(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054023
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/70 20060101AFI20240409BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240409BHJP
【FI】
B60N2/70
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160594
(22)【出願日】2022-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】井戸 教雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恵一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】着座乗員Pの動きに伴って着座乗員Pの着座姿勢を補正する。
【解決手段】着座乗員Pの臀部から大腿部を支えるシートクッション部100と、着座乗員Pの背部を支えるシートバック部300と、を備えた車両用シートSにおいて、シートフレーム構造SHの内側に構成された姿勢矯正部200と、着座乗員Pの動きに伴って姿勢矯正部200を移動可能とさせる可動部400と、を備え、姿勢矯正部200は、可動部400において車両前後方向に移動可能に係合され、姿勢矯正部200と、シートバック部300と、が可動部400により接続され、姿勢矯正部200は、シートバック部300に向かう方向に付勢されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の臀部から大腿部を支え、内部に骨格としてのシートフレーム構造を有するシートクッション部と、前記着座乗員の背部を支えるシートバック部と、が設けられた車両用シートにおいて、
前記シートフレーム構造の内側に構成され、前記着座乗員の着座姿勢を補正する姿勢矯正部と、
前記着座乗員からの前記シートクッション部あるいは前記シートバック部への圧力入力に応じて、前記姿勢矯正部を移動可能とさせる可動部と、
を備え、
前記姿勢矯正部は、前記可動部において車両前後方向に移動可能に係合され、
前記姿勢矯正部と、前記シートバック部と、が前記可動部により接続され、前記姿勢矯正部は、前記シートバック部に向かう方向に付勢されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記姿勢矯正部は、
コの字形状をなすように車幅方向両端部に補助棒が結合され、前記シートクッション部の内部車両下方側に車幅方向に延在して設けられた姿勢矯正クロスメンバと、
前記姿勢矯正クロスメンバに対して、車幅方向に延在して固定された姿勢矯正部材と、
車両後方側端は、車幅方向を軸として前記姿勢矯正クロスメンバに回転可能に係合され、車両前方側端は、車幅方向を軸として前記シートフレーム構造に回転可能に固定されている姿勢矯正ロッド部と、
を含んで構成され、
前記可動部は、
前記シートフレーム構造の内側に配設され、前記姿勢矯正クロスメンバを車両前後方向に移動可能に係合させる座位補正レール部と、
前記姿勢矯正部と前記シートバック部とを連動可能に接続する接続部と、
を含んで構成され、
前記姿勢矯正クロスメンバの車幅方向両側端は、前記座位補正レール部に係合され、前記補助棒の一方端側は、前記接続部に回転可能に固定され、前記シートバック部に向けて付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記姿勢矯正部材は、織布あるいは不織布によって車幅方向を長尺方向とした略矩形に形成され、前記姿勢矯正部材の車両下方側辺は、前記姿勢矯正クロスメンバに固定され、前記姿勢矯正部材の車幅方向両側辺は、前記補助棒に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートにおいては、運転姿勢の安定化や長時間の走行での疲れを軽減するために、座り心地をより向上させる必要がある。
また、安定して車両の操作を行うためには、着座乗員の体幹を保持させ、着座乗員の目線や手足の動きを安定させることが望ましい。
一方、着座乗員の体幹を保持するためには、車両用シートと着座乗員との間隔を狭める必要があり、窮屈に感じる場合がある。そこで、窮屈にならない程度に安定して体幹を保持し、自由度のある座り心地が求められている。
【0003】
