(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053928
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】清掃装置
(51)【国際特許分類】
A47L 1/02 20060101AFI20240409BHJP
B08B 1/32 20240101ALI20240409BHJP
【FI】
A47L1/02
B08B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160456
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】工藤 陸
(72)【発明者】
【氏名】奥村 洋治
【テーマコード(参考)】
3B116
【Fターム(参考)】
3B116AA31
3B116AB54
3B116BA02
3B116BA03
3B116BA14
3B116BA35
3B116BB22
3B116BB62
3B116CD42
3B116CD43
(57)【要約】
【課題】窓面等の清掃対象面を清掃するのに好適な清掃装置を提供すること。
【解決手段】清掃装置は、清掃対象面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布体と、洗浄液塗布体を清掃対象面に押し当てた状態で移動させるアクチュエータと、アクチュエータにより移動された洗浄液塗布体が清掃対象面の清掃範囲の境界に到達したことを検知する境界検知部と、洗浄液塗布体が清掃範囲の境界に到達したことが検知されると、清掃範囲内の未清掃部分を、アクチュエータによる洗浄液塗布体の次の移動路とするように、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布体と、
前記洗浄液塗布体を前記清掃対象面に押し当てた状態で移動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータにより移動された前記洗浄液塗布体が前記清掃対象面の清掃範囲の境界に到達したことを検知する境界検知部と、
前記洗浄液塗布体が前記清掃範囲の境界に到達したことが検知されると、前記清掃範囲内の未清掃部分を、前記アクチュエータによる前記洗浄液塗布体の次の移動路とするように、前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、を備える、
清掃装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記洗浄液塗布体を、前記清掃対象面と直交する第1軸並びに前記清掃対象面と平行で且つ互いに交差する第2軸及び第3軸を含む面内で移動させることができ、
前記アクチュエータ制御部は、
前記洗浄液塗布体を前記第1軸沿いの第1方向に移動させることにより、前記洗浄液塗布体を前記清掃対象面に押し当て、
前記清掃対象面に押し当てられた前記洗浄液塗布体を前記第2軸沿いに移動させる、又は、前記洗浄液塗布体を、前記第2軸方向に変位させるほど前記第3軸沿いの第2方向に変位させる方向であって、前記第2軸に対して傾いた所定の斜め方向に移動させることにより、前記清掃対象面に前記洗浄液を塗布し、
前記境界検知部により前記洗浄液塗布体が前記清掃範囲の境界に到達したことが検知されると、前記未清掃部分に向けて、前記洗浄液塗布体を前記第2方向と反対の第3方向に移動させ、
前記未清掃部分へ移動された前記洗浄液塗布体を前記第2軸沿い又は前記所定の斜め方向に移動させることにより、前記未清掃部分に前記洗浄液を塗布する、
請求項1に記載の清掃装置。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御部は、
前記洗浄液塗布体を前記未清掃部分に向けて移動させる際、前記洗浄液塗布体が前記清掃対象面に押し当てられた状態で前記清掃対象面内の清掃済み部分を移動しないように、前記洗浄液塗布体を前記第1方向と反対方向に移動させて、前記洗浄液塗布体を前記清掃対象面から離隔する、
請求項2に記載の清掃装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御部は、
前記境界検知部による検知結果に基づいて前記洗浄液塗布体を前記清掃範囲の第1の隅部に移動させ、
前記第1の隅部を基点として、前記清掃対象面に押し当てられた前記洗浄液塗布体を前記清掃範囲の第1の境界線沿いに移動させ、
前記未清掃部分へ向けた前記洗浄液塗布体の前記第3方向の移動及び前記清掃対象面に押し当てられた前記洗浄液塗布体の前記第2軸沿い又は前記所定の斜め方向の移動を繰り返し、
前記境界検知部により、前記洗浄液塗布体が、前記第1の隅部と向かい合う、前記清掃範囲の第2の隅部に到達したことが検知されると、前記清掃対象面に押し当てられた前記洗浄液塗布体を、前記第1の境界線と向かい合う、前記清掃範囲の第2の境界線沿いに移動させる、
請求項2に記載の清掃装置。
【請求項5】
前記境界検知部は、前記アクチュエータにより移動された前記洗浄液塗布体が前記清掃対象面の端部に接触したことを検知すると、又は、前記洗浄液塗布体が可動範囲の限界位置まで移動すると、前記洗浄液塗布体が前記清掃範囲の境界に到達したと検知する、
請求項1に記載の清掃装置。
【請求項6】
筐体と、
前記清掃対象面を含む構造物の面に前記筐体を吸着固定する吸着部と、を更に備える、
請求項1に記載の清掃装置。
【請求項7】
前記吸着部は、前記筐体の下部だけに設けられる、
請求項6に記載の清掃装置。
【請求項8】
前記洗浄液を収容する収容部と、
前記収容部に収容された洗浄液を前記洗浄液塗布体に供給する供給部と、
前記洗浄液塗布体に供給された少なくとも一部の洗浄液を前記収容部内に回収する回収部と、を更に備える、
請求項1に記載の清掃装置。
【請求項9】
前記洗浄液が塗布された前記清掃対象面上の付着物を拭き取るワイパと、
前記洗浄液塗布体が前記清掃対象面に押し当ると前記ワイパも前記清掃対象面に押し当る位置関係で、前記洗浄液塗布体と前記ワイパとを支持する支持体と、を更に備える、
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の清掃装置。
【請求項10】
前記支持体は、前記清掃対象面に押し当てられた前記ワイパが前記アクチュエータにより前記洗浄液塗布体とともに移動されると、前記清掃対象面と平行な面内で、前記ワイパの長手方向の一端部を支点として前記ワイパが動いて傾くように、前記一端部において前記ワイパを傾き動作可能に支持する、
請求項9に記載の清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建物外壁面の清掃を自動で行う清掃ロボットが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の清掃ロボットは、ゴムスクイジや回転ブラシ等の清掃部を備える。この清掃部は、例えば清掃対象面の一例である窓面に押し当てられる。清掃部を窓面に押し当てた状態で清掃ロボットを降下させることにより、窓面が清掃される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示される従来の清掃ロボットでは、清掃ロボットを降下させて窓面を清掃部で拭き下げる際、例えば清掃部の幅が窓幅と同じ長さでなければ、窓面全体を拭くことができない。窓面全体を拭くためには、例えば清掃ロボットを吊り下げた楊重装置をオペレータが緻密に操作して、清掃ロボットの位置を細かく動かす必要がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、窓面等の清掃対象面を清掃するのに好適な清掃装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る清掃装置は、清掃対象面に洗浄液を塗布する洗浄液塗布体と、洗浄液塗布体を清掃対象面に押し当てた状態で移動させるアクチュエータと、アクチュエータにより移動された洗浄液塗布体が清掃対象面の清掃範囲の境界に到達したことを検知する境界検知部と、洗浄液塗布体が清掃範囲の境界に到達したことが検知されると、清掃範囲内の未清掃部分を、アクチュエータによる洗浄液塗布体の次の移動路とするように、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一実施形態において、アクチュエータは、例えば、洗浄液塗布体を、清掃対象面と直交する第1軸並びに清掃対象面と平行で且つ互いに交差する第2軸及び第3軸を含む面内で移動させることができる。より詳細には、アクチュエータ制御部は、洗浄液塗布体を第1軸沿いの第1方向に移動させることにより、洗浄液塗布体を清掃対象面に押し当て、清掃対象面に押し当てられた洗浄液塗布体を第2軸沿いに移動させる、又は、洗浄液塗布体を、第2軸方向に変位させるほど第3軸沿いの第2方向に変位させる方向であって、第2軸に対して傾いた所定の斜め方向に移動させることにより、清掃対象面に洗浄液を塗布し、境界検知部により洗浄液塗布体が清掃範囲の境界に到達したことが検知されると、未清掃部分に向けて、洗浄液塗布体を第2方向と反対の第3方向に移動させ、未清掃部分へ移動された洗浄液塗布体を第2軸沿い又は所定の斜め方向に移動させることにより、未清掃部分に洗浄液を塗布する構成としてもよい。
