(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053981
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】銅粒子の製造方法、導電性ペースト及び基板
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20240409BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240409BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240409BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240409BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20240409BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240409BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240409BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240409BHJP
C22C 9/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B22F9/24 B
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F1/05
B22F7/04 D
H01B1/22 A
C08K3/08
C08L101/00
C22C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160534
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】石田 怜司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 千里
【テーマコード(参考)】
4J002
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB011
4J002AC031
4J002AF021
4J002BB241
4J002BD031
4J002BD121
4J002BE021
4J002BE061
4J002BF021
4J002BG021
4J002BG131
4J002BK001
4J002BL011
4J002CC031
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF001
4J002CH031
4J002CH091
4J002CK011
4J002CK021
4J002CL001
4J002CP031
4J002DA076
4J002FD116
4J002GQ02
4K017AA03
4K017AA08
4K017BA05
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K017EJ01
4K017EJ02
4K017FB01
4K017FB03
4K017FB04
4K017FB11
4K018AA03
4K018BA02
4K018BB04
4K018BD04
4K018JA25
4K018KA33
5G301DA06
5G301DA42
5G301DD01
5G301DD02
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】焼成開始温度が高温であり、一次粒子径が大きな銅粒子の含有量を低減できる銅粒子の製造方法、それを用いた導電性ペースト及び基板を提供する。
【解決手段】分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程と、を含む銅粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、
2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、
前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程と、を含む銅粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤を除去する工程では、前記銅粒子分散液(A)のpHが7.0以上14.0以下である銅粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤は、ゼラチン、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム、デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、クエン酸、アニリン、アニリンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、銅粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤は、ゼラチンを含む銅粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物を分散する工程では、前記銅化合物を100質量部としたとき、前記分散剤の含有量が0.1質量部以上3.0質量部以下である銅粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅粒子分散液(A)を得る工程は、
前記銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程と、
