(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053908
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】超音波診断装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160416
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷田 晃央
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE04
4C601EE04
4C601HH13
4C601HH15
4C601HH16
4C601JC37
(57)【要約】
【課題】フレームレートを維持しつつノイズを低減すること。
【解決手段】実施形態に係る超音波診断装置は、超音波診断装置は、設定部と、送受信制御部とを含む。設定部は、走査領域のうちの複数の部分走査領域それぞれにおける、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含むアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ前記異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する。送受信制御部は、スキャン順に応じて超音波を送受信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査領域のうちの複数の部分走査領域それぞれにおける、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含むアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ前記異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する設定部と、
前記スキャン順に応じて超音波を送受信する送受信制御部と、
を具備する、超音波診断装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記走査領域におけるスキャン方向に対して、各アンサンブルグループ内のスキャン方向が逆方向となるように前記スキャン順を設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記設定部は、第1アンサンブルグループの最後の超音波送受信と、次にスキャンする第2アンサンブルグループの最初の超音波送受信との距離が閾値以上となるように前記スキャン順を設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記設定部は、各アンサンブルグループ内の先頭から1以上の超音波送受信を、ドプラ画像の合成に用いないダミー超音波送受信として設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記走査領域における複数のアンサンブルグループのスキャン方向に対して、少なくとも1つは隣接するアンサンブルグループを飛ばすように前記スキャン順を設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記設定部は、各アンサンブルグループの超音波送受信を1つずつ順に実行するように前記スキャン順を設定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記スキャン順に応じて受信したエコー信号に基づき、ドプラ画像を生成する画像生成部をさらに具備する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記閾値は、残留多重ノイズが所定値以下となる距離または時間に基づいて設定される、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
コンピュータに、
走査領域のうちの複数の部分走査領域それぞれにおける、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含むアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ前記異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する設定機能と、
前記スキャン順に応じて超音波を送受信する送受信制御機能と、
を実現させるための超音波診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血流など生体組織の変位量および速度を推定し映像化するドプライメージング法では、インタリーブスキャンと呼ばれる送受信制御方法が一般的に用いられている。インタリーブスキャンは、同一位置のデータ列を収集する際に、同一のビーム位置を連続して送受信するのではなく、複数のビーム位置を1つの組とし、この組に含まれる複数のビーム位置を順番に送受信する方式である。これにより、フレームレートを落とさずに、同一のビーム位置に対するサンプリング周期を長くして、低速の血流速度の計測に対応することが可能となる。
しかし、インタリーブスキャンにおいては、隣り合うビーム位置に受信ビームを形成する場合、直前のビーム位置における残留成分の影響を受けやすく、受信ビームを映像化した場合に縦筋状の残留多重ノイズが発生する。残留多重ノイズを低減するため、各インタリーブスキャンの先頭にデータ数に応じたダミー送信を行う手法があるが、データ数が増えるほどダミー送信の数が増えるため、フレームレートが低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、フレームレートを維持しつつノイズを低減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る超音波診断装置は、設定部と、送受信制御部とを含む。設定部は、走査領域のうちの複数の部分走査領域それぞれにおける、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含むアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ前記異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する。送受信制御部は、スキャン順に応じて超音波を送受信する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る超音波診断装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、スキャン領域を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るスキャン順の第1設定例を示す図である。
