(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053992
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
(51)【国際特許分類】
D05B 19/16 20060101AFI20240409BHJP
D05B 33/02 20060101ALI20240409BHJP
D05B 69/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D05B19/16
D05B33/02
D05B69/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160549
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595105009
【氏名又は名称】株式会社松屋アールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150CC01
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE21
3B150CE24
3B150CE27
3B150EB01
3B150EB06
3B150EB13
3B150GD05
3B150GE29
3B150JA03
3B150LA23
3B150LA35
3B150LA85
3B150LB01
3B150MA15
3B150NA22
3B150NA34
3B150NB09
3B150NB18
3B150NC03
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにする。
【解決手段】制御装置10は、被縫製材Mの縫製予定位置を縫製点に合わせたときに縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるようにロボット保持位置及びロボット保持方向を制御し、ロボット保持位置及びロボット保持方向と、縫製予定位置及び縫製予定方向との関係を用いて、ロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、ロボット保持位置がロボット保持位置速度で移動するようにロボット20を制御し、ミシン30の送り速度と、縫製予定位置速度とが一致するように、ミシン30を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、
予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、
前記ロボット及び前記縫製装置の各々を制御する制御装置と、
を含む縫製システムであって、
前記制御装置は、
前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、
前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御する制御部
を備えた縫製システム。
【請求項2】
前記縫製予定位置は、前記被縫製材上において連続的な自由曲線上に設定され、
前記制御部は、前記縫製予定位置が前記自由曲線上を順次移動するように前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記縫製予定位置に応じて、前記関係を満たす、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度を設定する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記縫製予定位置は、縫製予定の各縫い目の位置として表され、
前記制御部は、前記縫製予定の各縫い目の位置毎に、前記関係を満たす、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度を設定する
請求項2に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度の少なくとも一方に上限値を設定する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度から定まる他方の速度が前記上限値を超えた場合、前記一方の速度を現在速度よりも低く制御する
請求項4に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記ロボット保持位置速度に基づいて定まる前記縫製予定位置速度に対応して、前記縫製装置の送り速度を制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記被縫製材を撮影して得られた画像から、前記被縫製材の前記縫製予定位置及び現在の縫製位置を示す現在縫製位置を取得し、前記縫製予定位置と前記現在縫製位置とが一致するように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記被縫製材には、前記縫製予定位置が設定される連続的な自由曲線と、前記ロボット保持位置とが立体的に配置される
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記ロボットから、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持位置速度を取得し、前記縫製点から前記ロボット保持位置へ向かう距離を大きさとする距離ベクトルを求め、前記ロボット保持位置速度及び前記距離ベクトルを用いて、前記縫製予定位置速度を算出する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項10】
前記距離ベクトルは、前記ロボットの原点から前記ロボット保持位置に向かう第1ベクトルと、前記原点から前記縫製点に向かう第2ベクトルとを用いて算出される
請求項9に記載の縫製システム。
【請求項11】
前記被縫製材は、第1被縫製材及び第2被縫製材を含み、
前記ロボットは、前記第1被縫製材の一部を保持する第1ロボット、及び、前記第2被縫製材の一部を保持する第2ロボットを含み、
前記制御部は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を重ねて縫製する場合に、前記第1ロボット及び前記第2ロボットの一方に対して、前記縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、第1のロボット保持位置及び第1のロボット保持方向を制御し、
前記第1のロボット保持位置及び前記第1のロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、第1のロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記第1のロボット保持位置が前記第1のロボット保持位置速度で移動するように前記一方のロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御し、
前記第1ロボット及び前記第2ロボットの他方についての第2のロボット保持位置速度を前記縫製予定位置速度に合わせる制御を行う
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項12】
前記被縫製材は、第1被縫製材及び第2被縫製材を含み、
前記ロボットは、前記第1被縫製材の一部を保持する第1ロボット、及び、前記第2被縫製材の一部を保持する第2ロボットを含み、
前記制御部は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を重ねて縫製する場合に、前記第1ロボット及び前記第2ロボットの両方に対して、前記縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、
