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特開2024-54056電気カテーテル装置、カテーテル、ケーブル、カテーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054056
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電気カテーテル装置、カテーテル、ケーブル、カテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20240409BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61N1/39
A61N1/05
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033832
(22)【出願日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2022160112
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】桝田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中神 一樹
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC03
4C053JJ01
4C053JJ11
4C053JJ23
(57)【要約】
【課題】絶縁性と操作性を両立させられる電気カテーテル装置等を提供する。
【解決手段】電気カテーテル装置は、第1電極と、第2電極と、第1電極が接続されて除細動カテーテルの基端側まで延びる第1導体と、第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導体と、第1導体および第2導体の基端部51および52を一体的に収納するコネクタと23、を備えるカテーテルと、コネクタ23に接続され、第1導体および第2導体のそれぞれの基端部51および52に異なる電圧を印加する電圧印加装置と、を備える。コネクタ23において、第1導体の基端部51と第2導体の基端部52の間に空間距離より長い沿面距離が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極が接続されてカテーテルの基端側まで延びる第1導体と、前記第2電極が接続されて前記基端側まで延びる第2導体と、前記第1導体および前記第2導体の基端部を一体的に収納するコネクタと、を備えるカテーテルと、
前記コネクタに接続され、前記第1導体および前記第2導体のそれぞれの基端部に異なる電圧を印加する電圧印加装置と、
を備え、
前記コネクタにおいて、前記第1導体の基端部と前記第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供される、電気カテーテル装置。
【請求項2】
前記沿面距離は、前記第1導体の基端部が設けられる第1端面と交差する交差面において提供される、請求項1に記載の電気カテーテル装置。
【請求項3】
前記交差面は、前記第2導体の基端部が設けられる第2端面と交差し、
前記第1端面および前記第2端面の少なくともいずれかの法線方向視で、当該第1端面は当該第2端面を包囲する、請求項2に記載の電気カテーテル装置。
【請求項4】
前記コネクタは、前記カテーテルに設けられて体内の電位を測定する第3電極が接続されて前記基端側まで延びる第3導体の基端部を、前記第1導体および前記第2導体の基端部と共に一体的に収納し、
前記第2端面は、前記第3導体の基端部が設けられる第3端面を、前記法線方向視で包囲する、
請求項3に記載の電気カテーテル装置。
【請求項5】
前記コネクタにおいて、前記第1導体の基端部が設けられる第1端面と、前記第2導体の基端部が設けられる第2端面の間に、当該第1端面および当該第2端面の少なくともいずれかの法線方向に交差する方向の前記沿面距離が提供される、請求項1に記載の電気カテーテル装置。
【請求項6】
前記第1導体は、前記第1電極が接続されて前記基端部まで延びる第1導線と、当該基端部において当該第1導線が接続される第1端子と、を備え、
前記第2導体は、前記第2電極が接続されて前記基端部まで延びる第2導線と、当該基端部において当該第2導線が接続される第2端子と、を備え、
前記コネクタは、前記第1端子および前記第2端子を一体的に収納し、
前記電圧印加装置は、前記第1端子および前記第2端子のそれぞれの基端部に前記電圧を印加し、
前記第1端子と前記第2端子の間に前記沿面距離が提供される、
請求項1から5のいずれかに記載の電気カテーテル装置。
【請求項7】
前記沿面距離は、前記第1端子の基端部と前記第2端子の基端部の間に提供される、請求項6に記載の電気カテーテル装置。
【請求項8】
前記沿面距離は、前記第1端子の先端部と前記第2端子の先端部の間に提供される、請求項6に記載の電気カテーテル装置。
【請求項9】
前記第1導線の基端部および前記第2導線の基端部を、互いに絶縁されるように被覆する絶縁体を備える、請求項8に記載の電気カテーテル装置。
【請求項10】
前記絶縁体は、前記第2導線の基端部が接続された前記第2端子の先端部を被覆する第2絶縁体と、前記第1導線の基端部が接続された前記第1端子の先端部を前記第2絶縁体と共に被覆する第1絶縁体と、を備える、請求項9に記載の電気カテーテル装置。
【請求項11】
前記第1導線および前記第2導線の少なくともいずれかが延びる軸方向視で、前記第1端子は前記第2端子の外周側に設けられる、請求項10に記載の電気カテーテル装置。
【請求項12】
前記第1端子の先端部は前記第2端子の先端部より基端側に設けられる、請求項11に記載の電気カテーテル装置。
【請求項13】
前記カテーテルは、不整脈部位に対して前記第1電極と前記第2電極の間の電圧に基づく電気刺激を付与する除細動カテーテルである、請求項1から5のいずれかに記載の電気カテーテル装置。
【請求項14】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極が接続されてカテーテルの基端側まで延びる第1導体と、