【
図5】
図5は、簡略化した超音波走査チャートを説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るスキャン順の第2設定例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るスキャン順の第3設定例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るスキャン順の第4設定例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係るスキャン順の第5設定例を示す図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係るスキャン順の第6設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、超音波診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
図1の超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101とを有している。装置本体100は、入力装置102および出力装置103と接続されている。また、装置本体100は、ネットワークNWを介して外部装置104と接続されている。外部装置104は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)を搭載したサーバおよびポスト処理を実行可能なワークステーションなどである。
【0009】
超音波プローブ101は、例えば、装置本体100からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ101は、例えば、音響レンズ、一つ以上の整合層、複数の振動子(圧電素子)、およびバッキング材等を有する。音響レンズは、例えばシリコンゴムで形成され、超音波ビームを収束させる。一つ以上の整合層は、複数の振動子と生体との間のインピーダンスマッチングを行う。バッキング材は、複数の振動子から放射方向に対して後方への超音波の伝搬を防止する。超音波プローブ101は、例えば、複数の振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイリニアプローブである。超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。超音波プローブ101には、オフセット処理、および超音波画像をフリーズさせる操作(フリーズ操作)等の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0010】
複数の振動子は、装置本体100が有する後述の超音波送信回路110から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ101から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流または心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ101は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
【0011】
図1には、一つの超音波プローブ101と装置本体100との接続関係を例示している。しかしながら、装置本体100には、複数の超音波プローブを接続することが可能である。接続された複数の超音波プローブのうちいずれを超音波スキャンに使用するかは、例えば、後述するタッチパネル上のソフトウェアボタンによって任意に選択することができる。
【0012】
装置本体100は、超音波プローブ101により受信された反射波信号(エコー信号ともいう)に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体100は、超音波送信回路110と、超音波受信回路120と、内部記憶回路130と、画像メモリ140と、入力インタフェース150と、出力インタフェース160と、通信インタフェース170と、処理回路180とを有している。
【0013】
超音波送信回路110は、超音波プローブ101に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路110は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、およびパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返して発生する。遅延回路は、超音波プローブから発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な複数の圧電振動子毎の遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、複数の圧電振動子の表面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0014】
また、超音波送信回路110は、駆動信号によって、超音波の出力強度を任意に変更することができる。超音波診断装置では、出力強度を大きくすることにより、生体P内での超音波の減衰の影響を小さくすることができる。超音波診断装置は、超音波の減衰の影響を小さくすることによって、受信時において、S/N比の大きい反射波信号を取得することができる。
【0015】
一般的に、超音波が生体P内を伝播すると、出力強度に相当する超音波の振動の強さ(これは、音響パワーとも称する)が減衰する。音響パワーの減衰は、吸収、散乱および反射などによって起こる。また、音響パワーの減少の度合いは、超音波の周波数および超音波の放射方向の距離に依存する。例えば、超音波の周波数を大きくすることにより、減衰の度合いは大きくなる。また、超音波の放射方向の距離が長くなるほど、減衰の度合いは大きくなる。