このような要求に伴って、車両用シートの座部(シートクッション部)と車両用シートの背部(シートバック部)とを備え、シートクッションの前方部に、高剛性領域である後方部よりも柔軟な低剛性領域を設け、シートクッションに前後方向の剛性分布を付与することによって、着座乗員の着座姿勢としての骨盤姿勢を安定させる構成を有する車両用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、着座乗員の骨盤を側面視で見た場合に、例えば、逆三角形状として例えることができる。そうした場合、着座乗員の着座姿勢は、着座乗員の長時間の走行あるいは運転操作等によって、この逆三角形の車両下方側の頂点が車両前方側へ移動してしまい、この逆三角形の車両下方側の頂点と、その頂点と対抗する辺と直交する線(着座姿勢の傾斜線)が、車両用シートの車両後方側へ傾くように変化してしまう。
そのため、着座乗員の着座姿勢を安定して保持するには、逆三角形の車両下方側の頂点が車両前方側へ移動することを制限し、着座姿勢の傾斜線の方向を保持することが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術においては、乗員が座席シートへの着座し、運転操作等によって着座乗員における着座姿勢の傾斜線が車両後方側に向かって倒れてしまった場合には、着座乗員の着座姿勢の傾斜線は補正されずに、変化した着座姿勢のまま着座乗員を保持してしまう虞があるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、着座乗員の動きに伴って着座乗員の着座姿勢を補正する車両用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記シートフレーム構造の内側に構成され、前記着座乗員の着座姿勢を補正する姿勢矯正部と、前記着座乗員からの前記シートクッション部あるいは前記シートバック部への圧力入力に応じて、前記姿勢矯正部を移動可能とさせる可動部と、を備え、前記姿勢矯正部は、前記可動部において車両前後方向に移動可能に係合され、前記姿勢矯正部と、前記シートバック部と、が前記可動部により接続され、前記姿勢矯正部は、前記シートバック部に向かう方向に付勢されている車両用シートを提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記姿勢矯正部は、コの字形状をなすように車幅方向両端部に補助棒が結合され、前記シートクッション部の内部車両下方側に車幅方向に延在して設けられた姿勢矯正クロスメンバと、前記姿勢矯正クロスメンバに対して、車幅方向に延在して固定された姿勢矯正部材と、車両後方側端は、車幅方向を軸として前記姿勢矯正クロスメンバに回転可能に係合され、車両前方側端は、車幅方向を軸として前記シートフレーム構造に回転可能に固定されている姿勢矯正ロッド部と、を含んで構成され、前記可動部は、前記シートフレーム構造の内側に配設され、前記姿勢矯正クロスメンバを車両前後方向に移動可能に係合させる座位補正レール部と、前記姿勢矯正部と前記シートバック部とを連動可能に接続する接続部と、を含んで構成され、前記姿勢矯正クロスメンバの車幅方向両側端は、前記座位補正レール部に係合され、前記補助棒の一方端側は、前記接続部に回転可能に固定され、前記シートバック部に向けて付勢されている車両用シートを提案している。
【0010】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記姿勢矯正部材は、織布あるいは不織布によって車幅方向を長尺方向とした略矩形に形成され、前記姿勢矯正部材の車両下方側辺は、前記姿勢矯正クロスメンバに固定され、前記姿勢矯正部材の車幅方向両側辺は、前記補助棒に固定されている車両用シートを提案している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、着座乗員の動きに伴って着座乗員の着座姿勢を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用シートを、シートカバーをはずし、クッションを透した状態で上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示される車両用シートのシートクッション部を、シートカバーおよびクッションを外した状態で上方から見た斜視図である。
【
図4】
図1に示される車両用シートの姿勢矯正部および可動部を、シートカバーおよびクッションを外して上方から見た斜視図である。
【
図5】
図1に示される車両用シートのシートカバーをはずし、着座乗員が着座した状態を側方から見た側面図である。
【
図6】
図5に示される車両用シートのシートバック部に応力入力があった場合の作用を示す側面図である。
