(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053996
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法
(51)【国際特許分類】
D05B 19/16 20060101AFI20240409BHJP
D05B 69/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
D05B19/16
D05B69/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160553
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595105009
【氏名又は名称】株式会社松屋アールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】佐子 辰男
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CC01
3B150CC05
3B150CE01
3B150CE21
3B150CE24
3B150EB01
3B150EB13
3B150GE29
3B150GF01
3B150GG04
3B150JA03
3B150LA23
3B150LA35
3B150LB02
3B150NA22
3B150NA34
3B150NB09
3B150NB18
3B150NC03
3B150QA06
(57)【要約】
【課題】縫製前の被縫製材を立体形状に固定しなくても、被縫製材を立体的に縫製することができる。
【解決手段】縫製システムは、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットと、前記縫製装置と前記ロボットとを制御し、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する制御装置と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、
前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットと、
前記縫製装置と前記ロボットとを制御し、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する制御装置と、
を含む縫製システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2の被縫製材の保持位置が、前記縫製装置の縫製点へ送る手前の位置であり、当該保持位置において前記第1の被縫製材に対して傾けた状態で保持するように前記ロボットを制御する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1の被縫製材が、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材を受けて支える面と平行に沿うように前記ロボットを制御する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項4】
被縫製材同士を曲面状に重なった状態に縫い上げる場合において、曲面状の突出する側を前記第1の被縫製材とし、曲面状のくぼむ側を前記第2の被縫製材として縫製することとし、
前記制御装置は、曲面状の突出する側に位置する前記第1の被縫製材に対して、曲面状のくぼむ側に位置する前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2の被縫製材を傾けて保持するように前記ロボットを制御すると共に、前記縫製装置の有する押さえ部を間欠的に上下させるように制御する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項6】
前記ロボットを、前記第1の被縫製材を保持する第1のロボットと、前記第2の被縫製材を保持する第2のロボットの各々とし、
前記制御装置は、前記第1の被縫製材が、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材を受けて支える面と平行に沿うように前記第1のロボットを制御すると共に、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記第2のロボットを制御する、請求項1に記載の縫製システム。
【請求項7】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータが実行する制御方法であって、
前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、
制御方法。
【請求項8】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、
制御プログラム。
【請求項9】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットと、を制御する制御部、を含み、
前記制御部は、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、
制御装置。
【請求項10】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータに実行させる制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、
