(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005399
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヘッドカバー構造
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20240110BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F01M13/04 E
F02F7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105564
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田中 多聞
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
【Fターム(参考)】
3G015BD23
3G015BE11
3G015CA05
3G015DA04
3G024AA72
3G024BA24
(57)【要約】
【課題】容積に制限のあるヘッドカバー内にオイルセパレータを設けるようにして、ブローバイガスの外部配管長さを短くして凍結のおそれを極力回避すること、及びエンジンの大型化の抑制を図りながら、十分なオイルの捕捉作用が得られるように、合理的に改善されたヘッドカバー構造を提供する。
【解決手段】ブローバイガスをヘッドカバーHの内部を通してから吸気通路Cに導くように構成され、ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータAがヘッドカバーHの内部に設けられ、オイルセパレータAにおけるブローバイガスの入口であるガス導入部7が、オイルセパレータAの上端部に設けられているヘッドカバー構造。クランクケースからのブローバイガスは、ヘッドカバーHの内面とオイルセパレータAの外面とで挟まれた流通空間部Sを通ってガス導入部7へ流れる構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスをヘッドカバーの内部を通してから吸気通路に導くように構成され、
ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータが前記ヘッドカバーの内部に設けられ、
前記オイルセパレータにおけるブローバイガスの入口であるガス導入部が、前記オイルセパレータの上端部に設けられているヘッドカバー構造。
【請求項2】
クランクケースからのブローバイガスは、前記ヘッドカバーの内面と前記オイルセパレータの外面とで挟まれた流通空間部を通って前記ガス導入部へ流れる構成とされている請求項1に記載のヘッドカバー構造。
【請求項3】
前記流通空間部は、前記ヘッドカバーの天井壁の内面と前記オイルセパレータの上面との間の空間部、及び/又は前記ヘッドカバーの側壁の内面と前記オイルセパレータの側面との間の空間部を有している請求項2に記載のヘッドカバー構造。
【請求項4】
前記オイルセパレータが有するオイルフィルタは、そのガス入口が前記ガス導入部となる状態で設けられている請求項1~3の何れか一項に記載のヘッドカバー構造。
【請求項5】
前記オイルセパレータにおけるブローバイガスの出口であるガス導出部に前記オイルフィルタから出たブローバイガスを送る内部通路が、前記オイルフィルタの下に設けられている請求項4に記載のヘッドカバー構造。
【請求項6】
前記ガス導出部は、前記オイルフィルタの側方において前記オイルセパレータから上向きに開口する状態で設けられている請求項5に記載のヘッドカバー構造。
【請求項7】
前記ガス導出部は、前記オイルフィルタに対して気筒直列方向に並ぶように配置されている請求項6に記載のヘッドカバー構造。
【請求項8】
前記ガス導入部にその横側方からブローバイガスが流入されるように、前記ガス導入部の上面側を覆う板状体が設けられている請求項1~3,5~7の何れか一項に記載のヘッドカバー構造。
【請求項9】
