(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053983
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/16 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B62D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160536
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小池 康男
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC16
3D030DC17
3D030DD02
3D030DG01
(57)【要約】
【課題】ステアリング装置において、軸部材に対して本体部を支持する支持体の剛性および強度を向上すること。
【解決手段】ステアリング装置1は、本体部と、軸部材8に対して本体部を支持する支持体60と、を備え、支持体60は、軸部材8が貫通する貫通孔61aを有する一対の支持壁61と、一対の支持壁61と一体であり、一対の支持壁61を接続する接続壁62と、備え、接続壁62は、貫通孔61aの軸線61a1と直交する第1方向において、貫通孔61aを挟んで両側に配置され、接続壁62の厚みは、貫通孔61aの直径より小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
軸部材に対して前記本体部を支持する支持体と、を備え、
前記支持体は、
前記軸部材が貫通する貫通孔を有する一対の支持壁と、
前記一対の支持壁と一体であり、前記一対の支持壁を接続する接続壁と、備え、
前記接続壁は、前記貫通孔の軸線と直交する第1方向において、前記貫通孔を挟んで両側に配置され、
前記接続壁の厚みは、前記貫通孔の直径より小さい、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記接続壁は、前記貫通孔の内周面と連続している曲面を有している、
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記本体部は、ステアリングシャフトを備え、
前記ステアリングシャフトの軸線は、前記第1方向と平行であり、
前記接続壁の厚みは、前記第1方向に沿って前記第1方向の第1側から前記第1方向の第2側に向かうほど小さくなる、
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記接続壁は、前記第1方向に沿って見たときに、前記貫通孔の軸線と重なる、
請求項1から3の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記本体部は、モータの出力軸に接続される減速ギヤと、前記減速ギヤを収納するハウジングと、を備え、
前記支持体は、前記ハウジングと一体である、
請求項1に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステアリング装置の一例として、チルトヒンジ軸が貫通するチルトヒンジ部を有し、チルトヒンジ軸の周りでチルト揺動する電動パワーステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリング装置において、チルトヒンジ軸(軸部材)に対して本体部を支持するチルトヒンジ部(支持体)の剛性および強度をさらに向上させたい要望がある。
【0005】
本開示の態様は、ステアリング装置において、軸部材に対して本体部を支持する支持体の剛性および強度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の態様は、本体部と、軸部材に対して前記本体部を支持する支持体と、を備え、前記支持体は、前記軸部材が貫通する貫通孔を有する一対の支持壁と、前記一対の支持壁と一体であり、前記一対の支持壁を接続する接続壁と、備え、前記接続壁は、前記貫通孔の軸線と直交する第1方向において、前記貫通孔を挟んで両側に配置され、前記接続壁の厚みは、前記貫通孔の直径より小さい、ステアリング装置を提供する。
【0007】
本開示の態様によれば、支持体が接続壁を備えない場合と比べて、軸部材から作用する力に対する支持体の剛性および強度を向上させることができる。また、接続壁の厚みが貫通孔の直径より小さく、支持体が鋳造で成形されている場合に接続壁における鋳巣の発生を抑制することができ、接続壁の強度を向上させることができる。
【0008】
本開示の態様において、前記接続壁は、前記貫通孔の内周面と連続している曲面を有している。
【0009】
これにより、軸部材から支持体に作用する力を、一対の支持壁および接続壁の両方で直接受けることができる。よって、支持体において軸部材から作用する力が集中することを抑制することができ、支持体の強度を向上させることができる。