【0008】
本発明の一実施形態において、アクチュエータ制御部は、例えば、洗浄液塗布体を未清掃部分に向けて移動させる際、洗浄液塗布体が清掃対象面に押し当てられた状態で清掃対象面内の清掃済み部分を移動しないように、洗浄液塗布体を第1方向と反対方向に移動させて、洗浄液塗布体を清掃対象面から離隔する。
【0009】
本発明の一実施形態において、アクチュエータ制御部は、例えば、境界検知部による検知結果に基づいて洗浄液塗布体を清掃範囲の第1の隅部に移動させ、第1の隅部を基点として、清掃対象面に押し当てられた洗浄液塗布体を清掃範囲の第1の境界線沿いに移動させ、未清掃部分へ向けた洗浄液塗布体の第3方向の移動及び清掃対象面に押し当てられた洗浄液塗布体の第2軸沿い又は所定の斜め方向の移動を繰り返し、境界検知部により、洗浄液塗布体が、第1の隅部と向かい合う、清掃範囲の第2の隅部に到達したことが検知されると、清掃対象面に押し当てられた洗浄液塗布体を、第1の境界線と向かい合う、清掃範囲の第2の境界線沿いに移動させる。
【0010】
本発明の一実施形態において、境界検知部は、アクチュエータにより移動された洗浄液塗布体が清掃対象面の端部に接触したことを検知すると、又は、洗浄液塗布体が可動範囲の限界位置まで移動すると、洗浄液塗布体が清掃範囲の境界に到達したと検知する構成としてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る清掃装置は、筐体と、清掃対象面を含む構造物の面に筐体を吸着固定する吸着部と、を更に備える構成としてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、吸着部は、例えば筐体の下部だけに設けられる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る清掃装置は、洗浄液を収容する収容部と、収容部に収容された洗浄液を洗浄液塗布体に供給する供給部と、洗浄液塗布体に供給された少なくとも一部の洗浄液を収容部内に回収する回収部と、を更に備える構成としてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る清掃装置は、洗浄液が塗布された清掃対象面上の付着物を拭き取るワイパと、洗浄液塗布体が清掃対象面に押し当るとワイパも清掃対象面に押し当る位置関係で、洗浄液塗布体とワイパとを支持する支持体と、を更に備える構成としてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、支持体は、清掃対象面に押し当てられたワイパがアクチュエータにより洗浄液塗布体とともに移動されると、清掃対象面と平行な面内で、ワイパの長手方向の一端部を支点としてワイパが動いて傾くように、一端部においてワイパを傾き動作可能に支持する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態に係る清掃装置によれば、窓面等の清掃対象面を清掃するのに好適な清掃装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る清掃装置の斜視図である。
【
図2】
図1の斜視図の一部を拡大した拡大斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る清掃装置の正面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る清掃装置の背面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る清掃装置の上面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る清掃装置の左側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る清掃装置の右側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る清掃装置に組み込まれた循環機構を説明する模式図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る清掃本体部を初期位置にセットする手順を示す図である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る清掃本体部を初期位置にセットする手順を示す図である。
【
図9C】本発明の一実施形態に係る清掃本体部を初期位置にセットする手順を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態においてプロセッサにより実行される清掃開始列セット処理のフローチャートを示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態においてプロセッサにより実行される窓清掃処理のフローチャートを示す図である。
【
図14】本発明の変形例における清掃方法を示す図である。
【
図15】本発明の変形例に係るワイパを含む清掃装置の一部を示す斜視図である。
【
図16】本発明の変形例における清掃時のワイパの動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る清掃装置について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る清掃装置1の斜視図である。
図2は、
図1の斜視図の一部(清掃本体部100)を拡大した拡大斜視図である。
図3は、清掃装置1の正面図である。
図4は、清掃装置1の背面図である。
図5は、清掃装置1の上面図である。
図6は、清掃装置1の左側面図である。
図7は、清掃装置1の右側面図である。
【0020】
本実施形態において、清掃装置1による清掃対象面は、例えばビル等の建造物(構造物の一例)に設けられた平らな窓面である。清掃装置1による清掃対象面は、平面に限らず、曲面であってもよい。また、清掃対象面は、窓面に限らず、タイル、壁面、床面、鏡等であってもよい。
【0021】
以下の説明では、清掃時において、窓面と直交する軸をZ軸(第1軸の一例)とし、窓面と平行で(言い換えるとZ軸と直交し)且つ互いに直交する2軸をそれぞれY軸(第2軸の一例)、X軸(第3軸の一例)とする。互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸は、左手系をなす。
【0022】
清掃時において、X軸方向及びZ軸方向は水平方向となり、Y軸方向は鉛直方向となる。以下の説明では、窓面に近付くZ軸沿い方向を+Z方向(第1軸沿いの第1方向の一例)とし、窓面から遠ざかるZ軸沿い方向を、-Z方向(第1方向と反対方向の一例)とする。また、鉛直上方向、鉛直下方向を、それぞれ、+Y方向、-Y方向とする。また、右方向、左方向を、それぞれ、+X方向、-X方向とする。
【0023】
なお、方向の呼称は、構成要素の相対的な位置関係を説明するために便宜上用いる呼称であり、絶対的な方向を示すものではない。
【0024】
概略的には、清掃装置1は、回転ブラシを窓面に押し当てて窓面上を移動させることによって窓面を清掃する。清掃装置1は、回転ブラシが窓枠に到達したことを検知すると、回転ブラシを窓面の未清掃部分に移動させ、回転ブラシを未清掃部分に押し当てて窓面上を移動させることによって未清掃部分を清掃する。清掃装置1は、このような動作を繰り返すことにより、窓面全体を清掃する。
【0025】
