(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005405
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体デバイスおよび流体デバイスの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01P 5/24 20060101AFI20240110BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240110BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20240110BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01P5/24 B
H04R3/00 330
G01F1/66 101
H04R17/00 332A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105578
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 力
(72)【発明者】
【氏名】新井 義雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 景太
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 紘斗
【テーマコード(参考)】
2F035
5D019
【Fターム(参考)】
2F035DA05
2F035DA09
2F035DA14
5D019AA25
5D019BB14
5D019FF02
(57)【要約】
【課題】流体の流速を測定できる流体デバイスおよび流体デバイスの制御方法を提供する。
【解決手段】流体デバイスは、流体が流通する流路20と、流路20に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子33を含む超音波素子アレイ30と、複数の超音波素子33の駆動を制御する駆動制御部と、流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、駆動制御部は、超音波素子アレイ30のうち流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間で、流体を介して超音波を互いに送受信させ、流速測定部は、第1超音波素子33Aから第2超音波素子33Bまでの第1超音波伝搬時間と、第2超音波素子33Bから第1超音波素子33Aまでの第2超音波伝搬時間との差に基づいて流速を測定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路と、
前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、
前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、
前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、
前記駆動制御部は、前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させ、
前記流速測定部は、前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定する、流体デバイス。
【請求項2】
前記超音波素子群には、前記第1超音波素子と前記第2超音波素子との間に配置される定在波発生素子が含まれ、
前記駆動制御部は、前記定在波発生素子から前記流体に所定周波数の超音波を送信させることで、前記流体に定在波を発生させる、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記第1超音波素子または前記第2超音波素子から送信される超音波の周波数と、前記定在波発生素子から送信される超音波の周波数とは、互いに異なる、請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記第1超音波素子と前記第2超音波素子との間で超音波を送受信させる測定モードと、前記定在波発生素子から前記所定周波数の超音波を送信させる定在波発生モードとを切り替え可能である、請求項2または請求項3に記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記定在波発生モードにおいて、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子が前記定在波発生素子と共に前記定在波を発生させるように、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子を前記定在波発生素子と共に駆動する、請求項4に記載の流体デバイス。
【請求項6】
前記流路は、互いに対向する第1流路壁および第2流路壁を有し、
前記超音波素子群は、前記第1流路壁に設けられ、かつ、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子を含む超音波素子アレイである、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項7】
前記流路は、互いに対向する第1流路壁および第2流路壁を有し、
前記超音波素子群は、
前記第1流路壁に設けられ、かつ、前記第1超音波素子を含む第1超音波素子アレイと、
前記第2流路壁に設けられ、かつ、前記第2超音波素子を含む第2超音波素子アレイと、を有する、請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項8】
流体の流速を測定する流体デバイスの制御方法であって、
前記流体デバイスは、
流体が流通する流路と、
