(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053949
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両の気流発生制御装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 5/00 20060101AFI20240409BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240409BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B60Q5/00 670C
B60Q5/00 620A
B60Q5/00 630B
B60Q5/00 680A
B62D25/08 D
B62D25/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160489
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂ヶ平 雄作
(72)【発明者】
【氏名】吉川 公利
(72)【発明者】
【氏名】金崎 功祐
(72)【発明者】
【氏名】峯崎 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 靖明
(72)【発明者】
【氏名】今井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小那覇 千尋
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BC08
3D203BC16
3D203CB30
(57)【要約】
【課題】 製造コストを低減し、効果的な接近通報音源の配置レイアウトが行えると共に、駆動源の熱を車外へ排気する車両の気流発生制御装置の提供。
【解決手段】 車両の気流発生制御装置は、車両1の駆動手段51が搭載される駆動源ルーム2内の熱を車外に排出するための気流Rを発生する気流発生制御装置16であって、駆動源ルーム2内に気流Rを発生する気流発生ユニット10-13と、気流発生ユニット10-13を駆動制御する制御部15と、を備え、制御部15は、車両1の前部に配設された気流発生ユニット10-13に車両1の接近を周囲に通報する所定の音圧レベル以上の接近通報音NSを出力するように駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動手段が搭載される駆動源ルーム内の熱を車外に排出するための気流を発生する気流発生制御装置であって、
前記駆動源ルーム内に前記気流を発生する気流発生ユニットと、
前記気流発生ユニットを駆動制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記車両の前部に配設された前記気流発生ユニットに前記車両の接近を周囲に通報する所定の音圧レベル以上の接近通報音を出力するように駆動することを特徴とする車両の気流発生制御装置。
【請求項2】
前記気流発生ユニットが前記車両の前部に複数設けられ、
前記駆動源ルームのリア側に前記気流を発生すると共に、前記接近通報音を出力する少なくとも1つの前記気流発生ユニットがフロントグリルに配設されることを特徴とする請求項1に記載の車両の気流発生制御装置。
【請求項3】
前記駆動源ルームの下方に配設されたアンダーカバーの前記駆動手段の熱源に対向配置され、上方に向けた前記気流を発生する前記気流発生ユニットが配設されていることを特徴とする請求項2に記載の車両の気流発生制御装置。
【請求項4】
前記駆動源ルームの左右に配設されたホイールハウスのマッドガードに配置され、外気を車幅方向の内側に向けた前記気流を発生する前記気流発生ユニットが配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両の気流発生制御装置。
【請求項5】
前記気流発生ユニットは、複数のプラズマアクチュエータを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の気流発生制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットルーム内に排熱用の気流を発生すると共に、歩行者などに接近通報音を発生する車両の気流発生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、エンジン、モータなど駆動源のパワーユニット、電力変換器などの熱源ユニットの発熱による熱害対策が必要となる。熱害対策としては、熱源ユニットの最適化による温度低減、車外から外気の導風による冷却および駆動源が搭載される駆動源ルーム(パワーユニットルーム)内の各種部品の耐熱化が主となる。
【0003】