前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記両方のロボットの各々を制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御し、
前記第1ロボット及び前記第2ロボットのうち一方の前記縫製予定位置速度が他方の前記縫製予定位置速度と一致するように制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項13】
請求項1~請求項12の何れか1項に記載の縫製システムに含まれる制御装置。
【請求項14】
定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、
予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御方法であって、
前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、
前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御する
制御方法。
【請求項15】
定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、
予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御プログラムであって、
前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、
前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御することを、
コンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項16】
定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、
予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、
前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、
前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、
前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御することを、コンピュータに実行させる
非一時的記憶媒体。
【請求項17】
請求項1~請求項12の何れか1項に記載の縫製システムによる縫製物製造方法であって、
前記ロボット及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記被縫製材から縫製物を製造する
縫製物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
布地等の被縫製材にステッチを縫う場合、ロボットの速度と、ミシンの回転速度とを連動させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第110258030A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、保持した被縫製材と被縫製材を移動させるロボットの動きとが並進する関係の場合、ロボットの速度とミシンの速度とを一致させる制御でよい。しかし、定形の被縫製材の部分をロボットで保持して取り回しながら自由曲線の形状の縫製を行う場合、単にロボットの速度とミシンの速度とを一致させる制御では同期が取れず、皺になる等、思い通りの縫製ができない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにする縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る縫製システムは、定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、前記ロボット及び前記縫製装置の各々を制御する制御装置と、を含む縫製システムであって、前記制御装置は、前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御する制御部を備える。
【0007】
定形の被縫製材は、被縫製材自体が定形性を有する場合のほか、不定形の被縫製材であっても型、枠などを用いることで定形的に扱うことができる場合を含む。定形は、ロボットが被縫製材の部分を保持して動かした瞬間、保持している被縫製材の部分の位置と向き(方向)が、被縫製材上の縫製予定位置とその方向、と一定の関係を保ったまま動く程度の定形性であればよく、被縫製材が縫製されたことによって変形していってもよい。
【0008】
ロボット保持位置は、被縫製材を保持する部分として、被縫製材上の広がりのある範囲、複数個所を保持する場合にはその中の代表的な位置を含み、それらと一定の位置関係にある基準位置としてもよい。
【0009】
縫製予定位置は、被縫製材上の縫製を行っていく位置であって、ロボットが保持する部分とは異なる位置である。縫製予定方向は、縫製予定位置にある被縫製材の部分の、縫製時の姿勢、3次元空間内の向きを表す方向であって回転方向もあわせて含み得る。
【0010】
被縫製材の一部は、送り速度の方向について縫製点の手前にある被縫製材の部分であってもよいが、縫製点の周囲の他の部分であってもよい。その一部を動かすことで縫製点にある被縫製材の部分が一体に動くような他の部分であって、一部が複数に分かれた領域であってもよい。
【0011】
ロボット保持位置及びロボット保持方向と、縫製予定位置及び縫製予定方向との関係は、被縫製材が定形であることにより2次元、もしくは、3次元の空間配置が一定であることによって関係付けられていることによる。ここでの一定とは、一時的な場合を含み、ロボットが保持する位置を変える、あるいは、縫製予定位置が変化する場合は、各時点において位置関係が一定であればよい。
【0012】
設定された送り速度は、一定速度である場合のほか、縫製予定位置毎に異なる速度に設定される場合を含む。
【0013】
速度は、ベクトル量を含み、速さ(速さの値)と方向で表わす場合を含む。
【0014】
「一方の速度に対応する他方の速度を求め」は、上記の関係によって求まる速度と完全に同一の場合のほか、3次元形状に縫製するために相対的に速度に差異を生じさせる程度の補正を含んでもよい。
【0015】
縫製装置の送り速度は、縫製装置が被縫製材を送る速度であり、例えば、送り部の送り時の速度、縫製装置のモータの速度に同期して動くミシン針の速度としてもよいし、それらの平均速度でもよい。あるいは、間欠送り動作における移動、停止を考慮した間欠送り動作の動作時の速度でもよいし全体としての平均速度としてもよい。このように、速度は平均速度とする場合を含む。また、縫製点は、縫製装置のミシン針が縫うために下がったときに被縫製材に刺さる位置とされる。縫製点は、被縫製材を縫う瞬間に被縫製材が載置されたミシンテーブルの上面をミシン針が通過する位置としてもよい。
【0016】
この態様によれば、単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにすることができる。
【0017】
また、前記縫製予定位置は、前記被縫製材上において連続的な自由曲線上に設定され、前記制御部は、前記縫製予定位置が前記自由曲線上を順次移動するように前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記縫製予定位置に応じて、前記関係を満たす、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度を設定するようにしてもよい。