【
図7】
図5に示される車両用シートのシートクッション部に応力入力があった場合の作用を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1から
図7を用いて、本実施形態に係る車両用シートSが適用された車両Vについて説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、
図1に示す車両前方(正面)を示し、矢印UPは正面視上方を示し、矢印LHは正面視左方を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、正面視での上下方向、正面視での前後方向、正面視での左右方向を示すものとする。
【0014】
<実施形態>
図1から
図4を用いて、車両Vに備えられた、本実施形態に係る車両用シートSの構成について説明する。
なお、以下では、車両Vにおいて運転席に装着される車両用シートSを例示して説明する。
【0015】
<車両用シートSの構成>
車両用シートSは、
図1に示すように、スライドレール部10と、ヘッドレスト部20と、シートクッション部100と、シートバック部300と、を含んで構成されている。車両用シートSは、図示しない車両Vのフロアパネルの車両上方側に配置され、スライドレール部10を介して、車両Vのフロアパネルに固定されている。
【0016】
スライドレール部10は、車両Vのフロアパネルに車両前後方向に延在して固定されている。スライドレール部10は、金属等の部材によって、車両上方側が開口されたコの字状に形成されている。スライドレール部10には、車両用シートSの脚部が車両前後方向に移動可能に配設されている。
【0017】
ヘッドレスト部20は、シートバック部300の車両上方端部の車幅方向中央部に設けられており、シートバック部300部から車両上方側へ突出している。ヘッドレスト部20には、略長尺棒状のステー21が設けられ、ステー21は、シートバック部300に上側から挿入されている。そして、ヘッドレスト部20は、シートバック部300に支持されている。ヘッドレスト部20の外側は、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバー22によって表面が覆われている。
【0018】
<シートクッション部100の構成>
シートクッション部100は、着座乗員Pの着座面であり、車両用シートSにおいては、車両下方部に配設され、着座乗員Pの臀部から大腿部を支える。シートクッション部100の外側は、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバー110によって表面が覆われている。シートクッション部100の内側構成について、以下に説明する。
【0019】
<シートクッション部100の内側構成について>
シートクッション部100の内側には、
図2に示すように、クッション120と、シートフレーム構造SHと、姿勢矯正部200と、後述する可動部400と、が構成されている。
【0020】
(クッション120について)
クッション120は、ウレタン等の部材によって、シートクッション部100の車両上方側を覆うように形成されている。クッション120は、シートクッション部100の車両上方側において、シートカバー110の内側に密接して配設されている。
【0021】
(シートフレーム構造SHについて)
シートフレーム構造SHは、シートクッション部100の骨格を構成し、
図2のハッチング部に示すように、クッション120の車両下方側に設けられている。シートフレーム構造SHは、フロントシートフレーム130と、サイドシートフレーム140と、バックシートフレーム150と、ロアーシートフレーム160と、フレームワイヤー170と、を含んで構成されている。
【0022】
フロントシートフレーム130は、金属等の部材により車幅方向に延在して形成され、シートクッション部100の車両前方側に配置されている。フロントシートフレーム130は、車幅方向両側に配設されているサイドシートフレーム140の車両前方端部において、ヒンジ部HGによって、回転可能に固定されている。
【0023】
サイドシートフレーム140は、金属等の部材により、車幅方向を板厚方向とし車両前後方向に延在して略長尺板状に形成され、シートクッション部100の車幅方向両側部に配置されている。一対のサイドシートフレーム140の車両後方端部には、車幅方向に延在されたバックシートフレーム150が連結され、バックシートフレーム150の車両上方側には、後述するサイドバックフレーム330が回転可能に連結されている。
【0024】