このように、本実施形態に係る清掃装置1によれば、回転ブラシの幅が窓幅と異なる場合にも、窓面全体を自動で清掃することができる。窓面全体を拭くためにオペレータが緻密な機械操作を行う必要がない。
【0026】
清掃装置1は、各部を支持するフレーム10(筐体の一例)を備える。フレーム10は、3軸アクチュエータ20を支持する。また、フレーム10には、窓面を清掃する清掃本体部100が3軸アクチュエータ20によりX軸、Y軸、Z軸の各軸方向に移動可能に支持される。
【0027】
3軸アクチュエータ20は、X軸アクチュエータ22、Y軸アクチュエータ24及びZ軸アクチュエータ26を含む。
【0028】
X軸アクチュエータ22は、清掃本体部100を+X方向及び-X方向に移動させるアクチュエータであり、例えば、ラックアンドピニオンを含む移動機構である。ピニオンは、清掃本体部100とX軸方向に一体的に移動するように、清掃本体部100に取り付けられている。ピニオンがX軸方向に延びて形成されたラック上を移動することにより、清掃本体部100が+X方向又は-X方向に移動する。
【0029】
Y軸アクチュエータ24は、清掃本体部100を+Y方向及び-Y方向に移動させるアクチュエータであり、例えば、フレーム10に吊り下げられたケーブルチェーン32に併設されたボールねじを含む移動機構である。Y軸アクチュエータ24に含まれるボールねじは、ナットと、Y軸方向に延びて形成されたねじ軸を含む。なお、ケーブルチェーン32には、3軸アクチュエータ20の各種配線が収容される。
【0030】
Y軸アクチュエータ24は、アーム12を支持する。アーム12は、清掃本体部100を支持する。アーム12は、ナットを介してねじ軸に支持される。そのため、ナットがねじ軸に沿って移動することにより、アーム12に支持された清掃本体部100が+Y方向又は-Y方向に移動する。
【0031】
補足すると、X軸アクチュエータ22に含まれるラックも、清掃本体部100とともにY軸方向に移動可能にねじ軸に対して支持される。そのため、清掃本体部100がY軸方向に移動すると、ラックも清掃本体部100と一体的に移動する。
【0032】
Z軸アクチュエータ26は、清掃本体部100を+Z方向及び-Z方向に移動させるアクチュエータであり、例えば、アーム12に設けられたボールねじを含む移動機構である。Z軸アクチュエータ26に含まれるボールねじは、ナットと、Z軸方向に延びて形成されたねじ軸を含む。清掃本体部100は、このナットを介してねじ軸に支持される。そのため、このナットがねじ軸に沿って移動することにより、清掃本体部100が+Z方向又は-Z方向に移動する。
【0033】
このように、3軸アクチュエータ20(アクチュエータの一例)は、回転ブラシ106(後述)を含む清掃本体部100を、窓面WS(清掃対象面の一例)と直交するZ軸(第1軸の一例)並びに窓面WSと平行で且つ互いに交差するY軸(第2軸の一例)及びX軸(第3軸の一例)を含むXY面内で移動させることができる。
【0034】
なお、上述した3軸アクチュエータ20の構成は一例に過ぎない。すなわち、3軸アクチュエータ20の態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0035】
フレーム10は、ボックス40を支持する。ボックス40には、LSI(Large Scale Integration)、バッテリ等が収容される。LSIは、例えば、清掃装置1の動作を制御するプロセッサ、オペレータが操作するリモートコントローラと通信する通信モジュール等を含む。バッテリは、清掃装置1の各部に電力を供給する。便宜上、プロセッサに符号200を付す。また、
図1に、プロセッサ200を破線で示す。
【0036】
清掃装置1は、例えば建造物の屋上に設置された楊重装置に吊り下げられる。このように清掃装置1を楊重装置で吊り下げた場合、清掃装置1の姿勢が風の影響で不安定になることがある。そこで、清掃装置1には、建造物の外壁面や窓面にフレーム10を吸着固定する一対の吸着パッド52(吸着部の一例)がフレーム10の下部に設けられる。
【0037】
フレーム10の下部に、一対のZ軸アクチュエータ50が支持される。Z軸アクチュエータ50は、例えばZ軸アクチュエータ26と同様のボールねじを含む移動機構である。吸着パッド52は、ボールねじをなすナットを介してねじ軸に支持される。そのため、このナットがねじ軸に沿って移動することにより、吸着パッド52が+Z方向又は-Z方向に移動する。
【0038】
このように、フレーム10の下部において、一対の吸着パッド52がZ軸アクチュエータ50によりZ軸方向に移動可能に支持される。
【0039】
吸着パッド52は、例えば真空吸着パッドである。図示省略された吸引機構により吸着パッド52内の空気が吸引されて、吸着パッド52内が真空となる。これによって生じた真空力により、フレーム10が建造物の外壁面や窓面に固定される。
【0040】
楊重装置に吊り下げられた清掃装置1の下部の左右位置において、一対の吸着パッド52によってフレーム10を外壁面や窓面に固定することにより、例えば風が吹いた場合にも、清掃装置1が安定した姿勢を維持する。そのため、例えば清掃装置1を建造物の外壁面上で走行させるためのガイドレールを建造物の外壁面に設ける必要がない。
【0041】
吸着パッド52には、例えば有限会社ユニキューブTecnosのタコパッド(登録商標)が採用される。なお、吸着パッド52は、真空吸着パッドに限らない。吸着パッド52は、例えば磁気吸着パッドであってもよい。
【0042】
吸着パッド52による吸着痕が建造物の外壁面や窓面に残ることが懸念される。そこで、本実施形態では、フレーム10の下部だけに吸着パッド52が設けられる。
【0043】
清掃装置1は、建造物の各窓面を上層階から下層階に向けて清掃する。従って、フレーム10の下部側で付いた吸着痕は、清掃装置1が建造物を下降する過程で拭き取られる。
【0044】
フレーム10の上部に一対のキャスタ62が設けられる。また、フレーム10の下部に一対のキャスタ62が設けられる。
【0045】
オペレータは、楊重装置を操作することにより、清掃装置1の位置を変えることができる。清掃装置1が上昇、下降又は左右移動されたとき、キャスタ62が建造物の外壁面上を転がる。キャスタ62をフレーム10に設けることにより、清掃装置1を外壁面上でスムーズに移動させることができ、また、フレーム10や清掃本体部100が外壁面に衝突するのを防ぎ、かつ外壁面とのクリアランスを設定通り確保することができる。
【0046】
清掃装置1には、洗浄液を循環させる循環機構が組み込まれている。
図8に、この循環機構を説明する模式図を示す。循環機構により、窓面の清掃に用いられた洗浄液が回収及び濾過されて再利用可能になる。洗浄液の再利用が可能になるため、清掃装置1に積載する洗浄液が少量に抑えられる。洗浄液を含む清掃装置1の総重量が軽くなるため、例えば小型な楊重装置を使用することができる。
【0047】
図8には、清掃本体部100の内部構造も示される。
図8に示されるように、清掃本体部100は、例えば樹脂製の支持体102を備える。支持体102は、噴射ノズル104、回転ブラシ106、ブラシ駆動部108、ワイパ110、112、回収口114、汚水回収路116、フィルタ118を支持する。
【0048】
フレーム10は、タンク72及びポンプ74を支持する。
【0049】
タンク72は、洗浄液CLを収容する収容部の一例である。洗浄液CLは、例えば、清掃対象面用(例えば窓用)の洗浄液、水、又は洗剤と水との混合液である。
【0050】
タンク72は、フレーム10に対して着脱可能である。オペレータは、フレーム10から取り外したタンク72を清掃し、また、タンク72に洗浄液CLを補充することができる。
【0051】
ポンプ74は、タンク72に収容された洗浄液CLを圧送する圧送部の一例である。ポンプ74は、例えば電動モータによりタンク72内の洗浄液CLを吸い上げて押し出す電動ポンプである。
【0052】
ポンプ74により圧送された洗浄液CLは、ホース76内を流れて噴射ノズル104へ排出される。なお、ホース76は、ケーブルチェーン34に収容される。ケーブルチェーン34には、洗浄液CLの回収経路をなすホース78(後述)も収容される。
【0053】
噴射ノズル104は、ポンプ74により圧送された洗浄液CLを回転ブラシ106に向けて噴射(排出)する排出部の一例である。噴射ノズル104は、例えば、回転ブラシ106の回転軸AX方向(X軸方向であり、また、清掃対象面の一例である窓面WSと平行な方向)に所定間隔を空けて複数配置される。
