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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053959
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】レーザレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01S7/497
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160500
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂部 向志
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA01
5J084AA05
5J084AB07
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA19
5J084BA20
5J084BA49
5J084BA51
5J084BA56
5J084BB11
5J084BB27
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA23
5J084CA25
5J084EA20
5J084EA29
(57)【要約】
【課題】レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知する。
【解決手段】レーザレーダ装置(20)は、定位置に設置された基準部材(25)、及び検知領域に向けてレーザ光を投光する投光部(21)と、投光部により投光されたレーザ光の反射光を受光して電気信号に変換して受光波形として出力する受光部(22)と、受光部により出力された受光波形に基づいて物体を検知する検知部(23a)と、投光部により基準部材に向けてレーザ光が投光されて受光部により出力された受光波形である基準受光波形を取得し、第1時期に取得した基準受光波形と第1時期よりも後の第2時期に取得した基準受光波形との変化度合に基づいて、投光部、受光部、及び検知部の少なくとも1つである回路が故障したと判定する判定部(23b)と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置に設置された基準部材、及び検知領域に向けてレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光の反射光を受光して電気信号に変換して受光波形として出力する受光部と、
前記受光部により出力された前記受光波形に基づいて物体を検知する検知部と、
前記投光部により前記基準部材に向けて前記レーザ光が投光されて前記受光部により出力された前記受光波形である基準受光波形を取得し、第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第1時期よりも後の第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合に基づいて、前記投光部、前記受光部、及び前記検知部の少なくとも1つである回路が故障したと判定する判定部と、
を備えるレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記投光部は、前記基準部材及び前記検知領域に向けて所定周期で前記レーザ光を投光し、
前記第1時期と前記第2時期との間隔は、前記所定周期である、請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えている時間である第1波形幅と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が前記第1閾値を超えている時間である第2波形幅との変化量である、請求項1又は2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えている時間である第1波形幅と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が前記第1閾値を超えている時間である第2波形幅との単位時間当たりの変化量である、請求項1又は2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の波高値である第1波高値と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の波高値である第2波高値との変化量である、請求項1又は2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えてから第2閾値を超えるまでの時間である第1立上り時間と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えてから第2閾値を超えるまでの時間である第2立上り時間との変化量である、請求項1又は2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項7】
前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第2閾値を下回ってから第1閾値を下回るまでの時間である第1立下り時間と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が第2閾値を下回ってから第1閾値を下回るまでの時間である第2立下り時間との変化量である、請求項1又は2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合が、前記レーザレーダ装置を起動した直後の所定時間における前記第1時期から前記第2時期までの前記回路の温度変化による前記基準受光波形の変化度合として想定される所定変化度合を超えたことを条件として、前記回路が故障したと判定する、請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を投光してその反射光に基づいて物体を検知するレーザレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレーザレーダ装置において、筐体内に固定された導光部材までの距離に対応する基準長さを測定し、この基準長さに基づいて、測定された物体までの距離を校正するものがある(特許文献1参照)。特許文献1によれば、基準長さは、周囲の温度条件等の測定環境の変化や部品の経年変化に応じた所定量変化するので、この変化量に基づいて物体までの距離を校正すれば、周囲の測定環境の変化によらず、常に適正な距離測定を行うことが可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-349449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザレーダ装置では、受光した反射光を電気信号に変換した受光波形に基づいて、TOF(Time Of Flight)方式により物体までの距離を測定している。導光部材(基準部材)までの距離を測定した時の受光波形(以下、「基準受光波形」という)は、レーザレーダ装置の回路の温度変化及び故障により変化する。このため、例えば基準受光波形の波高値が閾値よりも大きい場合に故障と判定する方法では、温度変化による波高値の変化を故障と誤判定しないようにするために閾値を大きく設定せざるを得ず、故障検知が遅れるおそれがある。その場合、危険領域に侵入した侵入者を検知することができない状態が継続し、侵入者を危険な状態にするおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、レーザレーダ装置であって、