前記銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程と、を含む銅粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物分散液(B)を得る工程では、前記溶媒を10℃以上70℃以下に加熱する銅粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物分散液(B)を得る工程では、還元剤がアスコルビン酸を含む銅粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子は、炭素含有率が0.1質量%以上2.5質量%以下である銅粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子のD90粒子径が0.1μm以上5.0μm以下である銅粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子のD50粒子径が0.05μm以上5.0μm以下である銅粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の銅粒子の製造方法により得られた銅粒子を含む導電性ペースト。
【請求項13】
請求項12に記載の導電性ペーストまたは前記導電性ペーストの焼結体を含む基板。
【請求項14】
低温焼成積層セラミックス基板である請求項13に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅粒子の製造方法、導電性ペースト及び基板に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成積層セラミックス基板(LTCC基板)は、配線導体とセラミックス基板を同時焼成して作る基板である。LTCC基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、高周波回路において良好な周波数特性を示すことから、車載向け電子基板用途でよく使用されている。
【0003】
銅粒子の導電性ペーストは広く使用されている。銅粒子の製造方法に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2011-052284号)や特許文献2(特開2020-050888号)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、金属化合物が溶解あるいは分散している液中で、ゼラチンの存在下、前記金属化合物が持つ金属イオンを還元することにより、金属微粒子を得る方法において、前記ゼラチンの種類を選択することによって前記金属微粒子の粒子径を制御することを特徴とする、金属微粒子の製造方法によれば、所望の平均粒子径に制御された金属微粒子を簡便に製造することができることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、湿式法によって製造された銅粉を、pH8~14のアルカリ水溶液、又はpH0~4の酸水溶液と接触させる、pH処理工程、を含む、易解砕性銅粉の製造方法によれば、乾燥ケーキからの解砕と分級の工程の負担を低減しつつ、二次粒子の残存が十分に低減された、易解砕性の銅粉を得ることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-052284号公報
【特許文献2】特開2020-050888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
LTCC基板は、配線導線とセラミックス基板を同時に焼成するため、配線導線に用いられる銅粒子は焼結開始温度が高温であることが求められている。
また、LTCC基板の小型化に伴い、導電性ペーストに使用する銅粒子は、一次粒子径が大きな銅粒子の存在割合が低いことが求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、焼成開始温度が高温であり、一次粒子径が大きな銅粒子の含有量を低減できる銅粒子の製造方法、その銅粒子を用いた導電性ペースト及び基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程とを含むことにより、得られる銅粒子の焼成開始温度が高温であり、一次粒子径が大きな銅粒子の含有量を低減できることを見出して、本発明を完成させた。
【0010】
[1]分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、
2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、
前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程と、を含む銅粒子の製造方法。
[2]前記[1]に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤を除去する工程では、前記銅粒子分散液(A)のpHが7.0以上14.0以下である銅粒子の製造方法。
[3]前記[1]または[2]に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤は、ゼラチン、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム、デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、クエン酸、アニリン、アニリンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含む、銅粒子の製造方法。
[4]前記[3]に記載の銅粒子の製造方法において、
前記分散剤は、ゼラチンを含む銅粒子の製造方法。
[5]前記[1]~[4]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物を分散する工程では、前記銅化合物を100質量部としたとき、前記分散剤の含有量が0.1質量部以上3.0質量部以下である銅粒子の製造方法。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅粒子分散液(A)を得る工程は、
前記銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程と、
前記銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程と、を含む銅粒子の製造方法。
