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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053946
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240409BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20240409BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20240409BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240409BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20240409BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240409BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20240409BHJP
   H01M 50/449 20210101ALN20240409BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01G11/26
H01G11/52
H01M50/46
H01G11/06
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/449
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160485
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】前田 智則
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB02
5E078AB13
5E078BA09
5E078CA11
5E078HA05
5H021BB11
5H021CC04
5H028AA05
5H028BB07
5H028CC02
5H028CC08
5H028CC13
5H028HH01
5H028HH05
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029DJ04
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】巻回電極体を備えた電池の電池性能を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】ここで開示される電池100において、巻回電極体20は、一方端部側に配置された第1湾曲領域20rと、他方端部側に配置された第2湾曲領域20rと、を含み、巻回電極体20の巻回軸WLに対して直交する方向に切った断面視において、一方の扁平面20fから巻回軸WLを通過し他方の扁平面20fに至る厚み方向に対して垂直な方向に延びる直線を直線Aとし、第1湾曲領域20rは、巻回電極体20において直線Aよりも一方側に位置する第1領域20r1aを有し、正極の巻き終わり端部22eと、負極の巻き終わり端部24eとが、第1領域20r1aに位置し、巻回電極体20の最外面に位置する第1セパレータの巻き終わり端部70Aeは、第2湾曲領域20rに位置する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた電池であって、
前記巻回電極体は、一方端部側に配置された第1湾曲領域と、他方端部側に配置された第2湾曲領域と、を含み、
前記巻回電極体の巻回軸に対して直交する方向に切った断面視において、一方の扁平面から前記巻回軸を通過し他方の扁平面に至る厚み方向に対して垂直な方向に延びる直線を直線Aとし、
前記第1湾曲領域は、前記巻回電極体において前記直線Aよりも一方側に位置する第1領域を有し、
前記正極の巻き終わり端部と、前記負極の巻き終わり端部とが、前記第1領域に位置し、
少なくとも前記巻回電極体の最外面に位置する前記セパレータの巻き終わり端部は、前記第2湾曲領域に位置する、電池。
【請求項2】
前記巻回電極体を収容する電池ケースを備え、
前記電池ケースは、底壁、一対の第1側壁、一対の第2側壁、および開口を含む外装体と、前記開口を封止する封口板と、を含み、
前記巻回電極体の前記巻回軸が、前記底壁に対して垂直な方向となるように、前記電池ケース内に前記巻回電極体が配置されている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記セパレータと、前記正極および前記負極の少なくとも一方が接着層により接着されている、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記巻回電極体の前記巻回軸に沿った方向における長さに対する、前記巻回電極体の前記直線Aに沿った方向における長さは、3倍以上である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
前記巻回電極体の厚みは、10cm以上である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項6】
前記正極の巻き始め端部は、巻き始め端部領域を有し、
前記負極の巻き始め端部は、折り返し領域を有し、
前記巻回電極体の前記厚み方向において、前記巻き始め領域および前記折り返し領域が重なる、請求項1または2に記載の電池。
【請求項7】
前記セパレータの巻き終わり端部には、巻き止めテープが配置されており、
前記巻き止めテープは、前記直線A上に配置されている、請求項1または2に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2022-74818号公報には、帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して積層され、巻回軸を中心に巻回されてなる巻回電極体を備えた電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-74818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者の検討によると、上述したような巻回電極体を備えた電池は、電池性能の向上という観点から、まだまだ改善の余地があることがわかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される電池では、帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた電池であって、上記巻回電極体は、一方端部側に配置された第1湾曲領域と、他方端部側に配置された第2湾曲領域と、を含み、上記巻回電極体の巻回軸に対して直交する方向に切った断面視において、一方の扁平面から上記巻回軸を通過し他方の扁平面に至る厚み方向に対して垂直な方向に延びる直線を直線Aとし、上記第1湾曲領域は、上記巻回電極体において上記直線Aよりも一方側に位置する第1領域を有し、上記正極の巻き終わり端部と、上記負極の巻き終わり端部とが、上記第1領域に位置し、少なくとも上記巻回電極体の最外面に位置する上記セパレータの巻き終わり端部は、上記第2湾曲領域に位置する。かかる構成の電池によると、電池性能の向上を好適に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