定位置に設置された基準部材、及び検知領域に向けてレーザ光を投光する投光部と、
前記投光部により投光された前記レーザ光の反射光を受光して電気信号に変換して受光波形として出力する受光部と、
前記受光部により出力された前記受光波形に基づいて物体を検知する検知部と、
前記投光部により前記基準部材に向けて前記レーザ光が投光されて前記受光部により出力された前記受光波形である基準受光波形を取得し、第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第1時期よりも後の第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合に基づいて、前記投光部、前記受光部、及び前記検知部の少なくとも1つである回路が故障したと判定する判定部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、投光部は、定位置に設置された基準部材、及び検知領域に向けてレーザ光を投光する。受光部は、前記投光部により投光された前記レーザ光の反射光を受光して電気信号に変換して受光波形として出力する。検知部は、前記受光部により出力された前記受光波形に基づいて物体を検知する。このため、レーザレーダ装置は、検知領域に侵入した侵入者等を検知することができる。
【0008】
判定部は、前記投光部により前記基準部材に向けて前記レーザ光が投光されて前記受光部により出力された前記受光波形である基準受光波形を取得する。基準受光波形は、レーザレーダ装置の回路の温度変化及び故障により変化する。ここで、回路の温度変化による基準受光波形の変化は連続的であるのに対して、回路の故障による基準受光波形の変化はそれを超えた変化になる。
【0009】
この点、判定部は、第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第1時期よりも後の第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合に基づいて、前記投光部、前記受光部、及び前記検知部の少なくとも1つである回路が故障したと判定する。このため、回路の故障により基準受光波形が大きく変化する前であっても、第1時期の基準受光波形と第2時期の基準受光波形との変化度合に基づいて、基準受光波形が大きく変化する予兆を捉えて回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知することができる。ひいては、検知領域に侵入した侵入者を検知することができない状態が継続することを抑制することができ、侵入者を危険な状態にすることを抑制することができる。
【0010】
一般的に、レーザレーダ装置は、検知領域に所定周期(例えば30~70[ms])でレーザ光を投光して、検知領域に侵入した侵入者等を検知している。
【0011】
この点、第2の手段では、前記投光部は、前記基準部材及び前記検知領域に向けて所定周期で前記レーザ光を投光し、前記第1時期と前記第2時期との間隔は、前記所定周期である。こうした構成によれば、判定部は、基準部材及び検知領域にレーザ光を投光する所定周期における基準受光波形の変化度合に基づいて、回路が故障したと判定する。したがって、基準受光波形が大きく変化する予兆を迅速に捉えて回路が故障したと判定することができ、回路の故障をさらに迅速に検知することができる。
【0012】
一般的に、TOF方式のレーザレーダ装置は、受光部により出力された受光波形の強度が閾値を超えている時間である波形幅を算出している。そして、受光波形の強度が閾値を超えた時刻を波形幅に基づいて補正して、レーザ光を投光してからその反射光を受光するまでの時間、ひいてはレーザ光を投光してから物体に当たるまでの時間を算出している。
【0013】
この点、第3の手段では、前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えている時間である第1波形幅と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が前記第1閾値を超えている時間である第2波形幅との変化量である。こうした構成によれば、TOF方式のレーザレーダ装置が一般的に備えている機能を利用して、第1時期に取得した前記基準受光波形と第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合を算出することができる。
【0014】
第4の手段では、前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えている時間である第1波形幅と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が前記第1閾値を超えている時間である第2波形幅との単位時間当たりの変化量である。こうした構成によれば、判定部は、第1波形幅と第2波形幅との単位時間当たりの変化量に基づいて、回路が故障したと判定することができる。こうした構成によっても、TOF方式のレーザレーダ装置が一般的に備えている波形幅を算出する機能を利用することができる。
【0015】
第5の手段のように、前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の波高値である第1波高値と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の波高値である第2波高値との変化量である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、基準受光波形の波高値を用いる場合であっても、基準受光波形が大きく変化する予兆を捉えて回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知することができる。
【0016】
