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特開2024-53994縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
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  • 特開-縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053994
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/16 20060101AFI20240409BHJP
   D05B 33/02 20060101ALI20240409BHJP
   D05B 69/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D05B19/16
D05B33/02
D05B69/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160551
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595105009
【氏名又は名称】株式会社松屋アールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀隆
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA01
3B150CB03
3B150CC01
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE21
3B150CE24
3B150CE27
3B150EB01
3B150EB06
3B150EB13
3B150GD05
3B150GE29
3B150GF01
3B150GG04
3B150JA03
3B150LA12
3B150LA23
3B150LA35
3B150LB02
3B150MA15
3B150NA11
3B150NA22
3B150NB09
3B150NC03
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】ロボットが被縫製材を移動させながら縫製装置で縫製する場合に当該被縫製材がたわむことを抑制する。
【解決手段】縫製装置30と、ロボット20と、制御装置10と、を備えた縫製システム100において、縫製装置30は被縫製材Mを縫製する縫製点へ被縫製材Mを送る送り部35を備え、ロボット20は被縫製材Mを保持し、制御装置10は、送り部35が被縫製材Mを送る送り方向に対して、ロボット20が被縫製材Mを保持している保持位置が、送り部35より手前にある場合は、ロボット20が被縫製材Mを移動させる速度のうち、送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より送り部35の送り速度を相対的に速くし、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合は、送り速度より移動速度を相対的に速くする制御部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製装置と、ロボットと、制御装置と、を備えた縫製システムであって、
前記縫製装置は被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り部を備え、
前記ロボットは前記被縫製材を保持し、
前記制御装置は、前記送り部が前記被縫製材を送る送り方向に対して、前記ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする制御部を備える、
縫製システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記移動速度の変化のさせ方に関する値である移動変数と、前記送り速度の変化のさせ方に関する値である送り変数と、のうち少なくとも1つを、前記移動速度の変化と、前記送り速度の変化と、前記保持位置及び前記送り部の距離と、のうち少なくとも1つに基づいて設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、前記移動変数に基づく前記移動速度の制御、及び前記送り変数に基づく前記送り速度の制御のうち少なくとも1つを実行する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記設定部は、前記移動速度の変化が大きいほど、前記移動変数をより大きな値に設定し、前記送り速度の変化が大きいほど、前記送り変数をより大きな値に設定し、前記距離が長いほど、前記移動変数及び前記送り変数をより大きな値に設定する、請求項2に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記被縫製材の移動又は姿勢の変化により、前記保持位置と前記送り部との間で、前記送り方向に対して手前にある方が切り替わることに伴い、前記送り速度と前記移動速度とで相対的に速くする方を切り替える、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記被縫製材の移動の変化は、前記ロボットが、前記送り方向と同一の方向の成分を有する方向、及び前記送り方向と逆方向の成分を有する方向への移動を含めて前記被縫製材を連続的に移動させることにより生じ、
