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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054021
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/02 20060101AFI20240409BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 66/00 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20240409BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20240409BHJP
   F16D 125/40 20120101ALN20240409BHJP
【FI】
F16D65/02 A
B60T13/74 G
F16D66/00 Z
F16D65/18
F16D65/02 E
F16D65/02 F
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160591
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北原 康利
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB51
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048HH66
3D048RR25
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA60
3J058BA61
3J058CC15
3J058CC22
3J058CC62
3J058CC83
3J058DB27
3J058FA06
3J058FA07
(57)【要約】
【課題】安価な電動制動装置を提供する。
【解決手段】電動制動装置(1)は、摩擦部材(40)の押圧荷重の反力が回転部(31)を介して入力され、直動変換機構(30)を回転部(31)の回転軸方向に投影した領域である投影領域(R)の外側に延出するレバー部材(70)と、レバー部材(70)の投影領域(R)の外側に延出する部分と当接することでレバー部材(70)に入力された反力を検出する荷重センサ(80)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転運動を直動変換機構の回転部に伝達し、前記回転部の回転運動を前記直動変換機構の直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に応じて摩擦部材を車輪と共に回転する回転体に押圧することで前記車輪に対して制動力を発生する電動制動装置であって、
前記摩擦部材の押圧荷重の反力が前記回転部を介して入力され、前記直動変換機構を前記回転部の回転軸方向に投影した領域である投影領域の外側に延出する入力部材と、
前記入力部材の前記投影領域の外側に延出する部分と当接することで前記入力部材に入力された前記反力を検出する荷重センサと、を備える電動制動装置。
【請求項2】
前記入力部材は、
前記反力が入力され、前記投影領域内の部分である基部と、
前記基部から部分的に前記投影領域の外側に突出する突出部と、を有し、
前記荷重センサは、前記突出部と当接することで前記入力部材に入力された前記反力を検出する、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記突出部は、前記回転軸方向において、前記基部よりも前記摩擦部材に近い位置となるよう構成される、請求項2に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記電動制動装置は、前記直動変換機構を収容するキャリパを更に備え、
前記入力部材は、前記キャリパに支持され、且つ前記キャリパに支持されている部分が支点として、前記反力が入力される部分が力点として、前記荷重センサと当接する部分が作用点として機能する、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項5】
