(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054057
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】薄膜形成装置および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
C23C14/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023040479
(22)【出願日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】10-2022-0126196
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】598123150
【氏名又は名称】セメス株式会社
【氏名又は名称原語表記】SEMES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】77,4sandan 5-gil,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do,331-814 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン イル
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029DC00
4K029EA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物に対する耐プラズマPVDコーティングの段差被覆性を向上させる薄膜形成装置および形成方法を提供する。
【解決手段】薄膜形成装置は、チャンバの内部に位置する蒸着対象物120;チャンバの内部に位置して蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット130;チャンバの内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するガス供給モジュール140;チャンバの内部に位置して蒸着対象物120と対向する段差被覆制御モジュール160;およびチャンバの内部に位置してスパッタリングターゲット130に対する電流を供給する電圧供給モジュール150を含み、蒸着対象物120は前記電流に基づいてスパッタリングターゲット130から提供される前記粒子が蒸着され、段差被覆制御モジュール160は、可変動作により蒸着対象物120に向かって運動する前記粒子の量を制御して蒸着対象物120の段差被覆性が制御されるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態が形成されるチャンバ;
前記チャンバの内部の設定位置に位置する蒸着対象物;
前記チャンバの内部に位置して蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット;
前記チャンバの内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するガス供給モジュール;
前記チャンバの内部に位置して前記蒸着対象物と対向する段差被覆制御モジュール;および
前記チャンバの内部に位置して前記スパッタリングターゲットに対する電流を供給する電圧供給モジュールを含み、
前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、
前記段差被覆制御モジュールは、
可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにする、薄膜形成装置。
【請求項2】
前記段差被覆制御モジュールは、
前記スパッタリングターゲットと前記蒸着対象物を間において配置されて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための中央部を含む、請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記中央部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第1-1動作と、前記蒸着対象物から離隔する第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記段差被覆制御モジュールは、
前記中央部の一側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第1外郭部をさらに含む、請求項3に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記第1外郭部は、
前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作を行うことが可能であり、
前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項4に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記段差被覆制御モジュールは、
前記中央部の他側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第2外郭部をさらに含む、請求項5に記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記第2外郭部は、
前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項6に記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
前記スパッタリングターゲットから前記蒸着対象物に向かう前記粒子は、
前記中央部に向かって少なくとも第1経路で運動する第1粒子と、
前記第1外郭部に向かい、前記第1経路を基準として少なくとも一側の離脱方向である第2経路で運動する第2粒子と、
前記第2外郭部に向かい、前記第1経路を基準として少なくとも他側の離脱方向である第3経路で運動する第3粒子を含む、請求項7に記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記中央部は前記第1-1動作と前記第1-2動作に基づいて少なくとも前記第1経路上の前記第1粒子の運動量を制御する、請求項8に記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
前記第1外郭部は前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて少なくとも前記第2経路上の前記第2粒子の運動量を制御する、請求項8に記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記第2外郭部は前記第3-1動作と前記第3-2動作に基づいて少なくとも前記第3経路上の前記第3粒子の運動量を制御する、請求項3に記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
