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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053962
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】防音扉及び防音扉装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/20 20060101AFI20240409BHJP
   E06B 7/23 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E06B5/20
E06B7/23 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160504
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】521461650
【氏名又は名称】合名会社もりまさ工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】岩本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 一之輔
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA05
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA07
2E036EB02
2E036EB04
2E036GA01
2E036HB14
2E239BB02
(57)【要約】
【課題】室内側の扉パネルの振動が室外側の扉パネルに伝わることを防ぐ。
【解決手段】矩形状の支持枠11と、支持枠11の開口部111の一方を覆う矩形状の主板部121と支持枠11の外側周面11aを取り囲む側壁部122とを有するとともに、支持枠11に支持される内パネル12と、支持枠11の開口部111の他方を覆う矩形状の主板部131と支持枠11の外側周面11aを取り囲む側壁部132とを有するとともに、支持枠11に支持される外パネル13と、支持枠11の外側周面11aに取り付けられ、内パネル12の側壁部122の内面122a及び外パネル13の側壁部132の内面132aに接して設けられる弾性部材14とを備え、内パネル12の側壁部122及び外パネル13の側壁部132は、互いに離れて配置され、弾性部材14に、内パネル12及び外パネル13によって挟まれた内部空間と内パネル12及び外パネル13の外部空間とを連通する複数の連通路141が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の支持枠と、
前記支持枠の開口部の一方を覆う矩形状の主板部と前記支持枠の外側周面を取り囲む側壁部とを有するとともに、前記支持枠に支持される内パネルと、
前記支持枠の開口部の他方を覆う矩形状の主板部と前記支持枠の外側周面を取り囲む側壁部とを有するとともに、前記支持枠に支持される外パネルと、
前記支持枠の前記外側周面に取り付けられ、前記内パネルの前記側壁部の内面及び前記外パネルの前記側壁部の内面に接して設けられる弾性部材とを備え、
前記内パネルの前記側壁部及び前記外パネルの前記側壁部は、互いに離れて配置され、
前記弾性部材に、前記内パネル及び前記外パネルによって挟まれた内部空間と前記内パネル及び前記外パネルの外部空間とを連通する複数の連通路が形成されている、防音扉。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記側壁部の前記内面に接する接触面を有するとともに、前記支持枠の開口部の一方側から他方側に延びて、前記接触面に形成された複数の溝を有しており、
複数の前記溝と前記側壁部の前記内面とが複数の前記連通路を構成する、請求項1記載の防音扉。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記支持枠の前記外側周面の全周に亘って取り付けられており、
複数の前記溝は、前記弾性部材の全周に亘って所定の間隔で形成されている、請求項2記載の防音扉。
【請求項4】
前記溝は、前記溝が延びる方向に対して垂直な断面が矩形状をなしたものであり、
前記断面の底辺は、1mm以上3mm以下であり、
前記断面の底辺と垂直な辺は、1mm以上1.5mm以下である、請求項2に記載の防音扉。
【請求項5】
前記溝が延びる方向と前記内パネルの前記主板部とがなす角は、45度以上90度以下である、請求項4記載の防音扉。
【請求項6】
室外に音が伝わることを防ぐ防音室に取り付けられる防音扉装置であって、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の防音扉と、
閉止状態において前記内パネル及び前記外パネルを取り囲む矩形枠状の扉枠体と、
前記扉枠体に取り付けられ、閉止状態において前記内パネルの前記主板部の周縁に密着する矩形枠状の弾性パッキン部材と、
