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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053989
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】サンダ
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/10 20060101AFI20240409BHJP
   B24B 23/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B24B55/10
B24B23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160545
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 豪
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
【Fターム(参考)】
3C047FF07
3C047FF15
3C047JJ12
3C047JJ16
3C158AA04
3C158AC05
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】研磨作業によって発生する粉塵がサンダから外部へ飛散することによる、作業環境の悪化を抑制する。
【解決手段】サンダは、モータと、出力シャフトと、研磨部と、研磨部の上側に配置された集塵ファンと、集塵ファンの上側に配置されたモータ冷却ファンと、ハウジングと、カバー部とを備える。ハウジングは、モータ冷却ファンの排気風をハウジング内からハウジング外へ排出する、少なくとも1つの通気孔を有する。カバー部は、ハウジングの外側に配置され、少なくとも1つの通気孔から離間した状態で少なくとも1つの通気孔を覆うように構成されている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンダであって、
モータと、
上下方向に延在し前記モータによって回転可能な出力シャフトと、
前記出力シャフトに動作可能に連結され前記モータによって駆動されるように構成された研磨部と、
前記出力シャフトを周方向に取り囲むように前記出力シャフトに対して固定された集塵ファンと、
前記上下方向において前記集塵ファンに対して前記研磨部の配置された側を前記サンダの下側、前記下側の反対側を前記サンダの上側と定義したとき、前記上下方向において前記集塵ファンに対し前記上側に配置されたモータ冷却ファンと、
前記研磨部の前記上側に配置されて前記モータと前記モータ冷却ファンと前記集塵ファンと前記出力シャフトの少なくとも一部とを収容するハウジングであって、前記モータ冷却ファンの排気風を前記ハウジング内から前記ハウジング外へ排出する、少なくとも1つの通気孔を有する、ハウジングと、
前記ハウジングの外側に配置され、前記少なくとも1つの通気孔から離間した状態で前記少なくとも1つの通気孔を覆う、カバー部と、を備える、サンダ。
【請求項2】
請求項1に記載のサンダであって、
前記カバー部は、
前記少なくとも1つの通気孔よりも前記上側で前記ハウジングと接続する、第1部分と、
前記ハウジングから離間し、前記第1部分よりも前記下側で前記上下方向に延在する、第2部分と、を有する、サンダ。
【請求項3】
請求項2に記載のサンダであって、
前記研磨部は、前記上下方向に貫通する吸塵孔を有し、
前記ハウジングは、前記研磨部の上面と対向する下壁であって、前記ハウジングの内部と前記吸塵孔とを連通する下部開口を有する、下壁を備え、
前記第2部分の下端は、前記上下方向において、前記ハウジングの前記下壁と前記研磨部の前記上面との間に位置し、
前記サンダは、更に、前記第2部分と前記ハウジングの外表面とで規定される第1流路と、前記ハウジングの前記下壁と前記研磨部の前記上面とで規定される第2流路とを有し、
前記第1流路は、前記第2流路を介して、前記吸塵孔と連通する、サンダ。
【請求項4】
請求項3に記載のサンダであって更に、
前記第2部分の前記下端は、前記上下方向において前記研磨部の前記上面と離間している、サンダ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のサンダであって、
前記少なくとも1つの通気孔は、前記上下方向における前記モータ冷却ファンと略同じ位置であって、前記モータ冷却ファンの径方向外側の位置に、設けられている、サンダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のサンダであって、
前記少なくとも1つの通気孔は、複数の通気孔であり、
前記カバー部は、前記ハウジングの外形状に沿って形成されている、サンダ。
【請求項7】
請求項6に記載のサンダであって、
前記ハウジングに接続され前記上下方向に交差する方向へ延在する粉塵排出部を更に備え、
前記ハウジングにおける、前記粉塵排出部との接続部分を除いた部分は、前記上下方向に直交する断面において、前記出力シャフトの軸を中心とした円弧状に形成され、
前記複数の通気孔は、前記ハウジングに円弧状に並んで配置されており、
前記カバー部は、前記ハウジングを覆う、ドーム形状である、サンダ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のサンダであって、
前記モータ冷却ファンと前記集塵ファンとは、一体に形成されている、サンダ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のサンダであって、
前記カバー部は、前記ハウジングと別部材として形成されている、サンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サンダに関する。
【背景技術】
【0002】