前記第1外郭部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第2-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第2-4動作を行うことが可能であり、
前記第2-3動作と前記第2-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項5に記載の薄膜形成装置。
【請求項13】
前記第2外郭部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第3-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第3-4動作を行うことが可能であり、
前記第3-3動作と前記第3-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項7に記載の薄膜形成装置。
【請求項14】
前記蒸着対象物は、
蒸着が行われる対象表面に平坦に形成された平坦部と前記平坦部に比べて陥入した陥入部を含み、
前記段差被覆制御モジュールは、
前記蒸着対象物の前記平坦部と前記陥入部の相互間の段差被覆性を補強するものである、請求項3に記載の薄膜形成装置。
【請求項15】
真空状態が形成されるチャンバ;
前記チャンバの内部の設定位置に位置する蒸着対象物;
前記チャンバの内部に位置して蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット;
前記チャンバの内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するガス供給モジュール;
前記チャンバの内部に位置して前記蒸着対象物と対向する段差被覆制御モジュール;および
前記チャンバの内部に位置して前記スパッタリングターゲットに対する電流を供給する電圧供給モジュールを含み、
前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、
前記段差被覆制御モジュールは、
可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにし、
前記段差被覆制御モジュールは、
前記スパッタリングターゲットと前記蒸着対象物を間において配置されて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための中央部を含み、
前記中央部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第1-1動作と、前記蒸着対象物から離隔する第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、
前記段差被覆制御モジュールは、
前記中央部の一側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第1外郭部をさらに含み、
前記第1外郭部は、
前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作を行うことが可能であり、
前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、
前記段差被覆制御モジュールは、
前記中央部の他側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第2外郭部をさらに含み、
前記第2外郭部は、
前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、
前記第1外郭部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第2-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第2-4動作を行うことが可能であり、
前記第2-1動作ないし前記第2-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、
前記第2外郭部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第3-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第3-4動作を行うことが可能であり、
前記第3-1動作ないし前記第3-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、
前記蒸着対象物は、
蒸着が行われる対象表面に平坦に形成された平坦部と前記平坦部に比べて陥入した陥入部を含み、
前記段差被覆制御モジュールは、
前記蒸着対象物の前記平坦部と前記陥入部の相互間の段差被覆性を補強するものである、薄膜形成装置。
【請求項16】
チャンバの内部の段差被覆制御モジュールに蒸着対象物が載置される段階;および
前記段差被覆制御モジュールに載置された前記蒸着対象物に蒸着が行われる段階を含み、
前記チャンバは、
内部に前記蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲットが位置し、ガス供給モジュールを介して内部にプラズマ状態の形成のためのガスが供給され、
前記スパッタリングターゲットは前記蒸着のために電圧供給モジュールから電流の供給を受け、
前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、
前記段差被覆制御モジュールは、
可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにする、薄膜形成方法。
【請求項17】
前記段差被覆制御モジュールは、
前記スパッタリングターゲットと前記蒸着対象物を間において配置されて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための中央部を含む、請求項16に記載の薄膜形成方法。
【請求項18】
前記中央部は、
前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第1-1動作と、前記蒸着対象物から離隔する第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項17に記載の薄膜形成方法。
【請求項19】
前記段差被覆制御モジュールは、
前記中央部の一側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第1外郭部をさらに含む、請求項18に記載の薄膜形成方法。
【請求項20】
前記第1外郭部は、
