(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053917
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】フェロコークス用石炭の評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/22 20060101AFI20240409BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20240409BHJP
C10B 57/06 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
G01N33/22 A
C10B53/08
C10B57/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160434
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 幹也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 英和
(72)【発明者】
【氏名】庵屋敷 孝思
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA04
4H012PA00
(57)【要約】
【課題】フェロコークスの強度および乾留炉内での融着率を正確に評価することができるフェロコークス用石炭の評価方法を提案する。
【解決手段】石炭と鉄鉱石との混合物を成型し乾留してなるフェロコークスの原料としての石炭を評価する方法であって、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物であるN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンが添加されて軟化溶融特性が向上した石炭の軟化溶融特性に関する物性値を指標として、前記石炭の軟化溶融特性を評価する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭と鉄鉱石との混合物を成型し乾留してなるフェロコークスの原料としての石炭を評価する方法であって、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物であるN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンが添加されて軟化溶融特性が向上した石炭の軟化溶融特性に関する物性値を指標として、前記石炭の軟化溶融特性を評価することを特徴とする、フェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項2】
前記石炭の軟化溶融特性に関する物性値が、ギーセラー最高流動度MFであることを特徴とする、請求項1に記載のフェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項3】
前記アミン系化合物が添加される前の石炭は、ギーセラー最高流動度MFが10ddpm以下の低MFの石炭であることを特徴とする、請求項2に記載のフェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項4】
本評価方法を、フェロコークスの強度の評価および乾留炉でのフェロコークス成型物の融着率の評価に用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のフェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項5】
本評価方法を、ギーセラー最高流動度MFが200ddpm以上の高MFの石炭とギーセラー最高流動度MFが10ddpm以下の低MFの石炭とを組み合わせ、かつ、高MFの石炭と低MFの石炭の配合重量の総和に対する高MFの石炭の重量比率が15mass%以上の時に用いることを特徴とする、請求項4に記載のフェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項6】
本評価方法を、石炭と鉄鉱石との原料重量の総和に対する鉄鉱石の重量比率が40mass%以下の時に用いることを特徴とする、請求項5に記載のフェロコークス用石炭の評価方法。
【請求項7】
請求項1~3、5および6のいずれか1項に記載のフェロコークス用石炭の評価方法を用いたフェロコークスの製造方法であって、使用可能と評価された石炭を含む配合炭を乾留してフェロコークスを製造する、フェロコークスの製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載のフェロコークス用石炭の評価方法を用いたフェロコークスの製造方法であって、使用可能と評価された石炭を含む配合炭を乾留してフェロコークスを製造する、フェロコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭と鉄鉱石との混合物を乾留することによって得られるフェロコークスの原料である石炭の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の操業を効率よく行うために、石炭をコークス炉で乾留して製造したコークスが高炉に装入されている。高炉内に装入されたコークスには、高炉内の通気をよくするためのスペーサーの役割、還元材としての役割、熱源としての役割などがある。近年、コークスの反応性を向上させるという観点から、コークスの代わりに冶金用のフェロコークスを用いる技術が知られている。
【0003】
