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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054062
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ボルト連結金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/12 20060101AFI20240409BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20240409BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20240409BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20240409BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
F16B2/12 A
F16B7/04 301H
F16B1/00 A
F16B2/06 A
E04B9/18 F
E04B9/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069870
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2022159879
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021958
【氏名又は名称】株式会社アカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 宏明
【テーマコード(参考)】
3J022
3J039
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022DA15
3J022EA38
3J022EB14
3J022EC12
3J022EC22
3J022ED22
3J022FA01
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GB32
3J039AA06
3J039AA09
3J039AB05
3J039BB01
3J039CA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吊り構造の防振補強性が高く、しかも容易に且つ安全に取付けることができる吊りボルトの連結金具を提供する。
【解決手段】天板部より垂設された複数本の吊りボルトの隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して長尺ボルトを斜めに架渡し、各吊りボルトと長尺ボルトとの各接続部の各々を連結して防振補強する構成のボルト連結金具が、L字の角部の内側に吊りボルトが接するように配設されるL字状本体部材と、L字状本体部材の内側に配設され、吊りボルトの外周を圧接可能な曲げ部が形成された吊りボルト固定部材と、L字状本体部材の外側に配設され、長尺ボルトを挟み込む掛止部が曲げ形成された長尺ボルト取付部材と、L字状本体部材に長尺ボルト取付部材と吊りボルト固定部材とを連結状態とする固定用ボルトと、固定用ボルトに外挿され、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込む長尺ボルトの外周を押圧するコイルバネと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部より垂設された複数本の吊りボルトの隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して長尺ボルトを斜めに架渡し、各吊りボルトと長尺ボルトとの各接続部の各々を連結して防振補強する構成のボルト連結金具において、
該ボルト連結金具が、
板材を折曲げて一辺部分と他辺部分とを形成した略L字状板材であり、前記一片部分と他辺部分の各々には吊りボルトの軸線と直交する方向を長手方向とする長孔が形成されており、L字の角部の内側に吊りボルトが接するように配設されるL字状本体部材と、
前記L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の内側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に丸孔が形成されており、前記L字状本体部材のL字の角部側である板状部材の前端に吊りボルトの外周を圧接可能な曲げ部が各々形成された、2つの吊りボルト固定部材と、
前記L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の外側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に長尺ボルトの一部を抱え込んだ状態で前記L字状本体部材の外側との間に前記長尺ボルトを挟み込む掛止部が曲げ形成されており、この掛止部の近接した位置に透孔が各々形成された、2つの長尺ボルト取付部材と、