前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、非一時的記録媒体。
【請求項11】
重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータが実行する縫製物製造方法であって、
前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御することにより、前記縫製装置及び前記ロボットにより前記被縫製材から縫製物を製造する縫製物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
また、特許文献1には、ロボットアームにミシンを搭載した縫製システムが記載されている。この縫製システムは、ミシンと、縫製の基準位置を撮影するカメラと、ミシンとカメラを保持するロボットアームと、制御装置とを備える。制御装置は、ミシンの針落ちにより第一の針落ち位置を形成し、制御装置が記憶する針中心位置を通る回動軸回りに規定の角度でミシンを回動させてから、ミシンの針落ちにより第二の針落ち位置を形成する動作制御を行い、さらに、第一の針落ち位置と第二の針落ち位置とをカメラで撮影して得られた撮影画像の撮影範囲内の第一の針落ち位置と第二の針落ち位置の各位置に基づいて、制御装置が記憶する針中心位置を較正する較正処理を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被縫製材を立体形状に縫製するためには、上記特許文献1に記載の技術のように、被縫製材を立体形状の型に装着して固定する必要がある。つまり、被縫製材を立体的に縫製するには、立体形状の型を予め用意しておく必要があった。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、縫製前の被縫製材を立体形状に固定しなくても、被縫製材を立体的に縫製することができる縫製システム、制御装置、制御方法、制御プログラム、非一時的記憶媒体、及び縫製物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る縫製システムは、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットと、前記縫製装置と前記ロボットとを制御し、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する制御装置と、を含む。
【0007】
なお、第1の被縫製材に対して第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製される態様には、縫い付けようとしている2つの被縫製材の糸が通されるそれぞれの部分について、互いに傾いた状態とされ、当該部分に糸が通されることで縫製されることを含む。また、当該態様には、縫製するために糸を通す前、重ね合わされている2つの被縫製材から離れた位置(上側)に縫い針が位置している状態で、第1の被縫製材の縫われる部分に対して第2の被縫製材の縫われる部分が傾いた状態とされ、縫い針が糸を通して縫製された状態では2つの被縫製材が縫い合わされて密着している場合を含む。また、間欠的に被縫製材を押さえ付ける押さえ機構が存在する場合には、押さえ機構が2つの被縫製材押さえつけていない状態で、第1の被縫製材の縫われる部分に対して第2の被縫製材の縫われる部分が傾いた状態とされ、縫製時には押さえ機構が2つの被縫製材を押さえ付けて密着させ、縫い合わせる場合を含む。押さえ機構が押さえ付けていない状態には、被縫製材から離れている場合のほか、被縫製材に接触しながらも触れている程度で被縫製材を傾ければそれに伴って動くような場合を含む。また、押さえ機構が間欠動作せずに、常に被縫製材を押さえている場合であっても、その押さえる力に打ち勝って縫い合わされる前に当該部分が相対的に傾く場合を含む。また、当該態様には、両方の被縫製材を傾けて、それらの傾き角度の大きさを異ならせる場合を含む。また、当該態様には、被縫製材の縫製点に向かう手前の部分を保持して相対的に傾けた状態とされる場合を含む。この場合、縫い目の方向とは異なる方向成分を加えて被縫製材を動かすことで撓みを抑制しつつ立体形状に縫製することができる。また、被縫製材の一方又は両方が、平面形状のほか、立体形状であってもよい。以上のような場合を含む本態様によれば、予め被縫製材を立体的に配置しておくことなく立体形状に縫製することができる。
【0008】
前記制御装置は、前記第2の被縫製材の保持位置が前記縫製装置の縫製点へ送る手前の位置であり、当該保持位置において前記第1の被縫製材に対して傾けた状態で保持するように前記ロボットを制御するようにしてもよい。これにより、縫い目の方向対して異なる方向成分に力を加える場合に、被縫製材が撓むことを抑止できる。傾けて保持することには、被縫製材の縫製点における部分が相対的に傾いた状態になる場合のほか、当該部分において互いに平行になっている場合も含む。後者の場合、縫い目の方向に対して異なる成分を加えて被縫製材を移動させることで撓みを抑止しつつ立体形状に縫製できる。前者の場合、前述の成分を加えて被縫製材を移動させなくても立体形状に縫製できる。
【0009】
