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特開2024-53960防水シート固定構造および防水シート固定工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053960
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】防水シート固定構造および防水シート固定工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/14 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
E04D5/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160501
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000010010
【氏名又は名称】ロンシール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村野 佳巳
(57)【要約】
【課題】機械的固定工法の後付け工法における作業時間を短縮可能な防水シート固定構造を提供する。
【解決手段】下地の上に敷設される防水シートと、前記防水シートの上に配置される接着片と、前記防水シートの上に配置される固定板と、前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、前記防水シートは前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される接着片と、
前記防水シートの上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートは前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【請求項2】
下地の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される保護片と、
前記保護片の上に配置される接着片と、
前記保護片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートおよび前記保護片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【請求項3】
前記防水シートの上面と前記保護片の下面とが接合されている請求項2に記載の防水シート固定構造。
【請求項4】
前記固定板の上面と前記防水片の下面とが接合されている請求項1~3に記載の防水シート固定構造。
【請求項5】
前記固定板は上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなる請求項4に記載の防水シート固定構造。
【請求項6】
前記固定板が前記接着片の下に配置されており、前記固定板の上面と前記防水片の下面とが前記接着片により接着されている請求項1~3に記載の防水シート固定構造。
【請求項7】
前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる請求項1~3に記載の防水シート固定構造。
【請求項8】
前記防水シートおよび前記防水片は熱可塑性樹脂製シートからなる請求項1~3に記載の防水シート固定構造。
【請求項9】
前記保護片は熱可塑性樹脂製シートからなる請求項2または3に記載の防水シート固定構造。
【請求項10】
前記下地と、前記防水シートとの間に断熱材を備える請求項1~3に記載の防水シート固定構造。
【請求項11】
下地の上に形成された既存防水層の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される接着片と、
前記防水シートの上に配置される固定板と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートは前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【請求項12】
下地の上に形成された既存防水層の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される保護片と、
前記保護片の上に配置される接着片と、
前記保護片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートおよび前記保護片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【請求項13】
下地の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に接着片を配置する工程と、
前記防水シートの上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【請求項14】
下地の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に保護片を配置する工程と
前記保護片の上に接着片を配置する工程と、
前記保護片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【請求項15】
前記防水シートの上面と前記保護片の下面とを接合する工程を備える、請求項14に記載の防水シート固定工法。
【請求項16】
さらに前記固定板の上面と前記防水片の下面とを接合する工程を備える請求項13~15に記載の防水シート固定工法。
【請求項17】
前記固定板は上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなり、前記固定板を誘導加熱により加熱することで前記固定板の上面と前記防水片の下面とを接合する請求項16に記載の防水シート固定工法。
【請求項18】
前記固定板を前記接着片の下に配置して、さらに前記固定板の上面と前記防水片の下面とを前記接着片により接着する工程を備える請求項13~15に記載の防水シート固定工法。
【請求項19】
前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなり、前記接着片を誘導加熱により加熱することで前記接着片により接着する工程とする請求項13~15に記載の防水シート固定工法。
【請求項20】
前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなり、前記接着片を誘導加熱により加熱することで前記接着片により接着する工程とする請求項18に記載の防水シート固定工法。
【請求項21】
下地の上に形成された既存防水層の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に接着片を配置する工程と、
前記防水シートの上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【請求項22】