【0054】
このように、タンク72、ポンプ74及び噴射ノズル104は、回転ブラシ106に洗浄液CLを供給する供給部として機能する。
【0055】
回転ブラシ106は、窓面WSに洗浄液CLを塗布する洗浄液塗布体の一例であり、支持体102に回転可能に支持される。回転ブラシ106は、窓面WSに押し当てられるブラシ部材106Aを含む。ブラシ部材106Aは、噴射ノズル104から噴射された洗浄液CLを担持する。
【0056】
洗浄液CLは、回転軸AX方向に配置された複数の噴射ノズル104の各々からブラシ部材106Aに噴射される。そのため、回転ブラシ106は、その全長に亘って洗浄液CLをまんべんなく担持した湿潤状態となる。
【0057】
ブラシ部材106Aは、窓面WSに押し当てられると、担持された洗浄液CLを窓面WSに塗布する。ブラシ部材106Aは、例えば、植物性、動物性、金属製、合成繊維等の毛材よりなる。
【0058】
回転ブラシ106は、支持体102に対して交換可能に支持される。ここで、清掃対象面の材質(例えば窓、タイル、壁、床、鏡の材質等)によって、回転ブラシ106に要求される機能が変わる。オペレータは、窓面WSの材質を考慮して、最適な清掃部材をもつ回転ブラシ106に交換することができる。ブラシ部材106A以外の清掃部材として、例えば、布状部材、スポンジ状の弾性部材が挙げられる。
【0059】
ブラシ駆動部108は、回転モータ108A及び伝達部材108Bを含む。伝達部材108Bは、例えば、回転モータ108Aの駆動力を回転ブラシ106のシャフト106Bに伝達するチェーンである。回転モータ108Aが回転すると、その駆動力が伝達部材108Bを介してシャフト106Bに伝達される。これにより、回転ブラシ106が回転軸AX周りに(シャフト106Bを回転軸として)回転する。
【0060】
回転ブラシ106は、窓面WSに押し当てられた状態で駆動力が伝達されると、窓面WSを擦るように窓面WS上で回転動作する。すなわち、ブラシ駆動部108は、窓面WSに押し当てられた回転ブラシ106を窓面WS上で回転動作させる回転駆動部の一例である。
【0061】
洗浄液CLを塗布することによって浮いた汚れが回転ブラシ106で擦られる。そのため、例えば、比較的除去しやすい砂や花粉による粉塵汚れだけでなく、鳥の糞等の固形物質や長期的に染み付いた油汚れ等も窓面WSから除去することができる。
【0062】
ワイパ110は、窓面WSに押し当てられたときに追従変形するワイパゴム110Aを含む。払拭面である窓面WSへの密着追従性が高いワイパゴム110Aにより、洗浄液CLが塗布された窓面WS上に残った付着物である汚水SWが窓面WSから拭き取られる。
【0063】
ワイパゴム110Aは、支持体102に対して交換可能に支持される。そのため、オペレータは、劣化したワイパゴム110Aを新しいワイパゴム110Aに交換することができる。また、オペレータは、汚水SWを一度に拭き取りたい範囲に応じてサイズの異なるワイパゴム110Aに付け替えることもできる。
【0064】
支持体102は、回転ブラシ106の半周(回転ブラシ106の上方、後方及び下方)を覆う壁部102Aを含む。なお、ここでいう「回転ブラシ106の後方」は、回転ブラシ106を窓面WSに押し当てたときに回転ブラシ106を挟んで窓面WSと対向する位置を示す。
【0065】
壁部102Aは、回転ブラシ106から飛散した洗浄液CLを受ける。これにより、洗浄液CLが周囲に飛散することが防がれる。
【0066】
このように、壁部102Aは、回転ブラシ106から飛散した洗浄液CLを受けるガード部の一例である。
【0067】
壁部102Aの表面に、U字溝102Bが形成される。
図8では、便宜上、U字溝102Bにハッチングを付す。U字溝102Bは、壁部102Aの上端から下端に延びて形成される。U字溝102Bは、例えば、回転軸AX方向に所定間隔を空けて複数形成される。
【0068】
回転ブラシ106から飛散してU字溝102Bに付着した洗浄液CLは、U字溝102B内を下方に流れる。U字溝102Bの下端近傍には、U字溝102B内を流れ落ちてきた洗浄液CLを受ける回収口114が設けられる。
【0069】
回収口114は、汚水回収路116及びホース78を介してタンク72と連通する。そのため、回収口114で受けられた洗浄液CLは、タンク72内に滴下される。
【0070】
このように、U字溝102Bは、壁部102Aに形成された溝部であって、回転ブラシ106から飛散して付着した洗浄液CLをタンク72内に導く溝部の一例である。U字溝102B、回収口114、汚水回収路116及びホース78は、回転ブラシ106に供給された少なくとも一部の洗浄液CLをタンク72内に回収する回収部をなす。
【0071】
清掃装置1では、窓面WSの清掃に用いられた洗浄液CLを回収部により回収して再利用することができる。そのため、洗浄液CLの使用量が少なく抑えられる。
【0072】
例えばビルの高層階の窓面の清掃中に洗浄液CLが無くなると、清掃装置1を地上に降ろして洗浄液CLを補充しなければならない。本実施形態に係る清掃装置1では、清掃に必要な洗浄液CLの量が少なくて済むため、洗浄液CLが無くなりにくい。そのため、例えば、洗浄液CLの補充のために清掃装置1を地上に降ろすことなく、ビルの窓清掃を完了させることができる。
【0073】
窓面WS上を流れて窓面WSの下方に落ちる汚水SWが多いほど、洗浄液CLの回収率が低下する。そこで、清掃装置1には、ワイパ112が設けられている。
【0074】
ワイパ112は、窓面WSに押し当てられたときに追従変形するワイパゴム112Aを含む。窓面WSへの密着追従性が高いワイパゴム112Aは、窓面WS上を流れ落ちる汚水SWを受ける。
【0075】
ワイパゴム112Aは、回収口114側に下がるように傾斜している(
図8参照)。そのため、ワイパゴム112Aが受けた汚水SWは、回収口114に向けて流れる。
【0076】
ワイパゴム112Aも、支持体102に対して交換可能に支持される。そのため、オペレータは、劣化したワイパゴム112Aを新しいワイパゴム112Aに交換することができる。
【0077】
汚水回収路116とホース78との間に、フィルタ118が設置される。フィルタ118は、ワイパゴム112AやU字溝102Bから回収口114に流れ落ちた汚水SWに含まれる汚物を除去する。すなわち、汚水SWは、汚水回収路116内を流れてフィルタ118により濾過される。フィルタ118による濾過によって汚水SWから分離された洗浄液CLは、タンク72内に回収される。
【0078】
フィルタ118は、支持体102に対して着脱可能である。オペレータは、支持体102から取り外したフィルタ118を清掃して再度取り付けたり、新しいフィルタ118に交換したりすることができる。
【0079】
このように、本実施形態では、窓面WS上を流れ落ちる汚水SWに含まれる洗浄液CLも回収できる。そのため、洗浄液CLが高い回収率で回収される。
【0080】
附言するに、清掃装置1では、洗浄液CLの回収及び再利用により、清掃装置1の外部に排出される汚水SWの量が減る。そのため、汚水処分の作業負担が軽減される。
【0081】
支持体102は、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)が窓面WSに押し当るとワイパ110及びワイパ112も窓面WSに押し当る位置関係で、回転ブラシ106、ワイパ110及び112を支持する。そのため、窓面WSの清掃時において、洗浄液CLを含ませた回転ブラシ106が窓面WSに押し当るとともにワイパ110及び112も窓面WSに押し当りながら、清掃本体部100が窓面WS上で-Y方向(鉛直下方向)に移動する。
【0082】
このように、本実施形態では、回転ブラシ106、ワイパ110及び112の3つが窓面WSに一度に押し当る。そのため、清掃装置1では、回転ブラシ106による汚れの除去、ワイパ110による汚水の拭き取り、ワイパ112による汚水SWの回収が一挙に行われる。清掃装置1を用いることにより、窓面WSを高い作業効率で清掃することができる。
【0083】
回転ブラシ106は、時計回り方向に回転できてもよく、また、反時計回り方向に回転できてもよい。
【0084】
回転ブラシ106を時計回り方向に回転させると、窓面WSに対する回転ブラシ106の移動方向(-Y方向)と回転方向とが揃うため、回転ブラシ106が窓面WSを擦る力が強くなる。そのため、洗浄能力が向上する。
