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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054003
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】枠体施工システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20240409BHJP
   E04B 9/10 20060101ALI20240409BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20240409BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240409BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
E04G21/14
E04B9/10 100
B25J13/00 Z
B25J13/08 A
B23P21/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160560
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500539561
【氏名又は名称】株式会社テムザック
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義秀
(72)【発明者】
【氏名】手島 則夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勇次
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
【テーマコード(参考)】
2E174
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174CA06
2E174CA24
2E174CA35
2E174DA17
2E174DA32
2E174DA33
2E174DA52
2E174DA65
3C030CB02
3C030CB12
3C030CB13
3C707AS06
3C707AS21
3C707CS08
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS36
3C707KT03
3C707KT04
3C707MT06
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】高所作業である枠体の設置作業を枠体施工システムによって行う。
【解決手段】枠体施工システムは、メインバー7を保持しメインバー7の位置を調整する作業を行う保持作業部140と、連結部材8を介してメインバー7を既設メインバー6に連結する作業を行う連結作業部40,60,70と、メインバー7を吊りボルト4に固定する作業を行う固定作業部160,180と、各部を移動可能な移動部10と、各部の作動を制御する制御部80,190と、を備え、制御部80,190は、保持作業部140を制御し、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、連結作業部40,60,70を制御し、連結部材8を介してメインバー7と既設メインバー6とを連結し、固定作業部160,180を制御し、メインバー7を吊りボルト4に固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブに取り付けられた支持部材に枠体のメインバーを取り付ける枠体施工システムであって、
前記メインバーを保持し、前記メインバーの位置を調整する作業を行う保持作業部と、
前記保持作業部により保持された前記メインバーを、連結部材を介して既設メインバーに連結する作業を行う連結作業部と、
前記支持部材に予め設けられた取付金具を介して、前記保持作業部により保持された前記メインバーを、前記支持部材に固定する作業を行う固定作業部と、
前記保持作業部、前記連結作業部及び前記固定作業部をそれぞれ移動可能な移動部と、
前記保持作業部、前記連結作業部、前記固定作業部及び前記移動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記移動部を制御し、前記保持作業部、前記連結作業部及び前記固定作業部を所定の位置へとそれぞれ移動させ、前記保持作業部を制御し、前記メインバーを前記既設メインバーに接近させた後、前記連結作業部を制御し、前記連結部材を介して前記メインバーと前記既設メインバーとを連結し、前記固定作業部を制御し、前記取付金具を介して前記メインバーを前記支持部材に固定する、
枠体施工システム。
【請求項2】
前記連結作業部は、
前記既設メインバーの端部を把持する第1把持部と、
前記メインバーの端部を把持する第2把持部と、
前記既設メインバーの端部及び前記メインバーの端部の位置を検知可能な端部位置検知部と、
前記既設メインバーと前記メインバーとを前記連結部材によって連結する連結部と、を有し、
前記制御部は、前記端部位置検知部の検知結果に基づいて前記連結部を制御し、前記既設メインバーと前記メインバーとを連結させる、
請求項1に記載の枠体施工システム。
【請求項3】
前記保持作業部は、
前記メインバーを保持するメインバー保持部と、
前記メインバー保持部の位置を調整可能な位置調整部と、を有し、
前記制御部は、前記第1把持部により把持された前記既設メインバーの端部に、前記第2把持部により把持された前記メインバーの端部が近づくように、前記メインバー保持部の位置を前記位置調整部により調整する
請求項2に記載の枠体施工システム。
【請求項4】
前記連結部は、
前記既設メインバー及び前記メインバーに前記連結部材を取り付ける連結部材取付部と、
前記既設メインバー及び前記メインバーに取り付けられた前記連結部材を押圧することによって前記連結部材の差込部を前記既設メインバー及び前記メインバーの差込口に差し込む連結部材押圧部と、を有する、
請求項2または3に記載の枠体施工システム。
【請求項5】
前記固定作業部は、
前記メインバーに対する前記取付金具の位置を調整可能な金具位置調整部と、
前記取付金具に設けられた締結部材を締め付ける締付部と、を有し、
前記制御部は、前記金具位置調整部を制御し、前記締結部材が締め付けられることによって前記取付金具が前記メインバーに固定される位置へと前記取付金具を移動させた後、前記締付部を制御し、前記締結部材を締め付ける、
請求項1から3の何れか1つに記載の枠体施工システム。
【請求項6】
前記金具位置調整部は、前記取付金具の前記締結部材の向きを調整可能な金具方向調整部を有し、
前記制御部は、前記締付部によって前記締結部材を締め付ける前に、前記金具方向調整部を制御し、前記締結部材の向きが前記締付部によって締め付け可能な向きとなるように前記締結部材の向きを調整する、
請求項5に記載の枠体施工システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井部分に設けられた枠体に対して天井ボードを取り付ける施工システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-123645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された施工システムは、天井部分に設けられた枠体に天井ボードを取り付けるという高所作業を行う機構(ロボット)を備えているものの、枠体を設置する機構については備えていない。つまり、天井部分へ枠体を設置するという高所作業については作業員が予め行わなければならず、作業員の作業負担を十分に軽減するには至っていない。
【0005】
本発明は、高所作業である枠体の設置作業を行うことが可能な枠体施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井スラブに取り付けられた支持部材に枠体のメインバーを取り付ける枠体施工システムであって、メインバーを保持しメインバーの位置を調整する作業を行う保持作業部と、保持作業部により保持されたメインバーを、連結部材を介して既設メインバーに連結する作業を行う連結作業部と、支持部材に予め設けられた取付金具を介して、保持作業部により保持されたメインバーを、支持部材に固定する作業を行う固定作業部と、保持作業部、連結作業部及び固定作業部をそれぞれ移動可能な移動部と、保持作業部、連結作業部、固定作業部及び移動部の作動を制御する制御部と、を備え、制御部は、移動部を制御し、保持作業部、連結作業部及び固定作業部を所定の位置へとそれぞれ移動させ、保持作業部を制御し、メインバーを既設メインバーに接近させた後、連結作業部を制御し、連結部材を介してメインバーと既設メインバーとを連結し、固定作業部を制御し、取付金具を介してメインバーを支持部材に固定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、枠体施工システムによって、高所作業である枠体の設置作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る枠体施工システムによって行われる枠体設置作業のイメージを示したイメージ図である。