前記入力部材は、前記回転軸方向と直交する方向において、前記入力部材における前記反力が入力される部分が、前記キャリパに支持されている部分と、前記荷重センサと当接する部分との間に位置するように構成される、請求項4に記載の電動制動装置。
【請求項6】
前記電動制動装置は、
前記直動変換機構を収容するキャリパと、
前記キャリパに支持され、前記回転軸方向と直交する方向において前記荷重センサとは異なる位置に配置される支持部材を更に備え、
前記入力部材は、前記支持部材と、前記キャリパにより支持されている前記荷重センサとにより前記キャリパ内において支持されており、
前記支持部材は、前記荷重センサと同等の剛性である、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項7】
前記電動制動装置は、
前記回転軸方向において前記荷重センサを挟んで前記入力部材と反対側に配置され、前記電気モータの駆動を制御する制御部と、を更に備え、
前記荷重センサは、前記回転軸方向において前記制御部側に設けられ、前記荷重センサと前記制御部とを電気的に接続する端子を有する、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項8】
前記摩擦部材は、回転体を間に該回転体の軸方向に対向して配置される第1摩擦部材と第2摩擦部材とを備え、
前記電動制動装置は、前記第1摩擦部材と前記第2摩擦部材を間に挟んで、前記回転体の外周を跨ぐ形状を有し、前記直動変換機構を収容するキャリパを更に備え、
前記入力部材の前記荷重センサと当接する部分、又は前記荷重センサの少なくとも一方と、前記キャリパの前記回転体の外周を跨ぐ部分と、は同等の剛性である、請求項1に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、電気モータの駆動によりブレーキパッドが車輪と共に回転するブレーキディスクに押し付けられることで、車輪に対して制動力を与えるディスクブレーキ装置が知られている。ディスクブレーキ装置は、ブレーキパッドをブレーキディスクに対して押し付けたときにブレーキパッドに生じる押圧荷重の反力を検出する検出装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2020/229989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検出装置には、荷重を検出するセンサが備えられる。検出装置に備えられるセンサは輪状のセンサであり、中心の貫通孔にはブレーキパッドに生じる押圧荷重の反力が伝達される軸部材が挿通される。輪状のセンサは、軸部材を介してブレーキパッドに生じる押圧荷重の反力を検出する。
【0005】
しかしながら、このような輪状のセンサには、軸部材から伝達される荷重を検出するため、センサの円周方向に沿って反力を検出するための検出部を複数設ける必要が有る。そのため、センサのコストが高くなり、ディスクブレーキ装置のコストが増大するという問題点がある。
【0006】
本発明の一態様は、安価な電動制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電動制動装置は、電気モータの回転運動を直動変換機構の回転部に伝達し、前記回転部の回転運動を前記直動変換機構の直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に応じて摩擦部材を車輪と共に回転する回転体に押圧することで前記車輪に対して制動力を発生する電動制動装置であって、前記摩擦部材の押圧荷重の反力が前記回転部を介して入力され、前記直動変換機構を前記回転部の回転軸方向に投影した領域である投影領域の外側に延出する入力部材と、前記入力部材の前記投影領域の外側に延出する部分と当接することで前記入力部材に入力された前記反力を検出する荷重センサと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、安価な電動制動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る電動制動装置の概要を示す模式的な断面図である。
図2図1に示す破線部分を拡大した模式的な断面図である。
図3図1に示すレバー部材をX2方向から見た模式図である。
図4】摩擦部材の押圧荷重の反力が作用したときに生じるキャリパの撓みについて説明する図である。