【0010】
本開示の態様において、前記本体部は、ステアリングシャフトを備え、前記ステアリングシャフトの軸線は、前記第1方向と平行であり、前記接続壁の厚みは、前記第1方向に沿って前記第1方向の第1側から前記第1方向の第2側に向かうほど小さくなる。
【0011】
これにより、接続壁を成形する金型の移動方向を、ステアリングシャフトの軸線と平行とすることができる。よって、ステアリングシャフトの軸線と平行に移動する金型によって成形されるステアリング装置の構成部材に、接続壁を容易に設けることができる。
【0012】
本開示の態様において、前記接続壁は、前記第1方向に沿って見たときに、前記貫通孔の軸線と重なる。
【0013】
これにより、接続壁は、第1方向に沿って見たときに、軸部材から作用する力の作用線と重なる。よって、軸部材から作用する力に対する支持体の強度をより向上させることができる。
【0014】
本開示の態様において、前記本体部は、モータの出力軸に接続される減速ギヤと、前記減速ギヤを収納するハウジングと、を備え、前記支持体は、前記ハウジングと一体である。
【0015】
ステアリング装置が電動パワーステアリング装置である場合において、支持体は、モータの減速ギヤを収納するハウジングに一体に設けられている。これにより、支持体が接続壁を備えない場合と比べて、モータの出力によって生じる反力に対する支持体の剛性および強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の態様によれば、ステアリング装置において、軸部材に対して本体部を支持する支持体の剛性および強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ステアリング装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、-X側から見たアシスト装置の平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すA-A線に沿うアシスト装置の断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すB-B線に沿った支持体の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の一の変形例に係るステアリング装置におけるハウジングのカバー部を-X側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すハウジングのカバー部を+X側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態の他の変形例に係るステアリング装置における支持体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
また、以下の説明においては、後述するステアリングシャフト10の軸線10aと平行な方向をX方向とし、X方向と直交し、かつ、後述する軸部材8の軸線8aと平行な方向をY方向とする。X方向およびY方向それぞれと直交する方向をZ方向とする。X方向は、「第1方向」に相当する。また、X方向の+X側は「第1方向の第1側」に相当し、X方向の-X側は「第1方向の第2側」に相当する。なお、X、Y、Zの方向は一例であって、本開示はこれらの方向に限定されない。
【0020】
図1は、ステアリング装置1の構成を示す模式図である。ステアリング装置1は、車体に取り付けられており、後述するモータ33の出力によってステアリングホイール2の操作を補助する電動パワーステアリング装置である。
【0021】
ステアリング装置1は、ステアリングシャフト10、ステアリングコラム20、および、アシスト装置30を備えている。ステアリングシャフト10は、X方向に沿って延びており、ステアリングシャフト10の中心軸である軸線10a回りに回転する。
【0022】
ステアリングシャフト10の+X側の第1端には、ステアリングシャフト10と一体回転可能にステアリングホイール2が固定されている。
【0023】
また、ステアリングシャフト10の-X側の第2端には、第1継手3aを介して中間シャフト4の第1端が取り付けられている。中間シャフト4の第2端には、第2継手3bを介して、例えばラックアンドピニオン型のステアリングギヤユニット(不図示)に含まれるピニオンシャフト5が接続されている。第1継手3aおよび第2継手3bは、例えばユニバーサルジョイントである。
【0024】
運転者がステアリングホイール2を操作することで、ステアリングシャフト10、中間シャフト4、および、ピニオンシャフト5が回転し、走行輪(不図示)が転舵される。
【0025】
ステアリングシャフト10は、第1シャフト11および第2シャフト12を備えている。第1シャフト11は、第2シャフト12の+X側に配置され、第2シャフト12に対してX方向に沿って移動可能に第2シャフト12と嵌合している。
【0026】