前記オイルセパレータから下方突出するオイル貯まり部が形成され、前記オイル貯まり部の下端部には、前記内部通路の下方に配置される動弁機構の構成要素を避ける状態で前記動弁機構の高さ領域内に位置するオイル出口を有している請求項5~7の何れか一項に記載のヘッドカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガス還流装置を備える各種エンジンに適用されるヘッドカバー構造であって、オイルセパレータを備えるヘッドカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用などのディーゼルエンジンにおいては、ブローバイガスをシリンダヘッドカバー(以下、ヘッドカバーと略称する)の内部を通してから吸気通路に戻す構成、いわゆるブローバイガス還流装置を備える構造のものが多い。
【0003】
クランクケースからのブローバイガスを、ヘッドカバー内部を通してからヘッドカバー外へ取り出して吸気通路へ戻す構成では、ヘッドカバー内における動弁機構の上側にブローバイガスの通路が設けられることが多い。ヘッドカバー内部では、ブローバイガス通路は上下に狭い扁平な通路となり易いので、ブローバイガスからオイル成分を捕捉するオイルセパレータは、専用の部品としてヘッドカバー外に設けられるのが一般的であった(例えば、特許文献1)。
【0004】
オイルセパレータをシリンダブロックのサイドに配置する構造では、ヘッドカバー内のようなスペースの制限があまり無いので、十分な容量のものにできる利点がある。しかしながら、専用部品であるオイルセパレータがエンジンの補機として追加されるので、次のような不利がある。
【0005】
即ち、オイルセパレータに対するブローバイガスの入口通路及び出口通路は、ホースなどの専用の配管手段を用いることになるので、それら配管手段を配策するためのスペースが必要になる(エンジンが横方向に嵩張って大型化し易くなる)。また、ヘッドカバーから吸気通路までのガス通路が長くなり、外部配管長さも長くなるので、寒冷時におけるブローバイガス中に含まれている水分の凍結のおそれが増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、構造工夫により、容積に制限のあるヘッドカバー内にオイルセパレータを設けるようにして、ブローバイガスの外部配管長さを短くして凍結のおそれを極力回避すること、及びエンジンの大型化の抑制を図りながら、十分なオイルの捕捉作用が得られるように、合理的に改善されたヘッドカバー構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヘッドカバー構造において、
ブローバイガスをヘッドカバーの内部を通してから吸気通路に導くように構成され、
ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータが前記ヘッドカバーの内部に設けられ、
前記オイルセパレータにおけるブローバイガスの入口であるガス導入部が、前記オイルセパレータの上端部に設けられていることを特徴とする。
【0009】
そして、クランクケースからのブローバイガスは、ヘッドカバーの内面とオイルセパレータの外面とで挟まれた流通空間部を通ってガス導入部へ流れる構成とすれば好都合である。また、流通空間部は、ヘッドカバーの天井壁の内面とオイルセパレータの上面との間の空間部、及び/又はヘッドカバーの側壁の内面とオイルセパレータの側面との間の空間部を有しているとさらに好都合である。
【0010】
なお、上記以外の本発明については、特許請求の範囲における請求項4~9を参照のこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オイルセパレータがヘッドカバーに内蔵されているので、外部配管の省略又は長さの激減が行え、それら外部配管やオイルセパレータが冬季などにおいて冷気に晒されることがないとともに、周囲に存在するブローバイガスによってオイルセパレータに保温や断熱の作用が期待できるようになる。従って、オイルセパレータや外部配管の内部で水分が氷結し、閉塞されてしまう不都合がまず生じないように改善される。
【0012】