図5】一実施形態に係る巻回電極体の構成を示す模式図である。
図6】一実施形態に係る巻回電極体を示す模式図である。
図7】一実施形態に係る正極と負極とセパレータとの界面を模式的に示す拡大図である。
図8図3の巻回電極体の断面の構成を示す模式図である。
図9図8の正極の巻き始め端部近傍および負極の巻き始め端部近傍について説明するための説明図である。
図10図8の第1湾曲領域および第2湾曲領域について説明するための説明図ある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本開示を限定することを意図したものではない。また、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「Aより大きい」および「Bより小さい」の意を包含するものとする。
【0008】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0009】
<電池の構成>
図1は、本実施形態に係る電池100を模式的に示す斜視図である。電池100は、二次電池であることが好ましく、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池であることがより好ましい。図2は、図1中のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う模式的な横断面図である。図4は、図2中のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは、電池100の短辺方向を示し、符号Yは、電池100の長辺方向を示し、符号Zは、電池100の上下方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0010】
図1図3に示すように、電池100は、電池ケース10(図1参照)と、複数の巻回電極体20(図2図3参照)と、正極端子30(図1図2参照)と、負極端子40(図1図2参照)と、正極集電部50(図2参照)と、負極集電部60(図2参照)と、を備えている。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解液を備えている。電池100は非水電解液二次電池である。以下、電池100の具体的な構成について説明する。
【0011】
電池ケース10は、巻回電極体20を収容する筐体である。図1に示すように、電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。ただし、他の実施形態では、電池ケース10の外形は円筒状等の他の形状であってもよい。また、筐体として、ラミネート型のケースを用いることもできる。図2に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを封口する封口板(蓋体)14と、を備えている。電池ケース10(外装体12および封口板14)の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。電池ケース10を構成する外装体12および封口板14は、同じ材質でもよいし、異なる材質であってもよい。外装体12および封口板14は、巻回電極体20の収容数(1つまたは複数。ここでは、複数。)や、サイズ等に応じた大きさを有している。
【0012】
外装体12は、図1図2から分かるように、上面に開口12hを有する有底かつ角型の容器である。外装体12は、図1に示すように、底壁12aと、底壁12aの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。長側壁12bおよび短側壁12cは、ここに開示される第1側壁および第2側壁の一例である。長側壁12bの面積は、短側壁12cの面積よりも大きい。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12h(図2参照)と対向している。長側壁12bおよび短側壁12cは、「側壁」の一例である。封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられた平面略矩形の板状部材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、略矩形状である。電池ケース10は、外装体12の開口12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。これによって、電池ケース10は気密に封止(密閉)されている。
【0013】
図2に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、端子引出孔18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12に封口板14を組み付けた後、電池ケース10の内部に電解液を注液するための貫通孔である。注液孔15は、電解液の注液後に封止部材16によって封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0014】
電解液としては、従来公知の電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液が挙げられる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0015】
正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図1図2の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図1図2の右端部)に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、端子引出孔18、19に挿通され、封口板14の外側の表面に露出している。正極端子30は、電池ケース10の外側において、板状の正極外部導電部材32と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース10の外側において、板状の負極外部導電部材42と電気的に接続されている。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、バスバー等の外部接続部材を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で構成されている。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0016】