[7]前記[6]に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物分散液(B)を得る工程では、前記溶媒を10℃以上70℃以下に加熱する銅粒子の製造方法。
[8]前記[6]または[7]に記載の銅粒子の製造方法において、
前記銅化合物分散液(B)を得る工程では、還元剤がアスコルビン酸を含む銅粒子の製造方法。
[9]前記[1]~[8]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子は、炭素含有率が0.1質量%以上2.5質量%以下である銅粒子の製造方法。
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子のD90粒子径が0.1μm以上5.0μm以下である銅粒子の製造方法。
[11]前記[1]~[10]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法において、
得られる銅粒子のD50粒子径が0.05μm以上5.0μm以下である銅粒子の製造方法。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の銅粒子の製造方法により得られた銅粒子を含む導電性ペースト。
[13]前記[12]に記載の導電性ペーストまたは前記導電性ペーストの焼結体を含む基板。
[14]低温焼成積層セラミックス基板である前記[13]に記載の基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、焼成開始温度が高温であり、一次粒子径が大きな銅粒子の含有量を低減できる銅粒子の製造方法、その銅粒子を用いた導電性ペースト及び基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
[銅粒子の製造方法]
本実施形態の銅粒子の製造方法は、分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程と、を含むものである。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0014】
(分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程)
分散剤の存在下、2価の銅化合物を分散する工程は、水等の溶媒に対して、2価の銅化合物を添加、攪拌し、さらに分散剤を添加することにより行われる。
【0015】
2価の銅化合物は、例えば、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、硝酸銅等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができ、好ましくは硫酸銅を用いることができる。
【0016】
分散剤は、例えば、ゼラチン、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系分散剤;アラビアゴム等の天然ゴム系分散剤;デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ等の天然高分子系分散剤;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース系分散剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系分散剤;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム等のアクリル酸系分散剤;ステアリン酸等の高級脂肪酸系分散剤;ポリエチレングリコール等の合成高分子系分散剤;クエン酸等の多価カルボン酸系分散剤;アニリンまたはそれらの誘導体等からなる分散剤;からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであり、好ましくは、ゼラチン、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム、デンプン、デキストリン、寒天、アルギン酸ソーダ、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸アンモニウム、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、クエン酸、アニリン、アニリンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであり、さらに好ましくは、ゼラチン、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むものであり、さらに好ましくはゼラチンを含むものである。
【0017】
分散剤として用いられるゼラチンは、牛や豚などの哺乳動物の骨、皮部分や、サメやティラピアなどの魚類の骨、皮、鱗部分などのコラーゲンを含有する原料から得られたゼラチン等が挙げられる。
【0018】
本実施形態の分散剤として用いられるゼラチンの重量平均分子量は、銅粒子の分散性を向上させる観点から、好ましくは25,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは75,000以上、さらに好ましくは100,000以上であり、そして、分散液のハンドリング性を向上させる観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、さらに好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。
ここで、ゼラチンの重量平均分子量はパギイ法により測定される値である。
【0019】
本実施形態の分散剤として用いられるゼラチンの数平均分子量は、銅粒子の分散性を向上させる観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、そして、分散液のハンドリング性を向上させる観点から、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。
ここで、ゼラチンの数平均分子量はパギイ法により測定される値である。
【0020】