前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、
前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、
前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、
前記駆動制御部が、前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させるステップと、
前記流速測定部が、前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定するステップと、を含む、流体デバイスの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体デバイスおよび流体デバイスの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体中に分散する微粒子を流体から分離するデバイスが知られている。例えば、特許文献1に開示される流体デバイスは、流路が形成された基板と、基板に設けられた超音波素子とを備えている。超音波素子から送信された超音波は、基板を介して流路内に伝搬され、流路内の流体に定在波を生じさせる。流体中の微粒子は、定在波により形成される流体の圧力勾配により流路内の所定範囲に集束し、集束した微粒子を含む濃縮液が回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載したような流体デバイスでは、微粒子に対する音響力を適切に設定するために、音響力の発生領域における流体の流速情報を取得することが望ましい。しかし、従来の流量計を流体デバイスに設ける場合、流体デバイスの全体が大型化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、前記駆動制御部は、前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させ、前記流速測定部は、前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定する。
【0006】
本開示の第2態様に係る流体デバイスの制御方法は、流速を測定する流体デバイスの制御方法であって、前記流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、前記駆動制御部が、前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させるステップと、前記流速測定部が、前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の流体デバイスを示すブロック図。
【
図2】第1実施形態の流体デバイスにおける流路を模式的に示す断面図。
【
図3】第1実施形態の流体デバイスにおける超音波素子アレイを示す平面図。
【
図5】第1実施形態の流速測定方法を説明するためのフローチャート。
【
図6】第1実施形態の流速測定方法を説明するために流路を模式的に示す断面図。
【
図7】第1実施形態の流体デバイスの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【
図8】第2実施形態の流体デバイスにおける流路を模式的に示す断面図。
【
図9】第3実施形態の流体デバイスを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
第1実施形態の流体デバイス10について説明する。
(流体デバイス10の構成)
図1および
図2に示すように、流体デバイス10は、微粒子Mを含有する流体Sが流通する流路20と、流路20に設けられる超音波素子アレイ30(超音波素子群に対応)と、超音波素子アレイ30を制御する制御部40と、を備える。
【0009】
本実施形態の流体デバイス10は、流路20を流通する流体S中の微粒子Mを超音波によって捕捉することで、当該微粒子Mが濃縮された流体Sである濃縮液Scを回収可能にする。また、本実施形態の流体デバイス10は、流路20を流通する流体Sの流速を測定し、測定された流速に基づいて超音波の出力を設定または調整する。
なお、流体Sは、特に限定されないが、例えば水や血液などの任意の液体である。微粒子Mは、特に限定されないが、例えば微小繊維や細胞である。また、
図2では、図の簡略化のため、複数の微粒子Mの大きさが同一であるが、様々な大きさの微粒子Mが流体Sに分散しているものとする。
【0010】
図2に示すように、流路20は、微粒子Mが分散した流体Sが流入する流入口21と、超音波により定在波SWが形成される流路本体22と、定在波SWにより捕捉された微粒子Mを含む流体S(すなわち濃縮液Sc)を選択的に排出する濃縮出口23と、濃縮液Sc以外の流体Srを選択的に排出する排出口24と、を有する。
この流路20は、例えば流路基板25に形成される。流路基板25は、流路20に対応する凹溝を有するベース基板と、当該凹溝を覆うリッド基板とによって構成される。これら基板としては、特に限定されないが、例えばガラス基板やシリコン基板を利用できる。
また、流路本体22は、流体Sの流通方向に直交する任意の流路幅方向において互いに対向する第1流路壁221および第2流路壁222を有しており、第1流路壁221には、超音波素子アレイ30が設けられる。
なお、以下では、流路20における流体Sの流通方向をX方向とし、第1流路壁221から第2流路壁222に向かう方向をY方向とし、X方向およびY方向のそれぞれに直交する方向をZ方向とする。第1流路壁221と第2流路壁222との間の流路幅rは、既知の値とする。
【0011】
超音波素子アレイ30は、流路20の第1流路壁221の一部を構成しており、流路本体22内の流体Sに面する。この超音波素子アレイ30は、アレイ状に配置される複数の超音波素子33を含む。
【0012】