図2図1のA-A線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの把持部を示す図である。
図3図2に示される把持部の作動を説明するための図である。
図4図1のB-B線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの連結部材取付部を示す図である。
図5図4に示される連結部材取付部の作動を説明するための図である。
図6図1のC-C線に沿う断面において第1ロボットを見たときの第1ロボットの連結部材押圧部を示す図である。
図7図6に示される連結部材押圧部の作動を説明するための図である。
図8図7の矢印Dで示される部分を拡大して示した拡大図であり、連結部材押圧部の作動を説明するための図である。
図9図8と同じ部分の拡大図であり、連結部材押圧部により押圧された連結部材の状態を示す図である。
図10図1のE-E線に沿う断面において第2ロボットを見たときの第2ロボットのメインバー保持部を示す図である。
図11図10に示されるメインバー保持部の作動を説明するための図である。
図12図1のF-F線に沿う断面において第2ロボットを見たときの第2ロボットの金具位置調整部を示す図である。
図13図12に示される金具位置調整部の作動を説明するための図である。
図14図1のH-H線に沿う断面において第2ロボットを見たときの第2ロボットの締付部を示す図である。
図15図13のG-G線に沿う断面を拡大して示した拡大図であり、金具の方向を検知する方法について説明するための図である。
図16】枠体施工システム全体の構成を示すブロック図である。
図17】枠体施工システムが実行する作業の手順を示したフローチャートである。
図18】第1ロボットによるメインバーの取得について説明するための概略図である。
図19】第1ロボットから第2ロボットへのメインバーの受け渡しについて説明するための概略図である。
図20】メインバーの位置調整について説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る枠体施工システムについて説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る枠体施工システムは、図1に示すように、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を取り付ける作業を行うシステムであり、外部からの操作を必要としない複数の自律型ロボットによって構成される。
【0011】
図1には、2台のロボット100,200によって行われるメインバー7の取り付け作業をメインバー7の長手方向に対して直交する方向から見た状態が示されている。以下では、図1に示される互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が略水平方向であってメインバー7の長手方向に沿った方向であり、Y軸が略水平方向であってメインバー7の長手方向に直交する方向であり、Z軸が略鉛直方向であるものとして、各ロボット100,200の構成及び作動を説明する。なお、図1は、各ロボット100,200とメインバー7や予め設置されたメインバーである既設メインバー6との関係性をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
【0012】
図1に示される天井スラブ1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートであり、デッキプレートには、コンクリートが流し込まれる前に、予め複数のインサート3が所定の位置に取り付けられる。インサート3は、メインバー6,7や図示しないサブバーといった枠体を構成する部材を、ハンガ5を介して吊り下げ支持する吊りボルト4を取り付けるために設けられる部材である。なお、天井スラブ1は、合板型枠に打設されて形成されたコンクリートスラブであってもよい。
【0013】
メインバー6,7は、規格化された既製品であって、例えば、後述する図8に示すように、ハンガ5が取り付けられる取付部6aと、図示しない天井ボードが載置されるフランジ部6bと、取付部6aとフランジ部6bとの間に設けられる平板部6cと、を有する断面が略T字状のバー部材(Tバー)である。
【0014】
サブバーは、メインバー6,7と同様に、断面が略T字状のバー部材(Tバー)であり、その両端には、サブバーをメインバー6,7に取り付けるための差込部が設けられる。
【0015】
上記形状のメインバー6,7とサブバーとを格子状に結合することによって、天井ボードが載置される枠体が形成され、このように形成された枠体と天井ボードとにより、いわゆるグリッドタイプのシステム天井が構成される。
【0016】
本実施形態に係る枠体施工システムは、システム天井の枠体を設置するという比較的高所で行われる作業のうち、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を取り付けるという高所作業を実行可能な構成を備える。
【0017】
次に、図1~16を参照し、枠体施工システムの構成について説明する。
【0018】
枠体施工システムは、新たに設置されるメインバー7を保持しメインバー7の位置を調整する作業を行う保持作業部140と、吊りボルト4(支持部材)に予め設けられたハンガ5(取付金具)を介して保持作業部140により保持されたメインバー7を吊りボルト4に対して固定する作業を行う固定作業部160,180と、を備えた第2ロボット200と、第2ロボット200の保持作業部140により保持されたメインバー7を予め設置されたメインバーである既設メインバー6に連結部材8を介して連結する作業を行う連結作業部40,60,70を備えた第1ロボット100と、の2台の自律型ロボットにより構成される。なお、第1ロボット100は、後述のように、メインバー7を運搬し、第2ロボット200へとメインバー7を引き渡す機能を併せ持っている。
【0019】
まず、第1ロボット100の構成及び作動について、図1~9及び図16を参照して説明する。
【0020】
第1ロボット100は、図1に示すように、床面2を移動可能な移動部10と、移動部10上に載置される昇降部20と、昇降部20上に載置される連結作業部40,60,70と、移動部10、昇降部20及び連結作業部40,60,70の作動を制御する図示しない制御部80と、を備える。
【0021】
移動部10は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の車輪14と、一対の車輪14を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪14を別々に駆動することによって、移動部10は、その場で旋回することが可能である。なお、移動部10に設けられたバッテリは、昇降部20及び連結作業部40,60,70へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
【0022】
移動部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪14に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、移動部10は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
【0023】
また、移動部10には、移動部10周辺の情報を取得可能な情報取得器15が設けられる。情報取得器15は、移動部10の周囲や移動部10の上方を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器15によって撮像された画像は制御部80へと送られ、移動部10の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器15としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。
【0024】
移動部10上に取り付けられる昇降部20は、多段型の電動ジャッキであり、上下方向(Z軸方向)に沿って伸縮可能な構成を有する。昇降部20の上端には、連結作業部40,60,70を設置するための設置プレート21が設けられる。
【0025】
