(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053888
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電池セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20240409BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240409BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240409BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240409BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/536
H01M50/538
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160376
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松政 義高
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 宏昌
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011KK01
5H043AA19
5H043BA16
5H043BA17
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043EA02
5H043HA01E
5H043HA17E
5H043HA31E
5H043LA02E
(57)【要約】
【課題】電極タブと集電体とを接合するための良好なレーザ溶接部を形成する。
【解決手段】電極体130は、ケース120に収容され、電極タブ131を有する。集電体140は、電極タブ131に接合される。電極タブ131は金属箔の積層構造を有する。金属箔の積層方向に沿いつつ、集電体140から電極タブ131に向かうにしたがって積層方向に直交する方向の幅が狭いバーリング加工部10が電極タブ131および集電体140のうちの少なくとも集電体140に形成される。積層方向に並ぶ電極タブ131および集電体140のうちの電極タブ131側に電極タブ131と集電体140とを接合するレーザ溶接部20が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する本体および前記本体を封止する封口板を含むケースと、
前記ケースに収容され、電極タブを有する電極体と、
前記電極タブに接合される集電体とを備え、
前記電極タブは金属箔の積層構造を有し、
前記金属箔の積層方向に沿いつつ、前記集電体から前記電極タブに向かうにしたがって前記積層方向に直交する方向の幅が狭いバーリング加工部が前記電極タブおよび前記集電体のうちの少なくとも前記集電体に形成され、
前記積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記電極タブ側に前記電極タブと前記集電体とを接合するレーザ溶接部が形成されている、電池セル。
【請求項2】
前記バーリング加工部は、前記集電体における前記電極タブとは反対側の表面に外形線が規定され、
前記レーザ溶接部は、前記積層方向から見て、少なくとも前記外形線より内側の全域に形成されている、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記レーザ溶接部は、前記積層方向から見て、前記外形線より内側の全域および前記外形線の外側5mm以下の範囲に形成されている、請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記電極タブにおける前記バーリング加工部は、前記電極タブの総厚みの70%以上の深さで構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項5】
前記電極タブは、前記バーリング加工部の頂点を中心に前記集電体とは反対側に突出した第1領域と、前記第1領域の周りに位置して略平面を構成する第2領域とを有し、
前記レーザ溶接部は、少なくとも前記第2領域に位置している、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項6】
前記バーリング加工部は、略円錐形状を有している、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項7】
前記バーリング加工部は、略正四角錐状を有している、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項8】
前記電極タブおよび前記集電体は、前記電極体における負極の一部を構成している、請求項1または請求項2に記載の電池セル。
【請求項9】
金属箔の積層構造を有する電極タブを含む電極体を作製する工程と、
前記電極タブ上に集電体を配置する工程と、
前記金属箔の積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記集電体側から前記電極タブと前記集電体とにバーリング加工を施す工程と、
前記積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記電極タブ側から前記電極タブと前記集電体とにレーザ溶接を施す工程と、
前記電極体および前記集電体をケース本体に収容する工程と、
