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特開2024-539電気駆動アセンブリシステム、車両、および電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000539
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電気駆動アセンブリシステム、車両、および電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20231225BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20231225BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/33
H02K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100311
(22)【出願日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】202210698418.9
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522447473
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】トン、シアオシュエ
(72)【発明者】
【氏名】チン、イェーチン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ、ピンホン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、シン-アン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シュー
(72)【発明者】
【氏名】スン、レイ
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB10
5H605CC02
5H605CC06
5H605CC10
5H605DD09
5H605DD13
5H605EC01
5H605EC08
5H605GG04
5H605GG06
5H605GG18
5H611AA09
5H611BB04
5H611TT01
5H611UA04
5H615AA01
5H615BB05
5H615PP28
5H615SS09
5H615SS19
5H615SS20
5H615SS44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気駆動アセンブリシステム、電気駆動アセンブリシステムを備える車両、および電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法を提供する。
【解決手段】電気駆動アセンブリシステムは、本体11とカバーとを備えるハウジング1と、前記ハウジングに配置された以下のものと、を備え、前記以下のものとは、ロータシャフトを備える電気機械2と、前記ロータシャフトに接続するとともにこれに対して同軸に配置されて前記電気機械からのトルクを受けるギア入力シャフト21を備えるギアボックスアセンブリ3と、前記電気機械を制御するように構成された電気機械制御モジュール4であって、前記電気機械および/または前記ギアボックスアセンブリに、前記ギア入力シャフトに対して横方向に重ね合わされた電気機械制御モジュールと、前記電気機械制御モジュールを前記電気機械のステータに電気的に接続するように構成された電気接続アセンブリと、である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(11)とカバーとを備えるハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)に配置された以下のものと、
を備える電気駆動アセンブリシステムであって、
前記以下のものとは、
ロータシャフトを備える電気機械(2)と、
前記ロータシャフトに接続するとともにこれに対して同軸に配置されて前記電気機械からのトルクを受けるギア入力シャフト(21)を備えるギアボックスアセンブリ(3)と、
前記電気機械(2)を制御するように構成された電気機械制御モジュール(4)であって、前記電気機械(2)および/または前記ギアボックスアセンブリ(3)に、前記ギア入力シャフト(21)に対して横方向に重ね合わされた電気機械制御モジュール(4)と、
前記電気機械制御モジュール(4)を前記電気機械(2)のステータ(22)に電気的に接続するように構成された電気接続アセンブリ(5)と、
