(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054020
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A61C 17/22 20060101AFI20240409BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61C17/22 E
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160590
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 郁美
(72)【発明者】
【氏名】和田 行紀
(72)【発明者】
【氏名】草野 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮下 凌
(72)【発明者】
【氏名】大西 彩月
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB01
3B202CA05
3B202DB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着を抑制し、透通った外観が維持される歯ブラシを提供する。
【解決手段】本発明に係る歯ブラシ1は、毛束4が植設されるヘッド部2と、ヘッド部2に連設されたハンドル体6とを備える歯ブラシであって、ハンドル体6は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部9と、二次樹脂により芯材部9の上に成形される光透過性の被覆部10とから構成され、芯材部9の被覆部10が成形される表面に、凹凸模様90が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束が植設されるヘッド部と、該ヘッド部に連設されたハンドル体とを備える歯ブラシであって、
前記ハンドル体は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部と、二次樹脂により前記芯材部の上に成形される光透過性の被覆部とから構成され、
前記芯材部の前記被覆部が成形される表面に、凹凸模様が形成されていることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記一次樹脂と前記二次樹脂とは互いに低密着な樹脂である、請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記凹凸模様の凹凸の最大深さ(Sz)が3~50μmである、請求項1又は2記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記凹凸模様は、シボ加工面である、請求項3記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記凹凸模様は、前記芯材部の前記被覆部が成形される表面全周に形成される、請求項4記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記被覆部は、全光線透過率が40%以上である、請求項1又は2記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記被覆部は、厚みが1mm以上である、請求項1又は2記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光が透過する樹脂を二次樹脂として用いる二色成形で形成されるハンドルを備える歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれが着色樹脂、及び透明樹脂又は半透明樹脂、のいずれかである一次樹脂と二次樹脂との二色成形でハンドルを形成する歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
ところで、二色成形を行うと、一次樹脂と二次樹脂との間では、部分的な密着が発生し易い。特に、光を透過しない一次樹脂と、光を透過する二次樹脂とを用いた二色成形の場合、その密着した部分が混濁した色むらとなって現れ、見栄えを損ねるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを鑑み、本発明は、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着を抑制し、透通った状態が維持され、デザイン性に優れた見栄えのよい歯ブラシを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯ブラシは、毛束が植設されるヘッド部と、該ヘッド部に連設されたハンドル体とを備える歯ブラシであって、前記ハンドル体は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部と、二次樹脂により前記芯材部の上に成形される光透過性の被覆部とから構成され、前記芯材部の前記被覆部が成形される表面に、凹凸模様が形成されている。
【0007】
この構成によれば、芯材部の表面に凹凸模様が形成されていることで、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着が抑制される。その結果、ハンドル体に現れる、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着による色むらが低減され、透通った状態が維持され、デザイン性に優れた見栄えのよい歯ブラシとなる。