下地の上に形成された既存防水層の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に保護片を配置する工程と、
前記保護片の上に接着片を配置する工程と、
前記保護片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固定板を用いた防水シート固定構造、防水シート固定工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上や屋根等に防水シートを施工する際、下地に防水シートを固定する方法として接着剤を用いる接着工法と固定板を用いた機械的固定工法とがある。機械的固定工法の一つである後付け工法は、下地の上に防水シートを敷設し、その防水シートの上に樹脂層を被覆した鋼板等からなる固定板(ディスク)を配置したのちに固定板の上からビスを打ち込むことで、防水シートを下地に固定する工法である。
【0003】
後付け工法では防水シートをビスが貫通するため、防水機能を維持するために固定板とその周囲の防水シートを覆うようにパッチ状の防水部材を配置して、防水部材と固定板の樹脂層および周囲の防水シートとを熱風溶接機や溶着剤を用いて溶融着する。特許文献1には、機械的固定による防水工法において、強風に対するさらなる安全性を確保すると共に後付け工法で使用可能なシート固定装置を課題とし、防水シートを貫通して下地に対し固定されるディスクとアンカー部材からなる固定部材と、固定部材と防水シートとの間に配置される緩衝材と、固定部材を覆い防水シートに固定される防水部材とを備えるシート固定装置が開示されている。
【0004】
上記のシート固定装置による防水工法においては、防水部材であるパッチの下面を防水シート(及びディスク)上に熱融着又は溶剤を用いて溶着する工程があり、いずれにおいても手作業でパッチを溶融着するため作業に時間がかかり、シート固定装置を設置するための作業時間のおよそ半分はパッチの溶融着作業が占めていた。実際の施工現場においては複数の固定装置を使用する為、作業に多くの時間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-034825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的固定工法の後付け工法における作業時間を短縮可能な防水シート固定構造および防水シート固定工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明が用いた手段は、以下に示す防水シート固定構造および防水シート固定方法である。
【0008】
[1] 下地の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される接着片と、
前記防水シートの上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートは前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【0009】
[2] 下地の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される保護片と、
前記保護片の上に配置される接着片と、
前記保護片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートおよび前記保護片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【0010】
[3] 前記防水シートの上面と前記保護片の下面とが接合されている[2]に記載の防水シート固定構造。
【0011】
[4] 前記固定板の上面と前記防水片の下面とが接合されている[1]~[3]に記載の防水シート固定構造。
【0012】
[5] 前記固定板は上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなる[4]に記載の防水シート固定構造。
【0013】
[6] 前記固定板が前記接着片の下に配置されており、前記固定板の上面と前記防水片の下面とが前記接着片により接着されている[1]~[3]に記載の防水シート固定構造。
【0014】
[7] 前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる[1]~[3]に記載の防水シート固定構造。
【0015】
[8] 前記防水シートおよび前記防水片は熱可塑性樹脂製シートからなる[1]~[3]に記載の防水シート固定構造。
【0016】
[9] 前記保護片は熱可塑性樹脂製シートからなる[2]または[3]に記載の防水シート固定構造。
【0017】
[10] 前記下地と、前記防水シートとの間に断熱材を備える[1]~[3]に記載の防水シート固定構造。
【0018】
[11] 下地の上に形成された既存防水層の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される接着片と、
前記防水シートの上に配置される固定板と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートは前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【0019】
[12] 下地の上に形成された既存防水層の上に敷設される防水シートと、
前記防水シートの上に配置される保護片と、
前記保護片の上に配置される接着片と、
前記保護片の上に配置される固定板と、
前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に固定される固定具と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って配置される防水片と、を備え、
前記防水シートおよび前記保護片は前記固定板および前記固定具により前記下地に固定されており、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とが前記接着片により接着されている、防水シート固定構造。
【0020】
[13] 下地の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に接着片を配置する工程と、
前記防水シートの上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【0021】
[14] 下地の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に保護片を配置する工程と
前記保護片の上に接着片を配置する工程と、
前記保護片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【0022】
[15] 前記防水シートの上面と前記保護片の下面とを接合する工程を備える、[14]に記載の防水シート固定工法。
【0023】
[16] さらに前記固定板の上面と前記防水片の下面とを接合する工程を備える[13]~[15]に記載の防水シート固定工法。