である電気駆動アセンブリシステムにおいて、
前記電気接続アセンブリ(5)は、前記電気機械(2)の前記ステータ(22)に、前記電気機械の前記ロータシャフトの駆動端部付近で電気的に接続するように構成され、
前記ハウジング(1)の前記本体(11)は、少なくとも1つの開口を、前記ロータシャフトの前記駆動端部から突出する側壁(10)において設けられ、前記電気接続アセンブリ(5)は、前記開口を貫通する、
ことを特徴とする電気駆動アセンブリシステム。
【請求項2】
前記電気接続アセンブリ(5)は、複数のバスバー(51)と射出成形部材(52)とシール部材(53)とを備え、前記射出成形部材(52)は、前記バスバー(51)に配置されるとともに前記開口を閉鎖し、前記シール部材(53)は、前記射出成形部材と前記側壁(10)との間に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項3】
前記射出成形部材(52)は、複数の前記バスバー(51)に、射出成形により形成される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項4】
前記バスバー(51)は、前記開口を貫通するとともに、前記ステータ(22)に接続する第1部分(511)と前記電気機械制御モジュール(4)に接続する第2部分(512)とを備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項5】
前記カバーは、ギアボックスカバー(12)と電気機械カバー(13)と制御モジュールカバー(14)とを備え、
前記第1部分(511)は、前記ギアボックスカバー(12)および前記ハウジング(1)の前記本体(11)により規定された第1収容スペースに位置するとともに、少なくとも部分的に前記ギア入力シャフト(21)に対して横方向に延び、
前記第2部分(512)は、前記制御モジュールカバー(14)および前記ハウジング(1)の前記本体(11)により規定された第2収容スペースに位置する、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項6】
前記電気接続アセンブリ(5)は、前記本体(11)に、接続部材により固定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項7】
前記電気機械制御モジュール(4)は、複数の前記バスバー(51)に対応する複数の出力端子(41)を備え、複数の前記出力端子(41)は、前記ギア入力シャフト(21)の延在方向に対して平行な方向に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項8】
前記電気機械制御モジュール(4)は、複数の前記バスバー(51)に対応する複数の出力端子(41)を備え、複数の前記出力端子(41)は、前記ギア入力シャフト(21)の延在方向に対して垂直な方向に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項9】
前記第2部分(512)は、前記ギア入力シャフト(21)の前記延在方向に対して平行に延びる、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項10】
前記第1部分(511)および/または前記第2部分(512)は、それらそれぞれの幅方向に並んで配置される、または、少なくとも部分的にそれらそれぞれの厚さ方向に並んで配置される、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項11】
複数の前記バスバー(51)は、前記側壁(10)における同一の開口または複数の対応する開口を貫通する、
ことを特徴とする請求項10に記載の電気駆動アセンブリシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の電気駆動アセンブリシステムを備えることを特徴とする車両。
【請求項13】
電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法であって、
電気機械(2)を、前記電気駆動アセンブリシステムのハウジング(1)に設置するステップと、
前記電気機械(2)のロータシャフトの駆動端部において、電気接続アセンブリ(5)を前記ハウジング(1)の本体(11)の外側から、前記本体(11)の側壁(10)に設けられた開口に挿入するステップと、
前記電気接続アセンブリ(5)を、前記電気機械(2)のステータ(22)に接続するステップと、