前記電極体および前記集電体を収容した前記ケース本体を封口板により封止する工程とを備える、電池セルの製造方法。
【請求項10】
前記バーリング加工は、前記集電体における前記電極タブとは反対側の表面に外形線が規定され、
前記レーザ溶接は、前記積層方向から見て、少なくとも前記外形線より内側の全域に施される、請求項9に記載の電池セルの製造方法。
【請求項11】
前記レーザ溶接は、前記積層方向から見て、前記外形線より内側の全域および前記外形線の外側5mm以下の範囲に施される、請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【請求項12】
前記電極タブにおける前記バーリング加工は、前記電極タブの総厚みの70%以上の深さで施される、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の電池セルの製造方法。
【請求項13】
前記電極タブには、前記バーリング加工の頂点を中心に前記集電体とは反対側に突出した第1領域、および前記第1領域の周りに位置して略平面を構成する第2領域が形成され、
前記レーザ溶接は、少なくとも前記第2領域に施される、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【請求項14】
前記バーリング加工は、略円錐形状に施される、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【請求項15】
前記バーリング加工は、略正四角錐形状に施される、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【請求項16】
前記電極タブおよび前記集電体は、前記電極体における負極の一部を構成している、請求項9または請求項10に記載の電池セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-207767号公報(特許文献1)には、電極体のタブ群と導電部材との溶接部において、タブの積層方向に貫通する孔を複数有する保護部材が用いられ、複数の孔を跨ぐようにレーザ照射装置を移動させることが開示されている。
【0003】
特許第6784232号公報(特許文献2)には、二次電池の電極タブを構成する積層金属箔を一対の金属板に溶接する構造において、一対の金属板に挟持された積層金属箔を、溶接予定箇所において局所的に積層方向に押圧してかしめることが開示されている。
【0004】
特開2013-166182号公報(特許文献3)には、積層した金属箔の溶接部位に、縦断面形状が略V字状のカッターによって、積層方向に沿って貫通する切り目を入れ、金属箔どうしを切り目端部で積層方向に密着させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-207767号公報
【特許文献2】特許第6784232号公報
【特許文献3】特開2013-166182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ溶接部を形成して電極タブと集電体とを接合する場合、レーザ溶接部においてボイドまたはスパッタの溶接不良が発生する可能性がある。このため、電極タブと集電体とを接合するための良好なレーザ溶接部を形成することができる余地がある。
【0007】
本技術は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電極タブと集電体とを接合するための良好なレーザ溶接部を形成することができる、電池セルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、以下の電池セルを提供する。
[1]
開口を有する本体および前記本体を封止する封口板を含むケースと、
前記ケースに収容され、電極タブを有する電極体と、
前記電極タブに接合される集電体とを備え、
前記電極タブは金属箔の積層構造を有し、
前記金属箔の積層方向に沿いつつ、前記集電体から前記電極タブに向かうにしたがって前記積層方向に直交する方向の幅が狭いバーリング加工部が前記電極タブおよび前記集電体のうちの少なくとも前記集電体に形成され、
前記積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記電極タブ側に前記電極タブと前記集電体とを接合するレーザ溶接部が形成されている、電池セル。
[2]
前記バーリング加工部は、前記集電体における前記電極タブとは反対側の表面に外形線が規定され、
前記レーザ溶接部は、前記積層方向から見て、少なくとも前記外形線より内側の全域に形成されている、[1]に記載の電池セル。
[3]
前記レーザ溶接部は、前記積層方向から見て、前記外形線より内側の全域および前記外形線の外側5mm以下の範囲に形成されている、[2]に記載の電池セル。
[4]
前記電極タブにおける前記バーリング加工部は、前記電極タブの総厚みの70%以上の深さで構成されている、[1]から[3]のいずれか1つに記載の電池セル。
[5]
前記電極タブは、前記バーリング加工部の頂点を中心に前記集電体とは反対側に突出した第1領域と、前記第1領域の周りに位置して略平面を構成する第2領域とを有し、
前記レーザ溶接部は、少なくとも前記第2領域に位置している、[1]から[4]のいずれか1つに記載の電池セル。
[6]
前記バーリング加工部は、略円錐形状を有している、[1]から[5]のいずれか1つに記載の電池セル。
[7]
前記バーリング加工部は、略正四角錐状を有している、[1]から[5]のいずれか1つに記載の電池セル。