銅化合物を分散する工程では、銅化合物を100質量部としたとき、分散剤の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。分散剤の含有量が、上記範囲内であると、銅粒子の分散性が向上し、得られる銅粒子の炭素含有率を好適な範囲にしやすいため好ましい。
【0021】
(銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程)
銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程は、分散剤の存在下、2価の銅化合物を分散する工程により得られる分散液に対して、還元剤を添加し、銅化合物を還元することにより行われる。銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程は、銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程と、銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程とを含むことが好ましい。
【0022】
銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程は、分散剤の存在下、2価の銅化合物を分散する工程により得られる分散液に対して、還元剤を添加し、銅化合物を還元することにより行われる。
【0023】
還元剤は、例えば、アスコルビン酸;ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジン等のヒドラジン系還元剤;水素化ホウ素ナトリウム;亜硫酸ナトリウム;亜硫酸水素ナトリウム;チオ硫酸ナトリウム;亜硝酸ナトリウム;次亜硝酸ナトリウム;亜リン酸;亜リン酸ナトリウム;次亜リン酸;次亜リン酸ナトリウム;アルデヒド類;アルコール類;アミン類;糖類;等からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程では、還元剤がアスコルビン酸を含むことが好ましい。
【0024】
銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程では、溶媒の温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下、さらに好ましくは50℃以下、さらに好ましくは45℃以下である。
【0025】
銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程は、銅化合物分散液(B)に対して、水酸化ナトリウム水溶液等を添加して、pHを調整することにより行われる。
【0026】
銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程では、pHを調整する時間が、好ましくは15分以上、より好ましくは20分以上であり、そして、好ましくは80分以下、より好ましくは50分以下、さらに好ましくは40分以下である。
【0027】
銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程は、銅化合物分散液(B)のpHを9.0以上14.0以下に調整する工程の後に、銅化合物分散液(B)を還元する工程を含むこともできる。
【0028】
pHを9.0以上14.0以下に調整する工程の後に、銅化合物分散液(B)を還元する工程は、銅化合物分散液(B)に対して、還元剤を添加し、銅化合物を還元することにより行われる。還元剤は、例えば、銅化合物を還元して銅化合物分散液(B)を得る工程で用いられる還元剤と同様であるが、好ましくはヒドラジンを含む還元剤である。
【0029】
(銅粒子分散液(A)から分散剤を除去する工程)
銅粒子分散液(A)から分散剤を除去する工程は、銅粒子分散液(A)に対して、除去剤を添加することで、分散剤を除去することにより行われる。
【0030】
除去剤は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の水酸化物塩の水溶液;イオン交換水;等を用いることができ、好ましくは水酸化塩の水溶液、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。
【0031】
銅粒子分散液(A)から分散剤を除去する工程は、銅粒子分散液(A)のpHが、好ましくは7.0以上、より好ましくは8.0以上、さらに好ましくは9.0以上であり、さらに好ましくは10.0以上、さらに好ましくは11.0以上、さらに好ましくは11.5以上、さらに好ましくは12.0以上、そして、好ましくは14.0以下、より好ましくは13.5以下、さらに好ましくは13.0以下である。
【0032】
銅粒子分散液(A)から分散剤を除去する工程では、除去剤に加えて、還元剤を添加することもできる。還元剤としては、例えば、ヒドラジンが挙げられる。還元剤を添加することにより、銅粒子分散液(A)中の銅粒子の酸化を抑制する効果が得られる。
【0033】
(その他の工程)
本実施形態の銅粒子の製造方法は、表面処理工程や固液分離工程等を含むこともできる。
【0034】
表面処理工程は、例えば、ステアリン酸ナトリウム等の飽和脂肪酸塩;オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩;等の表面処理剤によって銅粒子の表面を処理することにより行われる。銅粒子の表面を処理することにより、得られる銅粒子の炭素含有率を好適な範囲にしやすくすることができる。
表面処理剤の含有量は、2価の銅化合物を100質量部としたとき、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上、さらに好ましくは0.10質量部以上であり、そして、好ましくは0.50質量部以下、より好ましくは0.30質量部以下、さらに好ましくは0.25質量部以下である。
【0035】
固液分離工程は、例えば、濾過や遠心分離等によって、銅粒子と溶媒を分離することにより行われる。
【0036】
[銅粒子]
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、炭素含有率が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、そして、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.9質量%以下である。炭素含有率が上記下限値以上であると、銅粒子の焼成開始温度が高温になるため好ましい。炭素含有率が上記上限値以下であると、銅粒子の焼成開始温度が高温になり、銅粒子を導電性ペーストに用いた場合に導電性が低下しづらくなるため好ましい。