【0016】
超音波受信回路120は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路120は、超音波プローブ101によって取得された超音波の反射波信号に対する受信信号を生成する。具体的には、超音波受信回路120は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、およびビームフォーマ(加算器)等により実現される。プリアンプは、超音波プローブ101が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調する。ビームフォーマは、例えば、復調されたディジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えて、遅延時間が与えられた複数のディジタル信号を加算する。ビームフォーマの加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。尚、受信信号は、IQ信号と呼ばれてもよい。また、超音波受信回路120は、受信信号(IQ信号)を、後述する内部記憶回路130に記憶させてもよいし、通信インタフェース170を介して外部装置104へ出力してもよい。
【0017】
内部記憶回路130は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路130は、超音波送受信を実現するためのプログラムおよび各種データ等を記憶している。プログラムおよび各種データは、例えば、内部記憶回路130に予め記憶されていてもよい。また、プログラムおよび各種データは、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路130にインストールされてもよい。また、内部記憶回路130は、入力インタフェース150を介して入力される操作に従い、処理回路180で生成されるBモード画像データ、造影画像データ、および血流映像に関する画像データ等を記憶する。内部記憶回路130は、記憶している画像データを、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送することも可能である。尚、内部記憶回路130は、超音波受信回路120で生成した受信信号(IQ信号)を記憶してもよいし、通信インタフェース170を介して外部装置104等に転送してもよい。
【0018】
なお、内部記憶回路130は、CDドライブ、DVDドライブ、およびフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路130は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置104に記憶させることも可能である。
【0019】
画像メモリ140は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、または半導体メモリ等、プロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ140は、入力インタフェース150を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ140に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
【0020】
上記の内部記憶回路130および画像メモリ140は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路130および画像メモリ140は、単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路130および画像メモリ140は、それぞれ複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0021】
入力インタフェース150は、入力装置102を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、およびタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース150は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路180へ出力する。なお、入力インタフェース150は、マウスおよびキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路180へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0022】
出力インタフェース160は、例えば処理回路180からの電気信号を出力装置103へ出力するためのインタフェースである。出力装置103は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力装置103は、入力装置102を兼ねたタッチパネル式のディスプレイでもよい。出力装置103は、ディスプレイの他に、音声を出力するスピーカーを更に含んでもよい。出力インタフェース160は、例えばバスを介して処理回路180に接続され、処理回路180からの電気信号を出力装置103に出力する。
【0023】
通信インタフェース170は、例えばネットワークNWを介して外部装置104と接続され、外部装置104との間でデータ通信を行う。
【0024】
処理回路180は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路180は、内部記憶回路130に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路180は、例えば、Bモード処理機能181と、ドプラ処理機能182と、画像生成機能183と、設定機能184と、送受信制御機能185と、表示制御機能186と、システム制御機能187とを有している。
【0025】
Bモード処理機能181は、超音波受信回路120から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。Bモード処理機能181において処理回路180は、例えば、超音波受信回路120から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0026】
