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特開2024-53993縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053993
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/16 20060101AFI20240409BHJP
   D05B 33/02 20060101ALI20240409BHJP
   D05B 69/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D05B19/16
D05B33/02
D05B69/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160550
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595105009
【氏名又は名称】株式会社松屋アールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150CB03
3B150CC01
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE21
3B150CE24
3B150CE27
3B150EB01
3B150EB06
3B150EB13
3B150GD05
3B150GE29
3B150GF01
3B150GG04
3B150JA03
3B150LA12
3B150LA23
3B150LA35
3B150LA85
3B150LB01
3B150MA15
3B150NA11
3B150NA22
3B150NA34
3B150NB09
3B150NB18
3B150NC03
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】縫製前の被縫製材を立体形状に固定することなく、被縫製材を立体的に縫製する。
【解決手段】制御装置10は、第1ロボット20が第1被縫製材M1を縫製点に送り、第2ロボット60が第2被縫製材M2を縫製点に送り、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被縫製材を保持する第1ロボットと、
第2被縫製材を保持する第2ロボットと、
縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、
前記第1ロボット、前記第2ロボット、及び前記縫製装置の各々を制御する制御装置と、
を含む縫製システムであって、
前記制御装置は、
前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する制御部
を備えた縫製システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、各々の前記縫い目線を同じ縫い目数で重ねながら、前記各々の縫い目線の始点と終点とが一致するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットの各々の移動を制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、各々の前記縫い目線を合わせて縫い合わせる際に生じる、縫い目線の相対的な位置ずれを補正するように前記第1被縫製材又は前記第2被縫製材についての移動速度又は移動方向を定める
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記位置ずれの補正は、前記第1被縫製材の移動方向と前記第2被縫製材の移動方向とが相対的に傾きを持つように行われる
請求項3に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記傾きを表す角度には、上限値が設定されており、
前記位置ずれの補正は、前記上限値以下の範囲で行われる
請求項4に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、各々の前記縫い目線の前記縫製点に送る前の部分を表す上流部分における縫い目線の相対的な位置ずれに基づいて、前記縫い目線の位置ずれが前記縫製点で補正されるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットの各々の移動を制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての連続する縫い目当たりの移動量又は移動方向の変化の絶対値が一定値以下になるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なる前記第1ロボット及び前記第2ロボットの制御は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての移動速度が異なる制御である
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項9】
前記縫製装置は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、
前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、
前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のいずれか一方の移動が前記縫製装置の送り方向に沿うように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項10】
前記縫製装置は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、
前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、
前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の少なくとも一方が前記送り部の間欠的な送りタイミングに同期して移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項11】
前記縫製装置は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、
前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、
前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の少なくとも一方が連続的に移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項12】
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なる前記第1ロボット及び前記第2ロボットの制御は、前記第1被縫製材に対して前記第2被縫製材を相対的に圧縮又は伸長して前記縫製点に送る制御である
請求項1に記載の縫製システム。
【請求項13】
前記縫製装置は、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、
前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、
前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材又は前記第2被縫製材を前記縫製点に向けて押し付けながら、又は、前記縫製点から離れる向きに引っ張りながら、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を前記縫製点に移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
請求項12に記載の縫製システム。
【請求項14】
請求項1~請求項13の何れか1項に記載の縫製システムに含まれる制御装置。