ところで、年々、厳しくなる車外音法規の対応には、車体、特に駆動源の周囲のカプセル化が不可欠である。車両のカプセル化として、例えば、駆動源の下方を覆うアンダーカバーが設けられる。このアンダーカバーは、車外音低減効果が大きい反面、排熱効率が低下する。即ち、アンダーカバーによる車外音低減と排熱効率とが背反し、これらの両立が困難となる。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1に、車両のアンダーカバーに配置されたプラズマアクチュエータにより前方吸気して、駆動源ルーム内の熱をアンダーカバー後方から排出する排熱構造の技術が開示されている。
【0005】
また、近年では、電気自動車、ハイブリッド車などのエンジンを使用せず走行可能な車両が登場している。電気自動車または低速走行時のハイブリッド車は、エンジン音を発しないため、歩行者などが車両の接近を認識することが困難となる。
【0006】
そのため、電気自動車、ハイブリッド車などのエンジンを使用せず走行できる車両は、例えば、特許文献2に開示の通報音を発するための車両接近通報装置が搭載される。従来の車両接近通報装置は、スピーカー、振動板などの音源が車両に設けられている。なお、車両接近通報装置は、各国において、車両から発せられる通報音に対して、規定値以上の音圧を含む通報音の出力が求められる法規が定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-222153号公報
【特許文献2】特開2016-179802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車両は、駆動源ルーム内、フロント部分などに従来のような排熱構造および車両接近通報装置を搭載することにより、各種部品点数が増えると共に、接近通報音源を駆動制御するための電気的なシステム構成が必要となる。そのため、車両の製造コストが高くなるという問題があった。
【0009】
また、車両は、特に、スペースに制約がある駆動源ルーム内においては、各性能要件やレイアウト要件などの制約により、接近通報音源の設置位置の最適化が難しいことが課題であった。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、その目的とするところは、製造コストを低減し、効果的な接近通報音源の配置レイアウトが行えると共に、駆動源の熱を車外へ排気する車両の気流発生制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の車両の気流発生制御装置は、車両の駆動手段が搭載される駆動源ルーム内の熱を車外に排出するための前記気流を発生する気流発生制御装置であって、前記駆動源ルーム内に気流を発生する気流発生ユニットと、前記気流発生ユニットを駆動制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記車両の前部に配設された前記気流発生ユニットに前記車両の接近を周囲に通報する所定の音圧レベル以上の接近通報音を出力するように駆動する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造コストを低減し、効果的な接近通報音源の配置レイアウトが行えると共に、駆動源の熱を車外へ排気する車両の気流発生制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】プラズマアクチュエータの一態様を示す斜視図
【
図6】プラズマアクチュエータの一態様を示す断面図
【
図9】プラズマアクチュエータの他の態様を示す斜視図
【
図10】プラズマアクチュエータの他の態様を示す断面図
【
図11】第4の気流発生ユニットが備える1つのプラズマアクチュエータを示す斜視図
【
図12】第4の気流発生ユニットが備える1つのプラズマアクチュエータを示す断面図
【
図13】第1の気流発生ユニットが設けられたホイールハウスを部分的に示す斜視図
【
図14】第2の気流発生ユニットがロアアームに設けられたサスペンション装置を部分的に示す斜視図
【
図15】第3の気流発生ユニットが設けられたアンダーカバーを示す平面図
【
図16】駆動源の下方に第3の気流発生ユニットが設けられたアンダーカバーを示す部分断面図
【
図17】第4の気流発生ユニットが設けられたフロントグリルを示す正面図
【
図18】第4の気流発生ユニットが設けられたフロントグリルを示す斜視図
【
図19】プラズマアクチュエータをエアインテークの前方に設けたアンダーカバーを示す背面図
【
図20】プラズマアクチュエータをエアインテークの前方に設けたアンダーカバーを示す部分断面図
【
図21】コーナーセンサを有するフロントバンパのフロントグリルおよびフロントビームにプラズマアクチュエータを設けた概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1から
図3に示す本実施の形態の車両1は、フロント部分に、駆動源ルーム(一般にはエンジンルームという)2と、フロントリッド(ボンネット、エンジンフードともいう)3と、フロントバンパ4と、を有する。なお、車両1は、駆動源が内燃機関のエンジン自動車、モータの電気自動車またはエンジンとモータを組み合わせたハイブリッド自動車を含む構成である。