【0024】
[17] 前記固定板は上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなり、前記固定板を誘導加熱により加熱することで前記固定板の上面と前記防水片の下面とを接合する[16]に記載の防水シート固定工法。
【0025】
[18] 前記固定板を前記接着片の下に配置して、さらに前記固定板の上面と前記防水片の下面とを前記接着片により接着する工程を備える[13]~[15]に記載の防水シート固定工法。
【0026】
[19] 前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなり、前記接着片を誘導加熱により加熱することで前記接着片により接着する工程とする[13]~[15]に記載の防水シート固定工法。
【0027】
[20] 前記接着片は両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなり、前記接着片を誘導加熱により加熱することで前記接着片により接着する工程とする[18]に記載の防水シート固定工法。
【0028】
[21] 下地の上に形成された既存防水層の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に接着片を配置する工程と、
前記防水シートの上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記防水シートが前記接着片を介して接しており、前記防水シートの上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【0029】
[22] 下地の上に形成された既存防水層の上に防水シートを敷設する工程と、
前記防水シートの上に保護片を配置する工程と、
前記保護片の上に接着片を配置する工程と、
前記保護片の上に固定板を配置する工程と、
前記固定板の上から固定具を前記固定板および前記防水シートを貫通して前記下地に打ち込み固定し、前記防水シートを前記固定板および前記固定具により前記下地に固定する工程と、
前記接着片および前記固定板の上に亘って防水片を配置する工程とを備え、
前記防水片、前記保護片および前記接着片は前記固定板より大きい外周を有し、前記固定板の外周より外側に位置する前記防水片の外周縁と前記保護片が前記接着片を介して接しており、前記保護片の上面と前記防水片の外周縁の下面とを前記接着片により接着する工程とを備える、防水シート固定工法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、機械的固定工法の後付け工法における作業時間を短縮可能な防水シート固定構造および防水シート固定工法とすることができる。すなわち、従来の後付け工法において防水シートの固定部分を防水片で覆うとともに防水片の下面を防水シートの上面に溶融着することに時間を要していたのに対し、防水片と防水シート(または防水シート上に配置された保護片)の間に接着片を介在させ、接着片により防水片の外周縁の下面を防水シート(または保護片)の上面に接着することで容易に施工ができるようになり、施工時間が短縮される。
【0031】
また、固定板の上面と防水片の下面とが接合されているか、もしくは接着片により接着されていることで、より高い水密性を有する防水シート固定構造とすることができる。さらに前記接着片として両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔を採用することにより誘導加熱による接着が可能となり、施工時間の短縮が図れるとともに、より強固な防水シート固定構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
図2】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
図3】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
図4】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
図5】本発明の防水シート固定構造の他の実施形態の部分断面図である。
図6】本発明の防水シート固定構造に用いる接着片と固定板の実施形態を説明する斜視図である。
図7】本発明の防水シート固定構造に用いる防水片の実施形態を説明する平面図および断面図である。
図8】従来の防水シート固定構造の一実施形態の部分断面図である。
図9】本発明の防水シート固定構造による改修構造の一実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
本発明の防水シート固定構造は、屋上等の防水工事を行う下地の上に機械的固定工法の後付け工法によって防水シートが施工されるものである。図8は従来の後付け工法における防水シート固定構造の例である。一般的に下地1´の上に敷設された防水シート2´の上に、ディスクと呼ばれる円盤状の固定板4´が間隔を置いて複数配置され、各ディスクはビスなどの固定具5´をディスクの上から防水シートを貫通させて下地に打ち込むことにより下地に固定されており、防水シートはディスク(固定板4´)とビス(固定具5´)によって部分的に固定されている。固定板4´が鋼板など金属製である場合には、図8のように防水シート2´の表面を傷つけないよう、防水シート2´の上に固定板4´を配置する際に保護片7´を介する場合もある。各ディスクと周辺の防水シートとを覆うようにパッチ状の防水片6´が配置され、この防水片6´の裏面と防水シート2´の上面(およびディスクの上面)とが溶着剤を用いた溶着や熱風溶接機による熱融着によって接合されており、固定部分の防水性能を保っている。さらに水密性向上のため防水片6´の端部がシール材8´によって覆われる。
【0035】
図1の実施態様により本発明の防水シート固定構造について説明する。
下地1の上に防水シート2が敷設され、防水シート2の上に接着片3が配置され、接着片3の上に固定板4が配置されている。接着片3は固定板4よりも外周が大きく成形されており、接着片3の上に固定板4を重ねて配置する際に、固定板4の外周より外側に接着片3の外周縁31の上面が露出するように固定板4が配置されている。固定具5は固定板4、接着片3および防水シート2を貫通して下地1に固定され、固定板4は固定具5により下地1に固定され、固定板4の下に配置されている防水シート2および接着片3は固定板4および固定具5によって下地1に固定されている。防水片6が防水シート2を覆う接着片3および固定板4の上に亘って配置されており、防水片6と防水シート2の重なり部分において、防水片6の外周縁の下面6aと防水シート2の上面2aとが接着片3の外周縁31により接着されている。本態様においては、防水片6の外周縁の下面6aと防水シート2の上面2aとが接着片3の外周縁31により接着されていれば、固定板4と防水片6の重なり部分において、固定板4の上面4aと防水片6の下面6bとは接合(または接着)されていなくてもよく、固定部分の水密性および固定強度をより高めるために固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとが接合(または接着)されていてもよい。