前記制御装置は、前記第1の被縫製材が、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材を受けて支える面と平行に沿うように前記ロボットを制御するようにしてもよい。これにより、一方の被縫製材を面に平行に沿わせることで、傾ける被縫製材が一方だけで済むため、取り扱いが容易になる。
【0010】
被縫製材同士を曲面状に重なった状態に縫い上げる場合において、曲面状の突出する側を前記第1の被縫製材とし、曲面状のくぼむ側を前記第2の被縫製材として縫製することとし、前記制御部は、曲面状の突出する側に位置する前記第1の被縫製材に対して、曲面状のくぼむ側に位置する前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する、ようにしてもよい。これにより、曲面状形状に縫い上げるときの突出する側、くぼむ側を適切にコントロールできる。
【0011】
前記制御装置は、前記第2の被縫製材を傾けて保持するように前記ロボットを制御すると共に、前記縫製装置の有する押え部を間欠的に上下させるように制御するようにしてもよい。これにより、縫製台に向けて被縫製材が間欠的に押さえつけられ、押さえていないタイミングで被縫製材を大きく傾けることができるので制御量を大きくとることができる。
【0012】
前記ロボットを、前記第1の被縫製材を保持する第1のロボットと、前記第2の被縫製材を保持する第2のロボットの各々とし、前記制御装置は、前記第1の被縫製材が、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材を受けて支える面と平行に沿うように前記第1のロボットを制御すると共に、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記第2のロボットを制御するようにしてもよい。なお、縫製点を取り囲む位置の被縫製材を受けて支える面には、全周を囲む繋がった面の他、縫製点を挟む、あるいは囲むように配置された複数に分かれた面を含む。これにより、被縫製材を個別に保持して制御することで、一方又は両方が立体形状の場合など、互いに異なる形状の被縫製材をそれぞれ所望の傾きになるように動かして縫製することが容易になる。
【0013】
第2態様に係る制御方法は、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータが実行する制御方法であって、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する。
【0014】
第3態様に係る制御プログラムは、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータに実行させる制御プログラムであって、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する。
【0015】
第4態様に係る縫製装置は、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットと、を制御する制御部、を含み、前記制御部は、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する。
【0016】
第5態様に係る非一時的記憶媒体は、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータに実行させる制御プログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御する。
【0017】
第6態様に係る縫製物製造方法は、重ね合わされた第1の被縫製材及び第2の被縫製材を縫製する縫製装置と、前記第1の被縫製材及び前記第2の被縫製材を保持するロボットとを制御することをコンピュータが実行する縫製物製造方法であって、前記第1の被縫製材に対して前記第2の被縫製材を傾けた状態で保持し、縫製されるように前記ロボットを制御することにより、前記縫製装置及び前記ロボットにより前記被縫製材から縫製物を製造する。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、縫製前の被縫製材を立体形状に固定しなくても、被縫製材を立体的に縫製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る縫製システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】3次元縫製において生じるたわみの課題の一例を示す図である。
【
図3】被縫製材M2を平行に保持した場合と、傾けるように保持した場合の一例である。
【
図4】実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る縫製予定位置及び縫製ラインの説明に供する図である。
【
図7】本実施形態に係る縫製ラインL1及び縫製ラインL2の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る被縫製材M1及び被縫製材M2のトレース制御の説明に供する図である。
【
図9】実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示の技術と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0021】
図1は、本実施形態に係る縫製システム100の構成の一例を示す図である。
【0022】