超音波素子アレイ30の具体的構成について、以下に簡単に説明する。超音波素子アレイ30は、
図3に示すように、XZ平面に沿って配置される素子基板31と、素子基板31に設けられた複数の圧電素子32とによって、複数の超音波素子33を含むように構成される。
【0013】
図4に示すように、素子基板31は、基板本体部311と、基板本体部311に設けられた振動膜312と、を備える。基板本体部311には、XZ平面において2次元配列される複数の開口部311Aが設けられており、振動膜312は、素子基板31の各開口部311Aを覆っている。開口部311Aには音響層が設けられてもよい。振動膜312のうち、平面視で開口部311Aと重なる部分は、超音波の送信を行う振動部312Aを構成する。
【0014】
圧電素子32は、各振動部312Aと重なる位置に設けられている。この圧電素子32は、第1電極321、圧電膜322および第2電極323が振動膜312上に順に積層されることにより構成されている。
図3に示すように、第1電極321は、Z方向に沿った直線状に形成され、両端部の電極端子321Pを介して制御部40に接続される。第2電極323は、X方向に沿った直線状に形成され、共通電極線324に接続される。共通電極線324は、両端部の電極端子324Pを介して制御部40に接続される。圧電膜322は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体の薄膜により形成されている。
【0015】
超音波素子アレイ30における超音波素子33は、振動部312Aと、当該振動部312A上に設けられた圧電素子32とによって構成される。超音波素子33では、圧電素子32に駆動信号が入力されると、圧電素子32の圧電膜322が伸縮することにより、振動部312Aが素子基板31の厚み方向に撓み振動する。振動部312Aの撓み振動が流体Sの粗密波に変換されることで、超音波素子33から流体Sへの超音波の伝搬が行われる。
なお、本実施形態において、Z方向に並んだ複数の超音波素子33は、1チャネルの素子列CHを構成するものとする。
【0016】
以上説明した超音波素子アレイ30では、複数の超音波素子33が互いに同一の構成を有するが、制御部40により制御される動作の違いによって、第1超音波素子33A、第2超音波素子33B、および、定在波発生素子33Cに分けられる。第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bは、超音波式の流速測定を行うために超音波を送受信し、定在波発生素子33Cは、流体Sに定在波SWを形成するために超音波を送信する。
ここで、
図2に示すように、第1超音波素子33Aは、超音波素子アレイ30におけるX方向の一方側の端部(上流側の端部)に配置され、第2超音波素子33Bは、超音波素子アレイ30におけるX方向の他方側の端部(下流側の端部)に配置される。第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間には、X方向に並んだ複数の定在波発生素子33Cが配置される。なお、第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間のX方向の素子間距離d(
図6参照)は既知である。
以下、第1超音波素子33Aによる素子列CHを素子列CH-A、第2超音波素子33Bによる素子列CHを素子列CH-B、定在波発生素子33Cによる素子列CHを素子列CH-Cと記載する場合がある(
図1参照)。
【0017】
制御部40は、
図1に示すように、超音波素子アレイ30の駆動等を行う回路部41と、各種制御を行うプロセッサー42と、メモリー43と、を備える。また、図示を省略するが、制御部40は、超音波素子アレイ30に対するグラウンド回路を含んでもよい。
【0018】
回路部41は、選択回路411、送信回路412、受信回路413、TOF算出回路414および駆動回路415を含む。
選択回路411は、後述の駆動制御部421の制御に基づいて、送信回路412と受信回路413との接続を切り替える。また、選択回路411は、第1超音波素子33A(素子列CH-A)または第2超音波素子33B(素子列CH-B)を、送信回路412または受信回路413に接続可能である。
【0019】
送信回路412は、選択回路411を介して、第1超音波素子33A(素子列CH-A)または第2超音波素子33B(素子列CH-B)に対して駆動信号を出力することで、第1超音波素子33Aまたは第2超音波素子33Bから超音波を送信させる。
【0020】
受信回路413は、選択回路411を介して第1超音波素子33Aまたは第2超音波素子33Bから入力された受信信号に対し、デジタル信号への変換、ノイズ成分の除去、所望信号レベルへの増幅等の各信号処理を施す。また、受信回路413は、信号処理された受信信号をTOF算出回路414に出力する。
【0021】
TOF算出回路414は、送信回路412からの駆動信号の出力に同期して入力されるタイミング信号と、受信回路413から入力される受信信号との時間差に基づいて、流路20における超音波の飛行時間(TOF値)を算出する。
【0022】
駆動回路415は、定在波発生素子33Cに対して、定在波SWを発生させるための所定周波数fの駆動信号を出力する。これにより、定在波発生素子33Cから所定周波数fの超音波が送信される。なお、駆動信号の振幅(駆動電圧Vd)は、定在波発生素子33Cから送信される超音波の振幅に対応する。
【0023】
プロセッサー42は、メモリー43に記憶されたプログラムを実行することで、駆動制御部421および流速測定部422として機能する。駆動制御部421は、超音波素子アレイ30における各超音波素子33の駆動を制御する。流速測定部422は、TOF算出回路414によるTOF値の算出結果に基づいて流速を測定する(すなわち流速Vを算出する)。駆動制御部421および流速測定部422の詳細については後述する。
【0024】