[8]
前記電極タブおよび前記集電体は、前記電極体における負極の一部を構成している、[1]から[7]のいずれか1つに記載の電池セル。
【0009】
本技術は、以下の電池セルの製造方法を提供する。
[9]
金属箔の積層構造を有する電極タブを含む電極体を作製する工程と、
前記電極タブ上に集電体を配置する工程と、
前記金属箔の積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記集電体側から前記電極タブと前記集電体とにバーリング加工を施す工程と、
前記積層方向に並ぶ前記電極タブおよび前記集電体のうちの前記電極タブ側から前記電極タブと前記集電体とにレーザ溶接を施す工程と、
前記電極体および前記集電体をケース本体に収容する工程と、
前記電極体および前記集電体を収容した前記ケース本体を封口板により封止する工程とを備える、電池セルの製造方法。
[10]
前記バーリング加工は、前記集電体における前記電極タブとは反対側の表面に外形線が規定され、
前記レーザ溶接は、前記積層方向から見て、少なくとも前記外形線より内側の全域に施される、[9]に記載の電池セルの製造方法。
[11]
前記レーザ溶接は、前記積層方向から見て、前記外形線より内側の全域および前記外形線の外側5mm以下の範囲に施される、[10]に記載の電池セルの製造方法。
[12]
前記電極タブにおける前記バーリング加工は、前記電極タブの総厚みの70%以上の深さで施される、[9]から[11]のいずれか1つに記載の電池セルの製造方法。
[13]
前記電極タブには、前記バーリング加工の頂点を中心に前記集電体とは反対側に突出した第1領域、および前記第1領域の周りに位置して略平面を構成する第2領域が形成され、
前記レーザ溶接は、少なくとも前記第2領域に施される、[9]から[12]のいずれか1つに記載の電池セルの製造方法。
[14]
前記バーリング加工は、略円錐形状に施される、[9]から[13]のいずれか1つに記載の電池セルの製造方法。
[15]
前記バーリング加工は、略正四角錐形状に施される、[9]から[13]のいずれか1つに記載の電池セルの製造方法。
[16]
前記電極タブおよび前記集電体は、前記電極体における負極の一部を構成している、[9]から[15]のいずれか1つに記載の電池セルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、バーリング加工を集電体側から電極タブに向かって行なうことによって、電極タブにおける集電体とは反対側の表面にバーリング加工の影響を受けて変形し易い部分を配置することができる。これにより、電極タブの金属箔の変形を視認して、変形に伴う金属箔の密着状態を確認することができるため、積層した金属箔が密着した領域を狙って電極タブ側からレーザ溶接することができる。その結果、レーザ溶接部におけるボイドまたはスパッタの発生を抑制して、良好なレーザ溶接部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す斜視図である。
【
図2】本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】本技術の実施の形態1に係る電極体の構成を示す斜視図である。
【
図4】本技術の実施の形態1に係る電池セルの接合部を示す模式図である。
【
図5】
図4の接合部をV-V線矢印方向から見た断面図である。
【
図6】本技術の実施の形態1に係る電極タブにおけるバーリング加工部周辺を示す断面図である。
【
図7】電極タブにおけるバーリング加工部の外形線周辺を示す模式図である。
【
図8】本技術の実施の形態1に係る電池セルの製造方法を示すフロー図である。
【
図9】電極体に集電体を配置する状態を示す斜視図である。
【
図10】電極タブにバーリング加工部が形成される状態を示す断面図である。
【
図11】電極タブにレーザが照射されている状態を示す斜視図である。
【
図12】集電体と封口板とが接続された状態を示す斜視図である。
【
図13】ケース本体に電極体が挿入される状態を示す斜視図である。
【
図14】比較例に係る電池セルにおける電極タブと集電体との接合部を示す模式図である。
【
図15】本技術の実施の形態2に係る電極タブにおけるバーリング加工部周辺を示す断面図である。
【
図16】本技術の実施の形態3に係る電池セルの接合部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0013】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0014】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0015】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0016】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池およびナトリウムイオン電池などの他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。
【0017】
本明細書において、「電池セル」は必ずしも角形のものに限定されず、円筒型など、他の形状のセルも含み得る。
【0018】
また、「電池セル」は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、および電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などに搭載可能である。ただし、「電池セル」の用途は、車載用に限定されるものではない。