ステアリングコラム20は、X方向に沿って延びる中空の柱状である。ステアリングコラム20には、ステアリングシャフト10が貫通している。ステアリングコラム20は、軸受(不図示)を介して、ステアリングシャフト10を軸線10a回りに回転可能に支持する。
【0027】
ステアリングコラム20は、第1コラム21および第2コラム22を備えている。第1コラム21は、第2コラム22の+X側に配置され、第2コラム22に対してX方向に沿って移動可能に第2コラム22と嵌合している。第1コラム21は、第1シャフト11と一体にX方向に沿って移動可能である。
【0028】
第1コラム21および第2コラム22は、それぞれ、X方向(すなわちステアリングシャフト10の軸線10aと平行な方向)に移動する金型を用いて、例えば鋳造によって成形されている。第1コラム21および第2コラム22の材料は、例えばアルミニウム合金である。
【0029】
また、第1コラム21には、車体に含まれる車体部材6に固定されている第1ブラケット7aが取り付けられている。第1ブラケット7aには、車体部材6に対して第1コラム21および第1シャフト11をX方向に沿って移動可能とし、かつ、車体部材6に対して後述する軸部材8の軸線8a回りにステアリングコラム20およびステアリングシャフト10を揺動可能とする機構部(不図示)が取り付けられている。つまり、機構部は、いわゆるテレスコピック機構およびチルト機構として機能する。なお、機構部は、車体部材6に対する第1コラム21の移動およびステアリングコラム20の揺動を許容および制限するレバー部材(不図示)を備えている。
【0030】
アシスト装置30は、ステアリングホイール2の操作を補助する。アシスト装置30は、第2コラム22に固定されている。アシスト装置30には、第2シャフト12が貫通する。アシスト装置30は、軸受(不図示)を介して、第2シャフト12を軸線10a回りに回転可能に支持する。
【0031】
アシスト装置30には、車体部材6に対して軸部材8の軸線8a回りにアシスト装置30が揺動可能に、軸部材8が取り付けられている。これにより、機構部がステアリングコラム20の揺動を許容している場合に、アシスト装置30、ステアリングコラム20およびステアリングシャフト10は、車体部材6に対して軸部材8の軸線8a回りに揺動可能である。
【0032】
軸部材8は、車体部材6に固定されている第2ブラケット7bに、車幅方向に沿って取り付けられている。つまり、軸部材8の軸線8aは、車幅方向と平行であり、Y方向に沿って延びており、ステアリングシャフト10の軸線10aと直交する。
【0033】
図2は、アシスト装置30の斜視図である。アシスト装置30は、ハウジング31、トルクセンサ32、モータ33、および、減速ギヤ34を備えている。ハウジング31は、減速ギヤ34を収納する。ハウジング31は、ベース部40およびカバー部50を備えている。
【0034】
ベース部40とカバー部50とは、ボルトおよびナットを用いて締結されている。ベース部40とカバー部50は、それぞれ、X方向(すなわちステアリングシャフト10の軸線10aと平行な方向)に移動する金型を用いて、鋳造によって成形されている。ベース部40とカバー部50の材料は、例えば、アルミニウム合金である。
【0035】
図3は、-X側から見たアシスト装置30の平面図である。
図4は、
図3に示すA-A線に沿うアシスト装置30の断面図である。
【0036】
図4に示すように、ベース部40は、円筒部41、第1収納部42、および、第2収納部43を有している。円筒部41、第1収納部42、および、第2収納部43は、一体である。
【0037】
円筒部41には、第2コラム22が固定されている。円筒部41は、軸受(不図示)を介して第2シャフト12を内側で支持する。
【0038】
第1収納部42は、-X側を開放する形状であり、円筒部41の-X側の端から連続している平面視で環状の底壁42a、底壁42aの周縁部に全周に亘って配置されている周側壁42bを有している。
【0039】
図3および
図4に示す第2収納部43は、+Z側が開放され、かつ、-Z側が閉鎖されている筒状であり、+Z側にモータ33が取り付けられている。第2収納部43は、周側壁42bと連続しており、第2収納部43の内部と第1収納部42の内部とが連通口42b1(
図4)を介して連通している。
【0040】
カバー部50は、第1収納部42の-X側を覆う円板状である。
図4に示すように、カバー部50は、第2シャフト12が貫通する穴部51を有し、軸受(不図示)を介して第2シャフト12を支持する。
【0041】
図2に示すトルクセンサ32は、ハウジング31に配置され、ステアリングシャフト10の回転トルクを検出する。
【0042】
モータ33は、ECU(Electronic Control Unit)一体型モータである。ECUは、トルクセンサ32の検出結果に基づいて、モータ33の出力を制御する。ECUは、例えばモータ33の単位時間あたりの回転量を調節することで、モータ33の出力を制御する。