メモリー43は、各種プログラムや各種データを記憶する記憶装置である。例えば、メモリー43には、流速測定部422での演算に必要とされる情報として、流路20の流路幅r、流体中の音速C、および、素子間距離dなどが記憶されている。また、メモリー43には、流体S中の微粒子Mを捕捉するための情報として、流速Vと駆動電圧Vdとの対応関係を示す駆動テーブルまたは演算係数が記憶されている。駆動テーブルまたは演算係数は、捕捉対象となる微粒子Mの大きさごとに記憶されていることが好ましい。なお、微粒子Mの大きさは、微粒子Mの寸法や体積など、任意の数値範囲ごとに区分されていてもよい。
【0025】
(流体デバイスの制御メカニズム)
本実施形態の流体デバイス10において、流体S中の微粒子Mを濃縮するメカニズムについて説明する。
定在波発生素子33Cから送信される超音波は、球面波として流体S中に放射状に拡散され、このうち流路幅方向(Y方向)に向かって進む超音波が、第1流路壁221と第2流路壁222との間で反射を繰り返すことで、流路本体22内に定在波SWを発生させる。
ここで、定在波発生素子33Cから送信される超音波の周波数をf1、定在波SWのモード次数をn、流体S中の音速をC、流路20のY方向の流路幅をrとするとき、以下の式(1)の条件を満たす場合に定在波SWが形成される。
【数1】
【0026】
図2に示すように、1次モードの定在波SWが生じる場合、流路本体22の流路幅方向の中央部に節が現れ、流路本体22の流路幅方向の両端部のそれぞれに腹が現れる。この場合、流体Sよりも音響インピーダンスの高い微粒子Mは、流体Sが流路本体22内を流通する過程で、定在波SWの節、すなわち流路本体22の流路幅方向の中央部へ集束する(音響集束)。そして、集束した微粒子Mを含む流体S(濃縮液Sc)は、濃縮出口23から排出され、それ以外の流体は、排出口24から排出される。すなわち、濃縮液Scが分離される。
なお、本実施形態では、説明の簡略化のため、1次モードの定在波SWを生じさせる例を用いるが、定在波SWのモード次数は特に限定されない。
【0027】
ここで、流体デバイス10による微粒子Mの捕捉力とは、音響集束により捕捉可能な微粒子Mの大きさの下限を決定するものであり、当該捕捉力が大きいほど、より小さな微粒子Mを捕捉可能になる。
このような流体デバイス10による微粒子Mの捕捉力は、駆動信号の振幅(すなわち駆動電圧Vd)と流体Sの流速とに依存している。仮に、所望の大きさの微粒子Mを捕捉できるように、所定の流速下で駆動電圧Vdを調整した場合、ポンプの出力変動等によって流速が変化すると、捕捉可能な微粒子Mの大きさの範囲が変化する。例えば、流速が速くなると、所望の大きさの微粒子Mが十分に集束する前に流体Sが定在波SWの形成範囲を通過してしまい、所望の大きさの微粒子Mを十分に捕捉することができない。一方、流速が遅くなると、流体Sが定在波SWの形成範囲を通過する間において、所望の大きさの微粒子Mだけでなく、より小さな微粒子Mも共に集束してしまい、捕捉可能な微粒子Mの大きさの精度が低下する。
そこで、本実施形態では、後述するように流体Sの流速を測定し、測定された流速(流速V)に応じて駆動電圧Vdを調整することで、所望の大きさの微粒子Mを安定して捕捉可能にする。
【0028】
(流速測定方法)
本実施形態の流体デバイス10における流速測定方法について、
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態の駆動制御部421は、流速測定を行う際、測定モードに切り替わる。
【0029】
まず、駆動制御部421の制御により、第1超音波素子33Aから第2超音波素子33BまでのTOF値である往路伝搬時間Tab(第1超音波伝搬時間)を測定する(ステップS11)。
具体的には、選択回路411が第1超音波素子33A(素子列CH-A)と送信回路412との間を接続し、かつ、第2超音波素子33Bと受信回路413との間を接続する。そして、送信回路412が第1超音波素子33Aに対して所定時間だけ駆動信号を出力する。
これにより、第1超音波素子33Aから送信された超音波(バースト波)は、流路20中の流体Sの流れ(X方向の流れ)に乗って進むことで、第2流路壁222で反射した後に第2超音波素子33Bで受信される(
図6の実線矢印を参照)。TOF算出回路414は、第2超音波素子33Bから選択回路411および受信回路413を介して入力される受信信号に基づいて、往路伝搬時間Tabを算出する。
【0030】
次に、駆動制御部421の制御により、第2超音波素子33Bから第1超音波素子33AまでのTOF値である復路伝搬時間Tba(第2超音波伝搬時間)を測定する(ステップS12)。
具体的には、選択回路411が第2超音波素子33B(素子列CH-B)と送信回路412との間を接続し、かつ、第1超音波素子33Aと受信回路413との間を接続する。そして、送信回路412が第2超音波素子33Bに対して所定時間だけ駆動信号を出力する。
これにより、第2超音波素子33Bから送信された超音波(バースト波)は、流路20中の流体Sの流れに逆らって進むことで、第2流路壁222で反射した後に第1超音波素子33Aで受信される(
図6の点線矢印を参照)。TOF算出回路414は、第1超音波素子33Aから選択回路411および受信回路413を介して入力される受信信号に基づいて、復路伝搬時間Tbaを算出する。
なお、測定モードで使用される駆動電圧Vdや超音波の周波数は、特に限定されない。
【0031】
その後、流速測定部422は、ステップS11で求められた往路伝搬時間Tabと、ステップS12で求められた復路伝搬時間Tbaとの時間差に基づいて、流速Vを算出する(ステップS13)。なお、この時間差とは、逆数差であってもよい。
【0032】
具体的には、ステップS11で求められる往路伝搬時間Tabと、ステップS12で求められる復路伝搬時間Tbaとの間には、流体Sの流速に応じた時間差が生じる。
例えば、往路伝搬時間Tab、復路伝搬時間Tbaは、それぞれ以下の式(2),(3)によって表される。ここで、