ドプラ処理機能182は、超音波受信回路120から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報を抽出したデータ(ドプラ情報)を生成する機能である。生成されたドプラ情報は、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータ(ドプラデータとも称する)として不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0027】
具体的には、処理回路180は、ドプラ処理機能182により、例えば移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値、平均パワー値などを複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した運動情報を示すドプラデータを生成する。移動体は、例えば、血流や、心壁などの組織、造影剤である。第1の実施形態に係る処理回路180は、ドプラ処理機能182により、血流の運動情報(血流情報)として、血流の平均速度、血流速度の分散値、血流信号のパワー値などを、複数のサンプル点それぞれで推定し、推定した血流情報を示すドプラデータを生成する。
【0028】
さらに、処理回路180は、ドプラ処理機能182により、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行することができる。CFM法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行われる。そして、CFM法では、例えば、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、静止している組織、又は動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、CFM法では、抽出した血流信号を用いて、血流の速度、血流の分散、血流のパワーなどの血流情報を推定する。後述する画像生成機能183では、推定した血流情報の分布を、例えば、2次元でカラー表示した超音波画像データ(カラードプラ画像データ)として生成する。以降では、カラードプラ法を用いた超音波診断装置のモードを血流映像モードと称する。尚、カラー表示とは、血流情報の分布を所定のカラーコードに対応させて表示させるものであり、グレースケールもカラー表示に含まれるものとする。
【0029】
血流映像モードには、所望する臨床情報によって様々な種類がある。一般的には、血流の方向や血流の平均速度が可視化可能な速度表示用血流映像モードや、血流信号のパワーを可視化可能なパワー表示用血流映像モードがある。
【0030】
速度表示用血流映像モードは、血流の方向や血流の平均速度によってドプラシフト周波数に対応した色を表示するモードである。例えば、速度表示用血流映像モードは、流れの方向として、向かってくる流れを赤系色、遠ざかる流れを青系色で表し、それぞれの速度の違いを色相の違いで表す。速度表示用血流映像モードは、カラードプラモードや、カラードプライメージング(Color Doppler Imaging:CDI)モードと呼ばれることもある。
【0031】
パワー表示用血流映像モードは、例えば、血流信号のパワーを赤系色の色相、色の明るさ(明度)または彩度の変化で表すモードである。パワー表示用血流映像モードは、パワードプラ(Power Doppler:PD)モードと呼ばれることもある。パワー表示用血流映像モードは、速度表示用血流映像モードと比べて高感度に血流を描出できることから、高感度血流映像モードと呼ばれてもよい。
【0032】
画像生成機能183は、Bモード処理機能181により生成されたデータに基づいて、Bモード画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能183において処理回路180は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の画像データ(表示用画像データ)を生成する。具体的には、処理回路180は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元Bモード画像データ(超音波画像データとも称する)を生成する。換言すると、処理回路180は、画像生成機能183により、超音波の送受信によって、連続する複数のフレームにそれぞれ対応する複数の超音波画像(医用画像)を生成する。
【0033】
また、画像生成機能183は、ドプラ処理機能182により生成されたデータに基づいて、ドプラ画像データを生成する機能も有する。例えば、画像生成機能183は、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又はこれらを組み合わせた画像データである。処理回路180は、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示されるカラードプラ画像データ、および一つの血流情報がグレースケールで波形状に表示されるドプラ画像データを生成する。カラードプラ画像データは、前述の血流映像モードの実行時に生成される。
【0034】
設定機能184は、複数のアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する。アンサンブルグループは、走査領域のうちの複数の部分領域である部分走査領域それぞれにおける、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含む。
【0035】
送受信制御機能185は、設定機能184により設定されたスキャン順に応じて超音波を超音波送信回路110を介して送信させ、生体Pからのエコー信号を超音波受信回路120を介して受信させ、スキャン順に整列して受信信号を生成する。
【0036】
表示制御機能186は、画像生成機能183により生成された各種超音波画像データに基づく画像を出力装置103としてのディスプレイに表示させる機能である。具体的には、例えば、表示制御機能186により処理回路180は、画像生成機能183により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む画像データに基づく画像のディスプレイにおける表示を制御する。
