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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053951
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ドクター装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 9/10 20060101AFI20240409BHJP
   B41F 13/00 20060101ALI20240409BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240409BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B41F9/10
B41F13/00 614
B05C11/10
B05C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160491
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】溝呂木 正敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】大原 勇二
【テーマコード(参考)】
2C034
4F042
【Fターム(参考)】
2C034AA21
2C034CA02
2C034CA10
4F042AB00
4F042CC02
4F042CC07
4F042DH02
(57)【要約】
【課題】ドクターブレードを覆って、ドクターブレードとの接触を未然に防止する。
【解決手段】ドクター装置10はドクターブレード11と、ドクターブレード11を覆う安全カバー30とを備える。安全カバー30は保持板12aに設けられた固定安全カバー31と、揺動安全カバー32とを有し、保持板12aに揺動安全カバー32を吸着する第1マグネット21が取り付けられ、揺動安全カバー32の第2平面32aにドクターブレード11を吸着する第2マグネット22が取り付けられている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドクター装置において、
ドクターブレードと、
前記ドクターブレードの両面を保持する一対の保持板と、
前記一対の保持板を固定する留め具と、
一方の保持板に取り付けられ、前記ドクターブレードを覆う安全カバーとを備え、
前記安全カバーは前記一方の保持板に取り付けられた固定安全カバーと、前記固定安全カバーに回動機構を介して揺動自在に取り付けられた揺動安全カバーとを有し、
前記一方の保持板または前記揺動安全カバーに、開位置にある前記揺動安全カバーを前記一方の保持板に固定する第1マグネットを設け、
前記揺動安全カバーまたは前記ドクターブレードに、閉位置にある前記揺動安全カバーを前記ドクターブレードに固定する第2マグネットを設けたドクター装置。
【請求項2】
前記ドクターブレードは、前記一対の保持板に当て金を介して保持され、
閉位置にある前記揺動安全カバーは前記第2マグネットにより、前記ドクターブレードに当て金を介して固定される、請求項1記載のドクター装置。
【請求項3】
前記安全カバーは非磁性体からなり、前記第1マグネットは前記一方の保持板に設けられるとともに、前記揺動安全カバーに、前記第1マグネットに吸着されるマグネット受けを設け、
前記第2マグネットは前記揺動安全カバーに設けられて、前記ドクターブレードの当て金に吸着される、請求項2記載のドクター装置。
【請求項4】
前記第1マグネットの高さおよび位置は、前記揺動安全カバーが前記第1マグネットにより前記一方の保持板に固定される際、前記揺動安全カバーが前記留め具に当接しないよう規定される、請求項3記載のドクター装置。
【請求項5】
前記固定安全カバーは第1平面を有し、
前記揺動安全カバーは、閉位置において前記第1平面に連続とともに前記ドクターブレードの上面を覆う第2平面と、前記第2平面の先端から第2平面に対して直交する方向に降下して前記ドクターブレードの先端を覆う側面と、前記側面の下端から前記ドクターブレードの基端へ向かって前記第2平面と平行に延びるとともに前記ドクターブレードの下面を覆う第3平面とを有する略コ字状断面をもつ、請求項1記載のドクター装置。
【請求項6】
