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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053883
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】シール部材およびコネクタ組立体
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20240409BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16J15/10 N
H01R13/52 301H
F16J15/10 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160369
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌彦
【テーマコード(参考)】
3J040
5E087
【Fターム(参考)】
3J040EA03
3J040EA12
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA06
3J040HA03
3J040HA15
5E087LL04
5E087LL12
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】コネクタの嵌合操作に際して必要な力をより好適に低減可能なシール部材を提供すること。
【解決手段】隆起領域を含むシール部材であって、前記隆起領域が、第1主面側にある複数の第1隆起部と、前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、断面視にて、前記複数の前記第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセットして配置されている、シール部材が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隆起領域を含むシール部材であって、
前記隆起領域が、
第1主面側にある複数の第1隆起部と、
前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、
互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、
断面視にて、前記複数の第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセットして配置されている、シール部材。
【請求項2】
断面視にて、前記複数の第1隆起部のいずれか2つの間に位置し、前記第1主面の中央に位置する中央隆起部をさらに備え、
前記中央隆起部が、前記複数の前記第1隆起部よりも低く隆起している、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
断面視にて、前記中央隆起部と前記中央谷部とが、前記シール部材の厚み方向に沿って同一線上に位置付けられている、請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
前記複数の第2隆起部は、前記シール部材の厚み方向に圧縮荷重を受けている状態で、前記中央谷部側に向かって湾曲可能となっている、請求項1に記載のシール部材。
【請求項5】
前記湾曲した第2隆起部のうち、前記中央谷部を挟んで互いに隣接する前記第2隆起部が、互いに当接可能となっている、請求項4に記載のシール部材。
【請求項6】
前記第1主面にて、偶数個の前記第1隆起部と1つの中央隆起部とを備え、前記第2主面にて偶数個の前記第2隆起部を備える、請求項1に記載のシール部材。
【請求項7】
断面視にて、前記複数の第1隆起部の頂点と前記複数の第2隆起部の頂点とが、それぞれ前記シール部材の幅方向にオフセットして位置付けられている、請求項1に記載のシール部材。
【請求項8】
互いに隣接する前記複数の第1隆起部のうち、前記隆起領域の中央よりも外側に位置する前記第1隆起部が、前記中央側に位置する前記第1隆起部よりも高く隆起している、請求項1に記載のシール部材。
【請求項9】
断面視にて、前記中央谷部の幅寸法が、前記中央谷部の底部に向かって漸次小さくなる、請求項1に記載のシール部材。
【請求項10】
断面視で、前記隆起領域が線対称部分を含む、請求項1に記載のシール部材。
【請求項11】
断面視で、前記複数の第1隆起部および前記複数の第2隆起部の少なくとも1つが、非線対称部分を含む、請求項1に記載のシール部材。
【請求項12】
前記第2隆起部における中央よりも外側の傾斜面の傾斜角度は、前記中央側の傾斜面の傾斜角度よりも小さい、請求項1に記載のシール部材。
【請求項13】
前記隆起領域から連続する延在領域をさらに含む、請求項1に記載のシール部材。
【請求項14】
前記延在領域の少なくとも一部が、前記隆起領域とは互いに異なる方向に延在している、請求項13に記載のシール部材。
【請求項15】
前記隆起領域を含むシール部材の断面形状が、全体として非線対称である、請求項1に記載のシール部材。
【請求項16】
第1コネクタ、前記第1コネクタと組み合わされる第2コネクタ、および前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に位置付けられるシール部材とを備え、
前記シール部材は隆起領域を含み、前記隆起領域が、
前記第1コネクタに対向する第1主面側にある複数の第1隆起部と、
前記第2コネクタに対向し、かつ前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、
互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、
断面視にて、前記複数の前記第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセットして配置されている、コネクタ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シール部材に関する。特に、本開示は、コネクタに備えられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに嵌合される2つのコネクタにおいて、コネクタ内に液体等が浸入することを抑止するため、コネクタ間にシール部材を用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるシール部材は、略枠状の形状を有する。シール部材の外周側および内周側の各々には、周方向に沿って並列する3列の陵条部が設けられている。内周側及び外周側に設けられた当該陵条部の各々は、2つのコネクタのハウジングにそれぞれ当接するように構成されている。かかる構成において、シール部材の陵条部は、コネクタのハウジング間にて押圧されることで、弾性変形しながらハウジングに強く密接して、ハウジング間を封止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-306585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従来の構造を有するシール部材に克服すべき課題があることに気づき、そのための対策をとる必要性を新たに見出した。具体的には、以下の課題があることを見出した。