図3図4に示すように、本実施形態の電池100では、電池ケース10内に複数個(具体的には2個)の巻回電極体20が収容されている。ただし、1つの外装体12の内部に配置される巻回電極体の数は特に限定されず、3個以上(複数)であってもよいし、1個であってもよい。巻回電極体20の詳しい構造については後述するが、図2に示すように、巻回電極体20の上部には、正極タブ群25と負極タブ群27とが突出している。電池100は、巻回電極体20の上方に正極タブ群25と負極タブ群27とが位置する、所謂、上タブ構造である。図4に示すように、正極タブ群25は正極集電部50と接合された状態で湾曲されている。図示は省略するが、同様に負極タブ群27は、負極集電部60と接合された状態で湾曲されている。
【0017】
正極集電部50は、巻回電極体20の正極タブ群25と正極端子30とを電気的に接続している。正極集電部50は、図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。正極集電部50の一方(図2の右側)の端部は、正極タブ群25と電気的に接続されている。正極集電部50の他方(図2の左側)の端部は、正極端子30の下端部30cと電気的に接続されている。正極端子30および正極集電部50は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えばアルミニウムやアルミニウム合金で構成されている。
【0018】
負極集電部60は、巻回電極体20の負極タブ群27と負極端子40とを電気的に接続している。負極集電部60は、図2に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である。負極集電部60の一方(図2の左側)の端部は、負極タブ群27と電気的に接続されている。負極集電部60の他方(図2の右側)の端部は、負極端子40の下端部40cと電気的に接続されている。負極端子40および負極集電部60は、導電性に優れた金属から構成されていることが好ましく、例えば銅や銅合金で構成されている。
【0019】
電池100では、巻回電極体20と電池ケース10との導通を防止するために、種々の絶縁部材が用いられている。例えば、図1に示すように、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、外部絶縁部材92によって封口板14と絶縁されている。また、図2に示すように、封口板14の端子引出孔18、19には、それぞれガスケット90が装着されている。これによって、端子引出孔18、19に挿通された正極端子30および負極端子40が封口板14と導通することを防止できる。また、正極集電部50および負極集電部60と、封口板14の内面側との間には、内部絶縁部材94が配置されている。これにより、正極集電部50および負極集電部60が封口板14と導通することを防止できる。なお、内部絶縁部材94は、巻回電極体20に向かって突出する突出部を備えていてもよい。
【0020】
さらに、複数の巻回電極体20は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ29(図3参照)に覆われた状態で、外装体12の内部に配置されている。これによって、巻回電極体20が外装体12と直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材質は、所定の絶縁性を有している限りにおいて特に限定されない。そのような材質の一例として、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂材料が挙げられる。
【0021】
図5は、巻回電極体20の構成を示す模式図である。図5に示すように、巻回電極体20は、帯状の正極22と帯状の負極24とが2枚の帯状のセパレータ70(第1セパレータ70A,第2セパレータ70B)を介して絶縁された状態で積層され、巻回軸WLを中心として長手方向に巻回されて構成されている。なお、図5等における符号LDは、帯状に製造される巻回電極体20およびセパレータ70の長手方向(即ち、搬送方向)を示している。符号WDは、長手方向LDと略直交する方向であり、巻回電極体20およびセパレータ70の巻回軸方向(幅方向でもある)を示している。巻回軸方向WDは、上記した電池100の上下方向Zと略平行である。
【0022】
巻回電極体20は、ここでは外形が扁平形状である。巻回電極体20は、扁平形状であることが好ましい。扁平形状の巻回電極体20は、例えば筒状に巻回した電極体(筒状体)を扁平にプレス成形することによって形成し得る。扁平形状の巻回電極体20は、図3に示すように、外表面が湾曲した一対の湾曲部(湾曲領域)20rと、一対の湾曲領域20rを連結する外表面が平坦な一対の平坦部(平坦領域)20fと、を有している。一対の湾曲領域20rは、第1湾曲領域20rおよび第2湾曲領域20rを含む。
【0023】
図6は、巻回電極体20を示す模式図である。図6中のPは、巻回電極体20の高さ(換言すると、巻回電極体20の巻回軸WLに沿った方向における長さ。外装体12の底壁12aと、封口板14とを結ぶ方向における長さともいう。)を示している。また、図6中のQは、巻回電極体20の幅(換言すると、後述する直線Aに沿った方向における長さ。外装体12の一対の短側壁12cを結ぶ方向における長さともいう。)を示している。ここで、巻回電極体20の高さPに対する巻回電極体20の幅Qの比(Q/P)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば2以上であり、より高容量な電池とするという観点から、好ましくは3以上であり、例えば4以上であってもよい。また、上記比(Q/P)の上限は、特に制限されないが、例えば10以下であり、7以下や5以下であってもよい。巻回電極体20の高さPは、5cm以上であることが好ましく、例えば10cm以上であってもよい。また、巻回電極体20の高さPは、20cm以下であることが好ましく、15cm以下であることがより好ましい。巻回電極体20の幅Qは、20cm以上であることが好ましく、30cm以上であることがより好ましい。また、巻回電極体20の幅Qは、例えば60cm以下であってもよく、50cm以下や40cm以下であってもよい。ただし、これらに限定されることを意図したものではない。
【0024】
図6中のTは、巻回電極体20の厚みを示している。巻回電極体20の厚みTは、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば5cm以上であり、より高容量な電池とするという観点から、10cm以上であることが好ましく、12cm以上であることがより好ましく、15cm以上であることが更に好ましい。巻回電極体20の厚みTの上限は、特に制限されないが、例えば30cm以下であってもよく、25cm以下や20cm以下であってもよい。ただし、これらに限定されることを意図したものではない。