フェロコークスの製造方法としては、主原料となる石炭、鉄鉱石について予め粉砕、乾燥などの調製を行い、その後、数mass%のバインダーとともに混練機内で攪拌、混練後、ダブルロール式の成型機にて成型物とし、この成型物を竪型の乾留炉で乾留し、フェロコークスとする方法が想定される。乾留後のフェロコークスは、高炉原料として一定以上の品質(強度、反応性)を求められるほか、乾留炉内で成型物同士が融着せず、粒子単体として乾留炉より排出される必要があるため、乾留時の成型物の融着率も重要となる。
【0004】
このように、フェロコークスにはさまざまな品質が求められており、その品質を制御するための原料評価技術の開発が進められている。例えば、特許文献1では、原料に含まれる易軟化性石炭のボタン指数(CSN)の値と配合率の積により、フェロコークス強度への影響を評価する方法が提案されている。また、特許文献2では、鉄鉱石中の結晶水の割合に応じて定められたギーセラー最高流動度(MF)を有する石炭を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/125727号
【特許文献2】特開2007-119602号公報
【特許文献3】国際公開第2016/136191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、フェロコークスの品質を制御するための原料評価技術は、検討されてきているものの十分には確立していない。例えば、特許文献1では、原料に含まれる易軟化性石炭のボタン指数の値と配合率の積によりフェロコークス強度への影響を評価する方法が提案されている。しかしながら、この方法ではCSN2.0以下の難軟化性石炭の影響については触れられていない。また、特許文献2では、ギーセラープラストメータによる最高流動度の値を用いているが、フェロコークスでは多量の使用が想定される低MFの石炭(例えば、MFが10ddpm以下)に対しては、その測定精度は高くないことが知られている。さらに、特許文献1および特許文献2において、乾留時の成型物融着率への影響についての評価方法については殆ど検討されておらず、特に軟化性の低い低MFの易軟化性石炭については十分に確立された評価方法は存在していない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、フェロコークスの強度および乾留炉内での融着率を正確に評価することができるフェロコークス用石炭の評価方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を実現するため、発明者らは、複数の銘柄および配合比で石炭、鉱石を組み合わせてフェロコークスを製造し、その性状と強度および乾留時の成型物の融着率との関係の調査を実施して、本発明を達成した。
【0009】
即ち、本発明は、石炭と鉄鉱石との混合物を成型し乾留してなるフェロコークスの原料としての石炭を評価する方法であって、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物であるN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンが添加されて軟化溶融特性が向上した石炭の軟化溶融特性に関する物性値を指標として、前記石炭の軟化溶融特性を評価することを特徴とする、フェロコークス用石炭の評価方法である。
【0010】
なお、前記のように構成される本発明に係るフェロコークス用石炭の評価方法においては、
(1)前記石炭の軟化溶融特性に関する物性値が、ギーセラー最高流動度MFであること、
(2)前記アミン系化合物が添加される前の石炭は、ギーセラー最高流動度MFが10ddpm以下の低MFの石炭であること、
(3)本評価方法を、フェロコークスの強度の評価および乾留炉でのフェロコークス成型物の融着率の評価に用いること、
(4)本評価方法を、ギーセラー最高流動度MFが200ddpm以上の高MFの石炭とギーセラー最高流動度MFが10ddpm以下の低MFの石炭とを組み合わせ、かつ、高MFの石炭と低MFの石炭の配合重量の総和に対する高MFの石炭の重量比率が15mass%以上の時に用いること、
(5)本評価方法を、石炭と鉄鉱石との原料重量の総和に対する鉄鉱石の重量比率が40mass%以下の時に用いること、
(6)上記フェロコークス用石炭の評価方法を用いて、使用可能と評価された石炭を含む配合炭を乾留してフェロコークスを製造すること、
がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように構成される本発明によれば、芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物であるN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンが添加されて軟化溶融特性が向上した石炭の軟化溶融特性に関する物性値を指標として、石炭の軟化溶融特性を評価することで、その石炭および鉄鉱石の混合物を成型し乾留してなるフェロコークスの強度および乾留炉内での融着率を正確に評価することが可能となり、安定的に高品質なフェロコークスを製造できるほか、乾留炉内での融着による乾留炉外排出不良などの想定外のトラブルを抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFとフェロコークス強度DIとの関係について、高MF炭のMF値の影響を示すグラフである。
【
図2】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFと乾留時の成型物の融着率との関係について、高MF炭のMF値の影響を示すグラフである。
【
