(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053887
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗料組成物の製造方法、塗膜の製造方法、及び透明導電膜
(51)【国際特許分類】
C09D 133/02 20060101AFI20240409BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240409BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20240409BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240409BHJP
C09C 1/44 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C09D133/02
C09D5/24
C09D7/41
C09D7/62
C09C1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160374
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 諒
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037CB01
4J037EE03
4J037EE43
4J037FF11
4J037FF15
4J037FF25
4J038CG061
4J038GA09
4J038HA026
4J038JB01
4J038KA08
4J038KA12
4J038MA06
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA20
(57)【要約】
【課題】表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜を得る技術を提供すること。
【解決手段】カーボンナノチューブに対してトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸を組み合わせること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含有する、塗料組成物。
【請求項2】
前記トリアリールメタン系色素がアミノ基を有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500~30000である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの含有率が0.4質量%以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記トリアリールメタン系色素の含有量が、前記カーボンナノチューブ100質量部に対して0.1~50重量部である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸の含有量が、前記カーボンナノチューブ100質量部に対して1~300である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記トリアリールメタン系色素が前記カーボンナノチューブに保持されている、請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項8】
透明導電膜形成用である、請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項9】
(A)カーボンナノチューブとトリアリールメタン系色素とを液中で接触させる工程、
(B)前記工程(A)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液に分散剤を添加する工程、及び
(C)前記工程(B)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液にポリアクリル酸を添加する工程、
を含む、請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物を製造する方法。
【請求項10】
前記工程(C)において、前記カーボンナノチューブを含有する液にバインダーを添加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)請求項1~6のいずれかに記載の塗料組成物を基材上に塗工する工程を含む、塗膜の製造方法。
【請求項12】
カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含む、透明導電膜。
【請求項13】
前記トリアリールメタン系色素が前記カーボンナノチューブに保持されている、請求項12に記載の透明導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、塗料組成物の製造方法、塗膜の製造方法、及び透明導電膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低抵抗の透明導電膜が、タッチパネル、有機ELディスプレイ、太陽電池、透明電極等の多様な分野において利用されている。透明導電材料として、ITO等の金属材料、PEDOT等の導電性高分子、カーボンナノチューブ等の炭素材料等の種々の材料が使用されることが報告されている。低抵抗の透明導電膜に用いられる透明導電材料は、実用化レベルでは、現状、ほとんどがITOである。しかし、ITO膜は、固く、屈曲性に乏しいという欠点がある。
【0003】