【0006】
上述のような構造を有するシール部材において、特に、3列の陵条部のうち中央に位置する陵条部は、対向する2つのハウジングからの荷重によって潰れるように圧縮変形し得る。しかしながら、コネクタの寸法公差によっては、ハウジング間の幅寸法は小さくなり、シール部材にかかる圧縮荷重が増加し得る。このような場合、シール部材中央の陵条部がより強く押圧されて大きく変形することで、シール部材の反発力が過剰に増加し得る。かかる反発力の増加によって、コネクタの嵌合操作に際して大きな挿入力が必要となり、場合によっては、シール部材やコネクタが破損する虞がある。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、コネクタの嵌合操作に際して必要な力をより好適に低減可能であるシール部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、従来技術の延長線上で対応するのではなく、新たな方向で対処することによって上記問題点の解決を試みた。その結果、上記主たる目的が達成されたシール部材の発明に至った。
【0009】
本開示では、隆起領域を含むシール部材であって、前記隆起領域が、第1主面側にある複数の第1隆起部と、
前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、
互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、
断面視にて、前記複数の第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセットして配置されている、シール部材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示のシール部材によれば、コネクタの嵌合操作に際して必要な力をより好適に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示のシール部材を備える第1コネクタと、当該第1コネクタに組み合わされた第2コネクタとを模式的に示す断面図である。
図2図2は、本開示のシール部材を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図1のシール部材のI-I断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図1のシール部材のI-I断面を模式的に示す断面図である。
図5A図5Aは、第1コネクタと第2コネクタとの間に位置するシール部材を模式的に示す断面拡大図である。
図5B図5Bは、第1コネクタと第2コネクタとの間に位置するシール部材の別の実施形態を模式的に示す断面拡大図である。
図6図6は、本開示のシール部材の変形例を模式的に示す断面図である。
図7A図7Aは、本開示のシール部材の変形例を模式的に示す断面図である。
図7B図7Bは、本開示のシール部材の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照して本開示の一実施形態に係るシール部材をより詳細に説明する。図面における各種の要素は、本開示の説明のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0013】
さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語を用いる。しかしながら、これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面の同一符号の部分は、同一または同等の部分を指す。
【0014】
また、本開示の例示態様の説明は、添付の図面(記載された説明全体の一部とみなされる図面)に関連して読まれることを意図している。本願明細書で開示される本開示の態様に関する説明において、方向または向きに関する言及は、単に説明の便宜上であり、本開示の範囲を限定することは意図されていない。「上方」、「下方」、「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「頂」、「底」などの相対的な用語、ならびに、その派生用語、「水平に」、「上方に」、「下方に」などは、記載された如くまたは図示される如くの方向に言及すると解されるべきである。かかる相対的な用語は説明の便宜のためのみであり、特に明示的な説明がされない限り、特定の方向に装置が構成または操作されていることを要するものではない。また、「取り付けられた」、「付加された」、および「組付けられた」などの用語、ならびに、同様の用語は、別途で明示的に説明されない限り、介在物によって構造物同士が互いに直接的または間接的に固定または取り付けられている関係や、双方が可動もしくは剛性の取り付けまたはその関係であることを述べている。さらに、本開示の特徴または利益は、好ましい態様を参照することによって例示されている。このような態様は十分に詳細に説明されており、当業者が本開示を実施できるようになっている。また、他の態様も利用することができ、プロセス、電気的もしくは機械的な変更が本開示の範囲を逸脱せずに可能であることを理解されたい。したがって、本開示は、考えられる特徴の非制限的な組合せを例示する好ましい態様(単独または他の特徴と組み合わされた態様)に明示的に限定されない。
【0015】
また、本明細書でいう「略垂直」とは、必ずしも完全な「垂直」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、完全な垂直から90°±20°の範囲、例えば90°±10°までの範囲)を含んでいる。
【0016】
また、本明細書でいう「略平行」とは、必ずしも完全な「平行」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、完全な平行から±20°の範囲、例えば±10°までの範囲)を含んでいる。
【0017】
さらに、本明細書でいう「断面視」とは、シール部材の長手方向に対して直交する方向(すなわち、シール部材の短手方向)に沿って切断した断面を意味する。