図1に示す縫製システム100は、制御装置10、ロボット20、ロボット60、ミシン30、及びカメラ40を備えている。ミシン30は、縫製装置の一例である。縫製システム100は、ロボット20及びロボット60並びにミシン30を用いて被縫製材M(M1及びM2)の縫製を自動的に行う。例示として
図1において、X方向はミシン30の左右方向を示し、Y方向はミシン30の前後方向を示し、Z方向はミシン30の上下方向を示す。被縫製材Mは、ミシン針が貫通する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば、布、革等、柔軟性を有する材質とされる。被縫製材Mは、本実施形態の態様において、M1とM2の2つの部材を扱う場合を例に説明する。M1及びM2を重ね合わせて縫製した際の完成した縫製物を3次元形状物とした場合、M1を曲面体、M2を貼り付け部分とする。また、一方を球面・楕円体とし、他方をそれらの一部としてもよい。縫製システム100では、被縫製材M1及び被縫製材M2を3次元縫製することにより、3次元形状物である縫製物を製造する。以下、M1及びM2に共通する説明に関しては被縫製材Mと記載する。被縫製材M1が本開示の第1の被縫製材、被縫製材M2が本開示の第2の被縫製材の一例である。ロボット20が本開示の第1のロボット、ロボット60が本開示の第2のロボットの一例である。
【0023】
ここで3次元縫製における課題の一例を説明する。
図2は、3次元縫製において生じるたわみの課題の一例を示す図である。3次元縫製を行うためには、被縫製材を縫製する方向に向けて変形させながら縫製する必要が生じる場合がある。例えば、(A1)のように、押え部34で押さえた逆側から被縫製材M2を内側に強く押し込むようにハンド部64で力Fを加えて、縫製する方向に向けて変形させながら縫製する場合などである。しかし、(A2)のように、変形により被縫製材M2にたわみが生じる場合があり、たわみが生じると精度の良い3次元縫製ができなくなる。本実施形態では、被縫製材M2を傾けて縫製することにより、たわみの発生を抑止して3次元縫製を行うことを可能とする。
【0024】
図3は、被縫製材M2を平行に保持した場合と、傾けるように保持した場合の一例である。本体部分である被縫製材M1はロボット20のハンド部24で保持しており、貼り付け部分である被縫製材M2はロボット60のハンド部64で保持している。なお、ハンド部24は、縫製点を囲む面であって縫う時に被縫製材M1を受ける面(後述のミシンテーブル50)の上側に平行に被縫製材M1を保持している。被縫製材M1は面の高さが合うよう保持される。また、ロボット20のハンド部24は被縫製材M1を上から保持するようにしてもよい。
図3では、被縫製材M1の上に被縫製材M2を重ね合わせている。(B1)の状態では、被縫製材M1の面に対して被縫製材M2を平行に保持しており、このままの状態で内側に押し込むとたわみが生じ得る。そのため、(B2)の状態にように、ハンド部64で被縫製材M2の外側を持ち上げて、斜めに傾けるようにして保持する。これにより、被縫製材同士を相対的に傾けた状態で縫製を行うことになり3次元縫製を実現できる。なお、一方が立体形状で他方が平面形状としたが、一方又は両方が平面形状であってもよいし、立体形状であってもよい。また、立体形状の被縫製材については縫製点に位置する部分の傾きが他方の縫製点に位置する部分の傾きに対して相対的に傾くように配置して縫製する場合を含む。
【0025】
角度θが生じるように傾けることで、被縫製材M2を内側に押し込んだとしても傾きで上に引っ張られる力関係によりたわみの発生を抑止できる。また、傾きの角度は、後述する縫製ラインのカーブの大きさや被縫製材の素材の硬さに応じた角度を定めればよい。例えば5~10°程度の角度である。傾けた状態とすることで被縫製材M2が縫製される方向自体がカーブしていく。縫製システム100の制御装置10は、以上のような被縫製材M2を傾けた状態で縫製を行うようにロボット60を制御する。なお、押し込む態様を例に説明したが、押し込まない態様であっても、被縫製材M2の縫製点における部分が相対的に傾いた状態になる場合もあり得る。この状態で縫製すれば、押し込んでいなくても、縫い目当たりの被縫製材の距離が異なり、立体形状に縫い上げることができる。また、押し込まないのでたわみの発生を抑制することができる。以下、縫製システム100の各構成を説明する。
【0026】
ミシン30は、ミシンテーブル50上に設置されている。ミシン30は、ミシン本体部31、ミシン制御機構32、ミシン針33、押え部34、及び送り部35を備えている。ミシン本体部31は、ミシン針33を定位置(縫製点)で上下動させて、ミシンテーブル50に載置された被縫製材Mの縫製を行う。なお、縫製点とは、例えば、ミシン30のミシン針33が縫うために下がったときに被縫製材Mに刺さる位置とされる。縫製点は、被縫製材Mを縫う瞬間に被縫製材Mが載置されたミシンテーブル50の上面をミシン針33が通過する位置としてもよい。ミシン制御機構32は、例えば、モータであり、制御装置10からミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号が入力されると、当該ミシン指令信号に基づいて、ミシン針33の上下動の速度を調整可能とする。
【0027】