前記扉枠体に対し前記内パネル及び前記外パネルを回転可能にヒンジ結合するヒンジ部材とをさらに備え、
前記ヒンジ部材は、
前記内パネルの前記側壁部及び前記外パネルの前記側壁部との上下方向に亘って取り付けられる第1取付部材と、
前記扉枠体の上下方向に亘って取り付けられ、前記第1取付部材とヒンジ結合される第2取付部材とを備える防音扉装置。
【請求項7】
室外に音が伝わることを防ぐ防音室に取り付けられる防音扉装置であって、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の防音扉と、
前記防音扉よりも前記防音室側に配置される矩形状の第2扉とをさらに備える防音扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音扉及び防音扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内で音が発生すると、その音は、部屋に備えられた扉を介して室外へ漏れてしまうことがある。そこで従来、室内で発生した音が室外に漏れることを防止するために様々な防音扉が提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す防音扉は、矩形の開口部枠と、開口部枠に取り付けられたヒンジ部材と結合して開口部枠の内側に設けられる扉パネルと、閉鎖時に扉パネルの周縁部に密着するパッキングとを備えている。この防音扉は、閉鎖時に扉パネルの周縁部とパッキングとが密着することによって、扉パネルとパッキングとの隙間から音が室外に漏れ出ることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-107662号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記のような防音扉は、室内側の扉パネルの振動によって室外に音が伝わることを考慮していない。すなわち、上記の防音扉は、音が室内側の扉パネルに伝わって室内側の扉パネルが振動すると、室内側の扉パネル及び室外側の扉パネルの間の内部空間で圧力変化が生じ、内部空間において圧力が高まる。そして、高まった圧力が室外側の扉パネルに伝わって、室外側の扉パネルが振動すると、室外に音が伝わってしてしまう。その結果、上記のような防音扉では、室外に音が伝わることを防ぐ防音性能を十分に提供することができない。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、室内側の扉パネルの振動によって室外に音が伝わることを防ぐことを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る防音扉は、矩形状の支持枠と、前記支持枠の開口部の一方を覆う矩形状の主板部と前記支持枠の外側周面を取り囲む側壁部とを有するとともに、前記支持枠に支持される内パネルと、前記支持枠の開口部の他方を覆う矩形状の主板部と前記支持枠の外側周面を取り囲む側壁部とを有するとともに、前記支持枠に支持される外パネルと、前記支持枠の前記外側周面に取り付けられ、前記内パネルの前記側壁部の内面及び前記外パネルの前記側壁部の内面に接して設けられる弾性部材とを備え、前記内パネルの前記側壁部及び前記外パネルの前記側壁部は、互いに離れて配置され、前記弾性部材に、前記内パネル及び前記外パネルによって挟まれた内部空間と前記内パネル及び前記外パネルの外部空間とを連通する複数の連通路が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような防音扉であれば、内パネルの側壁部及び外パネルの側壁部が互いに離れて配置されているので、内パネルに伝わる振動がその側壁部を介して外パネルの側壁部に直接伝播しない構成となる。そして、弾性部材がこれら側壁部の内面に接して設けられるので、内パネルに伝わる振動が弾性部材で吸収され、内パネルの側壁部から外パネルの側壁部へと伝播しにくい。
また、弾性部材には、内部空間と外部空間とを連通する複数の連通路が形成されているので、内部空間の圧力が変化した場合に空気が連通路を介して内部空間に出入りすることになる。そのため、内パネルに伝わる振動による内部空間の空気の振動を低減できる。その結果、内パネルに伝わる振動が内部空間の空気を介して外パネルに伝播しにくい。
ここで、低周波領域の音は、主として、内パネルから内部空間を介して外パネルに伝播しやすい性質を有する。本発明では、連通路による空気の出入りによって、内部空間の空気の振動が低減されることから、低周波領域の音に対して優れた防音性能を有する。
一方、高周波領域の音は、連通路内の空気を伝播する途中で、当該連通路の内面で反射して減衰されることから、本発明は高周波領域の音に対して優れた防音性能を有する。
【0009】
前記防音扉は、前記側壁部の前記内面に接する接触面を有するとともに、前記支持枠の開口部の一方側から他方側に延びて、前記接触面に形成された複数の溝を有しており、複数の前記溝と前記側壁部の前記内面とが複数の前記連通路を構成することが望ましい。
【0010】