図5】本発明の実施形態2に係る電動制動装置の要部の概要を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1図4を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、図1などに示すようなX(X1-X2)方向、Y(Y1-Y2)方向、及びZ(Z1-Z2)方向という座標軸を規定して説明する。
【0011】
〔電動制動装置の概要〕
図1を参照して、電動制動装置1の概要について説明する。図1は、電動制動装置1の概要を示す模式的な断面図である。電動制動装置1が適用される装置の例としては、EMB(Electro Mechanical Brake)と呼ばれる電子機械式ブレーキが挙げられる。図1に示すように、電動制動装置1は、電気モータ10と、直動変換機構30と、摩擦部材40と、レバー部材70と、荷重センサ80と、を備えている。また、電動制動装置1は、伝達機構20と、キャリパ50と、ピストン60と、スラストベアリング61と、付勢部85と、ECU(Electronic Control Unit)90と、を更に備えてもよい。
【0012】
電気モータ10は、電動制動装置1の動力源である。電気モータ10は、ECU90と電気的に接続され、ECU90の制御に基づいて駆動してもよい。電気モータ10は、キャリパ50の外部において、キャリパ50と隣接するように配置されている。電気モータ10は、伝達機構20のギヤ22Aと噛合する平歯車が設けられている回転軸11を有している。電気モータ10が駆動すると、回転軸11が回転し、回転軸11と接続する伝達機構20へ回転運動が伝達される。
【0013】
伝達機構20は、電気モータ10の回転運動を伝達する機構である。伝達機構20は、キャリパ50の外部に配置されている。伝達機構20の筐体21の内部には、電気モータ10からの回転運動が伝達される1つ以上ギヤ22が設けられている。伝達機構20は、1つ以上のギヤ22を介して、電気モータ10の回転運動を直動変換機構30の回転部31に伝達する。図1に示した例では、伝達機構20は3つのギヤ22A~Cを有している。伝達機構20は、電気モータ10から伝達された回転運動を減速する減速機構としてもよい。但し、伝達機構20は、電動制動装置1の必須の構成ではない。
【0014】
直動変換機構30は、電気モータ10の回転運動を直線運動に変換する機構である。直動変換機構30は、電気モータ10の回転運動が伝達される回転部31と、回転部31の回転運動を直線運動に変換する直動部35と、を有している。
【0015】
直動変換機構30の回転部31は、回転軸部32と、フランジ部33と、有している。回転軸部32は、X方向を回転中心Aとする。本実施形態において、X方向は回転部31の回転軸方向である。フランジ部33は、回転軸部32の摩擦部材40側の第1端部32Aと、回転軸部32の伝達機構20側の第2端部32Bと、の間に設けられている。フランジ部33は、回転軸部32の径方向において、回転軸部32の外方向に向かって回転軸部32から延出する。回転軸部32の第2端部32Bには、平歯車が設けられており、伝達機構20のギヤ22Cの内歯と噛合する。回転軸部32には、フランジ部33から回転軸部32の第1端部32Aに至る領域に、雄ネジ構造34が形成されている。
【0016】
直動変換機構30の直動部35は、回転部31が挿入される挿通孔37を有する筒状の部材である。挿通孔37の内周面には、回転部31の雄ネジ構造34が螺合する雌ネジ構造36が形成されている。雄ネジ構造34と、雌ネジ構造36とが螺合することにより、回転部31の回転運動が直動部35における直線運動に変換される。より詳細には、回転部31に電気モータ10の第1回転方向の回転運動が伝達すると直動部35はX1方向に直動し、回転部31に電気モータ10の第1回転方向とは反対の第2回転方向の回転運動が伝達するとX2方向に直動する。直動部35の摩擦部材40側の先端に設けられているピストン60は、直動部35の直線運動と連動する。
【0017】
なお、直動部35に雄ネジ構造を設け、回転部31に雌ネジ構造を設ける構成としてもよい。直動変換機構30が備えるネジ構造は、回転運動を直線運動に変換する構成の一例である。また、直動部35は、回転部31の回転運動によりシリンダ部57内で直動部35が回転運動することを防止する回り止め機構を備えていてもよい。
【0018】