ミシン30は、被縫製材Mの送り機構及びミシン針33の動作機構を有している。これらの機構は、同一のモータによって一定比の速度で連動して動作する。実際の動作では、ミシン針33の上下動作(縫い動作)と、被縫製材Mの送り動作とが交互に行われる。押え部34は、被縫製材Mを間欠的に押さえて被縫製材Mの浮き抑止と固定を行う。つまり、押え部34は、ミシン針33を下方に移動させて被縫製材Mに刺すときに被縫製材Mが浮かないように、ミシン針33が通る位置の近傍で上方から被縫製材Mへ押し下げて、被縫製材Mの下側にあるテーブル面との間で被縫製材Mを挟み込む。また、押え部34は、ミシン針33を上方へ移動させて被縫製材Mから抜くときに被縫製材Mの浮きを抑止する。また、押え部34は、複数の被縫製材Mを縫い付ける場合には互いの被縫製材Mを重ね合わせる。また、押え部34は、ミシン針33を上下させたあと、被縫製材Mを送る間、上方に移動し、押さえ状態を解除する。送り部35は、縫製点のすぐそばに設けられ、ミシン針33で被縫製材Mに糸を通した後、縫い目の距離だけ被縫製材Mを縫い方向へ送る。
【0028】
ミシン30は、押え部34及び送り部35により被縫製材Mを間欠的に押さえながら間欠送り動作を行う。本実施形態において、ミシン30の送り速度は、例えば、ミシン針33の平均速度としてもよいし、あるいは、間欠送り動作における動作時の送り速度、移動・停止を考慮した間欠送り動作全体としての平均送り速度としてもよい。
【0029】
ミシン30は、ロボット20及びロボット60が保持する被縫製材Mを予め設定された送り速度で縫製点に送り、当該縫製点に送った被縫製材Mの縫製を行う。
【0030】
ミシンテーブル50は、縫製するためにミシン針33が上から降りて被縫製材Mを貫通する際、縫製点を囲む位置で、縫製される被縫製材Mを下方から受けて支える台である。取り囲む位置における当該面には、全周を囲む繋がった面の他、縫製点を挟む、あるいは囲むように配置された複数に分かれた面を含む。ミシンテーブル50では、ミシン針33が降りる部分は穴が開いている。被縫製材M1はミシンテーブル50の面に載置されて受け支えられる。
【0031】
カメラ40は、ミシンテーブル50上に載置された被縫製材Mを上方から撮影して、被縫製材Mの縫製状態を撮影するためのカメラである。但し、カメラ40の設置位置、ロボット20の設置位置、及びミシン30の設置位置は、一定の位置関係に保持されている。
【0032】
(ロボット20)
ロボット20は、支持台21、ロボットコントローラ22、ロボットアーム部23、及びハンド部24を備えている。ハンド部24は、ロボット20の先端部に設けられる。ロボットアーム部23は、多関節のアームであり、一端に支持台21が接続され、他端にハンド部24が接続される。支持台21は、ロボットアーム部23を支持し、ロボットコントローラ22を内蔵する。ハンド部24は、ミシンテーブル50の上に載置された被縫製材M1を上から押さえ、被縫製材M1をミシンテーブル50上で滑らせながら移動させてミシン30のミシン針33に供給する。
【0033】
ロボットコントローラ22は、制御装置10からロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部23及びハンド部24を動作させる。これにより、ミシンテーブル50上の被縫製材M1がハンド部24によって保持される。そして、この状態で、ハンド部24が被縫製材M1を移動させる方向に動作することで、被縫製材M1が送り方向に向けてミシン30のミシン針33に対して移動する。被縫製材M1は、間欠送り動作により、例えば、ミシンテーブル50上を滑りながら移動する。ロボット20は、被縫製材M1保持する。ロボット20は、被縫製材M1をロボット20が保持する位置を示すロボット保持位置及び保持する方向を示すロボット保持方向で保持する。
【0034】
(ロボット60)
ロボット60は、支持台61、ロボットコントローラ62、ロボットアーム部63、及びハンド部64を備えている。ハンド部64は、ロボット60の先端部に設けられる。ロボットアーム部63は、多関節のアームであり、一端に支持台61が接続され、他端にハンド部64が接続される。支持台61は、ロボットアーム部63を支持し、ロボットコントローラ62を内蔵する。ハンド部64は、被縫製材M2を被縫製材に対して傾けて保持する。
【0035】
ロボットコントローラ62は、制御装置10からロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号が入力されると、当該ロボット指令信号に基づいて、ロボットアーム部63及びハンド部64を動作させる。
【0036】
ロボット60のハンド部64は、被縫製材M2を傾けて保持できる機能を有する機構であればよい。また、ロボット60は、送り方向とは異なる方向、すなわちミシン30の縫製点Pに対して周方向θの位置制御が可能であり、位置制御により内側への押し込みを行う。ハンド部64は、縫い目の方向対して異なる方向成分に力を加える場合に、被縫製材が撓むことを抑止できる。また、ハンド部64により、傾けて保持することで、被縫製材M2の縫製点における部分が相対的に傾いた状態にすることができる。また、当該部分において互いに平行になっている場合も含む。
【0037】