前記揺動安全カバーの側面は、前記揺動安全カバーの閉位置において前記ドクターブレードの先端を前記ドクターブレードの幅方向全域に渡って覆う、請求項5記載のドクター装置。
【請求項7】
前記第3平面の長さは、前記第2平面の長さより短くなっており、
前記揺動安全カバーを揺動させた際の前記ドクターブレード先端と、前記第3平面先端との間の最小距離Lは、1mm≦L≦5mmとなっている、請求項5または6記載のドクター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラビア印刷機、コーター等において、版胴等のシリンダに付着した余剰なインキや塗布物を掻き取るためのドクター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア印刷機に用いられているドクター装置は、ドクターブレードと、ドクターブレードの両側を保持する一対の保持板とを備えている。ドクターブレードは鋭利な刃物状の金属からなり、作業中に触れただけで事故につながることがある。しかしながら、従来より、ドクターブレードの接触事故を防ぐ工夫は行われていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-46430号公報
【特許文献2】特開平10-230584号公報
【特許文献3】特開2000-94634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示はこのような点を考慮してなされたものであり、ドクターブレードに対して開閉自在に設けられた安全カバーによりドクターブレードを覆うことができ、かつ安全カバーを開位置および閉位置において確実に固定することができるドクター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ドクター装置において、ドクターブレードと、前記ドクターブレードの両面を保持する一対の保持板と、前記一対の保持板を固定する留め具と、一方の保持板に取り付けられ、前記ドクターブレードを覆う安全カバーとを備え、前記安全カバーは前記一方の保持板に取り付けられた固定安全カバーと、前記固定安全カバーに回動機構を介して揺動自在に取り付けられた揺動安全カバーとを有し、前記一方の保持板または前記揺動安全カバーに、開位置にある前記揺動安全カバーを前記一方の保持板に固定する第1マグネットを設け、前記揺動安全カバーまたは前記ドクターブレードに、閉位置にある前記揺動安全カバーを前記ドクターブレードに固定する第2マグネットを設けたドクター装置である。
【0006】
本開示は、前記ドクターブレードは、前記一対の保持板に当て金を介して保持され、閉位置にある前記揺動安全カバーは前記第2マグネットにより、前記ドクターブレードに当て金を介して固定される、ドクター装置である。
【0007】
本開示は、前記安全カバーは非磁性体からなり、前記第1マグネットは前記一方の保持板に設けられるとともに、前記揺動安全カバーに、前記第1マグネットに吸着されるマグネット受けを設け、前記第2マグネットは前記揺動安全カバーに設けられて、前記ドクターブレードの当て金に吸着される、ドクター装置である。
【0008】
本開示は、前記第1マグネットの高さおよび位置は、前記揺動安全カバーが前記第1マグネットにより前記一方の保持板に固定される際、前記揺動安全カバーが前記留め具に当接しないよう規定される、ドクター装置である。
【0009】
本開示は、前記固定安全カバーは第1平面を有し、前記揺動安全カバーは、閉位置において前記第1平面に連続するとともに前記ドクターブレードの上面を覆う第2平面と、前記第2平面の先端から第2平面に対して直交する方向に降下して前記ドクターブレードの先端を覆う側面と、前記側面の下端から前記ドクターブレードの基端へ向かって前記第2平面と平行に延びるとともに前記ドクターブレードの下面を覆う第3平面とを有する略コ字状断面をもつ、ドクター装置である。
【0010】
本開示は、前記揺動安全カバーの側面は、前記揺動安全カバーの閉位置において前記ドクターブレードの先端を前記ドクターブレードの幅方向全域に渡って覆う、ドクター装置である。
【0011】