連結作業部40,60,70は、既設メインバー6とメインバー7とを連結部材8によって連結する作業を行うための各機構を備えた部分であり、既設メインバー6及びメインバー7を把持可能な把持部40と、既設メインバー6及びメインバー7に連結部材8を取り付ける連結部材取付部60と、既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられた連結部材8を押圧する連結部材押圧部70と、を有する。連結部材取付部60及び連結部材押圧部70は、既設メインバー6とメインバー7とを連結部材8によって連結する連結部として機能する。
【0026】
連結作業部40,60,70は、昇降部20の設置プレート21上に電動スライダ32を介して設けられたテーブル31に設置される。電動スライダ32は、図1においてY軸方向に伸縮するように設置されている。このため、電動スライダ32を伸縮させることにより、テーブル31及びテーブル31に設置された連結作業部40,60,70を設置プレート21に対して水平方向に沿って移動させることが可能である。
【0027】
把持部40は、図1においてX軸方向に所定の間隔をあけて配置された第1把持部41と第2把持部42との2つの把持機構を有する。なお、図1には、第1把持部41が既設メインバー6の端部を把持し、第2把持部42がメインバー7の端部を把持している状態が示されている。
【0028】
第1把持部41は、平行開閉型の把持機構であり、図2に示すように、第1把持片43と、第2把持片44と、第1把持片43と第2把持片44とを互いに近付けたり離したりすることが可能な把持シリンダ46と、により構成される。なお、図2は、図1のA-A線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの第1把持部41を示す図であり、第1把持部41以外の機構については図示を省略している。
【0029】
第1把持片43と第2把持片44とは、一端部において連結軸45を介して互いに回動可能に連結されており、第1把持片43は、把持シリンダ46の第1可動片47に連結軸43bを介して連結され、第2把持片44は、把持シリンダ46の第2可動片48に連結軸44bを介して連結される。
【0030】
また、Y軸方向において互いに対向する第1把持片43の側面と第2把持片44の側面とには、メインバー6,7の外形形状に合わせて形成された把持面43a,44aがそれぞれ設けられる。これら第1把持片43及び第2把持片44は、図1に示すように、把持シリンダ46を挟んで一対設けられる。
【0031】
第1可動片47及び第2可動片48は、図2に示されるようにY軸方向において互いに接近した第1位置と、図3に示されるようにY軸方向において互いに離れた第2位置と、の2つの位置の間で移動可能であり、その位置は把持シリンダ46により調整される。
【0032】
第1可動片47及び第2可動片48が第1位置にあるとき、図2に示されるように第1把持片43の把持面43a及び第2把持片44の把持面44aがメインバー6,7に当接し、メインバー6,7は、第1把持片43及び第2把持片44により把持された状態となる。
【0033】
一方、第1可動片47及び第2可動片48が第2位置にあるとき、図3に示されるように、メインバー6,7は第1把持片43及び第2把持片44により把持されない状態となる。
【0034】
なお、第1可動片47及び第2可動片48を第1位置から第2位置へと僅かに移動させることで、第1把持片43及び第2把持片44により僅かな隙間を介してメインバー6,7を把持させること、すなわち、比較的小さい力によってメインバー6,7をX軸方向に移動させることが可能な状態とすることも可能である。
【0035】
第1把持片43及び第2把持片44によるメインバー6,7の把持を補助するために、把持シリンダ46の上面には、メインバー6,7のフランジ部6bが載置される支持プレート49が設けられる。第1可動片47及び第2可動片48には、支持プレート49との干渉を避けるための溝や段差が適宜設けられる。
【0036】
第2把持部42は、第1把持部41と同じ構成であるため、その説明を省略する。なお、第1把持部41と第2把持部42とは、それぞれ独立して制御され、一方を把持状態とし、他方を開放状態とすることも可能である。
【0037】
連結部材取付部60は、図4に示すように、連結部材8を保持可能な保持部61と、保持部61の位置を変化させる電動シリンダ62及び回動モータ65と、を有する。なお、図4は、図1のB-B線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの連結部材取付部60を示す図であり、連結部材取付部60以外の機構については図示を省略している。
【0038】
保持部61は、図示しないバキュームポンプで生じた負圧によって連結部材8を吸引保持し、負圧の供給が遮断されることにより連結部材8を解放する構造を有する。なお、保持部61による連結部材8の保持は、電磁力によるものであってもよく、この場合、電磁力のオンオフによって連結部材8の保持及び解放が行われる。
【0039】
電動シリンダ62は、回動モータ65の回動部66に固定されるシリンダ部63と、シリンダ部63から突出するロッド部64と、を有するリニアアクチュエータであり、ロッド部64の先端には、上述の保持部61が取り付けられている。保持部61及び電動シリンダ62は、回動モータ65が回動することによって、Y-Z平面に沿って回動する。
【0040】
回動モータ65は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心C1がX軸方向と平行となるように、テーブル31に立設された支柱35に固定される。
【0041】
上記構成の連結部材取付部60によれば、電動シリンダ62の伸縮中心C2の延長線上にメインバー6,7の平板部6cが位置するように、電動シリンダ62の向きが回動モータ65によって調整された状態において、電動シリンダ62を伸長させることにより、図4に示すように、保持部61で保持された連結部材8をメインバー6,7の平板部6cに取り付けることが可能である。なお、連結部材8は、図1に示すように、既設メインバー6の平板部6cとメインバー7の平板部とに架け渡されるようにして取り付けられる。
【0042】
また、上記構成の連結部材取付部60によれば、電動シリンダ62の伸縮中心C2の延長線上にテーブル31上に積載された連結部材8が位置するように、電動シリンダ62の向きが回動モータ65によって調整された状態において、電動シリンダ62を伸長させることにより、図5に示すように、保持部61により新たな連結部材8を保持させることが可能である。なお、テーブル31には、複数の連結部材8を保管可能な図示しない連結部材ホルダが設けられる。
【0043】
このように連結部材取付部60によってメインバー6,7に取り付けられた連結部材8は、メインバー6,7に対して完全に固定された状態ではない。このため、連結部材8をメインバー6,7に固定させるための機構として、連結部材押圧部70が設けられる。
【0044】
連結部材押圧部70は、図6に示すように、押圧用シリンダ72と、押圧用シリンダ72の伸縮に応じて変位する第1押圧レバー75と、第1押圧レバー75の変位に連動して変位する第2押圧レバー76と、押圧用シリンダ72、第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76が取り付けられる平板状のベースプレート71と、を有する。なお、図6は、図1のC-C線に沿う断面において第1ロボット100を見たときの連結部材押圧部70を示す図であり、連結部材押圧部70以外の機構については図示を省略している。
【0045】
押圧用シリンダ72は、ベースプレート71に支持軸73aを介して回動可能に固定されるシリンダ部73と、シリンダ部73から突出するロッド部74と、を有する電動リニアアクチュエータである。
【0046】
第1押圧レバー75は、一端に第1押圧部75cが設けられ他端に長孔75dが形成された本体部75aと、本体部75aから分岐し連結ピン77aを介して押圧用シリンダ72のロッド部74と連結される分岐部75bと、を有する平板状部材であり、本体部75aの中間部において支持軸75eを介してベースプレート71に回動可能に固定される。
【0047】
第2押圧レバー76は、一端に第2押圧部76cが設けられ他端において支持軸76dを介してベースプレート71に回動可能に固定される本体部76aと、本体部76aから分岐する分岐部76bと、を有する平板状部材であり、第1押圧レバー75の長孔75dを挿通する連結ピン77bを介して分岐部76bが第1押圧レバー75の本体部75aに連結されている。
【0048】