図3】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFとフェロコークス強度DIとの関係について、高MF炭の配合比の影響を示すグラフである。
【
図4】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFと乾留時の成型物の融着率との関係について、高MF炭の配合比の影響を示すグラフである。
【
図5】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFとフェロコークス強度DIとの関係について、鉄鉱石の配合比の影響を示すグラフである。
【
図6】アミン系化合物が添加された評価対象の石炭のlogMFと乾留時の成型物の融着率との関係について、鉄鉱石の配合比の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
発明者らは複数の銘柄および配合比で石炭、鉱石を組み合わせてフェロコークスを製造し、その性状と強度および乾留時の成型物の融着率との関係の調査を実施し、以下の結果を見出した。
【0015】
フェロコークスの製造において、ギーセラー最高流動度MFが10ddpm以下の軟化性の低い難軟化性石炭(以下、低MF炭)のみを用いた場合は、ほぼ融着は起こらず、銘柄による違いは確認できなかった。一方、低MF炭とギーセラー最高流動度MFが200ddpm以上である軟化性の高い易軟化性石炭(以下、高MF炭)とを組み合わせてフェロコークスを製造した場合、低MF炭のMFの値に違いがなくとも、低MFの石炭の銘柄ごとに融着率に及ぼす影響が異なることを見出した。
【0016】
この影響を評価するために、石炭の種々の性状について調査した結果、コークスに用いる非粘結炭の粘結性の評価方法として、特許文献3に記載のN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを添加した石炭の軟化溶融特性に関する物性値としての最高流動度MFと、この低MF炭の融着率の違いに相関があることを見出した。これは、低MF炭の粘結性が乾留時の成型物の融着に影響していることを示唆しており、低MF炭に対してN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンなどの石炭の軟化溶融性を向上させる試薬を添加することで、従来のギーセラープラストメータ法では検知できなかった低MF炭の僅かな粘結性の違いを評価することができたためであると推察される。
【0017】
上記の通り、本発明に係る評価方法は、高MF炭と低MF炭とを組み合わせた場合の融着率の評価に用いることが有効である。特に、高MF炭と低MF炭とを組み合わせた場合の高MF炭の重量配合比が、石炭全体の重量に対し15mass%以上の時に、本発明に係る評価方法を適用することが望ましい。これは、低MFの石炭粒子同士は乾留時の接着性が乏しく、成型物同士を融着させることができないため銘柄ごとの差はなかったものの、低MF炭と高MF炭とを組み合わせた場合、高MF炭が高MF炭もしくは低MF炭と接着することで成型物同士を融着させることができ、高MF炭と低MF炭の界面の接着のし易さに、低MF炭の銘柄ごとのわずかな軟化溶融性の違いが影響を及ぼしたものと推察される。
【0018】
また、非溶融性の粒子である鉄鉱石の配合比が高い場合も融着は起きないため、鉄鉱石の重量比率が鉄鉱石と石炭との重量を合わせた全体の重量に対し、40mass%以下の場合に、この評価方法は有効となる。一方で、フェロコークス強度への影響の評価は、高MFの石炭の比率や鉄鉱石の比率に拠らず、その影響を評価することができた。これは、成型物の融着には影響を及ぼさない低MF炭の粒子同士の接着についても、強度には影響を及ぼしたためと推察される。
【0019】
なお、添加して石炭の軟化溶融特性を向上させるために用いる試薬としては、特許文献3と同様にN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン以外の石炭の軟化溶融性を向上させるフェノチアジン、カルバゾール、N-フェニル-1-ナフチルアミンなどを用いても評価可能である。
【実施例0020】
以下に、発明の実施例について詳細に説明する。
この実施例では、以下の方法で低MF炭を配合した場合のフェロコークスの強度DIおよび乾留時の融着率に及ぼす影響を調査した。低MF炭として、従来のギーセラープラストメータ法にて検出されるギーセラー最高流動度MFが等しい石炭5gに対し、試薬として芳香環を有する1級もしくは2級アミン系化合物であるN、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンを0.5g添加し、測定したMF(以後、試薬添加MF)が異なるA~D炭の4銘柄を選定した。A~D炭の従来の試薬を添加しなかった場合の従来法MFと試薬添加MFとを、以下の表1に示す。
【0021】
【0022】
表1に示す低MF炭1銘柄と高MF炭1銘柄とをそれぞれ全量2mm以下に粉砕するとともに、鉄鉱石(T.Fe:56mass%のピソライト鉱石)を全量3mm以下に粉砕し、高速撹拌機内で、粉砕した石炭および鉄鉱石に対し、バインダーとしてのアスファルトピッチ、コールタール、軟ピッチをそれぞれ全原料重量に対し2.4mass%、2.0mass%、3.6mass%添加して、160℃に加熱しながら混練した。その後、ロールサイズ650mmφ×104mmの成型機にて、回転数2rpm、線圧は1~4ton/cmで成型し、30mm×25mm×18mm(6cc)の卵型の成型物とした。続いて、以下のラボスケールの乾留手法(固定層)で、成型物の乾留を行った。縦200mm、横60mm、高さ200mmの乾留缶に成型物を充填し、最大850℃のプログラムヒーティングにより4時間20分かけて乾留した後、窒素雰囲気で冷却した。冷却後、乾留缶内からフェロコークスを取り出し、2個以上のフェロコークスが融着したサンプルの重量比率を融着率と定義し、融着率と低MF炭の試薬添加MFとの関係を調査した。なお、30ton/day規模のパイロットスケールの連続式乾留炉にて、融着率が30mass%以下の場合は、トラブルなく排出されることを確認している。得られたフェロコークスのドラム強度DI(150/15)を測定し、強度に及ぼす配合構成の影響を調査した。