本開示は、前記第3平面の長さは、前記第2平面の長さより短くなっており、前記揺動安全カバーを揺動させた際の前記ドクターブレード先端と、前記第3平面先端との間の最小距離Lは、1mm≦L≦5mmとなっている、ドクター装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本開示によれば、ドクターブレードに対して開閉自在に設けられた安全カバーにより、ドクターブレードの不使用時にドクターブレードを覆うことができる。また安全カバーを開位置および閉位置において確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは本開示による閉位置をとる揺動安全カバーを有するドクター装置を示す側面図。
図1B図1Bは開位置をとる揺動安全カバーを有するドクター装置を示す側面図。
図1C図1Cは揺動安全カバーが揺動する状態を示す側面図。
図2A図2Aは閉位置をとる揺動安全カバーを有するドクター装置を示す平面図。
図2B図2Bは開位置をとる揺動安全カバーを有するドクター装置を示す平面図。
図3図3は開位置をとる揺動安全カバーに取り付けられた第2マグネットを示す図。
図4図4は一対の保持板が留め具によりベースに設置される状態を示す図。
図5図5はドクター装置の全体の概略を示す図であって、便宜上、安全カバーを取り外した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
【0015】
図1乃至図5は本開示によるドクター装置の実施の形態を示す図である。
【0016】
まず図5により、ドクター装置の全体について述べる。
【0017】
図5に示すように、ドクター装置10はドクターブレード11を有するとともに、グラビア印刷機等の印刷ユニット内のシリンダ1の近傍に設けられている。そしてドクター装置10に対して矢印A方向の回転力を与えられ、ドクターブレード11の先端がシリンダ1に押し付けられ、シリンダ1表面の余剰のインキを掻き取る。
【0018】
図5において、シリンダ1近傍に設けられたドクター装置10はその概略を示すものであり、便宜上、ドクター装置10から後述する安全カバーは取り外して示されている。
【0019】
次に図1A乃至図2Bを参照してドクター装置10について詳述する。ドクター装置10は、シリンダ1の表面の余剰のインキを掻き取るドクターブレード11と、ドクターブレード11の上面および下面からなる両面を保持する一対の保持板12a,12bと、一対の保持板12a,12bを固定する留め具15と、上方の保持板12aに取り付けられドクターブレード11を覆う安全カバー30とを備えている。
【0020】
本実施の形態において、ドクターブレード11は、平面視で長方形状の一対の保持板12a,12bに当て金13a,13bを介して保持されている。
【0021】
上述のように、一対の保持板12a,12bは平面視で長方形状をなし、一対の保持板12a,12bを固定する留め具15は、一対の保持板12a,12bの長手方向(ドクターブレード11の幅方向ともいえる)に沿って3箇所に設けられている(図2Aおよび図2B参照)。
【0022】
図4および図5に示すように、一対の保持板12a,12bを固定する各々の留め具15は、側面L字状をなし、ベース20に締結ボルト16により締結されている(図5参照)。そして締結ボルト16にはハンドル17が連結され、ハンドル17を回動することにより、締結ボルト16が締め付けられ、側面L字状の留め具15が下方へ撓む。このように留め具15が下方へ撓むことによって、ドクターブレード11が一対の保持板12a,12bにより、当て金13a,13bを介して堅固に保持される。同時にドクターブレード11を保持する一対の保持板12a,12bがベース20に堅固に固定される。
【0023】
図5に示すように、ベース20には、ベース20を揺動可能に支持する支持棒が挿入される開口20Aが形成され、ベース20はこの支持棒を中心に揺動可能となっている。
【0024】
また図4および図5に示すように、ベース20上には一対の保持板12a,12bに連結され、一対の保持板12a,12bをシリンダ1に対して引き離したり接近させる方向へ移動させる駆動軸19が設けられている。駆動軸19はベース20上に設けられた基台18を貫通して延びている。そして駆動軸19の端部に設けられた作動部19Aを回動させることにより、駆動軸19の外ねじが基台18内の内ねじに係合し、駆動軸19がその長手方向に沿ってベース20上を図6の左右方向に移動する。このことにより、駆動軸19に取り付け具19Bを介して連結された一対の保持板12a,12bもベース20上で図5の左右方向に移動可能となっている。
【0025】
