(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053944
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】覆いテープ材及びそれを用いた塗膜防水工法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/684 20060101AFI20240409BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20240409BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240409BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240409BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240409BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240409BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240409BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240409BHJP
【FI】
E04B1/684 A
E04B1/682 A
E04G23/02 A
B32B27/36
B32B7/022
B32B7/027
B32B27/00 M
B32B27/00 L
B32B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160482
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】515352788
【氏名又は名称】有限会社ヨシカネ
(71)【出願人】
【識別番号】598171508
【氏名又は名称】株式会社秀カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 兼司
(72)【発明者】
【氏名】野口 秀夫
【テーマコード(参考)】
2E001
2E176
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DA01
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2E001FA71
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4F100YY00C
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建築物に存在する直線状隙間等に対し、外見的・機能的に優れ、簡便な塗膜防水工法及び覆いテープ材を提供する。
【解決手段】直線状隙間を覆うための、テープ基材10を有する覆いテープ材1であって、テープ基材10が、最上層11と最下層13に、引張弾性率が3000MPa以上5500MPa以下、線膨張率が縦方法、横方向ともに2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルム、中間層12に、引張弾性率が5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル;天然、クロロプレン、ニトリル、エチレンプロピレン、ブチル又はポリウレタンの樹脂又はゴムを有する芯材、を有する覆いテープ材1。覆いテープ材1で直線状隙間を覆い、その上から塗膜防水材を塗布する塗膜防水工法。目地材を除去した後に覆いテープ材1で目地を覆う防水塗膜の改修方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に存在する直線状隙間を覆うための、テープ基材を有する覆いテープ材であって、
該テープ基材が、
最上層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材と、
最下層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
を有するものであることを特徴とする覆いテープ材。
【請求項2】
前記テープ基材は、前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムと前記中間層の芯材が、及び、前記中間層の芯材と前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものである請求項1に記載の覆いテープ材。
【請求項3】
前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であり、前記中間層の芯材の厚みが0.05mm以上1.2mm以下であり、前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下である請求項1に記載の覆いテープ材。
【請求項4】
前記中間層の芯材には、無機充填材が含有されていないか、又は、該芯材全体に対して70質量%以下で含有されている請求項1に記載の覆いテープ材。
【請求項5】
前記無機充填材が、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、ケイ灰石、カーボンブラック、グラファイト、カオリンクレー、焼成カオリン、マイカ、又は、シリカである請求項4に記載の覆いテープ材。
【請求項6】
更に、前記テープ基材の下に、途中に他の層の介在があってもよく、粘着層を有するものである請求項1に記載の覆いテープ材。
【請求項7】
前記粘着層が、前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムの下に、該粘着層の熱融着、該粘着層の材料の熱融解塗布、該粘着層の材料の溶液塗布、又は、該粘着層を有する両面粘着テープの付与、により設けられたものである請求項6に記載の覆いテープ材。
【請求項8】
更に、前記粘着層の直下に離型フィルム又は離型紙を有するものである請求項6に記載の覆いテープ材。
【請求項9】
前記覆いテープ材が、鋏又はカッターで切れる程度以下の切断強度を有するものである請求項8に記載の覆いテープ材。
【請求項10】
前記テープ基材の上面には、前記覆いテープ材で前記直線状隙間を覆った後に該覆いテープ材の上から塗布する塗膜防水材との密着性が良好になる表面処理が施してある請求項1に記載の覆いテープ材。
【請求項11】
前記テープ基材の下面の、略全面若しくは直線状隙間を除く建築物表面の略全面にストライプ状に、前記粘着層を有する覆いテープ材であって、該テープ基材の横幅が、該粘着層の横幅と同じ、又は、該粘着層の横幅以上である請求項6に記載の覆いテープ材。
【請求項12】
前記粘着層の材質が、ブチル系粘着剤、改質アスファルト系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、又は、ブチルゴム系粘着剤である請求項6に記載の覆いテープ材。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の覆いテープ材をロール状に巻いてなることを特徴とする覆いテープ材ロール。
【請求項14】
請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の覆いテープ材で、前記建築物に存在する前記直線状隙間を覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法。
【請求項15】
前記直線状隙間が目地であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の覆いテープ材で該目地を覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法。
【請求項16】
前記直線状隙間が目地であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、請求項1ないし請求項12の何れかの請求項に記載の覆いテープ材にて該目地を覆い、その上に通気緩衝シートを設け、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に存在する直線状隙間を覆うための覆いテープ材に関し、また、該覆いテープ材をロール状に巻いてなる覆いテープ材ロール、該覆いテープ材を、直線状隙間を覆うように被せてその上から塗膜防水材を塗布する塗膜防水工法、及び、既存の直線状隙間材を除去した後に該覆いテープ材にて直線状隙間を覆い、その上に塗膜防水材を塗布する防水塗膜の改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上等に打設されている例えば押えコンクリートは、夏場は気温の上昇と日射により約60℃、冬場は放射冷却によって-20℃以下という激しい温度変化にさらされることがある。そのため、押えコンクリートには、温度変化による膨張・収縮を吸収するため、通常は、弾力性がある伸縮目地材が充填された直線状隙間が設けられている。
【0003】
コンクリートの線膨張率は、約1.0×10-5[K-1]であることから、上記の温度差で長さ1mに対して、約0.8mm程度が膨張伸縮することになる。すなわち、押えコンクリートの膨張と収縮によって、例えば2mピッチに設けられた直線状隙間の幅は、夏場と冬場で約1.6mm、3mピッチに設けられた直線状隙間の幅は、夏場と冬場で約2.4mmの膨張と収縮を繰り返すことになる。