第6の手段のように、前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えてから第2閾値を超えるまでの時間である第1立上り時間と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が第1閾値を超えてから第2閾値を超えるまでの時間である第2立上り時間との変化量である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によっても、基準受光波形が大きく変化する予兆を捉えて回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知することができる。
【0017】
第7の手段のように、前記変化度合は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形の強度が第2閾値を下回ってから第1閾値を下回るまでの時間である第1立下り時間と、前記第2時期に取得した前記基準受光波形の強度が第2閾値を下回ってから第1閾値を下回るまでの時間である第2立下り時間との変化量である、といった構成を採用することもできる。こうした構成によっても、基準受光波形が大きく変化する予兆を捉えて回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置において、基準受光波形に基づいて回路の故障を迅速に検知することができる。
【0018】
一般的に、レーザレーダ装置の回路の温度は、レーザレーダ装置を起動した直後の所定時間に急激に上昇し、その後に緩やかに上昇する。このため、第1時期から第2時期までの回路の温度変化による基準受光波形の変化度合は、レーザレーダ装置を起動した直後の所定時間における第1時期から第2時期までに最も大きくなる。
【0019】
この点、第8の手段では、前記判定部は、前記第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合が、前記レーザレーダ装置を起動した直後の所定時間における前記第1時期から前記第2時期までの前記回路の温度変化による前記基準受光波形の変化度合として想定される所定変化度合を超えたことを条件として、前記回路が故障したと判定する。こうした構成によれば、前記第1時期に取得した前記基準受光波形と前記第2時期に取得した前記基準受光波形との変化度合が、第1時期から第2時期までの回路の温度変化による基準受光波形の変化度合として想定される最大の変化度合(所定変化度合)を超えたことを条件として、回路が故障したと判定することができる。したがって、回路が故障したと誤判定することを抑制しつつ、回路が故障したことを迅速に判定することができる。さらに、故障の判定を行う時期に応じて判定値(所定変化度合)を変更する必要がなく、判定処理を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】レーザレーダ装置の概要を示す平面図。
図2】レーザレーダ装置の構成を示すブロック図。
図3】時間と筐体内部の温度との関係を示すグラフ。
図4】時間と内部波形の変化との関係を示すグラフ。
図5】第1実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図6】第1実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図7】第1実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図8】第1実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図9】第2実施形態の正常時における第1時期の内部波形及び第2時期の内部波形の一例を示すグラフ。
図10】第2実施形態の正常時における第1時期の内部波形及び第2時期の内部波形の他の例を示すグラフ。
図11】第2実施形態の故障時における第1時期の内部波形及び第2時期の内部波形の一例を示すグラフ。
図12】第2実施形態の故障時における第1時期の内部波形及び第2時期の内部波形の他の例を示すグラフ。
図13】第3実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図14】第3実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図15】第2実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図16】第2実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図17】第4実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図18】第4実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図19】第4実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図20】第4実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図21】第5実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図22】第5実施形態の正常時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
図23】第5実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の一例を示すグラフ。
図24】第5実施形態の故障時における前回の内部波形及び今回の内部波形の他の例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、危険領域への侵入を監視するレーザレーダ装置に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すように、レーザレーダ装置20は、例えば前方の略190°の検知領域Aをレーザ光で水平に走査する広角の測距レーダである。レーザレーダ装置20は、平面視において検知領域Aにパルス状のレーザ光を投光して走査し、レーザ光が物体で反射された反射光を受光した受光状態に基づいて、検知領域Aの物体を検知する。例えば、検知領域Aにおいてレーザレーダ装置20から投光角度θ1の方向に侵入者Mが存在する場合、レーザレーダ装置20から侵入者Mまでの距離を算出することにより侵入者Mを検知する。レーザ光には、例えば赤外レーザや、可視レーザ、紫外レーザ等を利用することができる。
【0023】
図2に示すように、レーザレーダ装置20は、投光部21、受光部22、マイコン23、基準部材25等を備えている。マイコン23は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータである。マイコン23は、距離算出部23a及び故障判定部23bの機能を実現する。
【0024】