【請求項15】
第1被縫製材を保持する第1ロボットと、
第2被縫製材を保持する第2ロボットと、
縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御方法であって、
前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する
制御方法。
【請求項16】
第1被縫製材を保持する第1ロボットと、
第2被縫製材を保持する第2ロボットと、
縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御プログラムであって、
前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御することを、
コンピュータに実行させるための制御プログラム。
【請求項17】
第1被縫製材を保持する第1ロボットと、
第2被縫製材を保持する第2ロボットと、
縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、
を制御する制御装置の制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、
前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、
前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御することを、コンピュータに実行させる
非一時的記憶媒体。
【請求項18】
請求項1~請求項13の何れか1項に記載の縫製システムによる縫製物製造方法であって、
前記第1ロボット、前記第2ロボット、及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材から立体的な縫製物を製造する
縫製物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ロボットアームにミシンを搭載した縫製システムが記載されている。この縫製システムは、ミシンと、縫製の基準位置を撮影するカメラと、ミシンとカメラを保持するロボットアームと、制御装置とを備える。制御装置は、ミシンの針落ちにより第一の針落ち位置を形成し、制御装置が記憶する針中心位置を通る回動軸回りに規定の角度でミシンを回動させてから、ミシンの針落ちにより第二の針落ち位置を形成する動作制御を行い、さらに、第一の針落ち位置と第二の針落ち位置とをカメラで撮影して得られた撮影画像の撮影範囲内の第一の針落ち位置と第二の針落ち位置の各位置に基づいて、制御装置が記憶する針中心位置を較正する較正処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-042882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被縫製材を立体形状に縫製するためには、上記特許文献1に記載の技術のように、縫製前の被縫製材を立体形状に固定しておく必要があった。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、縫製前の被縫製材を立体形状に固定することなく、被縫製材を立体的に縫製することができる縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る縫製システムは、第1被縫製材を保持する第1ロボットと、第2被縫製材を保持する第2ロボットと、縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、前記第1ロボット、前記第2ロボット、及び前記縫製装置の各々を制御する制御装置と、を含む縫製システムであって、前記制御装置は、前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する制御部を備える。
【0007】
この態様によれば、被縫製材を予め立体形状に固定することなく立体形状に縫い上げることができる。例えば、縫い上がりが重なった曲面形状であれば、曲面を構成する被縫製材のうち曲率半径の大きい側に現れる縫い目の糸の間隔は、曲率半径の小さい側の被縫製材に現れる縫い目の間隔より相対的に長く縫い合わされる。
【0008】
また、前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、前記制御部は、各々の前記縫い目線を同じ縫い目数で重ねながら、前記各々の縫い目線の始点と終点とが一致するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットの各々の移動を制御するようにしてもよい。
【0009】
但し、縫い目線とは、複数の連続する縫い目を繋いだ線である。
【0010】
この態様によれば、複数の縫い目で移動量又は移動方向を異ならせることで、複数の連なった縫い目によって縫い上げられる被縫製材が立体形状となるように縫製することができる。また、縫い上げられる立体形状の複数の連なった縫い目線には、3次元的な曲線、曲面の一部となる2次元平面上の曲線が含まれる。予め縫い目線を設定することで縫製時の処理負担が軽減される。
【0011】
また、前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、前記制御部は、各々の前記縫い目線を合わせて縫い合わせる際に生じる、縫い目線の相対的な位置ずれを補正するように前記第1被縫製材又は前記第2被縫製材についての移動速度又は移動方向を定めるようにしてもよい。
【0012】
位置ずれの補正には、位置ずれの全量を次の縫い目で補正する場合のほか、一部の量ずつ補正し、複数の縫い目にわたって補正する場合を含む。この態様によれば、位置ずれが生じたときに補正することで予定の縫い目線との乖離を小さくすることができる。
【0013】
また、前記位置ずれの補正は、前記第1被縫製材の移動方向と前記第2被縫製材の移動方向とが相対的に傾きを持つように行われるようにしてもよい。
【0014】
但し、傾きは、縫製点において重なった被縫製材に糸が通る方向に対して垂直な面内に、各々についての移動方向が含まれ、互いに鋭角をなす場合を含む。
【0015】
この態様によれば、直角方向に移動させないので、縫い目が階段状になることを回避することができる。
【0016】
また、前記傾きを表す角度には、上限値が設定されており、前記位置ずれの補正は、前記上限値以下の範囲で行われるようにしてもよい。
【0017】
この態様によれば、1つの縫い目で急激に変化させないので、縫い目線が蛇行したり、こぶ状になったりすることを回避することができる。
【0018】
また、前記制御装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のうち一方の被縫製材上の縫い目線に対して、異なる長さ又は形状の縫い目線を他方の被縫製材上に設定する設定部を更に備え、前記制御部は、各々の前記縫い目線の前記縫製点に送る前の部分を表す上流部分における縫い目線の相対的な位置ずれに基づいて、前記縫い目線の位置ずれが前記縫製点で補正されるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットの各々の移動を制御するようにしてもよい。
【0019】
この態様によれば、縫い目線の位置ずれが生じる前に補正するので、設定した縫い目線との乖離を小さくすることができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての連続する縫い目当たりの移動量又は移動方向の変化の絶対値が一定値以下になるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0021】
この態様によれば、移動量又は移動方向の変化の度合いが1つの縫い目で大きいほど皺が生じやすいため、複数の縫い目にわたって変化を分散し、皺を低減、防止することができ、縫い目を滑らかに連ならせることができる。
【0022】