【0019】
なお、図面においては、電池セルの正極端子および負極端子が並ぶ方向をX方向、複数の電池セルが積層される方向をY方向、電池セルの高さ方向をZ方向とする。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す斜視図である。
図1に示すように、電池セル100は、角形形状を有する。電池セル100は、電極端子110と、ケース120(外装缶)とを有する。すなわち、電池セル100は角形二次電池セルである。
【0021】
電極端子110は、ケース120上に形成されている。電極端子110は、X方向に沿って並ぶ正極端子111および負極端子112を有する。正極端子111および負極端子112は、X方向において、互いに離れて設けられている。
【0022】
ケース120は、直方体形状を有し、電池セル100の外観をなす。ケース120は、開口を有するケース本体120Aと、ケース本体120Aの開口を封止する封口板120Bとを含む。封口板120Bは、溶接によりケース本体120Aに接合される。
【0023】
ケース120は、上面121と、下面122と、第1側面123と、第2側面124と、2つの第3側面125とを有する。
【0024】
上面121は、Z方向に直交する平面である。上面121には、電極端子110が配置されている。本実施の形態における上面121は、封口板120Bに相当する。下面122は、Z方向において上面121に対向している。
【0025】
第1側面123および第2側面124の各々は、Y方向に直交する平面からなる。第1側面123および第2側面124の各々は、ケース120が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面123および第2側面124の各々は、Y方向から見て、X方向が長手方向となり、Z方向が短手方向となる矩形形状を有する。2つの第3側面125は、X方向に並んで互いに対向している。2つの第3側面125は、第1側面123および第2側面124をX方向の端部において接続している。
【0026】
複数の電池セル100を直列接続する場合、複数の電池セル100は、Y方向に隣り合う電池セル100,100の間において、第1側面123どうし、第2側面124どうしが向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル100が積層されるY方向において、正極端子111と負極端子112とが交互に並ぶ。
【0027】
図2は、本技術の実施の形態1に係る電池セルの構成を示す分解斜視図である。
図2に示すように、電池セル100において、ケース120の内部には、電極体130と、集電体140と、電極体ホルダ150と、電解液(不図示)とが収容される。
【0028】
電極端子110は、樹脂製の絶縁部材(不図示)を介して封口板120Bに固定されている。電極体130には、封口板120B側に電極タブ131である正極タブ132および負極タブ133が形成されている。集電体140は、正極タブ132および負極タブ133に接合される。
【0029】
集電体140は、正極集電体141と、負極集電体142とを含む。正極集電体141は、正極端子111に接続されている。正極集電体141は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金により構成されている。負極集電体142は、負極端子112に接続されている。負極集電体142は、たとえば銅または銅合金により構成されている。集電体140の厚みは、たとえば0.8mmである。
【0030】
電極端子110および電極体130は、集電体140を介して電気的に接続される。具体的には、正極タブ132は、接合部1Aにおいて正極集電体141と接合される。これにより、正極端子111および正極タブ132が正極集電体141を介して電気的に接続される。負極タブ133は、接合部1Bにおいて負極集電体142と接合される。これにより、負極端子112および負極タブ133が負極集電体142を介して電気的に接続される。
【0031】
電極体ホルダ150は、絶縁性を有するシートである。電極体ホルダ150は、電極体130の周囲を覆う。電極体ホルダ150は、ケース本体120Aと電極体130との間に位置してケース120および電極体130を絶縁しつつ、電極体130を保持する。
【0032】
図3は、本技術の実施の形態1に係る電極体の構成を示す斜視図である。
図3に示すように、本実施の形態における電極体130は巻回型である。なお、本実施の形態においては、1つの電極体130がケース120に収容されているが、複数の電極体がケース120に収容される構成であってもよい。また、電極体130は、巻回型に限定されるものではなく、積層型(スタック型)であってもよい。
【0033】
電極体130は、正極、負極およびセパレータを含む。正極を構成する基材は、たとえばアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。負極を構成する基材は、たとえば銅箔または銅合金箔である。
【0034】
正極、負極およびセパレータは、いずれも帯状のシートである。正極と負極との間にセパレータが挟まれる。正極、負極およびセパレータの積層体が巻き回されることにより電極体130が形成される。電極体130は、巻回後に扁平状に成形されていてもよい。
【0035】