摩擦部材40は、直動部35の直線運動に応じて車輪と共に回転するディスクロータDRを押圧することで車輪に対して制動力を発生させる。ディスクロータDRは、回転体の一例である。摩擦部材40は、ディスクロータDRを間にディスクロータDRの軸方向(X方向)に対向して配置される第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とを備える。第1摩擦部材41は、直動変換機構30側に配置される。第2摩擦部材42は、ディスクロータDRを挟んで第1摩擦部材41とは反対側に配置される。第1摩擦部材41は、取付板43を介して、ピストン60に取り付けられる。第2摩擦部材42は、取付板44を介してキャリパ50に取り付けられる。
【0019】
第1摩擦部材41は、ピストン60の直線運動と連動する。即ち、第1摩擦部材41は、直動部35の直線運動と連動することによりディスクロータDRを押圧して、車輪に対して制動力を発生させる部材である。第1摩擦部材41がディスクロータDRに向かう方向であるX1方向に直動すると、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とによりディスクロータDRが挟み込まれ、ディスクロータDRが押圧される。第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42によりディスクロータDRが押圧されると、第1摩擦部材41とディスクロータDRとの間、及び第2摩擦部材42とディスクロータDRとの間には摩擦力が生じる。この摩擦力は、ディスクロータDRの回転方向とは反対方向の力として車輪に対して作用する。これにより、摩擦部材40は、車輪に対して制動力を付与する。摩擦部材40による押圧荷重が強ければ、ディスクロータDRに対する摩擦力が強くなり、車輪に対する制動力が強くなる。摩擦部材40による押圧荷重が弱ければ、ディスクロータDRに対する摩擦力が弱くなり、車輪に対する制動力が弱くなる。
【0020】
一方、第1摩擦部材41がディスクロータDRから離れる方向であるX2方向に移動すると、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42とによるディスクロータDRの押圧が解除される。ディスクロータDRに対しては摩擦力が生じないため、摩擦部材40による車輪に対する制動力が消滅する。
【0021】
キャリパ50は、電動制動装置1を構成する部材の一部を収容、又は支持する部材である。キャリパ50は、第1摩擦部材41と第2摩擦部材42を間に挟んで、ディスクロータDRの外周を跨ぐ形状を有している。
【0022】
キャリパ50は、基壁51と、第1延出壁52と、第2延出壁55と、第3延出壁56と、シリンダ部57とを有する。基壁51は、X方向に沿って設けられている。第1延出壁52は、基壁51から延出し、Y方向に沿う壁である。より詳細には、基壁51のX2方向側の端部からY2方向に延出するように形成されている。なお、第1延出壁52は、基壁51のX2方向側の端部以外の部分から延出する構成としてもよい。第1延出壁52には、開口53及び開口54が形成されている。開口53は、キャリパ50内部に位置する荷重センサ80と、キャリパ50外部に位置するECU90とを接続するために形成された開口である。開口54は、キャリパ50内部の直動変換機構30と、キャリパ50外部の伝達機構20と接続するための開口である。
【0023】
キャリパ50の第2延出壁55は、第1延出壁52から延出し、X方向に沿う壁である。より詳細には、第2延出壁55は、第1延出壁52のY2方向側の端部からX1方向に延出する壁である。なお、第2延出壁55は、第1延出壁52のY2方向側の端部以外の部分から延出する構成としてもよい。キャリパ50の第3延出壁56は、第1延出壁52が延出する側とは反対側において基壁51から延出し、Y方向に沿う壁である。より詳細には、第3延出壁56は、基壁51のX1方向側の端部からY2方向に延出するように形成されている。なお、第3延出壁56は、基壁51のX1方向側の端部以外の部分から延出する構成としてもよい。第3延出壁56のX2方向側には、取付板44を介して第2摩擦部材42が取り付けられている。
【0024】
シリンダ部57は、キャリパ50に設けられている。シリンダ部57は、X方向を軸方向とする円柱状の空間を構成する部分である。キャリパ50の基壁51、第1延出壁52、及び第2延出壁55は、シリンダ部57の一部を構成する。シリンダ部57の空間内には、直動変換機構30が収容される。また、シリンダ部57の空間内には、ピストン60が収容されている。ピストン60は、シリンダ部57の空間内をX方向に直動する。なお、シリンダ部57は、円柱状の空間を有する別部材としてキャリパ50に設けられてもよい。