また、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なる前記第1ロボット及び前記第2ロボットの制御は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての移動速度が異なる制御であるとしてもよい。
【0023】
但し、移動速度における速度は、速さと方向を含むベクトルである。
【0024】
この態様によれば、移動速度の違いによって縫い目当たりの移動量又は移動方向を異ならせることで、制御が容易、簡略になる場合がある。
【0025】
また、前記縫製装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材のいずれか一方の移動が前記縫製装置の送り方向に沿うように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0026】
押え部は、ミシン針を下方に移動させて第1被縫製材及び第2被縫製材に刺すときに第1被縫製材及び第2被縫製材が浮かないように、ミシン針が通る位置の近傍で上方から第1被縫製材及び第2被縫製材へ押し下げて、第1被縫製材及び第2被縫製材の下側にあるテーブル面との間で第1被縫製材及び第2被縫製材を挟み込むようにする場合を含む。また、ミシン針を上方へ移動させて第1被縫製材及び第2被縫製材から抜くときに第1被縫製材及び第2被縫製材の浮きを抑制する場合を含む。また、押え部は、ミシン針を上下させたあと、第1被縫製材及び第2被縫製材を送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する場合を含む。送り部は、押え部と連動して、ミシン針で第1被縫製材及び第2被縫製材に糸を通した後、ミシン針が第1被縫製材及び第2被縫製材から離れている間に、縫い目の距離だけ第1被縫製材及び第2被縫製材を縫い方向へ送る場合を含む。
【0027】
この態様によれば、縫製装置の送り部による被縫製材の移動と共通化できるので制御の負担が軽減される。
【0028】
また、前記縫製装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の少なくとも一方が前記送り部の間欠的な送りタイミングに同期して移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0029】
この態様によれば、間欠動作する押え部、送り部がある場合に立体形状に縫製することができる。
【0030】
また、前記縫製装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の少なくとも一方が連続的に移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0031】
この態様によれば、連続的に移動する場合、被縫製材の柔軟性、滑りを利用して制御を単純化することができる。
【0032】
また、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なる前記第1ロボット及び前記第2ロボットの制御は、前記第1被縫製材に対して前記第2被縫製材を相対的に圧縮又は伸長して前記縫製点に送る制御であるとしてもよい。
【0033】
但し、圧縮又は伸長の方向は縫い上がったときの立体形状面に沿って湾曲させる方向に行う。縫製想定の送り方向に沿って圧縮又は伸長させる場合のほか、送り方向に対して傾いた方向に圧縮又は伸長させてもよい。圧縮又は伸長させて状態で被縫製材を保持して縫製装置で縫う場合を含む。一方を圧縮又は伸長させて縫製点に供給するほか、両方の圧縮又は伸長の程度を異ならせてもよい。
【0034】
この態様によれば、被縫製材を予め立体形状に固定することなく立体形状に縫い上げることができる。
【0035】
また、前記縫製装置は、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に押える押え部と、前記押え部と連動して前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を間欠的に送る送り部と、を備え、前記制御部は、前記押え部及び前記送り部により送られる前記第1被縫製材又は前記第2被縫製材を前記縫製点に向けて押し付けながら、又は、前記縫製点から離れる向きに引っ張りながら、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材を前記縫製点に移動するように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0036】
この態様によれば、予め被縫製材を圧縮又は伸長して保持する必要がないので保持が簡略となる。
【0037】
第2態様に係る制御装置は、上記の縫製システムに含まれる制御装置である。
【0038】
第3態様に係る制御方法は、第1被縫製材を保持する第1ロボットと、第2被縫製材を保持する第2ロボットと、縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御方法であって、前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御する。
【0039】
第4態様に係る制御プログラムは、第1被縫製材を保持する第1ロボットと、第2被縫製材を保持する第2ロボットと、縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御プログラムであって、前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御することを、コンピュータに実行させる。
【0040】
第5態様に係る非一時的記憶媒体は、第1被縫製材を保持する第1ロボットと、第2被縫製材を保持する第2ロボットと、縫製点で重ねられた前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の縫製を行う縫製装置と、を制御する制御装置の制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、前記制御プログラムは、前記第1ロボットが前記第1被縫製材を前記縫製点に送り、前記第2ロボットが前記第2被縫製材を前記縫製点に送り、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように前記第1ロボット及び前記第2ロボットを制御することを、コンピュータに実行させる。
【0041】
第6態様に係る縫製物製造方法は、上記の縫製システムによる縫製物製造方法であって、前記第1ロボット、前記第2ロボット、及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記第1被縫製材及び前記第2被縫製材から立体的な縫製物を製造する。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、縫製前の被縫製材を立体形状に固定することなく、被縫製材を立体的に縫製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】第1の実施形態に係る縫製システムの構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る第1縫い目線及び第2縫い目線の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る第1被縫製材及び第2被縫製材のトレース制御の説明に供する図である。
図6】第1の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである
図7】第2の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図8】実施形態に第1被縫製材及び第2被縫製材の位置ずれ補正の説明に供する図である。
図9】(A)は比較例に係る位置ずれ補正を模式的に示す図であり、(B)は実施形態に係る位置ずれ補正を模式的に示す図である。
