(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053905
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】プログラマブルロジックコントローラ制御による生産システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/05 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G05B19/05 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160410
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】桑野 誠司
【テーマコード(参考)】
5H220
【Fターム(参考)】
5H220AA04
5H220BB05
5H220CC06
5H220CX01
5H220CX05
5H220FF09
5H220HH03
5H220JJ02
(57)【要約】
【課題】あらかじめ決められたデータ信号以外のデータ信号をPLCから簡単に収集できるようにする。
【解決手段】無菌充填機は複数の生産設備を備え,複数の生産設備のそれぞれはPLCによって制御される。複数のPLC同士は共有通信ライン25によって接続されており,共有通信ライン25によって,各PLCに与えられるプログラムに基づいて各PLCから出力されるデータ信号が各PLCにおいて共有される。さらに,複数のPLCのうちの3台のPLC11,12,20には,上記共有通信ライン25とは別個の通信ラインであって,PLC11,12,20からデータ信号を読み出すための外部接続ライン32,31,33が接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産設備を備え,複数の生産設備のそれぞれがプログラマブルロジックコントローラ(以下,PLCという)によって制御されるPLC制御による生産システムであって,
複数のPLC同士を接続し,各PLCに与えられるプログラムに基づいて各PLCから出力されるデータ信号を各PLCにおいて共有するための共有通信ライン,および
上記共有通信ラインとは別個の通信ラインであって,上記複数のPLCのうちの少なくともいずれか一つに接続され,上記PLCからデータ信号を読み出すための外部接続ライン,
を備えている,PLC制御による生産システム。
【請求項2】
上記外部接続ラインに接続され,上記外部接続ラインが接続されたPLCにデータ読み出し命令を送信する命令送信手段を備えるゲートウェイ装置を含む,
請求項1に記載のPLC制御による生産システム。
【請求項3】
上記ゲートウェイ装置にデータ読み出し命令の送信を指示する操作端末をさらに備えている,
請求項2に記載のPLC制御による生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を備え,PLCによって制御される生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は,複数の生産設備を備え,各生産設備がそれぞれPLCによって制御される生産ラインを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
PLCは生産設備の順序動作を記憶し,稼働を制御する。他の生産設備の稼働状況にしたがう生産設備の制御も実行することができる。PLC同士を接続する信号線に各生産設備のたとえば稼働状況を表すデータ信号を提供することによって,生産ラインの上流の生産設備の異常に応じて下流の生産設備の稼働を一時停止するといった生産設備全体の制御も可能である(データ信号の共有)。
【0005】
共有されるデータ信号は,PLCに与えられるプログラムにしたがってPLCから出力されることでPLC同士を接続する信号線に供給される。すなわち,PLC同士を接続する信号線に供給されるデータ信号はPLCのプログラムにおいてあらかじめ決めておく必要がある。あらかじめ決められたデータ信号以外の種類のデータ信号を取得(収集)しようとする場合,該当するデータ信号を出力するようにPLCのプログラムを書き換えなければならない。PLCプログラムの書き換えは製造設備が停止しているときに行う必要があり,また一般には製造設備のメーカの担当者が行う。あらかじめ決められたデータ信号以外のデータ信号を収集するのは時間と手間がかかるのが現状である。
【発明の開示】
【0006】
この発明は,あらかじめ決められたデータ信号以外のデータ信号をPLCから簡単に収集できるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明によるPLC制御による生産システムは,複数の生産設備を備え,複数の生産設備のそれぞれがプログラマブルロジックコントローラ(以下,PLCという)によって制御されるPLC制御による生産システムであって,複数のPLC同士を接続し,各PLCに与えられるプログラムに基づいて各PLCから出力されるデータ信号を各PLCにおいて共有するための共有通信ライン,および上記共有通信ラインとは別個の通信ラインであって,上記複数のPLCのうちの少なくともいずれか一つに接続され,上記PLCからデータ信号を読み出すための外部接続ラインを備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明によると,PLCのプログラムを書き換えることなく,所望のデータ信号を,外部接続ラインを通じてPLCから収集(取得)することができる。外部接続ラインは生産システムを構成する複数のPLCのすべてに接続する必要は必ずしもなく,収集(およびその後の調査,分析等)を必要とするデータ信号が与えられる生産設備のPLCにのみ接続すればよい。