集塵用や冷却用のファンを備えたサンダが知られている。例えば、特許文献1には、パッドを駆動するモータと、モータの回転軸とは別に設けられてパッドが取り付けられる出力軸と、出力軸に設けられたファンとを備えるサンダが記載されている。作業者は、パッドに装着されたサンディングペーパーを加工材に押し付けることによって、研磨作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-129016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研磨作業によって発生する粉塵がサンダから外部へ飛散すると、作業環境が悪化する虞がある。そのため、作業環境を良好に維持する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、サンダが提供される。前記サンダは、モータと、出力シャフトと、研磨部と、集塵ファンと、モータ冷却ファンと、ハウジングと、カバー部とを備える。前記出力シャフトは、上下方向に延在し、前記モータによって回転可能に構成されている。前記研磨部は、前記出力シャフトに動作可能に連結され、前記モータによって駆動されるように構成されている。前記集塵ファンは、前記出力シャフトを周方向に取り囲むように、前記出力シャフトに対して固定されている。前記上下方向において前記集塵ファンに対して前記研磨部の配置された側を前記サンダの下側、前記下側の反対側を前記サンダの上側と定義したとき、前記モータ冷却ファンは、前記上下方向において、前記集塵ファンに対し前記上側に配置されている。前記ハウジングは、前記研磨部の前記上側に配置されている。前記ハウジングは、前記モータと、前記モータ冷却ファンと、前記集塵ファンと、前記出力シャフトの少なくとも一部と、を収容可能に構成されている。前記ハウジングは、更に、前記モータ冷却ファンの排気風を、前記ハウジング内から前記ハウジング外へ排出する、少なくとも1つの通気孔を有する。前記カバーは、前記ハウジングの外側に配置されている。前記カバーは、前記少なくとも1つの通気孔から離間した状態で、前記少なくとも1つの通気孔を覆うように構成されている。
【0006】
この態様によれば、通気孔から排出されるモータ冷却風(モータ冷却ファンの排気風)に粉塵が混入していても、該粉塵が作業環境へ飛散することを抑制できる。そのため、作業環境を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】サンダ1の外観斜視図である。
図2】サンダ1の側面図である。
図3】サンダ1の上面図である。
図4】サンダ1の下面図である。
図5】カバー90が装着されていないサンダ1の外観斜視図である。
図6】カバー90が装着されていないサンダ1の側面図である。
図7】カバー90が装着されていないサンダ1の上面図である。
図8図3におけるVIII-VIII断面図である。
図9図3におけるIX-IX断面図である。
図10図9の部分断面図であり、ファン収容部23、研磨部50及びカバー90によって生成される気流を説明するための図である。
図11図3におけるXI-XI断面図である。
図12図2におけるXII-XII断面図である。
図13】舌部80周辺を平面P1に向けて投影した場合のイメージ図である。
図14】比較例における舌部80N周辺を平面P1に向けて投影した場合のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の非限定的な一実施形態において、前記カバー部は、第1部分と第2部分とを有していてもよい。前記第1部分は、前記少なくとも1つの通気孔よりも前記上側で、前記ハウジングと接続(接触)するように形成されていてもよい。前記第2部分は、前記ハウジングから離間し、前記第1部分よりも前記下側で前記上下方向に延在するように形成されていてもよい。
この形態によれば、通気孔から排出された粉塵を、通気孔から下側へ導くことができる。そのため、粉塵が作業者側へ飛散することを抑制できる。
【0009】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記研磨部は、前記上下方向に貫通する吸塵孔を有していてもよい。前記ハウジングは、前記研磨部の上面と対向する下壁を備えていてもよい。前記下壁は、前記ハウジングの内部と前記吸塵孔とを連通する下部開口を有していてもよい。前記第2部分の下端は、前記上下方向において、前記ハウジングの前記下壁と前記研磨部の前記上面との間に位置していてもよい。前記サンダは、更に、第1流路と、第2流路とを有していてもよい。前記第1流路は、前記第2部分と前記ハウジングの外表面とで規定されてもよい。前記第2流路は、前記ハウジングの前記下壁と前記研磨部の前記上面とで規定されてもよい。前記第1流路は、前記第2流路を介して、前記吸塵孔と連通してもよい。
この形態によれば、第1流路は、第2流路を介して吸塵孔及びハウジングの下部開口に連通している。そのため、少なくとも1つの通気孔から排出された粉塵は、集塵ファンによって生成される、吸塵孔からハウジングの下部開口へ向かう気流に引き寄せられる。したがって、モータ冷却風に混入した粉塵が、作業者側へ飛散することをより抑制できる。更に、集塵ファンによって生成される気流に、少なくとも1つの通気孔から排出されたモータ冷却風が加わるので、集塵のための気流を大きくすることができる。その結果、集塵効率を向上できる。
【0010】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記第2部分の前記下端は、前記上下方向において前記研磨部の前記上面と離間していてもよい。
この形態によれば、吸塵孔からハウジングの下部開口へ向かう気流が弱くなった場合には、少なくとも1つの通気孔から排出されるモータ冷却風は、カバー部(第2部分)の下端と研磨部の上面とが離間した部分から、カバー部の外側へ排出され得る。そのため、モータの冷却効率を維持できる。
【0011】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの通気孔は、前記ハウジングにおいて、前記上下方向における前記モータ冷却ファンと略同じ位置であって、前記モータ冷却ファンの径方向外側の位置に、設けられていてもよい。
この形態によれば、モータ冷却風をハウジングから比較的速やかに排出できる。そのため、モータの冷却効率を向上できる。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記少なくとも1つの通気孔は、複数の通気孔であってもよい。前記カバー部は、前記ハウジングの外形状に沿うように形成されていてもよい。