カーボンナノチューブは、他の透明導電材料と比較してコスト安で耐久性にも優れ、屈曲性を要する製品への応用も期待できる。しかし、カーボンナノチューブは、他の導電材料と比べると比較的高抵抗であるので、透明導電膜に利用する際には、低抵抗化処理が行われる。例えば、特許文献1では、カーボンナノチューブ膜に水溶解させたハロゲン化物を添加し、熱焼成・光焼成を行うことでドーピングし、塗膜の低抵抗化を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、従来のカーボンナノチューブ塗膜は、低抵抗化されたものであっても、使用を続ける過程で表面抵抗率が大きく変動(特に増加)してしまう、すなわち表面抵抗率の安定性が低いことに着目した。
【0006】
そこで、本発明は、表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜を得る技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を進めた結果、カーボンナノチューブに対してトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸を組み合わせることにより、表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜が得られることを見出した。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含有する、塗料組成物。
【0009】
項2. 前記トリアリールメタン系色素がアミノ基を有する、項1に記載の塗料組成物。
【0010】
項3. 前記ポリアクリル酸の重量平均分子量が500~30000である、項1に記載の塗料組成物。
【0011】
項4. 前記カーボンナノチューブの含有率が0.4質量%以下である、項1に記載の塗料組成物。
【0012】
項5. 前記トリアリールメタン系色素の含有量が、前記カーボンナノチューブ100質量部に対して0.1~50重量部である、項1に記載の塗料組成物。
【0013】
項6. 前記ポリアクリル酸の含有量が、前記カーボンナノチューブ100質量部に対して1~300である、項1に記載の塗料組成物。
【0014】
項7. 前記トリアリールメタン系色素が前記カーボンナノチューブに保持されている、項1~6のいずれかに記載の塗料組成物。
【0015】
項8. 透明導電膜形成用である、項1~6のいずれかに記載の塗料組成物。
【0016】
項9. (A)カーボンナノチューブとトリアリールメタン系色素とを液中で接触させる工程、
(B)前記工程(A)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液に分散剤を添加する工程、及び
(C)前記工程(B)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液にポリアクリル酸を添加する工程、
を含む、項1~6のいずれかに記載の塗料組成物を製造する方法。
【0017】
項10. 前記工程(C)において、前記カーボンナノチューブを含有する液にバインダーを添加する、項9に記載の方法。
【0018】
項11. (a)項1~6のいずれかに記載の塗料組成物を基材上に塗工する工程を含む、塗膜の製造方法。
【0019】
項12. カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含む、透明導電膜。
【0020】
項13. 前記トリアリールメタン系色素が前記カーボンナノチューブに保持されている、項12に記載の透明導電膜。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜を得る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1~6及び比較例1~3の塗膜の各試験後の抵抗変化率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0024】
1.塗料
本発明は、その一態様において、カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含有する、塗料組成物(本明細書において、「本発明の塗料組成物」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
【0025】
カーボンナノチューブとしては特に限定されず、アーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長法(CVD法)等により製造されたカーボンナノチューブを用いることができ、より具体的には、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びこれらの混合物のいずれも使用可能である。導電性に優れる点から、少なくとも単層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。
【0026】
カーボンナノチューブの長さは、1~2000μmであることが好ましく、より好ましくは5~1000μmであり、さらに好ましくは5~500μmである。カーボンナノチューブの長さが上記範囲内であると、導電層とした場合に導電性や透明性が優れる。
【0027】
カーボンナノチューブの直径は、単層カーボンナノチューブの場合、0.5~20nmであることが好ましく、1~10nmであることがより好ましい。カーボンナノチューブの直径が上記範囲内であると、導電層とした場合に導電性や透明性が優れる。
【0028】
カーボンナノチューブのBET比表面積は、例えば100~5000m2/g、好ましくは500~3000 m2/g、より好ましくは700~2000 m2/gである。
【0029】
カーボンナノチューブは、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0030】