図10】第2の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】第3の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図12】第3の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0045】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る縫製システム100の構成の一例を示す図である。
【0046】
図1に示す縫製システム100は、制御装置10、第1ロボット20、ミシン30、カメラ40、及び第2ロボット60を備えている。ミシン30は、縫製装置の一例である。縫製システム100は、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30を用いて第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製を自動的に行う。第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2は、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革等、柔軟性を有する材質とされる。図1において、Y方向は紙面奥行き方向を示し、X方向は紙面左右方向を示し、Z方向は紙面上下方向を示す。
【0047】
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に重ねて載置された第1被縫製材M1と第2被縫製材M2を縫製する。なお、縫製点とは、例えば、ミシン30のミシン針33が縫うために下がったときに第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2に刺さる位置とされる。縫製点は、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を縫う瞬間に第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2が載置されたミシンテーブル50の上面をミシン針33が通過する位置としてもよい。ミシン制御機構32は、例えば、モータであり、制御装置10からミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号が入力されると、当該ミシン指令信号に基づいて、ミシン針33の上下動の速度を調整可能とする。
【0048】
ミシン30は、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の送り機構及びミシン針33の動作機構を有している。これらの機構は、同一のモータによって一定比の速度で連動して動作する。実際の動作では、ミシン針33の上下動作(縫い動作)と、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の送り動作とが交互に行われる。押え部34は、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を間欠的に押さえて第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の浮き抑止を行う。つまり、押え部34は、ミシン針33を下方に移動させて第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2に刺すときに第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2が浮かないように、ミシン針33が通る位置の近傍で上方から第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2へ押し下げて、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の下側にあるテーブル面との間で第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を挟み込む。また、押え部34は、ミシン針33を上方へ移動させて第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2から抜くときに第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の浮きを抑制する。また、押え部34は、ミシン針33を上下させたあと、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する。送り部35は、上記送り機構として構成され、押え部34と連動して、ミシン針33で第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2に糸を通した後、ミシン針33が第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2から離れている間に、縫い目の距離だけ第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を縫い方向へ送る。
【0049】
ミシン30は、押え部34及び送り部35により第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を間欠的に押さえながら間欠送り動作を行う。本実施形態において、ミシン30の送り速度は、ミシン30が第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を送る速度であり、例えば、送り部35の送り時の速度、ミシン30のモータの速度に同期して動くミシン針33の速度としてもよいし、それらの平均速度でもよい。あるいは、間欠送り動作における移動、停止を考慮した間欠送り動作の動作時の速度でもよいし全体としての平均速度としてもよい。
【0050】
ミシン30は、第1ロボット20が保持する第1被縫製材M1及び第2ロボット60が保持する第2被縫製材M2を縫製点に送り、縫製点で重なる第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製を行う。
【0051】
第1ロボット20は、第1被縫製材M1を保持する。第1ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びロボットハンド部24を備えている。ロボットハンド部24は、第1ロボット20の先端部に設けられる。ロボットアーム部23は、多関節のアームであり、一端に支持台21が接続され、他端にロボットハンド部24が接続される。支持台21は、ロボットアーム部23を支持し、ロボットコントローラ22を内蔵する。ロボットハンド部24は、ミシンテーブル50の上に載置された第1被縫製材M1を保持して動かしながらミシン30のミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部24は、第1被縫製材M1をミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給してもよい。
【0052】
ロボットコントローラ22は、制御装置10から第1ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びロボットハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の第1被縫製材M1がロボットハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部24が第1被縫製材M1を移動させる方向に動作することで、第1被縫製材M1がミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0053】