【0023】
高MF炭のMF、配合比、低MF炭銘柄、および鉄鉱石の配合比と得られたフェロコークスの強度および乾留時の融着率の関係を、以下の表2に示す。ここに記載の高MF炭配合比とは、石炭総重量に対する高MF炭の重量比率であり、鉄鉱石の配合比とは石炭と鉱石の総重量に対する鉄鉱石の重量比率で表しており、いずれも単位はmass%である。表2に示したとおり、種々の配合条件にてフェロコークスを調製し、その強度および融着率を測定した。
【0024】
【表2】
※1:高MF炭の配合比(mass%)は石炭総量中の高MF炭の重量比率で表記
※2:鉄鉱石の配合比(mass%)は石炭と鉄鉱石の総量中の鉄鉱石の重量比率で表記
【0025】
まず、高MF炭の配合比を30mass%、鉄鉱石の配合比を40mass%で一定とし、高MF炭のMFの影響を評価した結果を
図1、2に示す。
図1の縦軸はフェロコークス強度DIの測定結果であり、
図2の縦軸は乾留時融着率の測定結果であり、横軸はいずれも低MF炭の試薬添加logMFである。
図1のように、高MF炭のMFが100ddpm~1000ddpmの範囲において、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど、ドラム強度DI(150/15)は高位となった。一方、
図2のように、乾留時融着率は高MF炭のMFが100ddpmの時は、低MF炭の試薬添加logMFの値によらずすべて融着率は0mass%であり、高MF炭のMFが200ddpm以上の場合に、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど乾留時融着率は高位となった。以上の結果から、低MF炭の試薬添加MFによるフェロコークス強度の評価は高MF炭のMFがいずれの値でも有効であり、乾留時融着率は高MF炭のMFが200ddpm以上の時に評価可能であることを確認した。
【0026】
続いて、MFが200ddpmの高MF炭を用いて、高MF炭の配合比の影響を評価した結果を
図3、4に示す。鉄鉱石の配合比は40mass%で一定とした。
図3の縦軸はフェロコークス強度DIの測定結果であり、
図4の縦軸は乾留時融着率の測定結果であり、横軸はいずれも低MF炭の試薬添加logMFである。
図3のように、高MF炭の配合比が5~50mass%の範囲において、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど、ドラム強度DI(150/15)は高位となった。一方、
図4のように、乾留時融着率は高MF炭の配合比が5mass%の時は、低MF炭の試薬添加logMFの値によらずすべて融着率は0mass%であり、高MF炭配合比が15mass%以上の場合は、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど乾留時融着率は高位となった。以上の結果から、低MF炭の試薬添加MFによるフェロコークス強度の評価はいずれの高MF炭配合比の場合でも有効であり、乾留時融着率は高MF炭配合比が15mass%以上の時に評価可能であることを確認した。
【0027】
さらに、MFが200ddpmの高MF炭を用いて、高MF炭の配合比を30mass%に固定し、鉄鉱石の配合比の影響を評価した結果を
図5、6に示す。
図5の縦軸はフェロコークス強度DIの測定結果であり、
図6の縦軸は乾留時融着率の測定結果であり、横軸はいずれも低MF炭の試薬添加MFである。
図5のように、鉄鉱石の配合比10~50mass%の範囲において、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど、ドラム強度DI(150/15)は高位となった。一方、
図6のように、乾留時融着率は、鉄鉱石の配合比が50mass%の時は、MF炭の試薬添加logMFの値によらずすべて融着率は0mass%であり、鉄鉱石の配合比が40mass%以下の場合は、低MF炭の試薬添加logMFが高くなるほど、乾留時融着率は高位となった。以上の結果から、低MF炭の試薬添加MFによるフェロコークス強度の評価はいずれの鉄鉱石配合比の場合でも有効であり、乾留時融着率は鉄鉱石配合比40mass%以下の時に評価可能であることを確認した。
【0028】
以上の結果から、従来のギーセラープラストメータ法で、10ddpm以下の低MF炭をフェロコークス原料として用いる場合、低MF炭の試薬添加MFを用いることで、いずれの配合構成の場合でも、フェロコークス強度への影響が評価可能であること、また、高MF炭と低MF炭を組み合わせる場合において、高MF炭の配合比が15mass%以上かつ鉄鉱石の配合比が40mass%以下の場合では、低MF炭の試薬添加MFが乾留時の融着率の評価に有効であることを確認した。
本発明に係るフェロコークス用石炭の評価方法は、本発明の評価方法に従って評価した石炭および鉄鉱石の混合物を成型し乾留してなるフェロコークスの強度および乾留炉内での融着率を正確に評価することが可能となり、安定的に高品質なフェロコークスを製造できるほか、乾留炉内での融着による乾留炉外排出不良などの想定外のトラブルを抑止することが可能となるため、産業上有用である。