【0008】
また、前記一次樹脂と前記二次樹脂とは互いに低密着な樹脂であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、低密着な樹脂である、一次樹脂と二次樹脂とを用いてハンドル体を構成することで、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着の発生を防止し、歯ブラシのハンドル体に現れる色むらを抑制することができる。
【0010】
また、前記凹凸模様の凹凸の最大深さ(Sz)が3~50μmであることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、芯材部に形成される凹凸模様の凹凸の深さが3~50μmの範囲内であると、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着による色むらの低減に好適である。
【0012】
また、前記凹凸模様は、シボ加工面であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、凹凸模様がシボ加工面で形成されると、一次樹脂と二次樹脂との密着が抑制され、色むらが現れ難くなる効果がより得られる。
【0014】
また、前記凹凸模様は、前記芯材部の前記被覆部が成形される表面全周に形成されることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着を抑制する凹凸模様が芯材部の被覆部が成形される表面全周に形成されることで、ハンドル体の全周には、透通った被覆部が成形される。
【0016】
また、前記被覆部は、全光線透過率が40%以上であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、被覆部の全光線透過率が40%以上であると、ハンドル体は、芯材部まで見透かすことが可能な好適な被覆部が芯材部の上に成形される。
【0018】
また、前記被覆部は、厚みが1mm以上であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、被覆部の厚みが1mm以上であると、芯材部の上において、被覆部の成形が容易となる。
【発明の効果】
【0020】
以上のことから、本発明は、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着を抑制し、透通った状態が維持され、デザイン性に優れた見栄えのよい歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る歯ブラシを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る歯ブラシを示す斜視図であり、
図2は、
図1で示した歯ブラシの局部拡大図である。
【0023】
本発明に係る歯ブラシ1は、
図1に示すようにヘッド部2に複数の植毛穴20を有する植毛台5を有し、各植毛穴20に毛束4を植設したものである。本実施形態の歯ブラシ1は、先端側のヘッド部2と、基端側のハンドル体6とを備える手動の歯ブラシである。ハンドル体6は、ネック部7とハンドル部8とから構成されており、ネック部7は、ヘッド部2の後端側に連設される。
【0024】
ハンドル体6の少なくとも一部は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部9と、二次樹脂により芯材部9の上に成形される光透過性の被覆部10とから構成される。本発明に係る歯ブラシ1において、芯材部9と光透過性の被覆部10とは、二色成形により形成される。
【0025】
本発明において、「光透過性」とは、可視光の透過を認めることができることを意味する。また、可視光を透過しない物質(例えば、ラメ、顔料など)を少量混合した樹脂であっても、可視光を透過することができれば光透過性に該当する。
【0026】
芯材部9は、ポリエチレンテレフタレートに限られず、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、6-ナイロン、6,6-ナイロン等の一次樹脂により構成され、その色について特に限定はない。また、芯材部9は、ハンドル体6を構成するハンドル部8の一部又は全部、ネック部7の一部又は全部、ハンドル部8及びネック部7それぞれの一部又は全部に形成されていてもよい。
【0027】
芯材部9を構成する一次樹脂と、光透過性の被覆部10を構成する二次樹脂とは、互いに低密着な樹脂である。
【0028】
本発明において、「互いに低密着な樹脂」とは、混ざり合うことなく、互いに密着し難い(低接着/低溶着な)樹脂を指している。例えば、一次樹脂がポリアセタール(polyacetal,POM)、ポリアミド(polyamide,PA)、もしくはポリプロピレン(polypropylene,PP)等からなる結晶化樹脂であって、二次樹脂は、同じ結晶化樹脂、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene,ABS)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)もしくはポリメチルメタクリレート(Polymethyl methacrylate,PMMA)等からなる非結晶化樹脂のいずれかである場合互いに密着しにくい性質であるため、互いに低密着な樹脂に該当する。