バックシートフレーム150は、金属等の部材により、車幅方向に延在したパイプ状に形成され、シートクッション部100の車両後方側に配置されている。バックシートフレーム150の車幅方向両側端は、一対のサイドシートフレーム140に連結され、バックシートフレーム150の車両上方側には、後述するサイドバックフレーム330が回転可能に連結されている。また、バックシートフレーム150には、後述するフレームワイヤー170が固定されている。
【0025】
ロアーシートフレーム160は、金属等の部材により車両上下方向を板厚方向とし車幅方向に延在して略長尺板状に形成され、シートクッション部100の車両下方側に配設されている。具体的には、ロアーシートフレーム160の車幅方向両側端部は、サイドシートフレーム140の車両下方側にそれぞれ溶接等により結合され、一対のサイドシートフレーム140の間に架け渡されている。
【0026】
フレームワイヤー170は、シートクッション部100の車両下方側において、車両前後方向に延在している。フレームワイヤー170は、ばね性を有した金属等で形成された着座乗員Pの臀部を支えるS字状のばねであり、フロントシートフレーム130と、バックシートフレーム150との間に複数本(本実施事例では4本)配設されている。
【0027】
(姿勢矯正部200について)
姿勢矯正部200は、
図2の斜線部に示すように、シートフレーム構造SHの内側にシートフレーム構造SHに囲まれて構成されている。また、姿勢矯正部200の車両上方側には、クッション120が配設されている。
具体的には、姿勢矯正部200は、クッション120の車両下方部かつフレームワイヤー170の車両上方側に配設され、フロントシートフレーム130と、サイドシートフレーム140と、バックシートフレーム150とに囲まれたシートフレーム構造SHの内側に配設されている。
姿勢矯正部200は、
図3に示すように、姿勢矯正クロスメンバ210と、姿勢矯正部材220と、姿勢矯正ロッド部230と、を含んで構成されている。
【0028】
姿勢矯正クロスメンバ210は、シートクッション部100の車両下方側に車幅方向に延在して設けられている。姿勢矯正クロスメンバ210は、金属等の部材により略丸棒状に形成されている。姿勢矯正クロスメンバ210の車幅方向両端部は、後述する座位補正レール部410にベアリング等を介して係合され、車両前後方向に移動可能となっている。
また、姿勢矯正クロスメンバ210の車幅方向両端部には、姿勢矯正クロスメンバ210の軸方向と直交する径方向外側に向かって、略矩形状の補助棒210aの一方端部が溶接等により結合されている。姿勢矯正クロスメンバ210と車幅方向両側の補助棒210aとは、コの字形状をなしている。車幅方向両側の補助棒210aは、姿勢矯正クロスメンバ210に対して略同等の角度で結合されている。補助棒210aの他方端部は、後述する可動部400に含まれるワイヤーWRが回転可能に係合されている。
また、姿勢矯正クロスメンバ210には、姿勢矯正ロッド部230の一端が、回転可能に係合されている。
【0029】
姿勢矯正部材220は、車幅方向に延在して姿勢矯正クロスメンバ210に固定されている。具体的には、姿勢矯正部材220の車両下方側の辺は、姿勢矯正クロスメンバ210に接着等により固定されている。また、姿勢矯正部材220の車幅方向両側の辺は、補助棒210aに接着等により固定されている。姿勢矯正部材220は、例えば、織布あるいは不織布等の布あるいは革等の柔軟性を持った素材によって、車幅方向を長尺方向とした略矩形状に形成されている。
【0030】
姿勢矯正ロッド部230は、金属等の部材により略棒状に形成され、シートクッション部100の車両前方側に車両前後方向に延在して設けられている。姿勢矯正ロッド部230の車両前方側端は、フロントシートフレーム130の車両前部下方側に、車幅方向を軸とし、車両上下方向に向かって回転可能に固定されている。その姿勢矯正ロッド部230の車両前方側端の固定点は、フロントシートフレーム130がサイドシートフレーム140に固定されているヒンジ部HGよりも車両前方側において固定されている。また、姿勢矯正ロッド部230の車両後方側端は、車幅方向を軸とし、姿勢矯正クロスメンバ210に回転可能に係合されている。
【0031】
<シートバック部300の構成>
シートバック部300は、着座乗員Pの背部を支える。シートバック部300は、
図1に示すように、シートクッション部100の車両後方側の車両上下方向に向けて、起立した状態で配設されている。シートバック部300の外側は、布あるいは革等の部材により形成されたシートカバー310によって表面が覆われている。シートカバー310の内側には、