図6に示すように、L(=L/2+L/2)は超音波伝搬距離であり、Cは音速であり、Vは流速、θは流路軸と超音波伝搬軸との角度である。
【数2】
【数3】
往路伝搬時間Tabと復路伝搬時間Tbaとの逆数差は、以下の式(4)で表されるため、流速Vは、以下の式(5)によって表される。
【数4】
【数5】
【0033】
また、
図6に示すように、上記式(5)におけるcosθは、以下の式(6)によって表され、超音波伝搬距離Lは、以下の式(7)によって表される。ここで、流路20の流路幅をrとし、流路軸における第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間の距離をdとする。
【数6】
【数7】
よって、上記式(5)~(7)によれば、流速Vは、以下の式(8)によって表される。
【数8】
以上により、流速測定部422は、上記式(8)を用いて、往路伝搬時間Tabと復路伝搬時間Tbaとの時間差に基づいた流速Vを算出することができる。
【0034】
(流体デバイスの制御方法)
本実施形態の流体デバイス10の制御方法の一例について、
図7のフローチャートを参照して説明する。なお、フローチャートの開始前、捕捉対象となる微粒子Mの大きさについて、予め所定の大きさが設定されていてもよいし、使用者の操作に応じて設定されてもよい。また、本実施形態では、説明の簡略化のため、定在波SWを発生させるための所定周波数fが予め決定されているものとする。
【0035】
まず、流体デバイス10は、使用者の開始操作や、流体Sの流通開始などに応じて、流体Sの流速測定を行う(ステップS21)。これにより、現在の流体Sの流速が測定される。なお、具体的な流速測定方法は、上述で説明した通りである。また、ステップS21で測定された流速Vの値は、基準流速Vsとしてメモリー43に記憶される。
【0036】
次いで、駆動制御部421は、ステップS21で測定された流速Vに応じて、駆動回路415が出力する駆動信号の振幅(駆動電圧Vd)を設定する(ステップS22)。これにより、定在波発生素子33Cから送信される超音波の振幅が設定される。
例えば、駆動制御部421は、メモリー43から捕捉対象の微粒子Mの大きさに対応する駆動テーブルまたは演算係数を特定し、特定された駆動テーブルまたは演算係数に基づいて、ステップS21で測定された流速Vに対応する駆動電圧Vdの値を算出し、算出された値を駆動回路415に設定する。
【0037】
その後、駆動制御部421は、定在波発生モードに切り替わり、流体Sにおける定在波SWの形成を開始する(ステップS23)。
具体的には、駆動制御部421の制御により、駆動回路415は、流体Sに定在波SWを発生させるための所定周波数fと、ステップS22で設定された駆動電圧Vdとを有する駆動信号を、定在波発生素子33C(素子列CH-C)に対して出力開始する。これにより、定在波発生素子33Cから超音波が送信され、流体Sに定在波SWが形成される。その結果として、微粒子Mの濃縮液Scが分離開始される。
【0038】
そして、駆動制御部421は、予め定められた所定の測定タイミングになったか否かを判定し(ステップS24)、測定タイミングになったと判定したとき(ステップS24;Yesの場合)、定在波形成を停止させる(ステップS25)。この測定タイミングは、特に限定されないが、例えば所定時間ごとに設定されていればよい。
【0039】
次いで、駆動制御部421は、測定モードに切り替わり、ステップS21と同様に、流体Sの流速測定(ステップS26)を行う。
その後、駆動制御部421は、ステップS26で測定された流速Vと、メモリー43に記憶された基準流速Vsとが一致するか否かを判定する(ステップS27)。ここで、「一致」とは、完全一致していることに限定されず、所定の誤差を含むものとする。すなわち、|V-Vs|が予め設定された誤差範囲内である場合に、両者が一致すると判定する。
【0040】
ステップS27でNoと判定される場合、駆動制御部421は、ステップS26で測定された流速Vに応じて、ステップS22と同様に駆動電圧Vdを調整する(ステップS28)。なお、駆動制御部421は、駆動電圧Vdの調整後、ステップS26で測定された流速Vの値を、メモリー43に記憶される基準流速Vsとして更新する。
【0041】
仮に、ステップS26で測定された流速Vが基準流速Vsよりも大きい場合、駆動制御部421は、駆動電圧Vdとして現在の設定値よりも大きい値を算出し、駆動回路415に設定される駆動電圧Vdを増大させる。これにより、流体S中の微粒子Mが集束する速度が速くなるため、流体Sが定在波SWの形成範囲を通過する間に所望の大きさの微粒子Mを十分に集束させることができる。
一方、ステップS26で測定された流速Vが基準流速Vsよりも小さい場合、駆動制御部421は、駆動電圧Vdとして現在の設定値よりも小さい値を算出し、駆動回路415に設定される駆動電圧Vdを減少させる。これにより、流体S中の微粒子Mが集束する速度が遅くなるため、流体Sが定在波SWの形成範囲を通過する間において、所望の大きさの微粒子Mを集束させつつ、所望の大きさよりも小さい微粒子Mを集束させないことができる。
【0042】
ステップS27でYesと判定される場合、または、ステップS28の後、駆動制御部421は、定在波発生モードに切り替わり、流体Sにおける定在波SWの形成を再開する(ステップS29)。具体的には、駆動制御部421の制御により、駆動回路415は、流体Sに定在波SWを発生させるための所定周波数fと、ステップS28で調整された駆動電圧Vd(または停止前と同じ駆動電圧Vd)とを有する駆動信号を、定在波発生素子33C(素子列CH-C)に対して出力開始する。これにより、流体Sにおける定在波SWの形成が再開される。
【0043】
その後、流体デバイス10における処理はステップS24に戻る。なお、流体デバイス10は、使用者の操作により停止指示が入力された場合や、所定時間が経過した場合などにおいて、
図7のフローチャートを終了させればよい。
以上により、