【0004】
建築物の新築時、押えコンクリートの直線状隙間には、一般的に20~25mm幅の弾力性がある伸縮目地材が設けられ、夏場と冬場で数mm、膨張と収縮を繰り返す押えコンクリートの動きを吸収して、押えコンクリートの膨張によってパラペットが押し出されるのを防いでいる。
【0005】
屋上等の押さえコンクリートに防水層を施す際、上記直線状隙間部分は、20~25mm幅に対して夏場と冬場で数mmの動きが発生し、防水性能を低下させる原因となるため、該直線状隙間には、押さえコンクリートの膨張収縮に対して変形してクッションの役割を果たす伸縮目地材を充填する、又は、下層にて緩衝して直線状隙間直上に膨張収縮の挙動を顕在化させない等の処理を施す必要がある。
【0006】
特許文献1では、通気性成形体からなる目地底を有する目地にポリウレタン系シーリング材等を充填して硬化させる処理方法が提案されている。
このようなシーリング材を用いた目地の充填方法は、過去に一般的に広く用いられている方法であるが、夏場の押さえコンクリートの膨張によって伸縮目地の幅は狭まるため、硬化したシーリング材が凸状に盛り上がり、冬場の押さえコンクリートの収縮によって伸縮目地の幅は広がるため、硬化したシーリング材が凹状にへこむという問題がある上に、押えコンクリートと既存防水層の間に含水している残留水が、成形伸縮目地材を撤去した伸縮目地部のコンクリート側面を伝わって湿潤状態になっていることから、シーリング材との接着力が得られず剥離し、防水層施工後にも剥離部分から残留水が蒸発して防水層を押上げ、膨れを発生させることも多くあった。
【0007】
また、膨れを加速させる要因としては、シーリング材と不織布製通気緩衝シートのクロロプレン系粘着材やシーリング材と、自着性通気緩衝シートの粘着ブチル系接着材や粘着アスファルト系接着材との接着力が弱いという問題があった。
【0008】
シーリング材に代えて、軽量モルタルを充填させる方法も知られている。この方法は、湿潤状態の下地でも接着力は確保できるが、弾性がないため、夏場の押さえコンクリートの膨張により、伸縮目地の幅が狭まると、圧縮されて軽量モルタルが座屈し、冬場の押えコンクリートの収縮によって、軽量モルタルにひび割れが発生するという問題があった。
【0009】
これらを解決するため、特許文献2には、長尺(例えば、実施例では、幅90mm、長さ900mm、厚さ0.3mm)のアルミニウム等の金属製の板を長手方向の中心線付近で折り曲げた山形の目地カバーを目地部分に被せる工法が提案されており、膨張・収縮を吸収するとされている。
【0010】
特許文献2の工法では、伸縮目地に充填された成形伸縮目地材を除去し、該目地カバーの凹面側を目地部側に向け、シーリング材を目地部の該目地カバー施工面に塗布することにより、該目地カバーを押さえコンクリートに仮接着させ、その上に通気緩衝シートを貼り付け、該通気緩衝シート上にウレタン防水材を塗布することで塗膜防水層を形成している。
【0011】
また、特許文献2は、アルミニウム等の金属製の板を長手方向の中心線付近で折り曲げた山形の目地カバーで3次元構造となるために、剛性が強く、伸縮目地の膨張収縮に対しては、接着剤としての弾性シーリング材が吸収することで効果を発揮する。
しかし、該目地カバーの剛性(変形性がない)によって、平滑面ではない押えコンクリートの水勾配や不陸や目地段差に対して馴染み難く、浮きが発生し易く、ガタツキ等の問題もあり、かつ、山形の目地カバー頂上となる伸縮目地中央部の直上が盛り上がってしまうと言う問題点があった。
更に、長さ900mm程度の定尺品を一枚一枚設置していくために、作業効率が悪く、金切鋸で時間をかけ切断する必要があり、このことも作業効率を悪くする要因であった。
【0012】
また、特許文献2等に記載の工法は、通気緩衝シート工法(通気性を有する緩衝シートを下地に貼り付け、その上に塗膜防水材を施工する工法)である。
このため、密着工法(下地コンクリート面に直接塗膜防水材を塗布する工法)には用いることができなかった。
【0013】
前記した種々の従来技術では、温度変化に起因する目地幅の変化や水勾配や不陸や目地段差に対して充分には対応できなかった。
そのため、前記したような温度変化による部材の膨張・収縮に起因する問題が生じず、や水勾配や不陸や目地段差にも追従し、作業効率も優れた「目地に対する処理方法」の開発が望まれていた。
【0014】
特許文献3の工法は、伸縮目地に充填された成形伸縮目地材を除去し、ロール状に巻いてなる覆いシート材を、直線状隙間を覆うように被せてその上から塗膜防水材を塗布する塗膜防水工法であり、また、通気緩衝シートを施した後に塗膜防水材を塗布する塗膜防水工法である。
覆いシート材に配置された金属製等の板状部材又は線状部材等の剛性と弾性粘着剤の組合せによって、押えコンクリートの膨張・収縮による目地幅の動きに対して、短手(横手)方向のシート形状を保持し、短手(横手)方向の平滑性は、担保されていた。
【0015】
特許文献3では、上記覆いシート材を長手方向に切断することなく連続して施工しても、板状部材又は線状部材は、該テープ基材の長手方向に対して略垂直に、かつ、該板状部材同士又は該線状部材同士が互いに接触することなく間隔を開けて、該テープ基材上に並列して貼り付けられている。板状部材又は線状部材に、厚みが0.1mm以上5mm以下の、鉄、ステンレス、ブリキ、トタン、ガルバニウム、アルミニウム等の弾性率が高い金属製等の材質を用いて、夏場は約60℃、冬場は-20℃以下という激しい温度変化にさらされても、金属製の板状部材又は線状部材の線膨張及び収縮が、接触することなく開けて設けられている間隔の中で納まるため、長手方向に切断することなく連続して施工された覆いテープ材は、寸法変化を起こさない。
【0016】
しかし、特許文献3では、覆いシート材に配置されている厚みが0.1mm以上5mm以下の、金属製等の板状部材又は線状部材直上部が、該部材の厚み分、凸状に盛り上がってしまう。
そのため、覆いテープ材表面は、金属製等の部材の形状で並列に凸状の盛り上がり発生し、その上からレベリング性塗膜防水材を塗布した場合、凸部の盛り上がり部分の塗膜は薄くなってしまい、セルフレベリング性を有しない。機械化スプレー方式の速硬化ウレタン塗膜防水材を施工した場合は、防水塗膜自体の厚さは均一(同一)に塗工されるが、下地形状をそのままトレースするため、金属製等の板状部材又は線状部材直上部が、該部材の厚み分凸状に、それ以外の部分が凹状にへこんだ状態で仕上がってしまい、覆いテープ材直上の防水塗膜の表面(上面)に平滑性が得られなかった。
【0017】
また、特許文献3の覆いテープ材の製品化には、ロール状の金属板等や鋼線等の素材を打抜き金型等を用いたプレス加工等にて打抜かれた板状部材や線状部材のチップを製作しなくてはならず、かつ、シート材に板状部材や線状部材のチップを一定の間隔で並列に配置しなくてはならず、製造設備も複雑になり、ラインスピードも遅くなり、工程も多いことから、製造コストも高くなっていた。
【0018】
そのため、建築物の屋上等の押さえコンクリート上に既に存在している直線状隙間や板状断熱板、ALC板、PC板、金属板、スレート板等の板状定形部材に生じた種々の隙間を含めて、建築物に存在する直線状隙間一般に関して、温度変化に起因する直線状隙間の幅の変化に問題なく充分に適応し、塗膜防水材を塗布した後も含めて、外見的にも機能的にも優れた低コストの処理方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2007-100378号公報
【特許文献2】特開2009-215732号公報
【特許文献3】特開2016-000889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、建築物に存在する押さえコンクリート目地、板状断熱板、ALC板、PC板、金属板、スレート板等の板状定形部材の接合部等の直線状隙間等に対し、優れた形で簡便に処理できる塗膜防水工法、及び、該塗膜防水工法に用いる外見的にも機能的にも優れた材料を、好適に低コストで提供することにある。
また、作業効率が向上し低コスト化を達成した、防水塗膜の改修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、最上層と最下層に、引張弾性率(ヤング率)と線膨張率が特定された二軸延伸ポリエステルフィルムを用い、中間層に、特定の引張弾性率(ヤング率)を有する特定の樹脂又はゴムを有する芯材を用いたテープ基材を有する覆いテープ材を使用することによって、温度変化による押えコンクリートや板状定形部材の膨張・収縮に起因する隙間の直上部の平滑性を維持でき、水勾配や不陸や目地(隙間)段差にも追従し、防水機能、密着機能等の物理的機能や、平滑性、隙間交差部での無段差等の外見的機能に優れたものができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち、本発明は、建築物に存在する直線状隙間を覆うための、テープ基材を有する覆いテープ材であって、
該テープ基材が、
最上層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材と、
最下層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
を有するものであることを特徴とする覆いテープ材を提供するものである。
【0023】