電極タブ131である負極タブ133は、正極、負極およびセパレータの積層体が巻き回され、負極の帯状シートのうちのZ方向の上方に延在した部分が積層するように配置されることにより形成される。これにより、負極タブ133は、金属箔の積層構造を有する。負極タブ133は、たとえば50層の金属箔が積層されることにより構成される。1枚の金属箔の厚みは、たとえば8μmである。正極タブ132においても、負極タブ133と同様に正極の帯状シートの一部により形成される。
【0036】
なお、正極タブ132および負極タブ133は、Z方向において電極体130の封口板120B側に配置されているが、正極タブ132および負極タブ133の配置はこれに限定されない。正極タブおよび負極タブは、電極体のX方向の両側に分かれて形成されていてもよい。この場合、電極体の巻き回される軸はX方向に沿う。
【0037】
次に、電極タブ131と集電体140との接合部の構造について説明する。なお、以下の説明では負極タブ133と負極集電体142との接合部1Bについて述べるが、正極タブ132と正極集電体141との接合部1Aについても、接合部1Bと同様の構造を適用し得る。
【0038】
図4は、本技術の実施の形態1に係る電池セルの接合部を示す模式図である。
図5は、
図4の接合部をV-V線矢印方向から見た断面図である。
図6は、本技術の実施の形態1に係る電極タブにおけるバーリング加工部周辺を示す断面図である。
図7は、電極タブにおけるバーリング加工部の外形線周辺を示す模式図である。
【0039】
図4~
図7に示すように、接合部1Bは、バーリング加工部10と、レーザ溶接部20とを含む。
【0040】
バーリング加工部10は、電極タブ131および集電体140のうちの少なくとも集電体140に形成される。本実施の形態におけるバーリング加工部10は、負極タブ133と負極集電体142とを重ねた状態で負極集電体142に形成される。なお、レーザ溶接部20が形成される前の状態においては、バーリング加工部10は、負極タブ133および負極集電体142の両方に形成される。バーリング加工部10は、負極タブ133を構成する金属箔の積層方向に沿って形成される。
【0041】
バーリング加工部10は、負極集電体142から負極タブ133に向かうにしたがって金属箔の積層方向に直交する方向の幅が狭い。すなわち、バーリング加工部10は、テーパ形状を有している。本実施の形態におけるバーリング加工部10は、略円錐形状を有している。本実施の形態におけるバーリング加工部10の先端角度は、たとえば40°である。
【0042】
バーリング加工時に発生するカエリ(バリ)により、金属箔どうしが密着状態になりやすく、金属箔の積層構造を1つに束ねることができる。この点、金属箔の積層構造を圧縮して金属箔を潰す圧縮加工では、金属箔を束ねることが難しく、金属箔どうしの間に隙間ができる可能性がある。金属箔どうしの隙間を確実に避けるためには、相当大きな圧縮荷重が必要とされる。これに対し、本実施の形態に係る電池セル100においては、圧縮加工に代えてバーリング加工(穴あけ加工)を採用しているため、圧縮加工と比較して相対的に小さな荷重で金属箔どうしの密着構造を得ることができる。
【0043】
さらに、バーリング加工により、金属箔の酸化皮膜を除去した上で1つに束ねることが可能である。金属箔を1つに束ねることにより、レーザ溶接時の熱歪(金属箔の伸び、たわみ)の影響を抑えることができる。仮溶接により金属箔を束ねる場合、金属箔に熱歪が生じるのに対し、バーリング加工において熱歪は生じない。
【0044】
バーリング加工部10には、頂点11と、外形線12とが規定される。なお、頂点11および外形線12は、実在する場合もあり得るし、仮想的に規定される場合もあり得る。
【0045】
頂点11は、加工形状により規定される。頂点11は、バーリング加工部10の先端部分である。
図5および
図6に示すように、本実施の形態においては、バーリング加工部10が形成された後に、レーザ溶接部20が積層方向においてバーリング加工部10と重なるように形成されるため、頂点11は仮想的に規定される。頂点11は、バーリング加工部10の錐台部分から先端側に仮想線を引き、仮想線の交点を頂点11と規定する。
【0046】
なお、
図6に示すように、レーザ溶接部20が形成される際、レーザ溶接によって溶融した負極タブ133または負極集電体142がバーリング加工部10の内部空間に入り込むことによって、レーザ溶接部20が負極集電体142側に落ち込む場合がある。これにより、電極タブ131における集電体140とは反対側のタブ表面134のうち、レーザ溶接部20と積層方向に並ぶ溶接部上のタブ表面134aに対して、頂点11が溶接部上のタブ表面134aを上方に超えて規定される場合がある。
【0047】
図5~
図7に示すように、外形線12は、負極集電体142における負極タブ133とは反対側の表面143に位置する。
図4および
図5に示すように、バーリング加工部10を模式的に示した場合、外形線12は、負極集電体142の表面143におけるバーリング加工部10の加工痕の縁に相当する。
【0048】
図6および
図7に示すように、本実施の形態のバーリング加工部10は、バーリング加工時に負極集電体142がバーリング加工部10の先端部分に向かって変形するため、バーリング加工部10の円錐形状と表面143との境界が湾曲する。この場合、
図7に示すように、外形線12は、表面143に沿う平面直線16とバーリング加工部10の円錐形状の延長線17との交点を周方向に連続的に結ぶことによって仮想的に規定される。
【0049】