図7のフローチャートが継続する間、駆動電圧は、流速Vに応じてフィードバック制御される。
【0044】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態の流体デバイス10は、上述したように、超音波素子群である超音波素子アレイ30を備え、超音波素子アレイ30に含まれる第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bを利用して流体Sの流速Vを測定できる。すなわち、音響力を発生させるための超音波素子アレイ30を、流速測定においても利用できる。これにより、超音波素子アレイ30による音響力の発生領域における流体Sの流速情報を取得することができる。また、従来の流量計を流体デバイスに設ける場合と比べて、流体デバイス10の全体を小型化できる。
【0045】
本実施形態において、超音波素子アレイ30は、第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bとは異なる定在波発生素子33Cを含む。このような構成では、定在波発生素子33Cが発生させる定在波SWを利用して、流体S中の微粒子Mを捕捉することができる。また、所望の大きさの微粒子Mを捕捉するための超音波の振幅を適切に設定することができる。
【0046】
本実施形態において、駆動制御部421は、超音波素子アレイ30を測定モードと定在波発生モードとの間で切り替え可能である。このような構成では、測定モードと定在波発生モードとを分けて実施することで、定在波SWを発生するための超音波と流速測定のための超音波との混在を回避できるため、受信回路413の構成を簡易にすることができる。
【0047】
本実施形態において、流路20は、互いに対向する第1流路壁221および第2流路壁222を有し、第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bを含む超音波素子アレイ30は、第1流路壁221に設けられている。このような構成では、第2流路壁222における超音波の反射を利用して流速測定を行うことができる。このため、微粒子Mの捕捉などの音響力の利用と、流速測定とを、1つの超音波素子アレイ30によって実施することができる。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態の流体デバイス10について
図8を参照して説明する。
第2実施形態の流体デバイス10は、流路20に設けられる超音波素子群として、第1超音波素子アレイ30Aおよび第2超音波素子アレイ30Bを備える点以外、第1実施形態とほぼ同様の構成を備える。以下では、第1実施形態と同様の構成には同一符号を利用し、その説明を省略または簡略化する。
【0049】
第2実施形態の流体デバイス10は、第1流路壁221に設けられた第1超音波素子アレイ30Aと、第2流路壁222に設けられた第2超音波素子アレイ30Bとを備える。すなわち、第1超音波素子アレイ30Aは、第1流路壁221の一部を構成しており、第2超音波素子アレイ30Bは、第2流路壁222の一部を構成しており、それぞれ、流路本体22内の流体Sに面する。
なお、以下では、第1超音波素子アレイ30Aおよび第2超音波素子アレイ30Bを単に超音波素子アレイ30A,30Bと記載する場合がある。
【0050】
超音波素子アレイ30A,30Bの各構成は、第1実施形態の超音波素子アレイ30とほぼ同様であり、それぞれ、アレイ状に配置される複数の超音波素子33を含む。超音波素子アレイ30A,30Bにおける各超音波素子33は、第1実施形態と同様、回路部41を介して駆動制御部421により駆動制御される。
ただし、第1超音波素子アレイ30Aは、複数の超音波素子33として、第1超音波素子33Aおよび複数の定在波発生素子33Cを含む。第2超音波素子アレイ30Bは、複数の超音波素子33として、第2超音波素子33Bおよび複数の定在波発生素子33Cを含む。
【0051】
第1超音波素子アレイ30Aにおける第1超音波素子33A(素子列CH-A)の配置、および、第2超音波素子アレイ30Bにおける第2超音波素子33B(素子列CH-B)の配置は、それぞれ特に限定されないが、第1超音波素子33A(素子列CH-A)は、第2超音波素子33B(素子列CH-B)よりも流路20の上流側に配置されるものとする。
なお、
図8に示す例では、第1超音波素子アレイ30Aにおいて上流側の端部に配置される超音波素子33が第1超音波素子33Aであり、第2超音波素子アレイ30BにおいてX方向中央部に配置される超音波素子33が第2超音波素子33Bである。ここで、第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間のX方向の素子間距離dは既知である。
【0052】
第2実施形態の流体デバイス10における流速測定方法および制御方法は、第1実施形態と同様である。ただし、第2実施形態において、超音波伝搬距離L’は、以下の式(9)によって表され、上記式(5)におけるcosθは、以下の式(10)によって表される。よって、流速Vは、以下の式(11)によって表される。
【数9】
【数10】
【数11】
【0053】
以上説明した第2実施形態の流体デバイス10では、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態の流体デバイス10では、流速測定の際、反射を経ずに超音波を送受信できるため、受信回路413におけるノイズを低減させることができる。
【0054】
[第3実施形態]
第3実施形態の流体デバイス10Aについて
図9を参照して説明する。
第3実施形態の流体デバイス10Aでは、回路部41Aが第1実施形態の駆動回路415を備えていない点以外、第1実施形態とほぼ同様の構成を備える。以下では、第1実施形態と同様の構成には同一符号を利用し、その説明を省略または簡略化する。
【0055】
第3実施形態において、選択回路411Aは、超音波素子アレイ30の各超音波素子33(素子列CH)と送信回路412または受信回路413とを接続可能である。