図2に示すように、クッション320と、シートバックフレーム構造SBと、バックレスト部360と、を含んで構成されている。
シートバック部300の内部構成詳細について、以下に説明する。
【0032】
<シートバック部300の内側構成について>
シートバック部300の内側は、
図2に示すように、クッション320と、シートバックフレーム構造SBと、バックレスト部360と、後述する可動部400と、を含んで構成されている。
【0033】
(クッション320について)
クッション320は、ウレタン等の部材によって、シートバック部300の車両上方側を覆うように形成されている。クッション320は、シートバック部300の車両上方側において、シートカバー310の内側に密接して配設されている。
【0034】
(シートバックフレーム構造SBについて)
シートバックフレーム構造SBは、シートバック部300の骨格を構成し、
図2の格子状ハッチングで示すように、サイドバックフレーム330と、アッパーバックフレーム340と、ロアバックフレーム350と、を含んで構成されている。
【0035】
サイドバックフレーム330は、金属等の部材により、車幅方向を板厚方向とし車両上下方向に延在して略長尺板状に形成され、シートバック部300の車幅方向両側部に配置されている。一対のサイドバックフレーム330の車両上方端部には、車幅方向に延在されたアッパーバックフレーム340が結合され、その車両下方端部には、車幅方向に延在されたロアバックフレーム350が結合されている。そして、サイドバックフレーム330の車両下方側には、シートクッション部100のバックシートフレーム150が回転可能に連結されている。
【0036】
アッパーバックフレーム340は、金属等の部材により車幅方向に延在して形成され、一対のサイドバックフレーム330の車両上方端部に結合されている。アッパーバックフレーム340の車両上方側には、ヘッドレスト部20のステー21が挿入される車両上下方向に向かって貫通孔THが設けられている。また、アッパーバックフレーム340の車幅方向両側端部には、車両下方側に向かってバックレスト部360を吊り下げる補助ワイヤーSW1が結合されている。
【0037】
ロアバックフレーム350は、金属等の部材により、車両上下方向を板厚方向とし車幅方向に延在して略長尺板状に形成されて、シートバック部300の車両下方部に配設されている。ロアバックフレーム350は、左右一対のサイドバックフレーム330の車両下方側に結合されている。
【0038】
(バックレスト部360について)
バックレスト部360は、金属等の部材をプレス加工等により平板状に形成されている。バックレスト部360は、車幅方向両側において、補助ワイヤーSW1によって、アッパーバックフレーム340から吊り下げられている。また、車両下方側においては、補助ワイヤーSW2によって、車幅方向両側のサイドバックフレーム330に弾性支持されている。補助ワイヤーSW1およびSW2は、ばね性を有した金属等で形成されており、バックレスト部360は、補助ワイヤーSW1およびSW2によって、車両前方側に向かって付勢されている。また、バックレスト部360の車両後方側には、車両後方側に向かって突出した係合部SLが設けられ、係合部SLには、後述する可動部400に含まれるワイヤーWRが係合されている。
【0039】
<可動部400の構成>
可動部400は、
図4に示すように、シートクッション部100およびシートバック部300に跨って構成されている。可動部400は、シートフレーム構造SHの車幅方向内側かつシートバックフレーム構造SBの車幅方向内側に配設され、座位補正レール部410と、滑車PL1~PL3(滑車PL1L~PL3L、PL1R~PL3R)と、ワイヤーWRと、を含んで構成されている。
【0040】
(座位補正レール部410について)
座位補正レール部410は、シートクッション部100において、車幅方向両側のサイドシートフレーム140の車幅方向内側にそれぞれ固定されている。座位補正レール部410は、車幅方向内側が開口されたコの字形状に形成されたスライドレールである。座位補正レール部410は、金属等の部材により形成され、車両前後方向に延在している。座位補正レール部410には、姿勢矯正クロスメンバ210の車幅方向両端部が、ベアリング等を介して、車両前後方向に向かって移動可能に係合されている。
【0041】
(滑車PL1~PL3について)