本実施の形態において、ベース20上に設けられた駆動軸19は、一対の保持板12a,12bの長手方向に沿って設けられた3つの留め具15のうち両側の留め具15の内側に合計2本設けられている。
【0026】
さらに図2Aおよび図2Bに示すように一対の保持板12a,12bには、その長手方向に沿って2つの把持部5が設けられている。この2つの把持部5は、作業者がドクターブレード11を保持する一対の保持板12a,12bをベース20上に設置する際、使用するものである。
【0027】
次に、図1A乃至図2Bにより、上方の保持板12aに取り付けられた安全カバー30について述べる。安全カバー30はドクターブレード11を使用しない場合に、ドクターブレード11を覆って、ドクターブレード11に対する接触事故を未然に防ぐものである。
【0028】
このような安全カバー30は、上方の保持板12aに取り付けられた固定安全カバー31と、固定安全カバー31に蝶番等の回動機構37を介して揺動自在に取り付けられた揺動安全カバー32とを有する。
【0029】
このうち、固定安全カバー31は第1水平面(第1平面ともいう)31aを有する。また揺動安全カバー32は、固定安全カバー31に対して回動機構37を介して揺動して、閉位置(図1A参照)と、開位置(図1B参照)とをとる。
【0030】
揺動安全カバー32は、図1Aに示す閉位置において、第1平面31aに連続するとともに、ドクターブレード11の上面11aを覆う第2水平面(第2平面ともいう)32aと、第2平面32aの先端32a1から第2平面32aに対して直交する方向に降下してドクターブレード11の先端11bを覆う側面32bとを有する。また側面32bの下端32b1には、ドクターブレード11の基端に向かって(図1Aの左方向に向かって)、第2平面32aと平行に延びる第3水平面(第3平面ともいう)32cが連結されている。この側面32bに連結された第3平面32cは、ドクターブレード11の下面11cを覆うものである。
【0031】
図2Aおよび図2Bに示すように、安全カバー30の固定安全カバー31と揺動安全カバー32は、いずれも平面視で略長方形状をなし、一対の保持板12a,12bの長手方向と同一の方向へ延びている。具体的には、固定安全カバー31と揺動安全カバー32の長手方向(ドクターブレードの幅方向)両側には各々切り欠き部31A,32Aが形成されている。そして揺動安全カバー32の切り欠き部32Aにより、揺動安全カバー32が閉位置にあるとき、ドクターブレード11の上面11aの幅方向両側部が揺動安全カバー32の第2平面32aからわずかに露出する。しかしながら揺動安全カバー32が閉位置にあるとき、ドクターブレード11の先端11bおよび下面11cは、ドクターブレード11の幅方向全域に渡って、揺動安全カバー32の側面32bおよび第2平面32aにより安全に覆われている。
【0032】
このように安全カバー30の揺動安全カバー32は閉位置において、第2平面32aと、側面32bと、第3平面32cとを有し、全体として略コ字状断面をもつ(図1A参照)。そして揺動安全カバー32は、閉位置においてその第2平面32aによりドクターブレード11の上面11aを覆い、側面32bによりドクターブレード11の先端11bを覆い、その第3平面32cによりドクターブレード11の下面11cを覆うことができる。このことにより、ドクターブレード11を使用しない場合に、揺動安全カバー32を閉位置にもってきて、ドクターブレード11の上面11a、先端11bおよび下面11cを揺動安全カバー32の第2平面32a、側面32bおよび第3平面32cにより効果的に覆うことができる。このため、閉位置にある揺動安全カバー32により作業者がドクターブレード11、とりわけその先端11bに接触する接触事故をおこす恐れを最小限に抑えることができる。また図1Aおよび図1Bに示すように、揺動安全カバー32の第2平面32aの長さはL1、第3平面32cの長さはL2となっており、L1>L2となっている。
【0033】
なお、本実施の形態において、ドクターブレード11、当て金13a,13b、一対の保持板12a,12bはいずれも鋼材により形成されている。また安全カバー30は全体として軽量のアルミニウム材により形成されている。
【0034】
また、安全カバー30の固定安全カバー31は、一対の保持板12a,12bに締結ボルト35により固定されている。
【0035】