長尺ボルト取付部材の透孔とL字状本体部材の長孔とを貫通し、吊りボルト固定部材の丸孔に挿通して固定することにより前記L字状本体部材に長尺ボルト取付部材と吊りボルト固定部材とを連結状態とする固定用ボルトと、
長尺ボルト取付部材とL字状本体部材との間において前記固定用ボルトに外挿されることにより、前記吊りボルト固定部材が前記L字状本体部材を押圧するように付勢すると共に、前記長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込む長尺ボルトの外周を押圧するコイルバネと、
を有する構成であり、
該ボルト連結金具の取付けに際しては、2つの吊りボルト固定部材をL字の角部から離れる方向に且つ固定用ボルトが貫通している長孔の範囲内において後退させた状態で、L字の角部内側に吊りボルトが接するように配設した後、2つの吊りボルト固定部材を各々の曲げ部が吊りボルトを圧接する位置まで前進させることにより、該ボルト連結金具を吊りボルトに仮固定し、
次に、2つの長尺ボルト取付部材の各々の掛止部に長尺ボルトを抱え込むと共に該長尺ボルトの外周をコイルバネが押圧することにより、該長尺ボルト取付部材の各々に長尺ボルトを仮固定し、
吊りボルトに対するボルト連結金具の取付位置、長尺ボルト取付部材に対する長尺ボルトの取付位置、の各々を調整した後に前記固定用ボルトを緊締することにより各々の仮固定を本固定とすることができる構成を有すること、
を特徴とするボルト連結金具。
【請求項2】
コイルバネが樽形コイルバネであり、樽形コイルバネの太径部分から細径部分に変異する部分を長尺ボルトの外周に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成であることを特徴とする請求項1に記載のボルト連結金具。
【請求項3】
吊りボルト固定部材の後端の一部をL字状本体部材方向に向けて立ち上がる後退抑止部が設けられており、
該後退抑止部が、吊りボルト固定部材の曲げ部が吊りボルトを圧接する位置まで該吊りボルト固定部材を前進させた際に、L字状本体部材の長孔内に入り込むことにより該吊りボルト固定部材の後退を抑止して曲げ部の吊りボルトへの圧接を保持する構成であることを特徴とする請求項1に記載のボルト連結金具。
【請求項4】
L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の両側辺の一部に内側方向に立ち上がる側壁部が設けられており、
該側壁部が、吊りボルト固定部材を前進又は後退させる際の側方ガイドの機能を有する構成であることを特徴とする請求項1に記載のボルト連結金具。
【請求項5】
コイルバネが、その両端部と中央部が太径であると共に、両端部と中央部の各々の中間部が細径である変形樽形コイルバネであり、
この変形樽形コイルバネの中央部の太径部分から中間部の細径部分を経て一方の端部の太径部分にバネ径が円弧状に変異する部分に対して、長尺ボルトの外周を部分的に円弧状に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成であることを特徴とする請求項1に記載のボルト連結金具。
【請求項6】
吊りボルト固定部材の丸孔が雌ネジ構成であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のボルト連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボルト連結金具に関し、詳しくは天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設された吊りボルトによる吊り状態を防振補強する構成に用いるボルト連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設される吊りボルトによって各種設備機器・空調機器・電気設備・天井化粧板等を吊下げ固定する構成において、垂設された複数本の吊りボルトの隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して長尺ボルトを架渡し、この架渡した長尺ボルトによって隣接する吊りボルト同士を連結して吊りボルトによる吊り状態を防振補強する構成が知られている。
【0003】
上記した吊り状態の防振補強構成において、吊りボルトと長尺ボルトとを連結する金具が種々提案されている(例えば、特許文献1~3等参照)。
【0004】
特許文献1、2の技術は、いずれも吊りボルトに取り付けた連結金具に斜めに架け渡した状態で取り付ける長尺ボルトの固定を該長尺ボルトの末端を挿通した後にナット固定することにより行われている。
【0005】
上記の特許文献1、2の技術では、長尺ボルトを吊りボルトの連結金具に取り付けるには、長尺ボルト用の取付部に対して長尺ボルトの末端から挿通し、固定用のナットも長尺ボルトの末端から螺合する必要がある。従って、取付けに際して用意された長尺ボルトが必要以上に長いものである場合、長尺ボルトの末端からの挿通とナット螺合は作業性低下の大きな要因と成るため、取付前に長尺ボルトを斜めに架け渡すに必要充分な長さを測定して対応する長さに切断する作業が必要であった。