このような構成であれば、側壁部の内面に接する接触面に、支持枠の開口部の一方側から他方側に延びた複数の溝が形成されるので、内パネルの側壁部と外パネルの側壁部の間に亘って連通路の開口が形成される。したがって、連通路の開口を大きくすることができ、連通路を介して空気が出入りしやすくなる。
【0011】
前記弾性部材は、前記支持枠の前記外側周面の全周に亘って取り付けられており、複数の前記溝は、前記弾性部材の全周に亘って所定の間隔で形成されていることが好ましい。
【0012】
このような構成であれば、連通路が弾性部材の外側周面の全周に亘って設けられることになる。その結果、空気が出入りする流路が多くなり、内パネルに伝わる振動による内部空間の空気の振動をより一層低減できる。
【0013】
前記溝は、前記溝が延びる方向に対して垂直な断面が矩形状をなしたものであり、前記断面の底辺は、1mm以上3mm以下であり、前記断面の底辺と垂直な辺は、1mm以上1.5mm以下であることが望ましい。
【0014】
このような構成であれば、溝が延びる方向に対して垂直な断面が矩形状であるので、断面が例えば円形状又はハニカム形状の場合と比べて、弾性部材の接触面と側壁部の内面と接する領域を小さくすることができる。また、溝の断面をなす辺が上記の数値の範囲内である場合、2500Hzから10000Hzといった高周波領域の音では、音が溝に反射する回数が特に多くなるので、高周波領域の音をより減衰させることができる。
ここで、溝の断面は、最大で底辺を3mm、底辺と垂直な辺を1.5mmとしている。これは、溝の断面が大きくなると、音が溝で反射する回数が減るので、音を減衰させにくくなるからである。また、溝の断面が大きくなると、内パネルの側壁部及び外パネルの側壁部との接地面積が小さくなりすぎるので、支持枠が内パネル及び外パネルを支持する力が弱くなるからである。
一方、溝の断面は、最小で底辺を1mm、底辺と垂直な辺を1mmとしている。これは、溝の断面が小さくなると、空気の粘性に起因して、音が連通路を通過しにくくなるので、連通路を介して圧力を逃すことができないからである。
【0015】
溝が延びる方向と内パネルの主板部とがなす角は、45度以上90度以下であることが好ましい。これは、溝が延びる方向と内パネルの主板部とがなす角が45度未満であると、音が連通路に入りにくくなり、音が内パネルの方へと戻されてしまい、所望の消音性能を発揮することができない。
【0016】
また、室外に音が伝わることを防ぐ防音室に取り付けられる防音扉装置は、前記防音扉と、閉止状態において前記内パネル及び前記外パネルを取り囲む矩形枠状の扉枠体と、前記扉枠体に取り付けられ、閉止状態において前記内パネルの前記主板部の周縁に密着する矩形枠状の弾性パッキン部材と、前記扉枠体に対し前記内パネル及び前記外パネルを回転可能にヒンジ結合するヒンジ部材とをさらに備え、前記ヒンジ部材は、前記内パネルの前記側壁部及び前記外パネルの前記側壁部との上下方向に亘って取り付けられる第1取付部材と、前記扉枠体の上下方向に亘って取り付けられ、前記第1取付部材とヒンジ結合される第2取付部材とを備えるものが挙げられる。
【0017】
このような防音扉であれば、ヒンジ部材を構成する第1取付部材及び第2取付部材が、それぞれ扉枠体及び内パネル、外パネルの上下方向に亘って取り付けられるので、内パネル及び外パネルの加重を第1取付部材及び第2取付部材の上下方向に均一に分散させることができる。その結果、扉枠体及びヒンジ部材の耐久性を向上させることができる。
【0018】
さらに、防音扉装置は、前記防音扉と、前記防音扉よりも前記防音室側に配置される矩形状の第2扉とをさらに備えるものが挙げられる。
【0019】
このような防音扉装置であれば、第2扉が防音扉よりも防音室側に配置されるので、防音室内で発生した音はまず第2扉で吸収される。その結果、防音扉の内パネルに伝わる音を減らすことができるので、外パネルの振動を抑えることができ、高い防音性能を有することができる。また、第2扉が吸収する周波数領域の音を防音扉と異なる周波数領域にすることによって、防音扉装置が吸収する周波数領域を広げることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、室内側の扉パネルの振動によって室外に音が伝わることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る防音扉装置の斜視図である。
図2】同実施形態の防音扉の斜視図である。
図3】同実施形態の防音扉の分解斜視図である。
図4】同実施形態の防音扉の斜視拡大図である。
図5】同実施形態の防音扉の主板部と垂直な断面の部分拡大図である。
図6】同実施形態の防音扉の主板部と平行な断面の部分拡大図である。
図7】他の実施形態に係る防音扉装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る防音扉装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている場合がある。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0023】