第2ロボット60は、第2被縫製材M2を保持する。第2ロボット60は、支持台61、ロボットコントローラ62、ロボットアーム部63、及びロボットハンド部64を備えている。ロボットハンド部64は、第2ロボット60の先端部に設けられる。ロボットアーム部63は、多関節のアームであり、一端に支持台61が接続され、他端にロボットハンド部64が接続される。支持台61は、ロボットアーム部63を支持し、ロボットコントローラ62を内蔵する。ロボットハンド部64は、ミシンテーブル50の上に載置された第2被縫製材M2を保持して動かしながらミシン30のミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部64は、第2被縫製材M2をミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給してもよい。
【0054】
ロボットコントローラ62は、制御装置10から第2ロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部63及びロボットハンド部64を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の第2被縫製材M2がロボットハンド部64によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部64が第2被縫製材M2を移動させる方向に動作することで、第2被縫製材M2がミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0055】
つまり、ロボットハンド部24は第1被縫製材M1を保持して動かし、ロボットハンド部64は第2被縫製材M2を保持して動かす。図1の例では、第1ロボット20が縫製点において第1被縫製材M1を第2被縫製材M2の下側に位置するように保持し、第2ロボット60が縫製点において第2被縫製材M2を第1被縫製材M1の上側に位置するように保持する制御を行う。なお、2つの被縫製材を上下に重ねた状態での保持は、準備段階で予め2つの被縫製材を重ねた状態にしてからロボットが保持してもよいし、ロボットが各々の被縫製材を保持してから重ねるようにロボットを動かしてもよい。
【0056】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分を上方から撮影して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分の縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、第1ロボット20の設置位置、第2ロボット60の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。なお、下方から撮影するカメラを追加し、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を下方から撮影するようにしてもよい。
【0057】
制御装置10は、第1ロボット20、第2ロボット60、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0058】
図2は、第1の実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0059】
図2に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インタフェース(I/O)14と、記憶部15と、接続部16と、を備えている。
【0060】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、接続部16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0061】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御ユニットが構成される。制御ユニットは、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御ユニットとして構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御ユニットの一部として構成されてもよい。制御ユニットの各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はICチップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御ユニットの集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0062】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0063】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の非一時的記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の非一時的記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0064】
接続部16は、第1ロボット20のロボットコントローラ22、第2ロボット60のロボットコントローラ62、ミシン30のミシン制御機構32、及びカメラ40の各々を接続するためのインタフェースである。
【0065】
ところで、被縫製材を立体的に縫製する場合、縫い合わせればよいように予め立体形状にして固定配置しておくことが一般的であった。そのために型を用意し、被縫製材を装着する場合があった。
【0066】
これに対して、本実施形態に係る縫製システム100では、予め立体形状に固定配置する必要がなく、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30を制御することにより第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を立体的に縫製できるようにする。
【0067】
ここで、立体的な縫製を行う際に、第1被縫製材M1に予め設定された縫い目線(以下、「第1縫い目線」という。)及び第2被縫製材M2に予め設定された縫い目線(以下、「第2縫い目線」という。)を重ねて縫い合わせる。立体的な縫製の制御には、立体形状に縫製を行えるように予め定めた条件に従って縫製を行うトレース制御、縫い目線の位置ずれを補正しながら縫製を行うフィードバック制御、及び、縫い目線が位置ずれしないように予測して縫製を行うフィードフォワード制御等が挙げられる。以下、本実施形態では、トレース制御について説明する。
【0068】
具体的に、第1の実施形態に係る制御装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、図3に示す各部として機能する。
【0069】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0070】
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、設定部11A及び制御部11Bとして機能する。
【0071】
設定部11Aは、第1被縫製材M1上に第1縫い目線を設定し、第2被縫製材M2上に第2縫い目線を設定する。なお、設定対象とするのは、第1縫い目線及び第2縫い目線のいずれか一方としてもよい。第1縫い目線の長さ又は形状は、第2縫い目線の長さ又は形状と異なる。第1縫い目線及び第2縫い目線の各々は、連続した点の集合として表される。この連続した点の集合は、縫い目に対応する。つまり、第1縫い目線の縫い目と第2縫い目線の縫い目を合わせて縫製することで予め定めた立体形状となるように第1縫い目線の縫い目及び第2縫い目線の縫い目が設定される。第1縫い目線及び第2縫い目線の各々は、例えば、カメラ40で第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分を撮影して得られた画像をモニタに表示しながら設定される。第1縫い目線の縫い目及び第2縫い目線の縫い目は、例えば、被縫製材上の目印、端部(エッジ)を基準として、2次元又は3次元の座標として表すことができる。具体的には、制御装置10がマウス、キーボード等の入力装置を備え、この入力装置を用いて、例えば、縫製範囲(縫製の開始点、終了点)、縫い代(エッジからの距離)、縫いピッチ等の種々の縫製条件を入力できるようにしておく。これにより第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々に対して適切な縫い目線が設定される。