前記被縫製材の姿勢の変化は、前記ロボットが、前記送り方向と同一の方向の成分を有する方向へ移動させながら、前記縫製点を中心に前記被縫製材を回転させることにより生じる、請求項4に記載の縫製システム。
【請求項6】
縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする制御部を備える、
制御装置。
【請求項7】
縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、
処理をコンピュータが実行する制御方法。
【請求項8】
縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、
処理をコンピュータに実行させる制御プログラム。
【請求項9】
縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、
処理をコンピュータに実行させる制御プログラムを記録した非一時的記憶媒体。
【請求項10】
請求項1に記載の縫製システムによる縫製物製造方法であって、
前記ロボット及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記被縫製材から縫製物を製造する
縫製物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には閉ループ制御に基づくロボット速度とミシン速度の協調方法が開示されている。この方法では、布片内の内側を把持し、かつ、布片の移動を制御するロボットシステムが、設定された針ピッチに基づいてロボットの移動速度を計算し、ミシン制御システムに送信する。ミシン制御システムは、受信したロボットの移動速度をミシンのステップ機構の布送り速度に設定する。また、ミシン制御システムは、上記布送り速度及びギア比に基づき、ミシン上のモータの回転数を計算し、当該モータの回転数に対応するアナログ信号量をミシンのモータ制御モジュールに送信する。また、ミシン制御システムは、布送り用ホイールの回転速度の誤差を処理し、閉ループ制御後の布送り速度を得る。布送り用ホイール上のエンコーダは、上記ホイールの速度をリアルタイムで収集し、当該速度をミシン制御システムにフィードバックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第110524548B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットが被縫製材を保持し、縫製装置が上記被縫製材を縫製する場合、移動速度及び送り速度を同期させる必要がある。しかしながら、単純にこれらの速度を同期させるだけでは被縫製材がたわみ、被縫製材にしわ又はずれ等が発生するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ロボットが被縫製材を移動させながら縫製装置で縫製する場合に当該被縫製材がたわむことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の態様に係る縫製システムは、縫製装置と、ロボットと、制御装置と、を備えた縫製システムであって、前記縫製装置は被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り部を備え、前記ロボットは前記被縫製材を保持し、前記制御装置は、前記送り部が前記被縫製材を送る送り方向に対して、前記ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記縫製装置が前記被縫製材を縫製している送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする制御部を備える。被縫製材は、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革、合成樹脂等、柔軟性を有する材質とされる。被縫製材は、1つの部材でもよいし、複数の部材でもよい。第1の態様に係る縫製システムによれば、ロボットが被縫製材を移動させながら縫製装置で縫製する場合に当該被縫製材がたわむことを抑制することができる。
【0007】
また、第2の態様に係る縫製システムは、第1の態様に係る縫製システムにおいて、前記制御装置は、前記移動速度の変化のさせ方に関する値である移動変数と、前記送り速度の変化のさせ方に関する値である送り変数と、のうち少なくとも1つを、前記移動速度の変化と、前記送り速度の変化と、前記保持位置及び前記送り部の距離と、のうち少なくとも1つに基づいて設定する設定部を更に備え、前記制御部は、前記移動変数に基づく前記移動速度の制御、及び前記送り変数に基づく前記送り速度の制御のうち少なくとも1つを実行する。第2の態様に係る縫製システムによれば、縫製時の処理負担が軽減される。
【0008】
また、第3の態様に係る縫製システムは、第2の態様に係る縫製システムにおいて、前記設定部は、前記移動速度の変化が大きいほど、前記移動変数をより大きな値に設定し、前記送り速度の変化度が大きいほど、前記送り変数をより大きな値に設定し、前記距離が長いほど、前記移動変数及び前記送り変数をより大きな値に設定する。第3の態様に係る縫製システムによれば、速度変化の大きさに対応してたわみを抑制できる。
【0009】
また、第4の態様に係る縫製システムは、第1の態様から第3の態様のうち何れか1態様に係る縫製システムにおいて、前記制御部は、前記被縫製材の移動又は姿勢の変化により、前記保持位置と前記送り部との間で、前記送り方向に対して手前にある方が切り替わることに伴い、前記送り速度と前記移動速度とで相対的に速くする方を切り替える。第4の態様に係る縫製システムによれば、保持位置と送り部の位置関係が変わっても、被縫製材がたわむことを抑制することができる。