【0018】
連続的な自由曲線は、直線とは限らない線であって、任意の形状の連続的に曲がる線を含み、一部に直線、一定曲率の線を含んでもよく、折り返し点を含んでもよい。
【0019】
この態様によれば、予め設定した任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにすることができる。
【0020】
また、前記縫製予定位置は、縫製予定の各縫い目の位置として表され、前記制御部は、前記縫製予定の各縫い目の位置毎に、前記関係を満たす、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度を設定するようにしてもよい。
【0021】
この態様によれば、縫製予定位置が縫い目の位置毎に設定され、ロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度が設定されるので、細やかに制御した縫製を行うことができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度の少なくとも一方に上限値を設定するようにしてもよい。
【0023】
上記の関係によっては、ロボット保持位置速度と縫製装置の送り速度の一方に対して他方の速度の大きさが非常に大きくなって、ロボット又は縫製装置の動かし得る速度の上限を超え、予定通りの縫製ができなくなる場合がある。この態様によれば、予め一方の速度に上限を設けておくことで、関係によって求まる他方の速度がロボット又は縫製装置の限界を越えないように制御することができる。
【0024】
また、前記制御部は、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度から定まる他方の速度が前記上限値を超えた場合、前記一方の速度を現在速度よりも低く制御するようにしてもよい。
【0025】
この態様によれば、ロボット保持位置速度と縫製装置の送り速度のいずれかが動作可能な上限値を越えたことによって予定通りの縫製が行えなくなる状態を解消することができる。
【0026】
また、前記制御部は、前記ロボット保持位置速度に基づいて定まる前記縫製予定位置速度に対応して、前記縫製装置の送り速度を制御する
【0027】
この態様によれば、ロボット側の移動速度の上限値が縫製装置の送り速度の上限値より低い場合に、ロボット保持位置速度に基づいて縫製予定位置速度を定めることで動作の上限値を超える状況の発生を減らすことができる。
【0028】
また、前記制御部は、前記被縫製材を撮影して得られた画像から、前記被縫製材の前記縫製予定位置及び現在の縫製位置を示す現在縫製位置を取得し、前記縫製予定位置と前記現在縫製位置とが一致するように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御するようにしてもよい。
【0029】
この態様によれば、現実の位置を確認することで位置ずれが生じたときに修正することができ、また、予定通りに縫えるようにロボットを制御することができる。
【0030】
また、前記被縫製材には、前記縫製予定位置が設定される連続的な自由曲線と、前記ロボット保持位置とが立体的に配置されるようにしてもよい。
【0031】
この態様によれば、立体的な被縫製材に対してロボットが動かす被縫製材と縫製装置の送り動作を同期して縫製することができる。
【0032】
また、前記制御部は、前記ロボットから、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持位置速度を取得し、前記縫製点から前記ロボット保持位置へ向かう距離を大きさとする距離ベクトルを求め、前記ロボット保持位置速度及び前記距離ベクトルを用いて、前記縫製予定位置速度を算出するようにしてもよい。
【0033】
この態様によれば、距離ベクトルを用いることで縫製予定位置速度の算出を行うことができる。
【0034】
また、前記距離ベクトルは、前記ロボットの原点から前記ロボット保持位置に向かう第1ベクトルと、前記原点から前記縫製点に向かう第2ベクトルとを用いて算出されるようにしてもよい。
【0035】
この態様によれば、第1、第2ベクトルを用いることで距離ベクトルの算出を行うことができる。
【0036】
また、前記被縫製材は、第1被縫製材及び第2被縫製材を含み、前記ロボットは、前記第1被縫製材の一部を保持する第1ロボット、及び、前記第2被縫製材の一部を保持する第2ロボットを含み、前記制御部は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を重ねて縫製する場合に、前記第1ロボット及び前記第2ロボットの一方に対して、前記縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、第1のロボット保持位置及び第1のロボット保持方向を制御し、前記第1のロボット保持位置及び前記第1のロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、第1のロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記第1のロボット保持位置が前記第1のロボット保持位置速度で移動するように前記一方のロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御し、前記第1ロボット及び前記第2ロボットの他方についての第2のロボット保持位置速度を前記縫製予定位置速度に合わせる制御を行うようにしてもよい。
【0037】
この態様によれば、第1ロボット及び第2ロボットのうち一方を自由曲線形状の移動を行う制御とし、他方を単純な並進又は回転の移動を行う制御とすることができる。
【0038】
また、前記被縫製材は、第1被縫製材及び第2被縫製材を含み、前記ロボットは、前記第1被縫製材の一部を保持する第1ロボット、及び、前記第2被縫製材の一部を保持する第2ロボットを含み、前記制御部は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を重ねて縫製する場合に、前記第1ロボット及び前記第2ロボットの両方に対して、前記縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記両方のロボットの各々を制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御し、前記第1ロボット及び前記第2ロボットのうち一方の前記縫製予定位置速度が他方の前記縫製予定位置速度と一致するように制御する。
【0039】
この態様によれば、第1ロボット及び第2ロボットの両方を自由曲線形状の移動を行う制御とすることができる。
【0040】
第2態様に係る制御装置は、上記の縫製システムに含まれる制御装置である。
【0041】
第3態様に係る制御方法は、定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御方法であって、前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御する。
【0042】
第4態様に係る制御プログラムは、定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御プログラムであって、前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御することを、コンピュータに実行させる。
【0043】