また、本発明は、前記最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であり、前記中間層の芯材の厚みが0.05mm以上1.2mm以下であり、前記最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下である前記の覆いテープ材を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、前記中間層の芯材には、無機充填材が含有されていないか、又は、該芯材全体に対して70質量%以下で含有されている前記の覆いテープ材を提供するものである。
【0025】
また、本発明は、更に、前記テープ基材の下に、途中に他の層の介在があってもよく、粘着層を有するものである前記の覆いテープ材を提供するものである。
【0026】
また、本発明は、前記の覆いテープ材をロール状に巻いてなることを特徴とする覆いテープ材ロールを提供するものである。
【0027】
また、本発明は、前記の覆いテープ材で、前記建築物に存在する前記直線状隙間を覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法を提供するものである。
【0028】
また、本発明は、前記直線状隙間が目地であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、前記の覆いテープ材で該目地を覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法を提供するものである。
【0029】
また、本発明は、前記直線状隙間が目地であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、前記の覆いテープ材にて該目地を覆い、その上に通気緩衝シートを設け、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、建築物(特に建築物の屋上等)に、新築時から存在する、押えコンクリート、ALC板、PC板、金属板、スレート板等の目地や接合部、新築時や改修時に設置した、板状断熱板、ALC板、PC板、金属板、スレート板等の板状定形部材等の温度変化によって、「それらが形成する隙間」の幅(間隔)の変化によって生じる種々の問題点に好適に対応して該問題点を解消することができる。
本発明によれば、温度変化があっても、物理的・機械的・機能的・外見的に問題のない覆いテープ材を低コストで提供できる。具体的には、温度変化によって生じる「建築物に存在する直線状隙間」の直上部の平滑性を維持(例えば、直線状隙間の間隔の変化に伴う防水機能、密着機能等の低下)や、覆いテープ材自体の温度変形による種々の弊害等を抑制できる。
【0031】
また、屋上等の(歩き易さ、歩行感、美感に影響する)平滑性、該隙間の交差部等での無段差性等、美的・外見的にも優れた覆いテープ材を提供できる。かかる変形、平滑性外観等は、使用した覆いテープ材のテープ基材の剛軟度、目地が圧縮を受けたときの表面平滑性(実施例(評価例)において後述する)に依存する。
【0032】
また、本発明の覆いテープ材は、施工現場において容易に希望する長さに鋏やカッターにて簡単に切断できるので、特に屋上等の足場が不安定な場所が多いこともあり、本発明の覆いテープ材を使用すれば、現場での作業性が格段に向上する。
【0033】
また、本発明の覆いテープ材は、製造、保管、持ち運びのときは、ロール状にできるので、長尺状の金属製プレートに比較して極端にコンパクトになり、作業が容易になるので、現場での施工性が格段に向上する。
【0034】
また、本発明の覆いテープ材を用いれば、温度変化による建築部材(下地)の膨張収縮による直線状隙間の間隔の変化により、前記した弊害が抑えられるのみならず、温度変化による覆いテープ材自体の変形・歪みによる、凹凸の発生、剥離、密着不良等も抑えられる。そのため、防水塗膜の改修の際に特に効果を発揮する。すなわち、補修後の防水性が向上し、また、外見も良好なものとなる。
【0035】
更に、本発明の覆いテープ材が上記効果を発揮すること(理由等)について、本発明の覆いテープ材を構成する要素(パーツ、材料、形態、手段等)毎と、該各要素の有する機能・効果毎に分けて以下に説明する。
【0036】
(1)押えコンクリート等の部材に直接密着する粘着層や、「少なくとも覆いテープ材の両脇において該部材に直接密着する粘着層」が存在する場合には該粘着層が、温度変化に起因する押えコンクリート等の部材の伸縮に伴う横方向(隙間の幅方向、覆いテープ材の幅方向)の動きを吸収し、コンクリート下地になじむため、熱変形による密着性、防水性、外見等の低下を抑制できる。
【0037】
(2)全て金属等で形成された長尺物のような「剛直で温度変化によって直接その全長が変動するもの」を使用せず、テープ基材が、
最上層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、前記した特定の「樹脂・ゴム等の高分子材料」を含有する芯材と、
最下層に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
が積層されていることにより熱膨張率も低く、かつ、熱膨張収縮に伴う発生応力が小さいため粘着層で下地に拘束でき、縦方向(直線状隙間の直線方向、覆いテープ材の長手方向)の伸びを抑えることができ、密着性、防水性、外見等の低下を抑制できる。
【0038】
(3)テープ基材の構成が、最上層及び最下層の樹脂フィルムと中間層の樹脂又はゴムとの構成のため、覆いテープ材は容易に切断することが可能となり、作業性が良好となる。
また、切断する部分は柔軟性があり、金属製と異なり、切断に伴う変形や、切断部でのバリの発生やそれによる怪我の問題が生じない。
【0039】
(4)テープ基材は、曲げ応力が高いため、覆いテープ材全体としての強度があり、施工完了後の直線状隙間の上部の歩行感が良いものとなる。
【0040】
(5)紙管等に巻き取られた際に、該紙管の内側に接するテープ基材の最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムと、最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムとは、曲率で、外側となる最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムが伸ばされた状態となるが、実用上弾性変形として、ひずみが1%位までになるよう紙管等を選定することで、本発明の覆いテープ材では、ロール状に巻いて「覆いテープ材ロール」の形態にできる。
そのため、コンパクトで扱い易く、保管に場所を取らず、運搬も容易になる。
【0041】
(6)本発明の覆いテープ材は、上記のように、防水機能に優れ、作業性も良く、施工現場において柔軟な対応が可能であるため、防水塗膜の改修の際に特に効果を発揮し易い。
すなわち、本発明の覆いテープ材は、上記効果を発揮するので、その上から塗膜防水材を塗布してなる塗膜防水層も上記効果を反映し、覆いテープ材と塗膜防水層が組み合わせられ、トータルの防水性が向上し、外見も良好なものとなる。
【0042】
(7)塗膜防水工法において、押えコンクリート等の間に存在する目地周りの性能に上記効果を特に発揮する。すなわち、「建築物に存在する直線状隙間」が目地のときに、特に上記効果を発揮する。
例えば、本発明の覆いテープ材にて目地の上を覆えば、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、新たな目地材を埋め込まなくてもよくなり、目地材を除去した後の空洞は、押えコンクリート中の残留水分が高温時に水蒸気となって脱気筒等から効率よく排出するための通気溝として活用でき、防水層の膨れ対策が図れる。
【0043】
(8)本発明の覆いテープ材を塗膜防水工法に用いれば、通気緩衝シート工法(通気性を有する緩衝シートを下地に貼り付け、その上に塗膜防水材を施工する工法)にも好適であるが、通気緩衝シートを用いず、押えコンクリート直上からの水蒸気の排出ができない密着工法(下地面に直接塗膜防水材を施工する工法)に対しては、防水層の膨れ対策として更に好適である。すなわち、本発明の覆いテープ材は、上記何れの工法にも好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の覆いテープ材が有するテープ基材の断面図である。 (a)ラミネート接着剤(の記載)なし (b)ラミネート接着剤(の記載)あり
【
図2】本発明の覆いテープ材の断面図である。 (a)離型フィルム又は離型紙なし(
図4(b)のA-A’矢視断面図) (b)離型フィルム又は離型紙あり
【
図3】本発明の覆いテープ材を「押えコンクリートの目地」等の「既存部材又は板状定形部材等の建築物に存在する直線状隙間」に適用したときの断面図(
図4(b)のA-A’矢視断面図)である。
【
図4】本発明の覆いテープ材を「建築物に存在する直線状隙間」適用した後の平面図である。 (a)覆いテープ材の下に位置する目地等を破線で記載した平面図 (a)覆いテープ材のみを記載した平面図
【
図5】実施例の評価例1で剛軟度の測定に使用した試験機の概略側面図である。
【
図6】実施例の評価例2で、目地等の直線状隙間が圧縮を受けたときの表面平滑性の評価に使用した試験機の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0046】