<防音扉装置100の基本構成>
本実施形態の防音扉装置100は、防音室(不図示)に形成され、防音室の内部で発生した音が防音室の外部に伝わることを防ぐものである。
【0024】
具体的に防音扉装置100は、図1に示すように、防音扉10と、防音扉10が閉止された場合に防音扉10を取り囲む扉枠体20と、扉枠体20に取り付けられる弾性パッキン部材30と、扉枠体20に対し防音扉10を回転可能にヒンジ結合するヒンジ部材40とを備える。
【0025】
防音扉10は、矩形状の内パネル12及び外パネル13を有し、内パネル12は、外パネル13よりも防音室側に配置される。防音扉10の詳細な構成は後述する。
【0026】
扉枠体20は、防音扉10が閉止された場合に防音扉10を取り囲むものである。具体的に扉枠体20は、図1に示すように、閉止状態において内パネル12及び外パネル13の側面を囲む枠部材21と、弾性パッキン部材30が取り付けられるパッキン取付部材22とを備える。パッキン取付部材22は、矩形枠状をなしており、枠部材21に対して垂直に設けられる。
【0027】
弾性パッキン部材30は、防音扉10が閉止された場合に内パネル12に密着するものである。具体的に弾性パッキン部材30は、パッキン取付部材22に取り付けられ、防音扉10が閉止された場合に、内パネル12の周縁部に沿った矩形枠状をなしている。
【0028】
ヒンジ部材40は、防音扉10と扉枠体20とを回転可能にヒンジ結合して、防音扉10を開閉可能にするものである。具体的にヒンジ部材40は、図1に示すように、内パネル12及び外パネル13の側面の上下方向に亘って設けられる第1取付部材41と、扉枠体20の枠部材21の上下方向に亘って取り付けられ、第1取付部材41とヒンジ結合される第2取付部材42と、第1取付部材41及び第2取付部材42とをヒンジ結合するヒンジ結合部材43とを備える。
【0029】
<防音扉10の具体的構成>
次に、防音扉10の具体的構成について、図2図6を参照しつつ説明する。
【0030】
防音扉10は、図2に示すように、矩形状の支持枠11と、支持枠11に支持される内パネル12及び外パネル13と、支持枠11に取り付けられる弾性部材14とを備える。
【0031】
支持枠11は、内パネル12及び外パネル13を支持するものである。具体的に支持枠11は、図2及び図3に示すように、矩形枠状をなしており、枠の内側には概略矩形状の開口部111が形成されている。なお、支持枠11の材質は、例えばステンレスといった金属製の材料である。
【0032】
内パネル12は、支持枠11の開口部111の一方を覆う矩形平板状の主板部121と、支持枠11の外側周面11aを取り囲む側壁部122とを有する。なお、内パネル12の材質は、例えばステンレスといった金属製の材料である。主板部121は、支持枠11の開口部111よりも大きい矩形状をなしており、支持枠11から離れて配置される。具体的に主板部121の内面121aは、図5に示すように、支持枠11の開口部111に対して離れて配置されており、内面121aと開口部111との間に空間が形成されている。
【0033】
内パネル12の側壁部122は、主板部121の周縁部全体に亘って形成され、支持枠11の外側周面11aを取り囲んでいる。具体的に側壁部122は、図2図5に示すように、支持枠11の外側周面11aに対向する内面122aを有しており、内面122aは、外側周面11aの全周に亘って外側周面11aと平行に形成される。なお、主板部121の上下方向に沿って形成された側壁部122のうち、一方の側壁部122の上下方向に亘って、第1取付部材41が取り付けられている。
【0034】
外パネル13は、支持枠11の開口部111の他方を覆う矩形平板状の主板部131と、支持枠11の外側周面11aを取り囲む側壁部132とを有する。なお、外パネル13の材質は、例えばステンレスといった金属製の材料である。主板部131は、支持枠11の開口部111よりも大きい矩形状であり、支持枠11を介して内パネル12の主板部121と反対側に配置される。また、主板部131の内面131aは、図5に示すように、支持枠11の開口部111に対して離れて配置されており、内面131aと開口部111との間に空間が形成されている。
【0035】
外パネル13の側壁部132は、主板部131の周縁部全体に亘って形成され、支持枠11の外側周面11aを取り囲んでいる。具体的に側壁部132は、図2図5に示すように、支持枠11の外側周面11aに対向する内面132aを有しており、内面132aは、外側周面11aの全周に亘って外側周面11aと平行に形成される。なお、主板部131の上下方向に沿って形成された側壁部132のうち、一方の側壁部132の上下方向に亘って、第1取付部材41が取り付けられている。
【0036】
弾性部材14は、支持枠11の外側周面11aに取り付けられるとともに、内パネル12の側壁部122の内面122a及び外パネル13の側壁部132の内面132aに接して設けられるものである。具体的に弾性部材14は、図3図5に示すように、断面矩形状をなすものであり、支持枠11の外側周面11aに取り付けられる取付面14aと、側壁部122、132の内面122a、132aに接する接触面14bとを有する。本実施形態において、取付面14aは、図3に示すように、支持枠11の外側周面11aの全周に亘って設けられる。また、取付面14a及び接触面14bは、図5に示すように、互いに平行に形成されている。なお、本実施形態では、弾性部材14は例えば防振ゴムであるが、弾性を有するものであればよい。