【0037】
より具体的には、表示制御機能186により処理回路180は、例えば、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像データを生成する。また、処理回路180は、表示用画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、及びγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行してもよい。また、処理回路180は、表示用画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。また、処理回路180は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIをディスプレイに表示させてもよい。
【0038】
システム制御機能187は、超音波診断装置1全体の動作を統括して制御する機能である。例えば、システム制御機能187において処理回路180は、造影剤を用いた検査モード(造影検査モード)の実行中において、送信開口合成のためのスキャンを実行するように超音波送信回路110および超音波受信回路120を制御する。
【0039】
次に、本実施形態に係る超音波診断装置の動作例について
図2のフローチャートを参照して説明する。
ステップSA1では、設定機能184により処理回路180が、アンサンブルグループ数およびインタリーブ数を決定する。アンサンブルグループ数は、走査領域において設定されたアンサンブルグループの数である。例えば、走査領域を3つの部分領域に分割する場合は、アンサンブルグループ数は「3」となる。インタリーブ数は、1つのアンサンブルグループ内に含まれる送信ビームの本数、つまり走査線の本数である。例えば、アンサンブルグループ内に4本の走査線が含まれれば、インタリーブ数は「4」となる。なお、詳細については、
図3および
図4を参照して後述する。
【0040】
ステップSA2では、設定機能184により処理回路180が、同一の走査線上での複数回の超音波送受信を含むアンサンブルグループにおいて、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信の距離が閾値以上となり、かつ異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する走査線に対して超音波送受信の時間差が閾値以上となるようにスキャン順を設定する。
例えば設定機能184により処理回路180が、第1アンサンブルグループの最後の超音波送受信と、次にスキャンする第2アンサンブルグループの最初の超音波送受信との距離および時間差の少なくとも一方が閾値以上となるように、アンサンブルグループ間、およびアンサンブルグループ内での超音波送受信に関するスキャン順を設定する。
【0041】
ステップSA3では、送受信制御機能185により処理回路180が、ステップSA2で設定されたスキャン順に従って、超音波送信回路110を介して超音波プローブ101から超音波を生体Pに送信する。
【0042】
ステップSA4では、送受信制御機能185により処理回路180が、生体Pの体内で反射したエコー信号を超音波受信回路120を介して受信する。
【0043】
ステップSA5では、送受信制御機能185により処理回路180が、スキャン順に沿ってエコー信号を並び替え、画像生成機能183により処理回路180が、ドプラ画像を生成する。生成されたドプラ画像は、例えばディスプレイなどの出力装置103に表示される。
【0044】
次に、本実施形態に係るスキャン領域について
図3を参照して説明する。
図3には、超音波プローブ101によってカラードプラ画像データが収集される関心領域Rを例示する。なお、説明の都合上、スキャン領域全体をカラードプラ画像の関心領域Rとする。
【0045】
図3に示すように、超音波診断装置1は、例えば、1フレーム分のカラードプラ画像データを収集するために、関心領域Rのカラードプラモードスキャンを実行する。この関心領域Rは、例えば、送受信される6本のビーム(走査線)により構成される。具体的には、超音波診断装置1は、関心領域Rを、6本のビームそれぞれに対応する領域R1から領域R6に分ける。
【0046】
さらに、超音波診断装置1は、関心領域Rである走査領域を複数の部分走査領域となるように、複数のグループに分割して走査する。具体的には、超音波診断装置1は、領域R1から領域R3までのアンサンブルグループAG1と、領域R4から領域R6までのアンサンブルグループAG2との2つのアンサンブルグループに分割して関心領域Rを走査する。よって、それぞれのアンサンブルグループは、3本のビームにより構成される。
【0047】
次に、本実施形態に係る設定機能184によるスキャン順の第1設定例について、
図4を参照して説明する。
図4は、超音波送受信の順序を示した超音波走査チャートUSC1である。超音波走査チャートUSC1の水平方向は、スキャン方向であり、
図3の領域R1から領域R6における超音波送受信に対応する。超音波走査チャートUSC1の垂直方向は、時間方向であり、領域R1から領域R6における超音波送受信の順序に対応する。また、超音波走査チャートUSC1内の数字は、超音波送受信の時刻に対応する。
【0048】
CFM法では、1フレーム分の血流情報を生成するために、同一位置における反射波データのデータ列が用いられる。このため、超音波診断装置1は、関心領域Rのカラードプラモードスキャンを繰り返し実行することにより、関心領域R内の各位置(サンプル点)のデータ列を収集する。例えば、超音波診断装置1は、関心領域Rのカラードプラモードスキャンを、所定の繰り返し周期で3回実行することにより、1フレーム分のカラードプラ画像データを収集する。
図4に示す例では、超音波診断装置1は、分割されたアンサンブルグループAG1およびアンサンブルグループAG2について、カラードプラモードスキャンを3回ずつ実行する。言い換えると、繰り返し周期は、カラードプラモードスキャンを繰り返す周期に対応する。なお、グループ内において、カラードプラモードスキャンを繰り返す回数は、アンサンブル数Nensと呼ばれる。このアンサンブル数Nensは、ユーザによって指定される。
【0049】