本発明の塗料組成物中のカーボンナノチューブの含有率は、カーボンナノチューブの分散性が著しく損なわれず、且つ透明導電膜を形成可能である限り、特に制限されない。該含有率は、例えば0.4質量%以下、好ましくは0.01~0.4質量%、より好ましくは0.02~0.3質量%、さらに好ましくは0.04~0.2質量%、よりさらに好ましくは0.07~0.15質量%である。
【0031】
トリアリールメタン系色素は、3つのアリール基(好ましくはフェニル基)が1つの炭素原子に結合した構造を有する色素化合物のことである。なお、アリール基同士はアルカンジイル基又はエーテル結合等の2価の置換基を介して結合していてもよい。一般に、少なくとも2つのアリール基はアミノ基、エーテル基、又はヒドロキシ基を有している。
【0032】
アミノ基の好ましい例としては、-NR1R2が挙げられる。R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は1価の基である。R1及びR2は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0033】
1価の基の例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、炭素数1~20のアルキルチオ基、炭素数1~20のアラルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素数1~20のアルキニル基、エステル基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールオキシ基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、又は炭素数2~20の複素環基等が挙げられる。これらの基は、-SO3
-、アルキル基等で置換されていてもよい。1価の基として、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~15のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0034】
トリアリールメタン系色素として、具体的には、例えばブリリアントグリーン、ブリリアントブルーFCF、マラカイトグリーン、ローダミンBベース、ローダミンB、ローダミン101、ビクトリアブルーR、キシレンシアノール、ウォーターブルー、グリーンS、ファストグリーンFCF、クマシーブリリアントブルー、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレット、シンプルメチルブルー、フェノールフタレイン、クレゾールレッド、フェノールスルホンフタレイン、チモールブルー、フロキシン、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー等が挙げられる。
【0035】
トリアリールメタン系色素は、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0036】
本発明の塗料組成物中のトリアリールメタン系色素の含有量は、カーボンナノチューブ100重量部に対して例えば0.1~50重量部である。当該含有量は、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性の観点から、好ましくは0.5~30重量部、より好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部、中でも特に好ましくは4~17重量部である。
【0037】
本発明の塗料組成物において、トリアリールメタン系色素は、カーボンナノチューブに保持されていることが好ましい。これにより、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性をより高めることができる。例えば、トリアリールメタン系色素はカーボンナノチューブ表面に吸着した状態であることができる。
【0038】
ポリアクリル酸は、分子式:[-CH2CH(COOH)-]nで表される化合物であり、その限りにおいて特に制限されない。
【0039】
ポリアクリル酸の重量平均分子量は、例えば500~30000である。当該分子量は、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性の観点から、好ましくは1000~20000、より好ましくは1000~15000、さらに好ましくは2000~10000、特に好ましくは3000~7000である。
【0040】
ポリアクリル酸は、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0041】
本発明の塗料組成物中のポリアクリル酸の含有量は、カーボンナノチューブ100重量部に対して例えば1~300重量部である。当該含有量は、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性の観点から、好ましくは5~200重量部、より好ましくは10~150重量部、さらに好ましくは20~100重量部、よりさらに好ましくは30~70重量部である。また、当該含有量は、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の基材に対する密着性の観点から、好ましくは200重量部以下、より好ましくは150重量部以下、さらに好ましくは100重量部以下、よりさらに好ましくは70重量部以下である。
【0042】
本発明の塗料組成物は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、カーボンナノチューブの分散性を向上させることができるものである限り特に制限されない。分散剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、及び両性の界面活性剤;高分子分散剤を用いることができる。
【0043】