図5に示すように、負極タブ133におけるバーリング加工部10は、金属箔の積層方向における負極タブ133の総厚みT1の70%以上の深さDで構成されている。バーリング加工部10の深さDとは、金属箔の積層方向における負極タブ133の負極集電体142側の端面から頂点11までの距離である。負極タブ133の総厚みT1とは、バーリング加工部10およびレーザ溶接部20の加工後であって、これらの加工の影響のない金属箔が密着して積層された位置における積層方向の厚みである。
【0050】
負極集電体142の負極タブ133側の表面形状がバーリング加工またはレーザ溶接の程度によって不明瞭になり、金属箔の積層方向における負極タブ133の負極集電体142側の端面の位置を判別しにくい場合がある。この場合において、バーリング加工部10の総深さDtが、金属箔の積層方向における負極集電体142の表面143から頂点11までの距離により規定される。このとき、バーリング加工部10の深さDは、バーリング加工部10の総深さDtから負極集電体142におけるバーリング加工の影響のない部分の厚みT2を引くことにより算出されてもよい。
【0051】
負極タブ133が50層の金属箔で構成されている場合、バーリング加工部10の深さDは、負極タブ133の総厚みT1の90%以上の深さで構成されていることが望ましい。これにより、負極タブ133の金属箔同士を十分に密着させることができる。
【0052】
バーリング加工部10の深さDの測定方法としては、たとえば接合部1Bを金属箔の積層方向に直交しつつ頂点11を通る断面で切断し、金属顕微鏡などにより断面観察を行なうことによって測定することができる。
【0053】
レーザ溶接部20は、負極タブ133と負極集電体142とを接合する。レーザ溶接部20は、金属箔の積層方向に並ぶ負極タブ133および負極集電体142のうちの負極タブ133側に負極タブ133と負極集電体142とを接合するように形成されている。
【0054】
図4および
図5に示すように、レーザ溶接部20は、金属箔の積層方向から見て、少なくとも外形線12より内側の全域に形成されている。本実施の形態におけるレーザ溶接部20は、金属箔の積層方向から見て、外形線12より内側の全域および外形線12の外側5mm(L1)以下の範囲に形成されている。このように、負極タブ133と負極集電体142とは、接合部1Bにおけるバーリング加工部10とレーザ溶接部20とにより構成される接合領域4の範囲内で接合される。
【0055】
なお、レーザ溶接部20の形状は金属箔の積層方向から見て円形状であるが、これに限定されず、楕円形状または四角形状などの形状を有していてもよい。また、バーリング加工部10の円錐形状には、円錐形状と円柱形状とが積層方向に並んで組み合わされた形状を含む。
【0056】
図6に示すように、負極タブ133は、第1領域30と、第2領域31とを有する。第1領域30は、バーリング加工部10の加工によって形成される。第1領域30は、バーリング加工による撓みが金属箔に発生することによって、積層された金属箔同士の間に隙間を有する領域である。第1領域30は、バーリング加工部10の頂点11を中心に負極集電体142とは反対側に突出している。
【0057】
第2領域31は、積層方向に直交する方向において第1領域30の周りに位置し、積層方向に直交する方向において略平面を構成している。第2領域31は、積層された金属箔同士の間に隙間がない、または隙間が極小化されることによって、金属箔同士が密着した領域である。
【0058】
レーザ溶接部20は、少なくとも第2領域31に位置している。本実施の形態においては、レーザ溶接部20は、第1領域30の一部と第2領域31とに位置している。第1領域30は、第1領域30周辺の第2領域31がレーザ溶接されることにより、第2領域31の熱が第1領域30に伝播して第1領域30が溶融することによって、消失する場合がある。
【0059】
上述したように、負極タブ133および負極集電体142がバーリング加工部10およびレーザ溶接部20によって接合されることにより、負極タブ133および負極集電体142が電極体130における負極の一部を構成している。負極に存在する銅は、スパッタなどの異物として電池セル100内に存在すると電池セル100の電圧不良の原因となる。したがって、負極において銅のスパッタの発生が抑制されると電池セル100の電圧不良が抑制される。
【0060】
以下、本技術の実施の形態1に係る電池セルの製造方法について説明する。
図8は、本技術の実施の形態1に係る電池セルの製造方法を示すフロー図である。
図9は、電極体に集電体を配置する状態を示す斜視図である。
図10は、電極タブにバーリング加工部が形成される状態を示す断面図である。
図11は、電極タブにレーザが照射されている状態を示す斜視図である。
図12は、集電体と封口板とが接続された状態を示す斜視図である。
図13は、ケース本体に電極体が挿入される状態を示す斜視図である。なお、
図10および
図11においては、負極タブ133にバーリング加工またはレーザ溶接を施す場合を示すが、正極タブ132についても同様の加工を適用し得る。また、
図13においては、発明の理解を容易にするため、ケース120を透視して示す。
【0061】
本実施の形態に係る電池セル100の製造方法としては、まず、
図8および
図9に示すように、金属箔の積層構造を有する電極タブ131を含む電極体130を作製する(S10工程)。次に、電極タブ131上に集電体140を配置する(S21工程)。
【0062】
次に、
図8および
図10に示すように、金属箔の積層方向に並ぶ負極タブ133および負極集電体142のうちの負極集電体142側から負極タブ133と負極集電体142とにバーリング加工を施す(S22工程)。バーリング加工は、バーリングピン2により、積層方向から見て、円錐形状に施される。バーリングピン2の先端が尖っているため、バーリングピン2は加工後に負極タブ133から引き抜きやすい。