【0072】
図4は、本実施形態に係る第1縫い目線L1及び第2縫い目線L2の一例を示す図である。
【0073】
図4に示すように、第1被縫製材M1上に設定された第1縫い目線L1の長さ又は形状は、第2被縫製材M2上に設定された第2縫い目線L2の長さ又は形状と異なる。第1縫い目線L1は、複数の縫い目a1~a7の集合として表される。同様に、第2縫い目線L2は、複数の縫い目b1~b7の集合として表される。第1縫い目線L1の複数の縫い目a1~a7と第2縫い目線L2の複数の縫い目b1~b7を合わせて縫製することで予め定めた立体形状となるように第1縫い目線L1の複数の縫い目a1~a7及び第2縫い目線L2の複数の縫い目b1~b7が設定される。尚、図4では長さや形状の違いを分かり易さのために誇張して図示している。実際には見た目には僅かな違いであり、特に縫い目一つ当たりでの差は僅かであるが、この差によって縫い上がったときに立体形状となる。
【0074】
制御部11Bは、ロボットコントローラ22に対して、第1ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号を出力し、ロボットコントローラ62に対して、第2ロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号を出力し、ミシン制御機構32に対して、ミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号を出力する。制御部11Bは、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を縫製点に送る場合に、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々についての縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御する。ここで、縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるとは、例えば、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々についての移動速度が異なることを含む。つまり、相対的に移動する速度に差があればよい。この場合、例えば、制御部11Bは、押え部34及び送り部35により送られる第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のいずれか一方の移動がミシン30の送り方向に沿うように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御してもよい。
【0075】
図5は、本実施形態に係る第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のトレース制御の説明に供する図である。
【0076】
図5に示すように、制御部11Bは、設定部11Aにより設定された縫い目線L1及び縫い目線L2を同じ縫い目数で重ねながら、縫い目線L1及び縫い目線L2の始点と終点とが一致するように第1ロボット20及び第2ロボット60の各々の移動を制御する。トレース制御では、縫い上がりが立体形状になるように、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々に予め縫い目が設定されている。
【0077】
つまり、縫い目線L1の始点である縫い目a1と縫い目線L2の始点である縫い目b1とを縫製点Pで重ねて縫製し、同様に、縫い目線L1の縫い目a2~a6と縫い目線L2の縫い目b2~b6とを縫製点Pで順番に重ねて縫製し、最後に、縫い目線L1の終点である縫い目a7と縫い目線L2の終点である縫い目b7とを縫製点Pで重ねて縫製する。この結果、縫い上がりが立体形状となる。縫い目線を、上述のように縫い目となる点の集合とすることに替えて、これらの縫い目のすべてを通る線として設定してもよい。この場合は、始点を最初の縫い目とし、終点を最後の縫い目とし、線の長さに応じた速度で縫い目線に沿って移動させる制御を行えばよい。
【0078】
ここで、縫い目当たりの移動量又は移動方向が異なるとは、第1被縫製材M1に対して第2被縫製材M2を相対的に圧縮又は伸長することを含む。つまり、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の少なくとも一方を圧縮又は伸長して縫製することで、縫い上がりが立体形状になるように制御する。なお、第1被縫製材M1に対して第2被縫製材M2を相対的に圧縮又は伸長した状態で保持しておき、第1被縫製材M1を第2被縫製材M2に対して相対的に移動させて縫製する形態も含む。圧縮又は伸長の方向は、例えば、縫い上がったときの立体形状面に沿って湾曲させる方向とする。縫製想定の送り方向に沿って圧縮又は伸長させる場合のほか、送り方向に対して傾いた方向に圧縮又は伸長させてもよい。また、圧縮又は伸長させた状態で第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を保持してミシン30で縫う場合を含む。第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のうち一方を圧縮又は伸長させて縫製点Pに供給するほか、両方の圧縮又は伸長の程度を異ならせてもよい。
【0079】
この場合、一例として、制御部11Bは、押え部34及び送り部35により送られる縫製点Pに向けて押し付ける(圧縮)、又は、縫製点Pから離れる向きに引っ張って(伸長)第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2を縫製点Pに移動するように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御する。つまり、第1被縫製材M1又は第2被縫製材M2を動かした場合に、押え部34によって第1被縫製材M1又は第2被縫製材M2が圧縮又は伸長された状態とされ、圧縮又は伸長された状態で第1被縫製材M1又は第2被縫製材M2が縫製点Pに供給される。このため、縫い上がったときに立体形状とすることができる。
【0080】
また、制御部11Bは、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の各々についての連続する縫い目当たりの移動量又は移動方向の変化の絶対値が一定値以下になるように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御するようにしてもよい。なお、一定値には、ユーザにより適切な値が設定される。つまり、縫い目当たりの移動量又は移動方向の変化が比較的小さくなるように立体的に縫製する。移動量又は移動方向の変化の度合いが1つの縫い目で大きいほど皺が生じやすくなる。このため、1つの縫い目での変化を小さくし、複数の縫い目にわたって変化を分散させることで、皺になり難く、滑らかな縫い目線に縫い上げることが可能となる。
【0081】
また、制御部11Bは、押え部34及び送り部35により送られる第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の少なくとも一方が送り部35の間欠的な送りタイミングに同期して移動するように第1ロボット及び前記第2ロボットを制御するようにしてもよい。
【0082】
また、制御部11Bは、押え部34及び送り部35により送られる第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の少なくとも一方が連続的に移動するように第1ロボット20及び第2ロボット60を制御するようにしてもよい。
【0083】