駆動制御部421が定在波発生モードに切り替わると、駆動制御部421の制御により、選択回路411Aが定在波発生素子33C(素子列CH-C)と送信回路412とを接続する。そして、送信回路412は、定在波発生素子33C(素子列CH-C)に対し、定在波SWを形成するための所定周波数fの駆動信号を出力する。
【0056】
なお、第3実施形態では、定在波発生モードにおいて、定在波発生素子33C(素子列CH-C)だけでなく、第1超音波素子33A(素子列CH-A)および第2超音波素子33B(素子列CH-B)が送信回路412に接続されてもよい。すなわち、定在波発生素子33C(素子列CH-C)だけでなく、第1超音波素子33A(素子列CH-A)および第2超音波素子33B(素子列CH-B)も共に、定在波SWを発生させるための超音波を送信してもよい。
【0057】
また、第3実施形態では、測定モードにおいて、超音波素子アレイ30のうちの任意の超音波素子33が第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bとして選択されてもよい。
【0058】
[変形例]
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、および各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
【0059】
(変形例1)
上記第1,第2実施形態では、駆動制御部421が超音波素子アレイ30を測定モードと定在波発生モードとに切り替えるが、定在波SWの形成中に流体Sの流速Vを測定してもよい。
例えば、変形例に係る流体デバイス10の制御方法では、上記第1実施形態で説明した
図7のフローチャートのうち、ステップS25,S29を省略してもよい。この場合、駆動回路415は、ステップS23において定在波発生素子33Cを駆動開始した後、当該定在波発生素子33Cを継続的に駆動する。ステップS26では、駆動回路415が定在波発生素子33Cを継続的に駆動している間、上記第1実施形態と同様の流速測定方法を実施する。
【0060】
このような変形例において、第1超音波素子33Aまたは第2超音波素子33Bから送信される超音波の周波数(すなわち流速測定用の超音波の周波数)は、定在波発生素子33Cから送信される超音波の周波数(すなわち定在波形成用の超音波の周波数)とは異なることが好ましい。この場合、受信回路413は、参照信号回路やローパスフィルターを含んで構成され、直交検波などの検波方式を実施することにより、流速測定用の超音波に由来する受信信号を抽出することができる。
なお、流速測定に使用される超音波の周波数と、定在波形成に使用される超音波の周波数とは、同じであってもよい。この場合、受信回路413は、定在波形成のための連続波に由来する受信信号をフィルターで取り除き、流速測定のためのバースト波に由来する受信信号を抽出すればよい。
【0061】
(変形例2)
上記各実施形態において、超音波素子アレイ30,30A,30Bは、アレイ状に配置される複数の超音波素子33を含むものであればよい。例えば、超音波素子アレイ30,30A,30Bは、XZ平面に2次元配列された複数の超音波素子33を含むものに限定されず、少なくともX方向に1次元配列された複数の超音波素子33を含むものであればよい。
また、上記第1実施形態では、超音波素子アレイ30において、上流側の端部に配置される超音波素子33を第1超音波素子33Aとし、下流側の端部に配置される超音波素子33を第2超音波素子33Bとしているが、第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bは、それぞれ任意の超音波素子33であればよい。
また、上記第1実施形態では、第1超音波素子33Aと第2超音波素子33Bとの間には、複数の定在波発生素子33Cが配置されるが、少なくとも1つの定在波発生素子33Cが配置されればよい。
【0062】
(変形例3)
上記各実施形態の超音波素子アレイ30,30A,30Bは、定在波発生素子33Cを含まなくてもよい。例えば、超音波素子アレイ30,30A,30Bのうち、流速測定に用いられる第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33B以外の超音波素子33は、流体中の音速測定など、任意の用途に用いられてもよい。
【0063】
(変形例4)
上記各実施形態では、流路20は、互いに対向する第1流路壁221および第2流路壁222を有さずともよい。例えば、流路20は、円管形状を有してもよい。この場合、超音波素子アレイ30,30A,30Bは、X方向に1次元配列された複数の超音波素子33を含むことが好ましい。
【0064】
(変形例5)
上記各実施形態では、流路20に設けられる超音波素子群が、1つの超音波素子アレイ30、または、互いに対向配置される第1超音波素子アレイ30Aおよび第2超音波素子アレイ30Bを含む場合を説明しているが、これらに限定されない。
例えば、流路20に設けられる超音波素子群は、流路20の第1流路壁221に配置される複数の超音波素子アレイ30を含んでもよい。この場合、第1超音波素子33Aおよび第2超音波素子33Bは、任意の超音波素子アレイ30に含まれていればよく、第1超音波素子33Aが含まれる超音波素子アレイ30と、第2超音波素子33Bが含まれる超音波素子アレイ30とは互いに異なってもよい。
【0065】
(変形例6)
上記各実施形態の超音波素子アレイ30,30A,30Bにおいて、超音波素子33の構成は、上述したものに限定されない。
例えば、超音波素子33は、圧電アクチュエーターを振動させる構成を有してもよいし、静電アクチュエーターに含まれる振動板を振動させる構成を有してもよい。このような超音波素子33は、所定駆動周波数の駆動信号が印加されることで振動を生じさせ、超音波を送信することができる。