第1押圧部75cと第2押圧部76cとは、互いに対向するように配置されており、第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76は、押圧用シリンダ72が収縮すると、図7に示すように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに離れるように変位し、押圧用シリンダ72が伸長すると、図6に示すように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近づくように変位する。
【0049】
また、連結部材押圧部70は、テーブル31に対してベースプレート71をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させることが可能な図示しない移動機構を有する。図7には、連結部材押圧部70によって連結部材8の押圧を行うために、移動機構によって、図6に示されるベースプレート71よりもZ軸方向に沿って上方へとベースプレート71が動かされた状態が示されている。
【0050】
また、移動機構は、例えば、上述の連結部材取付部60によってメインバー6,7への連結部材8の取り付けが行われる際に、第2押圧レバー76が作業の妨げとならないように、第2押圧レバー76をベースプレート71とともに、図6に示されるように、下方へ移動させるために用いられる。また、移動機構は、後述のように、距離センサ81によりメインバー6,7までの距離の計測が行われる際に、第1押圧レバー75や第2押圧レバー76、ベースプレート71が計測の障害物とならないように、第1押圧レバー75や第2押圧レバー76をベースプレート71とともに、X軸方向へ移動させるために用いられる。
【0051】
なお、連結部材押圧部70の移動機構は、3軸方向に移動可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、X軸方向に伸縮するアクチュエータ、Y軸方向に伸縮するアクチュエータ及びZ軸方向に伸縮するアクチュエータを組み合わせることにより構成されてもよい。また、テーブル31には、移動機構によって3軸方向に移動する連結部材押圧部70の移動範囲を確保するために、所定の大きさの切り欠き部31aが形成される。
【0052】
続いて、図8及び図9を参照し、連結部材押圧部70によって行われる連結部材8の押圧について説明する。図8及び図9は、図7の矢印Dで示された部分を拡大して示した図である。
【0053】
連結部材8は、一般的に、図8に示されるように、下端部8aと、上端部8c(差込部)と、下端部8aと上端部8cとの間に設けられる湾曲部8bと、を有し、下端部8aがメインバー6のフランジ部6bの上面に形成された溝6dに入り込むことによって、メインバー6に対して仮に取り付けられた状態となる。
【0054】
連結部材8が取り付けられたメインバー6の平板部6cを挟み込むように配置された第1押圧レバー75と第2押圧レバー76とを、図9に示されるように、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近づくように押圧用シリンダ72によって変位させると、連結部材8の湾曲部8bが平坦状に塑性変形し、結果として、連結部材8の上端部8cがメインバー6の取付部6aの下面に形成された溝6e(差込口)に入り込むことになる。これにより、連結部材8は、メインバー6に対して固定された状態となる。
【0055】
なお、湾曲部8bは、連結部材8に複数設けられており、例えば、既設メインバー6の平板部6cとメインバー7の平板部とに架け渡される連結部材8には、既設メインバー6側に2つの湾曲部8bが設けられ、メインバー7側に2つの湾曲部8bが設けられる。したがって、連結部材8を介して既設メインバー6とメインバー7とを連結させるには、押圧用シリンダ72を伸長させて何れか1つの湾曲部8bを押圧した後、押圧用シリンダ72を収縮させるとともにベースプレート71を移動機構によってX軸方向に移動させて、すべての湾曲部8bを順次押圧する必要がある。
【0056】
このように既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられた連結部材8の複数の湾曲部8bが連結部材押圧部70によって押圧されることによって、連結部材8の上端部8c(差込部)が既設メインバー6及びメインバー7に設けられた溝6e(差込口)に差し込まれ、結果として、既設メインバー6とメインバー7とは、連結部材8を介して連結されることになる。
【0057】
第1ロボット100は、上記各機構に加えて、第1把持部41によって把持される既設メインバー6の端部の位置及び第2把持部42によって把持されるメインバー7の端部の位置を検知可能な距離センサ81(端部位置検知部)をさらに備える。
【0058】
距離センサ81は、比較的測定精度が高いポイント式レーザ距離センサであって、検出方向がテーブル31の切り欠き部31aを通り上方(Z軸方向)を向くように、テーブル31の下面側にブラケット34を介して固定される。
【0059】
具体的には、距離センサ81は、検出方向が、連結部材取付部60によって既設メインバー6及びメインバー7に取り付けられる連結部材8の中心位置、すなわち、既設メインバー6とメインバー7とが当接ないし最も接近する位置よりも所定の距離(例えば数mm程度)だけ第2把持部42寄りの箇所においてメインバー6,7のフランジ部6bを指向するように設置される。なお、距離センサ81は、連結部材8の中心位置から第1把持部41寄りの箇所において、既設メインバー6のフランジ部6bを指向するセンサと、連結部材8の中心位置から第2把持部42寄りの箇所において、メインバー7のフランジ部を指向するセンサと、の二つのセンサで構成されていてもよい。また、距離センサ81は、検出方向がメインバー6,7の平板部6cを指向するように、例えば、検出方向がY軸方向となるように、テーブル31の上方に支柱を介して固定されていてもよい。
【0060】
距離センサ81の検出値(距離)は、制御部80へと送られ、後述のように主に第1把持部41によって把持される既設メインバー6の端部に向けて第2把持部42によって把持されるメインバー7の端部を接近させる際に用いられる。
【0061】
制御部80は、図16に示すように、距離センサ81及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、移動部10、昇降部20、第1把持部41、第2把持部42、連結部材取付部60及び連結部材押圧部70の作動を制御する。制御部80が行う具体的な制御については、メインバー7の取り付け方法(後述)の説明において詳述する。
【0062】
制御部80は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部80に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部80は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。
【0063】
また、制御部80には、図16に示すように、第1ロボット100及び第2ロボット200に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバ300とデータの送受信を行うための通信部80aが設けられる。通信部80aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部80aは、第2ロボット200の制御部190と通信を行う際にも用いられる。
【0064】
次に、第2ロボット200の構成及び作動について、図1及び図10~16を参照して説明する。
【0065】
第2ロボット200は、図1に示すように、床面2を移動可能な移動部10と、移動部10上に載置される昇降部20と、昇降部20上に載置される保持作業部140及び固定作業部160,180と、移動部10、昇降部20、保持作業部140及び固定作業部160,180の作動を制御する図示しない制御部190と、を備える。
【0066】
移動部10及び昇降部20は、第1ロボット100の移動部10及び昇降部20と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0067】
保持作業部140は、図10に示すように、メインバー7を保持する保持部141(メインバー保持部)と、保持部141の位置を切り換える位置切換部145と、既設メインバー6に対するメインバー7の位置をX軸方向において調整する位置調整部156と、を有する。なお、図10は、図1のE-E線に沿う断面において第2ロボット200を見たときの保持作業部140を示す図であり、保持作業部140以外の機構については図示を省略している。
【0068】