【0036】
図2図5は本発明の防水シート固定構造の他の実施形態を示すものである。
図2は下地1の上に防水シート2が敷設された上に保護片7が配置され、保護片7とその周囲の防水シート2の上に亘って接着片3が配置され、保護片7上の接着片3の上に固定板4が配置されている。なお接着片3および保護片7は固定板4よりも外周が大きく形成されている。固定具5は固定板4、接着片3、保護片7および防水シート2を貫通して下地1に固定され、固定板4は図1と同様に固定具5により下地1に固定され、保護片7は固定板4により下地に押さえられる防水シート2を保護する役割を有している。防水片6が防水シート2を覆う接着片3および固定板4の上に亘って配置されており、防水片6と防水シート2および保護片7との重なり部分において、防水片6の外周縁の下面6aと防水シート2の上面2aおよび保護片7の上面7aとが接着片3の外周縁31により接着されている。本態様において、固定板4と防水片6の重なり部分において、固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとは接合(または接着)されていなくてもよく、固定部分の水密性および固定強度をより高めるために固定板4の上面4aと防水片6の下面6bとが接合(または接着)されていてもよい。
【0037】
図3~5の実施形態においては、防水シート2の上面2aとその上に配置された保護片7の下面7bとが接合されている。例えば、防水シート2と保護片7が塩化ビニル系樹脂シートである場合、これらを溶着可能な溶剤を主成分とした溶着剤により接合される。接着片3と保護片7とはほぼ同径の外径を有しており、防水片6と防水シート2を覆う保護片7との重なり部分において、防水片6の外周縁の下面6aと保護片7の上面7aとが接着片3の外周縁31により接着されている。図4の実施形態においては、さらに防水片6の中央部の下面6bと固定板4の上面4aとが接着片3により接着されている。図5の実施形態においては、図6の(6-2)に示すような中央に固定板4とほぼ同径の孔を有した接着片3が使用されている。
【0038】
なお、本発明の防水シート固定構造において、下地1と防水シート2の間に絶縁シートを敷設してもよい。絶縁シートは、例えば下地1の不陸が大きい場合にその上に敷設する防水シート2を保護する目的で敷設される。また、建築物の断熱効果を上げるため、図5のように下地1と防水シート2の間に断熱材11を敷設することもできる。下地1と防水シート2の間には絶縁シートや断熱材などを必要に応じて敷設することができ、またこれらを併用することもできる。
【0039】
防水シート2について説明する。
防水シート2は長尺状のシートであり、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、防水シート2は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。防水シート2が、補強層が積層されたシートからなる場合は、施工時の固定強度がより向上するため好ましい。施工の際に防水片6の下面が防水シート2の上面に接着され、更に保護片7を配置する場合に防水シート2の上面と保護片7の下面とを接合する場合を考慮すると、防水シート2の上面は熱可塑性樹脂層もしくはゴム層が露出していることが好ましく、補強層は防水シート2の中間層として積層されていることが好ましい。
なお、防水片6も防水シート2と同様の材質、構造からなるシート片とすることができる。
【0040】
接着片3について説明する。
接着片3は防水片6と防水シート2との間や防水片6と保護片7との間に配置され、接着片3の外周縁31により防水片6の外周縁の下面6aと防水シート2の上面2aまたは保護片7の上面7aとを接着している。接着片3の形状は特に限定されず、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形のシートでもよく、防水片6と同様の形状であることが好ましい。接着片3の外周は防水片6とほぼ同程度であることが好ましく、一辺または外径が50mm~200mm程度とすることができる。接着片3の厚みは0.1~1.0mm程度が好ましく、0.1~0.4mm程度がより好ましい。
【0041】
また、接着片3には予め固定具5が打ち込まれるための厚み方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔は接着片3の中心部に設けられていることが好ましい。図6は本発明の防水シート固定構造の実施形態に使用されている接着片3および固定板4の斜視図である。図6(6-1)は図1図3の接着片3であり、平面円形状の略中央に固定具5が貫通する程度の貫通孔32が形成されている。図6(6-2)は図5の接着片3であり、平面円形状の中央部分に固定板4の外周と同程度の径の貫通孔32が形成されている。また図4のように接着片3に固定具5が打ち込まれない場合には貫通孔を設けなくてもよい。接着片3は少なくとも防水片6の外周縁の下面6aを覆うことができる形状であればよい。
【0042】
接着片3は防水片6の外周縁と防水シート2および/または保護片7とを接着できるものであればよく、例えば基材シートの両面に粘着剤層を有する各種両面テープを用いることができる。中でも防水性を有するアクリル系粘着剤やブチルゴム系粘着剤を使用した両面テープが好適である。また、接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合には、接着片3を誘導加熱することによって防水片6の外周縁と防水シート2および/または保護片7とを接着することができる。前記熱可塑性樹脂層としては各種熱可塑性樹脂からなるものであればよく、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル系樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、またエチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリオレフィン系、エラストマー系などのホットメルト接着剤なども利用できる。金属箔としてはアルミニウム、ニッケル、チタン、銅、鉄やこれらを含む合金、ステンレス、ニクロムなどを用いることができる。
【0043】
固定板4について説明する。
本発明の防水シート固定構造において、固定板4は防水シート2(および保護片7)の上に配置され固定具5により下地1に固定されることで防水シート2を下地1に対して押さえつけ、これにより防水シート2が下地1に部分的に固定された状態となる。固定板4はおおよそ平坦な薄板であり、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形であってもよいが、防水シート2(および保護片7)を下地5に押さえつける際に防水シート2(または保護片7)を傷つけにくく、固定構造としたときに、防水シート2が風に煽られた際に固定板4端部の一部に応力が集中することを避けるため、平面形状は円形が好ましく、さらに真円形であることが好ましい。固定板4の厚みは0.5mm~3.0mm程度であり、大きさは一辺または外径が30mm~100mm程度とすることができる。また、固定板4には固定具5が打ち込まれるための厚み方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔は固定板4の中心部に設けられていることが好ましい。また、貫通孔には固定具5の頭部を受け入れるための座掘りが設けられていてもよい。
