(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054010
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】施術支援装置、施術支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240409BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160571
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】519024474
【氏名又は名称】Safe Approach Medical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】チョ ビョンヒョン
【テーマコード(参考)】
4C052
4C159
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052NN03
4C159AA56
(57)【要約】 (修正有)
【課題】予め決定された位置又は角度と異なる態様で施術者がインプラントを埋設する場合にも、施術を支援するための情報を施術者に提供できるようにする。
【解決手段】施術支援装置100は、被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部18に表示させる表示制御部77と、口腔画像データにおけるドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、初期設計データが示す設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、更新設計データを作成するデータ作成部79と、を有し、表示制御部77は、データ作成部79が更新設計データを作成した場合、更新前の設計インプラント画像が更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された施術支援画像を表示部18に表示させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施術者の口腔内にインプラントを固定する位置及び角度を示す設計インプラント画像の初期設計データを記憶する記憶部と、
前記被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、前記初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させる表示制御部と、
前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するデータ作成部と、
を有し、
前記表示制御部は、前記データ作成部が前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させる、
施術支援装置。
【請求項2】
前記データ作成部は、前記ドリルの歯肉への接触位置と前記設計インプラント画像に対応する歯肉の表面における位置とが異なっている場合、前記設計インプラント画像の後端の位置が前記接触位置に近づくように前記設計インプラント画像の角度を更新した前記更新設計データを作成する、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項3】
前記データ作成部は、前記ドリルの歯肉への挿入角度と前記設計インプラント画像の角度とが異なっている場合、予め設定された要回避領域に前記設計インプラント画像が重ならない範囲で前記設計インプラント画像の角度が前記挿入角度に近づくように前記設計インプラント画像の角度を更新した前記更新設計データを作成する、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項4】
前記データ作成部は、前記設計インプラント画像の更新位置及び更新角度の組み合わせの複数の候補に対応する複数の前記更新設計データを作成し、
前記表示制御部は、前記複数の候補に対応する複数の更新設計インプラント画像候補を前記表示部に表示させ、ユーザにより前記複数の更新設計インプラント画像候補から選択された前記更新設計インプラント画像候補を前記更新設計インプラント画像として前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記更新設計データに基づく前記更新設計インプラント画像を、更新前の前記設計インプラント画像と異なる色で表示してから所定の時間が経過した後に、前記更新設計インプラント画像の色を更新前の前記設計インプラント画像と同じ色に変更する、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記更新設計データに基づく前記更新設計インプラント画像を、更新前の前記設計インプラント画像と異なる色で表示した後に、前記ドリルの位置及び角度が前記更新設計インプラント画像の位置及び角度に対応していることを条件として、前記更新設計インプラント画像の色を更新前の前記設計インプラント画像と同じ色に変更する、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、複数の前記設計インプラント画像の候補から所望の設計インプラント画像を選択するための操作画面を前記表示部に表示させた後に、選択された前記設計インプラント画像を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させるステップと、