【0043】
図3に示すように、減速ギヤ34は、ウォームギヤ34a、および、ウォームホイール34bを含んでいる。ウォームギヤ34aは、モータ33の出力軸33aに取り付けられ、第2収納部43に収納されている。
図4に示すように、ウォームホイール34bは、第2シャフト12と一体回転可能に第2シャフト12に取り付けられ、連通口42b1を介してウォームギヤ34aと噛み合う状態で、第1収納部42に収納されている。
【0044】
モータ33の出力軸33aが回転することで、減速ギヤ34を介して、ステアリングシャフト10にモータ33の出力が付与される。これにより、運転者によるステアリングホイール2の操作が補助される。
【0045】
また、
図2、
図3および
図4に示すように、アシスト装置30は、軸部材8が貫通し、アシスト装置30、ならびに、アシスト装置30を介してステアリングコラム20およびステアリングシャフト10を支持する支持体60をさらに備えている。なお、ステアリングシャフト10、ステアリングコラム20、および、アシスト装置30は、「本体部」を構成する。
【0046】
支持体60は、本体部(ステアリングシャフト10、ステアリングコラム20、および、アシスト装置30)を支持する。支持体60には、車体部材6に対して軸部材8の軸線8a回りに揺動可能に軸部材8が取り付けられている。つまり、支持体60は、軸部材8の軸線8a回りに本体部が揺動可能に本体部を支持する。
【0047】
支持体60は、ハウジング31と一体である。具体的には、支持体60は、カバー部50と一体であり、
図4に示すカバー部50の-X側の面(以下、主面50aと称する)に配置されている。カバー部50が成形される際に、支持体60も成形される。つまり、支持体60は、鋳造によって成形されている。
【0048】
支持体60は、
図3および
図4に示すように、一対の支持壁61、および、接続壁62を有している。一対の支持壁61および接続壁62は、一体である。
【0049】
一対の支持壁61は、カバー部50の主面50aからX方向に沿って-X側に向けて延び、Y方向と交差する板面を有する板状である。一対の支持壁61の厚みは、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど小さくなる。具体的には、一対の支持壁61の+Y側の板面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Y方向に沿って+Y側から-Y側に向けて傾斜するテーパ面である。一方、一対の支持壁61の-Y側の板面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Y方向に沿って-Y側から+Y側に向けて傾斜するテーパ面である。
【0050】
図5は、
図3に示すB-B線に沿った支持体60の断面図である。
図4および
図5に示すように、一対の支持壁61は、軸部材8が貫通する貫通孔61aを有する。貫通孔61aの内周面は、軸部材8の外周面と摺動可能に接触する。
【0051】
図3,4,5に示すように、接続壁62は、一対の支持壁61を接続する。接続壁62は、主面50aからX方向に沿って-X側に向けて延び、Z方向と交差する板面を有する板状である。
図3に示すように、支持体60は、X方向に沿って見たときに、H字状である。
【0052】
接続壁62は、X方向に沿って見たときに、貫通孔61aの軸線61a1と重なる。貫通孔61aの軸線61a1と軸部材8の軸線8aとは、互いにほぼ平行である。なお、
図5において、軸線61a1と軸線8aとは重ねて示されている。
【0053】
また、
図4に示すように、接続壁62の厚みは、貫通孔61aの直径より小さい。接続壁62は、貫通孔61aの軸線61a1と直交するX方向において、貫通孔61aを挟んで両側に配置されている。
【0054】
また、
図4および
図5に示すように、接続壁62は、貫通孔61aの内周面と連続している曲面62aを有している。曲面62aは、Y方向に沿って見たときに、貫通孔61aの内周面と一致する。換言すれば、曲面62aは、貫通孔61aの内周面と同一面上に位置する。曲面62aは、軸部材8の外周面と摺動可能に接触する。
【0055】
貫通孔61aおよび曲面62aは、カバー部50が鋳造によって成形されたのち、例えば切削加工によって形成される。なお、貫通孔61aおよび曲面62aは、カバー部50の鋳造時に金型を用いて形成されてもよい。
【0056】
また、接続壁62の厚みは、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど小さくなる。具体的には、接続壁62の+Z側の板面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Z方向に沿って+Z側から-Z側に向けて傾斜するテーパ面である。一方、接続壁62の-Z側の板面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Z方向に沿って-Z側から+Z側に向けて傾斜するテーパ面である。