【0037】
然して、内パネル12の側壁部122及び外パネル13の側壁部132は、互いに離れて配置される。具体的には、図2図4及び図5に示すように、内パネル12の側壁部122の端面122b及び外パネル13の側壁部132の端面132bは、所定の距離だけ平行に離れて配置される。本実施形態において、内パネル12の側壁部122の端面122bと外パネル13の側壁部132の端面132bとの間には、空間が形成されている。
【0038】
また、弾性部材14には、内パネル12及び外パネル13によって挟まれた内部空間と内パネル12及び外パネル13の外部空間とを連通する複数の連通路141が形成される。連通路141は、図4及び図5に示すように、内パネル12及び外パネル13の内部空間と側壁部122、132の端面122b、132bの間の空間とを連通している。
【0039】
具体的に弾性部材14には、支持枠11の開口部111の一方側から他方側に延びた複数の溝142が形成されている。具体的に複数の溝142は、図4及び図5に示すように、接触面14bにおいて、開口部111の内パネル12側から外パネル13側に亘って直線状に形成されている。その結果、複数の溝142と側壁部122、132の内面122a、132aとによって囲まれた空間が複数の連通路141を構成している。また、端面122b及び端面132bの間に亘って、連通路141の開口が形成されることになる。
【0040】
複数の溝142は、弾性部材14の全周に亘って所定の間隔で形成されている。具体的には複数の溝142は、図3~5に示すように、接触面14bの全周に亘って所定の間隔で形成されており、本実施形態において、隣り合う複数の溝142の間隔は2mmである。
【0041】
また、溝142は、図6に示すように、溝142が延びる方向と垂直な断面Sが矩形状をなしたものである。矩形状をなす辺のうち、断面Sの底辺S1は、1mm以上3mm以下であり、底辺S1と垂直な辺S2は、1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。本実施形態において、底辺S1は3mmであり、底辺S1と垂直な辺S2は1.5mmである。
【0042】
さらに、溝142は、内パネル12の主板部121から外パネル13の主板部131の方向に延びている。複数の溝142の延びる方向と内パネルの主板部121とがなす角は、45度以上90度以下であることが好ましく、本実施形態では、図5に示すように、その角度は90度である。
【0043】
<防音扉10の防音作用>
次に、本実施形態における防音扉10の防音作用について説明する。
【0044】
防音扉10を閉止して防音室内で音を発生させると、音は、内パネル12の主板部121に到達する。到達した音によって内パネル12の主板部121が振動すると、内部空間の空気が振動する。また、内パネル12の主板部121の振動が、内パネル12の側壁部122へと伝わる。
【0045】
側壁部122、132は互いに離れているので、内パネル12に伝わる振動は、その側壁部122を介して外パネル13の側壁部132に直接伝播しない。そして、弾性部材14がこれら側壁部122、132の内面122a、132aに接して設けられるので、内パネル12に伝わる振動が弾性部材14で吸収される。
【0046】
また、弾性部材14には、内部空間と外部空間とを連通する複数の連通路141が形成されているので、内部空間の圧力が変化した場合に空気が連通路141を介して内部空間に出入りすることになる。そのため、内パネル12に伝わる振動による内部空間の空気の振動が低減される。
【0047】
<本実施形態の効果>
本実施形態における防音扉10によれば、内パネル12の側壁部122及び外パネル13の側壁部132が互いに離れて配置されているので、内パネル12に伝わる振動が外パネル13の側壁部132に直接伝播しない構成となる。そして、弾性部材14が側壁部122、132に接して設けられるので、内パネル12に伝わる振動が弾性部材14で吸収され、内パネル12の側壁部122から外パネル13の側壁部132へと伝播しにくい。
また、弾性部材14には、内部空間と外部空間とを連通する複数の連通路141が形成されているので、内部空間の圧力が変化した場合に空気が連通路141を介して内部空間に出入りすることになる。そのため、内パネル12に伝わる振動による内部空間の空気の振動を低減できる。その結果、内パネル12に伝わる振動が内部空間の空気を介して外パネル13に伝播しにくい。
ここで、低周波領域の音は、主として、内パネルから内部空間を介して外パネルに伝播しやすい性質を有する。本実施形態の防音扉10では、連通路141による空気の出入りによって、内部空間の空気の振動が低減されることから、低周波領域の音に対して優れた防音性能を有する。特に125Hz付近といった低周波領域の音に対して、高い防音性能を有する。