前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するステップと、
前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させるステップと、
を有する施術支援方法。
【請求項9】
コンピュータに、
被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させるステップと、
前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するステップと、
前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させるステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯のインプラント施術を支援する施術支援装置、施術支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インプラント施術を行う施術者が、インプラントを埋設する位置として予め作成された仮想的な設計インプラント画像を施術中に確認できるようにするための施術支援装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施術者がインプラント施術を行う際に、インプラントを埋設する口腔内の状態、又は施術を受ける人(以下、「被施術者」という)が口を開けた状態等によっては、設計インプラント画像と同じ位置又は方向に埋設することができないという場合がある。このような場合、設計インプラント画像を施術者が利用できないという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、予め決定された位置又は角度と異なる態様で施術者がインプラントを埋設する場合にも、施術を支援するための情報を施術者に提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る施術支援装置は、被施術者の口腔内にインプラントを固定する位置及び角度を示す設計インプラント画像の初期設計データを記憶する記憶部と、前記被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、前記初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させる表示制御部と、前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するデータ作成部と、を有し、前記表示制御部は、前記データ作成部が前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させる。
【0007】
前記データ作成部は、前記ドリルの歯肉への接触位置と前記設計インプラント画像に対応する歯肉の表面における位置とが異なっている場合、前記設計インプラント画像の後端の位置が前記接触位置に近づくように前記設計インプラント画像の角度を更新した前記更新設計データを作成してもよい。
【0008】
前記データ作成部は、前記ドリルの歯肉への挿入角度と前記設計インプラント画像の角度とが異なっている場合、予め設定された要回避領域に前記設計インプラント画像が重ならない範囲で前記設計インプラント画像の角度が前記挿入角度に近づくように前記設計インプラント画像の角度を更新した前記更新設計データを作成してもよい。
【0009】
前記データ作成部は、前記設計インプラント画像の更新位置及び更新角度の組み合わせの複数の候補に対応する複数の前記更新設計データを作成し、前記表示制御部は、前記複数の候補に対応する複数の更新設計インプラント画像候補を前記表示部に表示させ、ユーザにより前記複数の更新設計インプラント画像候補から選択された前記更新設計インプラント画像候補を前記更新設計インプラント画像として前記表示部に表示させてもよい。
【0010】
前記表示制御部は、前記更新設計データに基づく前記更新設計インプラント画像を、更新前の前記設計インプラント画像と異なる色で表示してから所定の時間が経過した後に、前記更新設計インプラント画像の色を更新前の前記設計インプラント画像と同じ色に変更してもよい。
【0011】
前記表示制御部は、前記更新設計データに基づく前記更新設計インプラント画像を、更新前の前記設計インプラント画像と異なる色で表示した後に、前記ドリルの位置及び角度が前記更新設計インプラント画像の位置及び角度に対応していることを条件として、前記更新設計インプラント画像の色を更新前の前記設計インプラント画像と同じ色に変更してもよい。
【0012】