【0015】
駆動源ルーム2は、キャビン前方に位置し、ここでは図示しない駆動手段のエンジン、モータなどの発熱源である駆動手段が搭載される。フロントリッド3は、開閉自在であって、通常、駆動源ルーム2を覆うように閉じられる。
【0016】
フロントバンパ4は、車体前端部を構成する外装部材である。フロントバンパ4の上方には、フロントグリル5が配設される。フロントグリル5は、車両の前部における正面中央に設けられる。
【0017】
フロントグリル5は、図示しないラジエータコア、エアコンディショナ装置のコンデンサなどに空気を導入する開口部に設けられた外装部材である。このフロントグリル5は、通気可能とする網目状、格子状、スリット状、ハニカム形状などの種々の形態のリブが車種によって設けられる。
【0018】
車両1は、左右にホイールハウス(タイヤハウスともいう)7が設けられる。ホイールハウス7は、車両1の前輪6が収容される空間部である。このホイールハウス7は、車両1のフロント側部における下部に設けられる。また、ホイールハウス7は、車幅方向外側に向けて開口している。
【0019】
車両1のフロント部分には、気流発生制御装置16が設けられている。気流発生制御装置16は、気流発生デバイスの複数の気流発生ユニット10,11,12,13と、PA(プラズマアクチュエータ)制御部15と、を有している。気流発生制御装置16は、PA制御部15によって、各気流発生ユニット10,11,12,13が駆動制御される。
【0020】
各気流発生ユニット10,11,12,13は、駆動源ルーム2内における主に車両1の両サイドから内方、後方および上方に向けて気流Rが発生するように配設される。なお、駆動源ルーム2内に発生した気流Rは、フロントリッド3の両サイドと、フロントガラス手前のリア側から排気ExAirとして、車外に放出される。
【0021】
第1の気流発生ユニット10は、
図4に示すように、複数、ここでは4個のプラズマアクチュエータ20を有する。これら4つのプラズマアクチュエータ20は、気流Rの発生方向が一方向となるように、絶縁シート21上に配列される。
【0022】
なお、第1の気流発生ユニット10は、プラズマアクチュエータ20の個数が4つに限定されることなく、任意の個数を有する構成としてもよい。
【0023】
プラズマアクチュエータ20は、
図5および
図6に示すように、誘電体22、上部電極23および下部電極24を有する。このプラズマアクチュエータ20は、0.3mm程度の厚さを有する平板フィルム形状である。
【0024】
誘電体22は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ化炭素樹脂などから形成されたシート状の部材である。上部電極23および下部電極24は、例えば、銅などの金属薄膜からなる導電テープなどによって形成される。
【0025】
上部電極23は、誘電体22の主平面となる表面側に貼付される。一方、下部電極24は、誘電体22の裏面側に貼付される。また、上部電極23と下部電極24とは、誘電体22の面方向に沿ってオフセットして設けられる。
【0026】
なお、プラズマアクチュエータ20の上部電極23および下部電極24は、誘電体22を挟んで平行に配置された直線状の電極である。
【0027】
プラズマアクチュエータ20は、誘電体22の裏面が非導電性の絶縁シート21に貼着される。これにより、下部電極24は、絶縁シート21に覆われ、電気的な絶縁性が保持される。
【0028】
プラズマアクチュエータ20は、上部電極23と下部電極24に、電源100によって所定の波形を有する交流電圧が印加される。すると、電極間にプラズマ放電Pが発生する。印加電圧は、絶縁破壊が生じてプラズマ放電Pが発生する程度の高圧である。
【0029】
このとき、プラズマアクチュエータ20は、主平面側の空気がプラズマ放電Pに誘引される。そして、プラズマアクチュエータ20には、上部電極23が設けられる主平面に沿った上部電極23と下部電極24に直交する一方向に壁面噴流状の気流Rが発生する。
【0030】
なお、プラズマアクチュエータ20は、印加される交流電圧の大きさを制御することにより、気流Rの強弱を制御することができる。
【0031】
第2の気流発生ユニット11は、
図7に示すように、複数、ここでは3個のプラズマアクチュエータ30を有する。また、第3の気流発生ユニット12は、
図8に示すように、複数、ここでは12個のプラズマアクチュエータ30を有する。これら3個または12個のプラズマアクチュエータ30は、絶縁シート31上に配列される。
【0032】
プラズマアクチュエータ30は、
図9および
図10に示すように、誘電体32、上部電極33および下部電極34を有する。プラズマアクチュエータ30は、上述のプラズマアクチュエータ20と同様に、厚さ0.3mm程度を有した平板フィルム形状である。
【0033】
なお、誘電体32も、例えばポリテトラフルオロエチレンなどのフッ化炭素樹脂などから形成されたシート状の部材である。
【0034】