【0006】
特許文献3の技術は、上記した特許文献1、2のように連結金具の取付部に対して長尺ボルトの末端からナットを螺合して固定する構成とは異なり、連結金具の取付部が長尺ボルトの端部近傍を挟着して固定する構成と成っている。長尺ボルトの取付固定に際しては、長尺ボルトを連結金具の取付部に挟着固定させた後に余分な長さ部分を切断すればよいので、必要以上の長さであっても予め接続することなく用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5466274号公報
【特許文献2】特許第5701426号公報
【特許文献3】特許第6069453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3の技術は、特許文献1、2の技術と比べれば作業性は改善されているが未だ充分ではない。
即ち、連結金具を吊りボルトに固定するには、吊りボルトの両側に配置する連結金具の一対のボルト・ナットのいずれか一方側が取り外された状態でなければならず、このボルト・ナットが取り外された開放部分から吊りボルトを連結金具内に挿通した後に一方側のボルト・ナットを取り付けて緊締する構成と成っている。
【0009】
吊りボルトによる吊り状態を防振補強する連結金具は構成する部品やボルト・ナット等の点数が多いため、これらの部品やボルト・ナットの取付作業中に落としてしまう虞が高い。しかも、このような取付作業を天井等の高所で行っているため、作業における危険性も高いものとなっている。
【0010】
そこで本発明の課題は、吊り構造の防振補強性が高く、しかも作業性が高く容易且つ安全に取付けることができる吊りボルトと長尺ボルトとの連結金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0012】
1.天板部より垂設された複数本の吊りボルトの隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して長尺ボルトを斜めに架渡し、各吊りボルトと長尺ボルトとの各接続部の各々を連結する構成のボルト連結金具において、
該ボルト連結金具が、
板材を折曲げて一辺部分と他辺部分とを形成した略L字状板材であり、前記一片部分と他辺部分の各々には吊りボルトの軸線と直交する方向を長手方向とする長孔が形成されており、L字の角部の内側に吊りボルトが接するように配設されるL字状本体部材と、
前記L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の内側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に丸孔が形成されており、前記L字状本体部材のL字の角部側である板状部材の前端に吊りボルトの外周を圧接可能な曲げ部が各々形成された、2つの吊りボルト固定部材と、
前記L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の外側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に長尺ボルトの一部を抱え込んだ状態で前記L字状本体部材の外側との間に前記長尺ボルトを挟み込む掛止部が曲げ形成されており、この掛止部の近接した位置に透孔が各々形成された、2つの長尺ボルト取付部材と、
長尺ボルト取付部材の透孔とL字状本体部材の長孔とを貫通し、吊りボルト固定部材の丸孔に挿通して固定することにより前記L字状本体部材に長尺ボルト取付部材と吊りボルト固定部材とを連結状態とする固定用ボルトと、
長尺ボルト取付部材とL字状本体部材との間において前記固定用ボルトに外挿されることにより、前記吊りボルト固定部材が前記L字状本体部材を押圧するように付勢すると共に、前記長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込む長尺ボルトの外周を押圧するコイルバネと、
を有する構成であり、
該ボルト連結金具の取付けに際しては、2つの吊りボルト固定部材をL字の角部から離れる方向に且つ固定用ボルトが貫通している長孔の範囲内において後退させた状態で、L字の角部内側に吊りボルトが接するように配設した後、2つの吊りボルト固定部材を各々の曲げ部が吊りボルトを圧接する位置まで前進させることにより、該ボルト連結金具を吊りボルトに仮固定し、
次に、2つの長尺ボルト取付部材の各々の掛止部に長尺ボルトを抱え込むと共に該長尺ボルトの外周をコイルバネが押圧することにより、該長尺ボルト取付部材の各々に長尺ボルトを仮固定し、
吊りボルトに対するボルト連結金具の取付位置、長尺ボルト取付部材に対する長尺ボルトの取付位置、の各々を調整した後に前記固定用ボルトを緊締することにより各々の仮固定を本固定とすることができる構成を有すること、
を特徴とするボルト連結金具。
【0013】
2.コイルバネが樽形コイルバネであり、樽形コイルバネの太径部分から細径部分に変異する部分を長尺ボルトの外周に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成であることを特徴とする上記1に記載のボルト連結金具。