前記第2電極が接続されて前記基端側まで延びる第2導体と、
前記第1導体および前記第2導体のそれぞれの基端部に異なる電圧を印加する電圧印加装置が接続されるコネクタであって、当該第1導体および当該第2導体の基端部を一体的に収納し、当該第1導体および当該第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるコネクタと、
を備えるカテーテル。
【請求項15】
カテーテルに設けられる第1電極と第2電極の間に異なる電圧を印加する電圧印加装置に基端が接続されるケーブルであって、
前記ケーブルの先端が、前記第1電極が接続されて前記カテーテルの基端側まで延びる第1導体および前記第2電極が接続されて前記基端側まで延びる第2導体のそれぞれの基端部を一体的に収納するコネクタに接続され、
前記コネクタには、前記第1導体の基端部と前記第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供される、
ケーブル。
【請求項16】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極が接続されて基端側まで延びる第1導線と、その基端部に接続される第1端子と、前記第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導線と、その基端部に接続される第2端子と、前記第1端子および前記第2端子を一体的に収納するコネクタと、を備え、前記第1端子の先端部と前記第2端子の先端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるカテーテルの製造方法であって、
第2絶縁体によって、前記第2導線の基端部が接続された前記第2端子の先端部を被覆することと、
第1絶縁体によって、前記第1導線の基端部が接続された前記第1端子の先端部を前記第2絶縁体と共に被覆することと、
を実行するカテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気カテーテル装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体内の不整脈部位に対して電気刺激を付与する除細動カテーテルが開示されている。除細動カテーテルの先端側には、直流電圧が印加される二つの電極(群)が設けられている。一方の電極には正電圧(正電位)が印加され、他方の電極には負電圧(負電位)が印加される。本明細書では、所定時点で正電圧が印加されている電極を正極や+極と便宜的に表し、当該所定時点で負電圧が印加されている電極を便宜的に負極や-極と表す。この所定時点と異なる時点では、正極に負電圧が印加され、負極に正電圧が印加されることもある。但し、いずれの時点でも正極と負極には異なる電圧が印加される(あるいは、いずれの電極にも電圧が印加されない)。同様に、正極および負極と接続されてカテーテルの基端側まで延びる導線を、それぞれ正極導線および負極導線と便宜的に表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-115567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極と負極の間には例えば600Vにも及ぶ高電圧が印加されうるため、短絡が発生しないように正極導線および負極導線の間の絶縁性を高めることが重要である。従来の除細動カテーテルでは、正極導線および負極導線が絶縁のために完全に隔離または分離されることもあった。この場合、除細動カテーテルの基端部を電圧印加装置のケーブルに接続するためのコネクタが、正極導線用と負極導線用に分かれた二股構造となってしまう。これに合わせて、電圧印加装置のケーブルも正極導線接続用と負極導線接続用に分かれた二股構造となってしまう。このように複雑な二股構造となることで体積や重量が増加したコネクタやケーブルは、除細動カテーテルの操作性を低下させる恐れがある。例えば、医師による除細動カテーテルの操作に伴ってケーブルが絡まってしまった場合、それをほどくためや一旦コネクタからケーブルを外して再接続するために、除細動処置を中断しなければならない場合も想定される。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、絶縁性と操作性を両立させられる電気カテーテル装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電気カテーテル装置は、第1電極と、第2電極と、第1電極が接続されてカテーテルの基端側まで延びる第1導体と、第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導体と、第1導体および第2導体の基端部を一体的に収納するコネクタと、を備えるカテーテルと、コネクタに接続され、第1導体および第2導体のそれぞれの基端部に異なる電圧を印加する電圧印加装置と、を備え、コネクタにおいて、第1導体の基端部と第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供される。
【0007】
この態様では、コネクタが第1導体(例えば正極導線に導通する)および第2導体(例えば負極導線に導通する)の基端部を一体的に収納するため、前述の二股構造のコネクタと比較してカテーテルの操作性を高められる。また、コネクタにおいて、第1導体の基端部と第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるため、両導線間の絶縁性も高められる。
【0008】
本開示の別の態様は、カテーテルである。このカテーテルは、第1電極と、第2電極と、第1電極が接続されてカテーテルの基端側まで延びる第1導体と、第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導体と、第1導体および第2導体のそれぞれの基端部に異なる電圧を印加する電圧印加装置が接続されるコネクタであって、当該第1導体および当該第2導体の基端部を一体的に収納し、それらの間に空間距離より長い沿面距離が提供されるコネクタと、を備える。