【0085】
窓面WSの形状によっては、回転ブラシ106を時計回り方向に回転させた方が好適な場合があり、また、反時計回り方向に回転させた方が好適な場合がある。オペレータは、例えばリモートコントローラによる遠隔操作によって回転ブラシ106の回転方向を適宜変えることにより、窓面WSを効率的に清掃することができる。
【0086】
回転ブラシ106の回転速度は可変であってもよい。オペレータは、例えばリモートコントローラによる遠隔操作によって回転ブラシ106の回転速度を変えることができる。回転ブラシ106の回転速度が上がると、例えば洗浄能力が向上する。回転ブラシ106の回転速度が下がると、例えば回転モータ108Aの消費電力が低減する。
【0087】
図9~
図13は、清掃装置1による窓面WSの具体的な清掃方法を説明する図である。まず、
図9A~
図9Cに、清掃本体部100を初期位置にセットする手順を示す。
図9A~
図9Cに示される初期位置セット手順は、主にオペレータの操作によって行われる。なお、この手順は一例にすぎない。また、この手順は、例えば画像認識やセンサを用いて清掃装置1が自動的に行ってもよい。
【0088】
オペレータは、例えば清掃装置1に設置されたカメラや肉眼で清掃装置1の位置を目視しつつ楊重装置を操作して、
図9Aに示されるように、清掃装置1を窓付近に移動させる。後述するように、清掃装置1は、清掃範囲の境界である窓枠を検知する毎に、清掃本体部100を未清掃部分に移動させて、窓面WSを順次自動清掃する。そのため、窓に対する清掃装置1の位置は精確に決めなくてもよい。従って、オペレータは、楊重装置を緻密に操作する必要がない。
【0089】
オペレータは、清掃装置1を窓付近に移動させると、例えばリモートコントローラを操作して、清掃装置1を建造物の外壁面等に吸着させる。
【0090】
具体的には、プロセッサ200は、オペレータ(リモートコントローラ)の指示を受けて、各Z軸アクチュエータ50を駆動する。これにより、
図9Bに示されるように、各吸着パッド52が+Z方向に移動して、建造物の外壁面等と接触する。
【0091】
Z軸アクチュエータ50には、内蔵モータの出力軸が受けるトルクを検知するトルクセンサが設けられる。例えば、トルクセンサで検知されたトルクが閾値Tを超えると、プロセッサ200は、吸着パッド52が建造物の外壁面等に接触したことを検知する。
【0092】
プロセッサ200は、吸引機構により吸着パッド52内の空気を吸引して、吸着パッド52内を真空にさせる。
【0093】
次いで、プロセッサ200は、各Z軸アクチュエータ50を駆動して、各吸着パッド52を-Z方向に微小距離移動させる。このとき、吸着パッド52は、外壁面等にしっかりと固定されていれば、外壁面等から外れない。一方、吸着パッド52は、外壁面等にしっかりと固定されていなければ、外壁面等から外れてしまう。後者の場合、オペレータは、再度、リモートコントローラを操作して、清掃装置1を建造物の外壁面等に吸着させる。
【0094】
上述したように、楊重装置による窓面WSに対する清掃装置1の位置決めは大雑把で構わない。一方で、窓面WSを清掃する清掃本体部100の位置は、窓枠内に収まる必要がある。そのため、オペレータは、例えばリモートコントローラを操作して、
図9Cに示されるように、清掃本体部100を窓枠内(例えば窓面WSの中心部分)に移動させる。
【0095】
図10は、プロセッサ200により実行される清掃開始列セット処理のフローチャートを示す。
図11A~
図11Dに、
図10に示される清掃開始列セット処理の説明図を示す。プロセッサ200は、例えばオペレータ(リモートコントローラ)による清掃開始指示を受けると、
図10に示される清掃開始列セット処理の実行を開始する。
【0096】
図11A~
図11D及び後述の
図13A~
図13O(以下、「各説明図」と記す。)では、便宜上、座標系の図示を省略する。なお、各説明図は、例えば
図9Aと同様に窓面WSを正面から見た図である。そのため、各説明図において、座標系の向きは、
図9Aと同じである。また、各説明図では、便宜上、清掃装置1全体の図示を省略し、清掃本体部100の模式図を図示する。また、各説明図では、清掃本体部100の移動方向を矢印で示す。+Z方向と-Z方向は、紙面に直交する方向であることから、矢印で示し難い。そのため、便宜上、+Z方向は、斜め上方向の矢印で示し、-Z方向は、斜め下方向の矢印で示す。
【0097】
図10に示されるように、プロセッサ200は、清掃本体部100に対する窓面WSのZ軸方向の位置を検知する(ステップS101)。
【0098】
例示的には、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して清掃本体部100を+Z方向に移動させる。
図11Aに示されるように、+Z方向に移動した清掃本体部100は、窓面WSと接触する。
【0099】
Z軸アクチュエータ26には、Z軸アクチュエータ50と同様に、トルクセンサが設けられる。便宜上、Z軸アクチュエータ26のトルクセンサで検知されるトルクを「トルク値Z」と記す。例えば、トルク値Zが閾値TZを超えると、プロセッサ200は、清掃本体部100(より詳細には、回転ブラシ106、ワイパ110及び112)が窓面WSに接触したことを検知する。
【0100】
プロセッサ200は、例えば、トルク値Zが閾値TZを超えた時点での、清掃本体部100の+Z方向の移動量を、窓面WSのZ軸方向の位置としてメモリのワークエリアに記憶してもよい。
【0101】
窓面WSを清掃しない段階において、例えば回転ブラシ106が窓面WSに接触しながら移動すると、回転ブラシ106が汚れを引きずりながら窓面WS上を移動することになる。そこで、プロセッサ200は、清掃本体部100を窓面WSから離隔する(ステップS102)。
【0102】
例示的には、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、
図11Bに示されるように、清掃本体部100を-Z方向に所定距離移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSから離隔する。
【0103】
プロセッサ200は、清掃本体部100を窓面WSの清掃開始列の初期位置にセットする(ステップS103)。
【0104】
例示的には、プロセッサ200は、X軸アクチュエータ22を駆動して、清掃本体部100を-X方向に移動させる。これにより、
図11Cに示されるように、清掃本体部100が左窓枠WF
Lと接触する。
【0105】
X軸アクチュエータ22には、Z軸アクチュエータ50と同様に、トルクセンサが設けられる。便宜上、X軸アクチュエータ22のトルクセンサで検知されるトルクを「トルク値X」と記す。例えば、トルク値Xが閾値TXを超えると、プロセッサ200は、清掃本体部100が左窓枠WFLに接触したことを検知する。
【0106】
次いで、プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動して、清掃本体部100を+Y方向に移動させる。これにより、
図11Dに示されるように、清掃本体部100が上窓枠WF
Uと接触して、清掃開始列の初期位置である隅部C1にセットされる。
【0107】
Y軸アクチュエータ24には、Z軸アクチュエータ50と同様に、トルクセンサが設けられる。便宜上、Y軸アクチュエータ24のトルクセンサで検知されるトルクを「トルク値Y」と記す。例えば、トルク値Yが閾値TYを超えると、プロセッサ200は、清掃本体部100が上窓枠WFUに接触したことを検知する。
【0108】
ここで、窓面WSを囲う窓枠は、清掃対象面の清掃範囲を規定する境界の一例である。すなわち、プロセッサ200は、トルク値X又はトルク値Yに基づいて、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100が窓枠(清掃範囲の境界の一例)に到達したことを検知する境界検知部として動作する。
【0109】
また、プロセッサ200は、3軸アクチュエータ20(アクチュエータの一例)を制御するアクチュエータ制御部として動作する。アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、境界検知部による検知結果に基づいて、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100を、隅部C1(清掃対象面の第1の隅部の一例)に移動させる。