投光部21は、投光部21を中心として水平に、人間の腰の高さに相当する高さ(所定高さ)に、所定角度の間隔(例えば0.25°間隔)で、パルス状のレーザ光(白抜き矢印で表示)を投光する。詳しくは、投光部21は、レーザ光を水平方向へ反射する偏向ミラー(ミラー)をモータにより回転させることにより、レーザ光の投光角度θを変更する。モータの回転周期、すなわちレーザ光により検知領域Aを走査する走査周期Tsc(所定周期)は、例えば30[ms]と70[ms]とに設定可能である。
【0025】
また、投光部21は、モータが1回転する間に、レーザレーダ装置20の筐体内の所定位置(定位置)に固定(設置)された基準部材25に向けてレーザ光(白抜き矢印で表示)を投光する。詳しくは、モータが1回転する間に、投光部21の偏向ミラーにより、検知領域Aと異なる方向に設置された基準部材25に向けてレーザ光を反射する。これにより、投光部21は、モータが1回転する毎(走査周期Tsc毎)に、基準部材25に向けてレーザ光を投光する。基準部材25は、プリズムやミラー等により形成されており、投光部21から投光されたレーザ光を受光部22に向けて反射する。投光部21から基準部材25までの距離は既知である。
【0026】
受光部22は、投光部21により投光されたレーザ光が物体で反射された反射光(白抜き矢印で表示)を受光し、反射光の受光量を電圧信号(電気信号)に変換して受光波形Vs[V]として出力する。受光部22は、投光部21によりレーザ光が投光される度に、受光波形Vsを出力する。以後、投光部21により基準部材25に向けてレーザ光が投光されて受光部22により出力された受光波形Vsを、「内部波形」という。内部波形(基準受光波形)は、投光部21によるレーザ光の走査周期Tsc毎に、受光部22により出力される。
【0027】
距離算出部23a(検知部)は、投光部21によりレーザ光が投光されてから、受光部22により反射光が受光されるまでの経過時間txに比例させて、投光方向毎に投光部21(レーザレーダ装置20)から物体までの距離Dを算出する(TOF方式)。すなわち、距離算出部23aは、受光部22により出力された受光波形Vsに基づいて物体を検知する。ここで、距離算出部23aは、受光部22により出力された受光波形Vs(受光波形の強度)が閾値Vr1[V](第1閾値)を超えている時間であるパルス幅tt[s]を算出する。そして、受光波形Vsが閾値Vr1を超えた時刻ti1からパルス幅ttに基づく補正量Δtxだけ遡った時刻を、受光部22により反射光が受光された時刻ti2とする。例えば、距離算出部23aは、パルス幅ttが広いほど、補正量Δtxを小さくする。そして、距離算出部23aは、投光部21によりレーザ光が投光された時刻から時刻ti2までの時間を経過時間txとする。
【0028】
故障判定部23b(判定部)は、上記内部波形を取得し、第1時期に取得した内部波形と第1時期よりも後の第2時期に取得した内部波形との変化度合に基づいて、投光部21、受光部22、及び距離算出部23aの少なくとも1つである電子回路(回路)が故障したと判定する。なお、電子回路が故障したと判定する方法の詳細は後述する。
【0029】
図3は、時間tと筐体内部の温度との関係を示すグラフである。筐体内部の温度(すなわち電子回路の温度)は、時期t0においてレーザレーダ装置20の電源をON(レーザレーダ装置20を起動)した直後から上昇し始める。筐体内部の温度は、時期t0~t1(レーザレーダ装置20を起動した直後の所定時間)において急速(急激)に上昇し、時期t1~t2においてやや急速に上昇し、時期t2~t6において緩やかに上昇している。
【0030】
図4は、時間tと内部波形の変化との関係を示すグラフである。パルス幅tt0~tt6は、それぞれ図3の時期t0~t6において取得した内部波形のパルス幅ttを表している。内部波形のパルス幅ttは、レーザレーダ装置の筐体内部の温度が上昇するほど広くなるため、遅い時期に取得した内部波形のパルス幅ttほど広くなっている。内部波形のパルス幅ttの変化量Δttは、前期に取得した内部波形のパルス幅ttと今期に取得した内部波形のパルス幅ttとの差の絶対値である。例えば、変化量Δtt1は、時期t1に取得した内部波形のパルス幅tt1と時期t0に取得した内部波形のパルス幅tt0との差の絶対値である。そして、内部波形のパルス幅ttの変化量Δttは、早い時期に取得した2つの内部波形の間での変化量Δttほど広くなっている。
【0031】
そこで、レーザレーダ装置20の電源をONにした直後の所定時間(時期t0~t1)における第1時期から第2時期までの筐体内部の温度変化による内部波形の変化量(変化度合)として想定される変化量Δtt12(所定変化度合)に誤差分aを加えた値を、故障判定値Δtsとする。変化量Δtt12は、時期t0~時期t1までの筐体内部の温度変化による内部波形の変化量として想定される変化量Δtt1を、レーザ光の走査周期Tscにおける変化量に換算した値である。レーザレーダ装置20の筐体内部の連続的な温度変化による変化量Δttであれば、故障判定値Δtsを超えることはないはずであり、故障判定部23bは、電子回路は正常であると判定する。そして、距離算出部23aは、投光部21から基準部材25までの既知の距離と、内部波形に基づき算出した投光部21から基準部材25までの距離との偏差に基づいて、算出した投光部21から物体までの距離を校正(補正)する。一方、故障判定部23bは、変化量Δttが故障判定値Δtsを超えた場合は、電子回路が故障したと判定する。すなわち、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形と第2時期に取得した内部波形との変化量Δttが、レーザレーダ装置20の電源をONした直後の所定時間における第1時期から第2時期までの電子回路(筐体内部)の温度変化による内部波形の変化量として想定される変化量Δtt12を超えたことを条件として、電子回路が故障したと判定する。そして、故障判定部23bは、電子回路が故障したことを、外部に出力したり、表示器により表示させたり、警報器により警報させたりする。これにより、距離算出部23aによる物体までの距離Dの算出ができなくなったり、距離Dの計測誤差が大きくなったりする状態が継続することを抑制することができる。
【0032】
図5は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tn(第2波形幅)と、前回の内部波形n-1において閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tn-1(第1波形幅)との変化量Δtn(差の絶対値)は、故障判定値Δtsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。なお、この例では、前回の内部波形n-1と今回の内部波形nとが同時に閾値Vr1を超えているが、これらの時期は同時とは限らない(以降の例でも同様)。
【0033】