前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作を行うことが可能であり、
前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする、請求項19に記載の薄膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜形成と関連して耐プラズマPVD(Physical Vapor Deposition)コーティング段差被覆性(step coverage)の向上を企てることが求められる。PVD時に蒸着手段と対象物の間の距離による平均自由移動経路(mean free path)の差異により対象物に対するコート層の部位別の蒸着均一性の確保は容易でない。例えば、PVD時に蒸着粒子は直進運動をするので距離が増加する場合は蒸着効率が減少する。さらに、対象物の傾斜部位に対する厚さの均一性が減少して段差被覆性の向上が必須であるが、このような段差被覆性の向上が容易でない。
【0003】
具体的には蒸着においてターゲットから脱落した粒子は目的地に向かって直進運動をするが、距離が近い領域に比べて距離が増加(例:直進運動に比べて周辺方向に向かって運動する場合など)する場合、平均自由移動経路(mean free path)が増加して蒸着効率が減少する。蒸着しようとするベース材料に傾斜や段差部位が存在する場合は平面部に比べて相対的に蒸着率が減少して全体面積に対する厚さの均一性が低下し得る。このような短所を改善するために粒子が誘導される対象物を公転および自転させたり特定の角度に傾けて改善しようとする試みがあるが、これもまだ対象物(例:領域辺の段差を有する対象物など)に表面位置別の段差被覆性の向上は容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
韓国登録特許第10-1802384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、薄膜形成と関連して対象物に対する耐プラズマPVDコーティングの段差被覆性を向上させることにある。
【0006】
また、PVD蒸着時に蒸着手段と対象物の間の距離による平均自由移動経路(mean free path)の差異により対象物に対するコート層の部位別の蒸着均一性の確保を可能にすることにある。
【0007】
また、対象物の平坦部位、傾斜部位、陥入部などに対する厚さの均一性が差異に対応して段差被覆性が向上するようにすることにある。
【0008】
また、蒸着において、ターゲットから脱落した粒子は目的地に直進運動をすることにおいて距離が近い領域に比べて距離が増加する領域に対して(例:中央領域に比べて左右に位置する領域など)平均自由移動経路の増加による蒸着効率が減少することを解決することにある。
【0009】
本発明の課題は、ここで言及した制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための本発明の一態様(aspect)による薄膜形成装置は、真空状態が形成されるチャンバ;前記チャンバの内部の設定位置に位置する蒸着対象物;前記チャンバの内部に位置して蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット;前記チャンバの内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するガス供給モジュール;前記チャンバの内部に位置して前記蒸着対象物と対向する段差被覆制御モジュール;および前記チャンバの内部に位置して前記スパッタリングターゲットに対する電流を供給する電圧供給モジュールを含み、前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、前記段差被覆制御モジュールは、可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにする。
【0011】
前記課題を達成するための本発明の他の態様による薄膜形成装置は、真空状態が形成されるチャンバ;前記チャンバの内部の設定位置に位置する蒸着対象物;前記チャンバの内部に位置して蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット;前記チャンバの内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するガス供給モジュール;前記チャンバの内部に位置して前記蒸着対象物と対向する段差被覆制御モジュール;および前記チャンバの内部に位置して前記スパッタリングターゲットに対する電流を供給する電圧供給モジュールを含み、前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、前記段差被覆制御モジュールは、可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにし、前記段差被覆制御モジュールは、前記スパッタリングターゲットと前記蒸着対象物を間において配置されて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための中央部を含み、前記中央部は、前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第1-1動作と、前記蒸着対象物から離隔する第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、前記段差被覆制御モジュールは前記中央部の一側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第1外郭部をさらに含み、前記第1外郭部は、前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作を行うことが可能であり、前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、前記段差被覆制御モジュールは、前記中央部の他側に位置して前記蒸着対象物と対向して前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量を制御するための第2外郭部をさらに含み、前記第2外郭部は、前記中央部に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部から離隔する第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、前記第1外郭部は、前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第2-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第2-4動作を行うことが可能であり、前記第2-1動作ないし前記第2-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、前記第2外郭部は、前記蒸着対象物の表面に向かって近接する第3-3動作と、前記蒸着対象物の表面から離隔する第3-4動作を行うことが可能であり、前記第3-1動作ないし前記第3-4動作に基づいて前記蒸着対象物に向かって運動する粒子の量が制御されるようにし、前記蒸着対象物は、蒸着が行われる対象表面に平坦に形成された平坦部と前記平坦部に比べて陥入した陥入部を含み、前記段差被覆制御モジュールは、前記蒸着対象物の前記平坦部と前記陥入部の相互間の段差被覆性を補強する。