前記表示制御部は、複数の前記設計インプラント画像の候補から所望の設計インプラント画像を選択するための操作画面を前記表示部に表示させた後に、選択された前記設計インプラント画像を前記表示部に表示させてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の施術支援方法は、コンピュータが実行する、被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させるステップと、前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するステップと、前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させるステップと、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、前記被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、初期設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部に表示させるステップと、前記口腔画像データにおける前記ドリルの位置及び角度の少なくともいずれかと、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、前記初期設計データが示す前記設計インプラント画像の位置及び角度と前記ドリルの位置及び角度との関係に基づいて、前記初期設計データにおける前記設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するステップと、前記更新設計データを作成した場合、更新前の前記設計インプラント画像が前記更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された前記施術支援画像を前記表示部に表示させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、予め決定された位置又は角度と異なる態様で施術者がインプラントを埋設する場合にも、施術を支援するための情報を施術者に提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】施術支援システムSの概要を説明するための図である。
【
図2】基準マーカ11及び第1位置マーカ13の構造を示す図である。
【
図3】基準マーカ11及び第1位置マーカ13の構造を示す図である。
【
図4】施療者が施術する際に使用するハンドピース15の構造を示す図である。
【
図6】施術中に施術支援画像が変化する様子を示す図である。
【
図7】施術中に施術支援画像が変化する様子を示す図である。
【
図9】施術支援装置100における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[施術支援システムSの概要]
図1は、施術支援システムSの概要を説明するための図である。施術支援システムSは、施術者が行うインプラント(すなわち人口歯根)の施術を支援するためのシステムである。
図1には、基準マーカ11と、CT装置12と、第1位置マーカ13と、第1撮像装置14と、ハンドピース15と、第2位置マーカ16と、第2撮像装置17と、表示部18と、操作部19と、施術支援装置100と、被施術者Pと、が示されている。
【0018】
基準マーカ11は、被施術者Pの口腔内を撮影することにより作成された画像における基準位置を示すために用いられる。基準マーカ11は、CT装置12を用いて被施術者Pの口腔内の画像を撮像する際に被施術者Pの歯列に固定される固定部21に結合されている。基準マーカ11は、固定部21を介して、口腔外の物体の基準マーカ11に対する位置(すなわち相対位置)を特定するための第1位置マーカ13と結合されている。基準マーカ11は、インプラントの施術前にCT装置12を用いて口腔内の画像が撮像する際に使用され、インプラントの施術中には取り外される。
【0019】
CT装置12は、基準マーカ11が被施術者Pに装着された状態で被施術者Pの上顎から下顎の全体又は一部を断層撮影する装置である。CT装置12は、断層撮影により生成したCT画像データを施術支援装置100に入力する。CT装置12は、インプラントの施術に先立って、インプラントを埋設する位置を示す設計データを作成するために用いられるCT画像データを作成するために、被施術者Pを断層撮影する。
【0020】
第1撮像装置14は、第1位置マーカ13を赤外線で撮影するカメラである。第1撮像装置14は、撮影により生成した第1撮像画像データを施術支援装置100に入力する。インプラントの施術前において、第1撮像装置14は、CT装置12が被施術者Pを断層撮影すると同時に第1位置マーカ13を撮影する。第1撮像装置14は、インプラントの施術中に、CT装置12が被施術者Pを断層撮影していない状態で第1位置マーカ13を撮影する。
【0021】
基準マーカ11と第1位置マーカ13との位置関係は既知である。したがって、インプラントの施術中に基準マーカ11が口腔内に装着されていなくても、第1撮像画像データにおける各部と第1位置マーカ13との相対位置と、基準マーカ11と第1位置マーカ13との相対位置とに基づいて、施術支援装置100は、第1撮像画像データに含まれている各部の基準位置に対する相対位置を特定することができる。
【0022】
ハンドピース15は、インプラントの施術に用いられるデバイスである。第2位置マーカ16は、施療者が操作するハンドピース15に装着され、ハンドピース15の位置及び方向を特定するために用いられる。