一方、高周波領域の音は、連通路141内の空気を伝播する途中で、当該連通路141の内面で反射して減衰されることから、本実施形態の防音扉10は、高周波領域の音に対して優れた防音性能を有する。
【0048】
また、側壁部122、132の内面122a、132aに接する接触面14bに、支持枠11の開口部111の一方側から他方側に延びた複数の溝142が形成されるので、内パネル12の側壁部122と外パネル13の側壁部132の間に亘って連通路141の開口が形成される。したがって、連通路141の開口を大きくすることができ、連通路141を介して空気が出入りしやすくなる。
【0049】
また、連通路141が弾性部材14の接触面14bの全周に亘って設けられることになる。その結果、空気が出入りする流路が多くなり、内パネル12に伝わる振動による内部空間の空気の振動をより一層低減できる。
【0050】
さらに防音扉10は、ヒンジ部材40を構成する第1取付部材41及び第2取付部材42が、それぞれ扉枠体20及び内パネル12、外パネル13の上下方向に亘って取り付けられるので、防音扉10の加重を第1取付部材41及び第2取付部材42の上下方向に均一に分散させることができる。その結果、扉枠体20及びヒンジ部材40の耐久性を向上させることができる。
【0051】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0052】
本実施形態において、弾性部材14は、側壁部122、132の内面122a、132aに沿った接触面14bを有していたが、接触面14bが側壁部122、132と接する面はこれに限られない。例えば、接触面14bは、側壁部122、132の内面122a、132a及び端面122b、132bに接していてもよい。また、接触面14bは、側壁部122、132の内面122a、132aの一部と接していてもよい。
【0053】
本実施形態において、溝142は、側壁部122、132の内面122a、132aに沿って形成されていたが、これに限られない。例えば、弾性部材14の接触面14bが、側壁部の内面122a、132a及び端面122b、132bの何れにも接している場合、溝142は、その接触面に沿って形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態において、弾性部材14は、支持枠11の外側周面11aの全周に亘って設けられていたが、外側周面11aの一部に設けられていてもよい。また、複数の溝142は、弾性部材14の全周に亘って設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。
【0055】
本実施形態において、溝142が延びる方向に対して垂直な断面は、矩形状をなしていたが、断面は矩形状に限られない。例えば、断面の形状は、円形状、ハニカム形状であってもよい。
【0056】
本実施形態において、支持枠11には開口部111が形成されていたが、開口部111に、内パネル12から伝わる音を吸収する吸音部材を設ける構成としてもよい。この場合、内パネル12の内面121aの音は、吸音部材によって吸収されるので、外パネル13に伝わる振動をより防ぐことができる。
【0057】
また、防音扉装置100は、図7に示すように、防音扉10よりも防音室側に配置される矩形状の第2扉51をさらに備えてもよい。この場合、防音扉装置100は、本実施形態の防音扉装置100と同様に、第2扉枠体52、第2弾性パッキン部材53、及び、第2ヒンジ部材54をさらに備えるものとしてもよい。第2扉51は、例えばグラスウールといった防音性能の高い材料で構成される。また、図7に示すように、第2扉51の両側面にドアノブDが取り付けられている。なお、第2扉枠体52は、防音扉装置100の扉枠体20と一体に形成されていてもよい。
【0058】
この場合、防音室内で発生した音は、まず第2扉51に伝わる。その結果、防音扉10の内パネル12に伝わる音が小さくなるので、防音扉装置100の防音性能を向上させることができる。また、第2扉51が低周波領域の音をより吸収する材料で構成されている場合、防音扉10は、特に高周波領域の音を吸収するので、異なる周波数領域の音を吸収することができる。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
100 ・・・防音扉装置
10 ・・・防音扉
11 ・・・支持枠
111 ・・・開口部
11a ・・・外側周面
12 ・・・内パネル
121 ・・・主板部
122 ・・・側壁部
122a・・・内パネルの側壁部の内面
13 ・・・外パネル
131 ・・・主板部
132 ・・・側壁部
132a・・・外パネルの側壁部の内面
14 ・・・弾性部材
141 ・・・連通路
14b ・・・接触面
142 ・・・溝
20 ・・・扉枠体
30 ・・・弾性パッキン部材
40 ・・・ヒンジ部材
41 ・・・第1取付部材
42 ・・・第2取付部材
51 ・・・第2扉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7