【0012】
前記課題を達成するための本発明のまた他の態様による薄膜形成方法は、チャンバの内部の段差被覆制御モジュールに蒸着対象物が載置される段階;および前記段差被覆制御モジュールに載置された前記蒸着対象物に蒸着が行われる段階を含み、前記チャンバは、内部に前記蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲットが位置し、ガス供給モジュールを介して内部にプラズマ状態の形成のためのガスが供給され、前記スパッタリングターゲットは前記蒸着のために電圧供給モジュールから電流の供給を受け、前記蒸着対象物は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲットから提供される前記粒子が蒸着され、前記段差被覆制御モジュールは、可変動作により前記蒸着対象物に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物の段差被覆性が制御されるようにする。
【発明の効果】
【0013】
前記のような本発明の薄膜形成装置および方法によれば、次のような効果が一つあるいはその以上ある。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、薄膜形成と関連して対象物に対する耐プラズマPVDコーティングの段差被覆性を向上させることができる。
【0015】
また、PVD蒸着時に蒸着手段と対象物の間の距離による平均自由移動経路(mean free path)の差異により対象物に対するコート層の部位別の蒸着均一性が確保されるようにする。
【0016】
また、対象物の平坦部位、傾斜部位、陥入部などに対する厚さの均一性が差異に対応して段差被覆性が向上するようにする。
【0017】
また、蒸着において、ターゲットから脱落した粒子は目的地に直進運動をすることにおいて距離が近い領域に比べて距離が増加する領域に対して(例:中央領域に比べて左右に位置する領域など)平均自由移動経路の増加による蒸着効率の減少が解消されるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による薄膜形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1による構成を概略的に示す構成図である。
【
図3】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図4】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図5】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図6】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図7】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図8】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図9】
図2による構成の動作状態の例示を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態による薄膜形成方法を順次に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付する図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。本発明の利点および特徴、並びにこれらを達成する方法は添付する図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すると明確になる。しかし、本発明は以下に開示する実施形態に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で実現することができ、本実施形態は単に本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。明細書全体にわたって同一参照符号は同一構成要素を指すものとする。
【0020】
空間的に相対的な用語である「下(below)」、「下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは図面に示されているように一つの対象または構成要素と他の対象または構成要素との相関関係を容易に記述するために使用される。空間的に相対的な用語は図面に示されている方向に加えて使用時または動作時の対象の互いに異なる方向を含む用語として理解されなければならない。例えば、図面に示されている対象をひっくり返す場合、他の対象の「下(below)」または「下(beneath)」と記述された対象は他の対象の「上(above)」に置かれ得る。したがって、例示的な用語の「下」は下と上の方向をすべて含むことができる。対象は他の方向に配向されてもよく、そのため空間的に相対的な用語は配向によって解釈されることができる。
【0021】
第1、第2などが多様な対象、構成要素および/またはセクションを叙述するために使われるが、これらの対象、構成要素および/またはセクションはこれらの用語により制限されないのはもちろんである。これらの用語は単に一つの対象、構成要素またはセクションを他の対象、構成要素またはセクションと区別するために使用する。したがって、以下で言及される第1対象、第1構成要素または第1セクションは本発明の技術的思想内で第2対象、第2構成要素または第2セクションであり得るのはもちろんである。
【0022】
本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書で、単数形は文面で特記しない限り、複数形も含む。明細書で使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は言及された構成要素、段階、動作および/または対象は一つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または対象の存在または追加を排除しない。他に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解されることができる意味で使用される。また、一般的に使用される辞典に定義されている用語は明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。
