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特開2024-53995縫製システム、制御方法、制御プログラム、制御装置、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
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  • 特開-縫製システム、制御方法、制御プログラム、制御装置、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053995
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】縫製システム、制御方法、制御プログラム、制御装置、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/16 20060101AFI20240409BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240409BHJP
   D05B 35/00 20060101ALI20240409BHJP
   D05B 69/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D05B19/16
B25J13/08 A
D05B35/00 Z
D05B69/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160552
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595105009
【氏名又は名称】株式会社松屋アールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀隆
【テーマコード(参考)】
3B150
3C707
【Fターム(参考)】
3B150CB03
3B150CB18
3B150CC01
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE21
3B150CE24
3B150CE27
3B150EB03
3B150EB06
3B150EB13
3B150GD05
3B150GE29
3B150GF01
3B150GG04
3B150LA23
3B150LA35
3B150NA22
3B150NA34
3B150QA06
3C707BS10
3C707BS26
3C707DS01
3C707ES05
3C707EV08
3C707JS02
3C707KT01
3C707KT06
3C707LT06
3C707LU06
3C707LV02
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV06
3C707NS10
(57)【要約】
【課題】縫い目精度の高い縫製を可能とする。
【解決手段】縫製システムは、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と被縫製材を保持するロボットと前記縫製装置及び前記ロボットを制御する制御部を含む制御装置と、を含み、前記ロボットは、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構として機能させるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、
前記被縫製材を保持するロボットと、
前記縫製装置及び前記ロボットを制御する制御部を含む制御装置と、を含み、
前記ロボットは、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有する、
縫製システム。
【請求項2】
前記機構は、さらに、前記縫製装置の送り方向に対して直交する方向について被縫製材を移動させる、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記機構は、前記被縫製材を保持する前記ロボットのハンドの保持部分が回転するローラー機構であって、当該ローラー機構が前記送り方向に対して並進方向に対応して回転し、当該ローラー機構が前記送り方向の引っ張り力に応じて回転することにより、前記被縫製材を受動的に移動させる請求項1に記載の縫製システム。
【請求項4】
前記ローラー機構のローラー部分が円盤状である請求項3に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記ローラー機構の回転軸が送り方向に対して非平行なローラーである請求項3に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記機構は、前記制御部による前記ロボットの前記被縫製材を保持する部分についての位置制御及び力制御による機構であり、前記送り方向に対して力制御を行わずに受動的に追従し、前記送り方向とは異なる方向に対して予定位置及び姿勢となるように移動可能とする請求項1に記載の縫製システム。
【請求項7】
前記位置制御は、前記縫製装置の縫製点に対して周方向とする請求項6に記載の縫製システム。
【請求項8】