【0044】
固定板4は薄板状の鋼板や合成樹脂などから成形することができ、強度の面から薄板鋼板が好適である。固定板4が薄板鋼板の場合、熱可塑性樹脂で表面が被覆されていてもよい。少なくとも上面が防水片6と同じ熱可塑性樹脂で被覆されている固定板4の場合、固定板4の上面(4a)と防水片6の下面(6b)とを接合することが可能となり、具体的には溶剤による溶着や熱風溶接機などによる加熱圧着での溶接固定が可能となる。また、固定板4が少なくとも上面が防水片6と同じ熱可塑性樹脂で被覆されている薄板鋼板の場合には、誘導加熱装置による誘導加熱により固定板4の上面と防水片6の下面とを接合することが可能となる。ここで熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル系樹脂やポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、またエチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリオレフィン系、エラストマー系などのホットメルト接着剤なども利用できる。
【0045】
固定具5について説明する。
固定具5は固定板4を下地1に留め付け固定するものであり、ビスやボルト、釘など下地1に打ち込むことのできるものであり、金属製のビスが好適に用いることができ、アンカービス、タッピングビス、ドリルビスなどを用いることができる。材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、固定板4の上面から頭部がはみ出ないように、ビスのビス頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。なお、固定具5としてアンカービスを使用する場合に、下地に穴を開けてアンカーを挿入した後、エポキシ樹脂系接着剤などの強化剤をアンカーに注入してからビスを打ち込むことで固定強度を向上させることができる。
【0046】
防水片6について説明する。
防水片6は、防水シート2と同様に例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、防水片6は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。防水片6が、補強層が積層されたシートからなる場合は、防水片6の中間層として積層されていることが好ましい。
【0047】
防水片6の形状は、固定板4より外周が大きいものであれば特に限定されず、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形のシートでもよく、固定板4と同様の形状であれば、固定板4の上に防水片6を配置する際に固定板4の中心と防水片6の中心とを重ねて配置することにより、防水シート2および/または保護片7と接着する防水片6の外周縁が均一に形成されやすく好ましい。
また、防水片6の厚みは防水シート2と同程度であることが好ましく、通常1mm~5mm程度の厚みである。厚みが薄すぎると十分な防水性能が得られず、厚みが厚すぎると防水シート固定構造の仕上がりが凸凹してしまい好ましくない。大きさは特に限定されないが、一辺または外径が50mm~200mm程度とすることができる。
【0048】
また、固定板4が防水シート2または防水シート2上の保護片7の上に配置固定された状態では、固定板4の厚み分、防水シート2の上面または保護片7の上面に対して段差が生じる。このため、防水片6で固定板4の上面と、固定板4の周囲の防水シート2の上面または保護片7の上面を隙間なく覆うために、防水片6の下面には固定板4が収まる空間を有していることが好ましい。図7に下面に固定板4が収まる空間を有した防水片6の一例を示した。図7の防水片6は円形のシート状であり、防水片6を上から見た平面図である(7-1)のa-a´の断面図を(7-2)に図示したものである。(7-2)を見ると、防水片6の中央部分が高く形成され、その下に固定板4が収まる空間があり、ハット状の断面をしている。このような防水片6を用いることにより、防水片6の外周縁と防水シート2および/または保護片7とを接着片3により接着する際に、隙間なく接着することができ、十分な水密性が得られるようになる。
【0049】
保護片7について説明する。
保護片7は防水シート2を固定板4で押さえる際に防水シート2を保護するとともに、保護片7の上面7aは防水片6の端縁部の下面6aと接着片3により接着される。保護片7は防水シート2,防水片6と同様に、例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニル共重合体など塩化ビニル樹脂系シート、ポリオレフィン、塩素化ポリエチレンなど熱可塑性エラストマー系シート、アクリル系シートといった熱可塑性樹脂製シートや、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどの加硫ゴム系/非加硫ゴム系といったゴム製シートなどからなり、それぞれ単層の均質シートからなるものや、これらを複合した積層シートからなるものでもよい。塩化ビニル樹脂系シートにおいては、可塑剤を含有した軟質シートが好ましい。また、保護片7は補強層が積層されたシートであってもよく、補強層としては例えばガラスクロスやポリエステルクロスなどの織布や、ガラス不織布やポリエステル不織布などの不織布が挙げられる。保護片7が、補強層が積層されたシートからなる場合は、保護片7の中間層として積層されていることが好ましい。
【0050】
保護片7の形状は、固定板4より外周が大きく、防水片6と同等またはこれより小さい外周のものであれば特に限定されず、平面形状が真円形や楕円形などの円形や四角形などの多角形のシートでもよく、固定板4と同様の形状であれば、保護片7の上に固定板4を配置する際に保護片7の中心と固定板4の中心とを重ねて配置することにより、防水片6と接着する保護片7の外周縁が均一に形成されやすく好ましい。
また、保護片7の厚みは防水シート2や防水片6と同程度であることが好ましく、通常1mm~5mm程度の厚みである。厚みが薄すぎると十分な防水性能が得られず、厚みが厚すぎると防水シート固定構造の仕上がりが凸凹してしまい好ましくない。大きさは特に限定されないが、一辺または外径が50mm~200mm程度とすることができる。また、保護片7には固定具5が打ち込まれるための厚み方向に貫通する貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔は保護片7の中心部に設けられていることが好ましい。