【0023】
第2撮像装置17は、第2位置マーカ16を赤外線で撮影するカメラである。第2撮像装置17は、インプラントの施術中に第2位置マーカ16を撮影し、撮影により生成した第2撮像画像データを施術支援装置100に入力する。なお、第1撮像装置14及び第2撮像装置17が、他方の撮像装置の機能も有しており、施術支援システムSが1台の撮像装置で第1位置マーカ13及び第2位置マーカ16を撮影してもよい。
【0024】
表示部18は、施術者が施術中に見ることができるディスプレイである。
操作部19は、施術者の操作を受け付けるデバイスであり、例えばキーボード、タッチパネル又はマウスである。
【0025】
施術支援装置100は、例えばコンピュータである。施術支援装置100は、施術中に施術者が参照する施術支援画像を表示部18に表示させる。施術支援画像には、口腔内の状態を示す画像と、インプラントを施術するべき位置を示す設計インプラント画像と、ハンドピース15に装着されたドリルの位置に対応する位置(例えばドリルの先端位置)に表示される施術インプラント画像とが含まれている。施術者は、表示部18に表示された施術支援画像を見ながら、インプラントの設計や施術を行うことで、ハンドピース15を適切に操作することが可能となる。
【0026】
CT装置12の撮影範囲と第1撮像装置14の撮影範囲と第2撮像装置17の撮影範囲との位置関係、及び基準マーカ11と第1位置マーカ13との位置関係は既知である。したがって、施術支援装置100は、CT画像データにより特定される基準マーカ11の位置と、第1撮像画像データにより特定される第1位置マーカ13の位置と、第2撮像画像データにより特定される第2位置マーカ16の位置とに基づいて、CT装置12が生成したCT画像データに含まれる口腔内の画像と、設計インプラント画像と、施術インプラント画像とを位置合わせすることで、施術支援画像を作成することができる。
【0027】
図2及び
図3は、基準マーカ11及び第1位置マーカ13の構造を示す図である。
図2においては、被施術者の歯に固定される固定部21に対して、基準マーカ11と第1位置マーカ13とが連結して一体となっている構造を示している。
【0028】
CT画像の撮像のために基準マーカ11が使用される際には、
図3(A)に示すように、第1位置マーカ13に結合されていない状態で使用される。一方、インプラントを埋め込む位置の設計時及びインプラントの施術時に第1位置マーカ13が使用される際には、
図3(B)に示すように、基準マーカ11が第1位置マーカ13に結合されていない状態で使用される。
【0029】
CT画像の撮像時には、固定部21が被施術者の歯列に装着される。固定部21は、被施術者の歯列の形状に合わせて予め作成されている。CT画像の撮像時には、固定部21に基準マーカ11のみが固着されており、被施術者の下顎から上顎にかけての全体又は一部がCTスキャンされることによりCT画像が撮像される。基準マーカ11は、固定部21から所定の長さを有する支持部22が歯の内側方向に延在しており、この支持部22に金属片が挿入されたマーカ部23が連接している。
【0030】
施術支援画像において、インプラントを施術するべき位置と、ハンドピース15に装着されたドリルの位置とが、口腔内の状態を示す画像における正確な位置に表示されるようにするために、基準マーカ11は、明確にCT画像に撮像される必要がある。
図2においては、マーカ部23に金属片が挿入されているため、CTスキャンをした際に、この金属片が明瞭に撮像されるので、基準マーカ11の位置を基準位置として使用することができる。
【0031】
CT画像の撮像が完了すると、マーカ部23は不要となるため除去される。マーカ部23が除去されると、第1位置マーカ13が連結部24に装着されて
図3(B)の状態となる。第1位置マーカ13は、連結部24に連結する第1支持部25と、当該第1支持部25に対してヨー軸を回転軸とする第1ヒンジ部26と、当該第1ヒンジ部26に接続する第2支持部27と、第2支持部27に対してピッチ軸を回転軸とする第2ヒンジ部28と、第2ヒンジ部28に接続する第3支持部29と、赤外線マーカ30とを備える。赤外線マーカ30においては、施術支援装置100が3次元空間座標上での位置を特定できるようにするために、3個以上のマーカが非直線上で同一平面に配置されている。
【0032】
第1位置マーカ13における可動箇所は、第1ヒンジ部26及び第2ヒンジ部28のみであり、それ以外の部位の位置は固定されている。第1ヒンジ部26及び第2ヒンジ部28には、それぞれ回転角度を示すメモリが表示されており、各メモリに応じて基準マーカ11との位置関係が予め特定されてデータ化されている。したがって、施術支援装置100は、赤外線マーカ30の座標を特定すると、特定した座標をCT画像上の座標に容易に変換することができる。
【0033】
図4は、施療者が施術する際に使用するハンドピース15の構造を示す図である。ハンドピース15は、本体部31と持手部32を有する。ハンドピース15は、持手部32の近傍に、本体部31の位置及び角度を特定するために使用される3個以上の赤外線マーカ33を有する。本体部31に結合された先端部34には、当該本体部31の長手方向に垂直な方向を軸として回転しながら、施療者の歯茎や骨を切削するドリル35が装着される。
【0034】