次に、図6を参照して、第1の実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
【0084】
図6は、第1の実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6の例では、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のトレース制御の場合について説明する。
【0085】
まず、制御装置10に対して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のトレース制御の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0086】
図6のステップS101では、CPU11が、一例として、上述の図5に示すように、縫い目線L1の始点である縫い目a1と縫い目線L2の始点である縫い目b1とを縫製点Pで合わせる。ここで、始点の位置合わせは、予めユーザが合わせて配置しておいてもよいし、カメラ40で撮影しながら被縫製材上の目印を基準に始点を配置して合わせてもよい。
【0087】
ステップS102では、CPU11が、第1ロボット20及び第2ロボット60を制御して、縫い目線L1の次の縫い目a2と縫い目線L2の次の縫い目b2とを縫製点Pで合わせる。この場合、次の縫い目の位置合わせは、例えば、被縫製材の端部(エッジ)からの距離を縫い代にすると共に、始点、縫製済みの縫い糸、又は縫い目からの距離に基づいて行う。
【0088】
ステップS103では、CPU11が、縫製点Pにおいて、縫い目線L1の終点である縫い目a7と縫い目線L2の終点である縫い目b7とを合わしたか否かを判定する。ここで、終点の位置合わせは、カメラ40で撮影しながら被縫製材上の目印を基準に終点を配置して合わせてもよい。縫い目a7と縫い目b7とを合わしていないと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS102に戻り処理を繰り返し、縫い目a7と縫い目b7とを合わしたと判定した場合(肯定判定の場合)、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。なお、予め設定された縫い目の数だけ縫製が完了したことをもって処理を終了してもよい。
【0089】
また、縫製システム100による縫製物製造方法の形態としてもよい。つまり、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30が、上記で説明した制御装置10によるトレース制御に従って、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2から立体的な縫製物を製造する。
【0090】
このように本実施形態によれば、立体形状に縫製を行えるように予め定めた条件に従って縫製を行うトレース制御により、予め第1被縫製材及び第2被縫製材を立体形状に固定することなく、第1被縫製材及び第2被縫製材を立体的に縫製することができる。
【0091】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、縫い目線の位置ずれを補正しながら縫製を行うフィードバック制御の形態について説明する。
【0092】
図7は、第2の実施形態に係る制御装置10Aの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0093】
図7に示すように、本実施形態に係る制御装置10AのCPU11は、設定部11A及び制御部11Cとして機能する。なお、上記第1の実施形態で説明した制御装置10が有する構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0094】
制御部11Cは、設定部11Aにより設定された各々の縫い目線を合わせて縫い合わせる際に生じる、縫い目線の相対的な位置ずれを補正するように第1被縫製材M1又は第2被縫製材M2についての移動速度又は移動方向を定める。位置ずれの補正は、例えば、第1被縫製材M1の移動方向と第2被縫製材M2の移動方向とが相対的な傾きを持つように行われる。なお、フィードバック制御では、縫い目線が始点と終点が決まった線であればよく、必ずしも離散点(縫い目)の集合でなくてもよい。以下、図8を参照して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の位置ずれ補正について具体的に説明する。
【0095】
図8は、本実施形態に第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の位置ずれ補正の説明に供する図である。なお、図8では、第1被縫製材M1の図示を省略するが、第1被縫製材M1についても同様の位置ずれ補正を行うことが可能である。
【0096】
図8に示すように、第2縫い目線L2からずれた位置に縫製点Pが位置する場合、位置ずれを補正するために、第2被縫製材M2をX方向に直接動かそうとすると、ミシン30の押え部34に押えられているため簡単に動かすことができない。また、押え部34が上昇した間にX方向に急激に大きな変位量で動かすと、縫い目が階段状になってしまい、望ましくない。
【0097】
そこで、カメラ40により第2被縫製材M2を撮影して得られた画像から、第2被縫製材M2の送り方向に対する、ミシン30の縫製点Pの最近傍に位置するエッジ部分Edの傾き(=θ)、及び、ミシン30の縫製点Pと縫製点Pの最近傍に位置するエッジ部分Edとの距離(=x)を算出する。そして、傾きθ及び距離xの各々が各々の目標値に近づくように第2ロボット60を制御する。具体的には、以下のように制御を行う。
【0098】
ロボットの並進(X方向)=0(動かさない)
ロボットの回転=(θ-θi)+f(x-xi)
【0099】
但し、θiは傾きθの目標値を示し、xiは距離xの目標値を示す。これらの目標値θi、xiは、第2縫い目線L2上の値とされる。関数fは、距離xを傾きθに変換する関数である。関数fは、例えば、以下のように定義される。
【0100】
x<0、f(x)=α(ユーザ定義定数)
x>0、f(x)=-α(ユーザ定義定数)
【0101】
つまり、距離xが0より小さい場合、ユーザ定義定数αを正とし、距離xが0より大きい場合、ユーザ定義定数αを負とする。ユーザ定義定数αが大きくなれば急激に元の縫い目線に戻り、ユーザ定義定数αが小さいと徐々に元の縫い目線に戻る制御となる。ユーザ定義定数αは、例えば、記憶部15に予め記憶されている。
【0102】
本実施形態に係る位置ずれ補正におけるロボット制御は、第2ロボット60を並進方向(X方向)には動かさず、回転方向に動かす制御とされる。但し、回転方向に動かす傾きθは90度未満とすることが望ましい。
【0103】
また、第2被縫製材M2の傾きθを表す角度に予め上限値を設定しておいてもよい。この場合、位置ずれの補正は、上限値以下の範囲で行われる。これにより、一度に大きく回転させずに比較的滑らかに複数の縫い目で位置ずれ補正を行うことができる。一度に大きく回転させると、蛇行したり、こぶ状になったりするため望ましくない。
【0104】
図9(A)は比較例に係る位置ずれ補正を模式的に示す図であり、図9(B)は本実施形態に係る位置ずれ補正を模式的に示す図である。
【0105】
図9(A)に示す比較例では、被縫製材Mにおいて縫製点Pの位置ずれが発生したら、その方向に被縫製材Mを押圧することにより目標の縫い目線Lに戻すように制御される。この場合、被縫製材Mがたわむだけで全く被縫製材Mが動かない、あるいは、動いたとしても目ずれが発生するおそれがある。
【0106】
これに対して、図9(B)の例では、被縫製材Mの縫製点Pにおいて被縫製材Mを所定の回転方向に回転させることにより目標の縫い目線Lに戻すように制御される。所定の回転方向にミシン針を中心に回転するため、滑らかに目標の縫い目線Lに戻すことができる。
【0107】
次に、図10を参照して、第2の実施形態に係る制御装置10Aの作用について説明する。
【0108】