ハンド部64は、例えば、ミシン30の送り方向の引っ張り力に対して受動的に追従するローラー機構とすることができる。ローラー機構は、保持する掴みが円筒状、又は、軸を共通として並んだ同半径の複数の円盤状であり、保持した被縫製材M2に係る外力に伴い回転する。ハンド部64をローラー機構とすることにより、被縫製材M2を送り方向に滑らせて、ミシン30のミシン針33に供給することができる。ハンド部64の方向は、縫製の縫製予定位置の自由曲線(後述)に応じて定められ、送り方向fdに対して概ね並進方向となるような制御が行われる。そのため、ローラーの回転が、送り方向fdに対して並進方向に対応して回転するように制御される。並進方向に対応とは、並進方向成分を持ちさえすればよいことを意味しており、傾けて被縫製材M2を保持している場合も含む。これにより、ミシン30の間欠送り動作に従って、被縫製材M2に対して引っ張り力が生じて、保持しているローラーに回転が生じるため、被縫製材M2は滑りながら送り方向に引っ張られるように移動していく。
【0038】
(制御装置のハードウェア構成)
制御装置10は、ロボット20、ロボット60、ミシン30、及びカメラ40の各々が接続され、カメラ40から得られた画像の画像処理を行うと共に、ロボット20、ロボット60及びミシン30の各々を制御するコントローラである。制御装置10には、例えば、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0039】
図4は、本実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0040】
図4に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インタフェース(I/O)14と、記憶部15と、接続部16と、を備えている。
【0041】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、接続部16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0042】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御ユニットが構成される。制御ユニットは、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御ユニットとして構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御ユニットの一部として構成されてもよい。制御ユニットの各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はICチップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御ユニットの集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0043】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0044】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の非一時的記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の非一時的記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0045】
接続部16は、ロボット20のロボットコントローラ22、ロボット60のロボットコントローラ62、ミシン30のミシン制御機構32、及びカメラ40の各々を接続するためのインタフェースである。
【0046】
本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、
図5に示す各部として機能する。
【0047】
図5は、本実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、設定部11A及び制御部11Bとして機能する。
【0048】
(ロボット20に関する制御)
ここで、ロボット20に関する制御について説明する。単純な直線や一定の曲線ではない任意の形状の縫製を行う場合、ロボットとミシンとの距離が時々刻々と変化する。
【0049】
本実施形態に係る縫製システム100では、ミシン30の縫製点から離れた位置で被縫製材M1を保持したロボット20が被縫製材M1を動かしながら単純な直線や一定の曲線ではない任意の形状の縫製を行えるようにする。なお、制御装置10は、被縫製材M1を載置する位置について、被縫製材M1を動かしつつ、ミシンテーブル50の上面と平行に沿うようにロボット20のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。
【0050】
設定部11Aは、被縫製材M1に対して縫製予定位置を設定する。縫製予定位置とは、被縫製材M1上の縫う予定の位置を表す。縫製予定位置は、連続した点の集合として表される。この連続した点の集合は、例えば、連続的な自由曲線(
図6参照)上に設定される縫製ラインである。
図6は被縫製材M1に縫製予定位置による縫製ラインを設定した場合の例である。「連続的な自由曲線」とは、不定形な連続線を意味し、一部に直線、定型線を含んでもよく、折り返し点を含んでもよい。縫製ラインは、例えば、被縫製材M1の目印となる特徴的な形状を基準として設定してもよいし、被縫製材M1の端に沿って一定距離離れた位置に設定してもよい。縫製ラインに従って縫製した後は縫い目が形成される。縫製予定位置は、例えば、カメラ40で被縫製材M1を撮影して得られた画像をモニタに表示しながら設定される。縫製予定位置は、例えば、ミシンテーブル50上における特定の位置を基準位置として、2次元又は3次元の座標として表すことができる。具体的には、制御装置10がマウス、キーボード等の入力装置を備え、この入力装置を用いて、例えば、縫製範囲、縫い代、縫いピッチ等の種々の縫製条件を入力できるようにしておく。これにより被縫製材M1に対して適切な縫製予定位置が設定される。連続する複数の縫製予定位置が設定されると、縫製予定位置の位置関係によって縫製予定方向が定まる。