ギアボックスアセンブリ(3)および電気機械制御モジュール(4)を、前記ハウジング(1)に設置するステップと、
前記電気接続アセンブリ(5)を、前記電気機械制御モジュール(4)に接続するステップと、
を備えることを特徴とする組立方法。
【請求項14】
前記電気駆動アセンブリシステムは、請求項1~11のいずれか一項に従って構成されることを特徴とする請求項13に記載の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の分野に関し、特に電気駆動アセンブリシステム、電気駆動アセンブリシステムを備える車両、および電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動アセンブリシステムは、車両の重要な構成部品であり、電気機械とギアボックスアセンブリと電気機械コントローラとを備えている。既知の解決策では、電気機械コントローラと電気機械との間の電気接続アセンブリは、電気機械ロータシャフトの非駆動端部に配置される一方で、電気機械とギアボックスアセンブリ等との間の接続部は、電気機械ロータシャフトの駆動端部に配置されている。
【0003】
電気機械の長さまたは電気機械のパワーは、電気機械ロータシャフトの駆動端部と非駆動端部との間の長さで決まる。種々の装置が、電気機械ロータシャフトの駆動端部および非駆動端部の両方に取り付けられている。例えば、電気機械の電気接続アセンブリや、電気機械コントローラ(例えばインバータ)が、非駆動端部に配置されている。したがって、既知の電気駆動アセンブリシステムの場合、電気機械の長さが変更されると、電気機械とインバータとの間の電気接続アセンブリに影響が及び得る。このため、電気機械の長さを変更したい場合、電気接続アセンブリを再設計しなくてはならない。
【0004】
また、電気機械ロータシャフトの非駆動端部に配置された電気接続アセンブリは、空気で冷却されるため、冷却効率が低い。
【0005】
さらに、既知の電気駆動アセンブリシステムの全長は長いが、このように長い電気駆動アセンブリシステムは、車両の中央付近の位置に設置するにはスペースが不十分であることが多いため、一般的に車両の中央からオフセットした位置に配置される。これにより、車両の左駆動シャフトと右駆動シャフトとの長さの差が大きくなる。長さの差のバランスをとるために、さらに追加のシャフトを左駆動シャフトと右駆動シャフトとの間に配置する必要がある。
【0006】
したがって、当技術分野において、上記の問題を解決できる電気駆動アセンブリシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本開示の目的は、電気駆動アセンブリシステム、電気駆動アセンブリシステムを備える車両、および電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法を提供することである。電気駆動アセンブリシステムにおいて、電気機械制御装置と電気機械との間の電気接続アセンブリは、電気機械ロータシャフトの駆動端部に設置されるため、電気機械の長さを、電気接続アセンブリを再設計する必要なく変更することができる。また、電気駆動アセンブリシステム内の電気接続アセンブリは、ギアボックスアセンブリの冷却オイルにより冷却され得るため、冷却効率はより高い。さらに、電気駆動アセンブリシステムにより、車両の左駆動シャフトと右駆動シャフトとの長さの差を小さくすることができる。
【0008】
一態様において、本開示は、
本体とカバーとを備えるハウジングと、
前記ハウジングに配置された以下のものと、
を備える電気駆動アセンブリシステムであって、
前記以下のものとは、
ロータシャフトを備える電気機械と、
前記ロータシャフトに接続するとともにこれに対して同軸に配置されて前記電気機械からのトルクを受けるギア入力シャフトを備えるギアボックスアセンブリと、
前記電気機械を制御するように構成された電気機械制御モジュールであって、前記電気機械および/または前記ギアボックスアセンブリに、前記ギア入力シャフトに対して横方向に重ね合わされた電気機械制御モジュールと、
前記電気機械制御モジュールを前記電気機械のステータに電気的に接続するように構成された電気接続アセンブリと、
である電気駆動アセンブリシステムにおいて、
前記電気接続アセンブリは、前記電気機械の前記ステータに、前記電気機械の前記ロータシャフトの駆動端部付近で電気的に接続するように構成され、
前記ハウジングの前記本体は、少なくとも1つの開口を、前記ロータシャフトの前記駆動端部から突出する側壁において設けられ、前記電気接続アセンブリは、前記開口を貫通する、電気駆動アセンブリシステムを提供する。
【0009】