【0063】
図10に示すように、負極タブ133は、撓み部33を有する。撓み部33は、負極タブ133の負極集電体142とは反対側に金属箔が撓んで波打った部分である。撓み部33は、バーリング加工部10の加工によって、バーリング加工部10を中心として金属箔が積層方向に直交する方向に押し広げられることにより形成される。撓み部33は、積層された金属箔同士の間に隙間を有する。
【0064】
積層方向に直交する方向における撓み部33の周囲に位置する領域は、略平面を構成している。撓み部33の周囲に位置する領域は、積層された金属箔同士の間に隙間がない、または隙間が極小化されることによって、金属箔同士が密着した領域である。
【0065】
次に、
図8、
図10および
図11に示すように、金属箔の積層方向に並ぶ電極タブ131および集電体140のうちの電極タブ131側から電極タブ131と集電体140とにレーザ溶接を施す(S23工程)。なお、レーザ溶接部20を形成するレーザ21のレーザビーム径およびその照射回数は、適宜変更することができる。次に、
図12に示すように、集電体140と封口板120Bとが接続される。
【0066】
次に、
図8および
図13に示すように、電極体130および集電体140をケース本体120Aに収容する(S31工程)。最後に、電極体130および集電体140を収容したケース本体120Aを封口板120Bにより封止する(S32工程)。上述の製造工程によって、
図1に示す電池セル100が製造される。
【0067】
ここで、比較例に係る電池セルの電極タブと集電体との接合について説明する。
図14は、比較例に係る電池セルにおける電極タブと集電体との接合部を示す模式図である。なお、
図14においては、レーザ溶接部が形成される途中の状態を示している。
【0068】
図14に示すように、比較例に係る電池セルの接合部9においては、電極タブ931の撓み部93にレーザ溶接が施される。撓み部93を基点としてレーザ溶接部90が形成される。
【0069】
レーザ溶接部90が形成される際、撓み部93周辺における電極タブ931は、金属箔同士の間に隙間が生ずる。隙間が生じた状態の電極タブ931にレーザ21が照射されると、空気などを巻き込みながら溶接されやすくなるため、スパッタ91またはボイド92が生ずる。このため、比較例における電極タブ931と集電体940との接合においては、接合不良が発生しやすい。
【0070】
一方、
図10に示すように、本技術の実施の形態1に係る電池セル100における電極タブ131および集電体140の接合においては、バーリング加工により発生する撓み部33以外の部分においてレーザ溶接することによって、空気などを巻き込みながら溶接されることが抑制される。このため、スパッタまたはボイドの発生を抑制することによって、電極タブ131と集電体140との接合不良が抑制される。
【0071】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、バーリング加工を集電体140側から電極タブ131に向かって行なうことによって、電極タブ131における集電体140とは反対側のタブ表面134にバーリング加工の影響を受けて変形し易い部分を配置することができる。これにより、金属箔の変形を視認して、変形に伴う金属箔の密着状態を確認することができるため、積層した金属箔が密着した領域を狙って電極タブ131側からレーザ溶接することができる。その結果、レーザ溶接部20におけるボイドまたはスパッタの発生を抑制して、良好なレーザ溶接部20を形成することができる。
【0072】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、金属箔の積層方向から見て、レーザ溶接部20が少なくともバーリング加工部10の外形線12より内側の全域に形成されることによって、最低限のレーザ溶接領域を確保しつつ、電極タブ131と集電体140との接合範囲を小さくすることができる。その結果、電池セル100を小型化することができる。
【0073】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、金属箔の積層方向から見て、レーザ溶接部20がバーリング加工部10の外形線12より内側の全域および外形線12の外側5mm(L1)以下の範囲に形成されていることによって、レーザ溶接部20が外形線12より内側の全域のみに形成される場合と比較して、レーザ溶接部20の範囲を広くすることができるため、電極タブ131と集電体140とを強固に接合することができる。
【0074】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、バーリング加工部10の深さDを電極タブ131の総厚みT1の70%以上の深さで構成することによって、電極タブ131の金属箔を変形しやすくすることができる。これにより、バーリング加工後に電極タブ131の金属箔が密着した領域を視認しやすくすることができる。
【0075】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、バーリング加工を集電体140側から電極タブ131に向かって行なうことによって、タブ表面134における積層された金属箔同士の間に隙間を有する第1領域30を視認することができる。これにより、電極タブ131において金属箔の密着した第2領域31を溶接できるため、電極タブ131と集電体140との溶接不良を低減することができる。