【0018】
[本開示のシール部材を備えるコネクタ組立体の基本構成]
本開示は、2つの部材間の隙間を封止するために適用可能なシール部材の構造に特徴を有する。まず、本開示のシール部材の構造の把握のため、図面を参照して、以下に本開示のシール部材が適用され得る例示的なコネクタ組立体の概要を説明する。
【0019】
図1は、本開示のシール部材を備えるコネクタ組立体を模式的に示す断面図である。コネクタ組立体1は、主たる構成要素として、第1コネクタ200と、当該第1コネクタと組み合わされる第2コネクタ300と、第1コネクタ200及び第2コネクタ300との間に位置付けられるシール部材100とを備える。なお、本開示における「組立体」は、複数の構成要素を有して成る複合品または組合せ品などに相当する。
【0020】
第1コネクタ200は、アウタハウジング220と、当該アウタハウジング220に収容されるインナハウジング210を備える。アウタハウジング220およびインナハウジング210は、それぞれ第2コネクタ300との嵌合の向きに開口している。インナハウジング210には、第2コネクタ300のコンタクトと電気的に導通可能なコンタクト(図示せず)が支持されていてよい。インナハウジング210は、アウタハウジング220との間に一周にわたる空間を備えていてよい。かかる空間に第2コネクタ300のハウジング310が挿入されることで、第1コネクタ200と第2コネクタ300とが嵌合されてよい。
【0021】
本開示のシール部材100は、第1コネクタ200と第2コネクタ300とが嵌合した状態において、第1コネクタ200と第2コネクタ300との間に設けられ得る。より具体的には、本開示のシール部材100は、嵌合状態にて第1コネクタ200のインナハウジング210と第2コネクタ300のハウジング310との間に位置付けられることで、コネクタ内のコンタクトを防水することができる。
【0022】
シール部材100は、第1コネクタ200のインナハウジング210の外周を取り巻くように取り付けられてよい。例えば、インナハウジング210の外側にて一周にわたる溝が形成され、当該溝にシール部材100が嵌め込まれていてもよい。第1コネクタ200に第2コネクタ300が挿入された状態にて、シール部材100は第2コネクタ300のハウジング310に当接する。かかる状態において、シール部材100は、第1コネクタ200のインナハウジング210の外面および第2コネクタ300のハウジング310の内面の双方に密着することで、第1コネクタ200と第2コネクタ300との間を封止する。
【0023】
図2は、本開示のシール部材100を模式的に示す斜視図である。シール部材100は、第1コネクタ200のインナハウジング210の外周に沿って密着可能な、環状または枠状の形状を有していてよい。代替的には、長尺状、略C字状、または略U字状などの他の形状を有していてもよい。シール部材100は、弾性材料(例えば、シリコンゴム)を用いて、例えば射出成形によって一体成形されてよい。嵌合状態にて、シール部材100は、第1コネクタ200および第2コネクタ300による押圧によって弾性変形することで、第1コネクタ200と第2コネクタ300との間を液密に封止し得る。
【0024】
[本開示のシール部材の特徴]
本開示は、上述のようなコネクタに適用可能なシール部材100の構造に特徴を有する。以下では、上述のような第1コネクタ200と第2コネクタ300との間に適用される態様を前提として、本開示のシール部材100の構造を詳細に説明する。
【0025】
図3は、図2に示す本開示のシール部材100のI-I断面を模式的に示す断面図である。図1図3に図示されるように、本開示のシール部材100は、互いに組み合わされる第1コネクタ200および第2コネクタ300の間に取り付けられ得る。シール部材100は、互いに対向する2つの主面にて複数の隆起部をそれぞれ備える隆起領域110を含む。本明細書における「隆起領域」とは、広義には、シール部材100のうち隆起部を備える領域を指し、狭義には、領域シール部材100において互いに対向する2つの主面にそれぞれ複数の隆起部を含む領域を意味する。具体的には、「隆起領域」とは、第1コネクタに向かって隆起する隆起部、および第2コネクタに向かって隆起する隆起部を含む領域であり、「隆起含有領域」などと称すこともできる。
【0026】
隆起領域110は、第1コネクタ200に対向する第1主面10と、第1コネクタ200に組み合わされる第2コネクタ300に対向する第2主面20とを備える。第1コネクタ200に第2コネクタ300が挿入される前に、シール部材100は、第1主面10にて第1コネクタ200と対向するように、第1コネクタ200に取り付けられ得る。つまり、本明細書における「第1主面」とは、第1コネクタ200と第2コネクタ300との嵌合前にて、シール部材100が取付けられている第1コネクタ200と対向している隆起領域110の面を意味する。一方で、本明細書における「第2主面」とは、第1コネクタ200に挿入された状態の第2コネクタ300と対向する隆起領域110の面を意味し、第1主面10の反対側に位置する面に相当する。第1/第2主面(10,20)は、シール部材100に対して作用する荷重の方向(すなわち、シール部材100の厚み方向Y)に位置する面であり、それぞれ第1コネクタ100または第2コネクタ200との当接部分、または接触部分を含んでいるところ、「第1/第2当接面」または「第1/第2接触面」もしくは「第1/第2被押圧面」などと称すこともできる。
【0027】
シール部材100がコネクタのハウジングの全周にわたって設けられる場合、シール部材100は、環状または枠状の形状を有することが好ましい。かかる形状において、第1主面10は、シール部材100の内周側の主面に相当するところ、シール部材100の内周側主面と解すこともできる。他方、第2主面20は、シール部材の外周側の主面に相当するところ、シール部材の外周側主面と解すこともできる。
【0028】
図2および図3に示すように、シール部材100は、隆起領域110にて、第1主面10および第2主面20の双方に位置する複数の隆起部を備える。具体的には、本開示のシール部材100は、隆起領域110において、第1コネクタ200に対向する第1主面10にある複数の第1隆起部11と、第2コネクタ300に対向する第2主面20にある複数の第2隆起部21とを備える。換言すれば、複数の第1隆起部11および複数の第2隆起部21は、隆起領域110に配置される。なお、本明細書において「複数」とは、2以上であることを意味する。以下では、図面を参照して、第1主面10にて3つの隆起部(11,12)を備え、第2主面20にて2つの第2隆起部21を備える例示的な態様を前提として説明する。
【0029】