ここで、銅粒子の炭素含有率は、以下の方法により算出される。
[炭素含有率の算出方法]
銅粒子0.5gを秤量し、助燃剤としてタングステン粉1.5g、鉄粉0.5gおよびスズ粉0.5gを加え、炭素・硫黄分析装置を用いて、酸素気流中、流量:3L/min、燃焼方法:高周波加熱、燃焼時間:60sec、検出方法:赤外線吸収法の条件で測定し、炭素含有率を算出する。
【0037】
本実施形態の銅粒子は、銅と炭素以外の元素を含んでいてもよい。銅と炭素以外の元素としては、例えば、酸素、窒素、塩素、ホウ素等である。銅と炭素以外の元素の含有率は、銅粒子の全体を100質量%としたとき、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。銅と炭素以外の元素の含有率の下限値は特に限定されないが、例えば、0.1質量%以上であってもよいし、1.0質量%以上であってもよい。
【0038】
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、D90粒子径が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.4μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.7μm以上、さらに好ましくは0.9μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、そして、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.5μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。D90粒子径が上記上限値以下であると、銅粒子を含む導電性ペーストをLTCC基板に用いた場合に、LTCC基板をより小型化できるため好ましい。D90粒子径が上記下限値以上であると、銅粒子のハンドリング性が向上するため好ましい。
ここで、D90粒子径は、以下の方法により算出される。
[D90粒子径の算出方法]
銅粒子0.1gを0.1質量%分散剤水溶液1mLと混合し、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置を用いて、装置内超音波を5min照射した後、銅粒子の累積体積90%粒子径を測定し、D90粒子径を算出する。
銅粒子径測定用の分散剤としては、銅粒子の粒子径を測定する際に用いられる公知の分散剤を用いることができ、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート等のポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤:等を用いることができる。
【0039】
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、D50粒子径が、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.30μm以上、さらに好ましくは0.50μm以上、さらに好ましくは0.80μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上であり、そして、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.2μm以下である。D50粒子径が上記上限値以下であると、銅粒子を含む導電性ペーストをLTCC基板に用いた場合に、LTCC基板をより小型化できるため好ましい。D50粒子径が上記下限値以上であると、銅粒子のハンドリング性が向上するため好ましい。
ここで、D50粒子径は、以下の方法により算出される。
[D50粒子径の算出方法]
銅粒子0.1gを0.1質量%分散剤水溶液1mLと混合し、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置を用いて、装置内超音波を5min照射した後、銅粒子の累積体積50%粒子径を測定し、D50粒子径を算出する。
銅粒子径測定用の分散剤としては、銅粒子の粒子径を測定する際に用いられる公知の分散剤を用いることができ、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート等のポリオキシエチレン系ノニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤;等を用いることができる。
【0040】
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、焼成開始温度が高温である。焼成開始温度は、熱機械分析計を用いて測定される、銅粒子がある一定の収縮率になる温度によって評価することができる。なお、本実施形態における焼成開始温度は、収縮率0.5%の温度と定義する。
本実施形態の銅粒子は、収縮率0.5%の温度が、好ましくは500℃以上であり、より好ましくは550℃以上であり、さらに好ましくは600℃以上であり、さらに好ましくは650℃以上であり、さらに好ましくは700℃以上であり、さらに好ましくは730℃以上である。収縮率0.5%の温度が上記下限値以上であると、銅粒子を含む導電性ペーストをLTCC基板に用いた場合に、配線導線とセラミックス基板との同時焼成をより効率的にできるため好ましい。
ここで、収縮率0.5%の温度は、以下の方法により算出される。
[収縮率0.5%の温度の算出方法]
銅粒子を1g秤量し、直径5mmの円柱状の成型金型へ充填し、油圧プレス機(吐出圧力10MPa)にて前記銅粒子をプレス成型する。プレス成型により得られたペレットを砕いて、顆粒サンプルを得る。前記顆粒サンプルを0.67g秤量し、直径5mmの円柱状の成形金型へ充填し、油圧プレス機(吐出圧力10MPa)にて前記顆粒サンプルをプレス成型し、直径5mm、高さ5mmの円柱状のペレットを測定用サンプルとして得る。