【0076】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、バーリング加工部10を略円錐形状にすることによって、外形線12に外接する正方形状の外形線を有する略正四角錐形状のバーリング加工部の場合と比較して、バーリング加工部10の加工範囲を小さくすることができるため、電極タブ131の金属箔の変形を少なくして電極タブ131に対するバーリング加工の影響を少なくすることができる。
【0077】
本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法においては、バーリング加工を集電体140側から電極タブ131に向かって行ない、かつ電極タブ131側からレーザ溶接する構成を負極に適用することによって、負極における銅のスパッタなどの異物の発生を抑制することができる。その結果、電池セル100の電圧不良を抑制することができる。
【0078】
(実施の形態2)
以下、本技術の実施の形態2に係る電池セルおよびその製造方法について説明する。本技術の実施の形態2に係る電池セルおよびその製造方法は、接合部の構成が本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法と異なるため、本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0079】
図15は、本技術の実施の形態2に係る電極タブにおけるバーリング加工部周辺を示す断面図である。
図15に示すように、実施の形態2に係る接合部1Cにおけるレーザ溶接部20Cは、電極タブ131の金属箔の積層方向から見て、バーリング加工部10Cの外形線12Cの外側以上かつ外形線12Cより外側5mm(L2)以下の範囲で形成される。レーザ溶接部20Cは、撓み部33Cを避けて形成される。
【0080】
本技術の実施の形態2に係る電池セルおよびその製造方法においては、バーリング加工を集電体140側から電極タブ131に向かって行なうことによって、電極タブ131における集電体140とは反対側の表面にバーリング加工の影響を受けて変形し易い部分(撓み部33C)を配置することができる。これにより、金属箔の変形を視認して、変形に伴う金属箔の密着状態を確認することができるため、積層した金属箔が密着した領域を狙って電極タブ131側からレーザ溶接することができる。その結果、撓み部33Cをレーザ溶接の入熱により溶融させることなく、レーザ溶接部20Cにおけるボイドまたはスパッタの発生を抑制して、良好なレーザ溶接部20Cを形成することができる。
【0081】
(実施の形態3)
以下、本技術の実施の形態3に係る電池セルおよびその製造方法について説明する。本技術の実施の形態3に係る電池セルおよびその製造方法は、バーリング加工部の構成が本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法と異なるため、本技術の実施の形態1に係る電池セル100およびその製造方法と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0082】
図16は、本技術の実施の形態3に係る電池セルの接合部を示す上面図である。
図16に示すように、本技術の実施の形態3に係る電池セルが備える電極タブ131Dと集電体140Dとは、接合部1Dにおいて接合される。接合部1Dにおけるバーリング加工部10Dは、略正四角錐状を有している。
【0083】
レーザ溶接部20Dは、電極タブ131Dの金属箔の積層方向から見て、外形線12Dより内側の全域および外形線12Dの外側5mm(L3)以下の範囲に形成されている。電極タブ131Dと集電体140とは、接合部1Dにおけるバーリング加工部10Dとレーザ溶接部20Dとにより構成される接合領域4の範囲内で接合される。
【0084】
本技術の実施の形態3に係る電池セルおよびその製造方法においては、バーリング加工部10Dを正四角錐形状にすることによって、バーリング加工部10Dにおける外形線12Dの内接円で構成される円錐形状のバーリング加工部の場合と比較して、バーリング加工部10Dの加工範囲を広くすることができるため、電極タブ131Dにおける金属箔の密着した範囲を広くすることができる。その結果、電極タブ131Dにおけるレーザの照射範囲を確保しやすくすることができる。
【0085】
なお、上述した各実施の形態におけるバーリング加工部は、正極タブまたは負極タブのいずれか1つに対して1つのみ設けられているが、この構成に限定されない。バーリング加工部は、正極タブまたは負極タブのいずれか1つに対して複数設けられていてもよい。
【0086】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1A,1B,1C,1D,9 接合部、2 バーリングピン、4 接合領域、10,10C,10D バーリング加工部、11 頂点、12,12C,12D 外形線、16 平面直線、17 延長線、20,20C,20D,90 レーザ溶接部、21 レーザ、30 第1領域、31 第2領域、33,33C,93 撓み部、91 スパッタ、92 ボイド、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 ケース、120A ケース本体、120B 封口板、121 上面、122 下面、123 第1側面、124 第2側面、125 第3側面、130 電極体、131,131D,931 電極タブ、132 正極タブ、133 負極タブ、134 タブ表面、134a 溶接部上のタブ表面、140,140D,940 集電体、141 正極集電体、142 負極集電体、143 表面、150 電極体ホルダ。