【0057】
図5に示すように、軸部材8は、ボルトの頭部に相当する頭部Hを第1端部に一体に有する。軸部材8はボルトの軸部に相当する。支持体60に軸部材8を取り付ける場合、第2ブラケット7bおよび支持体60の貫通孔61aに軸部材8を貫通させたのち、軸部材8の第2端部にある螺子部に、ナットNと取り付ける。支持体60には、軸部材8の軸線8a方向に沿って頭部HおよびナットNから締結力が作用する。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ステアリング装置1は、本体部と、軸部材8に対して本体部を支持する支持体60と、を備える。支持体60は、軸部材8が貫通する貫通孔61aを有する一対の支持壁61と、一対の支持壁61と一体であり、一対の支持壁61を接続する接続壁62と、備える。接続壁62は、貫通孔61aの軸線61a1と直交するX方向において、貫通孔61aを挟んで両側に配置される。接続壁62の厚みは、貫通孔61aの直径より小さい。
これによれば、支持体60が接続壁62を備えない場合と比べて、軸部材8から支持体60に作用する力に対する支持体60の剛性および強度を向上させることができる。支持体60の剛性が向上すると、機構部がステアリングコラム20の揺動を制限している場合に車体から支持体60を介して伝達するステアリングホイール2の振動が抑制される。また、接続壁62がX方向において貫通孔61aを挟んで両側に配置されることで、支持体60に軸部材8を取り付ける際に支持体60に作用する締結力に対する支持体60の剛性および強度を向上させることができる。
さらに、接続壁62の厚みが貫通孔61aの直径より小さく、接続壁62における鋳巣の発生を抑制することができ、接続壁62の強度を向上させることができる。また、接続壁62の厚みが貫通孔61aの直径より小さいことで、支持体60に軸部材8を取り付ける際に、一対の支持壁61の間で軸部材8を視認することができ、支持体60に軸部材8が取り付けられていることを確認することができる。
【0059】
また、接続壁62は、貫通孔61aの内周面と連続している曲面62aを有している。
これによれば、軸部材8から支持体60に作用する力を、一対の支持壁61および接続壁62の両方で直接受けることができる。よって、支持体60において軸部材8から作用する力が集中することを抑制することができ、支持体60の強度を向上させることができる。
【0060】
また、本体部は、ステアリングシャフト10を備える。ステアリングシャフト10の軸線10aは、X方向と平行である。接続壁62の厚みは、X方向の+X側からX方向の-X側に向かうほど小さくなる。
上記のように、接続壁62の板面は、接続壁62の厚みがX方向に沿って+X側から-X側に向かうほど小さくなるテーパ面である。よって、接続壁62を成形する金型の移動方向を、X方向に沿うステアリングシャフト10の軸線10aと平行とすることができる。
さらに、上記のように、一対の支持壁61の板面は、一対の支持壁61の厚みがX方向に沿って+X側から-X側に向かうほど小さくなるテーパ面である。よって、一対の支持壁61を成形する金型の移動方向を、X方向に沿うステアリングシャフト10の軸線10aと平行とすることができる。したがって、ステアリングシャフト10の軸線10aと平行に移動する金型によって成形されるステアリング装置1の構成部材(本実施形態では、アシスト装置30に含まれるカバー部50)に、X方向と交差するスライド型を構成部材の金型に追加することなく、支持体60を容易に配置することができる。これにより、金型の低コスト化、さらに、ステアリング装置1の低コスト化を図ることができる。
【0061】
また、接続壁62は、X方向に沿って見たときに、貫通孔61aの軸線61a1と重なる。
これによれば、接続壁62は、X方向に沿って見たときに、軸部材8から作用する力の作用線と重なる。よって、軸部材8から作用する力に対する支持体60の強度をより向上させることができる。
【0062】
また、本体部は、モータ33の出力軸33aに接続される減速ギヤ34と、減速ギヤ34を収納するハウジング31と、を備える。支持体60は、カバー部50を含むハウジング31と一体である。
ステアリング装置1が電動パワーステアリング装置である場合において、支持体60は、モータ33の減速ギヤ34を収納するハウジング31に一体に設けられている。これにより、支持体60が接続壁62を備えない場合と比べて、モータ33の出力によって生じる反力に対する支持体60の剛性および強度を向上させることができる。
【0063】
次に、本実施形態の変形例に係るステアリング装置1について説明する。
【0064】
ステアリング装置1は、アシスト装置30を備えなくてもよい。この場合、ステアリングシャフト10、および、ステアリングコラム20が「本体部」を構成する。またこの場合、支持体60は、ステアリングコラム20(例えば第2コラム22)に配置され、ステアリングコラム20(例えば第2コラム22)と一体である。