熱機械分析計を用いて、Ar流量:200mL/min、測定荷重:10mN、測定温度域:23~1000℃、昇温速度:5℃/minの条件で測定し、収縮率0.5%の温度を算出する。
【0041】
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、一次粒子径が大きな銅粒子の含有量を低減できる。一次粒子径が大きな銅粒子の含有量は、走査電子顕微鏡によって銅粒子を拡大観察することにより評価できる。
【0042】
本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子は、例えば、導電性ペースト、塗料、インキ等に用いることができ、好ましくは導電性ペーストに用いることができる。
【0043】
[導電性ペースト]
本実施形態の導電性ペーストは、本実施形態の銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子を含む。
本実施形態の導電性ペースト中の銅粒子の含有量は、導電性ペーストの全体を100質量%としたとき、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上であり、そして、99質量%以下、97質量%以下、94質量%以下である。
【0044】
また、本実施形態の導電性ペーストは、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。
バインダー樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリブタジエン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ロジン、ロジンエステル、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリビニルプチラール、ポリビニルピロリドン等からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0045】
本実施形態の導電性ペーストは、水および有機溶媒のうち少なくとも一方を含む溶媒をさらに含んでもよい。有機溶媒は、疎水性溶媒、親水性溶媒のいずれであってもよい。
【0046】
疎水性溶媒としては、例えば、鉱物油、脂肪酸、アルコール、炭化水素等が挙げられる。
【0047】
親水性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール;グリセリン等の多価アルコール類;糖アルコール類;エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン類;エタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド等のアミド類;等が挙げられる。
【0048】
有機溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0049】
本実施形態の導電性ペーストは、例えば、インクジェット法やスクリーン印刷法等により基材上に塗布して、乾燥後、加熱して、銅粒子含有配線、薄膜等の導電部材とすることができる。
【0050】
本実施形態の導電性ペーストは、公知の方法によって製造することができる。例えば、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ディスパー等の混合機を用いて、上記の各材料を混合して導電性ペーストを製造することができる。
【0051】
[基板]
本実施形態の基板は、本実施形態の導電性ペーストまたは前記導電性ペーストの焼結体を含むものであり、例えば、基材の所定の領域に、本実施形態の導電性ペーストを塗布するものである。
【0052】
本実施形態の基板は、例えば、低温焼成積層セラミックス基板(LTCC基板)、プリント基板、フレキシブル基板等であり、LTCC基板であることが好ましい。本実施形態の銅粒子は焼成開始温度が高温であり、本実施形態の銅粒子を含む導電性ペーストの焼成開始温度も高温となる。本実施形態の導電性ペーストを含むLTCC基板は、配線導線とセラミックス基板を同時に焼成することができることになるため、好ましい。
【0053】
本実施形態の基板は、例えば、車載用の電子基板、高周波モジュール用基板、半導体パッケージ用の基板等として用いられる。
【0054】
本実施形態の基板は、公知の方法によって製造することができる。例えば、グリーンシートの所定の領域に本実施形態の導電性ペーストをスクリーン印刷し、複数枚の導電性ペーストが印刷されたグリーンシートを積層することで積層体を作成し、積層体を焼成することにより基板を製造することができる。
【0055】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0056】
以下、本発明について実施例及び比較例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例の記載に何ら限定されるものではない。
【0057】
[測定・評価]
本実施例において、各種測定・評価は以下の方法により行った。
【0058】
(炭素含有率)
銅粒子0.5gを秤量し、助燃剤としてタングステン粉1.5g、鉄粉0.5gおよびスズ粉0.5gを加え、炭素・硫黄分析装置(堀場製作所社製、製品名:EMIA-820W)を用いて、酸素気流中、流量:3L/min、燃焼方法:高周波加熱、燃焼時間:60sec、検出方法:赤外線吸収法の条件で測定し、炭素含有率を算出した。
【0059】
(粒子径)
・D90粒子径
銅粒子0.1gを0.1質量%分散剤水溶液1mLと混合し、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置(堀場製作所製、製品名:LA-960V2)を用いて、装置内超音波を5min照射した後、銅粒子の累積体積90%粒子径を測定し、D90粒子径を算出した。
・D50粒子径
銅粒子0.1gを0.1質量%分散剤水溶液1mLと混合し、レーザー回折/散乱式粒子径測定装置(堀場製作所製、製品名:LA-960V2)を用いて、装置内超音波を5min照射した後、銅粒子の累積体積50%粒子径を測定し、D50粒子径を算出した。
【0060】
(粗大粒子の評価)