ここで、音響PRF(Pulse Repetition Frequency)は、あるビームが送信されてから次のビームが送信されるまでの期間(時間)の逆数に対応する。つまり、音響PRFの逆数「f-Inv」は、例えば、超音波送受信が実行されてから、次の超音波送受信が実行されるまでの時間に対応するので、各ビームの送受信にかかる送受信時間T1に対応するといえる。なお、音響PRFは、例えば関心領域Rの下端の位置(深さ)と、流速レンジと、超音波の受信周波数とのうちの少なくとも一つに基づいて決定される。換言すると、超音波診断装置1は、関心領域Rの深さ(ROIの深さ)、流速レンジ、および超音波の受信周波数の少なくとも1つに基づいて送受信時間T1を決定する。
図4の例では、送受信時間T1は、例えば時刻t1において領域R3での超音波送受信が実行されてから、時刻t2において領域R2での超音波送受信が実行されるまでの時間に対応する。
【0050】
次に、超音波診断装置1は、カラードプラモードスキャンの繰り返し周期T2を算出する。ここで、繰り返し周期T2は、ある領域での送受信が繰り返し実行される期間(時間)に対応する。つまり、繰り返し周期T2は、例えば、グループ内におけるカラードプラモードスキャンを複数回実行する際の、ある領域での超音波送受信が実行されてから、他の領域での超音波送受信の期間を経て、再び同じ領域での超音波送受信が実行されるまでの時間に対応する。この繰り返し周期T2は、最大検出流速が高流速であれば、早く次の超音波送受信を実行する必要があるため小さくなり、反対に、低流速であれば大きくなる。このため、超音波診断装置1は、設定された流速レンジの最大検出流速に基づいて、繰り返し周期T2を算出する。なお、繰り返し周期T2は、関心領域を分割した各領域において同一の値となる。
図4の例では、繰り返し周期T2は、例えば時刻t4において領域R3での超音波送受信が実行されてから、時刻t7において再び領域R3での超音波送受信が実行されるまでの時間に対応する。
【0051】
次に、超音波診断装置1は、繰り返し周期T2と音響PRF(或いは、送受信時間T1)とに基づいて、インタリーブスキャンのインタリーブ数(交互段送信方向数)Ndirを算出する。ここで、インタリーブスキャンとは、CFM法により所定の領域(例えば、一つの領域)のデータ列を収集する際に、一つの領域について連続して超音波送受信を実行するのではなく、複数の領域を1つのグループとし、このグループに含まれる複数の領域で順番に超音波送受信を実行する方式である。
図4では、例えば、3つの領域R1から領域R3のアンサンブルグループにおいて、領域R1~R3への超音波送信を順番に実行した後に、領域R1~領域R3からのエコー信号の受信を順番に実行し、これを所定の回数繰り返す。このインタリーブスキャンにおいて、1つのアンサンブルグループに含まれる領域の数がインタリーブ数Ndirと呼ばれる。つまり、インタリーブ数Ndirは、各グループに含まれる領域の数、言い換えれば走査線の本数に対応する。
図4に示す例では、アンサンブル数Nensおよびインタリーブ数Ndirがともに「3」に設定された場合を示す。
【0052】
ここで本実施形態に係るスキャン順の第1設定例では、設定機能184により処理回路180が、走査領域全体に対するスキャン方向に対して、各アンサンブルグループ内のスキャン方向が逆方向になるようにスキャン順を設定する。具体的には、走査領域に対応する超音波走査チャートUSC1のスキャン方向が領域R1から領域R6に向かう方向であるのに対し、アンサンブルグループAG1内において、時刻t1では領域R3の超音波送受信、時刻t2では領域R2の超音波送受信、時刻t3では領域R1の超音波送受信、といったように、領域R3から領域R1に向かう方向にスキャンする。アンサンブルグループAG2も同様に、時刻t10では領域R6の超音波送受信、時刻t11では領域R5の超音波送受信、時刻t12では領域R4の超音波送受信、といったように、領域R6から領域R4に向かう方向にスキャンする。
【0053】
まず、超音波診断装置1は、アンサンブルグループAG1についてカラードプラモードスキャンを3回ずつ実行する。具体的には、超音波診断装置1は、時刻t1から時刻t3において領域R3から領域R1に対応する超音波送受信を行い、時刻t4から時刻t6において領域R3から領域R1に対応する超音波送受信を行い、時刻t7から時刻t9において領域R3から領域R1に対応する超音波送受信を行う。
【0054】
アンサンブルグループAG1についてのスキャンが実行された後、超音波診断装置1は、アンサンブルグループAG2についてカラードプラモードスキャンを3回ずつ実行する。具体的には、超音波診断装置1は、時刻t10から時刻t12において領域R6から領域R4に対応する超音波送受信を行い、時刻t13から時刻t15において領域R6から領域R4に対応する超音波送受信を行い、時刻t16から時刻18において領域R6から領域R4に対応する超音波送受信を行う。
【0055】
アンサンブルグループAG2についてのスキャンが実行された後、超音波診断装置1は、以降同様にアンサンブルグループAG1およびアンサンブルグループAG2のそれぞれについて交互にカラードプラモードスキャンが実行される。
【0056】
ここで従来手法のように、走査領域のスキャン方向と、各アンサンブルグループのスキャン方向を同一にした場合は、アンサンブルグループAG1における最後の超音波送受信は、領域R3の時刻t9であり、次のスキャン対象となるアンサンブルグループAG2の最初の超音波送受信は、領域R4の時刻t10となる。よって、アンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送信間の距離、つまり時刻t9と時刻t10とにおいて超音波送受信が行われる領域の距離は「1」である。さらに、アンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域の超音波送受信の時間差、つまり、領域R3と領域R4とにおいて超音波送受信が行われる時間差も「1」である。
【0057】
一方、
図4に示す本実施形態の第1設定例に係るスキャン順によれば、アンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送信間の距離41、つまりアンサンブルグループAG1における最後の超音波送受信の時刻t9と、次のスキャン対象となるアンサンブルグループAG2の最初の超音波送受信の時刻t10との距離41は、領域R1と領域R6との差分である「5」領域分の距離差に設定できる。