【0025】
電池100において、巻回電極体20は、巻回軸方向WDが上下方向Zと略一致するように電池ケース10の内部に収容されている。言い換えれば、巻回電極体20は、巻回軸方向WDが、長側壁12bおよび短側壁12cと略平行になり、かつ底壁12aおよび封口板14と略直交する向きで、電池ケース10の内部に配置されている。つまり、巻回電極体20は、その巻回軸WLが底壁12aに対して垂直方向となるように、電池ケース10内に配置されている。このように、巻回電極体20が上下に開口している構成によると、電解液の浸透が早くなるため好ましい。また、電池100を、高容量な電池とすることができるため好ましい。図3に示すように、一対の湾曲部20rは、外装体12の一対の短側壁12cと対向している。一対の平坦部20fは、外装体12の長側壁12bと対向している。巻回電極体20の端面(すなわち、正極22と負極24とが積層された積層面、図5の巻回軸方向WDの両端部)は、底壁12aおよび封口板14と対向している。
【0026】
正極22は、図5に示すように、帯状の部材である。正極22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を備えている。正極活物質層22aは、電池性能の観点から、正極集電体22cの両面に形成されていることが好ましい。
【0027】
正極22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。正極集電体22cの厚みは、5μm~30μmであることが好ましく、8μm~25μmであることがより好ましい。
【0028】
正極22では、図5に示すように、巻回軸方向WDの一方の端辺から外側(図5の上側)に向かって複数の正極タブ22tが突出している。複数の正極タブ22tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、ここでは正極22の一部である。正極タブ22tは、正極活物質層22aが形成されていない領域である。正極タブ22tの一部には、ここでは正極保護層22pが設けられている。ただし、正極タブ22tには正極保護層22pが設けられていなくてもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には正極集電体22cが露出している。正極タブ22tは正極22と別の部材であってもよい。
【0029】
複数の正極タブ22tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、正極タブ22tの形状はこれに限定されない。また、複数の正極タブ22tのサイズも特に限定されない。正極タブ22tの形状やサイズは、例えば正極集電部50に接続される状態を考慮し、その形成位置等によって、適宜調整することができる。複数の正極タブ22tは、正極22の巻回軸方向WDの一方の端部(図5の上端部)で積層され、正極タブ群25を構成している(図2参照)。
【0030】
正極活物質層22aは、図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aの幅(巻回軸方向WDの長さ。以下同じ)は、負極活物質層24aの幅よりも小さい。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましく、なかでもNi(ニッケル)およびCo(コバルト)の少なくとも一方を含むものがより好ましい。かかるリチウム遷移金属複合酸化物の一例として、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が挙げられる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質に加えて、バインダと導電材とを含むことが好ましい。バインダは、典型的には樹脂製であり、なかでもポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂が好ましい。導電材としては、アセチレンブラック(AB)等の炭素材料が好ましい。
【0031】
正極保護層22pは、正極活物質層22aよりも電気伝導性が低くなるように構成された層である。正極保護層22pは、図5に示すように、正極集電体22cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、巻回軸方向WDにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの巻回軸方向WDの一方の端部、具体的には、正極タブ22tのある側の端部(図5の上端部)に設けられている。正極保護層22pを備えることで、セパレータ70が破損した際に正極22が負極活物質層24aと直接接触して電池100が内部短絡することを防止できる。
【0032】
正極保護層22pは、絶縁性の無機フィラーを含んでいる。無機フィラーの一例として、アルミナ等のセラミック粒子が挙げられる。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダおよび導電材は、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0033】
負極24は、図5に示すように、帯状の部材である。負極24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24c少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を備えている。負極活物質層24aは、電池性能の観点から、負極集電体24cの両面に形成されていることが好ましい。
【0034】
負極24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましく、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。負極集電体24cの厚みは、5μm~30μmであることが好ましく、8μm~25μmであることがより好ましい。
【0035】
負極24では、図5に示すように、巻回軸方向WDの一方の端辺から外側(図5の上側)に向かって負極タブ24tが突出している。複数の負極タブ24tは、長手方向LDに沿って所定の間隔を空けて(間欠的に)設けられている。巻回軸方向WDにおいて、負極タブ24tは正極タブ22tと同じ側の端部に設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極24の一部である。負極タブ24tは、ここでは負極活物質層24aが形成されておらず、負極集電体24cが露出した領域である。ただし、負極活物質層24aの一部が負極タブ24tにまではみ出して付着してもよい。また、負極タブ24tは負極24とは別の部材であってもよい。