アニオン性界面活性剤を選択する場合、その種類は特に限定されない。具体的には脂肪酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸スルホン酸塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステル塩及びβ-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
またカチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類及び第四級アンモニウム塩類がある。具体的にはステアリルアミンアセテート、トリメチルヤシアンモニウムクロリド、トリメチル牛脂アンモニウムクロリド、ジメチルジオレイルアンモニウムクロリド、メチルオレイルジエタノールクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムジサルフェート、セチルピリジニウムブロマイド、4-アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)-ドデシルブロマイド及びドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
またノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン誘導体、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びアルキルアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。具体的にはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。また両性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
高分子分散剤として具体的には、セルロース誘導体(セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル系重合体等が挙げられる。
【0047】
分散剤は、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0048】
本発明の塗料組成物が分散剤を含有する場合、本発明の塗料組成物中の分散剤の含有量は、カーボンナノチューブの分散性が著しく損なわれず、且つ透明導電膜を形成可能である限り、特に制限されない。該含有量(固形分換算)は、カーボンナノチューブ100質量部に対して、例えば50~2000質量部、好ましくは100~1500質量部、より好ましくは200~1000質量部、さらに好ましくは300~700質量部、よりさらに好ましくは400~600質量部である。
【0049】
本発明の塗料組成物は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーとしては、カーボンナノチューブ含有塗料として使用できるものである限り、特に制限されない。
【0050】
バインダーとしては、例えば、ケイ素化合物系バインダー; エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。
【0051】
ケイ素化合物系バインダーとは、固体状又は液体状のケイ素化合物を水性分散媒中に含んでなるケイ素化合物の、コロイド分散液、溶液、又はエマルジョンである。ケイ素化合物系バインダーとしては、例えば、シリケート等のケイ酸塩類;コロイダルシリカ;シラン、シロキサン加水分解物エマルジョン;シリコーン樹脂エマルジョン;シリコーン-アクリル樹脂共重合体、シリコーン-ウレタン樹脂共重合体等のシリコーン樹脂と他の樹脂との共重合体のエマルジョン等を挙げることができる。
【0052】
バインダーは、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0053】
本発明の塗料組成物がバインダーを含有する場合、本発明の塗料組成物中のバインダーの含有量は、カーボンナノチューブの分散性が著しく損なわれず、且つ透明導電膜を形成可能である限り、特に制限されない。該含有量(固形分換算)は、カーボンナノチューブ100質量部に対して、例えば10~1000質量部、好ましくは20~700質量部、より好ましくは50~500質量部、さらに好ましくは100~400質量部、よりさらに好ましくは150~300質量部である。
【0054】
本発明の塗料組成物は、無機酸を含有することが好ましい。
【0055】
無機酸は、無機化合物からなる酸であり、この限りにおいて特に制限されない。無機酸としては、例えば硝酸、硫酸、塩酸等の強酸;リン酸、ホウ酸等の弱酸が挙げられる。これらの中でも、強酸が好ましく、中でも硝酸、硫酸が好ましい。塗膜の表面抵抗の安定性の観点から、硫酸が特に好ましい。
【0056】
無機酸は、1種単独であることができ、或いは2種以上の組合せであることができる。
【0057】
本発明の塗料組成物が無機酸を含有する場合、本発明の塗料組成物中の無機酸の含有率は、カーボンナノチューブの分散性が著しく損なわれず、且つ透明導電膜を形成可能である限り、特に制限されない。該含有率は、例えば0.1~5質量%、好ましくは0.2~4質量%、より好ましくは0.5~3質量%、さらに好ましくは1~2質量%である。
【0058】
本発明の塗料組成物は、通常、溶媒を含有する。溶媒としては、主に水が挙げられる。溶媒としては、有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒を使用することも可能である。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類:酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のエステル類:N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、等のヒドロキシル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物等が挙げられる。