この形態によれば、モータ冷却風の流れる流路の幅を、略一定にすることができる。また、サンダが大型化することを抑制できる。また、複数の通気孔からモータ冷却風を排出できるので、モータの冷却効率を向上できる。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記サンダは、粉塵排出部を更に備えていてもよい。前記粉塵排出部は、前記ハウジングに接続され前記上下方向に交差する方向へ延在するように構成されていてもよい。前記ハウジングにおける、前記粉塵排出部との接続部分を除いた部分は、前記上下方向に直交する断面において、前記出力シャフトの軸を中心とした円弧状に形成されていてもよい。前記複数の通気孔は、前記ハウジングに円弧状に並んで配置されていてもよい。前記カバー部は、前記ハウジングの外側を覆う、ドーム形状であってもよい。
この形態によれば、モータ冷却風の流れる流路の幅を、略一定にすることができる。また、サンダが大型化することを抑制できる。また、複数の通気孔からモータ冷却風を排出できるので、モータの冷却効率を向上できる。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記冷却ファンと前記集塵ファンとは、一体に形成されていてもよい。
この形態によれば、冷却ファンと集塵ファンとが別体である構成と比較して、サンダを小型化できる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、前記カバー部は、前記ハウジングと別部材として形成されていてもよい。
この形態によれば、ハウジングの構造が複雑化することを抑制できる。
【0016】
以下、図1から図14までを参照して、一実施形態としてのサンダ1について説明する。サンダ1は、ランダムオービットサンダとも呼ばれる。
【0017】
図8に示すように、サンダ1は、モータ40と、遠心ファン(以下、ファン60)と、ハウジング10と、研磨部50とを備える。研磨部50は、モータ40(モータシャフト41)の回転軸AX1の延在方向のうちの一方側に配置され、モータ40の回転により偏心運動及び回転運動(ランダムオービット運動)するように構成されている。図1に示すように、ハウジング10は、モータ40及びファン60を収容するフロントハウジング部20と、リアハウジング部30とを含む。リアハウジング部30は、フロントハウジング部20に接続され、フロントハウジング部20から離れる方向へ延在する。
【0018】
以下では、説明の便宜上、回転軸AX1の延在方向をサンダ1の上下方向と定義する。上下方向は、モータシャフト41の軸方向でもある。上下方向に関し、フロントハウジング部20に対し研磨部50が位置する側を下側、その反対側を上側と定義する。また、上下方向に直交する方向のうち、サンダ1の長手方向を、サンダ1の前後方向と定義する。サンダ1の長手方向は、リアハウジング部30の延在方向でもある。前後方向のうち、リアハウジング部30におけるフロントハウジング部20との連結部分が位置する側を前側、その反対側を後側と定義する。更に、前後方向と上下方向とに直交する方向を、サンダ1の左右方向と定義する。
【0019】
図3図4及び図7には、仮想的な平面P1及び平面P2が示されている。平面P1は、回転軸AX1を含み、上下方向に平行な面である。平面P2は、回転軸AX1を含み、平面P1に直交する面である。本実施形態のハウジング10は、左右方向に互いに連結固定された2つの半割体(左部分10L及び右部分10R)によって形成されている。ハウジング10は、平面P2において、左部分10Lと右部分10Rとに分割される。
【0020】
図1図3及び図5図8に示すように、フロントハウジング部20は、研磨部50の上に配置され、サンダ1の前部分の外郭を規定する。フロントハウジング部20は、モータシャフト41の上側で閉塞し、モータ40及びファン60を取り囲むように形成されている。フロントハウジング部20は、上部分21と、下部分23と、上部分21と下部分23との間に位置する中間部分22とを含む。中間部分22は、上部分21及び下部分23よりも、回転軸AX1を中心とした外径が、小さく形成されている。フロントハウジング部20は、全体として、外径の異なる多段状に形成されている。上部分21には主にモータ40が収容され、下部分23には主にファン60が収容されている。下部分23のうち、研磨部50と対向する部分(詳細には、下壁234)には、回転軸AX1を中心とした、下部開口235が設けられている(図8参照)。以下、上部分21、下部分23を、夫々、モータ収容部21、ファン収容部23と呼ぶ。
【0021】
モータ収容部21は、ユーザが把持するのに適した大きさ及び形状を有する。モータ収容部21は、サンダ1の主把持部として機能する。モータ収容部21の前端には、モータ40の起動と停止とを切り替えるためのスイッチ101が設けられている。
【0022】
ファン収容部23は、略ドーム状に形成されている。ファン収容部23の外縁は、研磨部50の外縁よりも内側に位置する。本実施形態では、ファン収容部23は、ファン60の外形状に沿って形成されている。図8に示すように、ファン収容部23は、上壁231と、側壁233と、下壁234とを有する。上壁231は、中間部分22との接続箇所から径方向外側へ広がる屋根状に形成されている。側壁233は、上壁231に接続され上下方向に延在する。下壁234は、側壁233の下端233Tから径方向内側へ突出する。下壁234には、上述した開口235が形成されている。ファン収容部23内は、開口235を介して、研磨部50に設けられた複数の吸塵孔501(詳細は後述)と連通する。
【0023】
側壁233の後部には、粉塵を排出するための粉塵排出部33が接続されている。そのため、ファン収容部23のうち、粉塵排出部33との接続部分を除いた部分は、上下方向に直交する断面視(図12参照)において、回転軸AX1を中心とした円弧状を呈する。
【0024】
図5図7に示すように、ファン収容部23は、更に、複数の通気孔236を有する。複数の通気孔236は、上壁231と側壁233との接続部232周辺に設けられ、ファン収容部23を上下方向に交差する方向(径方向、左右方向)に貫通する。本実施形態では、複数の通気孔236は、左部分10Lの接続部232に対応する位置と、右部分10Rの接続部232に対応する位置とに、夫々4つ設けられている。図7に示すように、上面視において、複数の通気孔236は、円弧状に並ぶ。詳細は後述するが、複数の通気孔236は、ファン収容部23において、モータ冷却ファン61の径方向外側に対応する位置に設けられている。
【0025】