図6は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおけるパルス幅tnと、前回の内部波形n-1におけるパルス幅tn-1との変化量Δtn(差の絶対値)は、故障判定値Δtsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0034】
図7は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおけるパルス幅tnと、前回の内部波形n-1におけるパルス幅tn-1との変化量Δtn(差の絶対値)は、故障判定値Δtsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0035】
図8は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおけるパルス幅tnと、前回の内部波形n-1におけるパルス幅tn-1との変化量Δtn(差の絶対値)は、故障判定値Δtsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0036】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0037】
・故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1と第1時期よりも後の第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnに基づいて、投光部21、受光部22、及び距離算出部23aの少なくとも1つである電子回路が故障したと判定する。このため、電子回路の故障により内部波形が大きく変化する前であっても、第1時期の内部波形n-1と第2時期の内部波形nとの変化量Δtnに基づいて、内部波形が大きく変化する予兆を捉えて電子回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置20において、内部波形に基づいて電子回路の故障を迅速に検知することができる。ひいては、検知領域Aに侵入した侵入者Mを検知することができない状態が継続することを抑制することができ、侵入者Mを危険な状態にすることを抑制することができる。
【0038】
・投光部21は、基準部材25及び検知領域Aに向けて走査周期Tscでレーザ光を投光し、第1時期と第2時期との間隔は、走査周期Tscである。こうした構成によれば、故障判定部23bは、基準部材25及び検知領域Aにレーザ光を投光する走査周期Tscにおける内部波形の変化量Δtnに基づいて、電子回路が故障したと判定する。したがって、内部波形が大きく変化する予兆を迅速に捉えて電子回路が故障したと判定することができ、電子回路の故障をさらに迅速に検知することができる。
【0039】
・パルス幅ttの変化量Δtnは、第1時期に取得した内部波形n-1の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tn-1と、第2時期に取得した内部波形nの強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tnとの変化量である。こうした構成によれば、TOF方式のレーザレーダ装置20が一般的に備えている機能を利用して、第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnを算出することができる。
【0040】
・故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnが、レーザレーダ装置20を起動した直後の所定時間(時期t0~t1)における第1時期から第2時期までの電子回路の温度変化による内部波形の変化量Δtnとして想定される変化量Δtt12を超えたことを条件として、電子回路が故障したと判定する。こうした構成によれば、第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnが、第1時期から第2時期までの電子回路の温度変化による内部波形の変化量Δttとして想定される最大の変化量Δtt12を超えたことを条件として、電子回路が故障したと判定することができる。したがって、電子回路が故障したと誤判定することを抑制しつつ、電子回路が故障したことを迅速に判定することができる。さらに、故障の判定を行う時期に応じて故障判定値Δtsを変更する必要がなく、判定処理を簡素化することができる。
【0041】
なお、第1実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0042】
・第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnとして、パルス幅tnとパルス幅tn-1との比(tn/tn-1)を採用することもできる。この場合、パルス幅tnとパルス幅tn-1との比に変化量Δtnを変更したことに応じて、故障判定値Δtsを変更すればよい。
【0043】
・第1時期に取得した内部波形n-1の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tn-1に代えて、内部波形n-1における閾値Vr1を超えている部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Sn-1を採用することもできる。また、第2時期に取得した内部波形nの強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅tnに代えて、内部波形nにおける閾値Vr1を超えている部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Snを採用することもできる。そして、面積Snと面積Sn-1との変化量ΔSn(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による面積Sn-1,Snの変化に応じて、故障判定値ΔSsを設定すればよい。
【0044】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0045】
第2実施形態では、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形s0の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t0と、第2時期に取得した内部波形s1の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t1との単位時間当たりの変化量Δt/sに基づいて、電子回路が故障したと判定する。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による単位時間当たりのパルス幅t0,t1の変化に応じて、故障判定値Δts/sを設定すればよい。
【0046】