【0025】
ECU90は、電動制動装置1を制御する制御ユニットである。ECU90は、制御部の一例である。ECU90は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、及びRAM若しくはROM等のメモリを備えたコンピュータにより構成される電子制御ユニットである。ECU90は、電気モータ10を駆動させる駆動回路と、荷重センサ80が検出した荷重に関するデータを取得するための入出力インターフェースとを備えている。ECU90は、キャリパ50の外部に配置されている。ECU90は、X方向において、荷重センサ80を挟んでレバー部材70と反対側に配置されてもよい。ECU90は、電気モータ10及び荷重センサ80と電気的に接続されている。ECU90は、荷重センサ80からのデータに基づいて電気モータ10の駆動を制御してもよい。
【0026】
〔荷重センサ及びレバー部材の構成〕
図2及び図3を参照して、レバー部材70及び荷重センサ80の構成について説明する。図2は、図1に示す破線部分を拡大した模式的な断面図である。図3は、図1に示すレバー部材をX2方向から見た模式図である。
【0027】
図2に示すように、レバー部材70は、第1摩擦部材41の押圧荷重の反力(荷重)が直動変換機構30の回転部31を介して入力される入力部材である。レバー部材70は、回転部31のX方向に投影した領域である投影領域Rの外側に延出する。なお、以下の説明において、単に反力と称する場合、第1摩擦部材41の押圧荷重の反力のことを指す。レバー部材70の荷重センサ80と当接する部分は、キャリパ50のディスクロータDRの外周を跨ぐ部分と同等の剛性を有していてもよい。レバー部材70は、X方向において、回転部31のフランジ部33と、回転部31の回転軸部32の第2端部32Bとの間に配置されている。レバー部材70は、基部71と、第1突出部73と、第2突出部76と、を有している。
【0028】
図3に示すように、レバー部材70の基部71は、円盤状の部材であり、中心部に貫通孔72が形成されている。なお、基部71は円盤状の形状に限られるものではない。基部71は、レバー部材70に対して反力が入力される部分である。基部71は、投影領域Rの内側に位置する部分を有する。貫通孔72には、直動変換機構30の回転部31の回転軸部32が挿入される。貫通孔72は、回転部31の回転軸部32の外径よりも大きく、回転軸部32との間に空間を有する程度の大きさである。図2に示すように、基部71は、X方向においてレバー部材70とフランジ部33との間に配置されるスラストベアリング61と当接する。
【0029】
なお、基部71は、回転部31のフランジ部33から基部71に入力される反力が偏ってしまうことを軽減する偏荷重軽減機構と当接する構成としてもよい。偏荷重軽減機構の一例として、回転部31のフランジ部33側の面がX方向と直交する方向の面であり、且つ基部71と当接する面が曲面となっている球面受け部材が挙げられる。また、基部71は、回転部31のフランジ部33と当接する構成としてもよい。
【0030】
レバー部材70の第1突出部(突出部)73は、荷重センサ80と当接する部分である。第1突出部73は、投影領域Rの外側にて基部71から突出する部分である。第1突出部73は、基部71から部分的に投影領域Rの外側に突出する構成としてもよい。なお、レバー部材70は、第1突出部73を有さず、基部71と荷重センサ80とが当接する構成としてもよい。
【0031】
上記のように、レバー部材70の第1突出部73と荷重センサ80とが当接することにより、X方向において、基部71の周囲全方向から投影領域Rの外側に延出する構造と比較して、レバー部材70が小型化し、第1突出部73が存在しない部分には電動制動装置1の他の構成要素を配置することができる。これにより、電動制動装置1を小型化できる。
【0032】
第1突出部73は、X方向において、基部71よりも摩擦部材40に近い位置となるよう構成されてもよい。前記の構成によれば、X方向において、荷重センサ80を摩擦部材40側に近づけることができる。これにより、X方向において、電動制動装置1を小型化することができる。
【0033】