【0051】
下地1について説明する。
下地1は特に制限はなく、鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)、金属下地、木質下地などである。図1図4の実施形態では下地1はRC下地(1A)、図5の実施形態では下地1は金属下地(1B)である。
【0052】
本発明の防水構造においては、上記以外のものをさらに備えることができ、例えば絶縁シート、断熱材、無機質板などが挙げられる。これらは主に下地1と防水シート2との間に設けられ、不陸の解消や断熱性能、耐歩行性など付与するために備えられる。また、下地1に既存の防水層が形成されている場合にも本発明の防水構造を適用することが可能であり、そのような場合には既存防水層と新規防水層の間における可塑剤等の成分移行を防止するため、既存防水層の上に絶縁シートを設けることもできる。
【0053】
絶縁シートとしては、例えば柔軟性を有した発泡シート等が好適に用いられる。発泡シートとしては特に限定されないが、ポリエチレンなどのオレフィン系発泡シートなどを好適に用いることができる。また、前述のような発泡シートに補強層として不織布や織布などが積層されたものを絶縁シートとして使用することもでき、補強層である不織布や織布に用いられる繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。絶縁シートの厚みは通常0.5mm~2.0mm程度のものが使用できる。
【0054】
断熱材としては、例えばポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフォーム等が使用できる。なお、断熱材としてポリスチレンフォームを用いる際には、防水シート2の成分の移行を防ぐため、絶縁シートを間に敷設することが好ましい。断熱材の厚みは適宜選択でき、通常10mm~100mm程度のものが使用できる。
【0055】
無機質板としては、セメント板、スレート板、ケイカル板等が使用できる。厚みは適宜選択でき、通常5mm~30mm程度のものが使用できる。無機質板は主に断熱材の上に敷設され耐歩行性を向上するほか、図5のような山谷形状の金属下地の上に断熱材を敷設する際に下地の上に敷設され断熱材の踏み抜けを防止する効果がある。
【0056】
本発明の防水シート固定構造は、既存防水層の改修にも適用することができる。図9は本発明の防水シート固定構造による改修構造の一実施形態を示している。下地1の上に形成された既存防水層10の改修構造であり、既存防水層10の上に絶縁シート9が敷設され、絶縁シート9の上に防水シート2が配置されている。防水シート2の上に保護片7が配置され、保護片7の上に接着片3が配置され、接着片3の上に固定板4が配置されている。保護片7の下面と防水シート2の上面は接合され、固定具5は固定板4、接着片3、保護片7および防水シート2を貫通して下地1に固定され、固定板4は固定具5により下地1に固定されており、固定板4の下に配置されている接着片3、保護片7、防水シート2および絶縁シート9は固定板4および固定具5によって下地1に固定されている。保護片7および固定板4の上に亘って防水片6が配置されており、防水片6と保護片7の重なり部分において、防水片6の外周縁の下面6aと保護片7の上面7aとが接着片3により接着されている。固定板4と防水片6の重なり部分において、固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bは接着(または接合)されていなくてもよく、防水片6の固定強度と水密性をより高めるために固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとが接着(または接合)されていてもよい。図9の実施形態において既存防水層10は接着剤により下地1に固定された塩化ビニル系防水シートであり、防水シート2の成分移行を防ぐために間に絶縁シート9が敷設されているが、既存防水層10の状態や種類によっては絶縁シート9が敷設されていなくてもよい。
【0057】
図1により本発明の防水シート固定工法について説明する。
まず、下地1の上に防水シート2を敷設する。この防水シート2の上に接着片3を配置し、接着片3の上に固定板4を配置する。このとき、接着片3の外周より内側に固定板4が配置されるようにし、固定板4の全外周より外側に接着片3の外周縁31が露出するように配置することが好ましい。また、接着片3および固定板4の中心が重なるように配置することが好ましい。
【0058】
次に固定板4の上から固定具5を固定板4、接着片3および防水シート2を貫通して下地1に打ち込み固定する。固定具5により固定板4は下地1に固定され、防水シート2および接着片3は固定板4と固定具5により下地1に固定される。固定具5は下地1に打ち込み留め付ければよく、例えば下地1が金属下地や木質下地の場合には固定具5としてドリルビスを使用して下地1に直接打ち込み、下地1が図1のような鉄筋コンクリート(RC)やプレキャストコンクリート(PC)、軽量発泡コンクリート(ALC)の場合には固定具5としてアンカービスを使用し、予め下地1に形成した穴にアンカーを挿入後にビスをアンカーに打ち込み下地1に固定する。
【0059】
防水シート2は長尺状のシートであり、通常の施工においては、下地1の上に敷設された防水シート2の上に所定の間隔をあけて複数の接着片3と固定板4を配置し、全ての固定板4に対して上から固定具5を打ち込み下地1に固定する。複数の防水シートを敷設する場合は防水シート2と隣接する防水シート2とは端部同士を重ねて敷設する。
【0060】
次に接着片3及び固定板4の上に亘って防水片6を配置する。防水片6を配置した後、固定板4の外周より外側に配置される防水シート2の上面2aと、その上に重なる防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着する。接着片3が両面テープの場合には、防水シート2の上に接着片3を配置する際に防水シート2の上面に接着片3を貼着しておき、防水片6を配置した後に接着片3の外周縁31と防水片6の外周縁の下面6aとを貼合することで、防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3(の外周縁31)により接着することができる。また、接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合には、防水片6を配置した後に接着片3の外周縁31を防水片6の上から誘導加熱装置によって誘導加熱することにより、接着片3の両面の熱可塑性樹脂層を溶融して防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3の外周縁31により接着することができる。
【0061】
通常の施工において複数の防水シートを敷設した場合、防水シート2の上面2aと、その上に重なる防水片6の下面6aとを接着片3により接着した後に、防水シート2と隣接する防水シート2を重ねた端部同士を溶着剤により溶着または熱風溶接機を用いた加熱圧着により接合する。
【0062】