前記被縫製材を、第1の被縫製材と第2の被縫製材とによる複数の被縫製材の各々とし、前記ロボットを、前記第1の被縫製材を保持する第1のロボットと前記第2の被縫製材を保持する第2のロボットとの複数のロボットの各々として、
複数のロボットのうちの一方のロボットが前記機構を有する請求項1に記載の縫製システム。
【請求項9】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータが実行する制御方法。
【請求項10】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータに実行させる制御プログラム。
【請求項11】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する制御部、
を含む制御装置。
【請求項12】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータに実行させる制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【請求項13】
送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータが実行する縫製物製造方法であって、
前記縫製装置及び前記ロボットにより前記被縫製材から縫製物を製造する縫製物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システム、制御方法、制御プログラム、制御装置、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製ロボットにおいて、ミシンの回転速度とロボットの速度との対応関係が線形となる領域を用いて同期するように移動させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第110258030A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットが被縫製材を保持して縫う方向に移動させるとともに、ミシンが縫い針に向けて被縫製材を送る動作を行う場合、両者の被縫製材を動かす速度が合わないと、たわみなどが生じ、縫い目精度を維持した縫製ができなくなる。ロボットに、指令値に対する追従遅れが生じると縫い目精度を維持した縫製が困難になる。
【0005】
本開示は上記の点に鑑みてなされたものであり、縫い目精度の高い縫製を可能とする縫製システム、制御方法、制御プログラム、制御装置、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る縫製システムは、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、前記被縫製材を保持するロボットと、前記縫製装置及び前記ロボットを制御する制御部を含む制御装置と、を含み、前記ロボットは、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有する。なお、縫製装置は、被縫製材の縫製点の送り方向手前にある部分を縫製点へ向かうように送り動作をする。ここでいう、送り方向の引っ張り力に対して、には、送り方向成分の引っ張り力に対して、である場合を含む。また、縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している被縫製材を受動的に移動させる、ことには、保持している被縫製材が外力によって動かされたときに、縫製装置の送り方成分の動きについては、妨げることも、増進もせず、働きかけられた外力に応じた動きとなるように、保持しつつ送り出すことを含む。
【0007】
前記機構は、さらに、前記縫製装置の送り方向に対して直交する方向について被縫製材を移動させる。ここでいう、縫製装置の送り方向に対して直交する方向には、縫製点における被縫製材の面に沿う方向を含む。また、縫い針が移動する方向に対しても直交する方向を含む。これにより、ロボットによる被縫製材の動きを縫製装置による被縫製材の送り動作に協調させながら当該送り方向以外の方向に被縫製材を移動させるので、高精度に非直線の縫製を行うことができる。
【0008】
前記機構は、前記被縫製材を保持する前記ロボットのハンドの保持部分が回転するローラー機構であって、当該ローラー機構が前記送り方向に対して並進方向に対応して回転し、当該ローラー機構が前記送り方向の引っ張り力に対して応じて回転することにより、前記被縫製材を受動的に移動させるようにしてもよい。送り方向に対応して回転することには、送り方向に対して垂直を除く斜め方向に対応して回転することで送り方向成分に対応して回転する場合を含む。また、縫製を進めていくとロボットによる保持位置が縫製点に近づくために生じる持ち替えを行う必要がない。
【0009】
前記ローラー機構のローラー部分が円盤状であるようにしてもよい。このように円盤とすることで、被縫製材に接する部分の圧力を高め、当該円盤の軸方向に沿う方向について滑りの発生を低減することができる。
【0010】
前記ローラー機構の回転軸が送り方向に対して非平行なローラーであるようにしてもよい。ここで非平行は、ローラー接する被縫製材の面上に投影した回転軸と送り方向とが、垂直である場合を含み、垂直に対して鋭角を加減した角度とする場合を含む。これにより送り方向に対して受動的に被縫製材を移動させることができる。