保持部141は、いわゆる平行開閉グリッパであり、対向して配置される一対の可動片143と、一対の可動片143を、Y軸方向に沿って、互いに近付けたり離したりすることが可能な保持シリンダ142と、により構成される。図10には、一対の可動片143によってメインバー7が保持されている状態が示されており、図11には、一対の可動片143によってメインバー7が保持されていない状態が示されている。
【0069】
保持部141は、図1に示すように、X軸方向において所定の間隔をあけて2つ設けられており、これらの間の距離は、第1ロボット100において第1把持部41が設けられている箇所から第2把持部42が設けられている箇所までの距離よりも十分に大きく設定される。このため、後述のように、第1ロボット100により運搬されたメインバー7を一対の保持部141で受け取ることが可能である。
【0070】
なお、保持部141は、第1ロボット100の把持部40の把持片43,44のように、可動片143の移動に連動して開閉する比較的大型の保持片を有するものであってもよい。
【0071】
位置切換部145は、Y軸方向に沿って可動片147を往復移動させることが可能な位置切換スライダ146と、可動片147の動きに連動して変形するリンク機構150と、を有する。位置切換スライダ146及びリンク機構150は、昇降部20の設置プレート21の上方に配置されるテーブル131にそれぞれ設置される。
【0072】
リンク機構150は、4つのリンクを有するクローズドループ構造の四節リンク機構であり、テーブル131に固定される固定リンク151と、位置切換スライダ146の駆動力が付与される駆動リンク152と、駆動リンク152に対向して配置され駆動リンク152の動きに追従する従動リンク153と、駆動リンク152と従動リンク153を接続する中間リンク154と、を有する。
【0073】
駆動リンク152には、長孔152aが形成されており、長孔152aには、可動片147からX軸方向(可動片147の往復方向に対して直交する方向)に沿って延びる伝達バー147aが挿入される。これにより駆動リンク152には、可動片147及び伝達バー147aを介して位置切換スライダ146の駆動力が付与される。
【0074】
また、中間リンク154の上面には、上述の保持部141が取り付けられる。したがって、可動片147の移動に応じてリンク機構150が変形することによって、保持部141の位置も変化する。
【0075】
具体的には、保持部141の位置は、保持部141によって保持されたメインバー7を吊りボルト4(支持部材)に対して固定する際の第1位置(固定作業位置、図10)と、保持部141によってメインバー7を受け取る際の第2位置(受取作業位置、図11)と、の2つの位置に切り換えられる。なお、第1位置は、テーブル131に立設された支持柱133の上端面に中間リンク154の下面が当接することによって規定される。
【0076】
位置調整部156は、昇降部20の設置プレート21とテーブル131との間に設置された電動スライダであり、X軸方向に沿って伸縮するように設置される。具体的に位置調整部156は、図1に示される状態において、設置プレート21に対してテーブル131を第1ロボット100側に向かって移動させるように設置されている。
【0077】
このため、位置調整部156の伸長量を制御することによって、保持部141により保持されたメインバー7を既設メインバー6に対して近付けるように、X軸方向に沿ってメインバー7の位置を微調整することが可能である。
【0078】
固定作業部160,180は、保持作業部140により保持されたメインバー7を、ハンガ5を介して吊りボルト4に対して固定する作業を行うための各機構を備えた部分であり、メインバー7に対するハンガ5の位置を調整可能なハンガ位置調整部160(金具位置調整部)と、ハンガ5に設けられた締結部材を締め付ける締付部180と、を有する。
【0079】
ハンガ位置調整部160は、昇降部20の設置プレート21に立設された支柱134に設置され、締付部180は、支柱134間に設けられた支持プレート136に設置される。このようにハンガ位置調整部160及び締付部180は、上述の保持作業部140が設けられるテーブル131ではなく、支柱134等を介して設置プレート21に設けられている。
【0080】
ハンガ位置調整部160は、図12に示すように、ハンガ5を把持可能なハンガ把持部161(金具方向調整部)と、ハンガ把持部161によって把持されるハンガ5の位置を略中心とする円弧状軌道に沿ってハンガ把持部161を移動可能なハンガ回転部166(金具方向調整部)と、を有する。なお、図12は、図1のF-F線に沿う断面において第2ロボット200を見たときのハンガ位置調整部160を示す図であり、ハンガ位置調整部160以外の機構については図示を省略している。
【0081】
ハンガ把持部161は、いわゆる平行開閉グリッパであり、対向して配置される第1可動片163及び第2可動片164と、これら可動片163,164を、X-Y平面に沿って、互いに近付けたり離したりすることが可能な把持シリンダ162と、により構成される。図12及び図13には、第1可動片163及び第2可動片164によってハンガ5が把持されている状態が示されている。
【0082】
また、互いに対向する第1可動片163の第1把持面163aと第2可動片164の第2把持面164aとは、ハンガ5の外形形状に合わせた形状に形成されている。具体的には、各把持面163a,164aには、ハンガ5の長辺側の面に対応する面と、ハンガ5の短辺側の面に対応する面と、がそれぞれ形成される。
【0083】
なお、第1可動片163及び第2可動片164によって挟まれたハンガ5が連れ回り、ハンガ5の長辺側の面と短辺側の面とが、可動片163,164内において毎回同じように収まるようにするために、何れか一方の把持面163a,164aのハンガ5の長辺側の面に対応する面には、湾曲面が設けられる。図12及び図13に示される例では、第2把持面164aに湾曲面が設けられている。
【0084】
ハンガ回転部166は、円弧状の長孔168aが形成された円弧状のプレート168と、プレート168の長孔168a内に図示しない回動軸が挿入される回動モータ167と、を有する。
【0085】
回動モータ167とプレート168とは、いわゆるラックアンドピニオン機構によって連結されており、径方向外側の長孔168aの側面には、ラック(歯)が形成されており、回動モータ167の回動軸には、ラックと噛み合うピニオンが設けられている。このため、回動モータ167が回動することにより、プレート168は、円弧状の軌道に沿って移動する。なお、図13には、図12に示される状態からプレート168が円弧状の軌道に沿って移動した状態が示されている。
【0086】
プレート168の下面には、ハンガ把持部161の把持シリンダ162が、円弧の中心側に可動片163,164を向けた状態で固定される。具体的には、可動片163,164で把持されたハンガ5に設けられた吊りボルト4の位置が長孔168aの円弧の中心に位置するように、把持シリンダ162はプレート168に取り付けられている。これにより、図12及び図13に示されるように、可動片163,164によって把持されたハンガ5は、ハンガ回転部166によって、吊りボルト4を略中心として回転されることになる。
【0087】
回動モータ167は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回動中心がZ軸方向と平行となるように、支柱134からY軸方向に沿って延びる支持バー170にブラケット171を介して固定される。なお、ブラケット171の下面側には、プレート168を摺動可能に支持するとともにプレート168が落下することを防止する図示しないプレート支持部が設けられている。
【0088】
また、ハンガ位置調整部160は、支柱134に対して支持バー170をY軸方向及びZ軸方向に移動させることが可能な図示しない移動機構を有する。移動機構は、2軸方向に移動可能な構成であればどのような構成であってもよく、例えば、Y軸方向に伸縮するアクチュエータ及びZ軸方向に伸縮するアクチュエータを組み合わせることにより構成されてもよい。これにより、支持バー170を介してハンガ把持部161及びハンガ回転部166を上下方向(Z軸方向)及びメインバー7の長手方向に直交する方向(Y軸方向)に移動させることが可能である。
【0089】
締付部180は、図14に示すように、ハンガ5に設けられたネジ5a(締結部材)を締め付ける締付モータ181と、締付モータ181の位置をY軸方向に沿って変化させる電動シリンダ184と、を有する。なお、図14は、図1のH-H線に沿う断面において第2ロボット200を見たときの締付部180を示す図であり、締付部180以外の機構については図示を省略している。
【0090】
締付モータ181は、サーボモータまたはステッピングモータであり、回転中心がY軸方向と平行となるように、ブラケット187を介して電動シリンダ184により支持されている。締付モータ181の回転軸は、ブラケット187に形成された貫通孔187aに挿通され、その先端にはビット182が設けられる。ビット182は、交換可能であり、ハンガ5に設けられるネジ5aの頭部形状に応じて、締め付けに適したビットが適宜選定される。