走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製、製品名:Regulus8230)を用いて、銅粒子を25000倍に拡大して観察した。銅粒子中の任意の10箇所に対して観察を行い、以下の基準により評価した。
A(良好):一次粒子径が20μm以上のプレート状の粒子(粗大粒子)が存在しない。
B(不良):一次粒子径が20μm以上のプレート状の粒子(粗大粒子)が存在する。
【0061】
(収縮率0.5%の温度)
銅粒子を1g秤量し、直径5mmの円柱状の成型金型へ充填し、油圧プレス機(吐出圧力10MPa)にて前記銅粒子をプレス成型した。プレス成型により得られたペレットを砕いて、顆粒サンプルを得た。前記顆粒サンプルを0.67g秤量し、直径5mmの円柱状の成型金型へ充填し、油圧プレス機(吐出圧力10MPa)にて前記顆粒サンプルをプレス成型し、直径5mm、高さ5mmの円柱状のペレットを測定用サンプルとして得た。
熱機械分析計(NETZSCH社製、製品名:TMA4000SA)を用いて、Ar流量:200mL/min、測定荷重:10mN、測定温度域:23~1000℃、昇温速度:5℃/minの条件で測定し、収縮率0.5%の温度を算出した。
【0062】
[実施例1]
(分散剤の存在下、2価の銅化合物を分散する工程)
まず、イオン交換水2.26Lに対して、2価の銅化合物として硫酸銅(JX金属社製)670gを添加し、撹拌機(HEIDON社製、製品名:BL300)を用いて攪拌し、下記に記載の方法により調製した分散剤溶液を添加し、分散液を得た。
・分散剤溶液の調製方法
分散剤として、イオン交換水0.5Lに対して、ゼラチン(牛骨由来、和光純薬社製、重量平均分子量100,000~300,000)10.7gを添加し、マグネットスターラー(IKA社製、製品名:C-MAG HS4 digital)により攪拌して、分散剤溶液を調製した。
【0063】
(銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程)
分散液に対して、下記に記載の方法により調製した還元剤溶液を、分散液へ添加した。分散液を40℃に加熱し、3分間攪拌することで銅化合物を還元し、銅化合物分散液(B)を得た。続いて、銅化合物分散液(B)に対して、溶液の温度40℃の条件で、溶液のpHが10.6になるまで、24質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加した。このとき、溶液のpHを10.6にするまでの調整時間は30分間であった。pHを調整した銅化合物分散液(B)に対して、還元剤として、ヒドラジン(和光純薬社製)400gを添加し、溶液を60℃に加熱し、60分間攪拌することで銅化合物を還元し、銅粒子分散液(A)を得た。
・還元剤溶液の調製方法
還元剤として、イオン交換水2.0Lに対してアスコルビン酸(和光純薬社製)472gを添加し、マグネットスターラー(IKA社製、製品名:C-MAG HS4 digital)により攪拌して、還元剤溶液を調製した。
【0064】
(銅粒子分散液(A)から分散剤を除去する工程)
銅粒子分散液(A)の攪拌を止めて上清の除去後、分散剤を除去するために、除去剤として、1.2質量%水酸化ナトリウム水溶液5050gを添加して10分間攪拌した。再度攪拌を止めて上清を除去した後、イオン交換水に対してヒドラジン(和光純薬社製)27gを添加して調製した還元剤水溶液を、銅粒子分散液(A)に対して添加し、溶液を50℃に加熱し、20分間攪拌した。このとき、銅粒子分散液(A)のpHは12.5であった。
【0065】
(表面処理工程)
分散剤を除去した銅粒子分散液(A)に対して、表面処理剤として、イオンン交換水0.5Lに対してステアリン酸ナトリウム(関東化学社製)0.84gを添加して調製した表面処理剤分散液を、銅粒子分散液(A)へ添加し、銅粒子分散液を得た。
【0066】
(固液分離工程)
得られた銅粒子分散液を遠心分離により固液分離し、銅粒子を得た。得られた銅粒子について上記測定をそれぞれおこなった。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、分散剤を除去する工程における1.2質量%水酸化ナトリウム水溶液5050gに代えてイオン交換水5000gを添加し、ヒドラジンを添加せず、銅粒子分散液(A)のpHを10.5とし、表面処理工程におけるステアリン酸ナトリウムを4.2gとした以外は、実施例1と同様にして、銅粒子を得た。
【0068】
[比較例1]
実施例2において、銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、銅粒子を得た。
【0069】
[比較例2]
比較例1において、分散剤としてゼラチンを添加しなかった以外は、比較例1と同様にして銅粒子を得た。すなわち、比較例2では、分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程とを行わなかった。
【0070】
実施例1、2及び比較例1、2で得られた銅粒子について、上記測定・評価をそれぞれおこなった。結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
表1より、分散剤の存在下、溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程と、2価の銅化合物を還元して銅粒子分散液(A)を得る工程と、前記銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程と、を含む銅粒子の製造方法によって得られる銅粒子である実施例1、2は、収縮率0.5%の温度が高温であり、粗大粒子が存在しないことが理解できる。一方、銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程を行わない製造方法によって得られた銅粒子である比較例1は、粗大粒子は存在しなかったものの、収縮率0.5%の温度が低温である。溶媒中に2価の銅化合物を分散する工程、及び銅粒子分散液(A)から前記分散剤を除去する工程を行わない製造方法によって得られた銅粒子である比較例2は、粗大粒子が存在し、収縮率0.5%の温度が低温である。
すなわち、本実施形態の銅粒子の製造方法によれば、得られる銅粒子の焼成開始温度が高温であり、一次粒子径が大きな銅粒子の含有率を低減できることが分かった。