なお、歯茎や骨を切削する際には、ドリル35が装着されるが、インプラントを埋め込む際にはその人口歯根が装着される。すなわち、先端部34に装着される部品は、着脱可能となっている。
【0035】
赤外線マーカ33は、本体部31に対して固定された位置に設けられている。したがって、赤外線マーカ33の位置が特定されれば、先端部34に装着されたドリル35、及びドリル35の位置を正確に特定することが可能となる。したがって、本体部31に設けられている赤外線マーカ33と第1位置マーカ13に設けられている赤外線マーカ30との相対的な位置関係が特定されると、ドリル35の位置と被施術者の歯顎の位置とを合わせることが可能となる。
【0036】
なお、ハンドピース15は、インプラントの施術中だけでなく、設計インプラント画像を作成する設計作業においても使用される。設計作業では、先端部34にドリル35ではなく設計用の部品が装着された状態のハンドピース15が使用される。設計作業者は、被施療者の歯顎を模った石膏模型、又は被施療者の歯顎においてハンドピース15を動かして、インプラントを埋設するべき目標位置を決定する。その間に赤外線マーカ33が撮影されることにより、目標位置にインプラントを埋設する際の赤外線マーカ33の位置が特定される。
【0037】
[施術支援画像]
図5は、施術支援画像の一例を示す図である。
図5においては、設計インプラント画像51と、ドリル35の先端に結合された施術インプラント画像52とが表示されている。施術インプラント画像52の位置が設計インプラント画像51の位置と重なると、施術インプラント画像52における設計インプラント画像51と重なった領域の色が変化する。施術者は、このような施術支援画像を見ながら、施術インプラント画像52が設計インプラント画像51の位置に埋め込まれるように、ハンドピース15を操作することができる。
【0038】
図6及び
図7は、施術中に施術支援画像が変化する様子を示す図である。
図6は、設計インプラント画像51の位置及び方向に施術インプラント画像52が埋め込まれていく場合に施術支援画像が変化する様子を示す図である。
図7は、設計インプラント画像51の位置及び方向からずれた位置及び方向に施術インプラント画像52が埋め込まれていく場合に施術支援画像が変化する様子を示す図である。
図6及び
図7は、(a)から(e)の順に施術が進んでいることを示している。
図6及び
図7における「設計プレーン」は、インプラントの先端が到達するべき位置を示している。
【0039】
図6(a)は、施術を開始した時点の状態を示している。施術開始時には、ドリル35の画像の先端部分に施術インプラント画像52が仮想的に配置された状態の3次元モデルが表示される。この状態で、設計インプラント画像51は例えば赤色で表示され、施術インプラント画像52は例えば黄色で表示される。
【0040】
図6(b)は、施術インプラント画像52が設計インプラント画像51と重なるように施術者が本体部31を操作した状態を示している。この状態で、設計インプラント画像51と施術インプラント画像52とが重なった領域は、例えば橙色で表示される。
【0041】
図6(c)から
図6(e)は、施術者が設計インプラント画像51の長手方向に沿ってドリル35を押し下げている状態を示している。この過程で、施術インプラント画像52のうちドリル35により穴が形成された部分は、施術インプラント画像52の初期の色(例えば黄色)から他の色(例えば青色)に変化して施術インプラント画像53となっている。
図6(c)の状態よりも
図6(d)の状態の方が、施術インプラント画像52における下方まで穴が形成されているので、他の色に変化した領域が大きく、
図6(d)及び
図6(e)においては、
図6(a)に表示されていた設計インプラント画像51の全体が施術インプラント画像53に置換されている。
【0042】
図6は、施術者が設計インプラント画像51に沿ってドリル35を移動させることができた場合の施術支援画像であったが、被施術者が口を大きく開くことができなかったり、骨が硬い領域があったりした場合には、設計インプラント画像51に沿ってドリル35を移動させることができない。このような場合、施術者は、設計インプラント画像51と異なる位置又は方向にドリル35を移動させることになる。この場合の施術支援画像について
図7を参照しながら説明する。
【0043】
図7(a)から
図7(c)は、
図6(a)から
図6(c)と同じ状態を示している。施術者は、
図6(c)の状態で、設計インプラント画像51の長手方向に沿ってドリル35を移動させることが困難であることに気付き、
図7(d)においては、ドリル35が斜め方向に傾けられている。
図7(d)においては、設計インプラント画像51とともに、設計インプラント画像51に対して斜め方向の施術インプラント画像53が表示されており、施術者は、当該画像により施術インプラント画像53が設計時に想定されていた位置及び方向に対してどれぐらいずれているかを把握することができる。
【0044】
その後、施術者がドリル35の方向を変えるように本体部31を移動させない場合、
図7(d)に示されていた施術インプラント画像53が、更新設計インプラント画像55に切り替わり、設計インプラント画像51が、過去の設計インプラントであることを示す色の過去設計インプラント画像54に切り替わる。施術者は、新たな更新設計インプラント画像55を見ながら施術を継続することができる。