レバー部材70の第1突出部73は、第1壁74と第2壁75とを有する。第1壁74は、X方向において第1摩擦部材41を向く方向に沿って延伸する壁である。より詳細には、図2に示すように、第1壁74は、基部71の周縁部からX1方向に向かって延伸している。なお、第1壁74は、基部71の周縁部以外の部分から延伸する構成としてもよい。換言すれば、第1突出部73は基部71の周縁部以外の部分から突出する構成としてもよい。また、基部71と第1壁74との間にX方向と直交するY方向に延伸する壁が形成されていてもよい。
【0034】
図2に示すように、第1突出部73の第2壁75は、第1壁74よりも第1突出部73の先端側において、Y方向に沿って延伸する壁である。より詳細には、第2壁75は、第1壁74のX1方向側の端部からY1方向に延伸する。第2壁75には荷重センサ80が当接する。より詳細には、第2壁のX2方向側の面75Aに荷重センサ80が当接する。なお、第2壁75と、第1壁74との間に、X方向に延出する壁及びY方向に延出する壁が形成される構成としてよい。なお、第1突出部73は、第2壁75を有さず、第1壁74が荷重センサ80と当接する構成としてもよい。
【0035】
レバー部材70の第1突出部73は、キャリパ50に支持された付勢部85によりX2方向に付勢されている。より詳細には、第1突出部73は、付勢部85により荷重センサ80と当接する方向に付勢されている。付勢部85は、第1突出部73よりもX1方向側に設けられ、第1突出部73のX1方向側の面75Bと当接する。これにより、安定した状態で第1突出部73を荷重センサ80に当接させることができる。
【0036】
レバー部材70の第2突出部76は、キャリパ50にて支持される部分である。第2突出部76は、投影領域Rの外側にて基部71から突出する部分である。図2及び図3に示すように、第2突出部76は、Y方向において、回転部31を挟んで第1突出部73とは反対側に位置する。第2突出部76と第1突出部73とは、Y方向において、回転部31の回転中心Aを通る同一直線上に位置するように設けられている。即ち、レバー部材70のキャリパ50に支持されている部分と、レバー部材70の荷重センサ80と当接する部分とは、X方向と直交する方向において、回転中心Aを通る同一直線上に位置するように設けられている。
【0037】
レバー部材70の第2突出部76は、第3壁77と、第4壁78とを有する。図3に示すように、第3壁77は、基部71の周縁部からX1方向に向かって延伸している。なお、第3壁77は基部71の周縁部以外の部分から延伸する構成としてもよい。換言すれば、第2突出部76は、基部71の周縁部以外の部分から突出する構成としてもよい。また、基部71と第3壁77との間にY方向に延伸する壁が形成されていてもよい。図2に示すように、第4壁78は、第3壁77のX1方向側の端部からY2方向側に延伸する。第4壁78がキャリパ50に設けられた支持部58に支持されている。なお、第4壁78と、第3壁77との間に、X方向に延出する壁及びY方向に向かう壁が形成される構成としてよい。また、レバー部材70は第2突出部76を有さず、基部71がキャリパ50に支持される構成としてもよい。
【0038】
荷重センサ80は、レバー部材70の投影領域Rの外側に延出する部分と当接することでレバー部材70に入力された反力を検出するセンサである。図2に示すように、荷重センサ80は、レバー部材70と当接する部分である当接部81を有する。荷重センサ80は、レバー部材70に入力された反力を検出する。荷重センサ80は第1突出部73と当接することでレバー部材70に入力された反力を検出する。荷重センサ80は、投影領域Rの外側に位置している。荷重センサ80は、Y方向において、回転部31を挟んで電気モータ10とは反対側に位置するように配置されている。
【0039】
また、荷重センサ80は、ECU90と電気的に接続するための端子82がX2方向側に位置するように配置されている。端子82は、X方向においてECU90側に設けられている。ECU90は、X方向において、荷重センサ80を挟んでレバー部材70と反対側に配置されており、端子82がX方向においてECU90側に設けられることで、端子82とECU90が向かい合う位置関係となり、荷重センサ80とECU90との電気的な接続を簡素化することができる。
【0040】
荷重センサ80は、キャリパ50のシリンダ部57の空間内において、キャリパ50に支持されている。なお、荷重センサ80は、キャリパ50の外部において支持される構成としてもよい。また、複数の荷重センサ80がレバー部材70と当接する構成としてもよい。また、荷重センサ80は、キャリパ50のディスクロータDRの外周を跨ぐ部分と同等の剛性を有していてもよい。