【0009】
本開示の更に別の態様は、ケーブルである。このケーブルは、カテーテルに設けられる第1電極と第2電極の間に異なる電圧を印加する電圧印加装置に基端が接続されるケーブルであって、その先端が、第1電極が接続されてカテーテルの基端側まで延びる第1導体および第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導体のそれぞれの基端部を一体的に収納するコネクタであって、当該第1導体の基端部と当該第2導体の基端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるコネクタに接続される。
【0010】
本開示の更に別の態様は、カテーテルの製造方法である。この方法は、第1電極と、第2電極と、第1電極が接続されて基端側まで延びる第1導線と、その基端部に接続される第1端子と、第2電極が接続されて基端側まで延びる第2導線と、その基端部に接続される第2端子と、第1端子および第2端子を一体的に収納するコネクタと、を備え、第1端子の先端部と第2端子の先端部の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるカテーテルの製造方法であって、第2絶縁体によって、第2導線の基端部が接続された第2端子の先端部を被覆することと、第1絶縁体によって、第1導線の基端部が接続された第1端子の先端部を第2絶縁体と共に被覆することと、を実行する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電気カテーテル装置等によれば、絶縁性と操作性を両立させられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電気カテーテル装置の全体的な構成を示す。
図2図1のシャフト10のA-A断面図である。
図3】ハンドル部を基端側から見た斜視図である。
図4】コネクタ本体の内部における導体群の基端部を模式的に示す。
図5】導体群の基端部の軸方向視の配置の変形例を示す。
図6】導体群の基端部の径方向視の配置の変形例を示す。
図7】コネクタの変形例を示す断面図である。
図8】二段階で形成される絶縁体を模式的に示す。
図9】二段階で形成される絶縁体を模式的に示す。
図10】二段階で形成される絶縁体を模式的に示す。
図11】二段階で形成される絶縁体を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表す)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本開示の実施形態に係る電気カテーテル装置の全体的な構成を示す。電気カテーテル装置は、除細動カテーテル100および電圧印加装置200を備える。除細動カテーテル100は、体内の不整脈部位に対して電気刺激を付与して除細動を行う。不整脈の原因となる不整脈部位の典型例としては、右心房や左心房等の心房、右心室や左心室等の心室が挙げられる(以下では、心房および心室を総称して心腔とも表す)。なお、本開示に係る電気カテーテル装置に利用可能なカテーテルは、以下で詳述する心腔内を対象部位とする除細動カテーテル100に限定されない。具体的には、先端側(体内側)に設けられる複数の電極(後述する第1電極および第2電極)の間の直流または交流の電圧に基づく電気的処置を体内の対象部位に施せるカテーテルであればよい。例えば、複数の電極の間の電圧に応じて発生するパルス電界によって、不整脈部位等の対象部位に焼灼(アブレーション)処理を施すパルス電界アブレーションカテーテルが、本開示に係る電気カテーテル装置に利用されてもよい。
【0016】
除細動カテーテル100は、可撓性を有し体内に挿入される管状のシャフト10と、シャフト10の基端側(体外側)に接続されているハンドル部20を備える。除細動カテーテル100の操作者である医師等は、ハンドル部20を把持しながら除細動カテーテル100を操作する。ハンドル部20は、ハンドル本体21と、つまみ状の操作部22と、コネクタ23と、ストレインリリーフ24を備える。除細動カテーテル100の操作者は、ハンドル本体21を手で把持しながら指で操作部22を回転させることで、後述するプルワイヤを通じてシャフト10の先端部(図1における左端部)を所定の方向に偏向(首振り)させられる。また、ハンドル本体21を周方向に回転することで、シャフト10の先端部を所望の方向に配置させることができる。コネクタ23には、電圧印加装置200および/または心電計のケーブル2の先端が接続される。
【0017】
除細動カテーテル100およびシャフト10の先端側には、第1電極群31G、第2電極群32G、第3電極群33Gの三種類の電極群が設けられる。シャフト10の軸方向(図1における左右方向)における第1電極群31G、第2電極群32G、第3電極群33Gの位置や順序は任意であるが、図示の例では、先端側から基端側に向かって第1電極群31G、第2電極群32G、第3電極群33Gの順に配置されている。このような電極配置の除細動カテーテル100によって心腔内に除細動処置を施す場合、例えば、先端側の第1電極群31Gは冠状静脈に位置し、基端側の第2電極群32Gは右心房に位置し、更に基端側の第3電極群33Gは上大静脈に位置する。
【0018】
第1電極群31Gは、軸方向に分離された複数(本実施形態では8個)のリング状の第1電極31を備える。第2電極群32Gは、軸方向に分離された複数(本実施形態では8個)のリング状の第2電極32を備える。第3電極群33Gは、軸方向に分離された複数(本実施形態では4個)のリング状の第3電極33を備える。なお、各電極群31G、32G、33Gは、一つの電極によって構成されてもよい(この場合は厳密には「電極群」ではない)。また、図示の例のように、複数の電極31、32、33は電極群31G、32G、33G毎に固まって配置されなくてもよく、それぞれが軸方向の任意の位置に任意の順番で散らばるように配置されてもよい。除細動カテーテル100およびシャフト10の先端には、保護用のチップ35が設けられる。
【0019】