【0110】
本実施形態では、窓面WSの清掃開始列が左窓枠WFL側に設定され、その後、左窓枠WFL側から右窓枠WFR側に向けて順に窓清掃が行われる。別の実施形態では、窓面WSの清掃開始列が右窓枠WFR側に設定され、その後、右窓枠WFR側から左窓枠WFL側に向けて順に窓清掃が行われてもよい。
【0111】
図12は、プロセッサ200により実行される窓清掃処理のフローチャートを示す。
図13A~
図13Oに、
図12に示される窓清掃処理の説明図を示す。
図10に示される清掃開始列セット処理が完了すると、プロセッサ200は、
図12に示される窓清掃処理の実行を開始する。
【0112】
図12に示されるように、プロセッサ200は、清掃本体部100を窓面WSに接触させる(ステップS201)。
【0113】
例示的には、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、トルク値Zが閾値T
Zを超えるまで、清掃本体部100を+Z方向に移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSと接触して、回転ブラシ106が窓面WSに押し当った状態となる(
図13A参照)。
【0114】
プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動して、窓面WSの清掃開始列を清掃する(ステップS202)。
【0115】
例示的には、プロセッサ200は、ポンプ74を作動させることによって洗浄液CLを回転ブラシ106に供給するとともにブラシ駆動部108を駆動して回転ブラシ106を回転させる。この状態で、プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動する。プロセッサ200は、トルク値Yが閾値T
Yを超えるまで、回転ブラシ106が窓面WSに押し当った状態の清掃本体部100を、-Y方向に移動させる。これにより、窓面WSの清掃開始列が清掃されて、
図13Bに示されるように、清掃本体部100が下窓枠WF
Dと接触する。
【0116】
このように、3軸アクチュエータ20(アクチュエータの一例)は、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を窓面WS(清掃対象面の一例)に押し当てた状態で移動させる。また、アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、隅部C1(第1の隅部の一例)を基点として、窓面WSに押し当てられた回転ブラシ106を左窓枠WFL沿い(第1の境界線沿いの一例)に移動させることにより、窓面WSの清掃開始列を清掃する。
【0117】
プロセッサ200は、清掃本体部100が窓面WSの清掃最終列に到達したか否かを判定する(ステップS203)。
【0118】
例示的には、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、
図13Cに示されるように、清掃本体部100を-Z方向に所定距離移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSから離隔する。次いで、プロセッサ200は、X軸アクチュエータ22を駆動して、清掃本体部100を+X方向(第2方向と反対の第3方向の一例)に規定距離移動させる。
【0119】
プロセッサ200は、清掃本体部100の+X方向への移動中、閾値T
Xを超えるトルク値Xが検知されると、清掃本体部100が右窓枠WF
Rと接触したことから(
図13I参照)、清掃本体部100が窓面WSの清掃最終列に到達したと判定する(ステップS203:YES)。また、プロセッサ200は、清掃本体部100の+X方向への移動中、閾値T
Xを超えるトルク値Xが検知されなければ、清掃本体部100が右窓枠WF
Rと接触していないことから(
図13D参照)、清掃本体部100が窓面WSの清掃最終列に到達していないと判定する(ステップS203:NO)。
【0120】
ここで、上記の規定距離は、回転ブラシ106の幅(X軸方向の長さ)未満である。清掃本体部100の+X方向への移動距離が大きいと(例えば回転ブラシ106の幅以上だと)、清掃列間に未清掃部分ができてしまい、清掃列間に汚れが残りやすい。清掃本体部100の+X方向への移動距離が小さいと(例えば回転ブラシ106の幅未満だと)、隣接する清掃列が一部重なるため、清掃列間に未清掃部分ができず、また、上記の如き汚れが残りにくいため、清掃の仕上がりが良くなる。附言するに、隣接する清掃列の重なり幅が広いほど清掃の仕上がりが良くなる。隣接する清掃列の重なり幅が狭いほど清掃速度が速くなる。
【0121】
プロセッサ200は、清掃本体部100を+X方向へ移動させる前準備として、清掃本体部100を窓面WSから離隔している。これにより、回転ブラシ106が汚れを引きずりながら窓面WS上を移動することが避けられる。
【0122】
このように、アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100を未清掃部分に向けて移動させる際、回転ブラシ106が窓面WS(清掃対象面の一例)に押し当てられた状態で窓面WS内の清掃済み部分を移動しないように、回転ブラシ106を-Z方向(第1方向と反対方向の一例)に移動させて、回転ブラシ106を窓面WSから離隔する。
【0123】
清掃本体部100が窓面WSの清掃最終列に到達していない場合(ステップS203:NO)、プロセッサ200は、清掃本体部100を窓面WSの次の清掃列の清掃開始位置にセットする(ステップS204)。
【0124】
例示的には、プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動して、トルク値Yが閾値T
Yを超えるまで、清掃本体部100を+Y方向に移動させる。これにより、
図13Eに示されるように、清掃本体部100が上窓枠WF
Uと接触する。次いで、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、トルク値Zが閾値T
Zを超えるまで、清掃本体部100を+Z方向に移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSと接触して、回転ブラシ106が窓面WSに押し当った状態となり(
図13F参照)、次の清掃列の清掃開始位置へのセットが完了する。
【0125】
プロセッサ200は、ステップS204で清掃開始位置へのセットが完了した清掃列(すなわち次の清掃列)を清掃する(ステップS205)。
【0126】
例示的には、プロセッサ200は、ポンプ74を作動させることによって洗浄液CLを回転ブラシ106に供給するとともにブラシ駆動部108を駆動して回転ブラシ106を回転させる。この状態で、プロセッサ200は、X軸アクチュエータ22及びY軸アクチュエータ24を駆動する。プロセッサ200は、清掃本体部100を、-X方向と-Y方向との合成方向に移動させる(
図13G参照)。この合成方向は、清掃本体部100を-Y方向(第2軸方向の一例)に変位させるほど-X方向(第2方向の一例)に変位させる方向であり、Y軸に対して傾いた所定の斜め方向の一例である。便宜上、この合成方向を「略Y軸方向」と記す。
図13Gの例では、略Y軸方向は、やや斜め下左方向である。
【0127】
補足すると、プロセッサ200は、清掃本体部100を、-X方向に微小移動させながら-Y方向に移動させる。これにより、窓面WSに押し当った回転ブラシ106が洗浄液CLを窓面WSに塗布するとともに窓面WS上の汚れを除去しながら、窓面WS上に残る汚水SWの大部分がワイパ110で拭き取られつつ一部が+X方向へ押し流される。
【0128】
清掃本体部100が窓面WSを右方(+X方向)へ拭き進める過程で、ワイパ110で拭き取れなかった汚水SWが右方へ(言い換えると未清掃部分側へ)押し流される。拭き残しが清掃済み部分に残り難いため、清掃の仕上がりが向上する。
【0129】
なお、ステップS205において、プロセッサ200は、清掃本体部100を単に-Y方向に移動させてもよい。この場合も清掃列は清掃される。
【0130】
便宜上、
図13Cに示される、清掃本体部100を-Z方向に移動させる動作を「動作1」と記す。また、
図13Dに示される、清掃本体部100を+X方向に規定距離移動させる動作を「動作2」と記す。また、