【0045】
このように、施術支援システムSにおいては、施術中に初期の設計インプラント画像51に沿ってドリル35を移動させることができないと判明した時点で、その時点でのドリル35の状態に基づく新たな更新設計インプラント画像55が表示される。したがって、施術者は、状況に応じてドリル35の位置又は方向を設計された位置又は方向から変更したとしても、施術支援画像を参照しながら施術を継続することができる。
【0046】
[施術支援装置100の構成]
図8は、施術支援装置100の構成を示す図である。施術支援装置100は、CT画像記憶部71と、3次元処理部72と、3次元モデル記憶部73と、位置特定部74と、位置合わせ部75と、設計データ記憶部76と、表示制御部77と、操作受付部78と、データ作成部79と、を有する。
【0047】
3次元処理部72、位置特定部74、位置合わせ部75、設計データ記憶部76、操作受付部78及びデータ作成部79は、例えばCPU(Central Processing Unit)が、記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。CT画像記憶部71、3次元モデル記憶部73及び設計データ記憶部76は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体に含まれている。
【0048】
CT画像記憶部71は、CT装置12で撮像されたCT画像データを取得して記憶する。3次元処理部72は、CT画像記憶部71に記憶されているCT画像を3次元モデル化する。3次元モデル記憶部73は、CT画像データ、並びにドリル35、本体部31及びインプラント等が3次元モデル化された画像データを記憶する。
【0049】
位置特定部74は、第1撮像装置14が撮像した第1位置マーカ13の位置、及び第2撮像装置17が撮像した第2位置マーカ16の位置を特定する。具体的には、位置特定部74は、第1撮像装置14が生成した第1撮像画像データにおいて、予め記憶された第1位置マーカ13の形状を探索し、検出された第1位置マーカ13の位置を示す座標を特定する。同様に、位置特定部74は、第2撮像装置17が生成した第2撮像画像データにおいて、予め記憶された第2位置マーカ16の形状を探索し、検出された第2位置マーカ16の位置を示す座標を特定する。位置特定部74は、特定した位置を示す座標データを位置合わせ部75に入力する。
【0050】
位置合わせ部75は、基準マーカ11の位置と第1位置マーカ13の位置との関係、及び第1位置マーカ13の位置と第2位置マーカ16の位置との関係に基づいて、CT画像、ドリル35の画像、本体部31の画像及びインプラントの画像の位置合わせを行う。位置合わせ部75は、例えば、基準マーカ11の位置と第1位置マーカ13の位置との相対関係、及び第1撮像装置14の位置と第2撮像装置17の位置との相対関係に基づいて、第2位置マーカ16の位置を基準マーカ11の位置を原点とする3次元空間内の座標に変換することにより、当該3次元空間におけるドリル35の画像、本体部31の画像及びインプラントの画像を表示するべき位置の座標を特定する。
【0051】
設計データ記憶部76は、被施術者の口腔内にインプラントを固定する位置及び角度を示す設計インプラント画像のデータを含む設計データを記憶する。設計データ記憶部76は、外部のコンピュータを用いて作成された設計データ、又はデータ作成部79が作成した設計データを記憶する。外部のコンピュータを用いて作成された設計データは、例えば
図6及び
図7における設計インプラント画像51であり、データ作成部79が作成した設計データは、
図7(e)に示した更新設計インプラント画像55である。設計データ記憶部76は、複数の設計インプラント画像に対応する複数の設計データを記憶してもよい。
【0052】
表示制御部77は、施術支援画像データを作成し、施術支援画像データを表示部18に送信することで、表示部18に施術支援画像を表示させる。具体的には、表示制御部77は、被施術者へのインプラントの挿入穴をドリルで形成する施術中に、被施術者の口腔内を撮像することにより生成された口腔画像データに基づく画像に、設計データに基づく設計インプラント画像を重ねた状態で施術支援画像を表示部18に表示させる。
【0053】
表示制御部77は、設計データ記憶部76に複数の設計データが記憶されている場合に、複数の設計データに対応する複数の設計インプラント画像を表示部18に表示させてもよい。この場合、表示制御部77は、複数の設計インプラント画像から所望の設計インプラント画像を選択するための操作画面を表示部18に表示させてもよい。その後、表示制御部77は、操作部19を介して施術者が選択した一の設計インプラント画像を表示させ、他の設計インプラント画像の表示を中止する。表示制御部77がこのように動作することで、複数の位置及び角度の候補がある場合に、施術者は所望の位置及び角度に対応する設計インプラント画像を見ながら施術することができる。
【0054】
操作受付部78は、操作部19から操作内容を示すデータを取得する。操作受付部78は、取得したデータに基づいて特定した操作の内容をデータ作成部79に通知する。操作受付部78は、データ作成部79が更新設計インプラント画像の候補を作成済である場合に、複数の更新設計インプラント画像から所望の更新設計インプラント画像を選択するための操作の内容をデータ作成部79に通知する。