第1電極31および第2電極32には、コネクタ23に接続される電圧印加装置200によって異なる極性の電圧が印加される。具体的には、第1電極31に正(+)の電圧が印加されている間は第2電極32に負(-)の電圧が印加され、第1電極31に負の電圧が印加されている間は第2電極32に正の電圧が印加される。また、第1電極31に正および負のいずれの電圧も印加されていない間は、第2電極32にも正および負のいずれの電圧も印加されない。一般的な除細動処置では、除細動カテーテル100が不整脈部位に対して、第1電極31(例えば冠状静脈)と第2電極32(右心房)の間の直流電圧(直流電源装置としての電圧印加装置200によって印加される)に基づく電気刺激を付与する。
【0020】
以下では、第1電極31を便宜的に正極や+極と表し、第2電極32を便宜的に負極や-極と表す。この表現は、所定時点で第1電極31に正電圧が印加され、当該所定時点で第2電極32に負電圧が印加されるという事実のみによる。従って、この所定時点と異なる時点では、正極としての第1電極31に負電圧が印加され、負極としての第2電極32に正電圧が印加されてもよい。なお、電圧印加装置200が第1電極31および第2電極32に印加する電圧の極性反転の頻度を高めることによって、第1電極31および第2電極32の間に交流電圧を印加することも可能である(この場合の電圧印加装置200は交流電源装置として機能する)。図示の例のように、複数の第1電極31によって第1電極群31Gが構成され、複数の第2電極32によって第2電極群32Gが構成される場合、全ての第1電極31は実質的に同電位(例えば正電位)であり、全ての第2電極32は第1電極31と逆の極性の実質的に同電位(例えば負電位)である。
【0021】
第3電極33は、除細動カテーテル100およびシャフト10の先端側(但し、本実施形態の例では、第1電極31および第2電極32よりは基端側)に設けられて体内(例えば、異常電位が発生しやすい上大静脈)の電位(例えば、心電位)を測定する。第3電極33は、コネクタ23を介して心電計等の機能を備える電圧印加装置200または単体の心電計等に接続される。
【0022】
図2は、図1のシャフト10のA-A断面図である。このA-A断面は、いずれの電極群31G、32G、33Gよりも基端側の任意の位置におけるシャフト10の断面である。管状のシャフト10の内部には、第1ルーメン11、第2ルーメン12、第3ルーメン13、第4ルーメン14の四つのルーメン(内腔)が形成されている。各ルーメン11~14は、フッ素樹脂等からなる管状のインナーチューブ15によって区画されている。
【0023】
第1ルーメン11の内部には、除細動カテーテル100の先端側において第1電極群31Gと電気的に接続され、除細動カテーテル100の基端側のコネクタ23まで延びる第1導線群41Gが挿通されている。第1導線群41Gは、第1電極群31Gにおける複数の第1電極31と同数(本実施形態では8本)の第1導線41を備える。各第1導線41の先端部は、各第1電極31と一対一に接続される。各第1導線41の基端部は、後述する端子部40における各第1端子41’の先端部と接続されて、各第1導体41”を構成する。各第1導体41”の基端部(すなわち、各第1端子41’の基端部)は、コネクタ23において電圧印加装置200のケーブル2の先端に接続される。このように、第1導線群41Gおよび第1端子群41G’は、除細動カテーテル100の先端側の第1電極群31Gと、除細動カテーテル100の基端側の電圧印加装置200を相互に接続する。電圧印加装置200は、基端が接続されるケーブル2、第1端子群41G’、第1導線群41Gを通じて、正極群としての第1電極群31Gに正電圧(または負電圧)を印加できる。
【0024】
なお、各第1導線41の基端側は、コネクタ23内まで途切れずに延びていてもよいが、より現実的にはコネクタ23内に収納されている端子部40(図3におけるコネクタ23(コネクタ本体231)内に視認できる構造、図4図6も参照)と、コネクタ23の先端側(不図示)において電気的に接続される。この場合、コネクタ23内に収納されているのは、第1導線41の基端部ではなく、それと電気的に接続された端子部40の第1端子41’の基端部である。このように、第1電極群31Gとコネクタ23の間を電気的に接続する第1導体群41G”が、互いに導通した第1導線群41Gと端子部40における第1端子群41G’によって構成される。
【0025】
第2ルーメン12の内部には、除細動カテーテル100の先端側において第2電極群32Gと電気的に接続され、除細動カテーテル100の基端側のコネクタ23まで延びる第2導線群42Gが挿通されている。第2導線群42Gは、第2電極群32Gにおける複数の第2電極32と同数(本実施形態では8本)の第2導線42を備える。各第2導線42の先端部は、各第2電極32と一対一に接続される。各第2導線42の基端部は、後述する端子部40における各第2端子42’の先端部と接続されて、各第2導体42”を構成する。各第2導体42”の基端部(すなわち、各第2端子42’の基端部)は、コネクタ23において電圧印加装置200のケーブル2の先端に接続される。このように、第2導線群42Gおよび第2端子群42G’は、除細動カテーテル100の先端側の第2電極群32Gと、除細動カテーテル100の基端側の電圧印加装置200を相互に接続する。電圧印加装置200は、そのケーブル2、第2端子群42G’、第2導線群42Gを通じて、負極群としての第2電極群32Gに負電圧(または正電圧)を印加できる。
【0026】
なお、各第2導線42の基端側は、コネクタ23内まで途切れずに延びていてもよいが、より現実的にはコネクタ23内に収納されている端子部40と、コネクタ23の先端側(不図示)において電気的に接続される。この場合、コネクタ23内に収納されているのは、第2導線42の基端部ではなく、それと電気的に接続された端子部40の第2端子42’の基端部である。このように、第2電極群32Gとコネクタ23の間を電気的に接続する第2導体群42G”が、互いに導通した第2導線群42Gと端子部40における第2端子群42G’によって構成される。
【0027】