【0011】
前記機構は、前記制御部による前記ロボットの前記被縫製材を保持する部分についての位置制御及び力制御による機構であり、前記送り方向に対して力制御を行わずに受動的に追従し、前記送り方向とは異なる方向に対して予定位置及び姿勢となるように移動可能とするようにしてもよい。ここで、位置制御には速度制御によって結果的に位置が制御される場合を含む。
【0012】
前記位置制御は、前記縫製装置の縫製点に対して周方向とするようにしてもよい。ここで周方向には、縫製点を中心として被縫製材を保持している箇所を含む円を想定したときにその円周に沿う方向を含む。周方向に移動させることで、形成される縫い目に角度を与え、平行で階段状の縫い目が形成されることを回避できる。
【0013】
前記被縫製材を、第1の被縫製材と第2の被縫製材とによる複数の被縫製材の各々とし、前記ロボットを、前記第1の被縫製材を保持する第1のロボットと前記第2の被縫製材を保持する第2のロボットとの複数のロボットの各々として、複数のロボットのうちの一方のロボットが前記機構を有するようにしてもよい。これにより縫製装置及び複数のロボットの協調動作に対する制御の負担を低減させることができる。
【0014】
第2態様に係る制御方法は、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータが実行する。
【0015】
第3態様に係る制御プログラムは、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータに実行させる。
【0016】
第4態様に係る制御装置は、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する制御部を含む。
【0017】
第5態様に係る非一時的記憶媒体は、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータに実行させる制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体である。
【0018】
第6態様に係る縫製物製造方法は、送り動作を行って被縫製材を縫製する縫製装置と、被縫製材を保持するロボットであって、前記縫製装置の送り方向の引っ張り力に対して、保持している前記被縫製材を受動的に移動させる機構を有するロボットとを制御する、ことをコンピュータが実行する縫製物製造方法であって、前記縫製装置及び前記ロボットにより前記被縫製材から縫製物を製造する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、送り方向に引っ張られる力に対して、ロボットを受動的な機構とすることでロボットとミシンとを連動させ、縫い目精度の高い縫製を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る縫製システムの構成の一例を示す図である。
図2】被縫製材M1及びM2を縫製する縫製システムのイメージ図である。
図3】ローラー機構による縫製の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施形態に係るロボット保持位置速度及び縫製予定位置速度の説明に供する図である。
図7】実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すシーケンスである。
図8】ハイブリッド制御による機構での縫製の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0022】
図1は、本実施形態に係る縫製システム100の構成の一例を示す図である。
【0023】
図1に示す縫製システム100は、制御装置10、ロボット20、ロボット60、ミシン30、及びカメラ40を備えている。ミシン30は、縫製装置の一例である。縫製システム100は、ロボット20及びロボット60並びにミシン30を用いて被縫製材M(M1及びM2)の縫製を自動的に行う。例示として図1において、X方向はミシン30の左右方向を示し、Y方向はミシン30の前後方向を示し、Z方向はミシン30の上下方向を示す。被縫製材Mは、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革等、柔軟性を有する材質とされる。被縫製材Mは、本実施形態の態様において、M1とM2の2つの部材を扱う場合を例に説明する。M1及びM2を重ね合わせて縫製した際の完成した縫製物を3次元形状物とした場合、M1を曲面体、M2を貼り付け部分とする。また、一方を球面・楕円体とし、他方をそれらの一部としてもよい。縫製システム100では、被縫製材M1及び被縫製材M2を3次元縫製することにより、3次元形状物である縫製物を製造する。以下、M1及びM2に共通する説明に関しては被縫製材Mと記載する。被縫製材M1が本開示の第1の被縫製材、被縫製材M2が本開示の第2の被縫製材の一例である。ロボット20が本開示の第1のロボット、ロボット60が本開示の第2のロボットの一例である。なお、一方が立体形状で他方が平面形状としたが、一方又は両方が平面形状であってもよいし、立体形状であってもよい。また、立体形状の被縫製材については縫製点に位置する部分の傾きが他方の縫製点に位置する部分の傾きに対して相対的に傾くように配置して縫製する場合を含む。