【0009】
一実施態様では,PLC制御システムは,上記外部接続ラインに接続され,上記外部接続ラインが接続されたPLCにデータ読み出し命令を送信する命令送信手段を備えるゲートウェイ装置を含む。ゲートウェイ装置からPLCに対してデータ読み出し命令を与えることによって,複数の生産設備のPLCに外部接続ラインが接続されているときにデータ読み出し命令を与えるべき生産設備を特定し,特定された生産設備のPLCに対してデータ読み出し命令を与えることができる。
【0010】
好ましくは,上記ゲートウェイ装置にデータ読み出し命令の送信を指示する操作端末をさらに備えている。操作端末においてデータ信号の収集を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】PLCの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】PLCのメモリに格納されるデータ信号例を示す。
【
図4】ゲートウェイ装置を通じて送受信される,データ信号の読み出し命令およびこれに基づいて読み出されるデータ信号の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は無菌充填機のネットワーク構成図を示している。
【0013】
無菌充填機は,調合,抽出,液処理,資材供給,容器成形,充填,ラベラ,検査,ケーサー,パレタイザ等の複数の工程を実行するもので,各工程を実行する複数の生産装置が設けられる。各生産装置間を結ぶ配管,搬送装置,殺菌装置等も設けられる。さらにバランスタンク,アセプティック・サージタンク,ヘッドタンク等の複数のタンクも無菌充填機には含まれる。これらの複数の生産設備1~10(生産装置,配管,搬送装置,殺菌装置,タンク等を含む)のそれぞれはPLC(プログラマブルロジックコントローラ)11~20を備えている。便宜上,
図1は無菌充填機を構成する生産設備として10台の生産設備1~10を図示するが,生産設備の数はこれよりも多くても少なくてもよい。
【0014】
PLC11~20は生産設備1~10を制御するもので,与えられる入力データ信号に基づいて出力データ信号を生成して出力する。条件制御および順序制御もPLC11~20によって実行される。PLC11~20によって生産設備1~10が順次稼働制御されることによって,たとえば,無菌充填機が飲料をボトル詰めするタイプのものであれば,材料調合,飲料の殺菌,ボトル成形,ボトル口部の殺菌,ボトル詰め,キャップの殺菌,キャップの閉栓,ラベル貼り,検査,箱詰め,搬送等が自動的に実行される。
【0015】
PLC11~20を備える生産設備1~10は共有通信ライン25に接続されている。共有通信ライン25は通信線たとえば光ケーブルであり,共有通信ライン25を通じて生産設備1~10のそれぞれを稼働させるためのデータ信号(情報)が送られる。たとえば,無菌充填装置において現在製造されている飲料等の品種情報,生産設備1~10の稼働情報,生産本数,排斥本数,異常が発生した場合のエラー情報,他の生産設備に影響するセンサ情報などが,共有通信ライン25を通じて各生産設備1~10のPLC11~20に与えられる。PLC11~20は共有通信ライン25を通じて送られる各生産設備1~10の状態等を共有し,この共有されるデータ信号も生産設備1~10の稼働制御に用いられる。
【0016】
共有通信ライン25に加えて,生産設備1,2および10の3台のPLC11,12,20には共有通信ライン25と異なる外部接続ライン(たとえば光ケーブル)31,32,33が接続されている。外部接続ライン31,32,33を介してPLC11,12,20はゲートウェイ装置26と接続されており,ゲートウェイ装置26にはさらにネットワーク(インターネットなど)35を通じて操作端末51が接続されている。操作端末51からの指示に基づいてゲートウェイ装置26はPLC11,12,20からデータ信号を取得することができる。ゲートウェイ装置26に接続されるPLCの数についても3台よりも多くても少なくてもよい。ゲートウェイ装置26にはたとえばパーソナルコンピュータ,ルータ,専用のIoTゲートウェイ装置を用いることができ,PLC11,12,20のメモリ(後述する)に格納されているデータを読み出し(メモリからデータを読み出すようにPLCを制御し),読み出したデータをアップロードする(送信する)機能を備えている。
【0017】
図2はPLC11の電気的構成を示すブロック図である。他のPLC12~20についても
図2に示すPLC11と同様の電気的構成を備えている。
【0018】