第3ルーメン13の内部には、除細動カテーテル100の先端側において第3電極群33Gと電気的に接続され、除細動カテーテル100の基端側のコネクタ23まで延びる第3導線群43Gが挿通されている。第3導線群43Gは、第3電極群33Gにおける複数の第3電極33と同数(本実施形態では4本)の第3導線43を備える。各第3導線43の先端部は、各第3電極33と一対一に接続される。各第3導線43の基端部は、後述する端子部40における各第3端子43’の先端部と接続されて、各第3導体43”を構成する。各第3導体43”の基端部(すなわち、各第3端子43’の基端部)は、コネクタ23において心電計の機能を備える電圧印加装置200または単体の心電計のケーブル2の先端に接続される。このように、第3導線群43Gおよび第3端子群43G’は、除細動カテーテル100の先端側の第3電極群33Gと、除細動カテーテル100の基端側の電圧印加装置200および/または心電計を相互に接続する。電圧印加装置200および/または心電計は、そのケーブル2、第3端子群43G’、第3導線群43Gを通じて、測定電極群としての第3電極群33Gで測定された心電位等を取得できる。
【0028】
なお、各第3導線43の基端側は、コネクタ23内まで途切れずに延びていてもよいが、より現実的にはコネクタ23内に収納されている端子部40と、コネクタ23の先端側(不図示)において電気的に接続される。この場合、コネクタ23内に収納されているのは、第3導線43の基端部ではなく、それと電気的に接続された端子部40の第3端子43’の基端部である。このように、第3電極群33Gとコネクタ23の間を電気的に接続する第3導体群43G”が、互いに導通した第3導線群43Gと端子部40における第3端子群43G’によって構成される。
【0029】
第4ルーメン14の内部には、一本のプルワイヤ71が挿通されている。プルワイヤ71の先端部はチップ35に固定され、プルワイヤ71の基端部はハンドル部20の操作部22に固定される。第4ルーメン14がシャフト10の中心軸からずれている(偏心している)ため、操作部22によるプルワイヤ71の操作を通じてシャフト10の先端部を偏向(首振り)させられる。具体的には、除細動カテーテル100の操作者が操作部22を一方向に回転させると、プルワイヤ71が基端側(図2における手前)に引っ張られて、チップ35が設けられるシャフト10の先端部が一方向(図2における略左方)に偏向する。同様に、除細動カテーテル100の操作者が操作部22を他方向に回転させると、プルワイヤ71が先端側(図2における奥)に押し出されて、チップ35が設けられるシャフト10の先端部が他方向(図2における略右方)に偏向する。
【0030】
図3は、ハンドル部20を基端側から見た斜視図である。ハンドル部20の基端部を構成するコネクタ23は、略円筒状のコネクタ本体231を備える。コネクタ本体231は、第1端子群41G’の基端部51、第2端子群42G’の基端部52、第3端子群43G’の基端部53を一体的に収納する。電圧印加装置200および/または心電計のケーブル2の先端部が、コネクタ本体231の内部の空間に基端側から挿入されて端子部40に装着可能となっている。ケーブル2は、除細動カテーテル100の第1端子群41G’、第2端子群42G’、第3端子群43G’に対応する三種類の端子群を備え、それぞれの先端部が対応する端子群41G’、42G’、43G’の基端部51、52、53に接続される。この結果、電圧印加装置200は、第1端子群41G’の基端部51および第2端子群42G’の基端部52を通じて、第1電極群31Gおよび第2電極群32Gに異なる電圧を印加できる。また、心電計の機能を備える電圧印加装置200は、第3端子群43G’の基端部53を通じて、第3電極群33Gで測定された心電位を取得できる。
【0031】
図4は、コネクタ本体231の内部における端子部40の端子群41G’、42G’、43G’の基端部51、52、53を模式的に示す。本図における上方は除細動カテーテル100が存在する先端側であり、本図における下方は電圧印加装置200が存在する基端側である。先端側には端子群41G’、42G’、43G’の基端部51、52、53が模式的に示されており、基端側には端子群41G’、42G’、43G’に対応する三種類の端子群を備える電圧印加装置200のケーブル2が模式的に示されている。ケーブル2の先端部(図4における上端部)は、基端部51、52、53によって形成される後述の凹凸形状に適合する凹凸形状に形成されている。このため、図4における上向きの矢印によって模式的に示されるように先端側に向かって挿入されるケーブル2の先端部は、基端部51、52、53の凹凸形状に嵌まり込んで強固に装着または固定される。ケーブル2がコネクタ23に接続されるとき、基端部51、52、53は僅かに露出する可能性がある。
【0032】
電圧印加装置200によって正電圧(または負電圧)が印加される正極端子群としての第1端子群41G’の基端部51と、電圧印加装置200によって負電圧(または正電圧)が印加される負極端子群としての第2端子群42G’の基端部52の間には、両者を絶縁する、空間距離より長い沿面距離が提供される。沿面距離とは絶縁体の表面に沿った導体間の距離である。図4の例では、第1端子群41G’の基端部51が設けられる第1端面と、第2端子群42G’の基端部52が設けられる第2端面の間の、当該第1端面および当該第2端面の少なくともいずれかの法線方向(図4における上下方向)の距離Daが、両基端部51、52の間の沿面距離である。なお、沿面距離は、図示のような第1端面および/または第2端面と直交する直交面に限らず、第1端面および/または第2端面と交差する交差面において提供されてもよい。また、沿面距離は、異なる複数の隣接する絶縁体の表面に亘って構成されてもよい。
【0033】