【0024】
図2は、被縫製材M1及びM2を縫製する縫製システム100のイメージ図である。図2に示すように、本体部分である被縫製材M1をロボット20のハンド部24で保持し、貼り付け部分である被縫製材M2をロボット60のハンド部64で保持する。本実施形態では、ロボット60の機構は、縫製点に対しては周方向に動かしながら制御する。縫製ラインL1及び縫製ラインL2に応じて動かす方向は制御する。ロボット60の機構は、ミシン30の送り方向に引っ張られる力に対して、被縫製材M2を受動的に移動させる機構(以下、単に受動的に移動させる機構という)とする。
【0025】
ミシン30の送り方向の引っ張り力に対して被縫製材M2を受動的に移動させる、ことについて説明する。受動的な移動とは、ロボット60が保持している被縫製材M2が外力によって動かされたときに、ミシン30の送り方成分の動きについては、妨げることも、増進もせず、働きかけられた外力に応じた動きとなるように、保持しつつ送り出すことを意味する。
【0026】
このようにロボット60は、上記の受動的に移動させる機構で制御される点でロボット20と異なる機構を有する。本実施形態では、(1)ロボット60のハンド部64をローラーにしたローラー機構の場合、(2)ロボット60の位置制御及び力制御によるハイブリッド制御による機構である場合の何れかを採用することで、受動的に移動させる機構を実現する。後述するロボット60における説明において、以下、第1実施形態で(1)ローラー機構、第2実施形態で(2)ハイブリッド制御による機構についてそれぞれ説明する。
【0027】
[第1実施形態]
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に載置された被縫製材Mの縫製を行う。なお、縫製点とは、例えば、ミシン30のミシン針33が縫うために下がったときに被縫製材Mに刺さる位置とされる。縫製点は、被縫製材Mを縫う瞬間に被縫製材Mが載置されたミシンテーブル50の上面をミシン針33が通過する位置としてもよい。ミシン制御機構32は、例えば、モータであり、制御装置10からミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号が入力されると、当該ミシン指令信号に基づいて、ミシン針33の上下動の速度を調整可能とする。
【0028】
ミシン30は、被縫製材Mの送り機構及びミシン針33の動作機構を有している。これらの機構は、同一のモータによって一定比の速度で連動して動作する。実際の動作では、ミシン針33の上下動作(縫い動作)と、被縫製材Mの送り動作とが交互に行われる。押え部34は、被縫製材Mを間欠的に押さえて被縫製材Mの浮き抑止と固定を行う。つまり、押え部34は、ミシン針33を下方に移動させて被縫製材Mに刺すときに被縫製材Mが浮かないように、ミシン針33が通る位置の近傍で上方から被縫製材Mへ押し下げて、被縫製材Mの下側にあるテーブル面との間で被縫製材Mを挟み込む。また、押え部34は、ミシン針33を上方へ移動させて被縫製材Mから抜くときに被縫製材Mの浮きを抑止する。また、複数の被縫製材Mを縫い付ける場合には、互いの被縫製材Mを重ね合わせて配置し、押え部34で互いの被縫製材Mを押さえて密着させる。また、押え部34は、ミシン針33を上下させたあと、被縫製材Mを送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する。送り部35は、縫製点の近傍に設けられ、ミシン針33で被縫製材Mに糸を通した後、縫い目の距離だけ被縫製材Mを縫い方向へ送る。
【0029】
ミシン30は、押え部34及び送り部35により被縫製材Mを間欠的に押さえながら間欠送り動作を行う。本実施形態において、ミシン30の送り速度は、例えば、ミシン針33の平均速度としてもよいし、あるいは、間欠送り動作における動作時の送り速度、移動・停止を考慮した間欠送り動作全体としての平均送り速度としてもよい。
【0030】
ミシン30は、ロボット20及びロボット60が保持する被縫製材Mを予め設定された送り速度で縫製点に送り、当該縫製点に送った被縫製材Mの縫製を行う。
【0031】
ミシンテーブル50は、縫製するためにミシン針33が上から降りて被縫製材Mを貫通する際、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材Mを下方から受けて支える台である。取り囲む位置における当該面には、全周を囲む繋がった面の他、縫製点を挟む、あるいは囲むように配置された複数に分かれた面を含む。ミシンテーブル50では、ミシン針33が降りる部分は穴が開いている。被縫製材M1はミシンテーブル50の面に載置されて受け支えられる。
【0032】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された被縫製材Mを上方から撮影して、被縫製材Mの縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、ロボット20の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。
