(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053889
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
B05B 3/00 20060101AFI20240409BHJP
B05B 15/60 20180101ALI20240409BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20240409BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B05B3/00
B05B15/60
B05B17/00 101
B05B7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160378
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】515261446
【氏名又は名称】株式会社三和技巧
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】梅林 勲
【テーマコード(参考)】
4D073
4D074
4F033
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB01
4D073BB03
4D073CB03
4D073CB06
4D073CB16
4D074AA01
4D074BB05
4D074CC03
4D074FF14
4F033PA11
4F033PB31
4F033PB41
4F033PD01
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD13
4F033QE06
4F033QE21
(57)【要約】
【課題】作業者がスプレーガンを持って行う塗装の範囲より広い範囲の塗装を行うことが可能な塗装装置を提供する。
【解決手段】トリガ11が動かされて塗料Pを噴霧するスプレーガン12を有する塗装装置10であって、スプレーガン12が取り付けられた手押し車13と、手押し車13に固定され、トリガ11に力を作用させてトリガ11を動かす力付与手段34と、手動操作がなされて、力付与手段34をトリガ11に力を作用させる状態にする操作手段33とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガが動かされて塗料を噴霧するスプレーガンを有する塗装装置であって、
前記スプレーガンが取り付けられた手押し車と、
前記手押し車に固定され、前記トリガに力を作用させて該トリガを動かす力付与手段と、
手動操作がなされて、前記力付与手段を前記トリガに力を作用させる状態にする操作手段とを備えることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗装装置において、前記力付与手段は、エアシリンダであり、前記操作手段は、手動操作がなされて、空気供給手段から与えられる空気を前記力付与手段に供給して該力付与手段を作動させることを特徴とする塗装装置。
【請求項3】
請求項2記載の塗装装置において、前記空気供給手段からの空気は、前記スプレーガンにも与えられ、該スプレーガンによる前記塗料の霧状化に用いられることを特徴とする塗装装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塗装装置において、前記操作手段は、ブローガンであることを特徴とする塗装装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塗装装置において、前記手押し車は、間隔を空けて配された複数のフリーローラを有することを特徴とする塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を霧状にして吹き付ける塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物や各種設備の劣化の抑制や雨漏りの防止等を目的とした塗装には、圧縮空気により塗料を霧状にして対象物に塗布するスプレーガンが用いられる(特許文献1、2参照)。老朽化した屋根に対してポリウレアやポリウレタン等の層を設けて屋根を補修する場合、作業者は屋根上に設置した足場板に載った状態でスプレーガンのトリガを操作して塗布作業を行う。作業者が足場板上で作業を行うのは、従業員が老朽化した屋根を直接踏むことによって屋根が破損するのを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-084097号公報
【特許文献2】特開2017-217578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場板上から塗装を行えるのは足場板周辺の限定的な領域であることから、屋根全体の塗装を行うには、足場板を幾度となく移動させる必要があるという問題があった。