図9は、正常時における第1時期の内部波形s0及び第2時期の内部波形s1の一例を示すグラフである。この例では、第1時期の内部波形s0よりも第2時期の内部波形s1が大きくなっており、第1時期から第2時期までの時間が単位時間である。そして、第2時期の内部波形s1において閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t1(第2波形幅)と、第1時期の内部波形s0において閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t0(第1波形幅)との変化量Δt/s(差の絶対値)は、故障判定値Δts/sよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。なお、図9では、第1時期から第2時期までの時間が単位時間である例を示しているが、第1時期から第2時期までの時間は単位時間に限らない。その場合であっても、パルス幅t0とパルス幅t1との変化量Δtを、第1時期から第2時期までの時間t[s]で割って、単位時間当たりの変化量Δt/sを求めればよい。
【0047】
図10は、正常時における第1時期の内部波形s0及び第2時期の内部波形s1の他の例を示すグラフである。この例では、第1時期の内部波形s0よりも第2時期の内部波形s1が小さくなっている。そして、第2時期の内部波形s1におけるパルス幅t1と、第1時期の内部波形s0におけるパルス幅t0との変化量Δt/s(差の絶対値)は、故障判定値Δts/sよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0048】
図11は、故障時における第1時期の内部波形s0及び第2時期の内部波形s1の一例を示すグラフである。この例では、第1時期の内部波形s0よりも第2時期の内部波形s1が大きくなっている。そして、第2時期の内部波形s1におけるパルス幅t1と、第1時期の内部波形s0におけるパルス幅t0との変化量Δt/s(差の絶対値)は、故障判定値Δts/sよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0049】
図12は、故障時における第1時期の内部波形s0及び第2時期の内部波形s1の他の例を示すグラフである。この例では、第1時期の内部波形s0よりも第2時期の内部波形s1が小さくなっている。そして、第2時期の内部波形s1におけるパルス幅t1と、第1時期の内部波形s0におけるパルス幅t0との変化量Δt/s(差の絶対値)は、故障判定値Δts/sよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0050】
上記構成によっても、TOF方式のレーザレーダ装置20が一般的に備えているパルス幅t0,t1を算出する機能を利用することができる。
【0051】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0052】
・第1時期に取得した内部波形s0と第2時期に取得した内部波形s1との変化量Δt/sとして、パルス幅t1とパルス幅t0との比(t1/ts)を採用することもできる。この場合、パルス幅t1とパルス幅t0との比に変化量Δt/sを変更したことに応じて、故障判定値Δts/sを変更すればよい。
【0053】
・第1時期に取得した内部波形s0の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t0に代えて、内部波形s0における閾値Vr1を超えている部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Sn-1を採用することもできる。また、第2時期に取得した内部波形s1の強度が閾値Vr1を超えている時間であるパルス幅t1に代えて、内部波形s1における閾値Vr1を超えている部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Snを採用することもできる。そして、面積Snと面積Sn-1との単位時間当たりの変化量ΔSn/s(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による面積Sn-1,Snの単位時間当たりの変化に応じて、故障判定値ΔSs/sを設定すればよい。
【0054】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0055】
第3実施形態では、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1の波高値vn-1(第1波高値)と、第2時期に取得した内部波形nの波高値vn(第2波高値)との変化量Δvnに基づいて、電子回路が故障したと判定する。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による波高値vn-1,vnの変化に応じて、故障判定値Δvsを設定すればよい。
【0056】
図13は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nの波高値vn(第2波高値)と、前回の内部波形n-1の波高値vn-1(第1波高値)との変化量Δvn(差の絶対値)は、故障判定値Δvsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0057】
図14は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nの波高値vnと、前回の内部波形n-1の波高値vn-1との変化量Δvn(差の絶対値)は、故障判定値Δvsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0058】
図15は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nの波高値vnと、前回の内部波形n-1の波高値vn-1との変化量Δvn(差の絶対値)は、故障判定値Δvsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0059】
図16は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nの波高値vnと、前回の内部波形n-1の波高値vn-1との変化量Δvn(差の絶対値)は、故障判定値Δvsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0060】
上記構成によれば、内部波形n-1,nの波高値vn-1,vnを用いる場合であっても、内部波形が大きく変化する予兆を捉えて電子回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置20において、内部波形n-1,nに基づいて電子回路の故障を迅速に検知することができる。
【0061】