【0091】
電動シリンダ184は、支柱134間に設けられた支持プレート136に固定されるシリンダ部185と、シリンダ部185から突出するロッド部186と、を有するリニアアクチュエータであり、Y軸方向に沿って伸縮する。ロッド部186の先端部には、上述のブラケット187が固定されている。このため、電動シリンダ184の伸長量を制御することによって、締付モータ181を、ハンガ5に設けられたネジ5aを締め付け可能な位置へと移動させることが可能である。なお、上述のハンガ位置調整部160が制御されている間は、締付モータ181とハンガ位置調整部160とが干渉してしまうことを避けるために、電動シリンダ184は収縮した状態とされる。
【0092】
ハンガ5に設けられるネジ5aの位置は、メインバー7から常に一定の高さとなるが、ハンガ5の仕様によってネジ5aの位置が変わる場合がある。このため、支柱134に対する支持プレート136の高さやX軸方向における電動シリンダ184の位置を調整可能としておくことが好ましい。
【0093】
また、ネジ5aの位置を安定させるために、締付モータ181によりネジ5aを締め付けるにあたって、ハンガ5または吊りボルト4を予め把持する把持部が設けられてもよい。
【0094】
第2ロボット200は、上記各機構に加えて、吊りボルト4の位置を検知可能な第1距離センサ191と、ハンガ5の表面形状(ネジ5aが設けられる面)を検知可能な第2距離センサ192と、をさらに備える。第1距離センサ191及び第2距離センサ192は、計測対象物までの距離をスキャン計測可能な測域センサ、例えば、2D-LiDAR(light detection and ranging)センサ、または、3D-LiDARセンサである。
【0095】
第1距離センサ191は、図1に示されるように、ハンガ位置調整部160や締付部180とともに支柱134によって支持される。第1距離センサ191は、特に水平面における距離計測が行われるように配置される。
【0096】
第2距離センサ192は、図1図12及び図13に示されるように、支柱134からY軸方向に沿って延びる上述の支持バー170の下面に設置される。第2距離センサ192は、特にハンガ把持部161によって把持されたハンガ5までの距離計測が行われるように配置される。
【0097】
具体的には、図15に示すように、第2距離センサ192は、ハンガ把持部161によって把持されたハンガ5の表面までの距離を計測し、ハンガ5の表面形状を検知する。なお、図15は、図13のG-G線に沿う断面を拡大して示した拡大図である。
【0098】
第1距離センサ191の検出値(距離)は、制御部190へと送られ、後述のように主に第2ロボット200を所定の位置へと移動させる際に用いられる。また、第2距離センサ192の検出値(距離)は、制御部190へと送られ、後述のように主にハンガ把持部161によって把持されたハンガ5の向きを判定する際に用いられる。
【0099】
第2ロボット200の制御部190は、第1距離センサ191、第2距離センサ192及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM等の作業エリアに関するデータとに基づいて、移動部10、昇降部20、保持部141、位置切換部145、位置調整部156、ハンガ位置調整部160及び締付部180の作動を制御する。制御部190が行う具体的な制御については、メインバー7の取り付け方法(後述)の説明において詳述する。
【0100】
また、制御部190には、第1ロボット100の制御部80と同様に、通信部190aが設けられる。なお、制御部190の具体的な構成は、第1ロボット100の制御部80と同じであるため、その説明を省略する。
【0101】
続いて、図1~19を参照し、上記構成の枠体施工システムによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を取り付ける方法について説明する。図17は、枠体施工システムが実行する作業、すなわち、各ロボット100,200が行う作業の手順を示したフローチャートであり、図18~20は、各作業手順における各ロボット100,200の作動を説明するための概略図である。
【0102】
各ロボット100,200が起動されると、まず、各制御部80,190において、作業エリアに関するデータがそれぞれ読み込まれ、記憶される(ステップS11,S31)。具体的には、各通信部80a,190aを介してサーバ300からBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、既設メインバー6の位置や新たにメインバー7を取り付ける位置や取り付け順序などが含まれる。
【0103】
次に、ステップS12,S32において、各制御部80,190は、移動部10の情報取得器15によって、ロボット100,200の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、ロボット100,200の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。各制御部80,190は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
【0104】
続くステップS13において、第1ロボット100の制御部80は、メインバー7を取得するために、メインバー7が保管されている地点へと第1ロボット100を移動させ、図18に示すように、把持部40により1本のメインバー7を把持させる。メインバー7は、例えば、一対の支持部材9間に架け渡された状態で保管されており、第1ロボット100は、一対の支持部材9間の下方に入り込み、把持部40を上昇させつつ第1把持片43と第2把持片44とを互いに近付けることにより、第1把持部41及び第2把持部42により1本のメインバー7を把持する。この際、制御部80は、把持されるメインバー7の位置を距離センサ81及び情報取得器15の検出値に基づいて把握し、移動部10、昇降部20及び把持部40の作動を制御する。
【0105】
一方、第2ロボット200の制御部190は、ステップS33において、新たにメインバー7を取り付ける位置である作業予定場所へと第2ロボット200を移動させる。具体的には、制御部190は、最初にメインバー7が取り付けられる吊りボルト4(支持部材)の座標をステップS31で読み込まれたデータから抽出し、移動部10を制御することによって第2ロボット200を抽出された座標に向けて移動させる。第2ロボット200の移動は、第1距離センサ191によって吊りボルト4の位置が認識されることにより完了する。
【0106】
また、第2ロボット200の制御部190は、ステップS33における移動が完了すると、メインバー7を受け取ることが可能な状態になったとして、自己位置及び受け取り方向といった情報を含む受取要求を第1ロボット100の制御部80へと送信し、ステップS34に進み、第2ロボット200を受け取り姿勢とする。具体的には、位置切換スライダ146を制御することにより、保持部141の位置を、図19に示すように、メインバー7を受け取る際の位置である第2位置(受取作業位置)へと切り換える。
【0107】
一方、ステップS13におけるメインバー7の取得が完了した第1ロボット100の制御部80は、第2ロボット200の制御部190から受取要求を受信すると、ステップS14に進み、第1ロボット100を第2ロボット200の保持部141側に移動させるとともに、第1ロボット100を受け渡し姿勢とする。具体的には、図19に示すように、電動スライダ32を伸長し、テーブル31を第2ロボット200の保持部141間に位置させた後、第1把持部41及び第2把持部42によるメインバー7の把持を解除する。
【0108】
第1ロボット100の制御部80は、距離センサ81の検出値に基づいて、第2ロボット200の保持部141によりメインバー7が保持され、支持プレート49からメインバー7が離れたことが確認されると、メインバー7の受け渡しが完了したとして、次のステップS15に進む。このように第1ロボット100の把持部40及び電動スライダ32は、第2ロボット200にメインバー7を供給する作業を行う供給作業部として機能する。
【0109】
ステップS15において、制御部80は、メインバー7と既設メインバー6とを連結する位置である作業予定場所へと第1ロボット100を移動させる。具体的には、制御部80は、メインバー7と既設メインバー6とを連結する位置の座標をステップS11で読み込まれたデータから抽出し、移動部10を制御することによって第1ロボット100を抽出された座標に向けて移動させる。第1ロボット100の移動は、距離センサ81によって既設メインバー6の位置が認識されることにより完了する。