また、防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着するだけでなく、さらに固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合(または接着)してもよい。
【0063】
例えば図1の場合には固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合することができ、固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとの接合方法としては、固定板4の少なくとも上面が熱可塑性樹脂で被覆され、防水片6が熱可塑性樹脂製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いて溶着する方法や、加熱圧着による方法を用いることができる。この場合、固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとの接合は、防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着する前に行うことが好ましい。また固定板4が上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなる場合には、固定板4を誘導加熱装置により防水片6の上から誘導加熱することによって固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合することができ、この場合は防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着した後にも容易に接合ができ、さらに接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合は防水シート2の上面2aと防水片6の外周縁の下面6aとを誘導加熱により接着する工程と同時に行うことが可能である。さらに、防水片6と防水シート2との接合端部をシール材8で覆うことができ、接合部の水密性が高まり好ましい。
【0064】
図3の場合は、下地1の上に防水シート2を敷設した後、防水シート2の上に保護片7を配置し、保護片7の下面7bとこれに重なる防水シート2の上面2aとを溶着剤による溶着または加熱圧着による融着により接合する。この保護片7の上に保護片7とはほぼ同径の外径を有する接着片3を配置し、接着片3の上に接着片3より小さめの外径を有する固定板4を配置し、固定板4を固定具5により下地1に固定する。このとき、接着片3の外周より内側で、固定板4の全外周より外側に接着片3の外周縁31が露出するように固定板4を配置する。さらに、接着片3とほぼ同径の外径を有する防水片6を、接着片3及び固定板4の上に亘って配置する。防水片6を配置した後、固定板4の外周より外側に配置される保護片7の外周縁の上面7aと、その上に重なる防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着する。接着は図1の場合と同様に行うことができる。また、さらに固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合してもよく、前述の図1における接合方法により接合することができる。さらに、防水片6、保護片7および防水シート2の接合端部をシール材8で覆うことができる。
【0065】
図4の場合は、下地1の上に防水シート2を敷設した後、防水シート2の上に保護片7を配置し、保護片7の下面7bとこれに重なる防水シート2の上面2aとを溶着剤による溶着または加熱圧着による融着により接合する。この保護片7の上に保護片7より小さめの外径を有する固定板4を配置し、固定板4を固定具5により下地1に固定する。続いて保護片7および固定板4の上に亘って接着片3を配置し、接着片3の上に防水片6を配置する。固定板4の外周より外側に配置される保護片7の外周縁の上面7aとその上に重なる防水片6の外周縁の下面6a、さらに固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接着片3により接着する。接着片3が両面テープの場合には、保護片7および固定板4の上に接着片3を配置する際に保護片7および固定板4の上面に接着片3を貼着しておき、防水片6を配置した後に接着片3と防水片6の下面6a、6bとを貼合することができる。また、接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合には、防水片6を配置した後に接着片3を防水片6の上から誘導加熱装置によって誘導加熱することにより、接着片3の両面の熱可塑性樹脂層を溶融して接着することができる。
【0066】
なお、本発明の防水シート固定工法において、下地1の不陸が大きい場合には下地1の上に防水シート2を敷設する前に絶縁シートを敷設してもよい。また、建築物の断熱効果を上げるため、下地1の上に防水シート2を敷設する前に断熱材を敷設してもよい。下地1の上に防水シート2を敷設する前に絶縁シートや断熱材などを必要に応じて敷設することができ、またこれらを併用することもできる。
【0067】
本発明の防水シート固定工法は、既存防水層の改修にも適用することができる。図9により既存防水層の改修における防水シート固定工法について説明する。
【0068】
まず、既存防水層10の上に防水シート2を配置する。この際、既存防水層10への防水シート2の成分移行を防ぐ目的で、予め既存防水層10の上に絶縁シート9を敷設してもよい。次に防水シート2の上に保護片7を配置し、保護片7の下面7bとこれに重なる防水シート2の上面2aとを溶着剤による溶着または加熱圧着による融着により接合する。この保護片7の上に保護片7とはほぼ同径の外径を有する接着片3を配置し、接着片3の上に接着片3より小さめの外径を有する固定板4を配置し、固定板4の上から固定具5を固定板4、接着片3、保護片7および防水シート2を貫通して下地1に打ち込み固定し、固定板4を固定具5により下地1に固定する。このとき、接着片3の外周より内側で、固定板4の全外周より外側に接着片3の外周縁31が露出するように固定板4を配置する。
【0069】
続いて、接着片3とほぼ同径の外径を有する防水片6を、接着片3及び固定板4の上に亘って配置する。防水片6を配置した後、固定板4の外周より外側に配置される保護片7の外周縁の上面7aと、その上に重なる防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着する。接着片3が両面テープの場合には、保護片7の上に接着片3を配置する際に保護片7の上面に接着片3を貼着しておき、防水片6を配置した後に接着片3の外周縁31と防水片6の外周縁の下面6aとを貼合することで、保護片7の外周縁の上面7aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3(の端縁部31)により接着することができる。また、接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合には、防水片6を配置した後に接着片3の外周縁31を防水片6の上から誘導加熱装置によって誘導加熱することにより、接着片3の両面の熱可塑性樹脂層を溶融して保護片7の外周縁の上面7aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3の外周縁31により接着することができる。