【0036】
複数の負極タブ24tは、ここではそれぞれ台形状である。ただし、複数の負極タブ24tの形状やサイズは、正極タブ22tと同様に適宜調整することができる。複数の負極タブ24tは、負極24の巻回軸方向WDの一方の端部(図5の上端部)で積層され、負極タブ群27を構成している(図2参照)。
【0037】
負極活物質層24aは、図5に示すように、負極集電体24cの長手方向LDに沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aの幅は、正極活物質層22aの幅よりも大きい。なお、負極活物質層24aの幅とは、厚みが略一定である部分の巻回軸方向WDの長さをいい、例えば負極活物質層24aの一部が負極タブ24tにまではみ出して付着していても、負極タブ24tの部分を含まないものとする。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質を含んでいる。負極活物質は、例えば、黒鉛等の炭素材料や、シリコン材料が好ましい。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、導電材、各種添加成分等を含んでいてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質に加えて、バインダを含むことが好ましい。バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類や、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース類を含むことが好ましい。負極活物質層24aは、必要に応じて導電材として炭素材料を含んでもよい。
【0038】
セパレータ70は、図5および図7に示すように、帯状の部材である。セパレータ70は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータ70の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極22と負極24との間にセパレータ70を介在させることによって、正極22と負極24との接触を防止すると共に、正極22と負極24との間に電荷担体(例えばリチウムイオン)を移動させることができる。特に限定されるものではないが、セパレータ70の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、8μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、セパレータ70の厚みは、25μm以下が好ましく、22μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0039】
セパレータ70は、ここでは1つの巻回電極体20に2枚使用されている。セパレータ70は、本実施形態のように1つの巻回電極体20に2枚、すなわち、第1セパレータ70Aおよび第2セパレータ70Bを含むことが好ましい。2枚のセパレータは、それぞれ異なる構成であってもよいし、それぞれ同様の構成であってもよい。
【0040】
図7に示すように、セパレータ70は基材層72を含む。基材層72としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層72は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層72は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層72は、少なくとも負極24と対向する面が、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。基材層72は、全体がポリオレフィン樹脂からなることがより好ましい。これによって、セパレータ70の柔軟性を充分に確保し、巻回電極体20の作製(巻回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。
【0041】
特に限定されるものではないが、基材層72の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、基材層72の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。基材層72の透気度は、30sec/100cc~500sec/100ccが好ましく、30sec/100cc~300sec/100ccがより好ましく、50sec/100cc~200sec/100ccがさらに好ましい。基材層72は、例えば加熱やプレス成形等によって負極活物質層24aと接着される程度の接着性を有していてもよい。
【0042】
図7に示すように、耐熱層73は、基材層72の上に設けられている。耐熱層73は、基材層72の上に形成されていることが好ましい。耐熱層73は、基材層72の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層72の上に設けられていてもよい。ただし、耐熱層73は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層73は、ここでは基材層72の正極22と対向する面全体に設けられている。これにより、セパレータ70の熱収縮をより的確に抑え、電池100の安全性の向上に貢献できる。耐熱層73は、例えば加熱やプレス成形等によって正極活物質層22aと接着される程度の接着性を有していない。耐熱層73の目付は、ここではセパレータ70の長手方向LDおよび巻回軸方向WDに均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層73の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上がさらに好ましい。また、耐熱層73の厚みは、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。耐熱層73は、無機フィラーと耐熱層バインダとを含むことが好ましい。
【0043】
無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータ70の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層73の総質量に対する無機フィラーの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
【0044】
耐熱層バインダとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
【0045】