【0010】
また、第5の態様に係る縫製システムは、第4の態様に係る縫製システムにおいて、前記被縫製材の移動の変化は、前記ロボットが、前記送り方向と同一の方向の成分を有する方向、及び前記送り方向と逆方向の成分を有する方向への移動を含めて前記被縫製材を連続的に移動させることにより生じ、前記被縫製材の姿勢の変化は、前記ロボットが、前記送り方向と同一の方向の成分を有する方向へ移動させながら、前記縫製点を中心に前記被縫製材を回転させることにより生じる。第5の態様に係る縫製システムによれば、保持位置と送り部との位置関係が逆転するように縫製される被縫製材であっても、たわみを抑制して縫製することができる。
【0011】
また、第6の態様に係る制御装置は、縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする制御部を備える。第6の態様に係る制御装置によれば、ロボットが縫製材を保持し、縫製装置が被縫製材を縫製する場合でも、被縫製材がたわむことを抑制することができる。
【0012】
また、第7の態様に係る制御方法は、縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、処理をコンピュータが実行する。第7の態様に係る制御方法によれば、被縫製材がたわむことを抑制することができる。
【0013】
また、第8の態様に係る制御プログラムは、縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、処理をコンピュータに実行させる。第8の態様に係る制御プログラムによれば、被縫製材がたわむことを抑制することができる
【0014】
また、第9の態様に係る非一時的記憶媒体は、縫製装置に備えられた送り部が被縫製材を縫製する縫製点へ前記被縫製材を送る送り方向に対して、ロボットが前記被縫製材を保持している保持位置が、前記送り部より手前にある場合は、前記ロボットが前記被縫製材を移動させる速度のうち、前記送り方向と同一の方向の速度成分である移動速度より前記送り部の送り速度を相対的に速くし、前記送り方向に対して前記送り部が前記保持位置より手前にある場合は、前記送り速度より前記移動速度を相対的に速くする、処理をコンピュータに実行させる制御プログラムを記録している。第9の態様に係る非一時的記憶媒体によれば、被縫製材がたわむことを抑制することができる。
【0015】
また、第10の態様に係る縫製物製造方法は、第1の態様から第5の態様のうち何れか1態様に係る縫製システムによる縫製物製造方法であって、前記ロボット及び前記縫製装置が、前記制御装置による制御に従って、前記被縫製材から縫製物を製造する。第10の態様に係る縫製物製造方法によれば、被縫製材のたわみを抑制し、被縫製材から縫製物を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法によれば、ロボットが被縫製材を移動させながら縫製装置で縫製する場合に当該被縫製材がたわむことを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】縫製システムの構成の一例を示す図である。
図2】制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】送りデータベースの一例を示す図である。
図4】移動データベースの一例を示す図である。
図5】距離データベースの一例を示す図である。
図6】制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図7】保持位置と送り部との位置関係の説明に供する図である。
図8】制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る縫製システム100の構成の一例を示す図である。
【0020】
図1に示す縫製システム100は、制御装置10、ロボット20、ミシン30、及びカメラ40を備えている。ミシン30は、縫製装置の一例である。縫製システム100は、ロボット20及びミシン30を用いて被縫製材Mの縫製を自動的に行う。被縫製材Mは、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革、合成樹脂等、柔軟性を有する材質とされる。被縫製材Mは、1つの部材でもよいし、複数の部材でもよい。なお、本実施形態に係る被縫製材Mは一定の形状を有するが、被縫製材Mのうちの一部分が変形すると当該一部分と繋がった他の部分も一緒に変形する場合がある。図1において、X方向はミシン30の左右方向を示し、Y方向はミシン30の前後方向を示し、Z方向はミシン30の上下方向を示す。
【0021】
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に載置された被縫製材Mの縫製を行う。なお、縫製点とは、例えば、ミシン30のミシン針33が縫うために下がったときに被縫製材Mに刺さる位置とされる。縫製点は、被縫製材Mを縫う瞬間に被縫製材Mが載置されたミシンテーブル50の上面をミシン針33が通過する位置としてもよい。ミシン制御機構32は、例えば、モータであり、制御装置10からミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号が入力されると、当該ミシン指令信号に基づいて、ミシン針33の上下動の速度を調整可能とする。