PLC11は,演算部41,メモリ42,通信部43,入力部44および出力部45を備えている。
【0019】
演算部41はPLC11の動作を統括的に制御するもので,ユーザーが作成したプログラムにしたがって生産設備を制御する。
【0020】
入力部44にはスイッチ,ボタン,各種センサなどの入力機器が接続され,入力機器からの情報が取り込まれる。
【0021】
出力部45にはリレー,表示灯,モータなどの出力機器が接続され,プログラムの演算結果が出力機器に伝えられる。
【0022】
メモリ42はPLC11が扱う様々なデータ(データ信号)を記憶するメモリエリアを備え,その種類によりエリアが分けられている。たとえばユーザーが作成したプログラム・データはユーザープログラムエリアに,入出力機器のON/OFFに関するデータはI/Oメモリエリアに格納される。
【0023】
通信部43は上述した共有通信ライン25および外部接続ライン32を通じて送受信されるデータ信号の入出力を制御する。通信部43によって受信されたデータ信号もメモリ42(I/Oメモリエリア)に記憶され,演算部41による生産設備の制御に用いることができる。
【0024】
入力部44に接続された入力機器からのデータ信号および通信部43によって受信されたデータ信号がメモリ42のI/Oメモリエリアに格納される。演算部41はメモリ42のユーザープログラムエリアに格納されたプログラムにしたがって,I/Oメモリエリアに格納されたデータ信号に基づいて出力機器を制御するための制御データを作成する。制御データが出力部45を通じて生産設備(生産設備が備えるリレー,表示器,モータ等)に与えられることによって生産設備の動作が制御される。
【0025】
図3はPLC11のメモリ42のI/Oメモリエリアに格納されるデータ信号(情報)の一部を示している。
【0026】
メモリ42のI/Oメモリエリアに格納されるデータ信号は,上述したように,入力部44に接続された入力機器から入力されたデータ信号および通信部43によって受信されたデータ信号である。
図3にはI/Oメモリエリアに格納されるデータ信号のうち通信部43によって受信されたデータ信号に丸印をつけている。この丸印をつけたデータ,ここでは品種情報,稼働情報,カウンター情報およびエラー情報は上述した共有通信ライン25を通じて他の生産設備のPLC12~20にも送られる(共有される)。これによってある生産設備に異常が発生したときに他の生産設備の稼働を停止させる等の制御をすることができる。
【0027】
メモリ42には,共有通信ライン25を通じて他の生産設備と共有されるデータ信号に加え,共有通信ライン25に出力されない(PLC間で共有されない)生産設備の稼働状況の詳細に関するデータ信号,たとえば計器情報(温度,圧力,濃度,流量等),設定情報(周波数,タイミング制御パラメータ等)などを表すデータ信号も格納される。
図3には共有通信ライン25に出力されないが,PLCによって取得されてメモリ42に格納されるデータ信号が「-」によって示されている。
【0028】
共有通信ライン25を通じて他の生産設備と共有されるデータ信号の種類はPLC11のプログラムによって規定される。PLC11のプログラムを変更することによって共有通信ライン25を通じて他の生産設備と共有するデータ信号の種類を変更(追加,削除)することができる。
【0029】
PLC11のメモリ42に格納されているデータ信号のうち,共有通信ライン25に出力(送受信)されないデータ信号を遠隔的に取得するために,ゲートウェイ装置26および外部接続ライン32が用いられる(
図1)。
【0030】
図4は,ゲートウェイ装置26を通じてPLC11のメモリ42から任意のデータ信号を取得するときの処理の流れを示すブロック図である。
【0031】
データ読み出し命令がネットワーク35を通じて操作端末51からゲートウェイ装置26に与えられる。読み出し命令には,データ信号読み出し対象の生産設備(ここでは生産設備1)を特定する情報および取得すべきデータ信号の種類を特定する情報を含む。
【0032】
ゲートウェイ装置26は,読み出し命令にしたがって特定の生産設備,ここでは生産設備1が備えるPLC11に対して特定データ信号の読み出し命令を送信する。ゲートウェイ装置26からの読み出し命令は外部接続ライン32を通じてPLC11に与えられる。PLC11の通信部43によって読み出し命令は受信され,PLC11の演算部41によって要求されたデータ信号がメモリ42から読み出される。メモリ42から読み出されたデータ信号は通信部43から外部接続ライン32に出力され,ゲートウェイ装置26およびネットワーク35を通じて操作端末51に送信される。
【0033】
外部接続ライン32は一つのPLCに接続してもよいし,すべてのPLCに接続してもよい。もっともPLC11~20のすべてに外部接続ライン32を接続する必要は必ずしもなく,たとえば無菌充填機によって製造される製品の品質に関わるデータ信号をメモリ42に格納する生産設備のPLCに外部接続ライン32を接続しておけば,遠隔において製品品質を確認することができる。
【符号の説明】
【0034】
1~10 生産設備
11~20 PLC
25 共有通信ライン
26 ゲートウェイ装置
31,32,33 外部接続ライン
35 ネットワーク
42 メモリ
51 操作端末