一実施形態において、前記電気接続アセンブリは、複数のバスバーと射出成形部材とシール部材とを備え、前記射出成形部材は、前記バスバーに配置されるとともに前記開口を閉鎖し、前記シール部材は、前記射出成形部材と前記側壁との間に配置される。
【0010】
一実施形態において、前記射出成形部材は、複数の前記バスバーに、射出成形により形成される。
【0011】
一実施形態において、前記バスバーは、前記開口を貫通するとともに、前記ステータに接続する第1部分と前記電気機械制御モジュールに接続する第2部分とを備える。
【0012】
一実施形態において、前記カバーは、ギアボックスカバーと電気機械カバーと制御モジュールカバーとを備え、前記第1部分は、前記ギアボックスカバーおよび前記ハウジングの前記本体により規定された第1収容スペースに位置するとともに、少なくとも部分的前記ギア入力シャフトに対して横方向に延び、前記第2部分は、前記制御モジュールカバーおよび前記ハウジングの前記本体により規定された第2収容スペースに位置する。
【0013】
一実施形態において、前記電気接続アセンブリは、前記本体に、接続部材により固定される。
【0014】
一実施形態において、前記電気機械制御モジュールは、複数の前記バスバーに対応する複数の出力端子を備え、複数の前記出力端子は、前記ギア入力シャフトの前記延在方向に対して平行な方向に配置される。
【0015】
一実施形態において、前記電気機械制御モジュールは、複数の前記バスバーに対応する複数の出力端子を備え、複数の前記出力端子は、前記ギア入力シャフトの前記延在方向に対して垂直な方向に配置される。
【0016】
一実施形態において、前記第2部分は、前記ギア入力シャフトの前記延在方向に対して平行に延びる。
【0017】
一実施形態において、前記第1部分および/または前記第2部分は、それらそれぞれの幅方向に並んで配置される、またはそれらそれぞれの厚さ方向に並んで少なく部分的に配置される。
【0018】
一実施形態において、複数の前記バスバーは、前記側壁における同一の開口または複数の対応する開口を貫通する。
【0019】
別の態様において、本開示は、上述の電気駆動アセンブリシステムを備える車両を提供する。
【0020】
別の態様において、本開示は、電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法であって、
電気機械を、前記電気駆動アセンブリシステムのハウジングに設置するステップと、
前記電気機械のロータシャフトの駆動端部において、電気接続アセンブリを前記ハウジングの本体の外側から、前記本体の側壁に設けられた開口に挿入するステップと、
前記電気接続アセンブリを、前記電気機械のステータに接続するステップと、
ギアボックスアセンブリおよび電気機械制御モジュールを、前記ハウジングに設置するステップと、
前記電気接続アセンブリを、前記電気機械制御モジュールに接続するステップと、
を備える組立方法を提供する。
【0021】
本方法の一実施形態において、前記電気駆動アセンブリシステムは、上述のように構成される。
【0022】
本開示の実施形態における技術的解決策についてより明瞭に説明するため、本開示の実施形態の添付図面を以下に簡単に説明する。図面は、単に本開示のいくつかの実施形態を説明するために使用されるものであり、本開示のすべての実施形態をこれに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示の実施形態による電気駆動アセンブリシステムの概略図を示す。
図2図2は、図1における電気駆動アセンブリシステムの電気接続アセンブリの概略図を示す。
図3図3は、図2における電気接続アセンブリの斜視図を示す。
図4図4は、本開示の別の実施形態による電気駆動アセンブリシステムの概略図を示す。
図5図5は、図4における電気駆動アセンブリシステムの上面図を示す。
図6図6は、本開示の別の実施形態による電気駆動アセンブリシステムの概略図を示す。
図7図7は、図6における電気駆動アセンブリシステムのハウジングの斜視図を示す。
図8図8は、本開示の別の実施形態による電気駆動アセンブリシステムの電気接続アセンブリの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の技術的解決手段目的、技術的解決手段および利点を明確にするために、本開示の特定の実施形態に付随する図面と併せて、本開示の実施形態の技術的解決手段について明確かつ完全に以下に説明する。図面において、同一の参照数字は同一の構成要素を示す。記載される実施形態は、本開示の実施形態の一部であってすべてではないことが明確にされなければならない。記載された本開示の実施形態に基づいて当業者が発明努力を必要とせずに得られる他のすべての実施形態は、本開示の保護範囲に含まれるものとする。