【0022】
ミシン30は、被縫製材Mの送り機構である送り部35及びミシン針33の動作機構を有している。これらの機構は、同一のモータによって一定比の速度で連動して動作する。実際の動作では、ミシン針33の上下動作(縫い動作)と、被縫製材Mの送り動作とが交互に行われる。押え部34は、被縫製材Mを間欠的に押さえて被縫製材Mの浮き抑止と密着固定を行う。つまり、押え部34は、ミシン針33を下方に移動させて被縫製材Mに刺すときに被縫製材Mが浮かないように、ミシン針33が通る位置の近傍で上方から被縫製材Mへ押し下げて、被縫製材Mの下側にあるテーブル面との間で被縫製材Mを挟み込む。また、押え部34は、ミシン針33を上方へ移動させて被縫製材Mから抜くときに被縫製材Mの浮きを防止する。また、押え部34は、複数の被縫製材Mを縫い付ける場合には互いの被縫製材Mを重ね合わせる。また、押え部34は、ミシン針33を上下させたあと、被縫製材Mを送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する。送り部35は、ミシン針33がテーブル面へ降りる位置(すなわち、ミシン針33が被縫製材Mを縫製する縫製点)を囲むようにして備えられている。送り部35は、ミシン針33で被縫製材Mに糸を通した後、ミシン針33が被縫製材Mから離れている間に、縫い目の距離だけ被縫製材Mを送る。ミシン30の送り部35が縫製点へ被縫製材Mを送る方向を送り方向という。なお、図1に示す例では、送り部35は、ミシン針33の直下に備えられている。しかし、この例に限られない。例えば、送り部35は、ミシン針33の真横に備えられていてもよい。また、送り部35は、被縫製材Mの縫製予定位置を縫製点へ送る(移動させる)ことができればよい。具体的に、送り部35は縫製点の近傍に配置されて、被縫製材Mと接する部分を有し、当該被縫製材Mと接する部分を送り方向へ移動させることができる。また、送り部35の機構は、回転する車輪、長円運動する機構、又は上下運動と前後運動を組み合わせた機構などとしてもよい。
【0023】
ミシン30は、押え部34及び送り部35により被縫製材Mを間欠的に押さえながら間欠送り動作を行う。本実施形態において、ミシン30の送り速度は、例えば、送り部35の送り時の速度、ミシン30のモータの速度、又はモータと同期して動くミシン針33の速度としてもよいし、それらの平均速度であってもよい。あるいは、間欠送り動作における移動又は停止を考慮した間欠送り動作全体としての速度としてもよいし、全体としての平均速度としてもよい。
【0024】
ミシン30は、ロボット20が保持する被縫製材Mを予め設定された送り速度で縫製点に送り、当該縫製点に送った被縫製材Mの縫製を行う。
【0025】
ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びロボットハンド部24を備えている。ロボットハンド部24は、ロボット20の先端部に設けられる。ロボットアーム部23は、多関節のアームであり、一端に支持台21が接続され、他端にロボットハンド部24が接続される。支持台21は、ロボットアーム部23を支持し、ロボットコントローラ22を内蔵する。ロボットハンド部24は、ミシンテーブル50の上に載置された被縫製材Mを保持して移動させながらミシン針33に供給する。なお、ロボットハンド部24は、被縫製材Mを上から押さえ、送り方向と同一の方向の成分を有する方向、及び送り方向と逆方向の成分を有する方向への移動を含めて、被縫製材Mを連続的に滑らせて移動させてもよい。具体的に、ロボット20は、送り方向と同一の方向の成分を有する方向へ移動させながら縫製点を中心に被縫製材Mを回転させるように移動させる。ロボットハンド部24が縫製点に位置する被縫製材Mを移動させる速度のうち、送り方向の速度成分を移動速度という。移動速度には、予め設定された値又は後述する制御によって計算される値がある。
【0026】
ロボットコントローラ22は、制御装置10からロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びロボットハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の被縫製材Mがロボットハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ロボットハンド部24が被縫製材Mを移動させる方向に動作することで、被縫製材Mがミシンテーブル50上を動きながらミシン30のミシン針33に対して移動する。
【0027】
ロボット20は、被縫製材Mを保持する。ロボット20は、被縫製材Mをロボット20が保持する位置を示す保持位置及び保持する方向を示す保持方向で保持する。
【0028】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された被縫製材Mを上方から撮影して、被縫製材Mの縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、ロボット20の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。なお、下方から撮影するカメラを追加し、被縫製材Mを下方から撮影するようにしてもよい。
【0029】
制御装置10は、ロボット20、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、ロボット20及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0030】