【0033】
(ロボット20)
ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びハンド部24を備えている。ハンド部24は、ロボット20の先端部に設けられる。ロボットアーム部23は、多関節のアームであり、一端に支持台21が接続され、他端にハンド部24が接続される。支持台21は、ロボットアーム部23を支持し、ロボットコントローラ22を内蔵する。ハンド部24は、ミシンテーブル50の上に被縫製材M1の縫う部分が配置されるように保持しながら移動させてミシン30のミシン針33に供給する。
【0034】
ロボットコントローラ22は、制御装置10からロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の被縫製材M1がハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ハンド部24が被縫製材M1を移動させる方向に動作することで、被縫製材M1がミシンテーブル50上を保持しながらミシン30のミシン針33に対して移動する。ロボット20は、被縫製材M1保持する。ロボット20は、被縫製材M1をロボット20が保持する位置を示すロボット保持位置及び保持する方向を示すロボット保持方向で保持する。
【0035】
(ロボット60)
ロボット60は、支持台61、ロボットコントローラ62、ロボットアーム部63、及びハンド部64を備えている。ハンド部64は、ロボット60の先端部に設けられる。ロボットアーム部63は、多関節のアームであり、一端に支持台61が接続され、他端にハンド部64が接続される。支持台61は、ロボットアーム部63を支持し、ロボットコントローラ62を内蔵する。ハンド部64は、被縫製材M2を保持し、ミシン30の送り方向の引っ張り力に対して受動的に移動させる機構によって、被縫製材M2を送り方向に移動させて、ミシン30のミシン針33に供給する。
【0036】
ロボットコントローラ62は、制御装置10からロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部63及びハンド部64を動作させる。
【0037】
ロボット60は、ミシン30の送り方向の引っ張り力に対して受動的に移動させる機構を有する。受動的に移動させる機構は、本実施形態では被縫製材M2を保持するハンド部64の保持部分が回転するローラー機構を想定する。
【0038】
(ローラー機構)
図3は、ローラー機構による縫製の一例を示す図である。ロボット60のハンド部64では、ローラー部分64Rにより被縫製材M2を保持する。ローラー部分64Rが円盤状、すなわち軸を共通とする半径の等しい複数の円盤が連なった形状であり、保持した被縫製材M2に係る外力に伴い回転する。なお、円盤を入れ替えて、円盤の半径及び厚みを調節することにより、保持される被縫製材M2の移動しやすさを調整し得る。ハンド部64が保持する被縫製材M2の縫製方向は、縫製の縫製予定位置の自由曲線(後述)に応じて定められ、送り方向fdに対して概ね並進方向となるような制御が行われる。そのため、ローラー部分64Rのローラーが、送り方向fdに対して並進方向に対応して回転するように制御される。並進方向に対応とは、並進方向成分を持ちさえすればよいことを意味しており、ローラー部分64Rを傾けて被縫製材M2を保持している場合も含む。これにより、ミシン30の間欠送り動作に従って、被縫製材M2に対して引っ張り力が生じて、保持しているローラー部分64Rに回転が生じるため、被縫製材M2は保持した状態を保ちながら送り方向に引っ張られるように移動していく。
【0039】
また、ロボット60は、送り方向とは異なる方向、すなわちミシン30の縫製点Pに対して周方向θの位置制御を可能とする。この位置制御については(2)ハイブリッド制御による機構の場合も同様である。
【0040】
また、本実施形態のローラー機構とすることの利点として、ハンド部64がミシン30(縫製点)に接近してしまう場合の持ち替えが不要である点が挙げられる。ローラー機構でないハンド部64であった場合、被縫製材M2を保持していると、被縫製材M2がミシン30の送り方向に引っ張られて移動していくと共に、ハンド部64も送り方向に移動するため、ミシン30に衝突しないように持ち替えを行う必要がある。しかし、ローラー機構においては被縫製材M2自体が送り方向に移動していき、ハンド部64には移動が生じないため、持ち替えが発生しない。そのため、本実施形態のローラー機構を用いた手法は、持ち替えにかかる時間を短縮した制御とすることができるという利点が生じる。
【0041】
(制御装置のハードウェア構成)
制御装置10は、ロボット20、ロボット60、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、ロボット20、ロボット60及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0042】
図4は、本実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0043】