滑車PL1~PL3(滑車PL1L~PL3L、PL1R~PL3R)は、金属あるいは硬質樹脂等の部材で形成されている。滑車PL1~PL3(滑車PL1L~PL3L、PL1R~PL3R)は、シートバック部300の内部において、車幅方向両側に左右対称に回転可能に固定されている。滑車PL1(滑車PL1L、PL1R)は、サイドバックフレーム330の車両下部内側に、車幅方向に軸方向が向くように回転可能に固定されている。滑車PL2(滑車PL2L、PL2R)は、サイドバックフレーム330の車両前部上下方向略中央部内側に、車幅方向に軸方向が向くように回転可能に固定されている。また、滑車PL3(滑車PL3L、PL3R)は、サイドバックフレーム330の車両後部上下方向略中央部内側に、車両上下方向に軸方向が向くように回転可能に固定されている。
【0042】
(ワイヤーWRについて)
接続部としてのワイヤーWRは、伸縮性のない金属線等が複数撚り合わされている部材である。ワイヤーWRは、可動部400の姿勢矯正部200と、シートバック部300と、を接続している。具体的には、ワイヤーWRの一方端は、姿勢矯正クロスメンバ210に結合されている補助棒210aの車両上方側に回転可能に固定されている。ワイヤーWRは、その補助棒210aから、滑車PL1L~PL3Lを通り、シートバック部300に設けられているバックレスト部360の係合部SLに係合される。そして、さらに滑車PL3R~PL1Rを経由し、ワイヤーWRの他方端は、姿勢矯正クロスメンバ210の他方側に結合されている補助棒210aの車両上方側に回転可能に固定されている。
【0043】
<作用・効果>
以下、
図5~
図7を用いて、本実施形態の車両用シートSにおいて、着座乗員Pの着座姿勢が変位した場合の作用及び効果について説明する。
【0044】
(着座乗員Pの着座姿勢について)
着座乗員Pの着座姿勢は、運転操作等により、着座乗員Pの背中の位置、あるいは、着座乗員Pの膝の位置が変位する。
車両用シートSに、着座乗員Pの着座した場合には、着座乗員Pの臀部は、シートクッション部100には、着座乗員Pの臀部がクッション120を介して、フロントシートフレーム130と、サイドシートフレーム140と、バックシートフレーム150と、ロアーシートフレーム160と、フレームワイヤー170と、に囲まれて載置される。着座乗員Pの大腿部は、クッション120を介して、フロントシートフレーム130と、姿勢矯正クロスメンバ210と、姿勢矯正部材220と、の車両上方側に載置される。
また、着座乗員Pの着座姿勢は、
図5に示すように、着座乗員Pの骨盤形状を逆三角形TRで示し、逆三角形TRの車両下方側の頂点の位置と、逆三角形TRの車両下方側の頂点とその頂点と対抗する辺と直交する線としての傾斜線ILの方向と、で示すことができる。
そして、逆三角形TRの車両下方側の頂点が前方側へ移動することを減少させ、逆三角形TRの傾斜線が、着座乗員Pの着座姿勢が変位する以前の傾斜線ILに近づくように着座姿勢を補正することにより、着座乗員Pの着座姿勢を安定させる。
【0045】
(着座乗員Pの背中が後ろに下がった場合)
運転操作等により、着座乗員Pの着座姿勢が変位し、着座乗員Pの背中が車両後方側に移動した場合には、
図6の矢印AAに示すように、シートバック部300のバックレスト部360は、車両後方部に向かって押し込まれる。着座乗員Pの着座姿勢は、傾斜線IL1に示すように、車両後方側に向けて傾く。
バックレスト部360の車両後方側に設けられた係合部SLに係合されたワイヤーWRは、バックレスト部360の動きに伴って、矢印ABの方向に移動する。姿勢矯正部200の補助棒210aは、補助棒210aの一方端側に固定されているワイヤーWRによって矢印AC方向に持ち上げられる。姿勢矯正部材220は、補助棒210aが持ち上げられることによって、車両上方側に起き上がり、その車両上方部のクッション120は、車両上方側に持ち上げられる。姿勢矯正部材220は、例えば、布あるいは革等の柔軟性を持った部材によって形成されているため、姿勢矯正部材220は、着座乗員Pの両足の大腿部を、大腿部の形状にあわせて両側から包み込む。そして、着座乗員Pの両足の大腿部は、クッション120を介して、体幹を安定して保持し着座乗員Pの自由度を保ちながら姿勢矯正部材220に持ち上げられる。
そして、着座乗員Pの着座姿勢を示す傾斜線は、矢印AEに示す方向に移動し、傾斜線IL1から傾斜線IL2となる。この傾斜線IL2は、着座乗員Pの背中が後ろに下がる以前の、傾斜線ILに近づく方向に補正された着座姿勢となる。また、着座乗員Pの両足の大腿部が車両上方側に向かって持ち上げられることによって、逆三角形TR2の車両下方側の頂点の位置は、車両前方側への移動が制限される。
【0046】
(着座乗員Pの膝が下がった場合)
運転操作等により、着座乗員Pの着座姿勢が変位し、
図7の矢印BBに示すように、着座乗員Pの膝が下がった場合には、シートクッション部100のフロントシートフレーム130は、ヒンジ部HGを支点に矢印BC方向に回転し、その車両前方側が車両下方側に下がる。着座乗員Pの着座姿勢は、傾斜線IL3に示すように、車両前方側に向けて傾く。