上述のように安全カバー30の揺動安全カバー32は、固定安全カバー31に対して、回動機構37を介して閉位置(図1A参照)と開位置(図1B)との間で揺動する。揺動安全カバー32の揺動中、ドクターブレード11の先端11bと揺動安全カバー32の第3平面32cの先端との間の最小距離Lは、1mm≦L≦5mmとなっている。
【0036】
この場合、上述した最小距離Lが1mmより小さいと、閉位置にある揺動安全カバー32によりドクターブレード11の先端11b近傍を覆うことができるが、揺動中の揺動安全カバー32の第3平面32cがドクターブレード11に接触して、揺動安全カバー32の揺動運動に支障が生じてしまうことも考えられる。
【0037】
他方、最小距離Lが5mmより大きいと、揺動中、揺動安全カバー32の第3平面32cがドクターブレード11に接触する恐れは小さいが、閉位置にある揺動安全カバー32によりドクターブレード11の先端11b近傍を確実に覆うことができない。
【0038】
このため、揺動安全カバー32の揺動中、ドクターブレード11の先端11bと揺動安全カバー32の第3平面32cの先端との間の最小距離Lは、1mm≦L≦5mmに定められている。
【0039】
ところで、本明細書において、「上方」、「下方」および「水平方向」とは、ドクター装置10を図1Aおよび図1Bに示すように配置した場合における「上方」、「下方」および「水平方向」を意味する。
【0040】
このため、図1Aおよび図1Bにおいて、一対の保持板12a,12bのうち、保持板12aが上方の保持板となり、保持板12bが下方の保持板となる。
【0041】
また図1Aおよび図1Bにおいて、安全カバー30の固定安全カバー31の第1平面31a、揺動安全カバー32の第2平面32aおよび第3平面32cは、いずれも水平方向に沿って配置されている。
【0042】
また揺動安全カバー32の側面32bは、図1Aおよび図1Bにおいて鉛直方向を向いている。
【0043】
次に図1A乃至図2Bにより、安全カバー30を固定する構造について述べる。上方の保持板12aには固定安全カバー31を介して第1マグネット21が設けられ、揺動安全カバー32の第2平面32aに第1マグネット21に吸着される鋼製のマグネット受け38が設けられている。そして揺動安全カバー32が開位置をとるとき、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられたマグネット受け38が第1マグネット21に吸着され、このようにして揺動安全カバー32は、上方の保持板12aに固定されて、安定して開位置をとることができる(図1B参照)。
【0044】
上述のように一対の保持板12a,12bは、一対の保持板12a,12bの長手方向に沿って設けられた3つの留め具15によりベース20に対して固定されている。
【0045】
本実施の形態においては、安全カバー30の揺動安全カバー32が揺動して開位置をとる際、揺動安全カバー32が3つの留め具15に干渉することがないよう、第1マグネット21の高さおよび位置が規定される。
【0046】
具体的には、第1マグネット21の高さH1は、10mm≦H1≦15mmとなっている。また第1マグネット21と回動機構37との間の距離L3は、35mm≦L3≦45mmとなっている。このように第1マグネット21の高さH1と、回動機構37からの距離L3を定めることにより、揺動安全カバー32が揺動して開位置をとった場合でも、揺動安全カバー32が留め具15に干渉しないようになっている。
【0047】
ところで、安全カバー30は軽量化を目的として、全体として非磁性体のアルミニウム材からなるため、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられたマグネット受け38は、第1マグネット21に対して吸着可能な磁性体、例えば鋼材からなる。
【0048】
上方の保持板12aに固定安全カバー31を介して設けられた第1マグネット21および揺動安全カバー32の側面32bに設けられたマグネット受け38は、いずれも保持板12および揺動安全カバー32の長手方向(ドクターブレード11の幅方向)に沿って5個ずつ設けられている(図2Aおよび図2B参照)。
【0049】
なお、第1マグネット21は上方の保持板12aに、固定安全カバー31を介して設けられているが、これに限らず第1マグネット21を上方の保持板12aに固定安全カバー31を介さず直接設けてもよい。
【0050】