【0041】
上記の電動制動装置1によれば、電動制動装置1が荷重センサ80と当接するレバー部材70を備えることにより、投影領域R外に荷重センサ80を配置することができる。また、荷重センサ80は、レバー部材70と当接する部分におる反力を検出すればよい。そのため、輪状の荷重センサ80を採用する必要がなく、検出部の少ない安価な荷重センサ80を電動制動装置1に対して採用することができる。これにより、安価な電動制動装置1を提供することができる。また、レバー部材70と当接する構成とすることで、荷重センサ80の形状を自由に選択することができる。これにより、使用する荷重センサ80の自由度を高くすることができる。
【0042】
〔反力を検出するまでの流れ〕
図1を参照して、電動制動装置1の荷重センサ80が反力を検出するまでの流れについて説明する。電気モータ10が駆動すると、電気モータ10の回転運動が伝達機構20を介して直動変換機構30に伝達される。直動変換機構30に電気モータ10の第1回転方向の回転運動が伝達されることで、ピストン60と連動して第1摩擦部材41がX1方向に直動する。第1摩擦部材41がX1方向に直動すると、第2摩擦部材42と挟み込むようにして車輪のディスクロータDRを押圧する。車輪のディスクロータDRを押圧すると、第1摩擦部材41には押圧荷重の反力が発生する。
【0043】
反力は、取付板43及びピストン60を経由して、直動変換機構30に伝達される。直動変換機構30において、直動部35に伝達された反力が回転部31に伝達される。回転部31に伝達された反力は、回転部31を介してレバー部材70に入力される。より詳細には、反力は、回転部31のフランジ部33からスラストベアリング61を介してレバー部材70の基部71に入力される。
【0044】
レバー部材70の基部71に反力が入力されると、レバー部材70には、第2突出部76の第4壁78を支点としてX2方向側に傾く方向にかかる力が作用する。レバー部材70に対してX2方向側に傾く力が発生すると、レバー部材70を介して荷重センサ80に反力が入力される。より詳細には、レバー部材70の第1突出部73の第2壁75を介して荷重センサ80に反力が入力される。即ち、レバー部材70は、キャリパ50に支持されている部分を支点として、反力が入力される部分が力点として、荷重センサ80と当接する部分が作用点として機能するように構成されている。
【0045】
上記構成によれば、梃子の原理を適用することで、荷重センサ80により検出される反力の大きさを変更することができる。そのため、荷重センサ80により検出される反力の大きさに応じて、荷重センサ80の種類を適宜選択することができる。これにより、採用される荷重センサ80の種類に自由度が生まれる。
【0046】
また、Y方向において、レバー部材70の反力が入力される部分は、キャリパ50に支持されている部分と、荷重センサ80と当接する部分との間に位置するようにしてもよい。より詳細には、Y方向において、レバー部材70の基部71に対して反力が入力される部分は、キャリパ50のシリンダ部57に支持されている第2突出部76の第4壁78と、荷重センサ80と当接する第1突出壁の第2壁75との間に位置するようにしてもよい。即ち、レバー部材70において、支点として機能する部分と作用点として機能する部分との間の距離が、支点として機能する部分と力点として作用する部分との間の距離よりも長くなる。そのため、荷重センサ80により検出される反力の大きさを、レバー部材70に入力される反力の大きさよりも小さくすることができる。従って、検出することができる荷重の大きさが小さい荷重センサ80を電動制動装置1に採用することができる。これにより、安価な電動制動装置1を提供することができる。
【0047】
〔反力を受けたときのキャリパの撓み〕
図4を参照して、反力を受けた時のキャリパ50の撓みと、レバー部材70との関係について説明する。図4は、反力が作用したときに生じるキャリパ50の撓みについて説明する図である。なお、図4において、図面の見易さを考慮し、投影領域R及び回転部31の回転中心Aについては記載を省略している。
【0048】