【0070】
さらに固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合してもよい。固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとの接合方法としては、固定板4の少なくとも上面が熱可塑性樹脂やゴム等で被覆され、防水片6が熱可塑性樹脂製シートまたはゴム製シートからなる場合には、溶剤などの溶着剤を用いて溶着する方法や、加熱圧着による方法を用いることができる。この場合、固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとの接合は、保護片7の外周縁の上面7aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着する前に行うことが好ましい。また固定板4が上面に熱可塑性樹脂層を有する金属板からなる場合には、固定板4を誘導加熱装置により防水片6の上から誘導加熱することによって固定板4の上面4aと防水片6の中央部の下面6bとを接合することができ、この場合は保護片7の外周縁の上面7aと防水片6の外周縁の下面6aとを接着片3により接着した後にも容易に接合ができ、さらに接着片3が両面に熱可塑性樹脂層が積層された金属箔からなる場合は保護片7の外周縁の上面7aと防水片6の外周縁の下面6aとを誘導加熱により接着する工程と同時に行うことが可能である。さらに、防水片6、保護片7および防水シート2の接合端部をシール材8で覆うことができる。
【実施例0071】
以下、実施例により説明する。
本発明の防水シート固定工法と、従来の後付け工法による防水シート固定工法で施工試験を行い、作業時間を比較した。使用した部材を以下に示す。
【0072】
防水シート:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、中間層にガラスクロス積層
防水片I:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、外径105mmΦ、中間層にガラスクロス積層
上面中央に深さ1.0mm、60mmΦの凹部
防水片II:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、外径150mmΦ、中間層にガラスクロス積層
上面中央に深さ1.0mm、60mmΦの凹部
保護片I:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、外径105mmΦ、中間層にガラスクロス積層
中央部に13mmΦ貫通孔
保護片II:塩化ビニル樹脂系(軟質)シート
厚み1.5mm、外径85mmΦ、中間層にガラスクロス積層
中央部に13mmΦ貫通孔
接着片:両面ホットメルト系接着剤付きアルミシート
厚み:0.2mm、外径105mmΦ
固定板:塩化ビニル樹脂被覆鋼板(平板状、リブなし、両面被覆)
総厚み1.6mm(上層0.4mm:塩化ビニル樹脂、中間1.0mm:鋼板、下層0.2mm:塩化ビニル樹脂)
外径60mmΦ、中央部に6.2mmΦ貫通孔
固定具:プラグビス
ビス:長さ60mm、ビス径4.5mmΦ、頭部径10mmΦ(ステンレス製)
プラグ:長さ50mm、プラグ径6mmΦ(ナイロン製)
強化剤:エポキシ樹脂系接着剤
溶着剤:テトラヒドロフランとMEKの混合液(主成分:テトラヒドロフラン)
シール材:塩化ビニル樹脂系シール材
【0073】
<実施例>
以下の手順で下地に防水シートを固定し、1箇所あたりの作業時間を計測した。
(1)下地(RC)の上に敷設した防水シートの上に保護片Iを配置し、防水シートの上面と保護片Iの下面に刷毛で溶着剤を塗布し、圧着して保護片Iを溶着する。
(2)ドリルを使用し、保護片Iの上から下地にプラグを挿入するための穴を開け、穴の内部や周辺の切粉を取り除く。
(3)下地に開けた穴にプラグを挿入した後、プラグ上部より強化剤を注入する。
(4)保護片Iの上に接着片と固定板Iを順に配置し、固定板Iの上からビスをプラグに打ち込み下地に固定する。
(5)保護片Iの上の接着片と、接着片の上の固定板Iを覆うように防水片Iを配置し、防水片Iの上から誘導加熱装置により接着片を加熱して保護片Iの上面と防水片Iの下面とを接着片により接着する。
(6)防水シートと、保護片Iおよび防水片Iの端部とに亘ってシール材を塗布する。
【0074】
<比較例>
以下の手順で下地に防水シートを固定し、作業時間を計測した。
(1)下地(RC)の上に敷設した防水シートの上に保護片IIを配置し、防水シートの上面と保護片IIの下面に刷毛で溶着剤を塗布し、圧着して保護片IIを溶着する。
(2)ドリルを使用し、保護片IIの上から下地にプラグを挿入するための穴を開け、穴の内部や周辺の切粉を取り除く。
(3)下地に開けた穴にプラグを挿入した後、プラグ上部より強化剤を注入する。
(4)保護片IIの上に固定板IIを配置し、固定板IIの上からビスをプラグに打ち込み下地に固定する。
(5)固定板IIと周囲の防水シートとを覆うように防水片IIを配置し、固定板IIおよび周囲の防水シートの上面と防水片IIの下面を刷毛使用した溶剤溶着と熱風溶着機を使用した熱融着を併用して防水片IIを溶融着する。
(6)防水シートと、防水片IIの端部とに亘ってシール材を塗布する。
【0075】
実施例と比較例の各手順にかかった時間を表1に示す。なお、表1の数値の単位は秒である。
【0076】
【表1】
【0077】
表1より、実施例では比較例に比べ、1箇所あたり55秒の短縮となり、従来に比べて作業時間がおよそ2/3に短縮できることが分かった。従来法では防水片と固定板および防水シートとの溶融着に時間を要していたが、本発明では接着片による接着を採用することにより大幅な時間短縮が達成できた。
【0078】
また、上記実施例および比較例の防水シートの固定強度を測定したところ、実施例が3600[N]、比較例が3700[N]であり、固定強度はほぼ同等であった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の防水シート固定構造および防水シート固定工法は、械的固定工法の後付け工法における作業時間を短縮することができ、新設や改修の屋根防水に利用可能であり、特に建築物の屋上など広い面積の陸屋根の防水構造および防水工法として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 下地
2 防水シート
3 接着片
31 外周縁
32 貫通孔
4 固定板
41 貫通孔
5 固定具
6 防水片
7 保護片
8 シール材
9 絶縁シート
10 既存防水層
11 断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9