第5態様に係る非一時的記憶媒体は、定形の被縫製材の第1部分を保持するロボットであって、前記第1部分を保持するときの前記ロボットの位置であるロボット保持位置及び前記ロボットの方向であるロボット保持方向で保持する前記ロボットと、予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について前記被縫製材の縫製点の手前にある第2部分が前記縫製点へ向かうように、前記被縫製材の一部を前記送り速度の方向に動かすことで前記被縫製材を送り、前記被縫製材の前記縫製点に送った前記第2部分の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、前記制御プログラムは、前記被縫製材の縫製予定位置を前記縫製点に合わせたときに前記縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向を制御し、前記ロボット保持位置及び前記ロボット保持方向と、前記縫製予定位置及び前記縫製予定方向との関係を用いて、前記ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び前記縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、前記ロボット保持位置が前記ロボット保持位置速度で移動するように前記ロボットを制御し、前記縫製装置の送り速度と、前記縫製予定位置速度とが一致するように、前記縫製装置を制御することを、コンピュータに実行させる。
【0044】
第6態様に係る縫製物製造方法は、上記の縫製システムによる縫製物製造方法であって、前記ロボット及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記被縫製材から縫製物を製造する。
【発明の効果】
【0045】
本開示によれば、単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】実施形態に係る縫製システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度の説明に供する図である。
【
図5】直線縫製、回転縫製、及び曲線縫製の各々におけるロボットの速度とミシンの送り速度の対応関係の説明に供する図である。
【
図6】ロボット・ミシン対応関係の一例を模式的に示す図である。
【
図7】実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る別の縫製システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0048】
図1は、本実施形態に係る縫製システム100の構成の一例を示す図である。
【0049】
図1に示す縫製システム100は、制御装置10、ロボット20、ミシン30、及びカメラ40を備えている。ミシン30は、縫製装置の一例である。縫製システム100は、ロボット20及びミシン30を用いて定形の被縫製材M(以下、単に「被縫製材M」という。)の縫製を自動的に行う。被縫製材Mは、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革等、柔軟性を有する材質とされる。被縫製材Mは、1つの部材でもよいし、複数の部材でもよい。
図1において、Y方向は紙面奥行き方向を示し、X方向は紙面左右方向を示し、Z方向は紙面上下方向を示す。
【0050】
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に載置された被縫製材Mの縫製を行う。なお、縫製点とは、例えば、ミシン30のミシン針33が縫うために下がったときに被縫製材Mに刺さる位置とされる。縫製点は、被縫製材Mを縫う瞬間に被縫製材Mが載置されたミシンテーブル50の上面をミシン針33が通過する位置としてもよい。ミシン制御機構32は、例えば、モータであり、制御装置10からミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号が入力されると、当該ミシン指令信号に基づいて、ミシン針33の上下動の速度を調整可能とする。
【0051】
ミシン30は、被縫製材Mの送り機構及びミシン針33の動作機構を有している。これらの機構は、同一のモータによって一定比の速度で連動して動作する。実際の動作では、ミシン針33の上下動作(縫い動作)と、被縫製材Mの送り動作とが交互に行われる。押え部34は、被縫製材Mを間欠的に押さえて被縫製材Mの浮き抑止を行う。つまり、押え部34は、ミシン針33を下方に移動させて被縫製材Mに刺すときに被縫製材Mが浮かないように、ミシン針33が通る位置の近傍で上方から被縫製材Mへ押し下げて、被縫製材Mの下側にあるテーブル面との間で被縫製材Mを挟み込む。また、押え部34は、ミシン針33を上方へ移動させて被縫製材Mから抜くときに被縫製材Mの浮きを抑制する。また、押え部34は、複数の被縫製材Mを縫い付ける場合には互いの被縫製材Mを重ね合わせる。また、押え部34は、ミシン針33を上下させたあと、被縫製材Mを送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する。送り部35は、上記送り機構として構成され、押え部34と連動して、ミシン針33で被縫製材Mに糸を通した後、ミシン針33が被縫製材Mから離れている間に、縫い目の距離だけ被縫製材Mを縫い方向へ送る。
【0052】
ミシン30は、押え部34及び送り部35により被縫製材Mを間欠的に押さえながら間欠送り動作を行う。本実施形態において、ミシン30の送り速度は、ミシン30が被縫製材Mを送る速度であり、例えば、送り部35の送り時の速度、ミシン30のモータの速度に同期して動くミシン針33の速度としてもよいし、それらの平均速度でもよい。あるいは、間欠送り動作における移動、停止を考慮した間欠送り動作の動作時の速度でもよいし全体としての平均速度としてもよい。
【0053】
ミシン30は、ロボット20が保持する被縫製材Mを予め設定された送り速度で縫製点に送り、当該縫製点に送った被縫製材Mの縫製を行う。
【0054】
ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びロボットハンド部24を備えている。ロボットハンド部24は、ロボット20の先端部に設けられる。ロボットアーム部23は、多関節のアームであり、一端に支持台21が接続され、他端にロボットハンド部24が接続される。支持台21は、ロボットアーム部23を支持し、ロボットコントローラ22を内蔵する。ロボットハンド部24は、ミシンテーブル50の上に載置された被縫製材Mを上から押さえ、被縫製材Mを保持して動かしながらミシン30のミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部24は、ミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給してもよい。
【0055】
ロボットコントローラ22は、制御装置10からロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びロボットハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の被縫製材Mがロボットハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部24が被縫製材Mを移動させる方向に動作することで、被縫製材Mがミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0056】
ロボット20は、被縫製材Mを保持する。ロボット20は、被縫製材Mをロボット20が保持する位置であるロボット保持位置及びロボット20の方向であるロボット保持方向で保持する。