なお、厳密には、図4において左側の太い実線で示されるように、第1端子群41G’を構成する複数の第1端子41’(複数の第1導線41と電気的に接続されている)および第2端子群42G’を構成する複数の第2端子42’(複数の第2導線42と電気的に接続されている)のうち、互いに最も近い第1端子41’(図示の例では最も右側の第1端子41’)および第2端子42’(図示の例では最も左側の第2端子42’)の間の絶縁体の表面に沿った距離が両基端部51、52の間の沿面距離になる。従って、両基端部51、52の間の沿面距離は、法線方向の成分Daに加えて当該法線方向に直交する方向(図4における左右方向)の成分も僅かに含む。これに対して、図4において右側の太い点線で示されるように、両基端部51、52の間の空間距離は、互いに最も近い第1端子41’および第2端子42’それぞれの、コネクタ23(絶縁体)および接続されるケーブル2から僅かに露出した位置の間を直線で結んだ距離である。従って、これと同等の二点間を絶縁体の表面に沿って折れ線で結んだ沿面距離は、直線で結んだ空間距離より長くなる。なお、以下では、特に断らない限り、両基端部51、52の間の沿面距離を、法線方向の距離Daとして説明する。
【0034】
以上のように、いずれも軸方向(図4における上下方向)を法線方向とする第1端面(基端部51)および第2端面(基端部52)は、高さDaの段差および/または凹凸を形成するように異なる面上に配置される。図示の例では、第2端面が第1端面より沿面距離Daだけ基端側に突出しているが、第1端面が第2端面より沿面距離Daだけ基端側に突出する構成でもよい。
【0035】
第1端子群41G’の基端部51と第2端子群42G’の基端部52の間には、例えば600Vにも及ぶ高電圧が電圧印加装置200によって印加されるが、両基端部51、52は沿面距離Daによって絶縁されているため短絡が効果的に防止される。また、両基端部51、52の間には沿面距離Daに応じた空間距離(太い点線)も形成されるため、絶縁破壊も効果的に防止される。このような沿面距離Daは、一つのコネクタ23における段差および/または凹凸によって形成できるため、従来の除細動カテーテルのように、正極端子(第1端子41’)および負極端子(第2端子42’)を絶縁のために二股に分離する必要がない。このように、本実施形態によれば、沿面距離Daによって絶縁された第1端子群41G’および第2端子群42G’の基端部51および52を、単一のコネクタ23およびコネクタ本体231に一体的かつコンパクトに収納できる。
【0036】
この結果、従来の除細動カテーテルでは二股構造になることもあったコネクタ23およびケーブル2がシンプルな単一構造となり、本実施形態に係る除細動カテーテル100の操作性を高められる。特に、近年では除細動カテーテルを心臓から比較的遠い足等から挿入することも多く、医師等の操作者には心臓までの複雑で長い経路に亘って慎重な操作が求められる。本実施形態に係る除細動カテーテル100によれば、コネクタ23およびケーブル2が単一構造となっていることで取り回しが容易になり、コネクタ23およびケーブル2が操作中に絡まる可能性も低くなるため、その対処のために除細動処置を中断することや操作者の注意がそがれる事態を防止できる。また、従来の二股構造のコネクタでは洗浄時の洗浄液等が除細動カテーテルの内部に浸入する可能性もあったが、分岐のない単一構造のコネクタ23およびケーブル2とすることで液体等の浸入を防止できる。
【0037】
図3に示されるように、第1端子群41G’の基端部51(第1端面)、第2端子群42G’の基端部52(第2端面)、第3端子群43G’の基端部53(第3端面)は、除細動カテーテル100の軸方向視で基端部53を中心とする略同心円状に配置されている。径方向の最も外側に位置する基端部51の第1端面と、その内側に位置する基端部52の第2端面は、それぞれ軸方向視で略円環状に形成される。第1端面の内周と第2端面の外周は略一致している。このように、大径の略円環状の第1端面は、小径の略円環状の第2端面を、軸方向視(図4における各端面の法線方向視)で包囲する。また、径方向の最も内側に位置する基端部53の第3端面は、軸方向視で略円状に形成される。第2端面の内周と第3端面の外周は略一致している。このように、略円環状の第2端面は略円状の第3端面を、軸方向視(図4における各端面の法線方向視)で包囲する。
【0038】
図3および図4に示されるように、電圧印加装置200によって正電圧(または負電圧)が印加される第2端子群42G’の基端部52と、電圧印加装置200によって心電位が取得される測定端子群としての第3端子群43G’の基端部53の間には、両者を絶縁する、空間距離より長い沿面距離が提供されてもよい。但し、第2端子群42G’と第3端子群43G’の間の電圧は、第1端子群41G’と第2端子群42G’の間の高電圧(例えば最大で600V)より小さいため、基端部52と基端部53の間の沿面距離は基端部51と基端部52の間の沿面距離Daより小さくてもよい。また、基端部52と基端部53の間の沿面距離は実質的に零でもよく、この場合は基端部52および基端部53が同じ面上に配置される(厳密には、互いに最も近い第2端子42’および第3端子43’の間に僅かな沿面距離および空間距離が形成される)。
【0039】
第3端子群43G’には、正極端子群としての第1端子群41G’および負極端子群としての第2端子群42G’より絶対値が概ね小さい電圧(心電位)が現れる。このため、第3端子群43G’は、絶縁性の確保のための慎重な配慮が求められる第1端子群41G’および第2端子群42G’より、コネクタ23およびコネクタ本体231の内部における配置上の制約が少ない。そこで、図3の例では、共に略円環状の第1端子群41G’の基端部51(第1端面)および第2端子群42G’の基端部52(第2端面)の内側の空きスペースに、第3端子群43G’の基端部53(第3端面)を効率的に配置することでコネクタ23をコンパクトに形成できる。
【0040】
図5は、基端部51、52、53の軸方向視の配置の変形例を示す。コネクタ本体231の略中央に第3端子群43G’の基端部53が配置され、それを両側から挟み込むように第1端子群41G’の基端部51および第2端子群42G’の基端部52が配置される。図示の例では、略円状の第3端面(基端部53)が、それぞれ略半円環状の第1端面(基端部51)および第2端面(基端部52)によって挟まれて、全体として略円状のケーブル2の接続領域が形成されている。第1端子群41G’の基端部51と第2端子群42G’の基端部52の境界には、図5における紙面に垂直な方向の沿面距離Daが提供される。従って、基端部51および52の一方は、他方より図5における紙面の手前(または奥)にある。また、基端部53は、基端部51および/または52と同じ面上に配置されてもよいし、基端部51および/または52と異なる面上に配置されてもよい。