図1図2図5及び図7に示すように、リアハウジング部30は、上下に離間する二股形状によって、フロントハウジング部20と前後方向に連結されている。フロントハウジング部20内とリアハウジング部30内とは、連通している。本実施形態では、リアハウジング部30は、グリップ部31と、粉塵排出部33と、コントローラ収容部32とを有する。
【0026】
グリップ部31は、モータ収容部21の後部に接続され、前後方向に延在する。グリップ部31の上端面は、モータ収容部21の上端面と、平滑に連続する。グリップ部31は、補助把持部として機能する。ユーザは、一方の手でモータ収容部21を把持し、他方の手でグリップ部31(詳細には、グリップ部31の前半部分)を把持して、研磨作業を行うことができる。グリップ部31の後端部は、外部の交流電源を供給するための電源コードを接続可能に構成されている。
【0027】
グリップ部31の前半部分には、複数の吸気孔301が設けられている。本実施形態では、複数の吸気孔301は、左部分10L及び右部分10Rのグリップ部31の前半部分に対応する位置に、夫々4つ設けられている。詳細は後述するが、ファン60が回転すると、ハウジング10の外側の空気(外気)が、複数の吸気孔301からフロントハウジング部20へ流入する。
【0028】
粉塵排出部33は、ファン収容部23の後端に連結されて前後方向に延在する。粉塵排出部33は、略扁平筒状に形成されている。粉塵排出部33内は、ファン収容部23内と連通している。図1及び図2に示すように、粉塵排出部33の後端部には、粉塵を収容するための集塵パック200を着脱可能な装着部331が設けられている。粉塵排出部33は、ファン収容部23内の粉塵を、集塵パック200へ向けて案内する。装着部331には、集塵パック200に代えて、集塵機のホースが接続されてもよい。
【0029】
コントローラ収容部32は、粉塵排出部33の上側に設けられ、左右方向においてグリップ部31及び粉塵排出部33よりも僅かに大きく形成された部分である。図8に示すように、コントローラ収容部32には、モータ40の駆動を制御するコントローラ65が収容されている。コントローラ収容部32は、粉塵排出部33の筒状壁によって、粉塵排出部33内と区画されている。
【0030】
次に、図8図9及び図12を用いて、ハウジング10の内部構造について説明する。上述したように、フロントハウジング部20は、モータ40と、ファン60とを収容する。
【0031】
モータ40は、モータ収容部21に収容されている。モータ40は、ステータ及びロータを備えるモータ本体42と、モータシャフト41とを備える。モータシャフト41は、フロントハウジング部20に保持されたベアリング44、45に支持されている。
【0032】
ファン60は、モータ40の下側に配置され、ファン収容部23に収容されている。ファン60は、モータシャフト41を周方向に取り囲むように、モータシャフト41に対して固定されている。本実施形態では、ファン60は、上下方向に延在するボルト46を介して、モータシャフト41の下端に直交状に固定されている。ファン60の上側部分は、上下方向において、モータ本体42と対向する。ファン60の下側部分は、上下方向において、研磨部50と対向する。なお、ファン60には、モータシャフト41の回転軸AX1に偏心させて設けたベアリング48を介して、ベアリングボックス49がさらに偏心させて組付けられている。
【0033】
ファン60は、円盤状の主板63と、主板63の上面から上方へ突出する複数の羽根611と、主板63の下面から下方へ突出する複数の羽根621とを含む。図12に示すように、複数の羽根621は、主板63の中心から外縁へ向けて、湾曲放射状に延在する。複数の羽根621は、周方向に所定の間隔で並んでいる。図示は省略するが、複数の羽根611も同様に、主板63の中心から外縁へ向けて湾曲放射状に延在し、周方向に所定の間隔で並んでいる。ファン60の上側部分は、モータ40と対向しており、モータ冷却ファンとして機能する。ファン60の下側部分は、研磨部50と対向しており、集塵ファンとして機能する。以下、ファン60の上側部分をモータ冷却ファン61とも呼び、ファン60の下側部分を集塵ファン62とも呼ぶ。本実施形態では、モータ冷却ファン61と集塵ファン62とは一体に形成されているため、これらが別体である構成と比較して、サンダ1の小型化が達成されている。
【0034】
図8に示すように、モータ冷却ファン61(複数の羽根611)と、ファン収容部23の複数の通気孔236とは、上下方向における位置が略同じである。図6に示すように、複数の羽根611は、上下方向に直交する方向(例えば、左右方向)から、複数の通気孔236を介して、視認できる。詳細は後述するが、複数の通気孔236からは、モータ冷却ファン61によって生成された気流(排気風、モータ冷却風)が排出される。
【0035】
本実施形態では、主板63の上面及び下面には、夫々、オービタル運動によって発生する振動を低減するためのバランスウェイトが固定されている。そのため、図12に示すように、複数の羽根621の周方向における間隔は、一定ではない。同様に、複数の羽根611の周方向における間隔(距離、ピッチ)は、一定ではない。なお、間隔とは、羽根621における径方向外側の端と、当該羽根621と隣り合う羽根621における径方向外側の端との距離である。なお、以下では、複数の羽根621の間隔のうち、最短の間隔を間隔D1とも呼ぶ。
【0036】
図8に示すように、研磨部50は、サンダ1の最下部に位置している。研磨部50は、研磨パッド51を含む。研磨パッド51は、円盤状に形成されており、サンディングペーパーを装着可能に構成されている。研磨パッド51は、上下方向に延在するボルト56によって、ベアリングボックス49に結合されている。研磨パッド51の底面は、サンダ1の使用時に、加工材を研磨する研磨面として機能する。本実施形態では、研磨部50の駆動軸は、モータ40の回転軸AX1でもある。つまり、モータシャフト41は、出力シャフトとして機能する。サンダ1では、モータ40が回転すると、その回転がモータシャフト41に偏心するベアリング48を介してベアリングボックス49へ伝わることで、ベアリングボックス49と研磨パッド51とが偏心運動及び回転運動する。
【0037】
図4に示すように、研磨パッド51には、上下方向に貫通する、複数の吸塵孔501が設けられている。複数の吸塵孔501は、開口235を介してファン収容部23と連通する。
【0038】
ここで、ファン収容部23の内部形状について説明する。ファン収容部23の内部には、スクロール部70と舌部80とが設けられている。
【0039】