【0014】
3.吊りボルト固定部材の後端の一部をL字状本体部材方向に向けて立ち上がる後退抑止部が設けられており、
該後退抑止部が、吊りボルト固定部材の曲げ部が吊りボルトを圧接する位置まで該吊りボルト固定部材を前進させた際に、L字状本体部材の長孔内に入り込むことにより該吊りボルト固定部材の後退を抑止して曲げ部の吊りボルトへの圧接を保持する構成であることを特徴とする上記1に記載のボルト連結金具。
【0015】
4.L字状本体部材の一辺部分と他辺部分の各々の両側辺の一部に内側方向に立ち上がる側壁部が設けられており、
該側壁部が、吊りボルト固定部材を前進又は後退させる際の側方ガイドの機能を有する構成であることを特徴とする上記1に記載のボルト連結金具。
【0016】
5.コイルバネが、その両端部と中央部が太径であると共に、両端部と中央部の各々の中間部が細径である変形樽形コイルバネであり、
この変形樽形コイルバネの中央部の太径部分から一方の端部の細径部分に変異する部分に対して、長尺ボルトの外周を部分的に円弧状に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成であることを特徴とする上記1に記載のボルト連結金具。
【0017】
6.吊りボルト固定部材の丸孔が雌ネジ構成であることを特徴とする上記1~5のいずれかに記載のボルト連結金具。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に示す発明によれば、吊り構造の防振補強性が高く、しかも容易に且つ安全に取付けることができる吊りボルトの連結金具を提供することができる。
【0019】
特に、L字状本体部材に取り付けられている2つの吊りボルト固定部材と取付固定する固定用ボルトのいずれについても取り外すことなく取り付けた状態のまま、即ち、分解することなく組立済みの完成品状態のまま、2つの吊りボルト固定部材をL字の角部から離れる方向に且つ固定用ボルトが貫通している長孔の範囲内において後退させることによってL字の角部内側に吊りボルトが接するように配設することができ、次に、後退させた2つの吊りボルト固定部材を各々の曲げ部が吊りボルトを圧接する位置まで前進させることによって吊りボルトを仮固定することができる。
斜めに架け渡す長尺ボルトの固定は、長尺ボルト取付部材の掛止部の内側に長尺ボルトを側方から入り込ませることにより該掛止部内において抱え込まれると共にコイルバネによって長尺ボルトの外周を押圧することにより該長尺ボルトを仮固定することができる。
吊りボルトに対して仮固定し、更に長尺ボルトを仮固定した後、各々の取付位置を調整して位置決めした後、固定用ボルトを緊締することにより仮固定を本固定とすることができる。
以上の構成によって、L字状本体部材、2つの吊りボルト固定部材、2の長尺ボルト取付部材、2本の固定用ボルト、2つのコイルバネから構成されるボルト連結金具は、これらの各構成部材を取り外したり分離することなく組み立てられた状態のままで吊りボルトに対する取付固定と長尺ボルトの架け渡し固定が可能である。従って、ボルトやナット等の小さな部品の取外しや取付け作業が無いことから部品の落下の虞を著しく減じることができ、作業効率が高いと共に、作業時の危険性も大いに減じることができ安全である。
更に、各々の固定、即ち、吊りボルトに対する固定と、長尺ボルトを架け渡した固定は仮固定であるため、各々の位置調整は各々の部材を手指で移動させることにより可能であるため極めて容易である。
更にまた、固定用ボルトを緊締するだけで吊りボルトに対する仮固定と長尺ボルトの仮固定の両方の仮固定を本固定とすることができる。
【0020】
請求項2に示す発明によれば、樽形コイルバネの太径から細径に直径が変異する部分を長尺ボルトの外周に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成によって、該掛止部から長尺ボルトが脱落することのない状態を維持しつつ且つ軸方向への位置調整が可能な状態での仮固定が可能である。
また、樽形コイルバネは両端が細径であるため、固定用ボルトに外装された状態で側方から押圧されても、両端の細径部分は偏芯することがなく、略中央の太径部分は偏芯したとしても常に軸芯方向に付勢力が働いているので押圧が解除され次第に偏芯状態から復帰することになる。従って、安定した状態で長尺ボルトを掛止部内において抑え込むことができる。
【0021】
請求項3に示す発明によれば、吊りボルト固定部材を固定する固定用ボルトの螺合が弛んだとしても該吊りボルト固定部材の後端の後退抑止部がL字状本体部材の長孔内に入り込んでいるため後退を抑止する構成のため吊りボルトに対する圧接を保持することができる。従って、吊りボルトに対するボルト連結金具の固定が弛んだり脱落することを防止できる。
【0022】
請求項4に示す発明によれば、L字状本体部材に設けられた側壁部が吊りボルト固定部材を前進又は後退させる際の側方ガイドの機能を有することにより吊りボルト固定部材が吊りボルトを安定した状態で圧接固定することができる。
【0023】