本発明は、建築物に存在する直線状隙間を覆うための、テープ基材を有する覆いテープ材であって、該テープ基材は、最上層に特定の引張弾性率(ヤング率)と線膨張率を有する二軸延伸ポリエステルフィルム、中間層に特定の引張弾性率(ヤング率)を有する特定の樹脂又はゴムを有する芯材、及び、最下層に特定の引張弾性率(ヤング率)と線膨張率を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを有する覆いテープ材である。
【0047】
[覆いテープ材の使用態様]
本発明において、「建築物に存在する直線状隙間」とは、例えば、「屋上、ベランダ、屋根、外壁、内壁、床等の建築物」に存在する直線状隙間Dのことを言う。建築物に存在する既存の部材C間の隙間のことも言い、「新設時や改修時に設置した板状定形部材C」と既存部材Cとの隙間のことも言い、板状定形部材C同士間の隙間のことも言う。
また、ここで、「直線状隙間」とは、本発明の覆いテープ材の前記効果を奏す程度に直線的な隙間であればよく、完全な直線でなくても略直線状であれば、「直線状隙間」含まれる。
【0048】
上記「既存部材C」としては、特に限定はないが、例えば、建築物(特に建築物の屋上等)に新設時から存在する、押えコンクリート、ALC板、PC板、金属板、スレート板等が挙げられる。
また、新設時や改修時に用いる上記「板状定形部材C」としては、特に限定はないが、例えば、板状断熱板、ALC板、PC板、金属板、スレート板等が挙げられる。
【0049】
図4に、本発明の覆いテープ材の使用態様を示す。
図4(a)(b)は、押えコンクリートC’等の「既存部材又は板状定形部材」と言った部材Cの間に存在する、目地D’等の直線状隙間Dを上から見た概略平面図である。該目地D’等の直線状隙間Dは
図4の中央部で交差している。
なお、本発明の適用範囲は、建築物に存在する部材Cであれば、押えコンクリートC’には限定されず、直線状隙間Dであれば、目地D’には限定されない。
図4に示すように、例えば、押えコンクリートC’の間には、通常、直線状隙間Dが設けられており、本発明の覆いテープ材は、該直線状隙間Dに好適に適用できる。
【0050】
1つの押えコンクリートC’の大きさは、50cm~4mであり、通常は2m~3mであり、目地D’の長さは、通常は押えコンクリートC’の設置された建築物の横の長さ(屋上等の長さ)であり、目地D’の幅は、4mm~30mmであり、通常は15mm~25mmである。
本発明の覆いテープ材は、上記のようなサイズの目地D’等の直線状隙間Dに好適に適用可能である。
【0051】
図4(a)(b)は、本発明の覆いテープ材1を、例えば目地D’を覆うように被せて、該目地D’の周辺部に密着させた後の状態を上から見た平面図である。直線状隙間Dの周辺部で、覆いテープ材1は、例えば押えコンクリートC’に密着している。
【0052】
図4(b)では、縦に走る目地D’に覆うように被せた覆いテープ材1は、途中で途切れていないが、横に走る目地D’に被せた覆いテープ材1は、左右2つに分かれており、縦に被せた覆いテープ材1の側面に横から突き当って当接している。
特許文献2の目地カバーでは施工後に山型になり、特許文献3の覆いテープ材では施工後に凹凸になるが、本発明の覆いテープ材を用いると、該当接部分が平滑に施工できる。
【0053】
また、本発明の覆いテープ材1は、任意の位置で切断できるので、好適に当接させることが可能であり、該覆いテープ材1を適用した後の、塗膜付与性(無段差性)、防水性、外観、歩行感等に優れる。
【0054】
該交差部分において、覆いテープ材1を重ねて使用することもできる。例えば、横方向の覆いテープ材1の上に縦方向の覆いテープ材1を被せることもできるが、覆いテープ材1は重なっていない方が、施工後に凹凸ができず、その上から塗膜防水工法を施したときには、防水塗膜の上から目立ち難いため好ましい。
【0055】
また、部材Cの熱膨張や熱収縮が起きて、直線状隙間Dの幅が変化しても、粘着層20が、その変化を吸収する。また、本発明の覆いテープ材1は、温度が変化しても、粘着層20が拘束し、覆いテープ材1の長手方向の長さ変化を吸収する。
そのため、夏冬に温度変化が、直線状隙間Dの交差部分(直線状隙間の間隔の変化が水平方向と垂直方向に発生)にあっても、伸びて本発明の覆いテープ材1が上に向かって膨らんだり、逆に縮んで縦と横の覆いテープ材1の当接箇所が広がったりすることがない。
【0056】
一般に、例えば、コンクリートの線膨張率は、約1.0×10-5[K-1]であることから、押えコンクリートC’の膨張と収縮によって、例えば2mピッチに設けられた押えコンクリートC’間の直線状隙間Dの幅は、夏場(輻射によって表面は約60℃になる)と冬場(-20℃以下になる)とで、1.8mm程度の膨張と収縮を繰り返すことになる。
本発明の覆いテープ材1を用いれば、かかる温度変化があっても、それが密着された部材Cの伸び縮み(膨張と収縮)を粘着層20が吸収して、直線状隙間Dの平滑性を維持できる。
【0057】
また、上記既存部材や板状定形部材Cには、コンクリートより線膨張率が大きいものがあるが、その場合でも、本発明の覆いテープ材1を用いれば、温度変化に対応して、直線状隙間Dの平滑性を維持できる。
【0058】
<覆いテープ材が有するテープ基材>
本発明の覆いテープ材は、建築物に存在する直線状隙間Dを覆うためのテープ基材10を有する。
該テープ基材10は、
最上層11に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、
中間層12に、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材と、
最下層13に、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムと、を有する。
【0059】
上記覆いテープ材は、例えば、
図1(a)に示したように、上記最上層11のフィルムと上記中間層12の芯材が、及び、上記中間層12の芯材と上記最下層13のフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものであることが好ましい。
限定はされないが、
図1(b)に示したように、最上層11と中間層12の間のラミネートや、中間層12と最下層13のラミネートには、それぞれ、ラミネート接着剤11aやラミネート接着剤13aを用いることが好ましい。
【0060】
厚みに関しては、前記最上層11の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であり、前記中間層12の芯材の厚みが0.05mm以上1.2mm以下であり、前記最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みが5μm以上100μm以下であることが、前記した本発明の効果を好適に得るために好ましい。
【0061】
本発明の覆いテープ材の横幅は、直線状隙間Dを覆うように被せることができ、直線状隙間Dの両脇に充分に密着できれば特に限定はないが、40mm~200mmが好ましく、60mm~150mmがより好ましく、80mm~120mmが特に好ましい。
横幅が上記下限以上であれば、直線状隙間Dを覆うように被せて、良好に目地D’等の直線状隙間Dの両脇に密着でき、一方、横幅が上記上限以下であれば、覆いテープ材が大きくなりすぎて無駄になることがなく、コスト的に有利である。
【0062】
<<テープ基材の最上層>>
本発明の覆いテープ材のテープ基材10の最上層11は、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である(
図1参照)。
【0063】
<<<最上層の引張弾性率(ヤング率)>>>
最上層11の引張弾性率(ヤング率)は、3000MPa以上5500MPa以下であることが必須であるが、下限については、3300MPa以上であることが好ましく、3600MPa以上であることがより好ましく、3800MPa以上であることが特に好ましい。
【0064】
最上層11の引張弾性率(ヤング率)が小さ過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、剛性が小さくなって、設置直後であっても撓んだり、上面に塗布された塗膜防水層の温度変化による膨張収縮によって、更に撓んだりする場合等がある。
該「撓み」は、使用したテープ基材10の剛軟度(実施例(評価例)において後述する)に依存する。
【0065】
一方、最上層11の引張弾性率(ヤング率)が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、薄い鋼板を使用した場合のように鋼鈑の温度変化による膨張収縮を粘着層20の粘着力で拘束することができず、長手方向の端部で座屈したり、収縮して空隙が発生したりという障害が起こる場合がある。また、該値を満たす樹脂が存在しない若しくは極めて高価となる場合等がある。ただ、大きい引張弾性率(ヤング率)のものが存在するならば、薄膜で、かつ、中間層12である芯材の熱膨張収縮を極力抑えられる程大きいものが好ましい。
【0066】
<<<最上層の線膨張率>>>
最上層11の線膨張率は、縦方法・横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下であることが必須であるが、1.8×10-5以下であることが好ましく、1.7×10-5[K-1]以下であることがより好ましく、1.6×10-5[K-1]以下であることが特に好ましい。
線膨張率の下限は、そのようなものが存在するならば、最上層11と「中間層12である芯材」と最下層13とが積層された状態で、コンクリート下地と同じ1.0×10-5 程度であることが特に好ましい。
【0067】