さらに図1A乃至図2Bおよび図3に示すように、揺動安全カバー32の第2平面32aには、その裏面側に揺動安全カバー32が閉位置にきたとき、揺動安全カバー32の第2平面32aを上方の当て金13aに固定する第2マグネット22が設けられている。すなわち揺動安全カバー32が閉位置にきたとき、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられた第2マグネット22が鋼材からなる当て金13aを吸着する。このことにより揺動安全カバー32はドクターブレード11を挟持する当て金13aに固定され、安定して閉位置をとることができる(図1A参照)。
【0051】
なお、本実施の形態において、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられた第2マグネット22は、第2平面32aの長手方向(ドクターブレード11の幅方向)に沿って5個配置されている(図2Aおよび図2B参照)。
【0052】
また揺動安全カバー32が閉位置をとる場合、第2平面32aの裏側に設けられた第2マグネット22は当て金13aに吸着されるが、このとき第2マグネット22の高さH2は、揺動安全カバー32の第2平面32aが、固定安全カバー31の第1平面31aに連続し、かつ第1平面31aと第2平面32aが、いずれも水平方向を向くよう定められている。
【0053】
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0054】
まずドクター装置10のドクターブレード11は作業位置をとり(図5参照)、ドクターブレード11によりグラビア印刷等の印刷ユニット内に設置されたシリンダ1表面に塗布された余剰のインキを掻きとる。この場合、安全カバー30の揺動安全カバー32は回動機構37を介して揺動されて開位置をとる(図1Bおよび図2B参照)。
【0055】
図1Bおよび図2Bに示すように、揺動安全カバー32が開位置をとる場合、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられたマグネット受け38が、上方の保持板12aに固定安全カバー31を介して設けられた第1マグネット21に吸着される。このようにマグネット受け38が第1マグネット21に吸着されることにより、揺動安全カバー32を開位置に安定して固定することができる。
【0056】
このことにより、ドクターブレード11によりシリンダ1表面の余剰のインキを掻き取る際、揺動安全カバー32が突然閉位置まで揺動することはなく、ドクターブレード11によるインキの掻き取り作業に支障が生じることはない。
【0057】
次にドクターブレード11によるシリンダ1表面の余剰インキの掻き取り作業が終了すると、ベース20が支持棒を中心に揺動して、ドクターブレード11がシリンダ1から離れる(待避位置をとる)。
【0058】
このようにドクターブレード11がシリンダ1から離れた場合、ドクターブレード11の先端11bに作業者が接触する可能性がある。この場合は、ドクターブレード11を安全カバー30により覆う必要がある。
【0059】
ドクターブレード11を安全カバー30に覆う場合、まず安全カバー30の揺動安全カバー32を回動機構37を介して揺動させ、揺動安全カバー32を閉位置にもってきて、揺動安全カバー32によりドクターブレード11を覆うことができる(図1Aおよび図2A参照)。
【0060】
このとき、当て金13aが揺動安全カバー32の第2平面32aの裏面に設けられた第2マグネット22に吸着される。このように当て金13aが第2マグネット22に吸着されることにより、揺動安全カバー32を閉位置に安定して固定することができる。
【0061】
このように揺動安全カバー32を閉位置にもってくることにより、揺動安全カバー32の第2平面32aによりドクターブレード11の上面11aを覆うことができ、側面32bによりドクターブレード11の先端11bを覆うことができ、第3平面32cによりドクターブレード11の下面11cを覆うことができる。
【0062】
以上のように、シリンダ1表面の余剰インキの掻き取り作業が終了したドクターブレード11の上面11a、先端11bおよび下面11cを揺動安全カバー32の第2平面32a、側面32bおよび第3平面32cにより効果的に覆うことができる。そして、このことにより作業者がドクターブレード11、とりわけその先端11bに接触する接触事故を未然に防ぐことができる。
【0063】