なお、第3実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第3実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0062】
・第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δvnとして、波高値vnと波高値vn-1との比(vn/vn-1)を採用することもできる。この場合、波高値vnと波高値vn-1との比に変化量Δvnを変更したことに応じて、故障判定値Δvsを変更すればよい。
【0063】
・第1時期に取得した内部波形n-1の波高値vn-1に代えて、内部波形n-1とt軸とで囲まれる領域の面積Sn-1(内部波形n-1の積分値)を採用することもできる。また、第2時期に取得した内部波形nの波高値vnに代えて、内部波形nとt軸とで囲まれる領域の面積Sn(内部波形nの積分値)を採用することもできる。そして、面積Snと面積Sn-1との変化量ΔSn(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による面積Sn-1,Snの変化に応じて、故障判定値ΔSsを設定すればよい。
【0064】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0065】
第4実施形態では、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1の強度が閾値Vr1(第1閾値)を超えてから閾値Vr2(第2閾値)を超えるまでの時間である立上り時間trn-1(第1立上り時間)と、第2時期に取得した内部波形nの強度が閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trn(第2立上り時間)との変化量Δtrnに基づいて、電子回路が故障したと判定する。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による立上り時間trn-1,trnの変化に応じて、故障判定値Δtrsを設定すればよい。
【0066】
図17は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trn-1との変化量Δtrn(差の絶対値)は、故障判定値Δtrsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0067】
図18は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trn-1との変化量Δtrn(差の絶対値)は、故障判定値Δtrsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0068】
図19は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trn-1との変化量Δtrn(差の絶対値)は、故障判定値Δtrsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0069】
図20は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの時間である立上り時間trn-1との変化量Δtrn(差の絶対値)は、故障判定値Δtrsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0070】
上記構成によっても、内部波形n-1,nが大きく変化する予兆を捉えて電子回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置20において、内部波形n-1,nに基づいて電子回路の故障を迅速に検知することができる。
【0071】
なお、第4実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第4実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0072】
・第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtrnとして、立上り時間trnと立上り時間trn-1との比(trn/trn-1)を採用することもできる。この場合、立上り時間trnと立上り時間trn-1との比に変化量Δtrnを変更したことに応じて、故障判定値Δtrsを変更すればよい。
【0073】
・第1時期に取得した立上り時間trn-1に代えて、内部波形n-1における閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Sn-1を採用することもできる。また、第2時期に取得した立上り時間trnに代えて、内部波形nにおける閾値Vr1を超えてから閾値Vr2を超えるまでの部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Snを採用することもできる。そして、面積Snと面積Sn-1との変化量ΔSn(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による面積Sn-1,Snの変化に応じて、故障判定値ΔSsを設定すればよい。
【0074】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0075】
第5実施形態では、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1の強度が閾値Vr2(第2閾値)を下回ってから閾値Vr1(第1閾値)を下回るまでの時間である立下り時間tfn-1(第1立下り時間)と、第2時期に取得した内部波形nの強度が閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfn(第2立下り時間)との変化量Δtfnに基づいて、電子回路が故障したと判定する。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による立下り時間tfn-1,tfnの変化に応じて、故障判定値Δtfsを設定すればよい。
【0076】
図21は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、立下がり部分において前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfn-1との変化量Δtfn(差の絶対値)は、故障判定値Δtfsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0077】