図7に示すように、本実施形態では、セパレータ70(第1セパレータ70A,第2セパレータ70B)と正極22とが接着層74によって接着されている。接着層74は、ここでは、セパレータ70の表面に形成されている。かかる構成によると、巻回電極体20の形状が安定する(換言すると、巻回電極体20内に隙間等が生じることが好適に抑制される)ため、好ましい。また、他の実施形態では、セパレータ70と負極24とが接着層74によって接着されていてもよい。あるいは、セパレータ70と正極22とが接着層74によって接着されており、かつ、セパレータ70と負極24とが接着層74によって接着されていてもよい。特に、本実施形態のように、セパレータ70と正極22とが接着層74によって接着されている場合、上述したような効果に加えて、電池100の充放電に伴う巻回電極体20のスプリングバック(換言すると、扁平状に成形された巻回電極体20が円筒状に復元しようとする力)を好適に抑制することができるため、好ましい。
【0046】
接着層74は、正極22と対向する面に設けられ、正極22と当接している。接着層74は、図7に示すように、少なくともセパレータ70の正極22側の面に形成されていることが好ましい。これにより、上記したような効果がより良く発揮される。接着層74は、例えば加熱や押圧(典型的にはプレス成形)等によって、正極22と接着されている。特に限定されるものではないが、接着層74の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、接着層74の厚みは、8μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0047】
接着層74は、ここでは耐熱層73の上に設けられている。接着層74は、耐熱層73の上に形成されていることが好ましい。接着層74は、耐熱層73の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して耐熱層73の上に設けられていてもよい。また、基材層72の表面に直接設けられていてもよいし、耐熱層73以外の層を介して基材層72の上に設けられていてもよい。接着層74の構成は特に限定されず、従来公知のものと同様であってよい。接着層74は、電解液との親和性が、例えば耐熱層73と比べて相対的に高く、電解液を吸収して膨潤する層であり得る。接着層74は、接着層バインダを含んでいる。
【0048】
接着層バインダとしては、正極22に対して一定の粘性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアリルアミン(PAA)樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有し、正極22に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。接着層バインダの種類は、耐熱層バインダと同じであってもよく、異なっていてもよい。接着層74の総質量に対する耐熱層バインダの割合は、20質量%以上が好ましく、50質量%以上、さらには70質量%以上がより好ましい。これにより、正極22に対して所定の接着性が的確に発揮されるとともに、プレス成形においてセパレータ70が変形しやすくなる。
【0049】
接着層74は、接着層バインダに加えて、他の材料(例えば、耐熱層73の成分として挙げた無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層74が無機フィラーを含む場合、接着層74の総質量に対する無機フィラーの割合は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0050】
特に限定されないが、接着層74の目付は、0.005g/m~1.0g/mが好ましく、0.02g/m~0.06g/mがより好ましい。ここで、接着層74の目付(目付量)とは、接着層の質量を形成領域の面積で割った値(接着層の質量/形成領域の面積)をいう。
【0051】
接着層74は、全面形成されていてもよく、あるいは所定のパターンを有していてもよい。例えば、接着層は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状、またはこれらの組み合わせ等のパターンを有していてもよい。
【0052】
次に、本実施形態に係る巻回電極体20の巻回態様について説明する。図8は、図3の巻回電極体20の断面の構成を示す模式図である。なお、図8では便宜上、各部材の断面のハッチングは省略されている。図9は、図8の正極の巻き始め端部22s近傍および負極の巻き始め端部24s近傍について説明するための説明図である。なお、図9では便宜上、第1セパレータ70Aおよび第2セパレータ70Bの記載を省略している。図10は、図8の第1湾曲領域20rおよび第2湾曲領域20rについて説明するための説明図である。図8および図10は、巻回電極体20の巻回軸WLに対して直交する方向に切ったときの断面図ということができる。
【0053】
図8に示すように、巻回電極体20は、帯状の正極22と、帯状の負極24とが、帯状のセパレータ70(第1セパレータ70A,第2セパレータ70B)を介して巻回された扁平状の巻回電極体である。また、図10に示すように、巻回電極体20は、一方端部側(図10の左側)に配置される第1湾曲領域20rと、他方端部側(図10の右側)に配置された第2湾曲領域20rと、を含んでいる。そして、図10に示すように、第1湾曲領域20rは、巻回電極体20において直線Aよりも一方側(図10の上側)に位置する第1領域20r1aを有している。なお、かかる直線Aは、巻回電極体20の巻回軸WLに対して直交する方向に切った断面視において、一方の扁平面20fから巻回軸WLを通過し他方の扁平面20fに至る厚み方向(図10の方向X)に対して垂直な方向に延びる直線を示している。換言すると、第1湾曲領域20rの外面の頂点と、第2湾曲領域20rの外面の頂点とを結ぶ直線ということもできる。また、図8に示すように、巻回電極体20では、正極の巻き終わり端部22eと、負極の巻き終わり端部24eとが、第1領域20r1aに位置している。そして、少なくとも巻回電極体20の最外面に位置するセパレータ(ここでは、第1セパレータ70A)の巻き終わり端部70Aeは、第2湾曲領域20rに位置している。
【0054】
なお、図10中の20r1bは、第1湾曲領域20rにおける直線Aよりも他方側(図10の下側)に位置する第2領域を示している。また、20r2aは、第2湾曲領域20rにおける直線Aよりも一方側(図10の上側)に位置する第1領域を示している。そして、20r2bは、第2湾曲領域20rにおける直線Aよりも他方側(図10の下側)に位置する第2領域を示している。
【0055】