ブローバイガスのガス導入部がオイルセパレータの上端部にあるので、ヘッドカバー内におけるガス導入部までのブローバイガスの移動距離を無理なく増やせて、ブローバイガスからのオイル成分の捕捉作用の強化を図ることができる。そして、オイルセパレータから下向きに流入するブローバイガスは向きを変えて進むようになり、その向き変更による慣性分離によってオイル成分の捕捉作用が促進されるようになる。
【0013】
その結果、ヘッドカバー内にオイルセパレータを設けて、ブローバイガスの外部配管長さを短くして凍結のおそれを極力回避すること、及びエンジンの大型化の抑制を図りながら、十分なオイルの捕捉作用が得られるように、合理的に改善されたヘッドカバー構造を提供することができる。
【0014】
なお、オイルフィルタをオイルセパレータのガス導入部に設ける構成とすれば、オイルセパレータ内でのブローバイガスの上から下への流れにより、オイルフィルタに異物(カーボンなど)が堆積されないようにする清掃作用が期待できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヘッドカバーとその内部構造の概要を示す要部の縦断面図
【
図2】ヘッドカバーとその内部構造の概要を示す要部の横断面図
【
図8】ヘッドカバーの内部構造を示す要部の詳細な縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明によるヘッドカバー構造の実施の形態を、産業用ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。なお、オイルセパレータAの構造は、簡単のため、
図1,2においてはある程度簡略化(カバー蓋18の省略など)して描いてある。また、
図5においては、簡単のため、吸入口部18aは一部のみ描いてある。
【0017】
図4に平面視で示す産業用ディーゼルエンジンEにおいて、28は過給機(ターボチャージャー)、29は冷却ファン、30は排気処理装置、31はオルタネータ、32はウォータフランジ、33は伝動ケース、34は吸気マニホルド、Hはヘッドカバーである。このエンジンEには、後述するブローバイガス還流装置Bが設けられている。
【0018】
図1~
図3に示されるように、ヘッドカバーHは、シリンダヘッド1の上にボルト止めにより組付けられる下ヘッドカバー2と、下ヘッドカバー2の上にボルト止めにより組付けられる上ヘッドカバー3とから構成されている。ヘッドカバーHには、ブローバイガス中のオイル成分を捕捉して分離するオイルセパレータAが収容されている。
【0019】
クランクケースからのブローバイガスは、シリンダヘッド1の内部を通って下ヘッドカバー2及び上ヘッドカバー3を通ってオイルセパレータAに入る。オイルセパレータAでオイル成分がある程度除去されたブローバイガスは、上ヘッドカバー3のガス出口部3GからヘッドカバーH外に排出され、還元通路27を通って吸気通路(新気の導入経路)Cに流れるように構成されたブローバイガス還流装置Bが設けられている。
【0020】
つまり、ブローバイガスgをヘッドカバーHの内部を通してから吸気通路Cに導くように構成され、ブローバイガスgからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータAがヘッドカバーHの内部に設けられ、オイルセパレータAにおけるブローバイガスgの入口であるガス導入部7が、オイルセパレータAの上端部に設けられている。なお、
図1,4に示す35は、燃料噴射インジェクタ(図示省略)を駆動するワイヤーハーネスであり、
図1,3に示す36は、ワイヤーハーネス35を通すための取出し孔である。
【0021】
図1,2、及び
図5~8に示されるように、オイルセパレータAは、上側の第1ケース5と、下側の第2ケース6とからなる本体ケース4と、エレメントケース(フィルタケース)9Aとを有している。そして、ブローバイガスの入口であるガス導入部7,ブローバイガスの出口であるガス導出部8、オイル成分を捕捉するオイルエレメント(オイルフィルタ)9、チェック弁10、バイパス弁16などが設けられている。
【0022】
図1,2,6,7に示されるように、オイルエレメント9は、平面視で前後に長く上下の幅が比較的短い長方形のもので、専用のエレメントケース9Aに収容され、第1ケース5の上側に複数(4カ所)のボルト22により組付けられて一体化されている。