図4に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インタフェース(I/O)14と、記憶部15と、接続部16と、を備えている。
【0044】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、接続部16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0045】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御ユニットが構成される。制御ユニットは、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御ユニットとして構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御ユニットの一部として構成されてもよい。制御ユニットの各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はICチップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御ユニットの集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0046】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0047】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の非一時的記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の非一時的記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0048】
接続部16は、ロボット20のロボットコントローラ22、ロボット60のロボットコントローラ62、ミシン30のミシン制御機構32、及びカメラ40の各々を接続するためのインタフェースである。
【0049】
本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、図5に示す各部として機能する。
【0050】
図5は、本実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、設定部11A及び制御部11Bとして機能する。
【0051】
(ロボット20に関する制御)
ここで、ロボット20に関する制御について説明する。定形の被縫製材の部分をロボットで保持して取り回しながら自由曲線の形状の縫製を行う場合、単にロボットの速度とミシンの速度とを一致させる制御では同期が取れず、皺になる等、思い通りの縫製ができない。
【0052】
これに対して、本実施形態に係る縫製システム100では、ミシン30の縫製点から離れた位置で被縫製材M1を保持したロボット20が被縫製材M1を動かしながら単純な直線や一定の曲線ではない任意の形状の縫製を行えるようにする。
【0053】
設定部11Aは、被縫製材M1に対して縫製予定位置及び縫製予定方向を設定する。縫製予定位置は、被縫製材M上の縫製を行っていく位置であり、ロボット20が保持する部分とは異なる位置である。縫製予定方向は、縫製予定位置にある被縫製材Mの部分の、縫製時の姿勢、3次元空間内の向きを表す方向であって回転方向もあわせて含み得る。縫製予定位置及び縫製予定方向は、連続した点の集合として表される。この連続した点の集合は、例えば、連続的な自由曲線(図6参照)上に設定される。図6は被縫製材M1に縫製予定位置を設定した場合の例である。「連続的な自由曲線」とは、直線とは限らない線であり、任意の形状の連続的に曲がる線を含み、一部に直線、一定曲率の線を含んでもよく、折り返し点を含んでもよい。この自由曲線は、例えば、被縫製材M1の目印となる特徴的な形状を基準として設定してもよいし、被縫製材Mの端に沿って一定距離離れた位置に設定してもよい。自由曲線に従って縫製した後は縫い目が形成される。縫製予定位置は、例えば、カメラ40で被縫製材M1を撮影して得られた画像をモニタに表示しながら設定される。縫製予定位置及び縫製予定方向は、例えば、被縫製材上の目印、端部(エッジ)を基準として、2次元又は3次元の座標として表すことができる。具体的には、制御装置10がマウス、キーボード等の入力装置を備え、この入力装置を用いて、例えば、縫製範囲(縫製の開始点、終了点)、縫い代(エッジからの距離)、縫いピッチ等の種々の縫製条件を入力できるようにしておく。これにより被縫製材M1に対して適切な縫製予定位置が設定される。連続する複数の縫製予定位置が設定されると、縫製予定位置の位置関係によって縫製予定方向が定まる。
【0054】
制御部11Bは、ロボットコントローラ22に対して、ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号を出力し、ミシン制御機構32に対して、ミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号を出力する。
【0055】