【0059】
本発明の塗料組成物は、各成分を混合することにより、製造することができる。得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性の観点から、本発明の塗料組成物は、
(A)カーボンナノチューブとトリアリールメタン系色素とを液中で接触させる工程、
(B)前記工程(A)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液に分散剤を添加する工程、及び
(C)前記工程(B)の後、前記カーボンナノチューブを含有する液にポリアクリル酸を添加する工程、
を含む方法により製造することが、特に好ましい。
【0060】
工程(A)の液中での接触は、例えば、水などの上記した溶媒中で両者を混合することにより、行うことができる。通常、当該工程により、トリアリールメタン系色素がカーボンナノチューブの表面に吸着する。この吸着は、溶液のトリアリールメタン系色素由来の色が無色透明へと近づくことで、確認することができる。工程(A)では、分散剤を使用しない。
【0061】
工程(B)は、例えば水などの上記した溶媒に分散剤を溶解させた溶液を、工程(A)で得られた液と混合することにより、行うことができる。必要に応じて、分散装置を用いて、カーボンナノチューブを溶媒中に均一に分散させることができる。
【0062】
工程(C)は、例えば水などの上記した溶媒にポリアクリル酸を溶解させた溶液を、カーボンナノチューブを含有する液と混合することにより、行うことができる。この際、必要に応じて、バインダー、トリアリールメタン系色素溶液などを添加することができる。
【0063】
工程(C)後、必要に応じて凝集物等をろ過等により除去して、本発明の塗料組成物を得ることができる。
【0064】
本発明の塗料組成物により、表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜を得ることができる。
【0065】
2.塗膜の製造方法
本発明は、その一態様において、(a)本発明の塗料組成物を基材上に塗工する工程を含む、塗膜の製造方法(本明細書において、「本発明の製造方法」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0066】
基材は、透明導電膜の基材として使用され得る樹脂(基材用樹脂)を含有する限り、特に制限されない。
【0067】
基材は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、基材用樹脂以外の成分が含まれていてもよい。その場合、基材中の基材用樹脂の合計量は、例えば80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であり、100質量%未満である。
【0068】
基材用樹脂としては、特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。これらの中でも透明性等の観点から、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等が挙げられ、より好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0069】
基材用樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0070】
基材の厚みは、用途に応じた透明性及び強度が確保される限り、特に制限されない。基材の厚みは、例えば2~500μm、好ましくは10~400μm、より好ましくは20~300μm、さらに好ましくは50~200μm、よりさらに好ましくは70~150μmである。
【0071】
基材の層構成は特に制限されない。基材は、1種単独の基材から構成されるものであってもよいし、組成が同一又は異なる2種以上の基材が複数組み合わされたものであってもよい。
【0072】
基材は、各種表面処理が施されたものであってもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理等が挙げられる。
【0073】
塗工する方法は、特に制限されない。例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗布方式を用いることができる。
【0074】
塗工後は、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、例えば50~200℃、好ましくは70~170℃、より好ましくは90~150℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なり得るが、例えば30秒間~15分間、好ましくは1分間~10分間、より好ましくは2分間~5分間である。
【0075】
本発明の製造方法は、(b)工程(a)により得られた塗膜を水で洗浄する工程を含む、ことが好ましい。これにより、塗膜の表面抵抗をさらに下げることができる。
【0076】
洗浄の方法は特に制限されず、水が塗膜表面に接触する方法を各種採用することができる。典型的には、流水を塗膜表面に当たるようにして、洗浄することができる。洗浄時間は、例えば1~30秒程度とすることができる。
【0077】
洗浄後は、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、例えば50~200℃、好ましくは70~170℃、より好ましくは90~150℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なり得るが、例えば30秒間~15分間、好ましくは1分間~10分間、より好ましくは2分間~5分間である。