エレメントケース9Aは、オイルエレメント9を収容する無蓋箱状の本体ケース部9aと、本体ケース部9aの上に複数カ所でボルト止めされる板状のカバー蓋(板状体の一例)18とにより構成されている。
カバー蓋18には、例えば円形の孔である吸入孔部18a(ガス入口9gやガス導入部7でもある)が多数形成されており、上ヘッドカバー3内の天井部に流れてきたブローバイガスgは、それら多数の吸入孔部18aからエレメントケース9Aに入り込む構成とされていると好都合である。
【0023】
図6、
図7に示されるように、本体ケース部9aの後部の下側には、下方突出する排出ケース部9bが形成されている。例えば、上下方向視の形状が円形をなす排出ケース部9bは、第1ケース5の後部上側に形成されている導入開口5aにシールリング(符記省略)を介して液密状に内嵌合されている。
【0024】
つまり、オイルエレメント9を経た(オイル成分がある程度除去された)ブローバイガス及びオイルエレメント9で捕捉されてオイル成分(エンジンオイル、水など)は、排出ケース部9bから第1ケース5に入るように構成されている。
そして、導入開口5aから本体ケース4に入ってくるブローバイガスgは、内部通路17を前方に向かって流れ、第1ケース5の前端部の上側に形成されているガス導出部8から排出される。なお、
図5,6に示す8aは、ゴム輪などのシール体である。
【0025】
第1ケース5は、ガス導出部8を有する前最上壁5Aと、エレメントケース9Aが上に配置される上壁5Bと、後最上壁5Cとを有している。前最上壁5Aの後端部及び後最上壁5Cには、エレメントケース9Aをボルト22止めするためのナット部25が形成されている。本体ケース4としての最も高い壁は前後の最上壁5A,5Cであるが、オイルセパレータAとしての最も高い位置にある壁はカバー蓋18である。
【0026】
下側の第2ケース6には、下方突出する前後一対のオイル貯まり部20,21が形成され、各オイル貯まり部20,21の下端部には、チェック弁10を伴ったオイル出口20A,21Aが設けられている。各オイル貯まり部20,21は、動弁機構Vの構成要素を避けるように段階的に先窄まり状となる状態で下方に延設されている。従って、各オイル出口20A,21Aは、内部通路17の下方に配置される動弁機構Vの構成要素を避ける状態で動弁機構Vの高さ領域内に位置するオイル出口20A,21Aを有している。
【0027】
内部通路17を移動中のブローバイガスgから補足されたオイル成分、及びエレメントケース9Aから流れ落ちて来るオイル成分は、前後のオイル貯まり部20,21のオイル出口20A,21Aから上ヘッドカバー3内に(エンジン内部に)戻るように構成されている。つまり、各オイル貯まり部20,21の下端部には、内部通路17の下方に配置される動弁機構Vの構成要素を避ける状態で動弁機構Vの高さ領域内に位置するオイル出口20A,21Aを有している。
【0028】
また、エレメントケース9Aの第2ケース6の後端部には、下向きに開口可能なバイパス弁16が設けられている。上ヘッドカバー3の内圧が(エンジン内部の内圧が)所定圧以上になると、それまで「閉」状態にあったバイパス弁16が「開」状態になり、内部通路17及びガス導出部8を介して吸気通路へ圧を逃がせるように構成されている。
【0029】
図1、
図2、及び
図3に示されるように、上ヘッドカバー3の天井壁3Eには、その天井内面3eから下方に延びるリブ壁23が形成されている。リブ壁23は、左側壁3Cの内側面である左内面3cから右方へ延びる横リブ23Aと、横リブ23Aの右端から90度後方に折れ曲がって続いて後側壁3Bの内側面である後内面3bに合流する縦リブ23Bとを有している。天井壁3Eの内側には、下向きの開口24を有する厚肉の弁用リブ24Aが横リブ23Aの前側に続く状態で形成されている。
【0030】
上ヘッドカバー3の天井壁3E、左側壁3C、後側壁3B、横リブ23A、及び縦リブ23Bで囲まれた無底箱状の空間部に、エレメントケース9Aの上部が入り込むように、オイルセパレータAは下ヘッドカバー2の上端部にボルト止めされている。その結果、クランクケースから流れて来るブローバイガスgは、オイルセパレータAの前後左右の側壁4A~4D及び天井壁4Eと上ヘッドカバー3の前後左右の側壁3A~3D及び天井壁3Eとの間の幅狭な空間である流通空間部11~15(流通空間部S)を通って多数の吸入口部18aに流れる。