複数の第1隆起部11および複数の第2隆起部21は、隆起領域110の第1主面10および第2主面20の各々において、第1コネクタ200および第2コネクタ300の各々に向かって隆起し、シール部材100の長手方向Zに延在していてよい(図2参照)。具体的には、第1主面10に位置する第1隆起部11は、第1コネクタ200に向かって隆起し、シール部材100の長手方向Zに沿って延在していてよい。一方で、第2主面20に位置する第2隆起部21は、第2コネクタ200に向かって隆起し、第1隆起部11と同様にシール部材100の長手方向Zに沿って延在していてよい。
【0030】
図2に示すように、シール部材100が環状または略枠状の形状を有する場合、シール部材の「長手方向」は、シール部材の「周方向」と解すこともできる。したがって、第1隆起部11はシール部材100の内周に沿って延在し、第2隆起部21はシール部材100の外周に沿って延在していてよい。図1に示されるように、第1隆起部11および第2隆起部21は、それぞれ第1コネクタ200または第2コネクタ300と密接してコネクタ間の封止に資するところ、それぞれ第1リップおよび第2リップと称すこともできる。
【0031】
複数の第1隆起部11は、第1主面10において、シール部材100の長手方向Zと直交するシール部材100の短手方向Xに並列していてよい。同様に、複数の第2隆起部21は、第2主面20にて、シール部材100の短手方向Xに並列していてよい。なお、本明細書において、シール部材100の短手方向Xは、シール部材の幅方向に相当する方向であり、隆起領域110の幅方向と解することもできる。
【0032】
第1隆起部11および第2隆起部21の各々は、シール部材100の長手方向Zにわたって同程度の高さで隆起していてよい。すなわち、シール部材100の断面形状は、シール部材100の長手方向Zにわたって略同形状であってよい。
【0033】
また、図3に示されるように、断面視にて、第2主面20の中央には、中央谷部25が形成されている。本明細書における「中央」とは、隆起領域110の幅方向Xの長さの中心を意味する。すなわち、「第2主面の中央」とは、第2主面20の幅寸法の中心を意味する。なお、本明細書で中央とは、必ずしも正確な中央でなくてよい。シール部材の大きさによって変動し得るものの、例えば、正確な中央から2mm程度の変動は許容され得る。中央谷部25は、第2主面20にて互いに隣接する2つの第2隆起部21の間にて形成されていてよい。換言すれば、第2主面の中央を挟んで互いに隣接する2つの第2隆起部21は、第2主面20の中央に中央谷部25を形成するように隆起していてよい。
【0034】
断面視にて、複数の第1隆起部11のうち、少なくとも最外側に位置する第1隆起部11は、第2隆起部21に対してオフセットして配置されている。なお、本明細書における「外側」とは、隆起領域110の幅方向Xにおいて、例えば後述する中央隆起部12の位置を基準とした位置関係を意味し、具体的には隆起領域110の端側を意味する。例えば、図3に示すようにシール部材100が全体として隆起領域110から構成される場合、かかる「外側」は、シール部材100のエッジ側と解すこともできる。すなわち、「最外側に位置する第1隆起部」とは、断面視にて、第1主面10の最も端側に位置する隆起部に相当する。
【0035】
第1主面10の両最外側に位置する第1隆起部11は、断面視にて、第2隆起部21よりも外側に位置していてよい。換言すれば、断面視にて、複数の第2隆起部21のうち、最も外側に位置する第2隆起部21は、複数の第1隆起部のうち、最も外側に位置する第1隆起部11よりも、隆起領域110の内側にずれた位置に配置されている。つまり、第1隆起部11と第2隆起部21とは、シール部材の厚み方向Yにて同一線上には配置されていない。例えば、図3に示すように、外側の第1隆起部11の頂点を通り、厚み方向Yに平行な仮想線Cは、第2隆起部21の頂点を通り、厚み方向Yに平行な仮想線Bに対して、外側にオフセットしている。なお、本明細書における「シール部材の厚み方向」とは、図3に示すようなシール部材100の断面と平行であり、かつシール部材100の幅方向Xに直交する方向(すなわち、図3中の上下方向に相当する方向)を指す。
【0036】
図5Aは、圧縮荷重を受けている状態の本開示のシール部材を模式的に示す断面図である。さらに、図示されるように、上述の構造を備える本開示のシール部材は、第1コネクタ200に対して第2コネクタ300が挿入されると、第2隆起部21が第2コネクタ300によって押圧される。コネクタ間に位置付けられるシール部材100は、シール部材100の厚み方向Yに作用する荷重を受ける。この際、第2主面20にて中央谷部25を備え、さらに第1隆起部11が第2隆起部21に対して外側にオフセットして位置付けられていることで、第2隆起部21は、第2主面20の中央谷部25側に向かって湾曲するように弾性変形し得る。
【0037】
具体的には、第1隆起部11と第2隆起部21が厚み方向Yに関して同軸上に位置せず、第1隆起部11が相対的に外側にずれて配置されているため、第2隆起部21の直下(すなわち、厚み方向Yに平行な仮想線B上の位置)は、第1コネクタ100に当接しておらず、幅方向Xにオフセットした位置の第1隆起部11にて当接している。そのため、第2隆起部21に圧縮荷重が作用すると、第2隆起部21は厚み方向Yに一致する方向に圧縮変形するとともに、断面視にて外側に位置する第1隆起部11が、外側に向かって倒れるように湾曲し得る。さらに、第1隆起部11の湾曲に伴って、第2隆起部21が中央谷部25側に向かって倒れるように変形し得る。
【0038】
このように弾性変形した状態にて、少なくとも第1隆起部11および第2隆起部21が第1コネクタ200および第2コネクタ300のそれぞれに密接することで、コネクタ間の防水性を確保することができる。第2隆起部21が中央谷部25側に倒れるように変形することで、隆起領域110は、圧縮荷重が加えられた際に幅方向Xに弾性変形し易くなる。このような幅方向Xの弾性変形により、断面視にて第2隆起部21の高さが相対的に低くなるため、隆起領域110におけるシール部材100の全体としての厚みが減じられる。そのため、シール部材100の厚み方向Yへの弾性変形の程度をより低減することが可能となる。
【0039】
つまり、本開示のシール部材100によれば、隆起領域110におけるシール部材100の幅方向Xへの弾性変形を可能とすることで、厚み方向Yへの弾性変形の程度が軽減され、シール部材100の厚み方向Yに作用する反発力がより低減され得る。これにより、シール部材100から第1コネクタ200および/または第2コネクタ300に作用する(すなわち、シール部材100の厚み方向Yに作用する)過剰な反発力が抑制され、第2コネクタ300の挿入に際して必要な力を低減することが可能となる。したがって、本開示のシール部材100によれば、コネクタの挿入力をより好適に低減することが可能となる。