さらに、アンサンブルグループAG1とアンサンブルグループAG2との境界となる隣接する領域R3と領域R4とにおいて、領域R3の超音波送受信の時刻t7から領域R4の超音波送受信の時刻t12までの時間差42が「5」送受信時間T1分の時間差に設定できる。
【0058】
これにより、アンサンブルグループ間で、時間的に隣接する超音波送受信(
図4では時刻t9と時刻t10)に対しては距離的間隔を開けることができ、かつ距離的に隣接する領域(
図4では領域R3と領域R4)に対しては超音波送受信の時間的間隔を空けることができる。よって、従来手法と比較して映像化に影響する残留多重ノイズを大幅に低減することができる。
【0059】
次に、
図4の超音波走査チャートを簡略化した超音波走査チャートについて
図5に示す。
図5の超音波走査チャートUSC2は、
図4の超音波走査チャートUSC1と同様の内容を有する。具体的には、超音波走査チャートUSC2は、超音波走査チャートUSC1の時間方向の図示を圧縮したものである。例えば、超音波走査チャートUSC2において、横方向は、インタリーブ数Ndirの組に対応する。そのため、超音波走査チャートUSC2の1行目は、超音波走査チャートUSC1の時刻t1から時刻t3の3行分に相当する。よって、超音波走査チャートUSC1では18行で図示していた超音波送受信の順序を、超音波走査チャートUSC2では6行で図示することができる。以降では、この超音波走査チャートUSC2の図示を利用して説明する。
【0060】
次に、本実施形態に係る設定機能184によるスキャン順の第2設定例について
図6を参照して説明する。
図6は、超音波送受信によるエコー信号をドプラ画像の合成に用いない、ダミー超音波送受信を設定する例である。アンサンブルグループAG1およびアンサンブルグループAG2はそれぞれ、インタリーブ数Ndirは「3」、アンサンブル数Nensは「4」に設定される場合を想定する。
【0061】
アンサンブルグループAG1の最初の超音波送受信、つまり時刻t1の領域R1における超音波送受信は、ダミー超音波送受信D1に設定され、時刻t2の領域R3の超音波送受信から
図5と同様に、走査領域のスキャン方向とは逆方向に超音波送受信のスキャン順が設定される。同様に、アンサンブルグループAG2の最初の超音波送受信、つまり時刻t14の領域R4における超音波送受信は、ダミー超音波送受信D2に設定され、時刻t15の領域R6における超音波送受信から、走査領域のスキャン方向とは逆方向に超音波送受信のスキャン順が設定される。
【0062】
これにより、アンサンブルグループAG1の最後の超音波送受信(時刻t13の領域R1)の次の時刻t14はダミーデータとして扱われるため、
図4の場合と比較して、アンサンブルグループAG2の最初の超音波送受信(時刻t15の領域R6)までの時間差をより確保できる。そのため、スキャン順の第1設定例と比較して残留多重ノイズをより低減できる。
【0063】
次に、本実施形態に係る設定機能184によるスキャン順の第3設定例について
図7を参照して説明する。
図6では、各アンサンブルグループで1つのダミー超音波送受信を行う例を示したが、
図7では、複数のダミー超音波送受信を行う点が異なる。アンサンブルグループAG1の最初から4つのダミー超音波送受信D1~D4を行う。具体的には、領域R1に対して時刻t1でダミー超音波送受信D1を行い、領域R3に対して時刻t2でダミー超音波送受信D2を行い、領域R2に対して時刻t3でダミー超音波送受信D3を行い、領域R1に対して時刻t4でダミー超音波送受信D4を行う。アンサンブルグループAG2も同様に、領域R4に対して時刻t17でダミー超音波送受信D5を行い、領域R6に対して時刻t18でダミー超音波送受信D6を行い、領域R5に対して時刻t19でダミー超音波送受信D7を行い、領域R4に対して時刻t20でダミー超音波送受信D8を行う。
【0064】
このように、
図7に示すスキャン順の第3設定例によれば、アンサンブルグループAG1の最後の超音波送受信(時刻t16の領域R1)の次の時刻t17から時刻t20までは、ダミーデータとなり、
図6の場合と比較して、アンサンブルグループAG2の先頭の超音波送受信(時刻t121の領域R6)まで、時間差をより確保できる。そのため、スキャン順の第2設定例と比較して残留多重ノイズをより低減できる。
なお、ダミー超音波送受信を増やすほど、残留多重ノイズを低減できる一方、フレームレートが低下するというトレードオフの関係がある。よって、設定機能184により処理回路180は、許容されるフレームレートに応じてダミー超音波送受信の数を設定すればよい。
【0065】
次に、本実施形態に係るスキャン順の第4設定例について
図8を参照して説明する。
上述の例では、走査領域のスキャン方向とアンサンブルグループ内のスキャン方向とが逆方向になるようにスキャン順を設定したが、
図8では、走査領域のスキャン方向と各アンサンブルグループ内のスキャン方向が同一である例を示す。この場合、設定機能184により処理回路180は、隣接するアンサンブルグループを続けてスキャンせず、アンサンブルグループのスキャン方向に対して、少なくとも1つは隣接するアンサンブルグループを飛ばしてスキャン順を設定する。
【0066】
具体的には、アンサンブルグループAG1を走査領域のスキャン方向と同一の方向のスキャン順で超音波送受信を行った後、アンサンブルグループAG2を飛ばして、アンサンブルグループAG3を走査領域のスキャン方向と同一の方向のスキャン順で超音波送受信を行う。その後、残りのアンサンブルグループAG2についてスキャンを実施すればよい。
【0067】
これにより、アンサンブルグループAG1の最後の超音波送受信(時刻t12の領域R3)からアンサンブルグループAG3の最初の超音波送受信(時刻t13の領域R7)まで「4」領域分、距離を空けることができる。続いて、アンサンブルグループAG3の最後の超音波送受信(時刻t24の領域R9)からアンサンブルグループAG2の最初の超音波送受信(時刻t25の領域R4)まで「5」領域分、距離を空けることができる。
また、アンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域間では、アンサンブルグループAG1の領域R3が時刻t12の超音波送受信であり、アンサンブルグループAG2の領域R4が時刻t25の超音波送受信であるため、「13」送受信時間T1分の時間差を確保できる。アンサンブルグループAG2の領域R6が時刻t27の超音波送受信であり、アンサンブルグループAG3の領域R7が時刻t22の超音波送受信であるため、「5」送受信時間T1分の時間差を確保できる。