【0031】
図1,2,8に示されるように、前流通空間部11は、本体ケース4の前側壁4Aと(前外面4aと)上ヘッドカバー3の前側壁3Aと(前内面3aと)の前後間の空間、及び、エレメントケース9Aの前面(符記省略)と横リブ23Aの後面(符記省略)との間の空間を含んでいる。
後流通空間部12は、本体ケース4の後側壁4Bと(後外面4bと)上ヘッドカバー3の後側壁3Bと(後内面3bと)の前後間の空間であり、エレメントケース9Aの後面(符記省略)と後内面3bとの間の空間も含んでいる。
【0032】
左流通空間部13は、本体ケース4の左側壁4Cと(左外面4cと)上ヘッドカバー3の左側壁3Cと(左内面3cと)の左右間の空間であり、エレメントケース9Aの左面(符記省略)と左内面3cとの間の空間も含んでいる。
右流通空間部14は、本体ケース4の右側壁4Dと(右外面4dと)上ヘッドカバー3の右側壁3Dと(右内面3dと)の左右間の空間であり、エレメントケース9Aの右面(符記省略)と縦リブ23Bとの間の空間も含んでいる。
【0033】
また、カバー蓋18と(カバー蓋18の上面と)上ヘッドカバー3の天井壁3Eと(天井内面3eと)の上下間の空間である上流通空間部15も流通空間部Sである(
図6や
図9を参照)。なお、オイルエレメント9が本体ケース4に内装されている構造を採るオイルセパレータ(図示省略)の場合には、本体ケース4の天井壁4Eと(上面4eと)上ヘッドカバー3の天井壁3Eと(天井内面3eと)の上下間の空間が上流通空間部15になる。なお、
図6,7に示される構造では、カバー蓋18の上面がオイルセパレータAの上面4eに相当している。
【0034】
次に、ヘッドカバーH内におけるブローバイガスgは、
図1、
図2に矢印で示されるように、前後左右の流通空間部11~14を通って(上流通空間部15を通ることもある)上昇移動し、オイルセパレータAの入口であるガス導入部7、即ちカバー蓋18の吸入孔部18aからオイルエレメント9に(エレメントケース9Aに)入る(
図6を参照)。オイルエレメント9を上から下に移動する際にブローバイガス中のオイル成分が捕捉され、その捕捉されたオイル成分及びオイル成分がある程度除去されたブローバイガスgが、排出ケース部9bから第1ケース5の内部通路17に流れる。
【0035】
下向きに流れるブローバイガスgが、内部通路17で前進すべく向きを前向きに変える際にもオイル成分が曲がり切れず下方移動して捕捉される作用(慣性力分離作用)も加わり、捕捉されたオイル成分は、前後2カ所のオイル貯まり部20,21からヘッドカバーH内に流下排出される。内部通路17を前進するブローバイガスgは、本体ケース4の前端部で向きを上向きに変え、ガス導出部8からオイルセパレータAの外部へ排出される。前進から上昇に向きを変える際にも、慣性力分離作用によるブローバイガスgからのオイル成分の分離及び捕捉効果が期待できる。
【0036】
ガス導出部8から出るブローバイガスgは、上ヘッドカバー3の天井壁3Eに設けられた調圧弁26を経てから、ホース配管などの専用の還元通路27(
図4参照)を通って吸気通路Cに流れて行く構成とされている。吸気通路Cの具体例としては、
図4に示されるように、過給機(ターボ)28のエア供給部28Aであり、還元通路27の終端がエア供給部28Aに合流されている。
【0037】
以上説明したように、ブローバイガスgをヘッドカバーHの内部を通してから吸気通路Cに導くように構成され、ブローバイガスgからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータAがヘッドカバーHの内部に設けられ、オイルセパレータAにおけるブローバイガスgの入口であるガス導入部7が、オイルセパレータAの上端部に設けられている。
【0038】
つまり、ヘッドカバーH内において上昇移動するブローバイガスgは、前後左右の流通空間部11~14及び上流通空間部15を通って上昇移動し、それからオイルセパレータAのガス導入部7である吸入孔部18a(