【0040】
さらに、本開示のシール部材100によれば、隆起領域110の第2主面20の中央に中央谷部25を備えることで、シール部材100の厚み方向Yに作用する過剰な反発力をより好適に抑制することが可能となる。より詳細には、第2主面20の中央谷部25は、第2主面20に位置する複数の第2隆起部21が中央側に向かって湾曲するように好適に弾性変形することを助力し得る。第2主面20の中央に隆起部を備える従前の構造では、厚み方向Yに荷重が加えられると、中央の隆起部は湾曲せず、厚み方向Yに圧縮されるように弾性変形する。そのため、当該厚み方向Yに作用する反発力がより増大し、コネクタの挿入に際してより大きな力が必要となり得る。一方で、本開示のシール部材100では、第2主面20の中央に中央谷部25を備える構造とすることで、中央谷部25の両側に位置する第2隆起部21の先端が中央谷部25側に向かって互いに近接するように湾曲可能となっている。すなわち、本開示のシール部材100は、隆起領域110において圧縮荷重が加えられた際に、厚み方向Yだけではなく幅方向Xにも弾性変形可能であるため、シール部材100の厚み方向Yに作用する過剰な反発力がより好適に抑制され得る。
【0041】
中央谷部25の断面形状は、上述したような第2隆起部21の湾曲が達成される限り、特に限定されないものの、例えば、中央谷部25の幅寸法が中央谷部25の底部に向かって漸次小さくなる略V字形状を有していてよい。かかる断面形状により、中央谷部25を挟んで互いに隣接する第2隆起部21は、荷重を加えられていない(すなわち、第2コネクタ300が挿入されていない)状態で、第2隆起部21の先端部分において好適に離隔する。離隔が不十分であると、荷重が加えられた際に第2隆起部21が十分に中央側に湾曲できず、幅方向Xへの弾性変形が制限され得る。断面視にて中央谷部25が略V字形状であることで、第2主面側20から荷重が加えられる(すなわち、第2コネクタが挿入される)と、第2隆起部21は好適に中央谷部25側に倒れるように湾曲して、より好適に幅方向Xに弾性変形可能となる。
【0042】
また、断面視にて、中央谷部25は、圧縮荷重が加えられた状態にて第2隆起部21が好適に湾曲可能であるように、十分に深く形成されていることがより好ましい。つまり、中央谷部25は、第2隆起部21に形成された窪みではなく、独立した2つの第2隆起部21の間に形成された十分な深さを有する谷部であることが好ましい。
【0043】
具体的には、断面視における中央谷部25の深さDは、隣接する第2隆起部21の高さH1と同程度か、またはそれ以上であってよい。本明細書において、「中央谷部の深さ」とは、断面視にて、中央谷部25と隣接する第2隆起部21の頂点21cから中央谷部25の底部25aまでの寸法を意味する(図4参照)。また、「第2隆起部の高さ」とは、第2隆起部21の外側の隆起開始点21dから第2隆起部21の頂点21cまでの寸法を意味する。シール部材100の厚みおよび大きさ等によって変動し得るものの、例えば、中央谷部25の深さDは、隣接する第2隆起部21の高さH1の50%~120%、60%~115%、または70%~110%であることができる。
【0044】
また、図5Aに示されるように、中央谷部25を備える第2主面20において、複数の第2隆起部21がそれぞれ中央側に向かって湾曲することで、中央谷部25を挟んで互いに隣接する2つの第2隆起部21は、互いに近接するように中央谷部25に向かって湾曲する。一実施形態において、このような構造によれば、隆起領域の幅方向Xのいずれか一方側(すなわち、コネクタの内部側または外部側)からシール部材100に対して圧力がかけられた場合においても、他方側の第2隆起部21によって止水性が好適に確保され得る。これは、例えば一方側から、当該側に位置する第2隆起部21を超えて水などが浸入した場合、他方側に位置する第2隆起部21に水圧がかかると、当該第2隆起部21を第2コネクタ300に押し付ける方向に圧力がかけられて、当該第2隆起部21は第2コネクタ300とより密接し得るためである。
【0045】
また、第2隆起部21は、湾曲しながら第2コネクタ300に密接することで、第2隆起部21の頂点のみではなく、第2隆起部21の側面領域にても第2コネクタ200と当接できる。そのため、本開示のシール部材100では、第2隆起部21と第2コネクタ300との当接領域をより広く確保することが可能となる。さらに、第2隆起部21に追随して第1隆起部11も幅方向Xに湾曲することで、第1隆起部11と第1コネクタ200との当接領域もより拡大され得る。これにより、シール部材100と第1/第2コネクタ(200,300)とがより広い領域で密接可能となるため、シール部材100の封止性がより向上され得る。したがって、本開示によれば、コネクタの挿入力の低減と好適な封止性とを両立した、より好適なシール部材が供され得る。
【0046】
図5Bは、図5Aよりも第1コネクタ200と第2コネクタ300との間隔Wが狭い態様を模式的に示す断面図である。つまり、図5Bは、図5Aよりも大きな圧縮荷重が作用している態様を図示している。第1コネクタ200および第2コネクタ300の寸法公差によっては、図5Bに示すように第1コネクタ200と第2コネクタ300との間の間隔Wが狭くなる場合がある。従来のシール部材100では、当該間隔Wが小さくなると、コネクタの嵌合操作に際してシール部材100に大きな圧縮荷重が加えられ、シール部材100から第1コネクタ200および/または第2コネクタ300に作用する反発力が増大し得る。この反発力により、嵌合操作に要する力が増加し得るとともに、第1コネクタ200および第2コネクタ300に過剰に負荷がかかり、変形や破損が発生する懸念があった。
【0047】
本開示のシール部材100では、図5Bに図示されるように、第1/第2コネクタ間の間隔Wが狭く、より大きな荷重が加えられると、第2隆起部21が中央側に向かってさらに倒れるように湾曲し得る。これは、圧縮荷重の増加に伴い、シール部材100の幅方向Xへの弾性変形がより増加すると解することもできる。このように、コネクタ間の寸法公差などによってシール部材100に対して厚み方向Yからより大きな荷重が加えられた場合においても、本開示のシール部材100は、幅方向Xに好適に弾性変形することで、厚み方向Yへの弾性変形を抑制できる。したがって、本開示のシール部材100の構造によれば、厚み方向Yに作用する反発力の過剰な増加を好適に抑制することができる。
【0048】