制御部11Bは、被縫製材M1の縫製予定位置を縫製点に合わせたときに縫製予定位置の方向が縫製予定方向となるようにロボット20に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。縫製予定位置を縫製点に合わせるとは、送り動作により被縫製材M1が送られたときに、縫製予定位置である自由曲線上の複数連続点が縫製点の位置になるように、ロボット20が保持する被縫製材M1を動かす又は配置することである。制御部11Bが出力するロボット指令信号には、ロボット保持位置及びロボット保持方向が含まれる。ロボット保持位置及びロボット保持方向は、ロボット20が被縫製材M1を保持する位置及び方向、すなわち、ハンド部24の位置及び方向を表す。
【0056】
制御部11Bは、ロボット保持位置及びロボット保持方向を動かしたときに定まる縫製予定位置及び縫製予定方向の関係(「ロボット・ミシン対応関係」という。)を用いて、ロボット保持位置が移動する速度を示すロボット保持位置速度及び縫製予定位置が移動する速度を示す縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、ロボット保持位置がロボット保持位置速度で移動するようにロボット20を制御する。また、縫製点と一致する(あるいは縫製点に向けて移動させる)縫製予定位置速度がミシン30の送り速度となるようにミシン30を制御する。例えば、曲線縫製における縫製予定位置速度を算出する場合には、ロボット20の並進速度、回転速度だけではなく、時々刻々変化する距離を、ロボットハンド部24の位置とミシン30の縫製点PとのベクトルTとして考慮する。このベクトルTは、上述のロボット・ミシン対応関係の一例である。これにより、ロボット保持位置速度Rvと縫製予定位置速度Svとの同期が取れるようにする。縫製予定位置速度は、ロボットの速度及びベクトルTを変数とする関数として、ミシンの送り速度(ミシンの送り速度=f(ロボットの速度、ベクトルT))と表される。
【0057】
制御部11Bは、ミシン30及びロボット20の制御について、ロボット保持位置速度を基準とし、当該ロボット保持位置速度に基づいて定まる縫製予定位置速度に対応してミシン30の送り速度を制御する。あるいは、縫製予定位置速度を基準とし、当該縫製予定位置速度にロボット保持位置速度を同期させてもよい。
【0058】
(ロボット60に関する制御)
設定部11Aは、被縫製材M2に対して縫製予定位置を設定する。被縫製材M2の縫製予定位置は、縫い上がったときに立体形状になるように被縫製材M1の縫製予定位置に対応するように設定する。被縫製材M1と同様に連続的な自由曲線として設定すればよいが、立体形状に縫製するためには長さや形状を異なるように設定することになる。
【0059】
制御部11Bは、ロボットコントローラ62に対して、ロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号を出力する。制御部11Bは、被縫製材M2の縫製予定位置を縫製点に合わせ、かつ、被縫製材M2が縫製予定位置によって定まる縫製予定方向に移動するように、ロボット60に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。制御部11Bは、ロボット60に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御することで、ミシン30の縫製点Pに対して周方向θの位置制御を行う。一方、送り方向に対する並進方向については、ハンド部64のローラー部分64Rによるローラー機構により被縫製材M2を受動的に移動させる機構を有しているため、ロボット60に対するロボット保持位置及びロボット保持方向の制御を行わない。
【0060】
以上の構成により、本実施形態では、制御装置10がロボット20はミシン30の速度と同期させて制御し、ロボット60はミシン30の送り方向に被縫製材M2を受動的に移動させる機構として機能する。
【0061】
次に、本実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。図7は、本実施形態に係る制御プログラム15Aによる縫製処理の流れの一例を示すシーケンスである。縫製処理の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0062】
ステップS100では、CPU11が、ミシン指令信号及びロボットの各々のロボット指令信号を生成する。
【0063】
ステップS102では、CPU11が、ミシン指令信号及びロボットの各々のロボット指令信号を出力する。ミシン30へのミシン指令信号をミシン制御機構32へ出力し、ロボット20へのロボット指令信号をロボットコントローラ22に出力し、ロボット60へのロボット指令信号をロボットコントローラ62に出力する。
【0064】
ステップS104では、ミシン制御機構32が、ミシン指令信号に基づいて、ミシン30の速度(ミシンの送り速度)を制御する。
【0065】
ステップS106では、ロボットコントローラ22が、ロボット指令信号に基づいて、ロボット20のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。
【0066】
ステップS108では、ロボットコントローラ62が、ロボット指令信号に基づいて、ロボット60のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。