また揺動安全カバー32が閉位置にあるとき、揺動安全カバー32の側面32bおよび第3平面32cは、ドクターブレード11の幅方向全域に渡って延び、このため、ドクターブレード11の先端11bおよび下面11cをドクターブレード11の幅方向全域に渡って覆うことができる。このため、閉位置にある揺動安全カバー32の側面32bおよび第3平面32cにより、とりわけドクターブレード11の先端11bを確実に覆うことができる。
【0064】
以上のように本実施の形態によれば、ドクターブレード11によりインキの掻き取り作業を行う場合、揺動安全カバー32を開位置までもってくる。このとき揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられたマグネット受け38を第1マグネット21に吸着させる。このことにより、揺動安全カバー32を開位置に安定して固定することができ、揺動安全カバー32が突然揺動したりして、ドクターブレード11によるインキの掻き取り作業に支障が生じることを未然に防ぐことができる。
【0065】
他方、ドクターブレード11によるシリンダ1表面の余剰インキの掻き取り作業が終了した場合は、揺動安全カバー32を回動機構37を介して揺動させ、揺動安全カバー32を閉位置にもってくる。このことにより、ドクターブレード11を揺動安全カバー32により確実に覆うことができ、ドクターブレード11の接触事故を未然に防ぐことができる。また揺動安全カバー32が閉位置にきた場合、ドクターブレード11側の当て金13aが、揺動安全カバー32の第2平面32aに設けられた第2マグネット22に吸着される。このことにより揺動安全カバー32を閉位置に安定して固定することができる。このため閉位置にある揺動安全カバー32が突然揺動することにより、ドクターブレード11が外部へ露出することはない。
【0066】
また、揺動安全カバー32を回動機構37を介して揺動させるだけで、揺動安全カバー32はドクターブレード11が露出する開位置と、ドクターブレード11を覆う閉位置とをとることができる。このためドクターブレード装置と別体に安全カバーを設け、ドクターブレード11を使用しない場合にこの安全カバーをドクターブレード装置に装着する場合に比べて、ドクターブレード11に対して安全カバーを設置する作業を容易に行うことができる。
【0067】
なお、上記実施の形態において、第1マグネット21を上方の保持板12aに設けられた固定安全カバー31上に設け、マグネット受け38を揺動安全カバー32の第2平面32aに設けた例を示した。しかしながら、これに限らず、第1マグネット21を上方の保持板12aに固定安全カバー31を介さず直接取り付けてもよい。
【0068】
また、第1マグネット21を揺動安全カバー32の第2平面32aに設け、一定の高さ(H1)をもつマグネット受け38を保持板12aに設けてもよい。
【0069】
また上記実施の形態において、第2マグネット22を揺動安全カバー32の第2平面32aの裏面に設けた例を示したが、これに限らず第2マグネット22を当て金13aに取り付けるとともに、第2平面32aに図示しないマグネット受けを設け、当て金13aに取り付けられた第2マグネット22により第2平面32aに取り付けられたマグネット受けを吸着してもよい。
【0070】
さらにドクターブレード11が当て金13a,13bを介して一対の保持板12a,12bにより保持する例を示したが、ドクターブレード11を当て金を用いることなく、直接保持板12a,12bにより保持してもよい。この場合は、揺動安全カバー32の第2平面32aに取り付けられた第2マグネット22によりドクターブレード11が吸着される。また揺動安全カバー32の第2平面32aに第2マグネット22を取り付けることなく、第2マグネット22をドクターブレード11に取り付け、第2平面32aの裏面に図示しないマグネット受けを設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 シリンダ
10 ドクター装置
11 ドクターブレード
11a 上面
11b 先端
11c 下面
12a 保持板
12b 保持板
13a 当て金
13b 当て金
15 留め具
16 締結ボルト
17 ハンドル
20 ベース
20A 開口
21 第1マグネット
22 第2マグネット
30 安全カバー
31 固定安全カバー
31a 第1平面
32 揺動安全カバー
32a 第2平面
32b 側面
32c 第3平面
37 回動機構
38 マグネット受け
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5