【0055】
データ作成部79は、口腔画像データにおけるドリル35の位置及び角度の少なくともいずれかと、設計データ記憶部76から読み出された初期設計データが示す設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なるか否かを判定する。データ作成部79は、所定の関係と異なると判定した場合に、初期設計データが示す設計インプラント画像の位置及び角度とドリル35の位置及び角度との関係に基づいて、初期設計データにおける設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成する。所定の関係は、ドリル35の位置及び角度と、設計インプラント画像の位置及び角度との差が所定の範囲内であるという関係である。所定の範囲は、例えば、位置の差が0.5mm以内であり、角度の差が5°以下の範囲である。
【0056】
データ作成部79は、ドリル35の歯肉への接触位置と設計インプラント画像の歯肉の表面における位置とが異なっている場合、設計インプラント画像の後端の位置が接触位置に近づくように設計インプラント画像の角度を更新した更新設計データを作成する。データ作成部79は、例えば、更新前の設計インプラント画像の方向と同じ方向で、位置がずれた新たな設計インプラント画像の設計データを作成する。
【0057】
データ作成部79は、更新後の設計インプラント画像の少なくとも一部が、予め設定された要回避領域に重なる場合には更新設計データを作成せず、更新後の設計インプラント画像の少なくとも一部が、予め設定された要回避領域に重ならないことを条件として、更新設計データを作成してもよい。要回避領域は、例えば神経が通っている領域、又は骨が弱い領域として、施術者又は設計データの作成者により予め設定された領域である。
【0058】
データ作成部79は、ドリル35の歯肉への挿入角度と設計インプラント画像の角度とが異なっている場合、予め設定された要回避領域に設計インプラント画像が重ならない範囲で設計インプラント画像の角度が挿入角度に近づくように設計インプラント画像の角度を更新した更新設計データを作成してもよい。データ作成部79は、例えば
図7(e)に示したように、当初表示されていた設計インプラント画像51と後端の位置が同じで方向が異なる更新設計インプラント画像55を作成する。
【0059】
このようにデータ作成部79がドリル35の位置又は角度と設計インプラント画像の位置又は角度とが異なっていると判定した場合、更新後の設計インプラント画像の少なくとも一部が、予め設定された要回避領域に重なる場合に、表示制御部77に警告情報を表示させ、施術者がそのまま施術を進めることを停止できるようにしてもよい。
【0060】
表示制御部77は、データ作成部79が、表示部18に表示されている設計データと異なる更新設計データを作成した場合、更新前の設計インプラント画像が更新設計データに基づく更新設計インプラント画像に置換された施術支援画像を表示部18に表示させる。
図7(d)に示したように、表示制御部77は、更新前の設計データに対応する設計インプラント画像と更新後の設計データに対応する更新設計インプラント画像とを異なる色で表示部18に同時に表示させてもよい。
【0061】
表示制御部77は、更新設計データに基づく更新設計インプラント画像を、更新前の設計インプラント画像と異なる色で表示部18に表示させてから所定の時間が経過した後に、更新設計インプラント画像の色を更新前の設計インプラント画像と同じ色に変更してもよい。所定の時間は、施術者が更新設計インプラント画像の妥当性を確認するために要する時間として設計者又は施術者により設定された時間であり、例えば3秒である。
【0062】
表示制御部77は、更新設計データに基づく更新設計インプラント画像を、更新前の設計インプラント画像と異なる色で表示した後に、ドリル35の位置及び角度が、更新設計インプラント画像が示す位置及び角度に対応している(例えば、ほぼ一致している)ことを条件として、更新設計インプラント画像の色を更新前の設計インプラント画像と同じ色に変更してもよい。
【0063】
具体的には、表示制御部77は、更新設計インプラント画像を表示した時点では、
図7(d)に示したように、初期の設計インプラント画像51をそのままの色で表示し、設計インプラント画像51と異なる色で施術インプラント画像53を表示する。その後、表示制御部77は、
図7(e)に示すように、設計インプラント画像51を色が異なる過去設計インプラント画像54に変更し、施術インプラント画像53を色が異なる更新設計インプラント画像55に変更する。
【0064】
表示制御部77は、設計データ記憶部76が更新設計インプラント画像への変更を承認する操作を施術者から受け付けたことを条件として更新前及び更新後の設計インプラント画像の色を変更してもよい。このように表示制御部77が動作することで、施術者の意に反して設計インプラント画像の位置及び角度が切り替わってしまうことを防げる。
【0065】