図12に示すように、スクロール部70は、集塵ファン62の径方向外側に設けられている。スクロール部70は、集塵ファン62によって生成された気流を粉塵排出部33へ導くための流路を形成する。当該流路は、スクロール流路とも呼ばれる。スクロール部70は、ファン60の回転方向R1に沿って流路断面積が増大するように形成されている。スクロール入口S1は、ファン収容部23と粉塵排出部33との接続部分のうち、左側の接続部分237周辺である。スクロール出口S2は、ファン収容部23と粉塵排出部33との接続部分のうち、右側の接続部分238周辺である。
【0040】
図8図11に示すように、スクロール部70は、ファン収容部23における複数の通気孔236の下側に設けられている。図10に示すように、複数の通気孔236の下側には、側壁233から径方向内側に突出する、内側上壁239が形成されている。内側上壁239は、ファン60の径方向外側に形成され、上下方向において下壁234と対向している。スクロール部70は、主に、内側上壁239の下面と、側壁233の内面と、下壁234の上面とによって構成される。
【0041】
舌部80は、スクロール部70におけるスクロール入口S1に設けられ、ファン60(集塵ファン62)によって生成された気流を、粉塵排出部33へ導くように構成されている。舌部80は、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向けて、周方向(詳細には、回転方向R1とは逆の方向R2)に沿って延在する。舌部80の先端部83(スクロール出口S2側の端部)は、平面P2よりも右側に位置する
【0042】
図11及び図13に示すように、舌部80の上下方向長さLは、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、広義単調減少する。広義単調減少は、非単調増加と言い換えることもできる。本実施形態では、舌部80の上下方向長さLは、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、連続的に減少(漸減)している。本実施形態では、舌部80は、スクロール入口S1側の側壁233を、スクロール出口S2側へ突出させ、かつ、上下方向長さを減少させることで形成されている。
【0043】
舌部80の下端82は下壁234に接触しており、舌部80の上端81は、方向R2に沿って(図11及び図13では、左から右へ向かうにつれて)、内側上壁239から次第に離間する。そのため、舌部80の上端81は、直線状に下方へ傾斜している。
【0044】
図12に示すように、舌部80は、平面P1に対向する前壁部85と、前壁部85に接続されて、前壁部85から後方下側へ向けて傾斜する傾斜部86とを備える。前壁部85の上端は、舌部80の上端81でもある。傾斜部86の上下方向長さは、後方へ向かうにつれて減少する。本実施形態では、舌部80の上下方向長さは、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて減少している。傾斜部86における後方への延在長さは、スクロール入口S1側で最も長く、スクロール出口S2側で最も短い。傾斜部86は、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、後方への延在長さが次第に減少する。傾斜部86は、前壁部85と粉塵排出部33における左部分10Lを繋ぐ、肉盛部でもある。傾斜部86は、前壁部85と、粉塵排出部33とを滑らかに繋ぐ。そのため、スクロール部70から舌部80を通過して粉塵排出部33へ排出される空気及び粉塵は、前壁部85を通過した後、傾斜部86に沿って流れ、粉塵排出部33の内壁(下壁)に接触する。
【0045】
本実施形態では、舌部80は、ハウジング10の左部分10Lに一体に形成されている。舌部80の先端部83は、左部分10Lと右部分10Rとが組付けられることによって、平面P2よりも右側へ位置するようになる。舌部80の上端81と内側上壁239とが、上下方向に離間した部分88は、粉塵排出部33へ粉塵を送出する開口(スクロール開口71)の一部として機能する。
【0046】
図13には、舌部80の後方から、舌部80周辺を平面P1に投影したイメージ図が示されている。上記の離間部分88のうち、平面P2よりも左側の離間部分88Lは、平面P2よりも右側の舌部80R(より詳細には、前壁部85における平面P2よりも右側部分)と、略等しい形状を有する。図14に示す比較例の舌部80Nは、ファン収容部23の左部分10Lの側壁233を、内側上壁239と下壁234とに接触させた状態で、平面P2まで延在させることで形成されている。比較例の舌部80Nの先端部83Nは、平面P2に位置する。また、比較例では、舌部80Nよりも右側における、内側上壁239と下壁234との間が、粉塵排出部33へ粉塵を排出するための開口71Nとして機能する。本実施形態の舌部80に関し、スクロール開口71の面積は、比較例との開口71Nの面積と同等である。また、スクロール開口71は、比較例のスクロール開口71Nに比べ、左右方向(周方向)に広がっている。
【0047】
図1図3及び図9図11に示すように、サンダ1は、更に、カバー90を備える。カバー90は、複数の通気孔236から離間した状態で、複数の通気孔236を覆うように構成されている。本実施形態では、カバー90は、左右方向に互いに連結固定された2つの半割体(左部分90L及び右部分90R)によって形成されている。カバー90の左部分90Lと右部分90Rとは、中間部分22の後部(コントローラ収容部32の前端上部)と、側壁233の前側とにおいてネジ止めされ、ファン収容部23に固定されている。
【0048】
カバー90は、ファン収容部23の外形状に沿って形成されている。カバー90は、ファン収容部23を覆う、略ドーム状に形成されている。カバー90の外縁は、研磨部50の外縁よりも内側に位置する。より具体的には、カバー90は、フロントハウジング部20のうち、中間部分22からファン収容部23の全体を覆う。カバー90は、ファン収容部23に接触する第1部分91と、ファン収容部23から離間した第2部分92とを有する。第1部分91の内表面は、中間部分22及び上壁231の外表面に接触する。第1部分91は、複数の通気孔236よりも上側に位置する。第2部分92は、側壁233から径方向外側に離間し、略上下方向に延在する。本実施形態では、第2部分92と側壁233との距離は、径方向において略一定である。当該距離は、約1.0~2.5mm(ミリメートル)の間における、所定の距離であってもよい。