図13Eに示される、清掃本体部100を+Y方向に移動させる動作を「動作3」と記す。また、
図13Fに示される、清掃本体部100を+Z方向に移動させる動作を「動作4」と記す。また、
図13Gに示される、清掃本体部100を-X方向と-Y方向との合成方向に移動させる動作を「動作5」と記す。
図13Hに、動作1~5(言い換えると、清掃本体部100の移動方向)を矢印で示す。
【0131】
プロセッサ200は、3軸アクチュエータ20を制御して、窓面WSの清掃最終列への到達を検知するまで、
図13Hに示されるように、動作1~動作5を繰り返す。
【0132】
このように、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100が窓面WSの窓枠(清掃範囲の境界の一例)に到達したことが検知されると、アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、窓面WS内の次の清掃列(未清掃部分の一例)を3軸アクチュエータ20(アクチュエータの一例)による清掃本体部100の次の移動路とするように、3軸アクチュエータ20を制御する。
【0133】
付言するに、アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100を+Z方向(第1軸沿いの第1方向の一例)に移動させることにより、回転ブラシ106を窓面WS(清掃対象面の一例)に押し当て、窓面WSに押し当てられた回転ブラシ106を左窓枠WFL沿い(清掃対象面の境界線沿いの一例)に移動させることにより、窓面WSに洗浄液CLを塗布する。境界検知部により清掃本体部100が下窓枠WFD(清掃範囲の境界の一例)に到達したことが検知されると、プロセッサ200は、次の清掃列(未清掃部分の一例)に向けて、清掃本体部100を+X方向(第2方向と反対の第3方向の一例)に移動させ、未清掃部分へ移動された清掃本体部100をY軸沿い(第2軸沿いの一例)又は略Y軸方向(所定の斜め方向の一例)に移動させることにより、次の清掃列に洗浄液CLを塗布する。
【0134】
図13Iに示されるように、清掃本体部100が右窓枠WF
Rと接触して窓面WSの清掃最終列に到達すると(ステップS203:YES)、プロセッサ200は、清掃本体部100を窓面WSの清掃最終列の清掃開始位置(隅部C2)にセットする(ステップS206)。隅部C2は、窓面WSの隅部の1つであり、隅部C1と向かい合って位置する。
【0135】
例示的には、プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動して、トルク値Yが閾値T
Yを超えるまで、清掃本体部100を+Y方向に移動させる。これにより、
図13Jに示されるように、清掃本体部100が上窓枠WF
Uと接触する。次いで、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、トルク値Zが閾値T
Zを超えるまで、清掃本体部100を+Z方向に移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSと接触して、回転ブラシ106が窓面WSに押し当った状態となり(
図13K参照)、清掃最終列の清掃開始位置へのセットが完了する。
【0136】
プロセッサ200は、ステップS206で隅部C2へのセットが完了した清掃列(すなわち清掃最終列)を清掃する(ステップS207)。
【0137】
例示的には、プロセッサ200は、ポンプ74を作動させることによって洗浄液CLを回転ブラシ106に供給するとともにブラシ駆動部108を駆動して回転ブラシ106を回転させる。この状態で、プロセッサ200は、Y軸アクチュエータ24を駆動する。プロセッサ200は、トルク値Yが閾値T
Yを超えるまで、回転ブラシ106が窓面WSに押し当った状態の清掃本体部100を、-Y方向に移動させる。これにより、窓面WSの清掃最終列が清掃されて、
図13Lに示されるように、清掃本体部100が下窓枠WF
Dと接触し、窓面WS全体の清掃が完了する。
【0138】
このように、アクチュエータ制御部として動作するプロセッサ200は、次の清掃列(未清掃部分の一例)へ向けた、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100の、+X方向(第3方向の一例)の移動及び窓面WS(清掃対象面の一例)に押し当てられた回転ブラシ106のY軸沿い(第2軸沿いの一例)又は略Y軸方向(所定の斜め方向の一例)の移動を繰り返す。プロセッサ200は、境界検知部により清掃本体部100が隅部C1(第1の隅部の一例)と向かい合う隅部C2(第2の隅部の一例)に到達したことが検知されると、窓面WSに押し当てられた回転ブラシ106を、左窓枠WFL(第1の境界線の一例)と向かい合う右窓枠WFR沿い(第2の境界線沿いの一例)に移動させる。
【0139】
プロセッサ200は、終了動作を行う(ステップS208)。
【0140】
例示的には、プロセッサ200は、Z軸アクチュエータ26を駆動して、
図13Mに示されるように、清掃本体部100を-Z方向に所定距離移動させる。これにより、清掃本体部100が窓面WSから離隔する。窓面WSからの離隔後、プロセッサ200は、X軸アクチュエータ22及びY軸アクチュエータ24を駆動して、
図13Nに示されるように、清掃本体部100を規定の初期位置まで移動させる。次いで、プロセッサ200は、吸着パッド52内に空気を入れて吸着パッド52内の真空を破壊して、建造物の外壁面等への吸着固定を解除する。プロセッサ200は、吸着固定が解除された吸着パッド52を、
図13Oに示されるように、Z軸アクチュエータ50によって-Z方向に移動させて、外壁面等から引き離す。
【0141】
以上により、1枚の窓面WSに対する清掃が完了する。オペレータは、楊重装置を操作して、清掃装置1を次の窓面WS付近に移動させる。
【0142】
このように、本発明の一実施形態に係る清掃装置1によれば、清掃本体部100が窓枠に到達したことを検知する毎に、清掃本体部100が窓面WS内の未清掃部分に移動して未清掃部分を清掃する。清掃装置1がこのような動作を自動で繰り返すことにより、窓面WS全体が清掃される。従って、清掃装置1は、回転ブラシ106の幅と窓幅との一致不一致に拘わらず、様々な形状や大きさの窓面WS(及び他の清掃対象面)を自動で清掃することができる。窓面WS全体を拭くためにオペレータが緻密な機械操作を行う必要がない。
【0143】
清掃本体部100の可動範囲は、清掃装置1の寸法に依存する。ここで、例えば清掃本体部100の可動範囲を超える大きさの窓面WSや窓枠のないガラスウォールを清掃する場合を考える。この場合、清掃装置1は、清掃本体部100の可動範囲内で窓面WSを清掃する。次いで、オペレータが、楊重装置を操作して、清掃本体部100の可動範囲内で清掃し切れなかった箇所に清掃装置1を移動させる。清掃装置1は、移動後の位置で窓面WSを清掃する。これにより、清掃本体部100の可動範囲を超える大きさの窓面WS全体を清掃することができる。
【0144】
なお、清掃範囲を規定する物理的な境界(例えば窓枠)が清掃範囲内になければ、プロセッサ200は、トルク検知に基づいて清掃範囲の境界を検知することができない。この場合、プロセッサ200は、清掃本体部100の可動範囲の限界位置を、清掃範囲の境界として検知する。
【0145】
一例として、清掃本体部100を清掃範囲の清掃開始列の初期位置にセットする場合を説明する(
図10のステップS103参照)。この場合、プロセッサ200は、清掃本体部100を最も-X方向に移動させ且つ最も+Y方向に移動させる。プロセッサ200は、-X方向の限界位置及び+Y方向の限界位置を、清掃開始列の初期位置としてセットする。このように、境界検知部として動作するプロセッサ200は、回転ブラシ106(洗浄液塗布体の一例)を含む清掃本体部100が可動範囲の限界位置まで移動すると、清掃本体部100が清掃範囲の境界(ここでは、清掃開始列の初期位置)に到達したと検知する。
【0146】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本発明の実施形態に含まれる。
【0147】
上記の実施形態では、トルクセンサを用いて清掃本体部100と窓枠との接触を検知するが、本発明の構成はこれに限らない。別の実施形態では、トルクセンサを、清掃本体部100と窓枠との接触を検知する他の形態のセンサ(圧力センサ、静電容量センサ等)に代えてもよい。