【0067】
上記のステップS104及びS108の制御により、ロボット60のローラー機構が機能し、ロボット60がミシン30の送り方向の引っ張り力に対して被縫製材M2を受動的に移動させる。具体的には、ロボット60のハンド部64がローラーの場合には、ミシン30の送り方向成分については、移動させる必要がないため変位させない制御を行う。また、S108の制御により、縫製点Pに対して周方向θの位置制御が行われる。以上のように制御装置10の各指令により、ロボット60が被縫製材M2を受動的に移動させる機構として機能させるように制御する。
【0068】
以上、本実施形態によれば、送り方向に引っ張られる力に対して、ロボットを受動的なローラー機構とすることでロボットとミシンとを連動させ、縫い目精度の高い縫製を可能とする。
【0069】
[第2実施形態]
第2実施形態について(2)ハイブリッド制御による機構の場合について説明する。第2実施形態の構成及び作用は、ハンド部64及び制御部11Bの制御内容以外については、第1実施形態と同様であるため、差分となる部分について説明する。
【0070】
(2)ハイブリッド制御による機構
図8は、ハイブリッド制御による機構での縫製の一例を示す図である。図8に示すようにハイブリッド制御では、ロボット60の位置制御及び力制御が規定される。なお、ここで説明するハイブリッド制御は、ロボット60がハンド部64により被縫製材M2を保持している状態の制御である。本実施形態のハンド部64は、第1実施形態のローラー機構とは異なる機構により、被縫製材M2を保持する。力制御はミシン送り方向に並進方向の制御であり、位置制御は、送り方向とは異なる方向の制御、ここでは縫製点Pに対して周方向θへの制御である。ハイブリッド制御は、例えば、参考文献1及び参考文献2に記載の制御であり、拘束なしで力制御と、拘束ありの位置制御とがある。当該ハイブリット制御による機構は、被縫製材M2を保持しているロボット60のハンド部64について、ハンド部64の方向を制御する各軸において、軸方向ごとに、力制御をするか、位置制御をするかを分け、その軸方向ごとに分けた動作となるようにロボット60の各軸(各関節)制御する機構である。
[参考文献1]"ハイブリッド制御",URL:"http://www.thothchildren.com/chapter/5bd2a57c51d9305189035e93"
[参考文献2]"ロボットアームの位置と力の動的ハイブリッド制御",,URL:"https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/6/5/6_5_380/_pdf/-char/ja"
【0071】
ハイブリッド制御では最終的に与えるトルクτを、位置制御のためのトルクτpositionと力制御のためのトルクτforceを用いてτ=τposition+τforceと与える。トルクτは目標となる力と目標となる位置加速度を求めることで得られる。
【0072】
本実施形態の制御部11Bでは、送り方向に対しては力制御を行わずに受動的に追従し、送り方向とは異なる方向の周方向θに対しては位置制御を行うように、ロボット60のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。そのため、本実施形態では、固定的に被縫製材M2を把持したまま、被縫製材M2に係る外力に対して追従し、周方向θに移動する位置制御のみを考慮することになる。なお、ハイブリッド制御では、ハンド部64は被縫製材M2を固定的に掴むように保持しており、ロボット60の関節を動かすことで追従させているため、縫製点に近づくと持ち替えを行う。なお、位置制御には、被縫製材の縫製点における部分が予定された位置や姿勢となるように動かすための制御を広く含み、速度制御よって動かす場合を含む。このように位置制御は、受動的でない制御が行われる。
【0073】
以上、本実施形態によれば、送り方向に引っ張られる力に対して、ロボットを受動的なハイブリッド制御による機構とすることでロボットとミシンとを連動させ、縫い目精度の高い縫製を可能とする。
【0074】
なお、上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0075】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0076】
以上、実施形態に係る制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0077】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0078】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 制御装置
11 CPU
11A 設定部
11B 制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 制御プログラム
16 接続部
20、60 ロボット
30 ミシン
40 カメラ
50 ミシンテーブル
100 縫製システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8