図10は、第2の実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。図10の例では、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のフィードバック制御の場合について説明する。
【0109】
まず、制御装置10Aに対して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のフィードバック制御の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0110】
図10のステップS111では、CPU11が、一例として、上述の図8に示すように、カメラ40から、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分の画像を取得する。
【0111】
ステップS112では、CPU11が、ステップS111で取得した画像から、一例として、上述の図8に示すように、縫製部分の送り方向に対する、ミシン30の縫製点Pの最近傍に位置するエッジ部分Edの傾き(=θ)、及び、ミシン30の縫製点Pと縫製点Pの最近傍に位置するエッジ部分Edとの距離(=x)を算出する。
【0112】
ステップS113では、CPU11が、ステップS112で算出した傾きθ及び距離xの各々が各々の目標値に近づくように縫製部分についての移動速度又は移動方向を定める。
【0113】
ステップS114では、CPU11が、ステップS113で定めた移動速度又は移動方向に基づいて、ロボット(上述の図8の例では第2ロボット60)を制御し、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。
【0114】
また、縫製システム100による縫製物製造方法の形態としてもよい。つまり、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30が、上記で説明した制御装置10Aによるフィードバック制御に従って、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2から立体的な縫製物を製造する。
【0115】
このように本実施形態によれば、縫い目線の位置ずれを補正しながら縫製を行うフィードバック制御により、予め第1被縫製材及び第2被縫製材を立体形状に固定することなく、第1被縫製材及び第2被縫製材を立体的に縫製することができる。
【0116】
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、縫い目線が位置ずれしないように予測して縫製を行うフィードフォワード制御の形態について説明する。
【0117】
図11は、第3の実施形態に係る制御装置10Bの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0118】
図11に示すように、本実施形態に係る制御装置10BのCPU11は、設定部11A及び制御部11Dとして機能する。なお、上記第1の実施形態で説明した制御装置10が有する構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
【0119】
制御部11Dは、設定部11Aにより設定された各々の縫い目線の上流部分における相対的な位置ずれに基づいて、縫い目線の位置ずれが縫製点で補正されるように第1ロボット20及び第2ロボット60の各々の移動を制御する。なお、フィードフォワード制御では、上述のフィードバック制御と同様に、縫い目線が始点と終点が決まった線であればよく、必ずしも離散点(縫い目)の集合でなくてもよい。
【0120】
ここで、上流部分とは、第1縫い目線L1及び第2縫い目線L2の各々において縫製点Pにまだ送られていない部分をいう。縫製点Pでは予定通りの位置で縫えていても、立体形状になるように向きを変えながら縫っていくと、第1縫い目線L1及び第2縫い目線L2の上流部分では縫い目線の位置ずれが生じる場合がある。ここでいう位置ずれとは、第1縫い目線L1と対応する第2縫い目線L2とがずれることをいう。そこで、第1縫い目線L1及び第2縫い目線L2の上流部分における縫い目線の位置ずれに基づいて、縫い目線の位置ずれが縫製点Pで補正される、つまり、第1縫い目線L1と対応する第2縫い目線L2が一致するように第1ロボット20及び第2ロボット60の各々を制御する。これにより常に位置ずれのない縫い目線となるようにする。
【0121】
次に、図12を参照して、第3の実施形態に係る制御装置10Bの作用について説明する。
【0122】
図12は、第3の実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。図12の例では、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のフィードフォワード制御の場合について説明する。
【0123】
まず、制御装置10Bに対して、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2のフィードフォワード制御の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0124】
図12のステップS121では、CPU11が、カメラ40から、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2の縫製部分の画像を取得する。
【0125】
ステップS122では、CPU11が、ステップS121で取得した画像から、第1縫い目線L1及び第2縫い目線L2の上流部分における相対的な位置ずれを算出する。
【0126】
ステップS123では、CPU11が、ステップS122で算出した上流部分の位置ずれに基づいて、縫い目線の位置ずれが縫製点で補正されるように第1ロボット20及び第2ロボット60の各々の移動を制御し、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。
【0127】
また、縫製システム100による縫製物製造方法の形態としてもよい。つまり、第1ロボット20、第2ロボット60、及びミシン30が、上記で説明した制御装置10Bによるフィードフォワード制御に従って、第1被縫製材M1及び第2被縫製材M2から立体的な縫製物を製造する。
【0128】
このように本実施形態によれば、縫い目線が位置ずれしないように予測して縫製を行うフィードフォワード制御により、予め第1被縫製材及び第2被縫製材を立体形状に固定することなく、第1被縫製材及び第2被縫製材を立体的に縫製することができる。
【0129】
なお、上記各実施形態において、CPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した縫製処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。
【0130】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0131】
以上、実施形態に係る縫製システム、制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0132】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0133】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0134】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0135】
10、10A、10B 制御装置
11 CPU
11A 設定部
11B、11C、11D 制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 制御プログラム
16 接続部
20 第1ロボット
30 ミシン
40 カメラ
50 ミシンテーブル
60 第2ロボット
100 縫製システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12