フロントシートフレーム130の車両前部下方側に固定されている姿勢矯正ロッド部230は、フロントシートフレーム130の車両前部が車両下方側に下がることによって、その車両後方側に結合されている姿勢矯正クロスメンバ210を車両後方側に向かって押す。姿勢矯正クロスメンバ210は、座位補正レール部410に沿って矢印BDに示す方向に向かい、着座乗員Pの大腿部下方側に移動する。さらに、姿勢矯正クロスメンバ210に結合されている補助棒210aは、補助棒210aの一方端側に固定されているワイヤーWRに発生するシートバック部300に向かう付勢力によって、矢印BEに示す方向に持ち上げられる。姿勢矯正部材220は、補助棒210aが持ち上げられることによって、車両上方側に起き上がり、その車両上方部のクッション120は、車両上方側に持ち上げられる。そして、着座乗員Pの両足の大腿部は、クッション120を介して、姿勢矯正部材220に包み込まれるように矢印BEに示す方向に向かって持ち上げられる。
そして、着座乗員Pの着座姿勢を示す傾斜線は、矢印BFに示す方向に移動し、傾斜線IL3から傾斜線IL4となる。この傾斜線IL4は、着座乗員Pの膝部が下がる以前の、傾斜線ILに近づく方向に補正された着座姿勢となる。また、着座乗員Pの両足の大腿部が車両上方側に向かって持ち上げられることによって、逆三角形TR4の車両下方側の頂点の位置は、車両前方側への移動が制限される。
【0047】
以上、本実施形態に係る車両用シートSは、着座乗員Pの臀部から大腿部を支え、内部に骨格としてのシートフレーム構造SHを有するシートクッション部100と、着座乗員Pの背部を支えるシートバック部300と、が設けられた車両用シートSにおいて、シートフレーム構造SHの内側に構成され、着座乗員Pの着座姿勢を補正する姿勢矯正部200と、着座乗員Pからのシートクッション部100あるいはシートバック部300への圧力入力に応じて、姿勢矯正部200を移動可能とさせる可動部400と、を備え、姿勢矯正部200は、可動部400において車両前後方向に移動可能に係合され、姿勢矯正部200と、シートバック部300と、が可動部400により接続され、姿勢矯正部200は、シートバック部300に向かう方向に付勢されている。
つまり、姿勢矯正部200は、クッション120の車両下方部かつフレームワイヤー170の車両上方側に配設され、フロントシートフレーム130と、サイドシートフレーム140と、バックシートフレーム150とに囲まれたシートフレーム構造SHの内側に配設されている。また、着座乗員Pが車両用シートSに着座した場合に、着座乗員Pの臀部は、クッション120を介して、シートフレーム構造SHの内側に載置される。そして、着座乗員Pの大腿部は、姿勢矯正部200の車両上方側に載置される。
着座乗員Pの着座姿勢が変位し、着座乗員Pからシートクッション部100あるいはシートバック部300への圧力入力があった場合には、姿勢矯正部200は、可動部400によって姿勢矯正部200が車両後方側に向かって移動し、シートバック部300に向かう付勢力により、姿勢矯正部200は、車両上方側に向かって立ち上がり、姿勢矯正部200の車両上方側に配設されているクッション120を車両上方側に持ち上げる。姿勢矯正部200の車両上方側に載置された着座乗員Pの両足の大腿部は、姿勢矯正部200によって車両上方側へ持ち上げられる。したがって、姿勢矯正部200が着座乗員Pの両足の大腿部を車両上方側に向かって持ち上げ、着座乗員Pの着座姿勢が変位する以前の傾斜線ILに近づくように着座乗員Pの着座姿勢を補正することによって、姿勢矯正部200は、着座乗員Pの着座姿勢を安定させることができる。また、姿勢矯正部200は、逆三角形TRの車両下方側の頂点の位置が車両前方側に向かって移動することを確実に制限できる。
そのため、車両用シートSは、着座乗員Pの動きに伴って着座乗員Pの着座姿勢を補正することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る車両用シートSは、姿勢矯正部200は、コの字形状をなすように車幅方向両端部に補助棒210aが結合され、シートクッション部100の内部車両下方側に車幅方向に延在して設けられた姿勢矯正クロスメンバ210と、姿勢矯正クロスメンバ210に対して、車幅方向に延在して固定された姿勢矯正部材220と、車両後方側端は、車幅方向を軸として姿勢矯正クロスメンバ210に回転可能に係合され、車両前方側端は、車幅方向を軸としてシートフレーム構造SHに回転可能に固定されている姿勢矯正ロッド部230と、を含んで構成され、可動部400は、シートフレーム構造SHの内側に配設され、姿勢矯正クロスメンバ210を車両前後方向に移動可能に係合させる座位補正レール部410と、姿勢矯正部200とシートバック部300とを連動可能に接続する接続部としてのワイヤーWRと、を含んで構成され、姿勢矯正クロスメンバ210の車幅方向両側端は、座位補正レール部410に係合され、補助棒210aの一方端側には、ワイヤーWRが回転可能に固定され、シートバック部300に向けて付勢されている。