【0049】
第2部分92の下端92Tは、ファン収容部23の下端233T及び下壁234よりも下側に位置する。また、第2部分92の下端92Tは、研磨部50の上面55から上側に離間している。そのため、カバー90内は、下端92Tと研磨部50の上面55との間を介して、サンダ1の外部と連通している。なお、下端92Tと上面55との上下方向における距離は、側壁233と第2部分92との径方向における距離よりも小さい。
【0050】
本実施形態では、上述したように、ファン収容部23のうち、粉塵排出部33との接続部分を除いた部分は、上下方向に直交する断面視(例えば、図12)において、回転軸AX1を中心とした円弧状を呈する。カバー90は、ファン収容部23に沿って形成されている。そのため、カバー90は、ファン収容部23と同様に、上下方向に直交する断面視(例えば、図11)において、回転軸AX1を中心とした円弧状を呈する。
【0051】
以上のように構成されたサンダ1では、ユーザによりサンダ1のスイッチ101がオンされると、コントローラ65は、モータ40へ供給される電力を制御する。モータ40が回転すると、研磨部50は偏心運動及び回転運動(ランダムオービット運動)し、加工材の研磨作業が可能となる。
【0052】
また、モータ40の回転により、ファン60が回転する。ファン60の複数の羽根611、621により、ハウジング10内の空気が、ファン60に集められる。このとき、ハウジング10における主板63よりも下側の空気は、複数の羽根621により、ファン60の下側部分(集塵ファン62)に集められる。これにより、複数の吸塵孔501から、開口235を介して集塵ファン62へ向かう気流が発生し、研磨作業によって生じた粉塵は、空気とともにハウジング10内に導入される。当該粉塵は、集塵ファン62の径方向外側のスクロール部70及び舌部80により、粉塵排出部33へ排出される。このように、研磨部50の複数の吸塵孔501、開口235、スクロール部70及び舌部80を介して粉塵排出部33へ向かう気流が生成されることで、粉塵は、集塵パック200に収容される。
【0053】
また、ハウジング10における主板63よりも上側の空気は、複数の羽根611により、ファン60の上側部分(モータ冷却ファン61)に集められる。これにより、複数の吸気孔301からモータ冷却ファン61へ向かう気流が発生する。また、モータ冷却ファン61の排気風(モータ冷却風)は、モータ冷却ファン61の径方向外側に設けられた複数の通気孔236から、ハウジング10の外側へ排出される。このように、吸気孔301から通気孔236へ空気が流れることにより、モータ40が冷却される。
【0054】
上述したように、ファン収容部23は、カバー90によって覆われている。図10に示すように、カバー90の第1部分91は、複数の通気孔236の上側でファン収容部23の上壁231と接触し、カバー90の第2部分92は、第1部分91の下側で複数の通気孔236から離間して、上下方向に延在する。そのため、複数の通気孔236から排出された空気は、第2部分92とファン収容部23の側壁233の外表面233sとで規定される第1流路F1を、下方へ向けて流れる(図10参照)。
【0055】
更に、モータ冷却風は、第1流路F1から、下壁234と研磨部50の上面55とで規定される第2流路F2を流れ、吸塵孔501からファン収容部23へ向かう気流に引き寄せられる。図5には、吸塵孔501からファン収容部23へ向かう流路であって、吸塵孔501及び開口235で規定される流路の一例(第3流路F3)が例示されている。以上により、複数の通気孔236から排出されたモータ冷却風は、第1流路F1、第2流路F2、第3流路F3を介して、ファン収容部23内へ導入される。ファン収容部23に導入されたモータ冷却風は、スクロール部70及び舌部80を介して粉塵排出部33へ排出される。
【0056】
以上の構成により、本実施形態のサンダ1では、通気孔236から排出されるモータ冷却風は、下側へ導かれるので、モータ冷却風に粉塵が混入している場合であっても、粉塵が作業者側へ飛散することを抑制できる。そのため、作業環境を良好に維持できる。なお、モータ冷却風への粉塵の混入は、例えば、作業環境中の粉塵が、吸気孔301を介してハウジング10内に流入することで起こり得る。また、例えば、研磨部50の吸塵孔501、ファン収容部23の開口235を介してファン収容部23に流入した粉塵が、ファン収容部23とファン60の径方向外側との間を、上側へ移動することで起こり得る。
【0057】
また、本実施形態のサンダ1によれば、通気孔236から排出されるモータ冷却風は、吸塵孔501からファン収容部23へ向かう気流(第3流路F3を流れる気流)に引き寄せられるので、粉塵が作業者側へ飛散することをより抑制できる。更に、集塵ファン62によって生成される、吸塵孔501からファン収容部23へ向かう気流に、通気孔236から排出されるモータ冷却風が加わる。そのため、モータ冷却風に粉塵が混入している場合には、当該混入した粉塵を、スクロール部70、舌部80、及び粉塵排出部33を介して、集塵パック200に収容することができる。したがって、作業環境をより良好にできる。
【0058】
更に、集塵ファン62によって生成される、吸塵孔501からファン収容部23へ向かう気流に、通気孔236から排出されるモータ冷却風が加わるので、集塵のための気流を大きくすることができる。そのため、集塵効率を向上できる。
【0059】
また、カバー90の第2部分92の下端92Tは、研磨部50の上面55から上側に離間しているので、カバー90の下端92Tと研磨部50の上面55との間を、モータ冷却風を排出するための補助排気孔99(図10参照)として利用できる。そのため、吸塵孔501から粉塵排出部33へ向かう気流が弱まった場合であっても、モータ冷却風は、通気孔236、第1流路F1、補助排気孔99を介して外部へ排出される。その結果、モータ40の冷却効率を維持できる。なお、吸塵孔501から粉塵排出部33へ向かう気流が弱まる例として、集塵パック200に収容される粉塵が所定量を超えた場合が挙げられる。
【0060】
更に、カバー90は、ファン収容部23に沿った形状を有するので、ファン収容部23の側壁233とカバー90の第2部分92とで規定される第1流路F1の幅を、径方向で略一定にできる。そのため、通気孔236から第1流路F1を介して下方へ向かう気流(モータ冷却風)を、径方向で略一定にできるので、モータ冷却風がファン収容部23内の所定の部分で滞ることを抑制できる。その結果、モータ40を効率的に冷却できる。