【0051】
制御部11Bは、ロボットコントローラ22に対して、ロボット20の動作を指示するためのロボット指令信号を出力し、ミシン制御機構32に対して、ミシン30の送り速度を指示するためのミシン指令信号を出力する。
【0052】
制御部11Bは、被縫製材M1の縫製予定位置を縫製点に合わせ、かつ、被縫製材M1が縫製予定位置によって定まる縫製予定方向に移動するようにロボット20に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。制御部11Bが出力するロボット指令信号には、ロボット保持位置及びロボット保持方向が含まれる。ロボット保持位置及びロボット保持方向は、ロボット20が被縫製材M1を保持する位置及び方向、すなわち、ハンド部24の位置及び方向を表す。
【0053】
制御部11Bは、ロボット保持位置及びロボット保持方向を動かしたときに定まる縫製予定位置及び縫製予定方向の関係(「ロボット・ミシン対応関係」という。)を用いて、ロボット保持位置が移動する速度を示すロボット保持位置速度及び縫製予定位置が移動する速度を示す縫製予定位置速度のうち一方の速度に対応する他方の速度を求め、ロボット保持位置がロボット保持位置速度で移動するようにロボット20を制御し、縫製予定位置速度がミシン30の送り速度となるようにミシン30を制御する。ロボット・ミシン対応関係は、例えば、ミシンの送り速度(ミシンの送り速度=f(ロボットの速度、ベクトルT))として表される。
【0054】
制御部11Bは、ミシン30及びロボット20の制御について、ロボット保持位置速度を基準とし、当該ロボット保持位置速度に基づいて定まる縫製予定位置速度に対応してミシン30の送り速度を制御する。あるいは、縫製予定位置速度を基準とし、当該縫製予定位置速度にロボット保持位置速度を同期させてもよい。
【0055】
(ロボット60に関する制御)
設定部11Aは、被縫製材M2に対して縫製予定位置を設定する。被縫製材M2の縫製予定位置は、縫い上がったときに立体形状になるように被縫製材M1の縫製予定位置に対応するように設定する。被縫製材M1と同様に連続的な自由曲線として設定すればよいが、立体形状に縫製するためには長さや形状を異なるように設定することになる。また、制御装置10は、例えば、被縫製材M2を載置する位置について、被縫製材M2がミシン30の縫製点へ送る手前の位置であり、当該保持位置において被縫製材M1に対して傾けた状態で保持するようにロボット60のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。なお、ハンド部64をローラー機構とする場合は持ち替えが不要であるが、それ以外の機構であれば持ち替えを行う。
【0056】
制御部11Bは、ロボットコントローラ62に対して、ロボット60の動作を指示するためのロボット指令信号を出力する。制御部11Bは、被縫製材M2の縫製予定位置を縫製点に合わせ、かつ、被縫製材M2が縫製予定位置によって定まる縫製予定方向に移動するように、ロボット60に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。また、制御部11Bは、ロボット60が被縫製材M2を保持した状態で、被縫製材M1に対して被縫製材M2を傾けるように、ロボット60に対するロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。制御部11Bは、縫製予定方向に移動させることに伴い、ミシン30の縫製点Pに対して周方向θの位置制御を行う。
【0057】
また、制御部11Bは、被縫製材M2を傾けて保持するようにロボット60を制御すると共に、ミシン30の有する押え部34を間欠的に上下させるように制御するようにしてもよい。これにより、縫製台に向けて被縫製材M2が間欠的に押さえつけられ、押さえていないタイミングで被縫製材M2を大きく傾けることができるので制御量を大きくとることができる。
【0058】
以上の構成により、本実施形態では、制御装置10がロボット20はミシン30の速度と同期させて制御し、ロボット60は被縫製材M1に対して被縫製材M2を傾けた状態で保持し、縫製されるように制御する。
【0059】
なお、ロボット20及びロボット60の制御では、被縫製材同士を曲面状に重なった状態に縫い上げる場合おいて、曲面状の突出する側を被縫製材M1とし、曲面状のくぼむ側を被縫製材M2として縫製するように制御する。そのため、制御装置10は、曲面状の突出する側に位置する被縫製材M1に対して、曲面状のくぼむ側に位置する被縫製材M2を傾けた状態で保持し、縫製されるようにロボット60を制御する。傾けて縫った被縫製材M2側では、もう一方の被縫製材M1よりもより大きく曲がるように縫うことができ、傾けた側の縫い目の距離は傾けていない側の縫い目の距離に比較して長い状態で縫い付けられる。このように被縫製材を傾けることは、重ねて縫ったときに曲面のくぼむ側になることに適している。
【0060】
図7は、本実施形態に係る縫製ラインL1及び縫製ラインL2の一例を示す図である。
