繊維Aの代わりに芯鞘型複合繊維Bを用いたこと、また、表2中に記載する繊維配合となるように混綿した繊維ウェブを用いたこと以外は、実施例3と同様にして成形用基材(目付:1.1kg/m2、厚み:7mm)と、当該成形用基材を加熱加圧成形してなる平板形状を有する外装材(目付:1.1kg/m2、厚み:5mm)を調製した。
【0086】
このようにして調製した実施例5~9の成形用基材では、溶融した芯鞘型複合繊維の鞘部および全溶融し不定形に伸びる線形状を有する態様のPP単繊維由来のポリプロピレン(ポリプロピレン系樹脂接着成分)によって、成型用基材が備える繊維基材層の構成繊維同士が接着一体化していた。
【0087】
また、成形用基材における両主面を含んだ部分は、芯鞘型複合繊維の鞘部およびPP単繊維が溶融したことにより多孔フィルム状であり高密度化しており、いずれも、両主面間の中間部分の密度よりも高いものであった。
【0088】
以上のようにして調製した成形用基材および平板形状を有する外装材の、構成と各種物性の評価結果を合わせ表2にまとめた。
【0089】
【0090】
実施例5~8の結果から、本願発明の構成を満足する成形用基材は、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が更に低い場合であっても、引張強さと高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに優れる外装材を調製可能なものであった。
【0091】
また、実施例9の結果から、本願発明の構成を満足する成形用基材は、繊維基材層を構成する繊維に占める芯鞘型複合繊維の質量百分率が70%よりも高い場合も、引張強さと高温雰囲気下(例えば、80℃雰囲気下)での曲げ強さに優れる外装材を調製可能なものであった。