【0061】
また、カバー90は、ファン収容部23に沿った形状を有するので、サンダ1が大型化することを抑制できる。
【0062】
また、ファン収容部23は、複数の通気孔236を有し、複数の通気孔236は、ファン収容部23に円弧状に並んで配置されているので、モータ冷却風がファン収容部23内の所定の部分で滞ることを抑制できる。そのため、モータ40の冷却効率を向上できる。更に、複数の通気孔236から、第1流路F1、第2流路F2、開口235へ向かう気流を、径方向に複数形成できる。その結果、モータ40を効率的に冷却できる。
【0063】
以下、本実施形態のスクロール部70及び舌部80の奏する効果について説明する。図11及び図13には、舌部80の上下方向長さLのうち、最も長い部分の長さL1と、舌部80の周方向長さWとが示されている。上述したように、舌部80の上下方向長さLは、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、漸減している。そのため、集塵ファン62から送出される空気は、スクロール部70を方向R1へ向けて流れながら、舌部80に徐々に接触しつつ、粉塵排出部33へ導かれる。したがって、舌部80周辺で圧力が急激に変動することを抑制できる。その結果、舌部80周辺での急激な圧力変動による騒音の発生を抑制できる。本実施形態では、舌部80の上端81は、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、下方へ直線状に傾斜するので、急激な圧力変動をより抑制できる。そのため、騒音の発生をより抑制できる。また、舌部80周辺での急激な圧力変動を抑制できるので、集塵ファン62から送出される空気に含まれる粉塵を、舌部80を介して粉塵排出部33へスムーズに送出することができる。そのため、集塵効率を向上できる。
【0064】
更に、本実施形態では、周方向長さWは、上下方向長さL1よりも大きい(式(1)参照)。これにより、集塵ファン62から送出される空気と舌部80との接触長さ(換言すれば、接触時間)を長くできるので、舌部80周辺で圧力が急激に変動することをより抑制できる。そのため、騒音の発生をより抑制できるとともに、集塵効率をより向上できる。
【0065】
W>L1・・・(式(1))
【0066】
なお、周方向長さWは、上下方向長さL1の2倍以上、3倍以下の大きさであることが好ましい(式(2)参照)。このように舌部80を構成することで、舌部80周辺で圧力が急激に変動することを、効果的に抑制できる。そのため、騒音の抑制と、集塵効率の向上とを効果的に達成できる。
【0067】
2L1≦W≦3L1・・・(式(2))
【0068】
また、本実施形態では、舌部80は、集塵ファン62に対し、周方向長さWが、図12に示す複数の羽根621の間隔D1以上になるように形成されている(式(3)参照)。そのため、間隔D1を規定する2つの羽根621,621は、集塵ファン62の回転により、同時に舌部80を通過する。これにより、舌部80周辺の圧力変動を小さくできる。
【0069】
D1≦W・・・(式(3))
【0070】
なお、舌部80の周方向長さWは、複数の羽根621の間隔D1以上であって、間隔D1の3倍以下であることが好ましい(式(4)参照)。このように舌部80を構成することで、舌部80周辺の圧力変動を小さくできるとともに、スクロール開口71の面積を充分に確保できる。なお、本実施形態では、舌部80の周方向長さWは、間隔D1の1.2倍である。
【0071】
D1≦W≦3D1・・・(式(4))
【0072】
本実施形態では、ハウジング10は、左部分10Lと右部分10Rとに分割可能であり、舌部80は一方の部分(左部分80L)に一体に形成されている。舌部80の先端部83は、左部分10Lと右部分10Rとが組付けられたときに、平面P2よりも右側に位置する。そのため、舌部80の周方向長さWを長くしつつ、舌部80を容易に形成できる。
【0073】
更に、舌部80と内側上壁239と離間部分88のうち、平面P2よりも左側の離間部分88Lは、平面P2よりも右側の舌部80Rと、略等しい形状を有する。そのため、スクロール開口71(開口面積)を充分に確保しつつ、舌部80の周方向長さWを長くすることができる。したがって、本実施形態によれば、騒音の抑制と集塵効率の向上とを達成可能なサンダ1を、容易に製造できる。
【0074】
また、舌部80は、前壁部85から後方下側へ向けて傾斜する傾斜部86を備える。そのため、スクロール部70から舌部80を通過して粉塵排出部33へ排出される空気及び粉塵は、前壁部85を通過した後、傾斜部86に沿って流れ、粉塵排出部33の内壁(下壁)に接触する。したがって、舌部80が傾斜部86を備えない構成と比較して、粉塵が前壁部85の真後ろに滞留することを抑制できる。その結果、集塵効率をいっそう向上できる。
【0075】
上記実施形態の構成(特徴)と本開示の構成(特徴)との対応関係を以下に示す。但し、実施例の構成(特徴)は単なる一例であって、本開示あるいは本発明の構成(特徴)を限定するものではない。
サンダ1は、「サンダ」の一例である。
モータ40は、「モータ」の一例である。
モータシャフト41は、「出力シャフト」の一例である。
研磨部50は、「研磨部」の一例である。
集塵ファン62、ファン60は、「集塵ファン」の一例である。
モータ冷却ファン61、ファン60は、「モータ冷却ファン」の一例である。
モータ40は、「モータ」の一例である。
ファン収容部23、フロントハウジング部20は、「ハウジング」の一例である。
カバー90は、「カバー部」の一例である。
通気孔236は、「少なくとも1つの通気孔」の一例である。
第1部分91、第2部分92は、夫々、「第1部分」、「第2部分」の一例である。
吸塵孔501は、「吸塵孔」の一例である。
上面55は、「研磨部の上面」の一例である。
下壁234は、「下壁」の一例である。
開口235は、「下部開口」の一例である。
下端233Tは、「第2部分の下端」の一例である。
外表面233sは、「ハウジングの外表面」の一例である。
第1流路F1、第2流路F2は、夫々、「第1流路」、「第2流路」の一例である。
粉塵排出部33は、「粉塵排出部」の一例である。
【0076】
<他の実施形態>