【0057】
具体的に、ロボット20は、被縫製材Mの第1部分を保持するロボットである。ロボット保持位置は、第1部分を保持するときのロボットの位置であり、ロボット保持方向は、そのときのロボット20の方向である。ミシン30は、予め設定された送り速度で、当該送り速度の方向について被縫製材Mの縫製点の手前にある第2部分が縫製点へ向かうように、被縫製材Mの一部を送り速度の方向に動かすことで被縫製材Mを送り、被縫製材Mの縫製点に送った第2部分の縫製を行う。
【0058】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された被縫製材Mを上方から撮影して、被縫製材Mの縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、ロボット20の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。なお、下方から撮影するカメラを追加し、被縫製材Mを下方から撮影するようにしてもよい。
【0059】
制御装置10は、ロボット20、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、ロボット20及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0060】
図2は、本実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0061】
図2に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インタフェース(I/O)14と、記憶部15と、接続部16と、を備えている。
【0062】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、接続部16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0063】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御ユニットが構成される。制御ユニットは、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御ユニットとして構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御ユニットの一部として構成されてもよい。制御ユニットの各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はICチップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御ユニットの集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0064】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0065】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の非一時的記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の非一時的記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0066】
接続部16は、ロボット20のロボットコントローラ22、ミシン30のミシン制御機構32、及びカメラ40の各々を接続するためのインタフェースである。
【0067】
ところで、上述したように、定形の被縫製材の部分をロボットで保持して取り回しながら自由曲線の形状の縫製を行う場合、単にロボットの速度とミシンの速度とを一致させる制御では同期が取れず、皺になる等、思い通りの縫製ができない。
【0068】
これに対して、本実施形態に係る縫製システム100では、ミシン30の縫製点から離れた位置で被縫製材Mを保持したロボット20が被縫製材Mを動かしながら単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行えるようにする。
【0069】
具体的に、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、
図3に示す各部として機能する。
【0070】
図3は、本実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0071】
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、設定部11A及び制御部11Bとして機能する。
【0072】
設定部11Aは、被縫製材Mに対して縫製予定位置及び縫製予定方向を設定する。縫製予定位置は、被縫製材M上の縫製を行っていく位置であり、ロボット20が保持する部分とは異なる位置である。縫製予定方向は、縫製予定位置にある被縫製材Mの部分の、縫製時の姿勢、3次元空間内の向きを表す方向であって回転方向もあわせて含み得る。縫製予定位置及び縫製予定方向は、連続した点の集合として表される。この連続した点の集合は、例えば、連続的な自由曲線(
図4参照)上に設定される。「連続的な自由曲線」とは、直線とは限らない線であり、任意の形状の連続的に曲がる線を含み、一部に直線、一定曲率の線を含んでもよく、折り返し点を含んでもよい。この自由曲線は、例えば、被縫製材Mの目印となる特徴的な形状を基準として設定してもよいし、被縫製材Mの端に沿って一定距離離れた位置に設定してもよい。自由曲線に従って縫製した後は縫い目が形成される。縫製予定位置及び縫製予定方向は、例えば、カメラ40で被縫製材Mを撮影して得られた画像をモニタに表示しながら設定される。縫製予定位置及び縫製予定方向は、例えば、被縫製材上の目印、端部(エッジ)を基準として、2次元又は3次元の座標として表すことができる。具体的には、制御装置10がマウス、キーボード等の入力装置を備え、この入力装置を用いて、例えば、縫製範囲(縫製の開始点、終了点)、縫い代(エッジからの距離)、縫いピッチ等の種々の縫製条件を入力できるようにしておく。これにより被縫製材Mに対して適切な縫製予定位置及び縫製予定方向が設定される。
【0073】
制御部11Bは、ロボットコントローラ22に対して、ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号を出力し、ミシン制御機構32に対して、ミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号を出力する。制御部11Bは、設定部11Aにより設定された縫製予定位置及び縫製予定方向、ミシン30の縫製点の位置、ロボット20からロボット保持位置及びロボット保持方向をそれぞれ取得する。ロボット保持位置及びロボット保持方向は、上述したように、ロボット20が被縫製材Mを保持する位置及び方向、すなわち、ロボットハンド部24の位置及び方向を表す。
【0074】
制御部11Bは、被縫製材Mの縫製予定位置を縫製点に合わせたときに縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるようにロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。
【0075】
制御部11Bは、ロボット保持位置及びロボット保持方向と、縫製予定位置及び縫製予定方向との関係(以下、「ロボット・ミシン対応関係」という。)を用いて、ロボット保持位置が移動する速度であるロボット保持位置速度及び縫製予定位置が移動する速度である縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求める。なお、ロボット・ミシン対応関係の具体的な説明については後述する。