【0041】
図6は、基端部51、52、53の径方向視の配置の変形例を示す。この変形例では、電圧印加装置200によって正電圧(または負電圧)が印加される正極端子群としての第1端子群41G’の基端部51と、電圧印加装置200によって負電圧(または正電圧)が印加される負極端子群としての第2端子群42G’の基端部52の間に、当該第1端面(基端部51)および当該第2端面(基端部52)の少なくともいずれかの法線方向に交差する方向の沿面距離が提供される。図6の例において具体的には、基端部51の第1端面と基端部52の第2端面は同じ面上に配置されるが、それらの法線方向に直交する方向(図6における左右方向)に両者を絶縁する沿面距離Dbと、当該法線方向に両者を絶縁する図4と同様の沿面距離Daが提供される。
【0042】
図6において太い実線で示されるように、第1端子群41G’を構成する複数の第1端子41’および第2端子群42G’を構成する複数の第2端子42’のうち、互いに最も近い第1端子41’(図示の例では最も右側の第1端子41’)および第2端子42’(図示の例では最も左側の第2端子42’)の間の絶縁体の表面に沿った距離が両基端部51、52の間の沿面距離になる。具体的には、法線方向の沿面距離Daの二倍(往復分)とそれに直交する方向の沿面距離Dbの和が、両基端部51、52の間の沿面距離である。これに対して、図6において太い点線で示されるように、両基端部51、52の間の空間距離は、互いに最も近い第1端子41’および第2端子42’の間を直線で結んだ距離Dbである。従って、両基端部51、52の間の沿面距離(2Da+Db)は空間距離(Db)より長くなる。
【0043】
左右方向の沿面距離Dbの領域には、図示の例のように第3端子群43G’および第3端面(基端部53)が設けられてもよいし、絶縁体の他には何も設けられなくてもよい。また、沿面距離Dbの領域は、図示の例のように第1端面(基端部51)および第2端面(基端部52)より基端側(図6における下側)に沿面距離Daだけ突出してもよいし、第1端面および第2端面より先端側(図6における上側)に凹んでもよい。このように、第1端面(基端部51)および第2端面(基端部52)の間の沿面距離は、軸方向(Da)および径方向(Db)の両方の成分を含んでもよい。
【0044】
図7は、コネクタ23の変形例を示す断面図である。本図における左右方向はシャフト10の軸方向であり、左側が先端側であり右側が基端側である。前述のように、コネクタ23におけるコネクタ本体231の基端側には、ケーブル2を挿入可能な空間が形成されている。
【0045】
図3図4の例では、第3電極群33Gで測定された心電位等の取得のための第3導線群43Gおよび第3端子群43G’(すなわち、第3導体群43G”)が、第1導線群41Gおよび第1端子群41G’(すなわち、第1導体群41G”)および第2導線群42Gおよび第2端子群42G’(すなわち、第2導体群42G”)と別に設けられたが、図7の例では、第3導体群43G”を構成する各第3導体43”が、第1導体群41G”および/または第2導体群42G”に組み入れられる。このため、図7では、第1導体群41G”(第1導線群41Gおよび第1端子群41G’)および第2導体群42G”(第2導線群42Gおよび第2端子群42G’)が、それぞれに含まれうる各第3導体43”(各第3導線43および各第3端子43’)も代表するものとして便宜的に示されている。
【0046】
図4の例と同様に、電圧印加装置200によって正電圧(または負電圧)が印加される正極端子群としての第1端子群41G’の基端部51と、電圧印加装置200によって負電圧(または正電圧)が印加される負極端子群としての第2端子群42G’の基端部52の間には、両者を絶縁する、空間距離より長い沿面距離が提供される。なお、図4の例では、外周側の第1端子群41G’の基端部51が先端側に引っ込んでおり、内周側の第2端子群42G’の基端部52が基端側に突き出ていたのに対し、図7の例では、外周側の第1端子群41G’の基端部51が基端側に突き出ており、内周側の第2端子群42G’の基端部52が先端側に引っ込んでいるという僅かな違いがある。但し、基端部51と基端部52の間に空間距離より長い沿面距離が提供されるという点では図4図7の間に違いはないため、図7の例においても図4の例と同様の本実施形態に特有の作用および/または効果が実現される。
【0047】
更に、図7の例では、第1端子群41G’の先端部61と、第2端子群42G’の先端部62の間にも、両者を絶縁する、空間距離より長い沿面距離が提供される。具体的には、外周側の第1端子群41G’の先端部61が基端側に引っ込んでおり、内周側の第2端子群42G’の先端部62が先端側に突き出ている。なお、外周側の第1端子群41G’の先端部61が先端側に突き出ており、内周側の第2端子群42G’の先端部62が基端側に引っ込んでいても、同様の作用および/または効果を実現する沿面距離が提供される。
【0048】
以上のように、図7の例では、第1端子群41G’と第2端子群42G’の基端側(基端部51、52)および先端側(先端部61、62)の両方において、両者を絶縁する、空間距離より長い沿面距離が提供されるため、電圧印加装置200によって例えば600Vにも及ぶ高電圧が印加された場合でも、高い絶縁性によって短絡が効果的に防止される。また、第1端子群41G’と第2端子群42G’の基端側(基端部51、52)および先端側(先端部61、62)の両方には沿面距離に応じた空間距離も形成されるため、絶縁破壊も効果的に防止される。
【0049】
図7に示されるシャフト10または除細動カテーテル100全体の基端部を構成するコネクタ23において、先端部に第1電極群31Gが接続されて基端側まで延びる第1導線群41Gの基端部と、コネクタ23(コネクタ本体231)と一体的に構成される第1端子群41G’の先端部が互いに接続されており、かつ、先端部に第2電極群32Gが接続されて基端側まで延びる第2導線群42Gの基端部と、コネクタ23(コネクタ本体231)と一体的に構成される第2端子群42G’の先端部が互いに接続されている。