請求項5に示す発明によれば、変形樽形コイルバネの中央部の太径部分から一方の端部の細径部分に直径が変異する部分に対して、長尺ボルトの外周を部分的に円弧状に押圧することにより、長尺ボルト取付部材の掛止部に抱え込ませた長尺ボルトを該掛止部内において付勢力で抑え込む構成によって、該掛止部から長尺ボルトが脱落することのない状態を維持しつつ且つ軸方向への位置調整が可能な状態での仮固定が可能である。
また、変形樽形コイルバネは中央部と両端部との各々の中間部が細径であるため、固定用ボルトに外装された状態で側方から押圧されても、各々の細径部分は偏芯することがなく、略中央の太径部分は偏芯したとしても常に軸芯方向に付勢力が働いているので押圧が解除され次第に偏芯状態から復帰することになる。従って、安定した状態で長尺ボルトを掛止部内において抑え込むことができる。
更に、両端部が太径であるため、この変形樽形コイルバネの他方の端部とL字状本体部材との間に介在させるワッシャーを省略しても前記端部がL字状本体部材に形成されている長孔に入り込んでしまうことを防止することができる。従って、ワッシャーの省略によって、パーツ数が減るだけでなく、製造組立時においてワッシャーを介在させる手間が減ると共にワッシャーの脱落や紛失が生じることがない。
【0024】
請求項6に示す発明によれば、ナットを用いることなく固定用ボルトを螺合することができる。更に、緊締の際に供回りすることがなく作業性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るボルト連結金具の一実施例を用いた吊り状態の一例を示す概略斜視図
図2】L字状本体部材の一例を示す概略斜視図
図3】吊りボルト固定部材の一例を示す概略斜視図
図4】長尺ボルト取付部材の一例を示す概略斜視図
図5】コイルバネの一例を示す概略側面図
図6図1に示すボルト連結金具の施工順序の第1段階(吊りボルトへの配設)を示す概略説明平面図
図7図1に示すボルト連結金具の施工順序の第2段階の1(固定用ボルトの押圧)を示す概略説明平面図(一部は断面図)
図8図1に示すボルト連結金具の施工順序の第2段階の2(吊りボルト固定部材の前進)を示す概略説明平面図(一部は断面図)
図9図1に示すボルト連結金具の施工順序の第2段階の3(吊りボルトの仮固定)を示す概略説明平面図(一部は断面図)
図10図9の矢符X方向から見た概略説明側面図
図11図1に示すボルト連結金具の施工順序の第3段階の1(長尺ボルトの取付け)を示す概略説明平面図
図12図11の矢符XII方向から見た概略説明側面図
図13図1に示すボルト連結金具の施工順序の第3段階の2(長尺ボルトの仮固定)を示す概略説明平面図
図14図1に示すボルト連結金具の施工順序の第4段階(本固定)を示す概略説明平面図
図15図14のXV方向から見た概略説明側面図
図16】吊りボルト固定部材の丸孔に螺合される固定用ボルトの先端抜け止め防止構成を説明する概略説明側面図
図17】L字状本体部材の他の例を示す概略斜視図
図18】吊りボルト固定部材の他の例を示す概略斜視図
図19】長尺ボルト取付部材の他の例を示す概略斜視図
図20】コイルバネの他の例を示す概略側面図
図21図20に示すコイルバネを用いた態様における、ボルト連結金具の施工順序の第3段階の2(長尺ボルトの仮固定)を示す概略説明平面図
図22図20に示すコイルバネと掛止部との間における長尺ボルトとの仮固定状態を説明する要部拡大説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面に従って本発明を説明する。
【0027】
本発明に係る吊りボルト用連結金具(以下、単に連結金具と言うこともある。)は、天井スラブ・デッキプレートの如き天板部より垂設された複数本の吊りボルトの隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して長尺ボルトを架渡し、この架渡した長尺ボルトによって隣接する吊りボルト同士を連結して吊りボルトによる吊り状態を補強する構成の吊りボルト補強金具に用いるものであり、1つの面方向のスパン間に架渡される長尺ボルトを取付固定できると共に、前記1つの面方向とは略90度異なる方向のスパン間に架渡される長尺ボルトを取付固定できるという一つの連結金具で、二つの異なる面方向のスパン間に架渡される2本の長尺ボルトの取付固定が可能な構成である。
【0028】
尚、実際の施工現場における一般的な基本施工構成としては、空調機器等を4本の吊りボルトに吊下げ、この4本の吊りボルトの上部と下部に連結金具を各々取り付けるため、用いる連結金具の数は8個となる。更に、この4本の吊りボルトが構成する4つのスパンの各々に2本の長尺ボルトを交差状態に架け渡して取り付けることになる。即ち、1本の長尺ボルトの一端を或る特定の吊りボルトの下部に取り付けられた連結金具に取付け固定する場合、この長尺ボルトの他端は隣接する吊りボルトの上部に取り付けられた連結金具に取付け固定されることになる。
かかる構成によって、4本の吊りボルトによる吊り状態の防振補強が可能となっている。斜めに架け渡す8本の長尺ボルトによって吊り状態が防振補強された4本の吊りボルトにより、各種設備機器・空調機器・電気設備・天井化粧板等を安定した状態で確実に吊下げることが可能となる。
【0029】