【0076】
制御部11Bは、ロボット保持位置がロボット保持位置速度で移動するようにロボット20を制御し、ミシン30の送り速度と、縫製予定位置速度とが一致するように、ミシン30を制御する。
【0077】
ここで、制御部11Bは、ロボット保持位置速度を基準とし、当該ロボット保持位置速度に基づいて定まる縫製予定位置速度に対応して、ミシン30の送り速度を制御してもよいし、あるいは、縫製予定位置速度を基準とし、当該縫製予定位置速度に基づいて定まるロボット保持位置速度に対応して、ロボット20の動作を制御してもよい。ロボット保持位置速度を基準とする場合、ロボット20から得られたロボット保持位置速度に基づいて、ロボット保持位置速度に対応する縫製予定位置速度が算出される。一方、縫製予定位置速度を基準とする場合、ミシン30から得られたミシン30の送り速度に基づいて、ミシン30の送り速度に対応するロボット保持位置速度が算出される。
【0078】
図4は、本実施形態に係るロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svの説明に供する図である。なお、縫製予定位置速度Svは、ミシン30の送り速度を表すものとする。
【0079】
図4に示すように、制御部11Bは、被縫製材Mの縫製予定位置Spを縫製点Pに合わせたときに縫製予定位置Spの方向が縫製予定方向Sdとなるようにロボット保持位置Rp及びロボット保持方向Rdを制御する。具体的に、縫製予定位置Spは、被縫製材M上において連続的な自由曲線L1上に設定される。制御部11Bは、縫製予定位置Spが自由曲線L1上を順次移動するようにロボット保持位置Rp及びロボット保持方向Rdを制御し、縫製予定位置Spに応じて、上述のロボット・ミシン対応関係を満たす、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svを設定する。自由曲線L1に沿って縫製する場合、縫製が進むにつれて、ロボット保持位置Rpと次の縫製予定位置Sp(=縫製点P)の関係が変化するため、各縫製予定位置Spにおいてロボット・ミシン対応関係を満たすようにロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svを設定する。
【0080】
また、縫製予定位置Spは、例えば、縫製予定の縫い目の位置として表される。この縫い目の位置は、各縫い目でなくてもよく、所定の間隔毎の縫い目としてもよい。この場合、制御部11Bは、縫製予定の縫い目の位置に応じて、ロボット・ミシン対応関係を満たす、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svを設定する。
【0081】
また、縫製予定位置Spは、例えば、縫製予定の各縫い目の位置として表してもよい。この場合、制御部11Bは、縫製予定の各縫い目の位置毎にロボット・ミシン対応関係を満たす、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svを設定する。
【0082】
ここで、制御部11Bは、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svの少なくとも一方に上限値を設定するようにしてもよい。ロボット保持位置速度Rvの上限値は、例えば、ロボット20の仕様に基づいて設定される。また、縫製予定位置速度Svの上限値は、例えば、ミシン30の仕様に基づいて設定される。上限値は、ロボット20及びミシン30の一方の最大速度値に対して、縫製の際のロボット・ミシン対応関係によって生じる速度の大きさの比率を考慮して得られる値を他方の上限値としてもよい。この場合、上限値以下の範囲内で、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svが設定される。
【0083】
また、制御部11Bは、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svのうち一方の速度から定まる他方の速度が上限値を超えた場合、一方の速度を現在速度よりも低く制御するようにしてもよい。例えば、一方の速度がロボット保持位置速度Rv、他方の速度が縫製予定位置速度Svである場合、縫製予定位置速度Svが上限値を超えた場合、ロボット保持位置速度Rvを現在速度よりも低く制御する。あるいは、一方の速度が縫製予定位置速度Sv、他方の速度がロボット保持位置速度Rvである場合、ロボット保持位置速度Rvが上限値を超えた場合、縫製予定位置速度Svを現在速度よりも低く制御する。
【0084】
また、ロボット保持位置速度Rv及び縫製予定位置速度Svのうち一方の速度に対応する他方の速度を求める場合、上記のロボット・ミシン対応関係によって求まる速度と完全に同一の場合のほか、3次元形状に縫製するために相対的に速度に差異を生じさせる程度の補正を含んでもよい。
【0085】
また、制御部11Bは、被縫製材Mを撮影して得られた画像から、被縫製材Mの縫製予定位置Sp及び現在の縫製位置を示す現在縫製位置を取得し、縫製予定位置Spと現在縫製位置とのずれを補正するようにロボット保持位置Rp及びロボット保持方向Rdを制御するようにしてもよい。
【0086】
また、被縫製材Mには、縫製予定位置Spが設定される連続的な自由曲線と、ロボット保持位置Rpとが立体的に配置されていてもよい。被縫製材Mは、2次元に限定されるものではなく、3次元であってもよい。本実施形態では、被縫製材Mを立体的に縫製する場合にも対応することができる。
【0087】
次に、
図5及び
図6を参照して、ロボット・ミシン対応関係について具体的に説明する。なお、ここでは、一例として、ロボット保持位置速度Rvを基準とし、ロボット保持位置速度Rvに縫製予定位置速度Svを同期させる場合について示す。
【0088】
図5は、直線縫製、回転縫製、及び曲線縫製の各々におけるロボットの速度とミシンの送り速度の対応関係の説明に供する図である。なお、ロボットの速度はロボット保持位置速度Rvとして表され、ミシンの送り速度は、縫製予定位置速度Svとして表される。
【0089】
図5に示すように、直線縫製の場合、ミシンの送り速度=ロボットの並進速度、の関係がある。また、回転縫製の場合、ミシンの送り速度=ロボットの回転速度×距離r、の関係がある。また、曲線縫製の場合、被縫製材Mが定形であるため、ミシンの送り速度=ロボットの並進速度+ロボットの回転速度×距離r(t)の並進速度成分、の関係が成り立つ。
【0090】
ここで、曲線縫製における縫製予定位置速度Svを算出する場合には、ロボット20の並進速度、回転速度だけではなく、時々刻々変化する距離r(t)を、ロボットハンド部24の位置とミシン30の縫製点PとのベクトルTとして考慮する。このベクトルTは、上述のロボット・ミシン対応関係の一例である。これにより、ロボット保持位置速度Rvと縫製予定位置速度Svとの同期が取れるようにする。縫製予定位置速度Svは、例えば、以下の式(1)を用いて求められる。なお、ミシンの送り速度は、縫製予定位置速度Svである。ロボットの速度は、ロボットの回転速度又はロボットの並進速度を表し、ロボット保持位置速度Rvである。つまり、縫製予定位置速度Svは、ロボット保持位置速度Rv及びベクトルTを変数とする関数を用いて表される。
【0091】
ミシンの送り速度=f(ロボットの速度、ベクトルT) ・・・(1)
【0092】
図6は、ロボット・ミシン対応関係の一例を模式的に示す図である。
【0093】