【0023】
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明し、添付図面を参照して説明するにあたり図面符号に関係なく同一であるかまたは対応する構成要素は同じ参照番号を付与し、これに係る重複する説明は省略する。
【0024】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による薄膜形成装置100は、制御モジュール1、駆動モジュール10、チャンバ110、スパッタリングターゲット130、ガス供給モジュール140、電圧供給モジュール150および段差被覆制御モジュール160を含む。
【0025】
さらに、前記制御モジュール1は前記薄膜形成装置100の全般の制御を行う。前記駆動モジュール10は第1駆動モジュール11、第2駆動モジュール12および第3駆動モジュール13を含む。(
図2を参照)
図2を参照すると、前記段差被覆制御モジュール160は、中央部161、第1外郭部162および第2外郭部163を含む。前記チャンバ110は蒸着対象物120が内部収容空間に収容される。
【0026】
前記蒸着対象物120は前記チャンバ110の内部で別途の載置手段により位置が固定されるようにする。前記薄膜形成装置100の前記チャンバ110は前記内部収容空間に真空状態が形成される。前記蒸着対象物120は前記チャンバ110の内部の設定位置に位置する。
【0027】
前記スパッタリングターゲット130は前記チャンバ110の内部に位置して蒸着のための粒子を含む。前記ガス供給モジュール140は前記チャンバ110の内部にプラズマ状態の形成のためのガスを供給するためのものである。
【0028】
このような前記段差被覆制御モジュール160は前記チャンバ110の内部に位置して前記蒸着対象物120と対向するように備えられる。前記電圧供給モジュール150は前記チャンバ110の内部に位置して前記スパッタリングターゲット130に対する電圧を供給する。ここで電流は例えば負極電圧を含む。
【0029】
前記蒸着対象物120は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲット130から提供される前記粒子が蒸着される。前記段差被覆制御モジュール160は可変動作により前記蒸着対象物120に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物120の段差被覆性が制御されるようにする。
【0030】
ここで前記段差被覆制御モジュール160の前記中央部161は前記スパッタリングターゲット130と前記蒸着対象物120を間において配置される。前記中央部161は前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。
【0031】
前記中央部161は前記蒸着対象物に向かう粒子を誘導し、これのために第1-1動作および第1-2動作を行う。前記第1-1動作は前記中央部161が前記蒸着対象物120の表面に向かって近接する動作を含む(
図3ないし
図4を参照)。
【0032】
前記第1-2動作は前記中央部161が前記蒸着対象物120から離隔する動作を含む。前記中央部161は前記粒子を誘導し、前記第1-1動作ないし前記第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する前記粒子粒子の量が制御されるようにする(
図3ないし
図4を参照)。
【0033】
前記段差被覆制御モジュール160の前記第1外郭部162は前記中央部161の一側に位置して前記蒸着対象物120と対向する。前記第1外郭部162は前記蒸着対象物120に向かって運動する前記粒子を誘導する(
図2および
図5ないし
図6を参照)。
【0034】
さらに、前記第1外郭部162は第2-1動作ないし第2-4動作を行う。この中で前記第2-1動作は前記第1外郭部162が前記中央部161に向かって近接する動作を含む(
図5ないし
図6を参照)。
【0035】
前記第2-2動作は前記中央部161から離隔する動作を含む。前記第1外郭部162はこのような前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする(
図5ないし
図6を参照)。
【0036】
さらに、前記段差被覆制御モジュール160の前記第2外郭部163は前記中央部161の他側に位置する。前記第2外郭部163は前記蒸着対象物120と対向する。
【0037】
前記第2外郭部163は前記蒸着対象物120と対向して前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする(
図3および
図5を参照)。
【0038】
前記第2外郭部163は第3-1動作ないし第3-4動作を行う。ここで前記第3-1動作は前記第2外郭部163が前記中央部161に向かって近接する動作を含む。前記第3-2動作は前記第2外郭部163が前記中央部161から離隔する動作を含む(
図3および
図7を参照)。
【0039】
このような前記第2外郭部163は前記第3-1動作ないし前記第3-2動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする(
図2ないし
図3および
図7を参照)。
【0040】
前記第1外郭部162の前記第2-3動作は前記蒸着対象物120の表面に向かって下方に接する動作を含む。前記第1外郭部162の前記第2-4動作は前記蒸着対象物120の表面から上方に離隔する動作を含む(
図4および
図9を参照)。
【0041】
前記第1外郭部162は前記第2-3動作と前記第2-4動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。前記第2外郭部163の前記第3-3動作は前記蒸着対象物120の表面に向かって下方に接する動作を含む(
図3および
図4を参照)。
【0042】
なお、前記第2外郭部163の前記第3-4動作は前記蒸着対象物120の表面から上方に離隔する動作を含む(
図9を参照)。さらに、前記第1外郭部162は第1組み合わせ動作と第2組み合わせ動作が可能である。
【0043】
前記第1組み合わせ動作は前記第2-1動作と前記第2-2動作を含む。前記第2組み合わせ動作は前記第2-1動作ないし前記第2-4動作を含む(
図5ないし
図6および
図9を参照)。
【0044】
前記第2外郭部163は第3組み合わせ動作と第4組み合わせ動作により前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。前記第3組み合わせ動作は前記第3-1動作および前記第3-2動作を含む。
【0045】
前記第4組み合わせ動作は前記第3-1動作ないし前記第3-4組み合わせ動作を含む(
図5ないし
図6および