【0068】
なお、
図8の例では、3つのアンサンブルグループAG1~AG3のスキャン順について説明したが、設定機能184により処理回路180は、4つ以上のアンサンブルグループについても同様に、隣接するアンサンブルグループを飛ばしたスキャン順を設定してもよい。例えば、走査領域のスキャン方向に沿って5つのアンサンブルグループAG1~AG5が存在する場合、アンサンブルグループAG1、アンサンブルグループAG3、アンサンブルグループAG5、アンサンブルグループAG2およびアンサンブルグループAG4の順で、隣接するアンサンブルグループを飛ばすようにスキャン順が設定されればよい。
【0069】
次に、本実施形態に係るスキャン順の第5設定例について
図9を参照して説明する。
第5設定例では、各アンサンブルグループに属する領域を1つずつ選択して超音波送受信を行うように、スキャン順が設定される例を示す。具体的には、アンサンブルグループAG1の領域R1に対して時刻1で超音波送受信が、アンサンブルグループAG2の領域R4に対して時刻t2で超音波送受信が、アンサンブルグループAG3の領域7に対して時刻t3で超音波送受信がそれぞれ行われる。その後、アンサンブルグループAG1に戻り、領域R2に対して時刻t4で超音波送受信が、といったようにアンサンブルグループAG1~AG3間で1つずつ超音波送受信の領域が選択されるように、スキャン順が設定される。
【0070】
これにより、アンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信間では、領域R1(時刻t1)と領域R4(時刻t2)との距離、領域R4(時刻t2)と領域R7(時刻t3)との距離、つまり「3」領域分の距離を確保できる。
さらに、アンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域間では、時刻t7(領域3)と時刻t2(領域R4)との時間差、時刻t8(領域6)と時刻t3(領域R7)との時間差、つまり「5」送受信時間T1分の時間差を確保できる。
【0071】
次に、本実施形態に係るスキャン順の第6設定例について
図10を参照して説明する。
図10は上述の設定例の組み合わせた場合であり、ここではスキャン順の第1設定例と第4設定例との組み合わせを示す。具体的には、アンサンブルグループAG1は、走査領域のスキャン方向と逆方向のスキャン順で時刻t1から時刻t12までの超音波送受信を行った後、アンサンブルグループAG1に隣接するアンサンブルグループAG2を飛ばし、アンサンブルグループAG3について、走査領域のスキャン方向と同一の方向のスキャン順で時刻t13から時刻t24までの超音波送受信を行う。その後、アンサンブルグループAG2について、走査領域のスキャン方向と逆方向のスキャン順で、時刻t25から時刻t36までの超音波送受信を行う。
【0072】
これにより、アンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信間では、アンサンブルグループAG1の領域R1(時刻t12)とアンサンブルグループAG3の領域R7(時刻t13)との距離である「6」領域分、アンサンブルグループAG3の領域R9(時刻24)とアンサンブルグループAG2の領域R6(時刻t25)との距離である「3」領域分の距離を確保できる。
さらに、アンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域間では、時刻t10(領域R3)と時刻t27(領域R4)との時間差である「17」送受信時間T1分の時間差を確保できる。また、時刻t22(領域R7)と時刻t25(領域R6)との時間差である「3」送受信時間T1分の時間差を確保できる。
【0073】
上述のように、スキャン順の各設定例を組み合わせることができるが、組み合わせの基準として、アンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信間では、超音波送受信に係る領域間の距離差が閾値以上となればよい。当該閾値は、残留多重ノイズがでない、または残留多重ノイズの影響が許容できるレベルとなるように、言い換えれば、残留多重ノイズが所定値以下となるように、例えば実測データから設計されればよい。また、アンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域間では、超音波送受信に係る時間差が閾値以上となればよい。当該閾値も同様に、残留多重ノイズが所定値以下となるように実測データなどから設計されればよい。
【0074】
以上に示した本実施形態によれば、設計機能により処理回路が、異なるアンサンブルグループ間で時間的に隣接する超音波送受信間では、距離差が閾値以上となり、異なるアンサンブルグループ間で距離的に隣接する領域間では、時間差が閾値以上となるように、超音波送受信に係るスキャン順を設計する。これにより、超音波送受信に対して残留多重ノイズの影響を大幅に低減することができる。結果としてフレームレートを維持しつつノイズを低減することができる。
【0075】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、フレームレートを維持しつつノイズを低減することができる。
【0076】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0077】
加えて、実施形態に係る各機能は、上述の処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに上述の手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0078】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1 超音波診断装置
41 距離
42 時間差
100 装置本体
101 超音波プローブ
102 入力装置
103 出力装置
104 外部装置
110 超音波送信回路
120 超音波受信回路
130 内部記憶回路
140 画像メモリ
150 入力インタフェース
160 出力インタフェース
170 通信インタフェース
180 処理回路
181 Bモード処理機能
182 ドプラ処理機能
183 画像生成機能
184 設定機能
185 送受信制御機能
186 表示制御機能
187 システム制御機能
NW ネットワーク