図22は、正常時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、立下がり部分において前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfn-1との変化量Δtfn(差の絶対値)は、故障判定値Δtfsよりも小さくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は正常である(故障していない)と判定する。
【0078】
図23は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの一例を示すグラフである。この例では、立下がり部分において前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが小さくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfn-1との変化量Δtfn(差の絶対値)は、故障判定値Δtfsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0079】
図24は、故障時における前回の内部波形n-1及び今回の内部波形nの他の例を示すグラフである。この例では、立下がり部分において前回の内部波形n-1よりも今回の内部波形nが大きくなっている。そして、今回の内部波形nにおいて閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfnと、前回の内部波形n-1において閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの時間である立下り時間tfn-1との変化量Δtfn(差の絶対値)は、故障判定値Δtfsよりも大きくなっている。このため、故障判定部23bは、電子回路は故障していると判定する。
【0080】
上記構成によっても、内部波形n-1,nが大きく変化する予兆を捉えて電子回路が故障したと判定することができる。したがって、レーザレーダ装置20において、内部波形n-1,nに基づいて電子回路の故障を迅速に検知することができる。
【0081】
なお、第5実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第5実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0082】
・第1時期に取得した内部波形n-1と第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtfnとして、立下り時間tfnと立下り時間tfn-1との比(tfn/tfn-1)を採用することもできる。この場合、立下り時間tfnと立下り時間tfn-1との比に変化量Δtfnを変更したことに応じて、故障判定値Δtfsを変更すればよい。
【0083】
・第1時期に取得した立下り時間tfn-1に代えて、内部波形n-1における閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Sn-1を採用することもできる。また、第2時期に取得した立下り時間tfnに代えて、内部波形nにおける閾値Vr2を下回ってから閾値Vr1を下回るまでの部分と閾値Vr1とで囲まれる領域の面積Snを採用することもできる。そして、面積Snと面積Sn-1との変化量ΔSn(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合、レーザレーダ装置20の筐体内部の温度変化による面積Sn-1,Snの変化に応じて、故障判定値ΔSsを設定すればよい。
【0084】
なお、第1~第5実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1~第5実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0085】
・故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形と第2時期に取得した内部波形との変化量Δttが、レーザレーダ装置20の電源をONした直後の所定時間に限らず、レーザレーダ装置20の電源をONした後の各時間帯における筐体内部の温度変化による内部波形の変化量として想定される変化量Δttnを超えたことを条件として、電子回路が故障したと判定することもできる。こうした構成によれば、レーザレーダ装置20の電源をONした後の各時間帯において、電子回路の故障判定の精度を向上させることができる。
【0086】
・故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形と第2時期に取得した内部波形との変化量Δttが、レーザレーダ装置20の電源をONしてからアイドル期間を経過した後の所定時間における筐体内部の温度変化による内部波形の変化量として想定される変化量Δttnを超えたことを条件として、電子回路が故障したと判定することもできる。この場合は、アイドル期間においては電子回路の故障判定を実行しないようにする。こうした構成によれば、故障の判定を行う時期に応じて故障判定値を変更する必要がなく、判定処理を簡素化することができる。さらに、アイドル期間よりも後における電子回路の故障判定の精度を向上させることができる。
【0087】
・投光部21は、モータがn回転する毎(走査周期Tscのn倍毎)に、基準部材25に向けてレーザ光を投光してもよい。そして、故障判定部23bは、走査周期Tscのn倍毎に電子回路の故障判定を実行してもよい。なお、この場合も、投光部21は、モータが1回転する毎(走査周期Tsc毎)に、検知領域Aに向けてレーザ光を投光することが望ましい。
【0088】
・電子回路の温度変化により内部波形が変化すると、距離算出部23aにより算出される基準部材25までの基準距離D0が変化する。そこで、故障判定部23bは、第1時期に取得した基準距離D0と第1時期よりも後の第2時期に取得した基準距離D0との変化量ΔD0(変化度合)に基づいて、電子回路が故障したと判定することもできる。こうした構成によれば、TOF方式のレーザレーダ装置20が一般的に備えている物体までの距離を算出する機能を利用して、電子回路の故障を迅速に検知することができる。なお、この場合も、故障判定部23bは、第1時期に取得した内部波形n-1と第1時期よりも後の第2時期に取得した内部波形nとの変化量Δtnに基づいて、電子回路が故障したと判定しているといえる。
【0089】
・基準部材25は、雨や埃等の影響を避けることができる位置であれば、レーザレーダ装置20の筐体外の所定位置(定位置)に固定(設置)されていてもよい。
【0090】
なお、上記の各変更例を組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0091】
20…レーザレーダ装置、21…投光部、22…受光部、23…マイコン、23a…距離算出部(検知部)、23b…故障判定部(判定部)、25…基準部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24