図2は、本実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図2に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インタフェース(I/O)14と、記憶部15と、接続部16と、を備えている。
【0032】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、接続部16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0033】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御ユニットが構成される。制御ユニットは、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御ユニットとして構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御ユニットの一部として構成されてもよい。制御ユニットの各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はICチップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御ユニットの集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0034】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0035】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の非一時的記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の非一時的記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0036】
また、記憶部15には、送りデータベース15B、移動データベース15C、及び距離データベース15Dが記憶されている。これらのデータベースの構成については詳細を後述する。
【0037】
接続部16は、ロボット20のロボットコントローラ22、ミシン30のミシン制御機構32、及びカメラ40の各々を接続するためのインタフェースである。
【0038】
図3は、実施形態に係る送りデータベース15Bの構成の一例を示す図である。
【0039】
図3に示すように、送りデータベース15Bには、所定の範囲毎に組分けされた送り加速度毎に変数α1が関連付けて記憶されている。送り加速度は送り速度の変化を示す。送りデータベース15Bには、送り加速度が大きいほど、より大きな変数α1が関連付けて記憶されている。しかし、この例に限られない。送りデータベース15Bには、送り加速度に関係なく、同一の変数α1が記憶されていてもよい。また、変数α1は、送り加速度を用いた関数値によって算出してもよい。
【0040】
図4は、実施形態に係る移動データベース15Cの構成の一例を示す図である。
【0041】
図4に示すように、移動データベース15Cには、所定の範囲毎に組分けされた移動加速度毎に変数β1が関連付けて記憶されている。移動加速度は移動速度の変化を示す。移動データベース15Cには、移動加速度が大きいほど、より大きな変数β1が関連付けて記憶されている。しかし、この例に限られない。移動データベース15Cには、移動加速度に関係なく、同一の変数β1が記憶されていてもよい。また、変数β1は、移動加速度を用いた関数値によって算出してもよい。
【0042】
図5は、実施形態に係る距離データベース15Dの構成の一例を示す図である。
【0043】
図5に示すように、距離データベース15Dには、所定の範囲毎に組分けされた距離毎に変数α2及び変数β2が関連付けて記憶されている。上記距離は、保持位置及び送り部35の位置の距離を示す。本実施形態では、保持位置として、ロボットハンド部24の中心点を適用している。しかし、この例に限られない。保持位置として、ロボットハンド部24の上端部又は下端部を適用してもよい。また、本実施形態では、送り部35の位置として、送り部35の中心点を適用している。しかし、この例に限られない。送り部35の位置として、送り部35の上端部若しくは下端部、又は縫製点を適用してもよい。
【0044】
距離データベース15Dには、距離が長いほど、より大きな変数α2及び変数β2が関連付けて記憶されている。しかし、この例に限られない。距離データベース15Dには、距離に関係なく、同一の変数α2及びβ2が記憶されていてもよい。また、距離に応じて、変数α2及び変数β2の両方、又は片方のみが変更されてもよい。また、変数α2及び変数β2は、保持位置及び送り部35の位置の距離を用いた関数値によって算出してもよい。
【0045】
ところで、上述したように、ロボットが被縫製材を保持し、縫製装置が上記被縫製材を縫製する場合、移動速度及び送り速度を同期させる必要がある。しかしながら、単純にこれらの速度を同期させるだけでは被縫製材がたわみ、被縫製材にしわ又はずれ等が発生してしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る縫製システム100では、ロボット20が被縫製材Mを移動させながらミシン30で縫製する場合に被縫製材Mがたわむことを抑制する。
【0047】