図6において、ロボット原点はロボット20の支持台21の位置として表され、ロボット先端はロボットハンド部24の位置(つまり、ロボット保持位置Rp)として表され、縫製点はミシン30の縫製点Pとして表される。第1ベクトルV1はロボット原点からロボット保持位置Rpに向かうベクトルであり、第2ベクトルV2はロボット原点から縫製点Pに向かうベクトルである。距離ベクトルV3は、縫製点Pからロボット保持位置Rpへ向かう距離を大きさとするベクトルであり、上述のベクトルTに対応する。
【0094】
図6において、制御部11Bは、ロボット20から、ロボット保持位置Rp及びロボット保持位置速度Rvを取得し、縫製点Pからロボット保持位置Rpへ向かう距離を大きさとする距離ベクトルV3を求め、ロボット保持位置速度Rv及び距離ベクトルV3を用いて、縫製予定位置速度Svを算出する。距離ベクトルV3は、第1ベクトルV1と、第2ベクトルV2とを用いて算出される。
【0095】
具体的に、ロボット原点の座標を(0,0,0)、ロボット保持位置Rpの座標を(x,y,z)とした場合、第1ベクトルV1は、例えば、以下に示す、4×4の同次変換行列(2)として表される。なお、Tbase
tool(toolはbaseの直上)は、第1ベクトルV1を表す。
【0096】
【0097】
次に、ロボット原点の座標を(0,0,0)、縫製点Pの座標を(x1,y1,z1)とした場合、第2ベクトルV2は、例えば、以下に示す、4×4の同次変換行列(3)として表される。なお、Tbase
misin(misinはbaseの直上)は、第2ベクトルV2を表す。
【0098】
【0099】
距離ベクトルV3(=ベクトルT)は、上記の同次変換行列(2)、(3)を用いて、以下の式(4)により求められる。なお、Tmisin
tool(toolはmisinの直上)は、距離ベクトルV3を表す。
【0100】
【0101】
上記式(4)により算出した距離ベクトルV3(=ベクトルT)と、ロボット保持位置速度Rv(=ロボットの速度)とを、上述の式(1)に適用し、ミシンの送り速度として、縫製予定位置速度Svを表す速度ベクトルを算出する。つまり、縫製予定位置速度Svの速度ベクトルのうちミシン送り方向の速度成分を抽出し、抽出したミシン送り方向の速度成分をミシンの送り速度とする。なお、距離ベクトルV3(=ベクトルT)が第1距離ベクトルから第2距離ベクトルに変化した場合、その変化分を補正して、縫製予定位置速度Svを表す速度ベクトルを算出するようにしてもよい。
【0102】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
【0103】
図7は、本実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7の例では、ロボット側の速度を基準としてミシン側の速度を決定する場合について説明する。
【0104】
まず、制御装置10に対して、縫製処理の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0105】
図7のステップS101では、CPU11が、一例として、上述の
図4に示すように、被縫製材Mに予め設定された最初の縫製予定位置Spを、ミシン30の縫製点Pに合わせる。ここで、始点の位置合わせは、予めユーザが合わせて配置しておいてもよいし、カメラ40で撮影しながら被縫製材上の目印を基準に始点を配置して合わせてもよい。
【0106】
ステップS102では、CPU11が、ステップS101で縫製点Pに合わせた縫製予定位置Spの方向が縫製予定方向Sdとなるようにロボット保持位置Rp及びロボット保持方向Rdを制御する。
【0107】
ステップS103では、CPU11が、一例として、上述の式(4)を用いて、距離ベクトルV3(=ベクトルT)を算出し、算出した距離ベクトルV3(=ベクトルT)及びロボット保持位置速度Rvを、一例として、上述の式(1)に適用し、ロボット保持位置速度Rvに対応する縫製予定位置速度Svを算出する。
【0108】
ステップS104では、CPU11が、ロボット保持位置速度Rvを含むロボット指令信号をロボット20に出力すると共に、縫製予定位置速度Svを含むミシン指令信号をミシン30に出力する。これにより、ロボット20は、ロボット保持位置速度Rvで動作し、ミシン30は、縫製予定位置速度Svをミシン30の送り速度として動作する。
【0109】
ステップS105では、CPU11が、ロボット20及びミシン30を制御することにより、次の縫製予定位置Spをミシン30の縫製点Pに合わせる。
【0110】
ステップS106では、CPU11が、ステップS105で縫製点Pに合わせた次の縫製予定位置Spが最後の縫製予定位置Spであるか否かを判定する。ここで、終点の位置合わせは、カメラ40で撮影しながら被縫製材上の目印を基準に終点を配置して合わせてもよい。最後の縫製予定位置Spではないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS102に移行して処理を繰り返し、最後の縫製予定位置Spであると判定した場合(肯定判定の場合)、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。なお、予め設定された縫い目の数だけ縫製が完了したことをもって処理を終了してもよい。
【0111】
なお、上記では、ロボット側の速度を基準としてミシン側の速度を決定する場合について説明したが、ミシン側の速度を基準としてロボット側の速度を決定するようにしてもよい。
【0112】
また、縫製システム100による縫製物製造方法の形態としてもよい。つまり、ロボット20及びミシン30が、上記で説明した制御装置10による制御に従って、被縫製材Mから縫製物を製造する。製造可能な縫製物は、2次元の形状でもよいし、3次元の形状でもよい。
【0113】
このように本実施形態によれば、ミシンの縫製点から離れた位置で被縫製材を保持したロボットが被縫製材を動かしながら単純な直線の動き又は回転の動きでは実現できない任意の自由曲線の形状の縫製を行うことができる。
【0114】
次に、
図8を参照して、複数のロボットで複数の被縫製材を重ねて縫製する形態について説明する。
【0115】
図8は、本実施形態に係る別の縫製システム100Aの構成の一例を示す図である。
【0116】
図8に示す縫製システム100Aは、制御装置10、第1ロボット20、ミシン30、カメラ40、及び第2ロボット60を備えている。縫製システム100Aは、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30を用いて第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製を自動的に行う。なお、上述の
図1に示す縫製システム100が有する構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0117】
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に重ねて載置された第1被縫製材M1と第2被縫製材M2を縫製する。
【0118】
ミシン30は、第1ロボット20が保持する第1被縫製材M1及び第2ロボット60が保持する第2被縫製材M2を縫製点に送り、縫製点で重なる第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製を行う。
【0119】
第1ロボット20は、第1被縫製材M1の一部を保持し、上述の
図1で説明したロボット20と同様の動作を可能とする。第1ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びロボットハンド部24を備えている。ロボットハンド部24は、ミシンテーブル50の上に載置された第1被縫製材M1を保持して動かしながらミシン30のミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部24は、第1被縫製材M1をミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給してもよい。