上部電極33および下部電極34は、例えば、銅などの金属薄膜からなる導電テープなどによってリング状に形成される。上部電極33は、誘電体32の主平面となる表面側に貼付される。一方、下部電極34は、誘電体22の裏面側に貼付される。
【0035】
下部電極34は、上部電極33に対して、リング状の中心方向となる誘電体32の主平面に沿った中央側の内方にオフセットして設けられる。また、プラズマアクチュエータ30は、誘電体32の裏面が絶縁シート31に貼着される。これにより、下部電極34は、絶縁シート31に覆われ、電気的な絶縁性が保持される。
【0036】
プラズマアクチュエータ30も、上部電極33と下部電極34に、電源100によって所定の波形を有する交流電圧が印加される。すると、電極間にプラズマ放電Pが発生する。ここでも、印加電圧は、絶縁破壊が生じてプラズマ放電Pが発生する所定の高圧である。
【0037】
このとき、プラズマアクチュエータ30は、主平面側の空気がプラズマ放電Pに誘引される。そのため、プラズマアクチュエータ30は、リング状の上部電極33の中心に向けて主平面に沿った壁面噴流状の気流R1が発生する。この気流R1は、衝突して合流することにより偏向しながら合成されて、プラズマアクチュエータ30の主平面に略直交して離間する方向の気流Rを形成する。
【0038】
即ち、各プラズマアクチュエータ30は、絶縁シート31の平面に直交して離間する方向に気流Rを発生する。なお、プラズマアクチュエータ30も、印加される交流電圧の大きさを制御することにより、発生する気流Rの風量の強弱を制御することができる。
【0039】
第4の気流発生ユニット13は、複数のプラズマアクチュエータ40(
図11および
図12参照)を有する。各プラズマアクチュエータ40は、第1の気流発生ユニット10のプラズマアクチュエータ20と同様な構成となっている。
【0040】
プラズマアクチュエータ40は、誘電体42、上部電極43、下部電極44および絶縁フィルム45を有する。プラズマアクチュエータ40は、絶縁フィルム45が下部電極24を被覆するように誘電体22の裏面に貼着される。
【0041】
これにより、下部電極24は、電気的な絶縁性が保持される。なお、プラズマアクチュエータ40は、その他の構成がプラズマアクチュエータ20と同じであるため、それら構成要素の説明を省略する。
【0042】
第4の気流発生ユニット13は、所定の個数のプラズマアクチュエータ40を有している。即ち、第4の気流音発生ユニット13は、複数のプラズマアクチュエータ40の集合体から構成される。
【0043】
以上に記載の第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13は、車両1の前部としてのフロント部分に配置される。
【0044】
具体的には、第1の気流発生ユニット10は、
図13に示すように、フロント側のホイールハウス7のマッドガード8の表面に設けられる。なお、第1の気流発生ユニット10は、左右のホイールハウス7のそれぞれのマッドガード8に設けられる。
【0045】
これら第1の気流発生ユニット10は、車両1の両サイドから内方の駆動源ルーム2側に向けてプラズマアクチュエータ20の気流Rが発生するように設置される。この気流Rは、車両1のホイールハウス7の両サイドから外気を駆動源ルーム2側に取り込む。即ち、第1の気流発生ユニット10は、ホイールハウス7から車幅方向の内側に向けた気流Rを発生する。
【0046】
第2の気流発生ユニット11は、
図14に示すように、サスペンション装置38のロワアーム(トランスバースリンク)9の上面に設けられる。なお、第2の気流発生ユニット11は、左右のサスペンション装置38のロワアーム9に設けられる。
【0047】
これら第2の気流発生ユニット11は、車両1の下方から上方の駆動源ルーム2に向けてプラズマアクチュエータ30の気流Rが発生するように設置される。この気流Rは、第1の気流発生ユニット10の気流Rに衝突して合流し、ホイールハウス7内に取り込まれた外気を上方の駆動源ルーム2内に送り込む。
【0048】
第3の気流発生ユニット12は、
図15および
図16に示すように、駆動源ルーム2に搭載される駆動源のエンジン51の下方に配設されるアンダーカバー50の上面に設けられる。なお、第3の気流発生ユニット12は、熱源であるエンジン51および排気管であるエキゾーストマニホールド52に対向する位置に設けられる。
【0049】
ここでは、車両1の駆動源としてエンジン51を例示したが、第3の気流発生ユニット12は、電気自動車の場合の熱源であるモータ、ハイブリッド自動車の場合の熱源であるエンジンおよびモータ、電力変換器などの熱源ユニットに対向配置されるものである。
【0050】
第3の気流発生ユニット12は、車両1の下方から上方の駆動源ルーム2に向けてプラズマアクチュエータ30の気流Rが発生するように設置される。
【0051】
なお、第3の気流発生ユニット12は、大きな発熱源であるエンジン51およびエキゾーストマニホールド52に対向配置されることによって、これらエンジン51およびエキゾーストマニホールド52に発生した気流Rが直接当たる。
【0052】