この問題の解決のために、自走式の塗布装置をリモートで操作して屋根を塗布することが考えられるが、作業者がスプレーガンを用いて行う塗装と同レベルの仕上がりの塗装を行える装置は製造コストが高く経済的ではない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、作業者がスプレーガンを持って行う塗装の範囲より広い範囲の塗装を行うことが可能な塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る塗装装置は、トリガが動かされて塗料を噴霧するスプレーガンを有する塗装装置であって、前記スプレーガンが取り付けられた手押し車と、前記手押し車に固定され、前記トリガに力を作用させて該トリガを動かす力付与手段と、手動操作がなされて、前記力付与手段を前記トリガに力を作用させる状態にする操作手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る塗装装置は、スプレーガンが取り付けられた手押し車と、手押し車に固定され、トリガに力を作用させてトリガを動かす力付与手段と、手動操作がなされて、力付与手段をトリガに力を作用させる状態にする操作手段とを備えるので、作業者は、作業者がスプレーガンを持って行う塗装の範囲より遠い箇所の塗装、ひいては、より広い範囲の塗装を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装装置の一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る塗装装置10は、トリガ11が動かされて塗料Pを噴霧するスプレーガン12を有する装置であって、スプレーガン12が取り付けられた手押し車13を備えている。
【0010】
本実施の形態において、手押し車13は、
図1、
図2、
図3に示すように、一側に把持部を有し、該把持部が作業者によって持たれて略水平に配される棒材14(以下、棒材14が略水平に配されているものとして説明する)、棒材14の他側端部に連結され、略水平に配される枠体15、枠体15の下側に連結された複数の棒状の立設材16の下端部に固定された枠体17及び枠体17に取り付けられた2つのフリーローラ18、19を具備している。
【0011】
フリーローラ18、19は、平面視して、棒材14の把持部から距離を有する位置に、相互に間隔を空けて配されている。本実施の形態では、フリーローラ18、19がそれぞれ固定キャスターの車輪であるが、これに限定されず、例えば、自在キャスターの車輪であってもよいし、オムニホイルであってもよい。本実施の形態では、フリーローラ18、19の間隔が一般的なスレート屋根の溝の間隔又はその倍数となるように調整されている。
塗装装置10において、枠体15側を前側、棒材14の把持部側を後側として、フリーローラ18、19は塗装対象W上を前向き及び後向きに転動可能に設けられている。
【0012】
枠体15の内側には、
図3に示すように、棒材14の延長線に沿って直列に配された棒材20、21及び棒材20、21に対して垂直に配された棒材22、23が、平面視して、十字状に配置されるように固定されている。本実施の形態では、棒材14、枠体15、複数の立設材16、枠体17及び棒材20、21、22、23に、それぞれ中空の部材を採用して、手押し車13の軽量化が図られている。
【0013】
棒材20、21の端部が対向し、棒材22、23の端部が対向する仮想交点部には環状具24が取り付けられ、環状具24には、
図1に示すように、スプレーガン12の塗料Pを噴霧するヘッド部12aが、塗料Pを噴霧する向きを下向きにして嵌入している。スプレーガン12のヘッド部12a、即ち、スプレーガン12の塗料Pを噴霧する部分は、棒材14の把持部から前方に距離を有する位置に設けられている。
なお、本実施の形態では、スプレーガン12から噴霧される塗料Pが周囲に飛散するのを防止する図示しない透光性を有するカバー材が、噴霧される塗料Pを囲むように立設材16に取り付けられている。
【0014】
スプレーガン12は、
図1、
図3に示すように、人が直接持って塗装の噴霧ができる既製品であり、スプレーガン12を直接持って操作する際に人に持たれるハンドル部12bが、棒材21に固定された門状の支持体25によってクランプされている。従って、スプレーガン12はヘッド部12aを環状具24に嵌入した状態でハンドル部12bが支持体25によってクランプされて手押し車13に固定されている。なお、本実施の形態では、棒材14が角材である。
【0015】
スプレーガン12には、
図1、
図2に示すように、スプレーガン12に連結された管26を介して図示しないタンク内の塗料Pが図示しないポンプによって供給され、
図1、
図4に示すように、スプレーガン12に連結された管27を介して空気供給手段の一例であるエアコンプレッサ28から圧縮空気(以下、単に「空気」と言う)が送られる。なお、
図1、
図2では、スプレーガン12に塗料供給用として1本の管26のみを記載しているが、スプレーガン12から吹き出される塗料Pが2液混合タイプのポリウレアの場合、スプレーガン12には、ポリイソシアネートを送る管及びポリアミンを送る管の合計2本の塗料供給用の管が接続されるのは言うまでもない。
【0016】
スプレーガン12のトリガ11は、スプレーガン12のハンドル部12bの下側に回動可能に設けられた棒状の金属片であり、力を与えられていない状態で略水平に配される。スプレーガン12はトリガ11が回動されて傾斜状態になることによって、下向きに塗料Pを噴霧する。
スプレーガン12として、通常のエアスプレーガンの他、HVLP(High Volume Low Pressure)スプレーガンやLVMP(Low Volume Medium Pressure)スプレーガン等を採用可能である。なお、スプレーガン12は既製品ではなく、特別な設計がなされたものであってもよい。
【0017】
管27には、
図4に示すように、エアコンプレッサ28からスプレーガン12に向けて、エアフィルタ29及びレギュレータ30が順に設けられている。スプレーガン12にはレギュレータ30により圧力調整がなされた空気が与えられ、スプレーガン12に与えられた空気はスプレーガン12による塗料Pの霧状化に用いられる。
【0018】
棒材14の把持部の上側には、管27に接続された管32が連結された操作手段33が固定され、棒材21の上側には、
図1、
図3に示すように、力付与手段の一例であるエアシリンダ34が固定されている。エアシリンダ34はトリガ11の下部に接した状態でトリガ11に連結された昇降可能な可動部(本実施の形態では、ピストンロッド)35を有し、エアシリンダ34と操作手段33は、