また、一実施形態において、中央谷部25を挟んで互いに隣接する第2隆起部21は、圧縮荷重が加えられている状態で、互いに当接するように中央側に向かって湾曲可能であってよい(図5B参照)。例えば、互いに隣接する第2隆起部21は、圧縮荷重によって互いに近接するように中央に向かって湾曲している状態において、外部からシール部材に対して加えられた圧力によって、中央谷部25を塞ぐようにさらに湾曲することで、互いに当接可能に形成されていてよい。例えば、シール部材100の厚み方向Yにさらに荷重が加えられる場合、および/または隆起領域の幅方向Xの端側(すなわち、コネクタの内部側および/または外部側)からシール部材100に対して圧力がかけられた場合において、互いに隣接する第2隆起部21がさらに湾曲して、互いに当接可能であってよい。互いに隣接する第2隆起部21が当接することで、かかる2つの第2隆起部21は互いに支え合いながら第2コネクタ300に密接するため、シール部材100による封止性がより向上し得る。
【0049】
第1コネクタ100に向かって隆起する複数の第1隆起部11は、それぞれ異なる高さで隆起していてよい。例えば、互いに隣接する複数の第1隆起部11において、断面視にて、隆起領域110の中央より外側に位置する第1隆起部11が、当該中央側に位置する第1隆起部11よりも高く隆起していてよい。ある好適な態様では、複数の第1隆起部11のうち、互いに隣接するいずれか2つの第1隆起部11の間にて、第1隆起部11とは異なる高さで隆起している中央隆起部12がさらに備えられている。中央隆起部12は、第1主面10の中央に位置している。中央隆起部12の高さH2は、複数の第1隆起部11より低くなるように隆起していることが好ましい(図4参照)。つまり、第1主面10においては、断面視で、中央に位置する中央隆起部12の高さH2が最も低く、それより外側に位置する複数の第1隆起部11の高さH3がより高くなるように隆起していてよい。
【0050】
上述のように、断面視にて第1主面10の中央に位置する中央隆起部12の高さH2が最も低くなるように設計されていることで、シール部材に圧縮荷重が加えられていない状態(すなわち、第2コネクタが挿入されていない状態)では、中央隆起部12は第1コネクタ200と当接していなくてよい。シール部材100に圧縮荷重が加えられる(すなわち、第2コネクタ300が挿入される)と、シール部材100は、中央隆起部12が第1コネクタ200に向かって移動するように弾性変形し得る。すなわち、シール部材100は、第2コネクタ300の挿入によって第2主面20側から圧縮荷重が加えられると、隆起領域の幅方向Xの中央が第1コネクタ200側に沈むように、図中下方に向かって弾性変形し得る。かかる変形に追随して、第2主面20の中央谷部25もまた第1コネクタ200側に向かって沈むように変形し得る。結果として、中央谷部25を挟んで両側に位置する複数の第2隆起部21は、中央谷部25に引っ張られるように弾性変形し、中央側に湾曲し易くなる。すなわち、上述の構造により、シール部材100は、圧縮荷重を受けた際に、より好適に幅方向Xに弾性変形することが可能となり得る。したがって、中央側に位置する第1隆起部11ほど隆起の高さが低くなる上述の構造は、シール部材100からの過剰な反発力を抑制し、コネクタの嵌合操作に際して必要な力をより好適に低減可能なシール部材を供し得る。
【0051】
また、図3に示すように、第1主面10の中央に位置する中央隆起部12は、第2主面20の中央谷部25と、シール部材100の厚み方向Yに関して互いに反対側に位置していてよい。つまり、第1主面10の中央隆起部12と第2主面20の中央谷部25とは、厚み方向Yに関して同一線上に位置していてよい。例えば、中央隆起部の頂点12cと、中央谷部の底部25aとが、厚み方向Yに沿った同一の仮想線上に位置していてよい。より好ましくは、断面視にて、中央隆起部の頂点12cと中央谷部の谷底25aとは、隆起領域110の中心を通り、厚み方向Yに沿って延びる中心線A上に位置していてよい。
【0052】
中央隆起部12と中央谷部25とが上述のような配置であると、厚み方向Yに圧縮荷重が加えられた際に、隆起領域110の中央部分は、より好適に第1コネクタ200側に向かって弾性変形し易くなる。かかる弾性変形に追随して、隆起領域110の両端側は相対的に第2コネクタ300側に向かって変形し、結果として第2隆起部21を好適に中央側に傾斜させることが可能となり得る。さらに、中央隆起部12および中央谷部25が、断面視にて隆起領域110の中心線A上に位置することで、隆起領域110の両端側は、中心線Aを基準として対称となるように弾性変形可能となり得る。そのため、隆起領域110の両端側にてより好適に第1/第2コネクタ(200,300)とシール部材100とが密接され、圧縮変形したシール部材100の反発力が局所領域に偏ることを好適に抑制することが可能となり得る。したがって、シール部材100の反発力を好適に分散させ、シール部材100と当接している第1コネクタ200および/または第2コネクタ300に対して過剰に反発力が作用することを好適に抑止可能となる。つまり、本開示のシール部材100によれば、コネクタの嵌合操作に際して必要な力をより好適に低減できる。
【0053】
中央隆起部12および複数の第1隆起部11は、反対側の第2主面20に位置する複数の第2隆起部21に対して、隆起領域110の幅方向Xにオフセット配置されていてよい。より具体的には、断面視にて、複数の第1隆起部11および中央隆起部12の頂点は、複数の第2隆起部21の頂点に対して幅方向Xにずれて配置していてよい。つまり、第1隆起部11および中央隆起部12を含む第1主面の隆起部と第2隆起部21とは、シール部材100の厚み方向Yに関して同一線上には位置していなくてよい。例えば、第1隆起部11および中央隆起部12を含む第1主面の隆起部と第2隆起部21とは、断面視にて互い違いとなるように、第1主面10および第2主面20の各々に位置付けられていてよい。
【0054】
第1隆起部11および中央隆起部12を含む第1主面の隆起部と第2隆起部21とが互いにオフセット配置となっていることで、断面視にて、各隆起部の厚み方向に関する反対側の位置には、厚み方向Yへの弾性変形に対する撓みしろが存在する。具体的には、断面視にて、第1隆起部11および中央隆起部12を含む第1主面の隆起部と第2隆起部21とは、シール部材100の厚み方向Yに関して同一線上に位置していないため、圧縮荷重が加えられていない状態で、第2隆起部21の反対側には、第1コネクタ200とシール部材100との間に空隙15が存在する。圧縮荷重が加えられると、コネクタと当接している隆起部が押圧され、シール部材100は、第1コネクタ200とシール部材100との間の空隙15が縮小するように変形し得る。
【0055】