これにより、エンジン51およびエキゾーストマニホールド52の熱は、気流Rの風圧により駆動源ルーム2の上方に流れて、フロントリッド3の両サイドと、フロントガラス手前のリア側から排気ExAirとして車外に排出される。
【0053】
第4の気流発生ユニット13は、
図17および
図18に示すように、複数のプラズマアクチュエータ40がフロントグリル5の水平方向のリブなどに配設される。なお、フロントグリル5は、垂直方向、網状、格子状、ハニカム形状などに形成されたリブに複数のプラズマアクチュエータ40が配設される。
【0054】
第4の気流発生ユニット13は、車両1の前方の外気をフロントグリル5から駆動源ルーム2に向けて取り込む方向に、複数のプラズマアクチュエータ40の気流Rが発生するように設置される。なお、第4の気流発生ユニット13が発生する気流Rは、前方(フロント)から後方(リア側)へ流れて、モータなどの駆動源、図示しないラジエータなどに向けて外気を駆動源ルーム2内に取り込む。
【0055】
以上に説明したように、気流発生制御装置16は、PA制御部15の駆動制御によって、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13から駆動源ルーム2内に車両1の後方および上方に気流Rを発生させる。
【0056】
これにより、駆動源ルーム2は、内部に搭載されるエンジン51などの熱源によって発生した熱が、後方および上方への空気の流れにより、フロントリッド3の両サイドと、フロントガラス手前のリア側から排気ExAirとして車外に放出される。
【0057】
なお、フロントグリル5に設けられる第4の気流発生ユニット13は、駆動周波数に応じた規定値以上の音圧レベルの駆動音によって、車両1の前方の接近通報音NSを生成する。即ち、第4の気流発生ユニット13は、車両接近通報装置も構成する。接近通報音NSは、車両1の接近を周囲に知らせる所定の音圧レベルの音である。
【0058】
日本およびヨーロッパの車両接近通報装置試験(UN138)では、エンジン(51)を使用せずモータなどにより走行可能な電気自動車およびハイブリッド自動車の車両1は、発進から20km/h以下の走行条件において、1/3オクターブバンド帯において2つの周波帯域のピークが規定値を超え、かつオーバーオール(O.A.)値も規定値を超える音圧レベルを出力する必要がある。
【0059】
加えて、米国および中国では、それぞれの基準の車両接近通報装置試験が規定され、各基準を満たす車両接近通報装置の制御が必要である。なお、米国では、連邦自動車安全基準第141号(FMVSS141)に接近通報装置試験が規定される。
【0060】
日本およびヨーロッパの車両接近通報装置試験(UN138)の具体的な一例として、車速10km/h走行時には、特定周波数が800Hz、音圧レベル46dB以上を満たす接近通報音NS、車速20km/h走行時に、特定周波数が800Hz、音圧レベル51dB以上を満たす接近通報音NSを出力する必要がある。
【0061】
上記走行条件の達成手段として、各プラズマアクチュエータ20,30,40は、各走行条件にて、駆動周波数を制御することで、必要な音の周波数を出力する。また、音圧レベルは、各プラズマアクチュエータ20,30,40を同時に駆動することで音圧レベルを制御し、基準を満たすことが可能である。
【0062】
また、2つの周波数を同時に出力する規定の場合、例えば、800Hzと1.6kHzの周波数を出力するには、フロントグリル5に配置した複数のプラズマアクチュエータ40を800Hz、ホイールハウス7に配置した複数のプラズマアクチュエータ20を1.6kHz、に制御することで、基準を満たすことが可能である。
【0063】
それぞれの周波数における音圧レベル基準に対しては、各プラズマアクチュエータ20,30,40は、上述と同様に、各走行条件にて、駆動周波数を制御することで、必要な音の周波数を出力する対応で達成可能である。なお、音圧レベルは、各プラズマアクチュエータ20,30,40を同時に駆動することで音圧レベルを制御し、基準を満たすことが可能である。
【0064】
また、米国および中国の基準の車両接近通報装置試験に対しても、上記制御により基準を満たすことが可能である。
【0065】
なお、フロントグリル5に設けられる第4の気流発生ユニット13が出力する接近通報音NSは、車両1の前方への接近通報音NSを出力するための構成である。そのため、上記の各国における接近通報音NSの音圧レベルの規制について、車両1の停止または前進のときのみの説明としている。
【0066】
本実施の形態の気流発生制御装置16は、各国が規定する音圧レベルの接近通報音NSを出力するように、PA制御部15が第4の気流発生ユニット13を駆動制御する。即ち、PA制御部15は、車両1が使用される国に応じて、その国の車両接近通報装置試験の規定を満たす音圧レベルの接近通報音NSを第4の気流発生ユニット13が出力する駆動制御が設定(プログラミング)される。
【0067】
具体的には、先ず、第4の気流発生ユニット13の複数のプラズマアクチュエータ40は、2つの駆動グループに分けられる。
【0068】