【0110】
一方、第2ロボット200の制御部190は、保持部141によりメインバー7が保持されたことが確認されると、位置切換スライダ146を制御することにより、保持部141の位置を、図10に示すように、メインバー7を吊りボルト4に対して固定する際の位置である第1位置(固定作業位置)へと切り換える。
【0111】
制御部190は、続くステップS35において、昇降部20を制御し、保持部141により保持されたメインバー7の高さを、所定の高さ(既設メインバー6の高さと同じ高さ)とすることにより、メインバー7を仮配置する。そして、メインバー7の仮配置が完了したことを第1ロボット100の制御部80へと送信する。
【0112】
メインバー7の仮配置の完了を受信した第1ロボット100の制御部80は、ステップS16に進み、図20に示すように、既設メインバー6の端部を第1把持部41によって把持するとともに、仮配置されたメインバー7の端部を第2把持部42によって把持する。
【0113】
この際、制御部80は、各把持部41,42により僅かな隙間を介して各メインバー6,7をそれぞれ把持させておき、距離センサ81によって既設メインバー6の端部が検出されなくなるまで、X軸方向に沿って仮配置されたメインバー7側へと第1ロボット100を移動させる。これにより、距離センサ81の検出値によりメインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近したか否かを判定することが可能な状態となる。
【0114】
このようにメインバー7の接近が検出可能な状態となると、制御部80は、第2ロボット200の制御部190に対して、メインバー7を既設メインバー6に近付けるよう指示する。
【0115】
また、このとき、第1把持部41は、既設メインバー6の端部を隙間なく当接把持するように、すなわち、第1把持部41に対して既設メインバー6が比較的小さい力で移動してしまうことがないように制御される一方、第2把持部42は、僅かな隙間を介してメインバー7を把持した状態に維持される。
【0116】
上述の指示を受けた第2ロボット200の制御部190は、ステップS36に進み、メインバー7を既設メインバー6に近付けるように位置調整部156を制御する。具体的には電動スライダである位置調整部156を徐々に伸長し、設置プレート21に対してテーブル131とともにメインバー7を保持する保持部141を第1ロボット100側に向かって移動させる。
【0117】
メインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近したか否かは、第1ロボット100の制御部80によりステップS17において判定され、判定結果は、第2ロボット200の制御部190へと送信される。これにより、メインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近または当接したと判定されるまでは、制御部190による位置調整部156の制御が継続される。
【0118】
ステップS17においてメインバー7の端部が既設メインバー6の端部に接近または当接したと判定されると、第1ロボット100の制御部80は、第2把持部42を、第1把持部41と同様に、メインバー7の端部を隙間なく当接把持するように制御した後、ステップS18に進み、メインバー7と既設メインバー6とを連結する作業を開始する。一方、第2ロボット200の制御部190は、ステップS37に進み、位置調整部156の制御を終了した後、続くステップS38において、メインバー7にハンガ5を取り付ける作業を開始する。
【0119】
ステップS18において、第1ロボット100の制御部80は、まず、電動シリンダ62及び回動モータ65を制御し、図4に示すように、メインバー7及び既設メインバー6に対して、保持部61により保持された連結部材8を取り付ける。なお、連結部材8の取り付けが完了すると、電動シリンダ62及び回動モータ65は、保持部61に新たな連結部材8を保持させるために、図5に示すように制御される。
【0120】
次に、制御部80は、連結部材押圧部70の移動機構及び押圧用シリンダ72を制御し、図7に示すように、連結部材8が取り付けられたメインバー7及び既設メインバー6の平板部を挟み込むように第1押圧レバー75及び第2押圧レバー76を配置させる。そして、第1押圧部75cと第2押圧部76cとが互いに近づくように押圧用シリンダ72を制御し、連結部材8の湾曲部8bを押圧する。
【0121】
既設メインバー6側に位置する複数の湾曲部8bと、メインバー7側に位置する複数の湾曲部8bとが、第1押圧部75c及び第2押圧部76cによって順次押圧されることにより、連結部材8を介したメインバー7と既設メインバー6との連結が完了する。
【0122】
メインバー7と既設メインバー6とを連結する作業が完了すると、制御部80は、把持部40を制御し、第1把持部41による既設メインバー6の把持を解除し、既設メインバー6を解放するとともに、第2把持部42によるメインバー7の把持を解除し、メインバー7を解放する。また、制御部80は、連結作業の完了を記憶するとともに、連結作業の完了をサーバ300へと送信する。
【0123】
続くステップS20において、制御部80は、予定されている連結作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0124】
予定されていた連結作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ300から受信するまで第1ロボット100は待機状態となる。
【0125】
一方、予定されていた連結作業がまだ完了していない場合、ステップS13へと戻り、新たなメインバー7を取得するために、制御部80は、メインバー7が保管されている地点へと第1ロボット100を移動させる。それ以降、上述のような工程を経て第1ロボット100による作業が繰り返される。
【0126】
ステップS38へと進んだ第2ロボット200の制御部190は、メインバー7にハンガ5を取り付けるために、まず、ハンガ位置調整部160を制御し、ハンガ把持部161によりハンガ5を把持させる。具体的には、制御部190は、第1距離センサ191及び第2距離センサ192の検出値に基づいてハンガ5の位置を把握した後、ハンガ位置調整部160の移動機構を制御し、ハンガ把持部161を、ハンガ5を把持可能な位置へと移動させる。
【0127】
ハンガ把持部161によってハンガ5が把持されると、制御部190は、再びハンガ位置調整部160の移動機構を制御し、ハンガ5の高さがメインバー7に接触しない高さとなるまでハンガ把持部161を上昇させる。
【0128】
ハンガ把持部161を上昇させた後、制御部190は、ハンガ回転部166を制御し、図13及び図15に示すように、ハンガ把持部161により把持されたハンガ5の長辺側の側面を、第2距離センサ192に対向させ、第2距離センサ192によってハンガ5の表面形状を検知する。
【0129】
検知されたハンガ5の表面形状が、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5a(締結部材)が設けられた側面の形状とほぼ一致した場合、制御部190は、再びハンガ回転部166を制御し、図12に示すように、ハンガ5の長辺側の側面がX軸方向と平行となるように、すなわち、ネジ5aが設けられた側面が締付部180側に位置するように、ハンガ把持部161を移動させる。なお、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5aが設けられた側面の形状は、制御部190に予め記憶されている。
【0130】
このようにハンガ把持部161を移動させた後、制御部190は、再びハンガ位置調整部160の移動機構を制御し、メインバー7の真上にハンガ5を位置させてから、ハンガ把持部161によるハンガ5の把持を解除する。把持が解除されたことにより、ハンガ5は、吊りボルト4に沿って降下し、図14に示すように、ネジ5aが設けられた側面を締付部180に向けた状態でメインバー7の取付部を挟み込んだ状態となる。
【0131】
ハンガ5がメインバー7の取付部を挟み込む位置にあることが第1距離センサ191により検知されると、制御部190は、締付部180の電動シリンダ184を制御し、ビット182をハンガ5のネジ5aに押し当て、さらに締付モータ181をネジ5aの締め付け方向に回転させる。
【0132】
締付モータ181への供給電流値等に基づいて、締付モータ181による締め付けトルクが所定の大きさになったことが検知されると、制御部190は、締付モータ181の回転を停止するとともに、電動シリンダ184を収縮し、ビット182をハンガ5から遠ざける。
【0133】