最上層11の線膨張率が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、温度変化によって押えコンクリートが膨張した際に、直線状隙間が狭まり、目地材撤去部直上がへこむ場合がある。
一方、小さ過ぎると、該値を満たす樹脂が存在しない若しくは極めて高価となる場合がある。
【0068】
<<<二軸延伸ポリエステルフィルム>>>
引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、熱線膨張率が、縦方法・横方向ともに、2.0×10-5[K-1]以下である樹脂フィルムとしては、二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等があるが、それらのうち、入手の容易さ、価格、薄膜特性、強度等の点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが最も優れているので、本発明では、最上層11と最下層13は、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である。
【0069】
<<<最上層の厚み>>>
最上層11の厚みは、5μm以上100μm以下が好ましく、7μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上60μm以下が更に好ましく、12μm以上50μm以下が特に好ましい。
【0070】
最上層11の厚みが小さ過ぎると、上記した引張弾性率(ヤング率)が小さいときと同様の問題が生じる場合があり、最上層11の二軸延伸ポリエステルフィルムの引張弾性率(ヤング率)が大きいことによる前記効果を発揮できない場合がある。例えば、直線状隙間の直上部位が撓んだり、塗膜防水層の温度変化による膨張によって、更に撓んだりする場合がある。
一方、最上層11の厚みが大き過ぎると、施工面であるコンクリート下地の不陸や水勾配に追随し難くなったり、現場で切断し難くなったり、コストが高価になったりする場合等がある。
【0071】
二軸延伸ポリエステルフィルムとしては、ロール製品で、厚みが6μmから350μmまで、幅広いグレードが存在する。
食品包装用フィルム等、薄過ぎる場合は、安価であるが強度に劣る場合がある。
【0072】
一方、厚過ぎる場合は、前述のように、薄い鋼板と比較すると桁が異なるが、剛性が高くなり過ぎ、施工時の鋏やカッターによるカッティング作業において簡単に切断することが困難になる場合があり、また、線膨張率に比例して膨張・収縮するため、特に覆いテープ材の長手方向のジョイント部分において長さの差が顕著に表れ、高温時には膨張し、シートジョイントがぶつかって座屈し、低温時には収縮して、隙間が広がってしまう(隙間の広がりによる障害が顕著になる)場合等がある。
【0073】
<<<最上層の上面の処理>>>
前記テープ基材10の上面、すなわち前記テープ基材10の最上層11の上面には、前記覆いテープ材で前記直線状隙間Dを覆った後に該覆いテープ材の上から塗布する塗膜防水材との密着性が良好になる表面処理が施してあることが好ましい。
【0074】
具体的には、本発明の覆いテープ材のテープ基材10の最上層11である二軸延伸ポリエステルフィルムには、上面(塗膜防水層が施工される面)に、易接着処理として、例えば、コロナ処理機でコロナ処理(表面改質)を行うか、フィルム製造時にコロナ処理機でコロナ処理(表面改質)を行ったものを用いることが好ましい。また、易接着処理として、ポリウレタン樹脂等の樹脂をビヒクルとして含有する溶剤型のインキを、グラビアロール等で塗布して乾燥することが好ましい。
【0075】
<<テープ基材の中間層>>
本発明の覆いテープ材のテープ基材10の中間層12は、引張弾性率(ヤング率)が、5MPa以上2000MPa以下の、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエステル樹脂(PET)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPT)、ブチルゴム(IIR)、又は、ポリウレタンゴム(U)を有する芯材であることが必須である(
図1参照)。
【0076】
<<<中間層の引張弾性率(ヤング率)>>>
中間層12の引張弾性率(ヤング率)は、5MPa以上2000MPa以下であることが必須であるが、10MPa以上1700MPa以下であることが好ましく、30MPa以上1500MPa以下であることがより好ましく、50MPa以上1300MPa以下であることが特に好ましい。
【0077】
中間層12の引張弾性率(ヤング率)が小さ過ぎると、前記したような障害が生じる場合があり、特に、中間層12自体の剛性がなくなり、歩行や物を置いた際の荷重によって、へこみ易くなる場合がある。
【0078】
一方、中間層12の引張弾性率(ヤング率)が大き過ぎると、前記したような障害が生じる場合がある。
特に、中間層12の芯材は、最上層11及び最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムと比較して線膨張率が大きく、かつ、厚みが大きいことが好ましいため、中間層12の線膨張を最上層11及び最下層13で拘束できず、高温時には膨張し、長手方向のシートジョイントがぶつかって座屈し、低温時には収縮して、隙間が広がってしまう場合がある。
また、施工時の鋏やカッターによるカッティング作業において簡単に切断することが困難になる場合等がある。
【0079】
<<<中間層の樹脂又はゴム>>>
中間層12は、上記樹脂又はゴムを含有する芯材であることが必須である。
これらの樹脂又はゴムであれば、上記引張弾性率(ヤング率)の範囲を満たすと共に、強度、線膨張率、価格等が好適である。
【0080】
例えば、軟質塩化ビニル等には可塑剤が含有されているが、本発明における中間層12の物性は、該可塑剤が含有されている状態での樹脂又はゴムとしての物性である。すなわち、例えば可塑剤等の配合物が含有されて1種の「樹脂又はゴム」になっているとみなす。
また、ポリエチレン樹脂に関しては、高密度(HDPE)、中密度(MDPE)、低密度(LDPE)は問わない(何れでもよい)。更に、ポリプロピレン樹脂の延伸の有無は問わない(何れでもよい)。
また、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂の具体的組成は、上記引張弾性率(ヤング率)の範囲を満たして、中間層12として使用可能であれば何れでもよい。
【0081】
<<<中間層の厚み>>>
中間層12の厚みは、0.05mm以上1.2mm以下が好ましく、0.08mm以上1.0mm以下がより好ましく、0.12mm以上0.8mm以下が更に好ましく、0.15mm以上0.6mm以下が特に好ましい。
【0082】
中間層12の厚みが小さ過ぎると、前記したのと同様の問題が生じる場合があり、特に撓み易くなり、非粘着剤部位NAがへこみ易くなる場合がある。
一方、中間層12の厚みが大き過ぎると、剛性が大きくなる場合;重くなり過ぎて扱い難くなる場合;製品として紙管に巻き取るため、延反した場合に巻き癖が残る場合;紙管に巻かれた外側の二軸延伸ポリエステルフィルムの変形量が弾性域を超えて元に戻らなくなったり、皺が発生したりする場合;等がある。
【0083】
中間層12は、2枚以上を積層して上記厚みにしてもよい。その場合、上記した中間層12の樹脂又はゴムの中から異なる種類の樹脂又はゴムを積層してもよいが、同一種類の樹脂又はゴムを積層することが好ましい。
【0084】
<<<中間層に含有される無機充填剤>>>
中間層12の芯材には、無機充填材が含有されていないか、又は、該芯材全体に対して70質量%以下で含有されていることが好ましい。
中間層12の樹脂・ゴムの種類によっては、無機充填材が含有されていなくてもよい場合、すなわち、含有させなくても前記物性値の範囲を満たし、性能が出る場合もあるが、中間層12の樹脂・ゴムの種類によっては、無機充填材が含有されている方がよい場合がある。
【0085】
無機充填材を含有させると、機械的強度、荷重撓み温度、寸法安定性(線膨脹率が小さくなる)、硬度等を向上させることができ、また、増量材としてコストダウンにも寄与できる。
【0086】
無機充填剤が含有されているとき(含有が好ましい樹脂等の場合)の含有率は、芯材全体に対して70質量%以下が好ましいが、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が更に好ましく、20質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0087】
無機充填剤を含有させる場合、言い換えれば無機充填剤の含有を必要とする場合、該無機充填剤の含有量が少な過ぎると、硬度等の機械的強度が落ちる、荷重撓み温度が下がる、線膨脹率が大きくなって寸法安定性が悪くなる、樹脂等の含有比率が上がり高価になる、等の場合がある。
一方、該無機充填剤の含有量が多過ぎると、線膨張率が下がり、引張弾性率(ヤング率)が上がるものの、柔軟性がなくなり、脆化し易くなる場合があり、紙管に巻いたり延反したりした際に中間層12に亀裂を生じる場合等がある。
【0088】
上記無機充填材は、特に限定はされないが、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、ケイ灰石、カーボンブラック、グラファイト、カオリンクレー、焼成カオリン、マイカ、シリカ等が、上記性能を与え易いため等の点から好ましい。
【0089】