一方の駆動グループの複数のプラズマアクチュエータ40は、特定周波数が低周波帯域の例えば、800hzの接近通報音NSを出力するユニットとなる。即ち、PA制御部15は、所定の印加電圧と所定の駆動周波数によって一方の駆動グループの複数のプラズマアクチュエータ40が、それらの駆動音によって、各国が規定する音圧レベルの例えば、800hzの接近通報音NSを生成するように駆動制御する。
【0069】
他方の駆動グループの複数のプラズマアクチュエータ40は、特定周波数が高周波帯域の例えば、1.6khzの接近通報音NSを出力する。即ち、PA制御部15は、所定の印加電圧と所定の駆動周波数によって他方の駆動グループの複数のプラズマアクチュエータ40が、それらの駆動音によって、各国が規定する音圧レベルの例えば、1.6khzの接近通報音NSを生成するように駆動制御する。
【0070】
即ち、PA制御部15は、第4の気流発生ユニット13の駆動制御において、特定周波数が低周波帯域の例えば、800hzの音および高周波帯域の例えば、1.6kHzの音を各国が規定する音圧レベルを満たす接近通報音NSを駆動音によって生成するように複数のプラズマアクチュエータ40を駆動制御する。
【0071】
なお、高齢者は、高周波帯域の接近通報音NSが聞き取り難く、低周波帯域の接近通報音NSが聞き取り易い傾向があり、低周波帯域の接近通報音NSを聞き取ることにより車両1の接近を認識することができる。
【0072】
一方、若齢者は、高周波帯域の接近通報音NSも聞き取り易く、低周波帯域または高周波帯域の接近通報音NSを聞き取ることにより車両1の接近を認識することができる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態の車両1の気流発生制御装置16は、車両1のフロントグリル5に設けられた第4の気流発生ユニット13をPA制御部15の駆動制御によって、フロントグリル5から駆動源ルーム2内へ外気を取り込む気流Rの生成に加えて、車両1の前方の接近通報音NSも生成する。即ち、第4の気流発生ユニット13の複数のプラズマアクチュエータ40は、車両1の前方の接近通報音NSの音源となる。
【0074】
なお、第4の気流発生ユニット13がフロントグリル5に設けられた構成について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、フロントバンパ4のフロントグリル5とは別に設けられた開口部に第4の気流発生ユニット13を配置してもよい。
【0075】
また、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の各プラズマアクチュエータ20,30,40の駆動音によって、車両1の接近通報音NSを生成するようにしてもよい。
【0076】
なお、
図19に示すように、アンダーカバー50に設けられた複数、ここでは4つのエアインテーク57のぞれぞれの前方位置にプラズマアクチュエータ40を設けてもよい。
【0077】
エアインテーク57は、アンダーカバー50の下部の外気を駆動源ルーム2内に取り込むために形成されている。なお、ここでのエアインテーク57は、略2等辺三角形の低抵抗の外気取り入れ口であるNACAダクトである。
【0078】
各プラズマアクチュエータ40は、
図20に示すように、エアインテーク57に向けて気流Rが発生するように設けられる。このプラズマアクチュエータ40は、発生した気流Rによってエアインテーク57へ取り込む外気の流れR2の剥離を抑制することができる。
【0079】
また、車両1は、
図21に示すように、フロントバンパ4の両角部に障害物を検出するコーナーセンサ55などの電子部品が設けられている場合、フロントグリル5の第4の気流発生ユニット13によって発生する気流Rをコーナーセンサ55に向けて気流Rを左右方向に発生する第1の気流発生ユニット10をフロントビーム56に設けてもよい。
【0080】
第4の気流発生ユニット13の気流Rによってフロントグリル5から取り込まれた外気は、フロントビーム56に設けられた第1の気流発生ユニット10の気流Rによってコーナーセンサ55などの電子部品に送気される。これにより、コーナーセンサ55などの電子部品の温度上昇が抑制されて熱害対策構造とすることができる。
【0081】
以上に説明した車両1の気流発生制御装置16は、後方および上向きの気流Rを車体フロントの駆動源ルーム2内に発生させて、この駆動源ルーム2内の排熱効率が向上する。これに伴い、車両1の燃費効率も向上する。
【0082】
さらに、車両1の気流発生制御装置16は、第4の気流発生ユニット13に設けられた気流Rを発生するプラズマアクチュエータ40の駆動音を接近通報音NSとして利用するため、スピーカー、振動板などの音源装置が不要となり、部品点数の削減によりコスト低減が可能となる。また、接近通報音NSを出力する第4の気流発生ユニット13は、歩行者などに車両1の接近を知らせる最適な位置となるフロントグリル5に設けられている。
【0083】