【0148】
上記の実施形態では、ワイパ110が支持体102に固定されているが、本発明の構成はこれに限らない。別の実施形態では、ワイパ110が支持体102に対して可動する構成としてもよい。
【0149】
例示的には、ワイパ110は、清掃時に斜めに傾く構成としてもよい。清掃本体部100が窓面WSを右方(+X方向)へ拭き進める過程で、斜めに傾いたワイパ110により、拭き取れなかった汚水SWが右方へ(言い換えると未清掃部分側へ)押し流される。拭き残しが清掃済み部分に残り難いため、清掃の仕上がりが向上する。
【0150】
図14は、本発明の変形例に係る清掃装置1による清掃方法を示す図である。変形例に係る清掃装置1において、ワイパ110は、清掃時に斜めに傾く。
【0151】
変形例において、ワイパ110は、初期的には、上記の実施形態と同様に、長手方向が回転ブラシ106と一致するように互いが平行になる向きで配置される。
図14に示されるように、窓面WS上に押し当てられた回転ブラシ106及びワイパ110が鉛直下方向(-Y方向)に引き下げられると、ワイパ110に外力(具体的には、窓面WSとワイパ110との摩擦力)が作用する。外力が作用したワイパ110は、窓面WSと平行な面内(XY面内)で、初期の姿勢(長手方向がX軸方向を向く姿勢)から、端部110Bを支点として、回転ブラシ106に対して非平行となる向き(長手方向がX軸と角度をなす向き)に傾く。
【0152】
回転ブラシ106及びワイパ110が窓面WSに押し当った状態で鉛直下方向に引き下げられると、回転ブラシ106により洗浄液CLが窓面WSに塗布されるとともに、窓面WSに塗布された洗浄液CLによって浮いた汚れが回転ブラシ106で擦られる。
【0153】
窓面WS上に残った汚水SWは、一部が窓面WS上を流れ落ちて、回収口114を介してタンク72に回収される。窓面WS上を流れ落ちることなくワイパ110で拭き取られた汚水SWは、一部が拭き取り時に滴下して回収口114を介してタンク72に回収され、残りが拭き取り時に滴下せず、外力を受けて傾いた姿勢で鉛直下方向に引き下げられるワイパ110により、窓面WS上を右方(
図14の矢印E参照)に押し流される。
【0154】
清掃本体部100は、窓面WSを鉛直下方向(-Y1方向)に拭き下げると、少し右(+X方向)に移動して再度、窓面WSを鉛直下方向(-Y2方向)に拭き下げる。清掃装置1は、この動作を繰り返す。すなわち、清掃装置1は、窓面WSを右方に拭き進める。
【0155】
斜めに傾いたワイパ110により、窓面WS上に残る汚水SWが右方(+X方向)に押し流れて集められる。すなわち、拭き下げ時にワイパ110が斜めに傾いた姿勢で汚水SWを拭き取る構成としたことにより、
図14の例示のように、清掃装置1は、窓面WSを鉛直下方向に拭き下げるという単純な動きだけで、窓面WS上の汚水SWを拭き進み方向(+X方向)に押し流して集めることができる。そのため、窓面WS上の汚水SWの拭き残しを無くしたり、また、少なく抑えたりすることができる。
【0156】
図15は、変形例に係る清掃本体部100の一部を示す斜視図であり、ワイパ110の可動機構を示す。
図16は、変形例に係る清掃本体部100を用いて窓清掃を行ったときの、ワイパ110の動作を示す模式図である。
図16の上段図、中段図、下段図を、それぞれ、上段
図F1、中段
図F2、下段
図F3と記す。
【0157】
図15に示されるように、ワイパ110は、端部110Bを支点として傾き動作できるように、連結具によって支持体102に軸支されている。より詳細には、
図15及び
図16に示されるように、ワイパ110は、端部110Bにおいて、ピン120(連結具の一例)で支持体102にピン接合されている。すなわち、支持体102は、ワイパ110の長手方向の端部110B(一端部の一例)を支点としてワイパ110が動いて傾くように、端部110Bにおいてワイパ110を傾き動作可能に支持する。このように、変形例では、連結方法の一例としてピン接合されている場合について説明する。
【0158】
図16の上段
図F1のように、ワイパ110は、初期的には、長手方向がX軸方向を向く姿勢で配置される。
【0159】
清掃本体部100が窓面WS上に押し当てられて鉛直下方向に引き下げられると、窓面WSに押し当てられて追従変形したワイパゴム110Aと窓面WSとの摩擦力がワイパ110に外力として作用する。
図16の中段
図F2のように、外力が作用したワイパ110は、窓面WSと平行な面内(XY面内)で、初期の姿勢(
図16の上段
図F1参照)から、端部110Bを支点として、回転ブラシ106に対して非平行となる向きに動いて傾く。
【0160】
ワイパ110は、端部110Bと反対側の端部110Cにおいて、弾性部材130によって支持体102と機械的に接続されている。
【0161】
弾性部材130は、ワイパ110の長手方向の端部110Bを支点とするワイパ110の傾き量を規制する規制部の一例である。弾性部材130は、例えば、ゴム製部材であり、一端が支持体102に接着剤等で接合され、他端がワイパ110の長手方向の端部110Cに接着剤等で接合されている。弾性部材130は、ばねであってもよい。
【0162】
ワイパ110が初期の姿勢(
図16の上段
図F1参照)から端部110Bを支点として傾き始めると、ワイパ110の端部110Cが支持体102から+Y方向に離れていく。これにより、端部110Cと支持体102とを機械的に接続する弾性部材130が両者により引っ張られて、自然長から伸びる(
図16の中段
図F2参照)。
【0163】
弾性部材130は、内力がワイパ110を介して作用する外力とつり合うところまで伸びて、それ以上は伸びない。そのため、ワイパ110の傾き動作は、端部110Cと支持体102とを機械的に接続する弾性部材130により規制される。
【0164】
窓面WS上に付着する汚水SWは、外力を受けて傾いた姿勢で鉛直下方向に引き下げられるワイパ110により、窓面WS上を右方(
図16の中段
図F2の矢印E参照)に押し流される。これにより、窓面WS上に残る汚水SWが右方に押し流れて集められる。そのため、窓面WS上の汚水SWの拭き残しを無くしたり、また、少なく抑えたりすることができる。
【0165】
適切な弾性率の弾性部材130を選定することにより、窓面WSを鉛直下方向に拭き下げたときの、ワイパ110の角度を、適度な角度に設定することができる。適度な角度とは、例えば斜めに傾いたワイパ110が汚水SWを右方に押し流して集めやすい角度である。
【0166】
ワイパ110が窓面WSから離隔されると、ワイパ110に作用する外力がなくなる。そのため、弾性部材130が自然長に戻るとともに、ワイパ110が、傾いた姿勢(
図16の中段
図F2参照)から初期の姿勢に戻る(
図16の下段
図F3参照)。すなわち、ワイパ110は、初期位置に自動的に収容される。
【0167】
このように、変形例では、ワイパ110が窓面WSに押し当てられた状態で3軸アクチュエータ20により回転ブラシ106とともに動かされることによってワイパ110に外力が作用すると、ワイパ110が、初期の姿勢から、端部110Bを支点として傾き始めるとともに、ワイパ110を介して作用する外力によって弾性部材130が自然長から伸び、内力が外力とつり合うところまで弾性部材130が伸びると、端部110Bを支点としたワイパ110の傾き動作が規制され、ワイパ110に作用する外力がなくなると、弾性部材130が自然長に戻るとともに、ワイパ110が、傾いた姿勢から初期の姿勢に戻る。
【符号の説明】
【0168】
1 :清掃装置
10 :フレーム
12 :アーム
20 :3軸アクチュエータ
22 :X軸アクチュエータ
24 :Y軸アクチュエータ
26 :Z軸アクチュエータ
32、34 :ケーブルチェーン
40 :ボックス
50 :Z軸アクチュエータ
52 :吸着パッド
62 :キャスタ
72 :タンク
74 :ポンプ
76、78 :ホース
100 :清掃本体部
102 :支持体
102A :壁部
102B :U字溝
104 :噴射ノズル
106 :回転ブラシ
106A :ブラシ部材
106B :シャフト
108 :ブラシ駆動部
108A :回転モータ
108B :伝達部材
110、112 :ワイパ
110A、112A :ワイパゴム
114 :回収口
116 :汚水回収路
118 :フィルタ
120 :ピン
130 :弾性部材
200 :プロセッサ