【0120】
ロボットコントローラ22は、制御装置10から第1ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びロボットハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の第1被縫製材M1がロボットハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部24が第1被縫製材M1を移動させる方向に動作することで、第1被縫製材M1がミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0121】
第2ロボット60は、第2被縫製材M2の一部を保持し、上述の
図1で説明したロボット20と同様の動作を可能とする。第2ロボット60は、支持台61、ロボットコントローラ62、ロボットアーム部63、及びロボットハンド部64を備えている。ロボットハンド部64は、ミシンテーブル50の上に載置された第2被縫製材M2を保持して動かしながらミシン30のミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部64は、第2被縫製材M2をミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給してもよい。
【0122】
ロボットコントローラ62は、制御装置10から第2ロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部63及びロボットハンド部64を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の第2被縫製材M2がロボットハンド部64によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部64が第2被縫製材M2を移動させる方向に動作することで、第2被縫製材M2がミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0123】
つまり、ロボットハンド部24は第1被縫製材M1を保持して動かし、ロボットハンド部64は第2被縫製材M2を保持して動かす。
図8の例では、第1ロボット20が縫製点において第1被縫製材M1を第2被縫製材M2の下側に位置するように保持し、第2ロボット60が縫製点において第2被縫製材M2を第1被縫製材M1の上側に位置するように保持する制御を行う。なお、2つの被縫製材を上下に重ねた状態での保持は、準備段階で予め2つの被縫製材を重ねた状態にしてからロボットが保持してもよいし、ロボットが各々の被縫製材を保持してから重ねるようにロボットを動かしてもよい。
【0124】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分を上方から撮影して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分の縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、第1ロボット20の設置位置、第2ロボット60の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。なお、下方から撮影するカメラを追加し、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を下方から撮影するようにしてもよい。
【0125】
制御装置10は、第1ロボット20、第2ロボット60、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10は、制御部11Bを備える。
【0126】
例えば、制御部11Bは、第1被縫製材及び第2被縫製材を重ねて縫製する場合に、第1ロボット20及び第2ロボット60の一方に対して、縫製予定位置を縫製点に合わせたときに縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、第1のロボット保持位置及び第1のロボット保持方向を制御し、上述のロボット・ミシン対応関係を用いて、第1のロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求める。そして、制御部11Bは、第1のロボット保持位置が第1のロボット保持位置速度で移動するように一方のロボットを制御し、ミシン30の送り速度と、縫製予定位置速度とが一致するように、ミシン30を制御し、第1ロボット20及び第2ロボット60の他方についての第2のロボット保持位置速度を縫製予定位置速度に合わせる制御を行う。
【0127】
つまり、第1ロボット20及び第2ロボット60のうち一方を自由曲線形状の移動を行う制御とし、他方を単純な並進又は回転の移動を行う制御とする。
【0128】
また、第1ロボット20及び第2ロボット60の両方を自由曲線形状の移動を行う制御としてもよい。具体的に、制御部11Bは、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を重ねて縫製する場合に、第1ロボット20及び第2ロボット60の両方に対して、縫製予定位置を縫製点に合わせたときに縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるように、ロボット保持位置及びロボット保持方向を制御し、上述のロボット・ミシン対応関係を用いて、ロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求める。そして、制御部11Bは、ロボット保持位置がロボット保持位置速度で移動するように両方のロボットの各々を制御し、ミシン30の送り速度と、縫製予定位置速度とが一致するように、ミシン30を制御し、第1ロボット20及び第2ロボット60のうち一方の縫製予定位置速度が他方の縫製予定位置速度と一致するように制御する。ここでいう速度の一致は、3次元縫製を行うために相対的な速度の差を生じさせる程度の補正による差異を含むようにしてもよい。
【0129】
第1ロボット20及び第2ロボット60のうち一方の縫製予定位置速度が他方の縫製予定位置速度と一致するように制御することで、第1ロボット20及び第2ロボット60の両方を自由曲線形状の移動を行う制御とすることができる。
【0130】
なお、上記各実施形態において、CPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した縫製処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。
【0131】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0132】
以上、実施形態に係る縫製システム、制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0133】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0134】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0136】
10 制御装置
11 CPU
11A 設定部
11B 制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 制御プログラム
16 接続部
20 ロボット、第1ロボット
30 ミシン
40 カメラ
50 ミシンテーブル
60 第2ロボット
100、100A 縫製システム