図9を参照)。前記蒸着対象物120は蒸着が行われる対象表面に平坦に形成される平坦部120aと前記平坦部120aに比べて陥入される陥入部120bを含む(
図10を参照)。
【0046】
ここで前記平坦部120aは蒸着が行われる対象表面として平坦に形成される領域である。前記陥入部120bは前記平坦部120aに比べて陥入される領域である(
図10を参照)。
【0047】
前記傾斜部120cは前記平坦部120aと前記陥入部120bの間の傾斜する領域である。前記段差被覆制御モジュール160は前記蒸着対象物120の前記平坦部120aと前記陥入部120bの相互間の段差被覆性を補強する(
図1および
図10aを参照)。
【0048】
前記蒸着に基づいて前記平坦部120aには第1コート層125aが形成される。前記蒸着に基づいて前記陥入部120bには第2コート層125bが形成される。前記蒸着に基づいて前記傾斜部120cには第3コート層125cが形成される(
図1および
図10を参照)。
【0049】
ここで前記段差被覆制御モジュール160は前記第1コート層125aないし前記第3コート層125cの相互間の段差被覆性が補強されるようにするものである。前記中央部161、前記第1外郭部162および前記第2外郭部163は前記粒子の誘導のために正極電圧が供給される。
【0050】
前記正極電圧は前記電圧供給モジュール150あるいは別途の手段により供給され得るのはもちろんである。前記中央部161は可変動作のために前記第1駆動モジュール11に連動する。
【0051】
前記第1外郭部162は可変動作のために前記第2駆動モジュール12に連動する。前記第2外郭部163は可変動作のために前記第3駆動モジュール13に連動する。前記第1駆動モジュール11ないし前記第3駆動モジュール13はそれぞれ別に備えられるかまたは一体で備えられることが可能であるのはもちろんである。
【0052】
前記スパッタリングターゲット130から前記蒸着対象物120に向かう前記粒子は第1粒子ないし第3粒子を含む。前記第1粒子は前記中央部161に向かって少なくとも第1経路L1で運動することを含む。
【0053】
前記中央部161は前記第1-1動作と前記第1-2動作に基づいて少なくとも前記第1経路L1上の前記第1粒子の運動量を制御する(
図2ないし
図4を参照)。
【0054】
前記第2粒子は前記第1外郭部162に向かい、前記第1経路L1を基準として少なくとも一側の離脱方向である第2経路L2で運動することを含む。前記第1外郭部162は前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて少なくとも前記第2経路L2上の前記第2粒子の運動量が制御されるようにする(
図2ないし
図3および
図8を参照)。
【0055】
前記第3粒子は前記第2外郭部163に向かい、前記第1経路L1を基準として少なくとも他側の離脱方向である第3経路L3で運動することを含む(
図2ないし
図3および
図8を参照)。
【0056】
さらに、前記第2外郭部163は前記第3-1動作と前記第3-2動作に基づいて少なくとも前記第3経路L3上の前記第3粒子の運動量が制御されるようにする(
図2ないし
図3および
図6を参照)。
【0057】
前記段差被覆制御モジュール160は前記蒸着対象物120の前記平坦部120aと前記陥入部120bおよび前記傾斜部120cの相互間の段差被覆性が補強されるようにする(
図2および
図10bを参照)。
【0058】
さらに、前記蒸着対象物120dは単一の形態で備えられることはもちろんであり、多層の形態である第1対象物121と第2対象物122として備えられて前記第2対象物122に対する蒸着が行われることをすべて含む(
図2および
図10を参照)。
【0059】
前記中央部161は前記蒸着対象物120から約0~20cmの範囲内で離隔することが好ましい。前記第1外郭部162および前記第2外郭部163は前記蒸着対象物120の仮想の中心軸を基準として0~10cm範囲内で左右離隔範囲が限定されることが好ましい。
【0060】
図11を参照すると、本発明の一実施形態による薄膜形成方法(S100)は、チャンバ110の内部の段差被覆制御モジュール160に蒸着対象物120が載置される。前記段差被覆制御モジュール160に載置された前記蒸着対象物120は段差被覆性の補強が適用されて蒸着が行われる。
【0061】
ここで前記チャンバ110は内部に前記蒸着のための粒子を含むスパッタリングターゲット130が位置する。さらに、ガス供給モジュール140を介して内部にプラズマ状態の形成のためのガスが供給される。
【0062】
前記スパッタリングターゲット130は前記蒸着のために電圧供給モジュール150から電流の供給を受ける。前記蒸着対象物120は前記電流に基づいて前記スパッタリングターゲット130から提供される前記粒子が蒸着される。
【0063】
さらに、前記段差被覆制御モジュール160は可変動作により前記蒸着対象物120に向かって運動する前記粒子の量を制御して前記蒸着対象物120の段差被覆性が制御されるようにする。
【0064】
前記段差被覆制御モジュール160は前記スパッタリングターゲット130と前記蒸着対象物120を間において配置される。前記段差被覆制御モジュール160は中央部161が前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量を制御する。
【0065】
ここで前記中央部161は前記蒸着対象物120の表面に向かって近接する第1-1動作と、前記蒸着対象物120から離隔する第1-2動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。
【0066】
前記段差被覆制御モジュール160の第1外郭部162は前記中央部161の一側に位置する。前記第1外郭部162は前記蒸着対象物120と対向して前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。
【0067】
さらに、前記第1外郭部162は前記中央部161に向かって近接する第2-1動作と、前記中央部161から離隔する第2-2動作を行うことが可能である。前記第1外郭部162は前記第2-1動作と前記第2-2動作に基づいて前記蒸着対象物120に向かって運動する粒子の量が制御されるようにする。
【0068】
以上と添付する図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、ここに記述した実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0069】
1 制御モジュール、
10 駆動モジュール、
11 第1駆動モジュール、
12 第2駆動モジュール、
13 第3駆動モジュール、
100 薄膜形成装置、
110 段差被覆制御モジュール、
120 蒸着対象物、
125 蒸着対象物、
130 スパッタリングターゲット、
140 ガス供給モジュール、
150 電圧供給モジュール。