具体的に、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、図6に示す各部として機能する。
【0048】
図6は、実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
図6に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、取得部11A、設定部11B、及び制御部11Cとして機能する。
【0050】
取得部11Aは、ロボットコントローラ22が算出した保持位置を取得する。なお、取得部11Aは、カメラ40が撮影した縫製状態から、保持位置を取得してもよい。
【0051】
設定部11Bは、送り速度の変化のさせ方に関する値である送り変数αを、送り加速度と、保持位置及び送り部35の距離と、のうち少なくとも1つに基づいて設定する。送り変数αは0より大きな値である。具体的に、設定部11Bは、送り速度から送り加速度を算出する。そして、設定部11Bは、送りデータベース15Bから、算出した送り加速度に関連付けられた変数α1を読み出す。また、設定部11Bは、取得部11Aが取得した保持位置から、当該保持位置及び送り部35の距離を算出する。そして、設定部11Bは、距離データベース15Dから、算出した距離に関連付けられた変数α2を読み出す。
【0052】
そして、設定部11Bは、読み出したα1及びα2の和を送り変数αとして設定する。しかし、この例に限られない。設定部11Bは、α1及びα2の算術平均値又は加重平均値等を送り変数αとして設定してもよいし、α1又はα2を送り変数αとして設定してもよい。また、設定部11Bは、送り変数αを、送り速度の加速度と、保持位置及び送り部35の距離と、に関わらず同一の値に設定してもよい。
【0053】
制御部11Cは、取得部11Aが取得した保持位置から、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にあるか否かを判定する。送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合、制御部11Cは、移動速度より送り速度を相対的に速くする。制御部11Cは、送り変数αに基づいて送り速度を制御する。具体的に、制御部11Cは、送り速度に送り変数αを加算した値を送り速度の指示値とする。そして、制御部11Cは、ミシン30に対して当該指示値を送信する。なお、制御部11Cは移動速度と送り速度とが一致するように、ロボット20及びミシン30に予め指示を与えているため、αが正であれば、必ず送り速度より移動速度が相対的に速くなる。
【0054】
一方、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合、制御部11Cは、送り速度より移動速度を相対的に速くする。具体的に、制御部11Cは、送り速度から送り変数αを減算した値を送り速度の指示値とする。そして、制御部11Cは、ミシン30に対して当該指示値を送信する。なお、制御部11Cは移動速度と送り速度とが一致するように、ロボット20及びミシン30に予め指示を与えているため、αが正であれば、必ず移動速度より送り速度が相対的に速くなる。
【0055】
なお、送り変数αが0より小さな値であれば、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合に、制御部11Cは、送り速度から送り変数αを減算する。また、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合に、制御部11Cは、送り速度に送り変数αを加算する。
【0056】
また、制御部11Cが送り速度を変更するための処理は、送り速度から送り変数αを減算する処理、又は送り速度に送り変数αを加算する処理に限られない。例えば、送り変数αが1より大きな値であれば、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合に、制御部11Cは送り速度に送り変数αを乗算する処理、又は送り速度に送り変数αを累乗する処理等を実行してもよい。また、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合に、制御部11Cは送り速度に送り変数αを除算する処理等を実行してもよい。
【0057】
また、制御部11Cは、移動速度を変更してもよい。或いは、制御部11Cは、送り速度及び移動速度を変更してもよい。すなわち、制御部11Cは、移動速度の変化のさせ方に関する値である移動変数βに基づく移動速度の制御、及び送り変数αに基づく送り速度の制御のうち少なくとも1つを実行する。制御部11Cが、移動変数βに基づいて移動速度を制御する場合、設定部11Bは、移動変数βを、移動速度の加速度と、保持位置及び送り部35の距離と、のうち少なくとも1つに基づいて設定する。移動変数βは0より大きな値である。具体的に、設定部11Bは、移動速度から移動加速度を算出する。そして、設定部11Bは、移動データベース15Cから、算出した移動加速度に関連付けられた変数β1を読み出す。また、設定部11Bは、距離データベース15Dから、保持位置及び送り部35の距離に関連付けられた変数β2を読み出す。
【0058】
そして、設定部11Bは、読み出したβ1及びβ2の和を移動変数βとして設定する。しかし、この例に限られない。設定部11Bは、β1及びβ2の算術平均値又は加重平均値等を移動変数βとして設定してもよいし、β1又はβ2を移動変数βとして設定してもよい。
【0059】