本開示に係る打撃工具は、上記実施形態のサンダ1に限定されない。例えば、下記に例示される非限定的な変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、サンダ1及び請求項に記載された構成(特徴)の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0077】
モータ冷却風を排気するための通気孔236の数及び配置は、上記の実施形態に限らない。また、モータ冷却風の吸気孔301の数及び配置、研磨部50の吸塵孔501の数及び配置、ハウジング10の下部における開口235の形状等は、本開示の技術が適用されるサンダの形状等に応じて、適宜変更可能である。
【0078】
集塵ファン62とモータ冷却ファン61とは、別体として形成されていてもよい。この形態によっても、上述の実施形態と同様に、良好な作業環境を維持できる。また、集塵ファン62の回転による騒音を低減するとともに、集塵効率を向上できる。
【0079】
カバー90は、ハウジング10と一体に形成されていてもよい。この形態によれば、ハウジング10に対してカバー90を装着する手間を省くことができる。また、カバー90は、少なくとも通気孔236を介してハウジング10内とハウジング10外との空気の流通を可能なように、ハウジング10の外側に配置されていれば、その形状は上記実施形態に限られない。例えば、カバー90は、第1部分91の屋根形状を径方向外側へ延在させることで、通気孔236を覆うように構成されていてもよい。この場合には、カバー90は、第2部分92を備えていなくともよい。この形態によっても、粉塵が作業環境に飛散することを抑制できる。また、カバー90が通気孔236の上側に配置されるため、作業者側に粉塵が飛散することを抑制できる。
【0080】
研磨部50は、モータシャフト41に動作可能に連結されていればよい。また、研磨部50を駆動するシャフトや、ファン60のシャフトは、モータシャフト41とは別体で設けられていてもよい。また、研磨部50や、ファン60のシャフトは、モータシャフト41の回転軸AX1と交差していてもよい。
【0081】
粉塵排出部33は、ファン収容部23に接続され、平面P1に対して直交する方向に延在していればよい。例えば、粉塵排出部33は、ファン収容部23の外縁に沿うように、上述の平面P2に対して右側に設けられていてもよい。この形態によっても、舌部80周辺での急激な圧力変動による騒音の発生を抑制できる。また、ファン収容部23から粉塵排出部33へ粉塵をスムーズに排出することができる。
【0082】
舌部80の上下方向長さLは、スクロール入口S1側からスクロール出口S2側へ向かうにつれて、広義単調減少していればよく、例えば、上下方向長さLが一定の部分があってもよい。この形態によっても、舌部80周辺での急激な圧力変動による騒音の発生を抑制できる。また、ファン収容部23から粉塵排出部33へ粉塵をスムーズに排出することができる。
【0083】
上記実施形態では、ランダムオービットサンダが例示されているが、本開示の特徴は、モータ40によって駆動される、研磨部50、ファン60を有する別のサンダに適用されてもよい。サンダの一例として、偏心運動するように構成された研磨部を有するオービタルサンダが挙げられる。本開示の特徴が適用されるサンダに応じて、モータ40及びファン60の構成、配置、カバー90の形状等は、適宜変更されうる。例えば、モータ40には、直流モータ(例えば、ブラシレスDCモータ)が採用されてもよい。この場合、例えば、サンダ1には、充電式のバッテリ(バッテリパックともいう)を着脱可能なバッテリ装着部が設けられてもよい。
【0084】
更に、本開示、上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態及びその変形例、並びに各請求項に記載された構成(特徴)の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記粉塵排出部は、粉塵を収容可能な粉塵収容部を着脱可能に構成された、装着部を備える。
[態様2]
前記ハウジングは、前記上下方向の上側に設けられ、作業者が把持するための把持部を備える。
[態様3]
前記カバーの外縁は、前記研磨部の外縁よりも内側に位置する。
[態様4]
前記サンダは、前記集塵ファンの径方向外側に周方向に形成され、前記集塵ファンによって生成された気流を前記粉塵排出部へ送出するように構成されたスクロール部を更に備え、
前記少なくとも1つの通気孔は、前記上下方向において前記スクロール部よりも前記上側に設けられている。
[態様5]
前記スクロール部は、前記ハウジングの前記下壁と、側壁と、前記側壁から径方向内側に突出する内側上壁と、を含み、
前記少なくとも1つの通気孔は、前記内側上壁よりも上側に設けられている。
[態様6]
前記ハウジングは、前記ハウジングの内側と外側を連通する、前記モータを冷却するための吸気孔を備える。
【符号の説明】
【0085】
1:サンダ、10:ハウジング、10L:左部分、10R:右部分、20:フロントハウジング部、21:モータ収容部、22:中間部分、23:ファン収容部、231:上壁、232:接続部、233:側壁、233T:下端、233s:外表面、234:下壁、235:開口、236:通気孔、237、238:接続部分、239:内側上壁、30:リアハウジング部、301:吸気孔、31:グリップ部、32:コントローラ収容部、33:粉塵排出部、331:装着部、40:モータ、41:モータシャフト、42:モータ本体、44:ベアリング、45:ベアリング、46:ボルト、48:ベアリング、49:ベアリングボックス、50:研磨部、501:吸塵孔、51:研磨パッド、55:上面、56:ボルト、60:ファン、61:モータ冷却ファン、611:羽根、62:集塵ファン、621:羽根、63:主板、65:コントローラ、70:スクロール部、71:スクロール開口、80:舌部、80L:舌部の左部分、80R:舌部の右部分、81:上端、82:下端、83:先端部、85:前壁部、86:傾斜部、88:離間部分、88L:離間部分、71N:比較例のスクロール開口、80N:比較例の舌部、83N:比較例の先端部、90:カバー、90L:左部分、90R:右部分、91:第1部分、92:第2部分、92T:下端、99:補助排気孔、101:スイッチ、200:集塵パック、AX1:回転軸、D1:間隔、F1:第1流路、F2:第2流路、F3:第3流路、P1:平面、P2:平面、S1:スクロール入口、S2:スクロール出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14