【0025】
別途定義しない限り、本明細書で使用される技術用語または科学用語は、当業者に理解される一般的な意味を有するものとする。本開示の特許出願の明細書および特許請求の範囲において使用される「第1」、「第2」および同様の語は、単に異なる構成部分を区別するために使用されるものであり、いかなる順序、量または重要性を示すものではない。同様に、「1つ」等の語は、必ずしも数量制限を表すものではない。「備える」、「含む」または「有する」等の語は、その語の前にある要素または対象が、他の要素または対象を除外することなく、その語の後に列挙された要素または対象およびその等価物をカバーすることを意味する。「接続」または「通信」等の語は、図面に示す物理的または機械的な接続または通信に限定されるものではなく、直接的か間接的かにかかわらず、それに相当する接続または通信を含み得る。「上(上方、上側)」、「下(下方、下側)」、「左(左方、左側)」、「右(右方、右側)」等は、相対的な位置関係を示すためにのみ使用され、記載された対象物の絶対的な位置が変化した場合、相対的な位置関係もそれに応じて変化し得る。
【0026】
本開示による車両用の電気駆動アセンブリシステムの好適な実施形態について、図1図8を参照しつつ以下に詳細に説明する。図1図3は、本開示の実施形態による、車両に含まれる電気駆動アセンブリシステム、およびその電気接続アセンブリを示す。図4および図5は、本開示の別の実施形態による、車両に含まれる電気駆動アセンブリシステムを示す。図6および図7は、本開示の別の実施形態による、車両に含まれる電気駆動アセンブリシステム、およびその電気接続アセンブリを示す。図8は、本開示の別の実施形態による、車両に含まれる電気駆動アセンブリシステムの電気接続アセンブリを示す。これらの実施形態間の相違は、主として、電気機械制御モジュールおよび/または電気接続アセンブリにおける相違である。
【0027】
図1に示すように、本開示の電気駆動アセンブリシステムは、ハウジング1を備えている。ハウジング1は、本体11およびカバーを備えている。また、電気駆動アセンブリシステムは、電気機械2と、ギアボックスアセンブリ3と、電気機械制御モジュール4と、電気接続アセンブリ5と、を備え、これらは、すべてハウジング1に配置されている。電気機械制御モジュール4は、例えばインバータであり得る。インバータは、電気機械2への入力のために、DC電力を、固定周波数および固定電圧を有するAC電力、または調整可能周波数および調整可能電圧を有するAC電力に変換する。電気機械2は、例えば、永久磁石同期機械またはAC非同期電気機械である。電気機械2は、ギアボックスアセンブリ3に駆動接続されて、ギアボックスアセンブリ3での減速後に、電気機械2のトルクが出力される。図1における電気機械制御モジュールは、ハウジングに配置されているため見えない。参照符号4は、単にその位置を概略的に示す。実際の電気機械制御モジュールについて、図4を参照されたい。電気機械2、ギアボックスアセンブリ3、および電気機械制御モジュール4等の装置を1つのハウジングに設置することにより、電気駆動アセンブリシステムの高度に統合された設計が達成され、スペースが節約され得る。
【0028】
具体的には、電気機械2は、ロータシャフト(図示せず)を有している。電気機械2は、ロータとステータ22とを備え得る。電気機械のうち、固定されて動かない部品がステータと呼ばれ、回転可能な部品がロータと呼ばれる。例えば、ステータは、コアと巻線とベースとから形成される。コアは、一般的に積層されたシリコン鋼板から形成される。ロータは、ベースに軸受またはブッシュにより装着固定されるとともに、ロータシャフトとロータシャフトに装着されたロータコアとを備えている。電気機械制御モジュール4は、ステータの配線端子に接続されてAC電力をステータに入力することで回転磁界を生成する。ロータは、回転磁界中の磁力線により切断されて、出力電流が生成される。また、車両のホイールがロータを逆回転駆動させることより、他方向の回転磁界が誘起され、電力をバッテリにインバータである電気機械制御モジュール4を介して戻すことができる。
【0029】
ギアボックスアセンブリ3は、ギア入力シャフト21を有している。ギア入力シャフト21は、ロータシャフトに接続するとともに、これと同軸に配置されて電気機械からのトルクを受ける。例えば、ギア入力シャフト21は、電気機械のロータシャフトに回転可能に取り付けられ得る。ロータシャフトおよびギア入力シャフトは、接続要素により回転可能に接続した(例えば、スプラインにより接続した)2つの別のシャフトであっても、または同一のシャフトであってもよく、ここに制限はないことを理解すべきである。