なお、表示制御部77は、ドリル35の位置及び角度が、更新設計インプラント画像が示す位置及び角度に対応していない場合(例えば、所定量以上ずれている場合)、施術者が更新設計インプラント画像の位置及び角度を望んでいないと判定して、更新設計インプラント画像の表示を停止してもよい。この場合、データ作成部79は、さらに新たな更新設計インプラント画像の候補を作成し、表示制御部77が新たな更新設計インプラント画像を表示部18に表示させてもよい。このように表示制御部77が動作することで、施術者が操作部19を用いた操作をすることなく、表示された更新設計インプラント画像をそのまま使用したり、表示された更新設計インプラント画像を使用せず、他の更新設計インプラント画像を施術支援装置100に作成させたりすることができる。
【0066】
データ作成部79は、設計インプラント画像の更新位置及び更新角度の組み合わせの複数の候補に対応する複数の更新設計データを作成してもよい。この場合、データ作成部79は、更新後の設計インプラント画像の少なくとも一部が、予め設定された要回避領域に重ならない複数の候補を含む更新設計データを作成する。
【0067】
施術者が、複数の候補から所望の更新設計データを選択することができるように、表示制御部77は、複数の候補に対応する複数の更新設計インプラント画像候補を表示部18に表示させてもよい。その後、表示制御部77は、ユーザにより複数の更新設計インプラント画像候補から選択された更新設計インプラント画像候補を更新設計インプラント画像として表示部18に表示させる。データ作成部79及び表示制御部77がこのように動作することで、施術者は、想定し得る複数の位置及び角度のうち、自身が最良であると考える位置及び角度に対応する更新設計インプラント画像を見ながら施術を進めることが可能になる。
【0068】
[施術支援装置100における処理の流れ]
図9は、施術支援装置100における処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すフローチャートは、設計データ記憶部76に複数の設計インプラント画像に対応する複数の設計データが記憶されている場合の処理の流れを示している。
【0069】
まず、表示制御部77は設計データ記憶部76から設計データを読み出す(S1)。設計データ記憶部76に複数の設計データが記憶されている場合、表示制御部77は、複数の設計データに対応する複数の設計インプラント画像から、施術者が使用する設計インプラント画像を選択するための画面を表示部18に表示させる(S2)。表示制御部77は、操作部19を介して施術者が選択した設計インプラント画像を口腔内の画像に重ねた施術支援画像を表示する(S3)。
【0070】
施術者が施術をしている間、データ作成部79は、ドリル35の位置及び角度と設計インプラント画像の位置及び角度とのずれ量が閾値以上であるか否かを所定の時間間隔で判定する(S4)。データ作成部79は、ずれ量が閾値未満であると判定した場合(S4においてNO)、S4の処理を繰り返す。データ作成部79は、ずれ量が閾値以上であると判定した場合(S4においてYES)、複数の更新設計インプラント画像の候補を作成する(S5)。
【0071】
表示制御部77は、複数の更新設計インプラント画像の候補から所望の更新設計インプラント画像の候補を選択するための画面を表示部18に表示させる(S6)。表示制御部77は、一の更新設計インプラント画像の候補が選択されると、選択された更新設計インプラント画像を含む更新施術支援画像を表示部18に表示させる(S7)。施術支援装置100は、操作受付部78が、施術支援を終了するための操作を受け付けるまでの間、S4からS7までの処理を繰り返す。
【0072】
[施術支援システムSによる効果]
以上説明したように、施術支援システムSにおける施術支援装置100は、口腔画像データにおけるドリル35の位置及び角度の少なくともいずれかと、初期設計データが示す設計インプラント画像の位置及び角度の少なくともいずれかと、の関係が所定の関係と異なる場合に、初期設計データが示す設計インプラント画像の位置及び角度とドリル35の位置及び角度との関係に基づいて、初期設計データにおける設計インプラント画像の位置及び角度を更新した更新設計データを作成するデータ作成部79を有する。
【0073】
データ作成部79がこのように動作することで、施術者が設計インプラント画像を見ながらインプラントの施術をしている間に、インプラントの位置又は角度を変更する必要が生じた場合に、施術支援画像を利用した施術を中止することなく、新たな施術支援画像を用いて施術を継続することができる。したがって、施術の質を向上させることができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0075】
11 基準マーカ
12 CT装置
13 第1位置マーカ
14 第1撮像装置
15 ハンドピース
16 第2位置マーカ
17 第2撮像装置
18 表示部
19 操作部
21 固定部
22 支持部
23 マーカ部
24 連結部
25 第1支持部
26 第1ヒンジ部
27 第2支持部
28 第2ヒンジ部
29 第3支持部
30 赤外線マーカ
31 本体部
32 持手部
33 赤外線マーカ
34 先端部
35 ドリル
51 設計インプラント画像
52 施術インプラント画像
53 施術インプラント画像
54 過去設計インプラント画像
55 更新設計インプラント画像
71 CT画像記憶部
72 3次元処理部
73 3次元モデル記憶部
74 位置特定部
75 位置合わせ部
76 設計データ記憶部
77 表示制御部
78 操作受付部
79 データ作成部
100 施術支援装置