制御部11Cは、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合、移動速度から移動変数βを減算する。一方、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合、制御部11Cは、移動速度に移動変数βを加算する。すなわち、制御部11Cは、移動変数βに基づいて送り速度を制御している。制御部11Cは、移動速度の指示値を、ロボット20に対して送信する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る保持位置と送り部35との位置関係の説明に供する図である。
【0061】
図7において、X方向はミシン30の左右方向を示し、Y方向はミシン30の前後方向を示し、Z方向はミシン30の上下方向を示す。また、図7における矢印は送り方向の向きを示す。図7に示すように、X方向は送り方向と同一である。
【0062】
図7(a)は、被縫製材Mを移動させる前に、ロボットハンド部24が被縫製材Mを保持している保持位置の中心点R1と、送り部35の中心点Sとの位置関係の一例を示す図である。図7(a)において、保持位置の中心点R1におけるX座標をRx1とし、Y座標をRy1とし、Z座標をRz1とする。また、送り部35の中心点SにおけるX座標をSxとし、Y座標をSyとし、Z座標をSzとする。図7(a)に示すように、送り方向に対して保持位置の中心点R1が送り部35の中心点Sより手前にある場合、すなわち、Rx1がSxより小さい場合、制御部11Cは、移動速度より送り速度を相対的に速くする。なお、Rx1、Ry1、及びRz1は保持位置の中心点R1における座標に限られない。例えば、Rx1、Ry1、及びRz1は保持位置の上端部又は下端部等における座標であってもよい。また、Sx、Sy、及びSzは送り部35の中心点Sにおける座標に限られない。例えば、Sx、Sy、及びSzとして、送り部35の上端部又は下端部等における座標であってもよい。また、Sx、Sy、及びSzとして、縫製点の座標を適用してもよい。
【0063】
図7(b)は、ロボット20が送り方向に移動させながら、中心点R1から縫製点を中心に被縫製材Mを回転移動させた後に、ロボットハンド部24が被縫製材Mを保持している保持位置の中心点R2と、送り部35の中心点Sとの位置関係の一例を示す図である。図7(b)において、中心点R2におけるX座標をRx2とし、Y座標をRy2とし、Z座標をRz2とする。図7(b)に示すように、送り方向に対して送り部35の中心点Sが保持位置の中心点R2より手前にある場合、すなわち、SxがRx2より小さい場合、制御部11Cは、送り速度より移動速度を相対的に速くする。なお、Rx2、Ry2、及びRz2は保持位置の中心点R2における座標に限られない。例えば、Rx2、Ry2、及びRz2は保持位置の上端部又は下端部等における座標であってもよい。
【0064】
このように、制御部11Cは、被縫製材Mの移動又は姿勢の変化により、保持位置と送り部35との間で、送り方向に対して手前にある方が切り替わることに伴い、送り速度と移動速度とで相対的に速くする方を切り替えている。なお、上述したように、被縫製材Mの移動の変化は、ロボット20が、送り方向と同一の方向の成分を有する方向、及び送り方向と逆方向の成分を有する方向への移動を含めて被縫製材Mを連続的に移動させることにより生じている。また、被縫製材Mの姿勢の変化は、ロボット20が、送り方向と同一の方向の成分を有する方向へ移動させながら縫製点を中心に被縫製材Mを回転させることにより生じている。
【0065】
次に、図8を参照して、実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
【0066】
図8は、実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
まず、制御装置10に対して、制御処理の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。上述したように、CPU11は移動速度と送り速度とが一致するように、ロボット20及びミシン30に予め指示を与えているため、制御処理が実行される前は、移動速度と送り速度とは一致している。
【0068】
図8のステップS101で、CPU11は、ロボット20及びミシン30から、保持位置を取得する。
【0069】
ステップS102で、CPU11は、送り加速度を算出する。
【0070】
ステップS103で、CPU11は、送りデータベース15Bから、算出した送り加速度に関連付けられた変数α1を読み出す。
【0071】
ステップS104で、CPU11は、保持位置及び送り部35の距離を算出する。
【0072】
ステップS105で、CPU11は、距離データベース15Dから、算出した距離に関連付けられた変数α2を読み出す。
【0073】
ステップS106で、CPU11は、読み出したα1及びα2の和を送り変数αとして設定する。
【0074】
ステップS107で、CPU11は、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にあるか否かを判定する。具体的に、図7に示す例では、CPU11は、保持位置の中心点R1におけるX座標であるRx1が、送り部35の中心点SにおけるX座標であるSxより小さいか否かを判定する。送り方向に対して保持位置が送り部より手前にある場合(ステップS107:Y)、CPU11はステップS108に移行する。
【0075】
ステップS108で、CPU11は、送り速度に送り変数αを加算した値を送り速度の指示値とする。