【0030】
ギアボックスアセンブリ3は、ギア入力シャフト21とギアで噛み合う中間シャフトと、電気機械2により発生したトルクを減速後に出力し得る差動アセンブリ(例えば、図6に示す差動装置6)と、をさらに備え得る。ギアボックスアセンブリ3の構成は、当該技術分野において一般的な手法であるため、本開示では詳述しない。
【0031】
電気機械制御モジュール4は、電気機械2を制御するように構成されている。電気機械制御モジュール4は、種々の電子制御素子および電気制御素子を備え得るとともに、例えば回路基板の形態をとる。電子制御素子および電気制御素子による絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)集積パワーモジュールの制御を介して、電気機械制御モジュール4は、制御可能な三相正弦AC電流を出力して、電気機械の回転速度およびトルクを制御し得る。電気機械制御モジュール4は、当該技術分野において一般的であるため、本開示では詳述しない。
【0032】
また、電気機械制御モジュール4は、電気機械2および/またはギアボックスアセンブリ3に、ギア入力シャフト21に対して横方向において重ね合わされている。例えば、図1における電気機械制御モジュール4は、電気機械2に、ギア入力シャフト21に対して垂直な鉛直方向において重ね合わされている。簡単に言えば、電気機械制御モジュール4と電気機械2とは、重ね合わされているとして記載され得る。他の例において、例えば、図4図6および図7に示すように、電気機械制御モジュール4は、ギアボックスアセンブリ3に、ギア入力シャフト21に対して垂直な鉛直方向において重ね合わされている。簡単に言えば、電気機械制御モジュール4とギアボックスアセンブリ3とは、重ね合わされているとして記載され得る。図4図6および図7における電気機械制御モジュール4は、電気機械2に、ギア入力シャフト21に対して横方向において重ね合わされているとともに、図面における鉛直方向に対して傾いているともいえる。電気機械制御モジュール4が配置される具体的な位置は、電気機械制御モジュール4の電子部品の配置、ハウジング1の形状、または、電気機械2およびギアボックスアセンブリ3の構成によって決まる。
【0033】
図1に示すように、カバーは、ギアボックスカバー12と、電気機械カバー13と、制御モジュールカバー14と、を備えている。図2に示すように、ギアボックスカバー12および電気機械カバー13が本体11の2つの端部、すなわち、電気機械ロータシャフトの駆動端部および非駆動端部に位置する状態で、制御モジュールカバー14は、本体11の頂部に位置し得る。ギアボックスアセンブリ3は、本体11とギアボックスカバー12とにより形成された第1収容スペースに配置されている。電気機械制御モジュール4は、本体11と制御モジュールカバー14とにより形成された第2収容スペースに配置されている。電気機械2は、本体11と電気機械カバー13とにより形成された第3収容スペースに配置されている。具体的には、ハウジングの本体11は、ベース部19と、ベース部からその頂縁部23に向かって延びる複数の壁(例えば、ロータシャフトの駆動端部から突出する側壁10と、第1壁20と、第2壁24と、第3壁25)と、を備えている。側壁10、第1壁20、第2壁24、および第3壁25は、例えば、ベース部19に対して垂直に延びる壁であり得る。第3壁25は、電気機械ロータシャフトの非駆動端部の付近に位置している。第1壁20および第2壁24は、側壁10と第3壁25との間で延びている。また、上述のように、本体11は、電気機械制御モジュール4が載置される頂壁(図示せず)をさらに備えている。側壁10は、ギアボックスカバー12とともに第1収容スペースを規定するように、頂縁部23の付近で屈曲され得る。頂壁は、制御モジュールカバー14とともに第2収容スペースを規定するように、頂縁部23に対して窪み得る。第2壁24は、頂壁、側壁10および電気機械カバー13とともに、第3収容スペースを規定する。他の例において、例えば第2壁24は、部分的に円柱の形態をとる。
【0034】