つまり、着座乗員Pの着座姿勢が変位し、シートバック部300へ圧力が加わり、シートバック部300におけるバックレスト部360が車両後方側に移動した場合には、バックレスト部360に係合されているワイヤーWRによって、姿勢矯正クロスメンバ210に固定されている姿勢矯正部材220は、車両上方側に起き上がり、クッション120を車両上方側へ持ち上げる。そして、着座乗員Pの両足の大腿部が、クッション120を介して姿勢矯正部材220によって車両上方側に持ち上げられることによって、車両用シートSは、着座乗員Pの背中が後ろに下がる以前の、傾斜線ILに近づく方向に補正された着座姿勢となすことができる。また、車両用シートSは、着座乗員Pの両足の大腿部が車両上方側に向かって持ち上げられることによって、逆三角形TRの車両下方側の頂点の位置が、車両前方側に向かって移動することを制限できる。
また、着座乗員Pの着座姿勢が変位し、着座乗員Pの膝が下がり、シートクッション部100におけるフロントシートフレーム130へ圧力が加わった場合には、フロントシートフレーム130の車両前方部が車両下方側に下がる。姿勢矯正クロスメンバ210は、姿勢矯正ロッド部230によって車両後方側に向かって押され、姿勢矯正クロスメンバ210が座位補正レール部410に沿って移動し、クッション120は、姿勢矯正部材220によって車両上方側へ持ち上げられる。そして、着座乗員Pの両足の大腿部が、クッション120を介して姿勢矯正部材220によって車両上方側に持ち上げられることによって、車両用シートSは、着座乗員Pの膝部が下がる以前の、傾斜線ILに近づく方向に補正された着座姿勢となすことができる。また、車両用シートSは、着座乗員Pの両足の大腿部が車両上方側に向かって持ち上げられることによって、逆三角形TRの車両下方側の頂点の位置が、車両前方側に向かって移動することを制限できる。
そのため、車両用シートSは、着座乗員Pの動きに伴って着座乗員Pの着座姿勢を補正することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る車両用シートSは、姿勢矯正部材220は、織布あるいは不織布によって車幅方向を長尺方向とした略矩形に形成され、姿勢矯正部材220の車両下方側辺は、姿勢矯正クロスメンバ210に固定され、姿勢矯正部材220の車幅方向両側辺は、補助棒210aに固定されている。
つまり、着座乗員Pの着座姿勢を補正するための姿勢矯正クロスメンバ210には、織布あるいは不織布等の柔軟性のある素材により形成されている姿勢矯正部材220が固定されている。そして、姿勢矯正部材220は、着座乗員Pの両足の大腿部を、大腿部の形状にあわせて両側から柔らかに包み込むことによって、体幹を安定して保持し着座乗員Pの自由度を保ちながら着座乗員Pの両足の大腿部を持ち上げることができる。
そのため、車両用シートSは、着座乗員Pの動きに伴って着座乗員Pの着座姿勢を補正することができる。
【0050】
なお、本発明の実施形態として、可動部400において、ワイヤーWRにより姿勢矯正部材220を移動させることによって、着座乗員の着座姿勢を補正する構成を例示したが、フロントシートフレーム130およびバックレスト部360にセンサを設け、着座乗員の着座姿勢によって入力される応力を検出し、シートクッション部100およびシートバック部300に設けられたエアークッション等のエアー圧力を調整することによって、着座乗員の着座姿勢を補正する構成としてもよい。
【0051】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10;スライドレール部
20;ヘッドレスト部
100;シートクッション部
120;クッション
130;フロントシートフレーム
140;サイドシートフレーム
200;姿勢矯正部
210;姿勢矯正クロスメンバ
210a;補助棒
220;姿勢矯正部材
230;姿勢矯正ロッド部
300;シートバック部
360;バックレスト部
400;可動部
410;座位補正レール
IL1;傾斜線
IL2;傾斜線
IL3;傾斜線
IL4;傾斜線
PL1;滑車
PL2;滑車
PL3;滑車
S;車両用シート
V;車両
WR;ワイヤー