【0029】
芯材部9の被覆部10が成形される表面には、
図2のように、凹凸模様90が形成される。凹凸模様90は、凹凸の最大深さ(Sz)が3~50μmの範囲内の模様である。そのうち、凹凸模様90は、シボ加工で形成されたシボ加工面が好ましく、芯材部9の被覆部10が成形される表面全周に形成されることがより好ましい。
【0030】
凹凸模様90が凹凸の最大深さ(Sz)が3~50μmの範囲内であると、一次樹脂からなる芯材部9と二次樹脂からなる被覆部10との部分的な密着が緩和されるとともに、歯ブラシ1の透通った状態が維持され易い。特に、凹凸の最大深さ(Sz)が3μm未満では、一次樹脂と二次樹脂との部分的な密着の低減効果が弱く、凹凸の最大深さ(Sz)が50μm以上では、凹凸が目立ち、歯ブラシ1の見栄えが損なう。
【0031】
また、凹凸模様90は、樹脂成形の際に空気が巻き込まれて発生するボイドを抑制することができる。これにより、二色成形において、芯材部9を成形した一次樹脂の上に、光透過性の被覆部10を成形する二次樹脂を射出した際、凹凸模様90がボイドの発生が低減されて樹脂の成形が安定され、透通った状態を維持することができる。
【0032】
被覆部10は、例えばポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジェンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、もしくはポリプロピレン(PP)等の光透過性を有する二次樹脂により構成されている。
【0033】
被覆部10の全光線透過率は40%以上である。全光線透過率は、JIS K7375:2008に記載の方法により測定することができる。これにより、ハンドル体6は、芯材部9の表面まで見透かすことが可能な好適な被覆部10を芯材部9の上に成形することができる。
【0034】
また、被覆部10は、表面から芯材部9に接するまでの厚さT10が1mm以上ある。歯ブラシ1は、二次樹脂により成形された被覆部10の厚さT10が1mm以上あると、二次樹脂による成形が容易となり、透通った状態を維持することができる。また、被覆部10の厚さT10が1mm以上あると、その分、ハンドル部8が太くなり、歯ブラシ1の強度及び把持性を向上することができる。
【0035】
ヘッド部2は、ハンドル体6を構成する芯材部9と同一の樹脂で一体成形されていればよい。
【0036】
ヘッド部2の厚さ(台厚)T2(図示されていない)については、歯ブラシの用途に応じて調整すればよく、特に限定はない。例えば、薄型のヘッド部2の場合、T2が4.0mm以下、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下の薄型の植毛台5からなるヘッドが挙げられる。
【0037】
植毛台5の毛束4が突設される腹側の植毛面21には、断面視略円形の有底の植毛穴20が複数形成されている。植毛穴20の開口径、深さ、個数、配列形態などは本例に何ら限定されず、毛束一つあたりのフィラメントの本数や材質など、種々の条件に応じて適切な範囲から選択される。
【0038】
植毛穴20の深さは、植毛台5の厚さT2に応じて適宜決められる。植毛穴20は、基本的に断面円形のストレート状の穴であればよい。
【0039】
各植毛穴20には、それぞれ複数本のフィラメントを束ねて二つ折りにした毛束4が植設される。
【0040】
また、本発明に係る歯ブラシ1の長さ、ハンドル体6を構成するネック部7及びハンドル部8の長さ等については、歯ブラシの用途に応じて適宜決定すればよく、特に限定はない。
【0041】
なお、
図1、2では、ハンドル体6を構成するハンドル部8に芯材部9及び光透過性の被覆部10が設けられているが、例えば、ネック部7の基端側の一部又は全体を芯材部9及び光透過性の被覆部10で形成してもよいし、前記ネック部7の一部又は全体のみを芯材部9及び光透過性の被覆部10で形成してもよい。
【0042】
前記ヘッド部2に設けた植毛台5の植毛穴20には公知の方法で、毛束4を植毛すればよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、こうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0044】
ハンドル体6が、一次樹脂により成形される芯材部9と、二次樹脂により成形される被覆部10とから構成される歯ブラシ1であって、凹凸の深さ(Sz)が3.0μm以上の凹凸模様90を形成する実施例1~3と、凹凸の深さ(Sz)が3.0μm未満の凹凸模様90を形成する比較例1~3と、を作製した。
【0045】
作製された実施例1~3と比較例1~4とを目視で確認すると、表1のような結果となった。
【0046】
【0047】
実施例1~3は、表面に凹凸模様が形成された芯材部9と、光透過性の被覆部10との間に、部分的な密着による色むらが現れていなかった。その外観も、芯材部9の表面まで見透かすことができる程度に、透通った状態を目視することができた。また、樹脂成形時に発生し易いボイドも、成形された光透過性の被覆部10で目視することができなかった。
【0048】
これに対して、比較例1~4は、芯材部9と、光透過性の被覆部10との間に、部分的な密着による色むらが現れ、透通った状態を目視することができなかった。