例えば、セパレータの巻き終わり端部が平坦領域に配置された巻回電極体によると、電池を平坦領域において拘束した場合に圧力がかからない部分が生じ、その部分でLi(リチウム)が析出する可能性がある。また、巻回電極体に対して圧力が不均一にかかることで、当該巻回電極体の内部でガス溜まりが生じ、これによってもLiが析出する可能性がある。一方、本開示に係る巻回電極体20では、正極の巻き終わり端部22eおよび負極の巻き終わり端部24eが第1湾曲領域20r(詳しくは、第1湾曲領域20rにおける第1領域20r1a)に配置され、第1セパレータの巻き終わり端部70Aeが第2湾曲領域20rに配置されている。つまり、巻回電極体20の外面に段差が生じることを抑制することができる。これによって、巻回電極体20にかかる圧力を均一とすることができるため、端部に生じる隙間を抑制し、ガス溜まりの発生を抑制することで、Liの析出を好適に抑制することができる。したがって、ここで開示される技術によると、電池性能(詳しくは、Li析出耐性)が好適に向上された電池を得ることができる。
【0056】
上述したように、ここで開示される電池では、少なくとも巻回電極体20の最外面に位置するセパレータ(ここでは、第1セパレータ70A)の巻き終わり端部70Aeが、第2湾曲領域20rに位置していればよい。なお、図8に示すように、本実施形態では、第1セパレータの巻き終わり端部70Aeは、第2湾曲領域20rにおける第2領域20r2bに配置されている。ただし、他の実施形態では、コスト削減等の観点から第1セパレータの巻き終わり端部70Aeは、第2湾曲領域20rにおける第1領域20r2aに配置されていてもよい。
【0057】
図8に示すように、本実施形態では、第2セパレータの巻き終わり端部70Beは、第2湾曲領域20rにおける第2領域20r2bに配置されている。ただし、他の実施形態では、第2セパレータの巻き終わり端部70Beは、第2湾曲領域20rにおける第1領域20r2aに配置されていてもよい。あるいは、第2セパレータの巻き終わり端部Beは、巻回電極体20における第2湾曲領域20r以外の領域(例えば、第1湾曲領域20rや平坦領域20f)に配置されていてもよい。なお、巻回電極体20にかかる圧力をより均一とし、Li析出耐性をより好適に向上させるという観点から、第2セパレータの巻き終わり端部70Beは、第1湾曲領域20rまたは第2湾曲領域20rに配置されている場合が好ましい。また、第2セパレータの巻き終わり端部70Beは、第2湾曲領域20rに配置されている場合がより好ましい。
【0058】
図8に示すように、本実施形態では、第1セパレータの巻き始め端部70Asおよび第1セパレータの巻き始め端部70Bsは、巻回軸WLよりも第2湾曲領域20r側に配置されている。ただし、他の実施形態では、巻回軸WLよりも第1湾曲領域20r側に配置されていてもよい。なお、平坦領域20fにおいて部分的に圧力が加わることをより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上させるという観点から、前者である場合がより好ましい。
【0059】
図9に示すように、本実施形態では、正極の巻き始め端部22sは巻き始め領域を有しており、負極の巻き始め端部24sは折り返し領域(図9のU-V間)を有している。ここで、上記巻き始め領域とは、正極の巻き始め端部22sから一層目の正極22の平坦領域20fの端点(図8のWを参照)までの距離を100%としたとき、正極の巻き始め端部22sから例えば5%以内の領域であり、10%以内の領域であってもよい。上記折り返し領域は、負極の巻き始め端部24sから初めてのターン部分(即ち、湾曲領域の頂点)に至るまでの領域ということもできる。また、巻回電極体20は、正極22の巻き始め領域と、負極24の折り返し領域とが、巻回電極体20の厚み方向(図9のX方向)において重なる領域を有する。かかる構成によると、巻回電極体20内に隙間(段差)が生じにくくなる。これによって、平坦領域20fにおいて部分的に圧力が加わることをより適切に防止することができるため、Li析出耐性をより好適に向上させることができる。また、正極22の巻き始め領域および負極24の折り返し領域の重なっている領域(図9の重なり領域28)の、長辺方向Yにおける長さは、上述した効果を好適に得るという観点から、好ましくは0.5mm以上であり、より好ましくは1mm以上であり、例えば3mm以上であってもよい。また、同様な観点から、重なり領域28の長辺方向Yにおける長さの上限は、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは7mm以下であり、例えば5mm以下であってもよい。ただし、これらに限られることを意図したものではない。
【0060】
なお、本実施形態のように、複数個の巻回電極体20を有する電池100では、各々の巻回電極体20の重なり領域28の長辺方向Yにおける長さが相互に異なっていることが好ましい。これによって、電池ケース10の外側から複数の巻回電極体20の全てを加圧した際に、各々の巻回電極体20の平坦領域20fおける面圧分布を均一化することに貢献できるため、平坦領域20fの全面におけるLi析出耐性を適切に向上させることができる。
【0061】
上述したように、ここで開示される技術においては、正極の巻き終わり端部22eおよび負極の巻き終わり端部24eは、第1領域20r1aに位置していればよい。また、一態様では、第1領域20r1aにおいて、正極の巻き終わり端部22eは、直線Aを始端として45°までの領域(例えば、30°までの領域)に配置されており、負極の巻き終わり端部24eは、直線Aを始端として45°~90°までの領域(例えば、60°~90°までの領域)に配置されている。このように、負極24を正極22よりも長くし、負極24側の電荷担体の吸蔵性能を充分に確保することによって、Li析出耐性をより効果的に向上させることができる。
【0062】
図8に示すように、本実施形態では、正極の巻き始め端部22sおよび負極の巻き始め端部24sは、巻回軸WLよりも第1湾曲領域20r側に配置されている。ただし、他の実施形態では、巻回軸WLよりも第2湾曲領域20r側に配置されていてもよい。なお、平坦領域20fにおいて部分的に圧力が加わることをより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上させるという観点から、前者である場合がより好ましい。
【0063】
図8に示すように、本実施形態では、セパレータの巻き終わり端部(ここでは、第1セパレータの巻き終わり端部70Ae)に、巻き止めテープ200が配置されている。また、巻き止めテープ200は、直線A上に配置されている。かかる構成によると、平坦領域20fにおいて部分的に圧力が加わることをより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上させるという観点から、好ましい。なお、巻き止めテープ200としては、この種の電池に用いられる巻き止めテープを特に制限なく用いることができる。
【0064】
図8に示すように、本実施形態では、巻き止めテープ200が第2湾曲領域20r内に収まるように配置されている。ただし、他の実施形態では、巻き止めテープ200は、平坦領域20fに渡って配置されていてもよい。なお、平坦領域20fにおいて部分的に圧力が加わることをより適切に防止し、Li析出耐性をより好適に向上させるという観点から、前者である場合がより好ましい。