また、中間層12の芯材として、合成紙を用いることもできるが、合成紙には、前記樹脂の中に炭酸カルシウム等の無機充填剤が、上記範囲の量含有されており、それによって好適な中間層12の芯材を与えることが可能である。
【0090】
<<テープ基材の最下層>>
本発明の覆いテープ材のテープ基材10の最下層13としては、前記した最上層11と同様のものが用いられる。
すなわち、最下層13は、引張弾性率(ヤング率)が、3000MPa以上5500MPa以下であり、線膨張率が、縦方法、横方向ともに、2.0×10
-5[K
-1]以下の二軸延伸ポリエステルフィルムであることが必須である(
図1参照)。
【0091】
前記した最上層11の引張弾性率(ヤング率)、線膨張率、厚み等の、必須範囲、好適な値の範囲が最下層13にも適用される。
最下層13に最上層11と全く同じフィルムを用いる必要はないが、ただ、最下層13としては最上層11と同じフィルムを用いることが特に好ましい。
【0092】
<<最上層、中間層及び最下層の積層>>
本発明の覆いテープ材は、最上層11のフィルムと中間層12の芯材が、及び、前記中間層12の芯材と前記最下層13のフィルムが、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層されてなるものであることが好ましい(
図1(a)(b)参照)。
「最上層の二軸延伸ポリエステルフィルムと中間層の芯材」及び「中間層の芯材と最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルム」は、限定はされないが、ドライラミネート若しくは押出しラミネートによって積層されることが好ましい。
【0093】
中間層12と最下層13との接着にはラミネート接着剤13aを用いることも好ましく、最上層11と中間層12との接着にはラミネート接着剤11aを用いることも好ましい(
図1(b)参照)。
【0094】
特に好ましい態様としては、限定はされないが、中間層12の片面に、最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートにより積層させ、次いで、該中間層12の該ラミネートがされていない面に、最上層11の「(好ましくは前記したポリウレタン樹脂インキ等で易接着処理をした)二軸延伸ポリエステルフィルム(の未処理面)を、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層させる態様が挙げられる。
【0095】
ラミネート方法は、その後に施される粘着層20の粘着剤の種類によって選定することも好ましい。
例えば、該粘着剤がブチル系で粘着層20を形成させる場合、粘着剤の塗工温度は50~120℃が好ましく、両面テープの付与で粘着層20を形成させる場合は、常温での貼合わせとなることから、ラミネート方法は、ドライラミネート、押出しラミネートのどちらでも問題ない。
また、粘着剤が改質アスファルト系の場合は、粘着剤の塗工温度が160~180℃となるために、テープ基材10の粘着剤塗工面の反対側を冷却しながら塗工しても、押出しラミネートの接着剤の融点を超えてしまうので、粘着剤が改質アスファルト系の場合は、それを防ぐ観点からドライラミネートが好ましい。
【0096】
上記した積層によって、それぞれ前記した厚みを有する、最上層11、中間層12、最下層13がラミネートされ、適度な剛性を有した、テープ基材10となり、覆いテープ材となる。
こうして得られたテープ基材10は、最上層11のフィルム、ラミネート接着剤11a、中間層12の芯材、ラミネート接着剤13a、最下層13のフィルムの計5層構造となる(
図1(b)参照)。
【0097】
上記製造方法や態様によって、引張弾性率(ヤング率)の低い中間層12の芯材を、薄膜で引張弾性率(ヤング率)の高いフィルムによって、上下から全面に接着し積層したテープ基材10が得られる。
【0098】
<<テープ基材の他の層>>
なお、本発明の覆いテープ材におけるテープ基材10は、少なくとも、最上層11、中間層12、及び、最下層13を有していればよく、本発明の効果を損なわない範囲において、それらの層の間やそれらの層の上若しくは下に、他の層を1層又は2層以上有していてもよい。
該「他の層」としては、上記したラミネート接着剤11a、13aの層の他に、例えば、渦電流膜厚計での塗膜防水層(ウレタン防水層等)の膜厚測定のためのアルミ箔等が挙げられる。
【0099】
<<テープ基材の総厚>>
テープ基材10の総厚は、前記した、最上層11、中間層12、最下層13の厚み、更には、ラミネートに用いたラミネート接着剤11a、13aの厚みの合計で決まり、好ましい総厚も計算できるが、上記したドライ/ウェットラミネート接着剤等の厚みも考慮すると(合計すると)、80μm~1500μmが好ましく、120μm~1400μmがより好ましく、160μm~1300μmが更に好ましく、200μm~1200μmが特に好ましい。
【0100】
撓みに対する抵抗性(荷重)は、厚さの3乗に比例することから、総厚が上記範囲で、引張弾性率の高い最上層11と最下層13が、中間層12を上下から挟んだ(積層した)テープ基材10を有する覆いテープ材は、撓み難く(変形し難く)、平滑な表面状態のまま、施工面に貼り付けることができる。
例えば、16μmと比較して5倍厚い80μm、10倍厚い160μmでは、撓みに対する抵抗性が、80μmでは16μmの125倍、160μmでは16μmの1000倍撓み難くなる。
【0101】
<覆いテープ材が有する粘着層>
本発明の覆いテープ材は、テープ基材10の下に粘着層20が存在することが好ましい。言い換えると、該テープ基材10の最下層13の下に粘着層20が存在することが好ましい(
図2(a)(b)参照)。本発明の覆いテープ材は、更に、前記テープ基材10の下に、途中に他の層の介在があってもよく、粘着層20を有するものが好ましい。
【0102】
粘着層20の厚みは、0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以上1.2mm以下であることがより好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることが特に好ましい。
【0103】
粘着層20の厚みが小さ過ぎると、面粗度が粗面で、且つ、不陸があるコンクリート等の下地に密着し難くなる、粘着層20の粘り気と弾性による目地D’部分の動きの緩衝効果が低下する等の場合がある。
本発明は、下地への密着性を上げ、かつ、目地D’部分の動きの緩衝効果を確保できるだけ厚みを有する、前記した効果(目地直上部がへこまない、温度変化でも表面平滑性を保てる等)を好適に奏することが特徴である。
【0104】
本発明の覆いテープ材では、粘着剤がテープ基材10の全面に設けられて粘着層20を形成していることが好ましいが、直線状隙間Dの直上部を除く直線状隙間Dの周辺部に、ストライプ状(縞状)に設けられていてもよい。
【0105】
<<粘着層の粘着剤の種類と粘着層の形成方法>>
テープ基材10の粘着層20は、好ましくは、最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムの下に、該粘着層20の熱融着、該粘着層20の材料の熱融解塗布、該粘着層20の材料の溶液塗布、又は、該粘着層20を有する両面粘着テープの付与、等により設けられる。
かかる粘着層20の付与方法としては、公知の方法が用いられる。
【0106】
粘着層20の粘着剤の種類については、ブチル系、又は、両面粘着テープに一般に用いられている粘着剤が好ましい。
【0107】
<<<ブチル系の粘着剤>>>
ブチル系粘着剤としては、例えば、ブチルゴム、ブチル再生ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ポリブテンゴム等が特に好ましい。
該ブチル系粘着剤(の粘着層)には、粘着付与材、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル等を含有させることも好ましい。該粘着付与材としては、C5及び/又はC9の不飽和留分の重合体又は共重合体が好ましい。該充填剤としては、炭酸カルシウム等の無機フィラーが好ましい。
【0108】
限定はされないが、好ましい製造法としては、それらを、ニーダーやバンバリーミキサーで混錬・混和し、この混和物を、50~120℃に加熱したカレンダーロール等に供給して、テープ基材10の裏面に圧延塗工によって積層した後、好ましくは、その上から離型フィルム又は離型紙30を貼り合わせて製造する。
【0109】
<<<粘着層の付与に両面テープを用いるとき等の粘着剤>>>
本発明の覆いテープ材においては、上記粘着層20を付与するのに、両面テープをラミネートすることによってもよく、特に限定はないが、そのときの粘着剤としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル樹脂系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、ブチルゴム系粘着剤、改質アスファルト系粘着剤等であることが好ましい。
該両面テープの構成は、粘着剤の層の中間に、基材として、フィルム、ネット、不織布、織布、発泡体等を有していてもよく、該基材を有していなくてもよい。また、粘着剤自体が発泡していてもよく、非発泡品でもよい。
【0110】
また、本発明の覆いテープ材は、テープ基材10の下面の、略全面若しくは直線状隙間を除く建築物表面の略全面にストライプ状に、粘着層20を有する覆いテープ材であって、該テープ基材10の横幅が、該粘着層20の横幅と同じ、又は、該粘着層20の横幅以上のものであることも好ましい。