【0050】
ここで、コネクタ23から先端側に延びる複数の第1導線41および複数の第2導線42は、それぞれポリアミドイミド(PAI)等の薄い絶縁皮膜で被覆されているため、互いに絶縁されている。しかし、本実施形態では、例えば600Vにも及ぶ高電圧が第1導線群41Gと第2導線群42Gの間に印加されることもあるため、両者の間の絶縁性を更に高めることが好ましい。この目的のために、コネクタ23の先端側(図7における左側)に、ポリアミド等の任意の絶縁材料によって形成される絶縁体8が設けられる。
【0051】
絶縁体8は、第1導線群41Gの基端部および第2導線群42Gの基端部を、互いに絶縁または隔離されるように被覆する。また、絶縁体8は、第1導線群41Gの基端部および第2導線群42Gの基端部に限らず、第1導線群41Gの基端部が接続された第1端子群41G’の先端部および第2導線群42Gの基端部が接続された第2端子群42G’の先端部も、併せて被覆するのが好ましい。例えば、絶縁体8は、第1導線群41Gの基端部、第1端子群41G’の先端部61、第2導線群42Gの基端部、第2端子群42G’の先端部62を、実質的に一体的にモールディングする。
【0052】
このようなモールド状の絶縁体8内において、第1導線群41Gおよび第2導線群42Gは、互いに接触しないように隔離されている。例えば、後述するように、絶縁体8を、実質的に第1導線群41Gのみをモールディングする第1絶縁体81と、実質的に第2導線群42Gのみをモールディングする第2絶縁体82と、の二段階で形成することで、第1導線群41Gおよび第2導線群42Gを絶縁体8内において効果的に隔離できる。しかし、第1導線群41Gおよび第2導線群42Gが絶縁体8内で実際に隔離される限り、絶縁体8の形成方法は任意である。
【0053】
図8図11は、二段階で形成される絶縁体8を模式的に示す。図8は、絶縁体8のモールディング前の第1端子群41G’の先端部61および第2端子群42G’の先端部62を示す。この図や他の図に示されるように、外周側の第1端子群41G’の先端部61は、内周側の第2端子群42G’の先端部62より基端側(図8における下側)に設けられる。換言すれば、内周側の第2端子群42G’の先端部62は、外周側の第1端子群41G’の先端部61より、先端側(図8における上側)に突出している。また、外周側の第1端子群41G’の先端部61は、内周側の第2端子群42G’の先端部62を、軸方向視(図8に上下方向視)で包囲する。
【0054】
図8の状態では、内周側の第2端子群42G’のみに第2導線群42Gが接続されており、外周側の第1端子群41G’には第1導線群41Gが未だ接続されていない。続く図9では、第2導線群42Gの基端部が接続された第2端子群42G’の先端部62が、第2導線群42Gごと第2絶縁体82によって被覆またはモールディングされる。このように、第2絶縁体82は、実質的に内周側の第2導線群42Gおよび第2端子群42G’のみをモールディングする。第2絶縁体82の先端(図9における上端)から先端側に出た第2導線群42Gは、ポリイミド等の絶縁性チューブによって束ねられ、第1導線群41G等の他の部材から絶縁または隔離される。
【0055】
図9に続く図10では、外周側の第1端子群41G’に第1導線群41Gが接続される。内周側の第2端子群42G’に接続された第2導線群42Gは第2絶縁体82によってモールディングされているため、新たに接続された第1導線群41Gと接触することなく効果的に絶縁または隔離される。続く図11では、第1導線群41Gの基端部が接続された第1端子群41G’の先端部61が、第1導線群41Gおよび第2絶縁体82ごと第1絶縁体81によって被覆またはモールディングされる。このように、第1絶縁体81は、実質的に外周側の第1導線群41Gおよび第1端子群41G’のみをモールディングする。第1絶縁体81(または絶縁体8全体)の先端(図11における上端)から先端側に出た第1導線群41Gは、ポリイミド等の絶縁性チューブによって束ねられ、第2導線群42G(別の絶縁性チューブによって束ねられている)等の他の部材から絶縁または隔離される。
【0056】
図8に示されるように、内周側の第2端子群42G’の先端部62が、外周側の第1端子群41G’の先端部61より先端側に突出しているため、実質的に内周側のみをモールディングする第2絶縁体82(図9)を容易に形成できる。更に、内周側の第2絶縁体82ごとモールディングする外周側の第1絶縁体81(図11)も容易に形成できる。なお、第1絶縁体81と第2絶縁体82が別のステップで形成されるため、形成時の熱等によって境界がなくならない限り、光学測定技術等の任意の測定技術を使用して第1絶縁体81と第2絶縁体82の境界を検出できる。
【0057】
また、図5と同様に、第1端子群41G’の先端部61(図5における51に対応)と、第2端子群42G’の先端部62(図5における52に対応)が、軸方向視で並置されている場合、当該先端部61をモールディングする第1絶縁体81と、当該先端部62をモールディングする第2絶縁体82を、別々に(但し、同時でもよい)形成することで所望の絶縁性を実現してもよい。
【0058】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0059】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0060】
2 ケーブル、8 絶縁体、10 シャフト、20 ハンドル部、23 コネクタ、31 第1電極、31G 第1電極群、32 第2電極、32G 第2電極群、33 第3電極、33G 第3電極群、40 端子部、41 第1導線、41G 第1導線群、42 第2導線、42G 第2導線群、43 第3導線、43G 第3導線群、81 第1絶縁体、82 第2絶縁体、100 除細動カテーテル、200 電圧印加装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11