図4に示すように、第1摩擦部材41の押圧荷重の反力RF1が生じると、ピストン60及び直動変換機構30を介して、キャリパ50の基壁51、第1延出壁52及び第2延出壁55に対して反力RF1が伝達される。第2摩擦部材42の押圧荷重の反力RF2が生じると、取付板44を介してキャリパ50の第3延出壁56に反力RF2が伝達される。
【0049】
キャリパ50に反力RF1が伝達されると、キャリパ50に対して回転モーメントMが作用する。より詳細には、基壁51に対して、基壁51のX1方向側の端部を中心とする回転モーメントMが作用する。キャリパ50に回転モーメントMが作用すると、キャリパ50はY1方向側に撓む。
【0050】
キャリパ50がY1方向側に撓むと、キャリパ50の撓みによりレバー部材70及び荷重センサ80の少なくとも一方に変形が生じる。ここで、レバー部材70の荷重センサ80と当接する部分、又は荷重センサ80の少なくとも一方と、キャリパ50のディスクロータDRの外周を跨ぐ部分と、は同等の剛性である構成とすることにより、キャリパ50のディスクロータDRの外周を跨ぐ形状の部分(キャリパの梁の部分)の撓みの変形量と、キャリパ50の撓みにより生じる荷重センサ80に当接するレバー部材70の変形量又は荷重センサ80の変形量とを略同等にすることができる。そのため、雄ネジ構造34と雌ネジ構造36との当接状態、又はスラストベアリング61とレバー部材70との当接状態が、車輪に対して制動力をかけているか否かにより変わることがない。これにより、ネジ構造34,36、又はスラストベアリング61への偏荷重が抑制され、電動制動装置1の耐久性が向上する。
【0051】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図5を参照して以下に説明する。図5は、本発明の実施形態2に係る電動制動装置1Aの要部の概要を示す模式図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。実施形態2における電動制動装置1Aは、実施形態1の電動制動装置1と比較して、入力部材79が荷重センサ80A及び支持部材95により、キャリパ50内に支持されている点で異なる。即ち、電動制動装置1Aの入力部材79には梃子の原理が適用されていない。
【0052】
電動制動装置1Aは、入力部材79を支持する支持部材95を備えている。支持部材95は、キャリパ50に支持されている。より詳細には、支持部材95は、キャリパ50の第1延出壁52に支持されている。支持部材95は、X方向と直交する方向において荷重センサ80とは異なる位置に配置される。より詳細には、支持部材95は、Y方向において回転部31を挟んで荷重センサ80Aとは反対側に配置される。支持部材95は、荷重センサ80Aと同等の剛性を有する部材である。
【0053】
電動制動装置1Aは、反力が回転部31を介して入力される平板状の入力部材79を備えている。入力部材79は、支持部材95と、荷重センサ80Aとによりキャリパ50内において支持されている。荷重センサ80Aは、入力部材79と当接する部分である当接部81Aを有する。当接部81Aは、投影領域Rの外側に位置する。入力部材79に入力された反力は、支持部材95と荷重センサ80Aとに分散される。そのため、検出することができる荷重の大きさが小さい荷重センサ80Aを電動制動装置1Aに採用することができる。なお、入力部材79は、平板の形状に限られるものではない。
【0054】
上記の構成によれば、支持部材95の剛性を荷重センサ80Aの剛性と同等に構成することにより、入力部材79に反力が入力されたとしても、入力部材79と荷重センサ80Aとが接触する角度の変化を生じ難くすることができる。これにより、荷重センサ80Aによる反力の検出精度が低下する虞を軽減することができる。
【0055】
〔その他の実施形態〕
上述した実施形態では、摩擦部材40の第1摩擦部材41が直動変換機構30の直動部35と連動する構成について説明したが、これに限られるものではない。摩擦部材40の第2摩擦部材42が、直動変換機構の直動部と連動する構成としてもよい。即ち、第1摩擦部材41及び第2摩擦部材42が、共に直動する構成としてもよい。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A 電動制動装置
10 電気モータ
20 伝達機構
30 直動変換機構
31 回転部
35 直動部
40 摩擦部材
50 キャリパ
70 レバー部材(入力部材)
71 基部
73 第1突出部
76 第2突出部
80、80A 荷重センサ

図1
図2
図3
図4
図5