従来のように、対向する2つの主面の隆起部が厚み方向に関して同一線上に位置する構造では、圧縮荷重が加えられると、当該同一線上に位置する隆起部が厚み方向Yに圧縮されるように弾性変形されるため、厚み方向Yに作用する反発力が過剰に増大する懸念がある。一方で、本開示のシール部材100では、第1主面10の隆起部(11,12)と第2隆起部21とが互いにオフセット配置であることにより、圧縮荷重が加えられた際にシール部材100が撓むように変形可能となっているため、隆起部の厚み方向Yへの圧縮変形が低減される。それにより、シール部材100の圧縮変形に起因するシール部材100からコネクタへの過剰な反発力が好適に抑制され得る。
【0056】
上述したように、互いに隣接する第2隆起部21は、圧縮荷重が加えられた状態で、中央側に向かって湾曲し、先端部分にて互いに支え合うように当接可能となっていてよい。そのため、第2主面20にある第2隆起部21は、偶数個配置されていることが好ましい。例えば、第2主面20において、第2隆起部21は、2つ、4つ、または6つ形成されていてよい。隆起部の強度を重視すると、各隆起部の断面積がより大きくなるように、より少ない数(例えば、2つまたは4つ)の第2隆起部21が第2主面20に配置されていることが好ましい。ある好ましい態様において、2つの第2隆起部21が、第2主面20の中央に中央谷部25を形成するように位置付けられていてよい(図3参照)。代替的には、第2主面20は、4つの第2隆起部21を備えていてもよい(図6参照)。
【0057】
第1隆起部11は、中央隆起部12と、断面視にて第2隆起部21より外側に位置する両外側の第1隆起部11とを少なくとも備えることがより好ましい。したがって、第1主面10は、少なくとも3つの第1隆起部11を備えることが好ましい。ある好適な態様では、偶数個の第2隆起部21に対して、第1主面10には奇数個の隆起部(11,12)が互いにオフセット配置されている。つまり、第1主面10は、偶数個の第1隆起部11と、1つの中央隆起部12とを含む奇数個の隆起部を備えていてよい。すなわち、本開示のシール部材100は、偶数個の第1隆起部11と、偶数個の第2隆起部21とを備えていてよい。例えば、シール部材100は、図3に示すように、2つの第1隆起部11と、当該2つの第1隆起部11の間に位置する1つの中央隆起部12と、2つの第2隆起部21とを備えていてよい。代替的には、図6に示すように、シール部材100は、4つの第1隆起部11と、1つの中央隆起部12と、4つの第2隆起部21とを、断面視にて互いにオフセット配置となるように備えていてよい。
【0058】
第1隆起部11および第2隆起部21の断面形状は、隆起部の頂点に向かって幅寸法が漸次減じられる山形状の形状を有していてよい。特に、第2隆起部21は、断面視にて、第2主面の中央側の傾斜面21bと、当該中央側の傾斜面21bに対向する外側の傾斜面21aとで傾斜角度が異なる外輪郭を有していてよい。つまり、第2隆起部21の断面形状は対称形ではなく、中央側と外側とで異なる角度で傾斜していてよい。これは、第2隆起部21の断面形状が、第2隆起部21の頂点を通って、シール部材の厚み方向Yに平行な仮想線Bに関して非線対称形であることを意味する(図3参照)。具体的には、第2隆起部21において、中央側の傾斜面21bの傾斜角度は、外側の傾斜面21aの傾斜角度より大きくてよい。換言すれば、第2隆起部21の断面形状において、外側の傾斜角度は、中央側の傾斜角度よりも小さくてよい。つまり、断面視にて、第2隆起部21は、中央側より外側の方がより緩やかに傾斜していてよい。
【0059】
かかる形状によれば、第2隆起部21は、第2コネクタ300が挿入される側において緩やかな傾斜を備えるため、第2コネクタ300の挿入操作における第2コネクタ300とシール部材100との干渉が低減され得る。したがって、第2コネクタ300の挿入をより容易に実施可能となり、コネクタの嵌合操作に際して必要な力がより好適に低減され得る。
【0060】
一方で、第1隆起部11は、断面視にて、外側と比較して、中央側にてより緩やかに傾斜していてよい。すなわち、第1隆起部11は、断面視にて非対称の形状を有していてよい。これは、第1隆起部11の断面形状が、第1隆起部11の頂点を通って、シール部材の厚み方向Yに平行な仮想線Cに関して非線対称形であることを意味する(図3参照)。つまり、第1隆起部11において、中央側の傾斜面11bの傾斜角度は、外側の傾斜面11aの傾斜角度より小さくてよい。他方、中央隆起部12の断面形状は、中央隆起部12の頂点を通り、シール部材の厚み方向Yに平行な仮想線(図3において、中心線Aに相当)に関して線対称形であってよい。
【0061】
一般に、第2コネクタ300は、シール部材100が装着された第1コネクタ200に挿入される。つまり、第1隆起部11を備える第1主面10側が第1コネクタ200に当接した状態で、第2主面20側に第2コネクタ300が挿入される。この際、第1隆起部11が外側にてより急峻に傾斜している形状を有することで、第1隆起部11の中央側への湾曲が抑制される。そのため、第2コネクタ300の挿抜方向(すなわち、コネクタの幅方向X)に沿ってシール部材に力が加えられると、第1コネクタ200と、当該第1コネクタ200と当接している第1隆起部11との干渉が増大し、かかる挿抜方向へのシール部材100の移動が抑止され得る。したがって、第1隆起部11が上述のような断面形状を有することで、第2コネクタ300の挿抜操作によるシール部材100の意図しない移動を抑止することが可能となり得る。つまり、第1隆起部11によってシール部材100が第1コネクタ200上に好適に保持されることで、より容易に第2コネクタ300を挿抜することが可能となり得る。
【0062】
一実施形態において、隆起領域110は、断面視にて線対称部分を含む。例えば、隆起領域110の断面形状は、シール部材100の中央を通って厚み方向Yに延びる中心線A(図3参照)に関して線対称であってよい。断面視にて、隆起領域110における第1隆起部11および第2隆起部21の配置および形状は、中心線Aに関して左右対称となっていてよい。隆起領域110の断面形状が線対称形であることで、圧縮荷重が加えられた際に、シール部材100は、隆起領域110においてより左右均等に弾性変形しやすくなり、弾性変形に起因して作用する反発力が局所的に集中することを好適に抑止可能となり得る。なお、本明細書における「線対称」とは、必ずしも完全な線対称に限定されず、およそ線対称である形状および/または配置を包含する。
【0063】
一実施形態において、断面視にて、隆起領域110を含むシール部材100が、全体として線対称であってもよい。つまり、図3または4に示すように、シール部材100の断面形状が、中心線Aに関して線対称の形状を有していてよい。
【0064】