電気接続アセンブリ5は、電気機械制御モジュール4を電気機械2のステータ22に、より正確にはステータ22の配線端子に電気的に接続するように構成されている。電気接続アセンブリ5は、電気機械2のステータ22に、ギア入力シャフト21の付近で電気的に接続するように構成されている。ステータ22の位置については、図4を参照されたい。換言すれば、電気接続アセンブリ5は、ステータ22に、電気機械のロータシャフトの駆動端部付近で電気的に接続するように構成されている。図1図4および図6に示すように、ハウジング1の本体11は、開口をロータシャフトの駆動端部から突出する側壁10において設けられている。電気接続アセンブリ5は、開口、例えば、図7に示す開口15を貫通している。例えば、開口は、電気機械のロータシャフトの駆動端部の付近であって、ギア入力シャフト21または差動装置6の上方の側壁10の空いている領域に位置している。したがって、本開示の電気駆動アセンブリシステムは、電気機械のロータシャフトの駆動端部におけるスペースであって、ギアボックスアセンブリまたは差動装置が占めていないスペースをより効率的に利用できるため、より高度に統合された設計が実現される。
【0035】
電気接続アセンブリ5を電気駆動アセンブリシステムの電気機械ロータシャフトの駆動端部の付近に配置することにより、その非駆動端部は拡張可能となる。すなわち、ハウジング1の本体11は、電気機械カバー13に向かう方向において拡張可能である。すなわち、そこに収容されたステータまたは電気機械の長さを、電気機械制御モジュールおよび電気接続アセンブリを再設計する必要なく、変更することができる。したがって、本開示の電気駆動アセンブリシステムは、適用柔軟性および低コスト性を有する。また、ギアボックスアセンブリ3に貯蔵された冷却オイルが、電気接続アセンブリ5の第1部分511であって、ギアボックスアセンブリを収容する第1収容スペースに位置する第1部分に跳ねてこれを冷却することができる。したがって、本開示の電気駆動アセンブリシステムは、より高い冷却効率を有する。
【0036】
図2に示すように、電気接続アセンブリ5は、複数のバスバー51(例えば、銅製バスバー)と射出成形部材52とを備えている。バスバー51の個数は、3つであり得るとともに電流の三相にそれぞれ使用され得る。射出成形部材52は、バスバー51に配置されて、開口15を閉鎖する。図7を参照されたい。例えば、射出成形部材52は、複数のバスバー51に射出成形により形成され得る。また、ギアボックスアセンブリ3を収容する第1収容スペースに対して電気機械制御モジュール4を収容する第2収容スペースをシールするように、電気接続アセンブリ5は、シール部材(図2に示さず)をさらに備え得る。シール部材は、射出成形部材52とハウジング1の側壁10との間に配置される。図7に示すように、シール部材は、開口15周辺の溝16に設置され得る。他の例において、シール部材は、例えば図8に示すシール部材53のように、射出成形部材52のうち、開口に面する側面の溝に設置され得る。例えば、シール部材53は、バスバー51および射出成形部材52と一体的に形成され得る、または別個の部品であり得る。また、図1図4および図6に示すように、射出成形部材52は、本体11の外側から開口に嵌入される。例えば、電気接続アセンブリ5は、本体11に接続部材により固定される。例えば、電気接続アセンブリ5は、側壁10に、射出成形部材52における装着孔を貫通するネジまたはボルトにより固定される。当然ながら、本開示において、接着、リベット留め、溶接等の他の方法が利用され得る。
【0037】
電気機械制御モジュール4は、図5に示すように、複数のバスバー51に対応する複数の出力端子41を備えている。一部の例において、複数の出力端子41は、ギア入力シャフト21の延在方向に対して平行な方向に配置される。他の例において、複数の出力端子41は、ギア入力シャフト21の延在方向に対して垂直な方向に配置される(例えば、図1図4および図5における実施形態)。図5に示すように、複数の出力端子41の配置方向は、鉛直方向に配向されたギア入力シャフト21に対して垂直な図中の水平延在方向である。
【0038】
具体的には、バスバー51は、開口を貫通する。そして、図3および図8に示すように、バスバー51は、ステータ22に接続する第1部分511と、電気機械制御モジュール4に接続する第2部分512と、を備えている。第1部分511は、ギアボックスカバー12とハウジング1の本体11とにより規定される第1収容スペースに位置するとともに、少なくとも部分的にギア入力シャフト21に対して横方向に延びている。ここで、ギア入力シャフト21に「対して横方向」とは、ギア入力シャフト21に対して垂直方向、およびギア入力シャフト21に対して角度をなす斜め方向を含む。また、図6に示すように、本体11は、別の開口18を、ロータシャフトの駆動端部から突出する側壁10において設けられている。第1部分511は、当該別の開口18を介して露出するステータの配線端子に電気的に接続している。第2部分512は、制御モジュールカバー14とハウジング1の本体11とにより規定される第2収容スペースに位置している。図3図4および図8に示すように、第1部分511は屈曲した形状を有し、第2部分512は、ギア入力シャフト21の延在方向に対して平行に延びている。