【0111】
<覆いテープ材が有する離型フィルム又は離型紙>
本発明の覆いテープ材は、更に、前記粘着層20の直下に離型フィルム又は離型紙30を有するものであることが好ましい。
該「離型フィルム又は離型紙30」としては、公知のものが用いられる。粘着層20の付与に両面テープを用いる場合は、該両面テープに既に存在する「離型フィルム又は離型紙30」が流用できる。
【0112】
<覆いテープ材の切断強度>
本発明の覆いテープ材は、鋏やカッターで切れる程度以下の切断強度を有するものであることが好ましい。
本発明の覆いテープ材が、前記した、テープ基材10のラミネート接着剤11a、13a(の層)や「他の層」;粘着層20;離型フィルム又は離型紙30;等の層を有する場合でも、それら全体(全層)を鋏やカッターで切れる程度の切断強度を有するものであることが好ましい。
本発明の覆いテープ材には、鋏やカッターで切り難い硬い素材(材料)が存在しないので、施工現場での作業性が良い。
【0113】
<覆いテープ材の製造>
本発明の覆いテープ材の好ましい製造方法を以下に具体的に記載するが、本発明の覆いテープ材は、かかる(具体的な)製造方法に限定されるものではない。
【0114】
1.0m程度の広幅の二軸延伸ポリエステルフィルム、及び、1.0m程度の広幅の中間層12の芯材を用いることができる。限定はされないが、中間層12の片面に、最下層13の広幅の二軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートにより積層させ、次いで、該中間層12の該ラミネートがされていない面に、最上層11の「(好ましくは前記したポリウレタン樹脂インキ等で易接着処理をした)幅広の二軸延伸ポリエステルフィルム(の未処理面)」を、ドライラミネート又は押出しラミネートによって積層させることが特に好ましい。
【0115】
これによって、それぞれ前記した厚みを有する、最上層11、中間層12、最下層13がラミネートされた適度な剛性を有する1.0m程度の広幅のテープ基材10となる。
【0116】
こうして得られた切断前の広幅のテープ基材10は、最上層11のフィルム、ラミネート接着剤11a、中間層12の芯材、ラミネート接着剤13a、最下層13のフィルムの計5層構造となる。
それによって、引張弾性率(ヤング率)の低い中間層12の芯材を、薄膜で引張弾性率(ヤング率)の高いフィルムによって、上下から全面に接着し積層した1.0m程度の広幅の「スリット(切断)加工前のテープ基材」が得られる。
【0117】
上記広幅のテープ基材10の最下層13に、前述した粘着剤を塗工して粘着層20を設けた後、離型フィルム又は離型紙30を貼合わせ、又は、両面テープを貼合わせ、次いで、40mm~200mmの製品寸法にスリット(切断)する。こうすることで、数本から二十数本の製品を製造効率良く製造することができるため、安価に製品を提供することができる。
【0118】
<覆いテープ材の製品形態>
本発明の覆いテープ材は、離型紙又は離形フィルム30と共に、紙管等の管に巻きつけて製品とすることが好ましい。
本発明は、前記の覆いテープ材をロール状に巻いてなることを特徴とする覆いテープ材ロールでもある。
【0119】
紙管に巻き取られた際に、紙管内側に接するテープ基材10の最上層11の二軸延伸ポリエステルフィルムと、最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムとは、曲率で、外側となる最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムが伸ばされた状態となるため、広げた際にカール状の癖が発生することが懸念される。
【0120】
実用上、弾性変形として考えられるのは、ひずみが1%位までであるので、外側となる最下層13の二軸延伸ポリエステルフィルムの伸びが、この範囲になる紙管を選定することが好ましい。
そのような紙管を使用すれば、本発明の覆いテープ材は、ロール状に巻いておいても、作業現場で広げた(解いた)際にカール状の癖が発生し難いので、覆いテープ材ロールの形態で供給することができる。
【0121】
[本発明の覆いテープ材を使用する塗膜防水工法、及び、防水塗膜の改修方法]
本発明は、前記の本発明の覆いテープ材で、前記建築物に存在する前記直線状隙間Dを覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする塗膜防水工法でもある(
図3、4参照)。
本発明の覆いテープ材を使用すれば、前記したような優れた塗膜防水工法が達成でき、本発明の覆いテープ材の上に形成された塗膜防水膜は、前記したような優れた効果を奏する。
【0122】
また、本発明は、建築物に存在する直線状隙間Dが目地D’であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、前記の本発明の覆いテープ材で該目地D’を覆い、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法でもある(
図3、4参照)。本発明の覆いテープ材は、改修の際に特にその効果を発揮する。
【0123】
本発明の覆いテープ材を使用すれば、建築物の直線状隙間Dが存在する部材C(周辺)を改修する際に、前記したような優れた防水塗膜の改修が達成でき、本発明の覆いテープ材の上に形成された塗膜防水膜は、前記したような優れた効果を奏する。
本発明の覆いテープ材は、特に、上記直線状隙間Dが目地D’であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に該目地D’を覆うことが好ましい(該目地を覆う改修工法に使用することが好ましい)。改修時には、該目地D’には新たな目地材を充填させなくても優れた防水機能を発揮する。
【0124】
また、本発明は、上記直線状隙間Dが目地D’であり、既存の押さえコンクリートの既存目地材を除去した後に、前記した本発明の覆いテープ材にて該目地D’を覆い、その上に通気緩衝シートを設け、その上から塗膜防水材を塗布することを特徴とする防水塗膜の改修方法でもある。
【0125】
前記した理由(本発明の効果)によって、本発明の覆いテープ材を使用した塗膜防水工法は優れた効果を奏するが、更に、通気緩衝シートを設け、その上から塗膜防水材を塗布することによって、押さえコンクリートから放出される水蒸気を、該通気緩衝シートの通気溝等を通して脱気筒から排出する以外に、目地D’を通気溝として利用して押えコンクリート中の残留水の水蒸気を脱気筒から排出させることができる。
本発明の覆いテープ材は、建築物の屋上等に在る既存の目地D’の「通気路としての機能」を極めて有効に発揮させることが可能である。その上で、前記したような、物理的・機能的・構造的;視覚的・外見的;作業的・保存移送性;等の効果を発揮する。
【実施例0126】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
以下、実施例と比較例において、覆いテープ材が有するテープ基材10の製造方法とその態様について具体的に記載する。
また、以下の実施例と比較例に使用したフィルムや芯剤の態様(物質名、メーカー等)と物性値等を以下の表1に示す。
【0128】
最上層11と最下層13に使用した「二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)」の線膨張率は、縦方法、横方向ともに、1.5×10-5[K-1]である。
【0129】
実施例1
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)25μm厚と、中間層として、A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0130】
実施例2
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)38μm厚と、中間層として、A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0131】
実施例3
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)12μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0132】
実施例4
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)25μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に、可塑剤と、無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚を、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0133】
実施例5
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚を、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0134】
実施例6
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)16μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて2枚積層した芯材」0.16mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてドライラミネートした。