【0078】
本発明の製造方法により得られた塗膜は、表面抵抗率の安定性がより高いカーボンナノチューブ含有透明導電膜である。
【0079】
3.透明導電膜
本発明は、その一態様において、カーボンナノチューブ、トリアリールメタン系色素、及びポリアクリル酸を含む、透明導電膜(本明細書において、「本発明の透明導電膜」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0080】
本発明の透明導電膜におけるトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸の含有量は、本発明の塗料組成物におけるトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸の含有量と同様である。或いは、本発明の透明導電膜におけるトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸の含有量は、本発明の塗料組成物におけるトリアリールメタン系色素及びポリアクリル酸の含有量100%に対して、例えば40~100%、50~100%、60~100%である。
【0081】
本発明の透明導電膜においては、トリアリールメタン系色素がカーボンナノチューブに保持されていることが好ましい。これにより、得られるカーボンナノチューブ含有透明導電膜の表面抵抗率の安定性をより高めることができる。例えば、トリアリールメタン系色素はカーボンナノチューブ表面に吸着した状態であることができる。この場合において、
本発明の透明導電膜の表面抵抗率は、例えば500Ω/□以下、好ましくは400Ω/□以下、より好ましくは300Ω/□以下である。当該表面抵抗率の下限は、特に制限されず、例えば10Ω/□、20Ω/□、又は40Ω/□である。
【0082】
表面抵抗率は、低抵抗率計(Loresta-GP MCP-T610、三菱ケミカルアナリテック製)を用いて測定する。
【0083】
本発明の透明導電膜は、表面抵抗率の安定性がより高い。
【0084】
例えば、本発明の透明導電膜は、屋内常温環境下(15℃~25℃)で1500時間経過時の抵抗変化率(=[(1500時間経過時の表面抵抗率-成膜直後の表面抵抗率)/成膜直後の表面抵抗率]×100 (%))が、好ましくは20%以下(マイナスの値も包含する。以下同様)、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。より好ましくは、当該抵抗変化率の絶対値が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0085】
例えば、本発明の透明導電膜は、遮光条件且つ100℃環境下で1500時間経過時の抵抗変化率(=[(1500時間経過時の表面抵抗率-成膜直後の表面抵抗率)/成膜直後の表面抵抗率]×100 (%))が、好ましくは20%以下(マイナスの値も包含する。以下同様)、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。より好ましくは、当該抵抗変化率の絶対値が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0086】
例えば、本発明の透明導電膜は、遮光条件且つ50℃95%RH環境下で1500時間経過時の抵抗変化率(=[(1500時間経過時の表面抵抗率-成膜直後の表面抵抗率)/成膜直後の表面抵抗率]×100 (%))が、好ましくは20%以下(マイナスの値も包含する。以下同様)、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。より好ましくは、当該抵抗変化率の絶対値が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0087】
例えば、本発明の透明導電膜は、光照射(スーパーキセノンランプ、BPT(ブラックパネル温度)=63℃、照度=180W/m2)下で100時間経過時の抵抗変化率(=[(100時間経過時の表面抵抗率-成膜直後の表面抵抗率)/成膜直後の表面抵抗率]×100 (%))が、好ましくは20%以下(マイナスの値も包含する。以下同様)、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。より好ましくは、当該抵抗変化率の絶対値が、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0088】
4.用途
本発明の透明導電膜は、その透明性及び導電性を必要とする各種用途、例えば液晶、プラズマ、フィールドエミッション等の各種ディスプレイ方式のテレビ、携帯電話等の各種電子機器のタッチパネルや表示素子における透明電極; 太陽電池、電磁波シールド材、電子ペーパー、エレクトロルミネッセンス調光素子等における透明電極; 電解めっきプライマー; 透明面状発熱体等の用途に用いることができる。
【実施例0089】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0090】
(1)塗料の作製
(実施例1)
単層カーボンナノチューブ(CNT)(OCSiAl社製、TUBALL PD0559、直径:1.6±0.4nm、長さ:>5μm、BET比表面積:1160m2/g)の粉末0.05gに対して、ブリリアントグリーン(BRG)(富士フィルム和光純薬社製)0.06%溶液を10mL加え、約15分間撹拌した。当該撹拌により、溶液の色が、BRG由来の色から無色透明に変化した。分散剤(ポリスチレンスルホン酸 アンモニウム塩、Nouryon Surface Chemistry社製、VERSA-TL125、固形分30%)をイオン交換水に溶解し、上記で得られたCNT液に添加した。この際、単層CNT/分散剤=100/500(固形分比)、単層CNT割合=0.1%になるように調製した。分散装置を用いて、単層CNTを水中に均一分散した。得られた単層CNT分散液10重量部に対して、バインダー(富士化学社製、3号珪酸ソーダ)0.1重量部、及び1mol/L硫酸0.3重量部を添加して5分間撹拌し、続いて5%ポリアクリル酸(PAA)(富士フィルム和光純薬社製、重量平均分子量5000)溶液0.1重量部を添加して5分間撹拌し、続いてIPA(イソプロピルアルコール)0.3重量部を添加して5分間撹拌した。得られた液を200メッシュのフィルターでろ過して、塗料を得た。