図1、
図4に示すように、管36によって接続されている。
図1では、空気の流れに沿って管32の上流側端部が管27の下流側端部に接続しているように記載されているが、管32の上流側端部を、管27の下流側端部より上流側の領域に接続してもよいのは言うまでもない。
【0019】
操作手段33は、棒材14の把持部を持った作業者により操作手段33の手動操作がなされて、管27、32を経由してエアコンプレッサ28から操作手段33に送られる空気を管36経由でエアシリンダ34に供給する。本実施の形態では、図示しないスピードコントローラにより操作手段33からエアシリンダ34に送られる空気の流量調整がなされている。
【0020】
エアシリンダ34は、操作手段33経由でエアコンプレッサ28からの空気が供給されることによって可動部35が上昇して(エアシリンダ34が作動して)トリガ11に力を作用させ、トリガ11を回動させ(動かし)て傾斜させ、スプレーガン12に塗料Pを噴霧させる。従って、操作手段33は手動操作がなされてエアシリンダ34をトリガ11に力を作用させる状態にし、エアシリンダ34はトリガ11に力を作用させてトリガ11を動かす。
【0021】
また、可動部35の上昇(可動部35のエアチューブからの突出長が長くなること)により傾斜したトリガ11は可動部35に対し鉛直方向の力を作用させ、操作手段33から空気が送られなくなったエアシリンダ34は可動部35がトリガ11から与えられる力によって下降する(可動部35のエアチューブからの突出長が短くなる)。
そのため、作業者が操作手段33の手動操作を止めて操作手段33からエアシリンダ34に空気が送られなくなると、スプレーガン12は傾斜していたトリガ11が略水平となって塗料Pの噴霧を停止する。
【0022】
操作手段33として、ブローガンを採用することや、電磁弁及びその電磁弁の状態(エアシリンダ34に空気を送る状態及び送らない状態)を切り替えるスイッチ等の操作部を有するユニットを採用することができる。
操作手段33にブローガンを採用する場合、作業者はブローガンのレバーを手で回動させた状態にすることによって、スプレーガン12から塗料Pを噴霧させることができ、ブローガンのレバーの回動状態を解放することによって、スプレーガン12からの塗料Pの噴霧を停止させることができる。
【0023】
次に、塗装装置10を利用した塗布作業の一例について説明する。
作業者は、塗装対象W(ここでは平坦な屋上)に置かれた足場板上に立って、棒材14の把持部を持ち、スプレーガン12の下方に塗装対象Wの一の領域が配されるように手押し車13を配置する。その後、作業者は手押し車13を停止させた状態で操作手段33を手動で操作し、スプレーガン12から塗料Pを噴霧させる。
【0024】
塗装対象Wの一の領域への塗装を一定時間行った後、作業者は、操作手段33を操作して、スプレーガン12からの塗料Pの噴霧を停止させ、足場板上に立った状態で、塗装対象Wの別の領域への塗装を行うべく、手押し車13を移動させる。
ここで、鉛直状態及び水平状態にできる長尺の支持材を棒材14に回動可能に取り付けてもよい。支持材は、鉛直状態で下部が塗装対象Wに当接する長さであり、鉛直状態となって、棒材14を略水平に保つことができる。そのため、作業者は、塗料Pを噴霧中、棒材14をしっかりと支える必要がない。また、支持材を略水平にすれば、支持材が作業者による手押し車13の移動を妨げることを回避できる。
【0025】
本実施の形態では、棒材14の一側端部からスプレーガン12のヘッド部12aまでの距離が1m以上、好ましくは1m50cm以上である。そのため、足場板に載った作業者は、スプレーガン12を直接持って塗装対象Wに塗装作業を行うのに比べて、足場板から離れた箇所への塗装を行うこと、ひいては広い領域の塗装を行うことができる。
また、棒材14の一側端部からスプレーガン12のヘッド部12aまでの距離は、3m以下が好ましく、より好ましくは2m以下である。このように棒材14の上限を設定することによって、足場板に近い塗装対象Wの領域の塗布も可能であり、かつ、塗装装置10を容易に移動させることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、力付与手段はエアシリンダでなくてもよく、電動シリンダ等を力付与手段として採用することが可能である。力付与手段を手押し車に固定する必要はなく、スプレーガンに固定具を用いて力付与手段を固定するようにしてもよい。
【0027】
また、力付与手段がエアシリンダの場合、力付与手段に空気を与える空気供給手段とは別の空気供給手段を用いてスプレーガンに空気を与えてもよい。上述した実施の形態では、エアシリンダの可動部(即ち、ロッド)のシリンダチューブからの突出長が長くなることによって、スプレーガンが塗料を噴霧するが、可動部のシリンダチューブからの突出長が短くなることによって、スプレーガンが塗料を噴霧し、可動部のシリンダチューブからの突出長が長くなることによって、スプレーガンが塗料の噴霧を停止するように、エアシリンダ等の配置を調整してもよい。
更に、スプレーガンは、斜め下に向けて塗料を噴霧するように、手押し車に取り付けても良い。スプレーガンのトリガは棒状のものでなくても良く、例えば、ボタン式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
10:塗装装置、11:トリガ、12:スプレーガン、12a:ヘッド部、12b:ハンドル部、13:手押し車、14:棒材、15:枠体、16:立設材、17:枠体、18、19:フリーローラ、20、21、22、23:棒材、24:環状具、25:支持体、26、27:管、28:エアコンプレッサ、29:エアフィルタ、30:レギュレータ、32:管、33:操作手段、34:エアシリンダ、35:可動部、36:管、P:塗料、W:塗装対象