【0065】
<電池の製造方法>
次に、電池100の製造方法について説明する。巻回電極体20の製造において、先ず、第1セパレータ70A、正極22,第2セパレータ70B、および負極24を用意する。本実施形態では、第1セパレータ70Aの正極22と対向する領域に接着層74が付与されており、第2セパレータ70Bの正極22と対向する領域に接着層74が付与されている。なお、接着層74は、平面視で、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、破線状又はこれらの組み合わせ等の形状に形成されていることが好ましい。これにより、巻回電極体20の内部への電解液の含浸性が好適に向上され得る。なお、「形成領域が線状に形成されている」とは、形成領域として線状であることをいい、接着層自体はドット状等であってもよいことをいう。続いて、巻回ローラーによって各部材を巻回する。その後、所定の圧力によって巻き取り体をプレスし、第1セパレータの巻き終わり端部70Aeに巻き止めテープ200を付与することによって、巻回電極体20を得ることができる。かかる巻回電極体20を2つ用意し、これらを、電極タブ群が封口板14に取り付けられた電極集電部に接合された状態で外装体12に挿入し、外装体12と封口板14とを接合(溶接)することによって電池ケース10を構築する。そして、封口板14の注液孔15から電池ケース10の内部に電解質を注入し、注液孔15を封止部材16で塞ぐ。以上によって、電池100を製造することができる。
【0066】
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0067】
以上、本開示のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、巻回軸方向WDにおいて、正極タブ22tおよび負極タブ24tが同じ側の端部に設けられているが、これに限定されない。ここで開示される技術は、巻回軸方向WDにおいて、正極タブおよび負極タブがそれぞれ異なる側の端部に設けられている巻回電極体を備えた電池に適用することもできる。あるいは、ここで開示される技術は、電極タブを有さない巻回電極体を備えた電池に適用することもできる。
【0069】
例えば、上記実施形態では、第1セパレータ70Aおよび第2セパレータ70Bの表面に接着層74が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、接着層74は、正極22の表面に形成されていてもよい。ここで、「正極シートの表面」とは、正極活物質層22aの表面であってもよいし、正極集電体22cの表面であってもよい。正極シート22の表面に接着層74を備える場合、好ましくは、正極シート22は正極集電体22cの両方の面に正極活物質層22aを備えており、当該正極活物質層22aの表面に接着層74が備えられているとよい。
【0070】
例えば、上記実施形態では、巻回電極体の最外面に位置するセパレータの巻き終わり端部に巻き止めテープを付与しているが、これに限定されない。ここで開示される技術は、巻き止めテープが付与されていない電池に適用することもできる。かかる場合、巻回電極体の最外面に位置するセパレータの巻き終わり端部近傍の内側面に、接着層が形成されていることが好ましい。これによって、セパレータの巻き終わり端部を巻回電極体の最外面に好適に固定することができる。
【0071】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の正極と、帯状の負極とが、帯状のセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体を備えた電池であって、上記巻回電極体は、一方端部側に配置された第1湾曲領域と、他方端部側に配置された第2湾曲領域と、を含み、上記巻回電極体の巻回軸に対して直交する方向に切った断面視において、一方の扁平面から上記巻回軸を通過し他方の扁平面に至る厚み方向に対して垂直な方向に延びる直線を直線Aとし、上記第1湾曲領域は、上記巻回電極体において上記直線Aよりも一方側に位置する第1領域を有し、上記正極の巻き終わり端部と、上記負極の巻き終わり端部とが、上記第1領域に位置し、少なくとも上記巻回電極体の最外面に位置する上記セパレータの巻き終わり端部は、上記第2湾曲領域に位置する、電池。
項2:上記巻回電極体を収容する電池ケースを備え、上記電池ケースは、底壁、一対の第1側壁、一対の第2側壁、および開口を含む外装体と、上記開口を封止する封口板と、を含み、上記巻回電極体の上記巻回軸が、上記底壁に対して垂直な方向となるように、上記電池ケース内に上記巻回電極体が配置されている、項1に記載の電池。
項3:上記セパレータと、上記正極および上記負極の少なくとも一方が接着層により接着されている、項1または項2に記載の電池。
項4:上記巻回電極体の上記巻回軸に沿った方向における長さに対する、上記巻回電極体の上記直線Aに沿った方向における長さは、3倍以上である、項1~項3のいずれか一つに記載の電池。
項5:上記巻回電極体の厚みは、10cm以上である、項1~項4のいずれか一つに記載の電池。
項6:上記正極の巻き始め端部は、巻き始め端部領域を有し、上記負極の巻き始め端部は、折り返し領域を有し、上記巻回電極体の上記厚み方向において、上記巻き始め領域および上記折り返し領域が重なる、項1~項5のいずれか一つに記載の電池。
項7:上記セパレータの巻き終わり端部には、巻き止めテープが配置されており、上記巻き止めテープは、上記直線A上に配置されている、項1~項6のいずれか一つに記載の電池。
【符号の説明】
【0072】
10 電池ケース
12 外装体
12a 底壁
12b 長側壁
12c 短側壁
12h 開口
14 封口板
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
18 端子引出孔
20 巻回電極体
20f 平坦部(平坦領域)
20r 湾曲部(湾曲領域)
22 正極
22a 正極活物質層
22c 正極集電体
22p 正極保護層
22t 正極タブ
24 負極
24a 負極活物質層
24c 負極集電体
24t 負極タブ
25 正極タブ群
27 負極タブ群
29 電極体ホルダ
30 正極端子
30c 下端部
32 正極外部導電部材
34 耐熱層
40 負極端子
40c 下端部
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 セパレータ
70A 第1セパレータ
70B 第2セパレータ
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
94 内部絶縁部材
100 電池
200 巻き止めテープ
LD 長手方向
U 上方向
WL 巻回軸
Y 長手方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10