【0065】
また、接続壁62は、X方向に沿って見たときに、貫通孔61aの軸線61a1と重ならない部位に配置されてもよい。
【0066】
また、接続壁62は、-X側からX方向に沿って見たときに、接続壁62の外表面の全部を視認可能な形状であってもよい。この場合、接続壁62の+Z側の外表面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Z方向に沿って+Z側から-Z側に向かう勾配を有する。一方、接続壁62の-Z側の外表面は、X方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、Z方向に沿って-Z側から+Z側に向かう勾配を有する。この場合、ステアリングシャフト10の軸線10aと平行に移動する金型によって成形されるステアリング装置1の構成部材(例えばカバー部50および第2コラム22)に、X方向と交差するスライド型を構成部材の金型に追加することなく、支持体60を容易に配置することができる。なお、同様に、一対の支持壁61は、X方向に沿って見たときに、一対の支持壁61の外表面の全部を視認可能な形状であってもよい。この場合、一対の支持壁61のY方向内側の板面は、X方向に沿って-X側から+X側に向かうほど、Y方向における一対の支持壁61のY方向内側の幅が小さくなる勾配を有する。また、この場合、一対の支持壁61のY方向外側の板面は、X方向に沿って-X側から+X側に向かうほど、Y方向における一対の支持壁61のY方向外側の幅が大きくなる勾配を有する。
【0067】
また、接続壁62は、上記のテーパ面、または、上記の勾配を有さない形状でもよい。また、接続壁62の厚みが均一でもよい。また、接続壁62の厚みがX方向に沿って+X側から-X側に向かうほど、大きくなってもよい。
【0068】
また、接続壁62の曲面62aは、貫通孔61aの内周面と連続しておらず、Y方向に沿って見たときに、貫通孔61aの内周面から貫通孔61aの径方向外側に位置してもよい。この場合、軸部材8の外周面は、接続壁62の曲面62aと接触しない。また、接続壁62は、曲面62aに代えて、軸部材8と対向する平面を有してもよい。
【0069】
また、接続壁62の曲面62aは、貫通孔61aの内周面と連続しておらず、Y方向に沿って見たときに、貫通孔61aの内周面から貫通孔61aの径方向内側に位置してもよい。この場合、軸部材8の外周面は、貫通孔61aの内周面と接触しない。
【0070】
図6は、実施形態の一の変形例に係るステアリング装置1におけるハウジング31のカバー部150を-X側から見た斜視図である。
図7は、
図6に示すハウジング31のカバー部150を+X側から見た斜視図である。本変形例のカバー部150は、上記の実施形態のベース部40に含まれる周側壁42bおよび第2収納部43に対応する周側壁152bおよび第2収納部153を一体に有する。
図7に示すカバー部150には、上記のベース部40の連通口42b1に対応する連通口152b1が示されている。なお、この場合、ハウジング31に含まれるベース部40は、円筒部41および底壁42aを有し、周側壁42bおよび第2収納部43を有さない。
【0071】
この場合、モータ33の出力によって生じる反力によって発生するハウジング31の応力において、カバー部150の応力は、周側壁42bおよび第2収納部43を有さない上記のカバー部50の応力より大きくなる可能性がある。しかしながら、支持体60が接続壁62を有することで、モータ33の出力によって生じる反力に対する支持体60の剛性および強度を向上させることができる。
【0072】
図8は、実施形態の他の変形例に係るステアリング装置1における支持体60の断面図である。本変形例に係るステアリング装置1は、円筒状のスリーブ170をさらに備えている。スリーブ170は、貫通孔61aを貫通し、貫通孔61aに取り付けられる。スリーブ170の内側には、軸部材8が貫通する。スリーブ170の内周面は、軸部材8の外周面と摺動可能に接触する。頭部HおよびナットNからの締結力は、スリーブ170および支持体60に作用する。スリーブ170によって、アシスト装置30の剛性および強度を向上させることができる。
【0073】
また、ステアリング装置1は、軸部材8の軸線8a回りにステアリングコラム20およびステアリングシャフト10を揺動可能とするチルト機構を有さなくてもよい。この場合、軸部材8および第2ブラケット7bに対して支持体60が揺動できない状態で固定されている。
【符号の説明】
【0074】
1 ステアリング装置
2 ステアリングホイール
8 軸部材
8a 軸部材の軸線
10 ステアリングシャフト
10a ステアリングシャフトの軸線
20 ステアリングコラム
30 アシスト装置
31 ハウジング
33 モータ
33a モータの出力軸
34 減速ギヤ
60 支持体
61 支持壁
61a 貫通孔
61a1 貫通孔の軸線
62 接続壁
62a 曲面