【0076】
ステップS109で、CPU11は、ミシン30に対して送り速度の指示値を送信する。そして、CPU11はステップS110に移行する。
【0077】
ステップS110で、CPU11は、被縫製材Mの縫製が完了したか否かを判定する。被縫製材Mの縫製が完了した場合(ステップS110:Y)、CPU11は本制御処理を終了する。一方、被縫製材Mの縫製が完了していない場合(ステップS110:N)、CPU11はステップS101に戻る。
【0078】
ステップS107に戻って、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合(ステップS107:N)、CPU11はステップS111に移行する。ステップS111で、CPU11は、送り速度から送り変数αを減算した値を送り速度の指示値とし、ステップS109に移行する。
【0079】
このように本実施形態に係る縫製システム100は、縫製装置30と、ロボット20と、制御装置10と、を備えている。縫製装置30は縫製点へ被縫製材Mを送る送り部35を備え、ロボット20は被縫製材Mを保持している。制御装置10は、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合は、移動速度より送り速度を相対的に速くし、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合は、送り速度より移動速度を相対的に速くする制御部11Cを備える。
【0080】
また、本実施形態に係る制御装置10は、送り速度の変化のさせ方に関する値である送り変数αと、移動速度の変化のさせ方に関する値である移動変数βと、のうち少なくとも1つを、移動加速度と、送り加速度と、保持位置及び縫製点の距離と、のうち少なくとも1つに基づいて設定する設定部11Bを更に備える。そして、制御部11Bは、移動変数βに基づく移動速度の制御、及び送り変数αに基づく送り速度の制御のうち少なくとも1つを実行する。
【0081】
また、本実施形態に係る設定部11Bは、送り加速度が大きいほど、送り変数αをより大きな値に設定し、移動加速度が大きいほど、移動変数βをより大きな値に設定し、保持位置及び縫製点の距離が長いほど、移動変数β及び送り変数αをより大きな値に設定する。
【0082】
また、本実施形態に係る制御部11Cは、被縫製材Mの移動又は姿勢の変化により、保持位置と送り部35との間で、送り方向に対して手前にある方が切り替わることに伴い、送り速度と移動速度とで相対的に速くする方を切り替える。
【0083】
また、本実施形態に係る制御部11Cは、被縫製材の移動の変化は、ロボット20が、送り方向と同一の方向の成分を有する方向、及び送り方向と逆方向の成分を有する方向への移動を含めて被縫製材を連続的に移動させることにより生じ、被縫製材Mの姿勢の変化は、ロボット20が、送り方向と同一の方向の成分を有する方向へ移動させながら、縫製点を中心に被縫製材を回転させることにより生じる。
【0084】
また、本実施形態に係る制御装置10は、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合は、移動速度より送り速度を相対的に速くし、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合は、送り速度より移動速度を相対的に速くする制御部11Cを備える。
【0085】
また、本実施形態に係る制御方法は、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合は、移動速度より送り速度を相対的に速くし、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合は、送り速度より移動速度を相対的に速くする、処理をコンピュータが実行する。
【0086】
また、本実施形態に係る制御プログラム15Aは、送り方向に対して保持位置が送り部35より手前にある場合は、移動速度より送り速度を相対的に速くし、送り方向に対して送り部35が保持位置より手前にある場合は、送り速度より移動速度を相対的に速くする、処理をコンピュータに実行させる。
【0087】
また、本実施形態に係る非一時的記憶媒体としての記憶部15は、制御プログラム15Aを記録している。
【0088】
また、本実施形態に係る縫製物製造方法は、縫製システム100による縫製物製造方法であって、ロボット20及びミシン30が、制御装置10による制御に従って、被縫製材Mから縫製物を製造する。
【0089】
なお、上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0090】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0091】
以上、実施形態に係る制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0092】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0093】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 制御装置
11A 取得部
11B 設定部
11C 制御部
15A 制御プログラム
20 ロボット
30 ミシン
100 縫製システム
α 移動変数
β 送り変数
M 被縫製材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8