【0091】
(実施例2)
PAA添加の際に、BRG 0.1%溶液0.2重量部を添加する以外は、実施例1と同様にして塗料を得た。
【0092】
(実施例3)
BRGに代えてブリリアントブルー(BRB)(富士フィルム和光純薬社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして塗料を得た。
【0093】
(実施例4)
BRGに代えてBRBを用いる以外は、実施例2と同様にして塗料を得た。
【0094】
(実施例5)
BRGに代えてマカライトグリーンシュウ酸塩(MG)(富士フィルム和光純薬社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして塗料を得た。
【0095】
(実施例6)
BRGに代えてMGを用いる以外は、実施例2と同様にして塗料を得た。
【0096】
(比較例1)
分散剤(ポリスチレンスルホン酸 アンモニウム塩、Nouryon Surface Chemistry社製、VERSA-TL125、固形分30%)をイオン交換水に溶解し、単層カーボンナノチューブ(CNT)(OCSiAl社製、TUBALL PD0559、直径:1.6±0.4nm、長さ:>5μm、BET比表面積:1160m2/g)の粉末0.05gに添加した。この際、単層CNT/分散剤=100/500(固形分比)、単層CNT割合=0.1%になるように調製した。分散装置を用いて、単層CNTを水中に均一分散した。得られた単層CNT分散液10重量部に対して、バインダー(富士化学社製、3号珪酸ソーダ)0.1重量部、及び1mol/L硫酸0.3重量部を添加して5分間撹拌し、続いてIPA(イソプロピルアルコール)0.3重量部を添加して5分間撹拌した。得られた液を200メッシュのフィルターでろ過して、塗料を得た。
【0097】
(比較例2)
バインダー及び硫酸添加とIPA添加との間に、PAA溶液0.1重量部を添加して5分間撹拌する以外は、比較例1と同様にして塗料を得た。
【0098】
(比較例3)
PAA添加に代えて、BRG 0.1%溶液0.2重量部を添加する以外は、実施例1と同様にして塗料を得た。
【0099】
実施例1~6及び比較例1~3の塗料において異なる要素(トリアリールメタン系色素の含有量及びポリアクリル酸の含有量)について表1に示す。
【0100】
【0101】
(2)CNT塗膜の作製
実施例1~6及び比較例1~3の塗料を用いてCNT塗膜を作製した。作製方法を以下に示す。
【0102】
厚み100μmのPETフィルム(可視光透過率90%)に、バー径0.2mmの塗工バーを用いて、バーコートで塗工した。得られた塗工フィルムを、熱風乾燥機にて120℃3分条件で乾燥させた。乾燥させた塗工フィルムの塗工面を、イオン交換水(流水)を用いて洗浄した。この際、塗工面全体に流水が当たるようにした。洗浄時間は数秒~十秒程度とした。塗膜上の洗浄水を軽く振り落とし、熱風乾燥機にて120℃5分条件で、塗膜上の洗浄水が完全に乾くまで乾燥させて、CNT塗膜を得た。CNT塗膜は、透明であり、紫外可視近赤外分光光度計(V-770 Spectrophotometer、日本分光製)を用いて測定した可視光透過率は、概ね70~73%であった。
【0103】
また、単層CNTに吸着したトリアリールメタン系色素の量を測定した。実施例2、4、及び6の塗料を用いて得られた塗膜を、一定量のイオン交換水で洗浄し、洗浄液中に含まれるBRG量を測定した。BRG投入量との差から、吸着量を算出した。BRG投入量に対する吸着量の割合(吸着率)は以下の通りであった。
【0104】
<実施例2>
BRG吸着量:9.12×10^-7[mol]
吸着率:69.18[%]
<実施例4>
BRB吸着量:7.23×10^-7[mol]
吸着率:90.06[%]
<実施例6>
MG吸着量:6.82×10^-7[mol]
吸着率:99.37[%]。
【0105】
(3)CNT塗膜の評価
実施例1~6及び比較例1~3の塗料を用いて作製した成膜直後のCNT塗膜の表面抵抗率(初期表面抵抗率S1)を、低抵抗率計(Loresta-GP MCP-T610、三菱ケミカルアナリテック製)を用いて測定した。
【0106】
(3-A)常温環境試験
成膜直後のCNT塗膜を、屋内常温環境下(15℃~25℃)で約1500時間静置した後、上記と同様にして表面抵抗率(S2A)を測定した。
【0107】
(3-B)耐熱性試験
成膜直後のCNT塗膜を、遮光条件且つ100℃環境下で約1500時間静置した後、上記と同様にして表面抵抗率を測定(S2B)した。
【0108】
(3-C)耐熱湿性試験
成膜直後のCNT塗膜を、遮光条件且つ50℃95%RH環境下で約1500時間静置した後、上記と同様にして表面抵抗率(S2C)を測定した。
【0109】
(3-D)耐光性試験
成膜直後のCNT塗膜に光照射(スーパーキセノンランプ、BPT(ブラックパネル温度)=63℃、照度=180W/m2)を100時間行った後、上記と同様にして表面抵抗率(S2D)を測定した。
【0110】
初期表面抵抗率(S1)及び試験後の表面抵抗率(S2:S2
A、S2
B、S2
C、又はS2
D)から、抵抗変化率(=[(S2-S1)/S1]×100)を算出した。結果を表2及び
図1に示す。表2及び
図1の通り、トリアリールメタン系色素とポリアクリル酸の両方を含有することにより、表面抵抗率の安定性がより高まることが分かった。
【0111】