別の実施形態において、シール部材100は、隆起領域110から連続する延在領域120をさらに備える(図7Aおよび図7B参照)。断面視にて、延在領域120は、隆起領域110の少なくとも一方の端側から延在していてよい。かかる延在領域120は、隆起領域110から延在する隆起部を備えない領域であるところ、非隆起領域、または隆起部非含有領域などと称すこともできる。延在領域120を備えることで、シール部材100と第1コネクタ200および/または第2コネクタ300とが接触可能な領域が増加するため、封止性の向上が実現され得るとともに、コネクタの挿抜に伴うシール部材100のずれをより好適に防止可能となり得る。すなわち、隆起領域110に加えて延在領域120をさらに備える構造を有する本開示のシール部材は、コネクタの嵌合操作に際して必要な力の低減に加え、封止性およびシール部材のずれ防止の点においても好適であり得る。
【0065】
延在領域120は、第1コネクタ200と第2コネクタ300との隙間形状に沿うように、コネクタの内部側に延在していてよい。かかる形状において、隆起領域110を含むシール部材100は、全体として非線対称であってよい。例えば、延在領域120の少なくとも一部は、隆起領域110とは異なる方向に延在していてもよい。具体的には、延在領域120の少なくとも一部は、隆起領域110の幅方向Xとは異なる方向に延在していてよい。一実施形態において、延在領域120は、断面視にて、第1コネクタと第2コネクタとの隙間形状に沿うように、略L字形状の部分を含んでいる(図7B参照)。より具体的には、延在領域120は、第2コネクタのハウジングの先端と第1コネクタとの間に位置することができるように、略L字状の形状を有していてよい。かかる構造によれば、シール部材100は、延在領域120において、第1コネクタおよび/または第2コネクタと好適に面接触することができる。そのため、シール部材100は、隆起領域110および延在領域120の双方において、第1コネクタ200および/または第2コネクタ300と密接可能な部分を備え、より好適な封止性を実現し得る。
【0066】
以上、本開示の実施の形態を説明したが、本開示はこれらに限定されるものではなく、上記構成を組み合わせるなど、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0067】
なお、本開示のリン回収装置および方法は、以下の好適な態様を包含している。
<1>隆起領域を含むシール部材であって、
前記隆起領域が、
第1主面側にある複数の第1隆起部と、
前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、
互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、
断面視にて、複数の前記第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセット配置となっている、シール部材。
<2>断面視にて、前記複数の第1隆起部のいずれか2つの間に位置し、前記第1主面の中央に位置する中央隆起部をさらに備え、
前記中央隆起部が、前記複数の前記第1隆起部よりも低く隆起している、<1>に記載のシール部材。
<3>断面視にて、前記中央隆起部と前記中央谷部とが、前記シール部材の厚み方向に沿って同一線上に位置付けられている、<2>に記載のシール部材。
<4>前記複数の第2隆起部は、前記シール部材の厚み方向に圧縮荷重を受けている状態で、前記中央谷部側に向かって湾曲可能となっている、<1>~<3>のいずれかに記載のシール部材。
<5>前記湾曲した第2隆起部のうち、前記中央谷部を挟んで互いに隣接する前記第2隆起部が、互いに当接可能となっている、<4>に記載のシール部材。
<6>前記第1主面にて、偶数個の前記第1隆起部と1つの中央隆起部とを備え、前記第2主面にて偶数個の前記第2隆起部を備える、<1>~<5>のいずれかに記載のシール部材。
<7>断面視にて、前記複数の第1隆起部と前記複数の第2隆起部とが、それぞれ前記シール部材の幅方向にオフセットして位置付けられている、<1>~<6>のいずれかに記載のシール部材。
<8>互いに隣接する前記複数の第1隆起部のうち、前記隆起領域の中央よりも外側に位置する前記第1隆起部が、前記中央側に位置する前記第1隆起部よりも高く隆起している、<1>~<7>のいずれかに記載のシール部材。
<9>断面視にて、前記中央谷部の幅寸法が、前記中央谷部の底部に向かって漸次小さくなる、<1>~<8>のいずれかに記載のシール部材。
<10>断面視で、前記隆起領域が線対称部分を含む、<1>~<9>のいずれかに記載のシール部材。
<11>断面視で、前記複数の第1隆起部および前記複数の第2隆起部の少なくとも1つが、非線対称部分を含む、<1>~<10>のいずれかに記載のシール部材。
<12>前記第2隆起部おける中央よりも外側の傾斜角度は、前記中央側の傾斜角度よりも小さい、<1>~<11>のいずれかに記載のシール部材。
<13>前記隆起領域から連続する延在領域をさらに含む、<1>~<12>のいずれかに記載のシール部材。
<14>前記延在領域の少なくとも一部が、前記隆起領域とは互いに異なる方向に延在している、<13>に記載のシール部材。
<15>前記隆起領域を含むシール部材の断面形状が、全体として非線対称である、<1>~<14>のいずれかに記載のシール部材。
<16>第1コネクタ、前記第1コネクタと組み合わされる第2コネクタ、および前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に位置付けられるシール部材とを備え、
前記シール部材は隆起領域を含み、前記隆起領域が、
前記第1コネクタに対向する第1主面側にある複数の第1隆起部と、
前記第2コネクタに対向し、かつ前記第1主面と反対側の第2主面側にある複数の第2隆起部と、
互いに隣接する前記第2隆起部間に形成され、断面視にて、前記第2主面の中央に位置する中央谷部とを備え、
断面視にて、前記複数の前記第1隆起部のうち、少なくとも最外側に位置する前記第1隆起部は、前記複数の第2隆起部に対してオフセット配置となっている、コネクタ組立体。
【産業上の利用可能性】
【0068】
なお、実施例においてはコネクタへの適用について説明したが、本発明はコネクタに限定されず、シール部材による確実な防水構造を必要とする、例えば筐体等の他の部材に対しても、同様に適用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 コネクタ組立体
100 シール部材
110 隆起領域
120 延在領域
10 第1主面
11 第1隆起部
12 中央隆起部
15 空隙
20 第2主面
21 第2隆起部
21c 第2隆起部の頂点
25 中央谷部
25a 中央谷部の底部
2 第1コネクタ
210 インナハウジング
220 アウタハウジング
300 第2コネクタ
310 第2コネクタのハウジング
400 スライダ
500 リテーナ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B