これによりハンガ5が締め付けられ、メインバー7にハンガ5が取り付けられた状態、換言すれば、吊りボルト4(支持部材)にハンガ5(取付金具)を介してメインバー7が取り付けられた状態となる。
【0134】
一方、検知されたハンガ5の表面形状が、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5aが設けられた側面の形状と一致していない場合、制御部190は、一旦、ハンガ把持部161によるハンガ5の把持を解除した後、再びハンガ回転部166を制御し、ハンガ把持部161を、図13に示す状態から120度以上、好ましくは150度程度移動させる。
【0135】
このようにハンガ把持部161を移動させた後に再びハンガ把持部161によりハンガ5を把持した場合、ハンガ把持部161の第1可動片163側に位置していたハンガ5の側面が第2可動片164側に位置する可能性が高くなる。つまり、ハンガ5を反転させた状態で把持できる可能性が高くなる。
【0136】
したがって、検知されたハンガ5の表面形状が、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5aが設けられた側面の形状と一致しなかった場合には、上述のようにハンガ5の向きを調整する工程、すなわち、ハンガ5を反転させる可能性が高い工程が行われた後、再度、第2距離センサ192によるハンガ5の表面形状の検知が行われる。
【0137】
このように、ハンガ把持部161及びハンガ回転部166は、ハンガ5(取付金具)のネジ5a(締結部材)が設けられた側面の向きを調整する金具方向調整部として機能する。なお、金具方向調整部によってハンガ5の向きが調整された結果、検知されたハンガ5の表面形状が、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5aが設けられた側面の形状と一致した場合には、上述のように、締付部180によるハンガ5の締め付け工程に移行する。
【0138】
1本のメインバー7に対して取り付けられるハンガ5は、複数あることから、ステップS38におけるメインバー7へのハンガ5の取り付け作業は、ハンガ5の数だけ行われる。例えば、メインバー7に取り付けられるハンガ5が3つある場合には、中央のハンガ5が取り付けられた後、同様にして残り2つのハンガ5が取り付けられる。
【0139】
メインバー7に対してすべてのハンガ5の取り付け作業が完了すると、制御部190は、取り付け作業の完了を記憶するとともに、取り付け作業の完了をサーバ300へと送信する。
【0140】
続くステップS39において、制御部190は、予定されているメインバー7の取り付け作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0141】
予定されていた取り付け作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ300から受信するまで第2ロボット200は待機状態となる。
【0142】
一方、予定されていた取り付け作業がまだ完了していない場合、ステップS33へと戻り、制御部190は、次にメインバー7を取り付ける地点へと第2ロボット200を移動させる。それ以降、上述のような工程を経て第2ロボット200による作業が繰り返される。
【0143】
このように第1ロボット100と第2ロボット200とが協働することによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4にハンガ5を介してメインバー7が順次固定される。
【0144】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0145】
上記構成の枠体施工システムの制御部80,190は、移動部10を制御して、保持作業部140、連結作業部40,60,70及び固定作業部160,180を所定の位置へとそれぞれ移動させてから、保持作業部140を制御し、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、連結作業部40,60,70を制御し、連結部材8を介してメインバー7と既設メインバー6とを連結させ、固定作業部160,180を制御し、ハンガ5(取付金具)を介してメインバー7を吊りボルト4(支持部材)に固定している。
【0146】
このように、メインバー7を既設メインバー6に接近させた後、メインバー7と既設メインバー6とを連結するとともに、メインバー7を吊りボルト4に固定することによって、天井スラブ1に取り付けられた吊りボルト4に対してメインバー7を円滑に、且つ、自動的に取り付けることができる。また、高所作業であるメインバー7の取り付け作業を、作業員に代えて枠体施工システムが行うことによって、作業員の作業負担を軽減するとともに安全性を確保することができる。
【0147】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0148】
上記実施形態では、枠体施工システムは、保持作業部140及び固定作業部160,180を備えた第2ロボット200と、連結作業部40,60,70を備えた第1ロボット100と、の2台の自律型ロボットにより構成されている。これに代えて、枠体施工システムは、保持作業部140、固定作業部160,180及び連結作業部40,60,70のすべてを備えた同一形態の2台のロボットにより構成されていてもよい。また、枠体施工システムは、3つ以上の種類のロボットで構成されていてもよく、例えば、作業を効率化するために、固定作業部160,180のみを備えたロボットを1台または複数追加し、第2ロボット200によるメインバー7へのハンガ5の取り付けと同時に、残りのハンガ5の取り付けが行われるようにしてもよい。また、第1ロボット100に代わってメインバー7の運搬を行う運搬ロボットを追加してもよい。
【0149】
また、上記実施形態では、ハンガ把持部161及びハンガ回転部166がハンガ5の向きを調整する金具方向調整部として用いられている。金具方向調整部は、検知されたハンガ5の表面形状が、ハンガ5の長辺側の側面のうち、ネジ5aが設けられた側面の形状と一致しなかった場合に、吊りボルト4を中心にハンガ5を反転させることができる可能性のある機構であればどのようなものであってもよく、例えば、ハンガ5の吊りボルト4から離れた部分を、棒状部材でつついたり、フック状で引っ掛けたり、負圧吸引したり、磁気吸着するような機構であってもよい。
【0150】
また、上記実施形態では、ハンガ5の向きが第2距離センサ192によって検知されたハンガ5の表面形状に基づいて判定されている。これに代えて、ハンガ5の向きは、比較的解像度が高いカメラにより撮像された画像から抽出されるネジ5aの有無に基づいて判定されてもよい。また、第1距離センサ191が第2距離センサ192の機能を兼ね備えていてもよい。
【0151】
また、上記実施形態では、電動式のシリンダやスライダ、モータが用いられている。これに代えて、シリンダやスライダ、モータは、エア駆動式や油圧駆動式であってもよい。
【0152】
また、上記実施形態では、各ロボット100,200は、移動部10の情報取得器15によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。各ロボット100,200は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器15に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
【0153】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0154】
100・・・第1ロボット(枠体施工システム)
200・・・第2ロボット(枠体施工システム)
1・・・天井スラブ
4・・・吊りボルト(支持部材)
5・・・ハンガ(取付金具)
5a・・・ネジ(締付部材)
6・・・既設メインバー
6e・・・溝(差込口)
7・・・メインバー
8・・・連結部材
8c・・・上端部(差込部)
10・・・移動部
32・・・電動スライダ
34・・・ブラケット
35・・・支柱
40・・・把持部(連結作業部)
41・・・第1把持部
42・・・第2把持部
60・・・連結部材取付部(連結作業部)
70・・・連結部材押圧部(連結作業部)
80,190・・・制御部
81・・・距離センサ(端部位置検知部)
140・・・保持作業部
141・・・保持部(メインバー保持部)
145・・・位置切換部
156・・・位置調整部
160・・・ハンガ位置調整部(固定作業部)
161・・・ハンガ把持部
166・・・ハンガ回転部
180・・・締付部
191・・・第1距離センサ
192・・・第2距離センサ
図1
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