【0135】
実施例7
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて2枚積層した芯材」0.16mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0136】
実施例8
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)16μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて3枚積層した芯材」0.24mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0137】
実施例9
最上層と最下層として、二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTER5107、東洋紡株式会社製)50μm厚と、中間層として、A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤にて3枚積層した芯材」0.24mm厚とを、ドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0138】
比較例1
A4サイズの「ポリエチレン樹脂中に無機充填材として炭酸カルシウムが、ポリエチレン樹脂:炭酸カルシウム=40:60(質量比)で分散混合されたもの」(製品名:ストーンペーパーSTO、台湾龍盟科技股有限公司製)0.25mm厚を用意した。
【0139】
比較例2
A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材1c」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚を用意した。
【0140】
比較例3
最上層と最下層として、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)10μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材1c」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0141】
比較例4
最上層と最下層として、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)20μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材1c」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0142】
比較例5
最上層と最下層として、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)40μm厚と、A4サイズの「塩化ビニル樹脂に可塑剤と無機充填材として炭酸カルシウムが、塩化ビニル樹脂:可塑剤:炭酸カルシウム=100:55:30(質量比)で分散混合された芯材1c」(品番:11250002、株式会社タツノ化学製)0.25mm厚をドライラミネート接着剤にてラミネートした。
【0143】
比較例6
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)25μm厚を用意した。
【0144】
比較例7
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)50μm厚を用意した。
【0145】
比較例8
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)100μm厚を用意した。
【0146】
比較例9
A4サイズの二軸延伸ポリエステルフィルム(製品名:TOYOBO ESTERE5107、東洋紡株式会社製)88μm厚を用意した。
【0147】
比較例10
A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材1c(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤1b・1dにて2枚積層した芯材1c」0.16mm厚を用意した。
【0148】
比較例11
A4サイズの「二軸延伸ポリプロピレン樹脂に無機充填材として炭酸カルシウムが、二軸延伸ポリプロピレン樹脂:炭酸カルシウム=41:24(質量比)で分散されたものであって、更に、ミクロボイド又は亀裂が35容積%で分散して存在している芯材1c(製品名:エヌコート、中本パックス株式会社製)(厚み80μm)を、ドライラミネート接着剤1b・1dにて3枚積層した芯材1c」0.24mm厚を用意した。
【0149】
評価例1
<表面平滑性>
直線状隙間を覆いテープ材で覆って、防水塗膜を付与する前の該覆いテープ材の表面の平滑性、及び、塗膜防水工法で防水塗膜を付与した後の該防水塗膜の表面の平滑性を以下のように評価した。
後者の(防水塗膜の表面の)平滑性は、該直線状隙間の直上部の防水塗膜上の歩行感や防水塗膜の外観(見栄え)に強く影響する。
また、前者の(覆いテープ材の表面の)平滑性が良好なものは、後者の(防水塗膜の表面の)平滑性が良好であることは別途確認してある。
【0150】
具体的には、本発明の覆いテープ材の使用部位である「既存の伸縮目地材を撤去した直線状隙間の上部」が、撓まずに(へこまずに)、平滑性を担保できるかを検証した。
上記「撓まない(へこまない)性質」等の前記「後者の(防水塗膜の表面の)平滑性」は、使用した覆いテープ材が有するテープ基材の剛軟度を測定すれば分かることは、別途確かめている。
【0151】
<<剛軟度の測定>>
覆いテープ材が撓まずに平滑性を評価する方法として、該覆いテープ材に使用するテープ基材について、日本工業規格JIS L1096:2010、B法(スライド法)を用いて、試験片の単位幅について単位曲度に対する曲げモーメント[剛軟度:Br(mN・cm)]を測定した(
図5参照)。
【0152】
実施例及び比較例で調製した覆いテープ材の単位面積当たりの質量(g/cm
2)を測り、約20mm×150mmの試験片を5枚採取した。
図5に示す試験機を用い、移動台をゆっくり下げて行き、試験片の自由端が移動台から離れるときのδの値をスケールによって読み、次の式によって剛軟度:Br(mN・cm)を求めた。
【0153】
【0154】
Br:剛軟度(mN・cm)
W:試験片の単位面積当たり重力(mN/cm2)
L:試験片の長さ(cm)
δ:スケールの読み(cm)
【0155】
得られた剛軟度を表1に記載する。
【0156】
評価例2
<目地が圧縮を受けたときの表面平滑性>
覆いテープ材で覆った、押えコンクリートの直線状隙間(伸縮目地幅)は、冬期は押えコンクリートが収縮するため、直線状隙間(伸縮目地)直上の覆いテープ材は、目地の幅が広がることに伴って引っ張られるため、表面平坦性が問題になることはない。
それに対して、夏季は押さえコンクリートが膨張するため、直線状隙間(伸縮目地)直上の覆いテープ材は、目地の幅が狭まることで圧縮される。
この圧縮挙動に対して、直線状隙間(伸縮目地)直上の覆いテープ材が、撓まず表面平滑性を維持できるか否かを評価した。
【0157】
建築工事標準仕様書・同解説JASS8防水工事、付5.メンブレン防水層の性能評価試験方法、3.3疲労試験(日本建築学会)の試験方法を参考に、卓上バイス(FV-150、トラスト中山株式会社製)に、150mm幅にカットしたアルミ製Lアングル(5×75×50mm)をビス固定し、直線状隙間D(目地D’)として25mmの間隔をあけた試験機を作製した(
図6参照)。
【0158】
実施例1~9、比較例1~11で作製したテープ基材10の裏面に、スーパーブチルテープ(両面)No.5938(マクセル株式会社製)、幅100mm、厚み5.0mmを貼合わせた後、幅100mm、長さ120mmにカットして、覆いテープ材の試験体とした。
【0159】
上記卓上バイスを用いた試験機の直線状隙間D(目地D’)が中央になるようにして、該直線状隙間D(目地D’)の上に、上記実施例1~9、比較例1~11覆いテープ材の試験体から離型フィルムを剥して貼付け、転圧して密着させた(
図6参照)。
【0160】
卓上バイスを用いた試験機のハンドルを回し、直線状隙間D(目地D’)を2.5mm圧縮して、直線状隙間D(伸縮目地)直上の覆いテープ材の表面平滑性の評価を行った。
【0161】
上記のようにして得られた「圧縮を受けたときの表面平滑性」の判定基準、及び、該判定基準で判定したときの評価結果を、表1の最右欄に記載する。
【0162】
【0163】
テープ基材の最上層と最下層の二軸延伸ポリエステルフィルムの線膨張率が、縦方法・横方向ともに、2.0×10-5以下であれば、「温度変化を受けたときの表面平滑性」は、上記評価例1の「表面平滑性」に依存する。
【0164】
実施例1~9の覆いテープ材では、「○」(平滑)、又は、「△~○」(若干変形~平滑)であり、夏季等に目地等の直線状隙間Dが圧縮を受けたときの表面平滑性に優れていた。
一方、比較例1~11の覆いテープ材では、何れも「×」(撓む)であり、夏季等に目地等の直線状隙間Dが圧縮を受けたときの表面平滑性に劣っていた。
本発明の覆いテープ材は、建築物にある押えコンクリートの目地等の直線状隙間を、外見的にも機能的にも問題のない形で簡便に処理・施工することができ、作業能率の向上も図れるため、屋上等の新規塗膜防水工事や、防水塗膜の改修工事等に広く利用されるものである。