なお、気流発生制御装置16は、車両1の走行モードにおいて、例えば、PA制御部15が第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の駆動制御を実行する。
【0084】
気流発生制御装置16は、車両1の停止時、エンジン51、モータなどの駆動源のアイドリング、または後負荷後において、PA制御部15が出力する第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の駆動周波数を、例えば、15kHz以上にする。
【0085】
これにより、気流発生制御装置16は、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13から発生する後方および上方の駆動源リーム2内の流れをコントロールして、駆動源ルーム2内の熱を効率よく排出する。これと同時に、第4の気流発生ユニット13は、その駆動音によって、可聴域を超えた特定周波数の音圧レベルの接近通報音NSを出力する。
【0086】
また、気流発生制御装置16は、エンジン51、モータなどの駆動源が低から高回転時において、PA制御部15が出力する第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の駆動周波数を、例えば、1kHzから10kHzにする。
【0087】
ここでは、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の駆動周波数を例えば、1kHzから10kHzの範囲で異なるものとし、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13の駆動周波数のスイープ制御を行う。
【0088】
これにより、気流発生制御装置16は、車両1の車速に応じて、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13から発生する後方および上方の駆動源リーム2内の流れをコントロールして、駆動源ルーム2内の熱を効率よく排出する。
【0089】
また、第4の気流発生ユニット13は、車両1の車速およびドライバーの趣向などに応じた駆動周波数がスイープ制御され、特定周波数の音圧レベルの接近通報音NSを出力する。
【0090】
なお、第4の気流発生ユニット13は、フェンダー、ボンネット、トーボート、メインフレーム,サブフレームなどに設けてもよい。これにより、第4の気流発生ユニット13が出力する接近通報音NSの音量のチューニングのみならず、各種部品の熱害抑制を促進させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13が、平板フィルム形状からなる構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、第1~第4の気流発生ユニット10,11,12,13は、設置する部材の形状に応じて湾曲した形状としてもよい。
【0092】
以上に記載したように、車両1は、フロント部分に、気流発生制御装置16の第1~第3の気流発生ユニット10,11,12および接近通報音源を兼ねる第4の気流発生ユニット13を搭載することにより、駆動源ルーム2の排熱を効率よく行えると共に、スピーカー、振動板などの接近通報音源装置が不要となる。そのため、車両1は、部品点数を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0093】
また、車両1は、接近通報音源である第4の気流発生ユニット13をスペースに制約がある駆動源ルーム2内ではなく、フロントグリル5に設けることにより、接近通報音源の最適な位置に設けられる。したがって、車両1の気流発生制御装置16は、製造コストを低減し、最適な接近通報音源の配置レイアウトが行えると共に、駆動源の熱を車外へ排気する構成となる。
【0094】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0095】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0096】
1・・・車両
2・・・駆動源ルーム
3・・・フロントリッド
4・・・フロントバンパ
5・・・フロントグリル
6・・・前輪
7・・・ホイールハウス
8・・・マッドガード
9・・・ロワアーム(トランスバースリンク)
10・・・第1の気流発生ユニット
11・・・第2の気流発生ユニット
12・・・第3の気流発生ユニット
13・・・第4の気流発生ユニット
15・・・PA(プラズマアクチュエータ)制御部
16・・・気流発生制御装置
20,30,40・・・プラズマアクチュエータ
21,31,41・・・絶縁シート
22,32,42・・・誘電体
23,33,43・・・上部電極
24,34,44・・・下部電極
38・・・サスペンション装置
50・・・アンダーカバー
51・・・エンジン
52・・・エキゾーストマニホールド
55・・・コーナーセンサ
56・・・フロントビーム
57・・・エアインテーク
100・・・電源
101・・・マイク
ExAir・・・排気
NS・・・接近通報音
P・・・プラズマ放電
R,R1・・・気流