図3に示すように、各第1部分511の一部分は、ギア入力シャフト21に対して垂直に延び、別の部分は、ギア入力シャフト21に対して平行に延びる。第2部分512は、同一長さを有している。図4および図5に示すように、第1部分511の複数の部分が、ギア入力シャフト21の延在方向に対して横方向に延び、第2部分512は同一長さを有している。図6および図8に示すように、第1部分511は屈曲した形状を有し、第2部分512はギア入力シャフト21の延在方向に対して平行に延びるとともに異なる長さを有している。一部の例において、図2および図3に示すように、第1部分511はその幅方向において並んで配置され、3つの第1部分511は、大きな距離を置いて離間し得る。他の例において、第1部分511は、少なくとも部分的にその厚さ方向において並んで配置される。図8を参照すると、3つの第1部分511の一部は、その厚さ方向において並んで配置されるため、重なっている。当然ながら、複数の第1部分511は、第1部分511の厚さ方向において観察した場合に1つの第1部分511だけが見えるように、厚さ方向において全体的に並んで配置されてもよい。第2部分512は、第1部分511と同様の態様で配置され得る。図3に示すように、第2部分512は、その幅方向において並んで配置される。図8に示すように、第2部分512は、第2部分512の厚さ方向において観察した場合に1つの第2部分512だけが見えるように、少なくとも部分的にその厚さ方向において並んで配置されるため、重なっている。図3における電気接続アセンブリと比較して、図8に示す電気接続アセンブリの射出成形部材52はより小さいサイズを有しつつ、必要なシール領域を減少させ得るため、より高度に統合した状態で、より良好なシール結果およびスペースのより有効な利用が達成される。また、一部の例において、複数のバスバー51は、側壁10における同一の開口を貫通する。他の例において、複数のバスバー51は、側壁10における複数の開口を貫通している。開口の個数は、バスバーの個数に対応する。バスバーに関して上述した異なる設計は、ハウジング、ギアボックスアセンブリおよび電気機械の構成によって決まる。バスバーの設計は、駆動端部のうち、ギアボックスアセンブリおよび電気機械が占めていない残りのスペースにより決まるということもできる。このようにして、本開示の電気駆動アセンブリシステムは、ギアボックスアセンブリにおけるスペースをより有効に利用することができるため、より高度に統合された設計が実現される。
【0039】
車両の左駆動シャフトおよび右駆動シャフトは、ギアボックスアセンブリ内の差動装置に接続している。差動装置は、例えば、車両の中央からオフセットしている。本開示の車両において、上述の電気駆動アセンブリシステムにより、電気機械の全長を短くすることができる。なぜならば、電気機械制御モジュールと電気機械との間の電気接続アセンブリが、電気機械ロータシャフトの駆動端部に設置されることにより、電気駆動アセンブリシステムを車両の中央により近い位置に配置することができるため、左駆動シャフトと右駆動シャフトとの長さの差を小さくすることができるからである。同様に、これにより、左駆動シャフトと右駆動シャフトとの長さの差のバランスをとるための追加シャフトが使用される確率が低減され得る、またはそのような追加シャフトの使用が回避され得る。
【0040】
本開示による電気駆動アセンブリシステムを組み立てるための方法は、以下のステップを備える。電気機械2を電気駆動アセンブリシステムのハウジング1に設置するステップ;電気機械2のロータシャフトの駆動端部において、電気接続アセンブリ5をハウジング1の本体11の外側から、本体11の側壁10に設けられた開口に挿入するステップ;電気接続アセンブリ5を電気機械2のステータ22に(より正確には、ステータ22の配線端子に)接続するステップ;ギアボックスアセンブリ3および電気機械制御モジュール4を、電気駆動アセンブリシステムのハウジング1に設置するステップ;および、電気接続アセンブリ5を、電気機械制御モジュール4に接続するステップ。上述の電気駆動アセンブリは、本組立方法に従って組み立てられ得る。例えば、上述の電気接続アセンブリ5を挿入するステップは、具体的には、ギア入力シャフト21に対して平行な方向において実施され得る。
【0041】
上に開示した技術的特徴は、開示した他の特徴との組み合わせに限定されるものではなく、当業者であれば、本開示の目的を達成するために、本発明の目的に従って他の技術的特徴の組み合わせを行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】