図6参照)に入る。従って、ガス導入部がオイルセパレータの横や下方に設けられている構造に比べて、ヘッドカバーの大型化を図ることなくオイルセパレータに到達するまでの移動距離を無理なく増やせ、オイル成分の捕捉機会も増やすことができる。勿論、オイルセパレータをエンジン外に設ける場合に比べて、オイルセパレータ及び外部配管が冷され、水分が凍結するおそれが軽減又は解消される利点もある。
【0039】
クランクケースからのブローバイガスは、ヘッドカバーHの内面とオイルセパレータAの外面とで挟まれた流通空間部S(前後左右の流通空間部11~14)を通ってガス導入部7へ流れる構成とされているので、オイルセパレータAとヘッドカバーHの天井壁3Eとの間の狭い空間部(上流通空間部15)にガス導入部7をは配置しながらも、十分なブローバイガスgの流れ(単位面積当たりの流量)が得られる利点がある。
【0040】
オイルエレメント9のガス入口9G(吸入孔部18a:
図6参照)が、オイルセパレータAのガス導入部7となる状態に構成されているので、それらが別々に存在する場合に比べて、構成の兼用化及びコンパクトが可能となる合理化構造が実現されている。また、エレメントケース9Aが本体ケース4に上からボルト止めされているので、オイルエレメント9のみの交換や取外してのメンテナンスが便利に行える利点もある。
【0041】
オイルセパレータAでは、共に上部に配置されるオイルエレメント9及びガス導出部8の下方に内容積の大部分を占める内部通路17が設けられているので、エレメントケース9A内におけるブローバイガスgの進む向き変更(下降→前向き、前向き→上昇)箇所を多くして、慣性分離によるオイル成分の捕捉作用も得られ易い利点がある。
【0042】
カバー蓋18に形成された多数の吸入孔部18aによる広い面積のガス入口9g(ガス導入部7)とされているので、天井面3eとカバー蓋18の上面とによる上流通空間部15から効率よくかつ円滑にブローバイガスgをオイルエレメント9に流入させることができる。ヘッドカバー2の内部最上部までの長い距離を移動してきたブローバイガスgは、ガス入口9gにおいて向き変更され、慣性分離によるオイル成分の捕捉作用が期待できる利点もある。
【0043】
また、各オイル貯まり部20,21の下端部には、動弁機構Vの高さ領域内に位置するオイル出口20A,21Aが形成されているので、ヘッドカバーH内部の空間部を効率良くオイルセパレータAの容積増大に用いることができるとともに、捕捉オイルを動弁機構Vの潤滑に適用させながらエンジン内に戻せる利点もある。
【0044】
〔別実施形態〕
(1)カバー蓋18が省略されるなど、オイルセパレータAのガス導入部7としての開口面積が拡大されたヘッドカバー構造でもよい。また、オイルエレメント9が、本体ケース4に収容された構造のオイルセパレータを有するものでも良い。
【0045】
(2)
図8に示唆されるように、無孔板状のカバー蓋18と本体ケース部9aとを若干上下に離して配置することにより、前後左右の全周で開口する横向き状の導入スリット19が形成される構造のオイルエレメント9を有するオイルセパレータAでも良い。この構造では、上ヘッドカバー3内の天井部に流れてきたブローバイガスgは、ガス導入口7となる導入スリット19からエレメントケース9Aに入り込むようになる。
【0046】
つまり、ガス導入部7は、エレメントケース9Aとカバー蓋18との間の周状空間でなる導入スリット19に構成されているので、ガス入口9G(ガス導入部7)にブローバイガスgが横向きに流入されるようになる。故に、ガス導入部7に入ったブローバイガスgは横向きから下向きに進路変更され、ガス入口9Gにおいても慣性分離によるオイル成分の捕捉作用が期待できる利点がある。
【符号の説明】
【0047】
3a~3d 側壁の内面
3e 天井壁の内面
4a~4d 側面
4e 上面
7 ガス導入部
8 ガス導出部
9 オイルフィルタ
9G ガス入口
11~15 空間部
17 内部通路
18 板状体
20,21 オイル貯まり部
20A,21A オイル出口
A オイルセパレータ
C 吸気通路
H ヘッドカバー
S 流通空間部
V 動弁機構