図7に示すように、被縫製材M1上に設定された縫製ラインL1の長さ又は形状は、被縫製材M2上に設定された縫製ラインL2の長さ又は形状と異なる。縫製ラインL1は、複数の縫い目a1~a7の集合として表される。縫い目は縫製予定位置である。同様に、縫製ラインL2は、複数の縫い目b1~b7の集合として表される。縫製ラインL1の複数の縫い目a1~a7と縫製ラインL2の複数の縫い目b1~b7を合わせて縫製することで予め定めた立体形状となるように縫製ラインL1の複数の縫い目a1~a7及び縫製ラインL2の複数の縫い目b1~b7が設定される。なお、
図7ではわかりやすさのために誇張して長さ、形状の違いを書いているが、実際には、縫い上げられたときには密着しており、曲げられる曲率にもよるが、その長さや形状の差は僅かな場合もある。縫い目当たりでは差分はさらに分配され、比率は変わらないが量的には小さくなる。
【0061】
図8は、本実施形態に係る被縫製材M1及び被縫製材M2のトレース制御の説明に供する図である。
図8に示すように、制御部11Bは、設定部11Aにより設定された縫製ラインL1及び縫製ラインL2を同じ縫い目数で重ねながら、縫製ラインL1及び縫製ラインL2の始点と終点とが一致するようにロボット20及びロボット60の各々の移動を制御する。トレース制御では、縫い上がりが立体形状になるように、被縫製材M1及び被縫製材M2の各々に予め縫い目が設定されており、縫い目a1~a7及び縫い目b1~b7の各縫い目を重ねるように縫い合わせることで、縫い上がりが立体形状となる。
【0062】
次に、本実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
図9は、本実施形態に係る制御プログラム15Aによる縫製処理の流れの一例を示すシーケンスである。縫製処理の実行が指示されると、CPU11により制御プログラム15Aが起動され、以下のステップを実行する。
【0063】
ステップS100では、制御装置10のCPU11が、ミシン指令信号及びロボットの各々のロボット指令信号を生成する。
【0064】
ステップS102では、CPU11が、ミシン指令信号及びロボットの各々のロボット指令信号を出力する。ミシン30へのミシン指令信号をミシン制御機構32へ出力し、ロボット20へのロボット指令信号をロボットコントローラ22に出力し、ロボット60へのロボット指令信号をロボットコントローラ62に出力する。
【0065】
ステップS104では、ミシン制御機構32が、ミシン指令信号に基づいて、ミシン30の送り動作(ミシンの送り速度)を制御する。
【0066】
ステップS106では、ロボットコントローラ22が、ロボット指令信号に基づいて、ロボット20のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。当該制御により、被縫製材M1がミシンテーブル50の上面に対して平行に沿うよう保持されつつ、縫製予定方向に移動するようにロボット20が動作する。
【0067】
ステップS108では、ロボットコントローラ62が、ロボット指令信号に基づいて、ロボット20のロボット保持位置及びロボット保持方向を制御する。当該制御により、被縫製材M1に対して被縫製材M2を傾けた状態で保持し、縫製されるように保持しつつ、縫製予定方向に移動するようにロボット60が動作する。
【0068】
上記の制御により、当該制御により、被縫製材M1がミシンテーブル50の上面に対して平行に沿うよう保持されつつ、縫製予定方向に移動するようにロボット20が動作する。
【0069】
以上、本実施形態によれば、一方の被縫製材M1に対して他方の被縫製材M2を傾けながら縫製を行うことにより、縫製前の被縫製材を立体形状に固定しなくても、被縫製材を立体的に縫製することができる。また、3次元縫製に伴うたわみの発生を抑止できる。
【0070】
なお、上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えば、GPU:Graphics processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0071】
また、上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0072】
以上、実施形態に係る制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0073】
その他、上記実施形態で説明した制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。例えば、上述した実施形態では、2台のロボットでそれぞれ被縫製材を保持する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、単一のロボットで、一方の被縫製材に対して、他方の被縫製材を傾けた状態で保持し、形状に応じて傾き度合いを変化させて縫製してもよい。傾けるために、間に治具を挟み込んでもよいし、多指ロボットでそれぞれを保持して間隔を制御してもよい。
【0074】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 制御装置
11 CPU
11A 設定部
11B 制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 制御プログラム
16 接続部
20、60 ロボット
30 ミシン
40 カメラ
50 ミシンテーブル
100 縫製システム