【0066】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)
本開示に係る流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、前記駆動制御部は、前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させ、前記流速測定部は、前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定する。
このような構成では、超音波素子群に含まれる任意の超音波素子を利用して、流体の流速を測定することができる。その結果、音響力の発生領域における流体の流速情報を取得することができ、流体中の微粒子に対する音響力を適切に設定することができる。また、従来の流量計を流体デバイスに設ける場合と比べて、流体デバイスの全体を小型化できる。
【0067】
(付記2)
付記1に記載の流体デバイスにおいて、前記超音波素子群には、前記第1超音波素子と前記第2超音波素子との間に配置される定在波発生素子が含まれ、前記駆動制御部は、前記定在波発生素子から前記流体に所定周波数の超音波を送信させることで、前記流体に定在波を発生させることが好ましい。
このような構成では、定在波発生素子が発生させる定在波を利用して、流体中の微粒子を捕捉することができる。また、所望の大きさの微粒子を捕捉するための超音波の振幅を適切に設定することができる。
【0068】
(付記3)
付記2に記載の流体デバイスにおいて、前記第1超音波素子または前記第2超音波素子から送信される超音波の周波数と、前記定在波発生素子から送信される超音波の周波数とは、互いに異なることが好ましい。
このような構成では、定在波形成用の超音波および流速測定用の超音波が共に受信されたとしても、流速測定用の超音波による信号を好適に検出することができる。
【0069】
(付記4)
付記2または付記3に記載の流体デバイスにおいて、前記駆動制御部は、前記第1超音波素子と前記第2超音波素子との間で超音波を送受信させる測定モードと、前記定在波発生素子から前記所定周波数の超音波を送信させる定在波発生モードとを切り替え可能であることが好ましい。
このような構成では、測定モードと定在波発生モードとを分けて実施することで、流速測定用の超音波による信号検出を簡易に行うことができる。
【0070】
(付記5)
付記4に記載の流体デバイスにおいて、前記駆動制御部は、前記定在波発生モードにおいて、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子が前記定在波発生素子と共に前記定在波を発生させるように、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子を前記定在波発生素子と共に駆動してもよい。
このような構成では、定在波発生素子だけでなく、第1超音波素子および第2超音波素子を定在波発生のために利用できるため、定在波をより広い範囲に発生させることができる。
【0071】
(付記6)
付記1~付記5のいずれかに記載の流体デバイスにおいて、前記流路は、互いに対向する第1流路壁および第2流路壁を有し、前記超音波素子群は、前記第1流路壁に設けられ、かつ、前記第1超音波素子および前記第2超音波素子を含む超音波素子アレイであってもよい。
このような構成では、第1超音波素子と第2超音波素子との間の超音波伝搬距離を確保でき、流速測定の分解能を向上できる。
【0072】
(付記7)
付記1~付記6のいずれかに記載の流体デバイスにおいて、前記流路は、互いに対向する第1流路壁および第2流路壁を有し、前記超音波素子群は、前記第1流路壁に設けられ、かつ、前記第1超音波素子を含む第1超音波素子アレイと、前記第2流路壁に設けられ、かつ、前記第2超音波素子を含む第2超音波素子アレイと、を有してもよい。
このような構成では、流速測定用の超音波を受信する際のS/N比を向上でき、流速測定の精度を向上できる。
【0073】
(付記8)
本開示に係る流体デバイスの制御方法は、流体の流速を測定する流体デバイスの制御方法であって、前記流体デバイスは、流体が流通する流路と、前記流路に設けられ、アレイ状に配置される複数の超音波素子を含む超音波素子群と、前記複数の超音波素子の駆動を制御する駆動制御部と、前記流体の流速を測定する流速測定部と、を備え、前記駆動制御部が前記超音波素子群のうち前記流体の流通方向において互いに異なる位置に配置される任意の第1超音波素子と第2超音波素子との間で、前記流体を介して超音波を互いに送受信させるステップと、前記流速測定部が前記第1超音波素子から前記第2超音波素子までの第1超音波伝搬時間と、前記第2超音波素子から前記第1超音波素子までの第2超音波伝搬時間との差に基づいて前記流速を測定するステップとを含む。
このような方法によっては、上述した流体デバイスの効果と同様の効果を得られる。
【符号の説明】
【0074】
10,10A…流体デバイス、20…流路、21…流入口、22…流路本体、221…第1流路壁、222…第2流路壁、23…濃縮出口、24…排出口、25…流路基板、30…超音波素子アレイ、30A…第1超音波素子アレイ、30B…第2超音波素子アレイ、31…素子基板、311…基板本体部、311A…開口部、312…振動膜、312A…振動部、32…圧電素子、321…第1電極、321P…電極端子、322…圧電膜、323…第2電極、324…共通電極線、324P…電極端子、33…超音波素子、33A…第1超音波素子、33B…第2超音波素子、33C…定在波発生素子、40…制御部、41,41A…回路部、411,411A…選択回路、412…送信回路、413…受信回路、414…TOF算出回路、415…駆動回路、42…プロセッサー、421…駆動制御部、422…流速測定部、43…メモリー、CH,CH-A,CH-B,CH-C…素子列、d…素子間距離、L…超音波伝搬距離、M…微粒子、r…流路幅、S…流体、Sc…濃縮液、Sr…流体、SW…定在波、V…流速。