以下、図1図15に基づき本発明の連結金具1の詳細について説明する。
【0030】
尚、図1に示す吊り状態の実施例では、天板部(図示は省略)から垂設される4本の吊りボルトの内の1本の吊りボルト7の一箇所(吊りボルトの上部又は下部のいずれか一箇所)に1つの連結金具1を取付け、この吊りボルト2に取り付けた連結金具1に2本の長尺ボルト8を架け渡した状態で連結する態様を示す。
尚また、図7図15は、1つの連結金具1に対して取り付けられる2本の長尺ボルトの内の一方の1本のみについて説明するものであり、他方の1本については図示を省略しているが、この他方の1本の長尺ボルトについても一方の1本の長尺ボルトと同様の施工構成に基き連結金具1に取り付けられるものである。
尚また更に、図7図9は、L字状本体部材2と吊りボルト固定部材3については両者の位置関係を判り易くするために断面図として示している。
【0031】
本発明の連結金具1は、
天板部(図示せず)より垂設された複数本(本実施例では図示は1本のみ)の吊りボルト7の隣接する2本の吊りボルト同士間である1つのスパン間に対して2本(本実施例では図示は1本のみ)の長尺ボルト8を交差状態で斜めに架渡し、各吊りボルト7と長尺ボルト8との各接続部の各々を連結する構成において、
該ボルト連結金具1が、
板材を略90度に折曲げて一辺部分と他辺部分とを形成した略L字状板材であり、前記一片部分と他辺部分の各々には吊りボルト2の軸線と直交する方向を長手方向とする長孔21が形成されており、L字の角部22の内側に吊りボルト7が接するように配設されるL字状本体部材2と、
前記L字状本体部材2の一辺部分と他辺部分の各々の内側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に丸孔31が形成されており、前記L字状本体部材2のL字の角部22側である板状部材の前端に吊りボルト7の外周を圧接可能な曲げ部32が各々形成された、2つの吊りボルト固定部材3と、
前記L字状本体部材2の一辺部分と他辺部分の各々の外側に配設される2枚の板材であって、この板材の各々に長尺ボルト8の一部を抱え込んだ状態で前記L字状本体部材2の外側との間に前記長尺ボルト8を挟み込む掛止部42が曲げ形成されており、この掛止部42の近接した位置に透孔41が各々形成された、2つの長尺ボルト取付部材4と、
長尺ボルト取付部材4の透孔41とL字状本体部材2の長孔21とを貫通し、吊りボルト固定部材3の丸孔31に挿通して固定することにより前記L字状本体部材2に長尺ボルト取付部材4と吊りボルト固定部材3とを連結状態とする固定用ボルト5と、
長尺ボルト取付部材4とL字状本体部材2との間において前記固定用ボルト5に外挿されることにより、前記吊りボルト固定部材3が前記L字状本体部材2を押圧するように付勢すると共に、前記長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込む長尺ボルト8の外周を押圧するコイルバネ6と、
を有する構成であり、
該ボルト連結金具1の取付けに際しては、2つの吊りボルト固定部材3をL字の角部22から離れる方向に且つ固定用ボルト5が貫通している長孔21の範囲内において後退させた状態で、L字の角部22の内側に吊りボルト7が接するように配設した後、2つの吊りボルト固定部材3を各々の曲げ部32が吊りボルト7を圧接する位置まで前進させることにより、該ボルト連結金具1を吊りボルト7に仮固定し、
次に、2つの長尺ボルト取付部材4の各々の掛止部42に長尺ボルト8を抱え込むと共に該長尺ボルト8の外周をコイルバネ6が押圧することにより、該長尺ボルト取付部材4の各々に長尺ボルト8を仮固定し、
吊りボルト7に対するボルト連結金具1の取付位置、長尺ボルト取付部材4に対する長尺ボルト8の取付位置、の各々を調整した後に前記固定用ボルト5を緊締することにより各々の仮固定を本固定とすることができる構成を有すること、
を具体的構成とするものである。
【0032】
本発明の連結金具1を構成する、L字状本体部材2を図2に、吊りボルト固定部材3を図3に、長尺ボルト取付け部材4を図4に、コイルバネ6を図5に各々示す。尚、固定用ボルト5については本発明の連結金具1や当該技術の属する防振金具・固定金具等の分野において一般的に用いられるボルトを用いることができるので個別の図示は省略する。また、図6図9に示す符号51はワッシャーである。
【0033】
L字状本体部材2は上記した構成の他、図2に示すように一辺部分と他辺部分の各々の両側辺の一部に内側方向に立ち上がる側壁部23が設けられており、この側壁部23が、吊りボルト固定部材3を前進又は後退させる際の側方ガイドの機能を有する構成となっている。
【0034】
吊りボルト固定部材3は上記した構成の他、該吊りボルト固定部材3の後端の一部をL字状本体部材方向2に向けて立ち上がる後退抑止部33が設けられており、曲げ部32が吊りボルト7を圧接する位置まで吊りボルト固定部材3を前進させた際に、後退抑止部33がL字状本体部材2の長孔21内に入り込むことにより吊りボルト固定部材3の後退を抑止して曲げ部32の吊りボルト7への圧接を保持する構成となっている。
かかる構成によれば、吊りボルト固定部材3を固定する固定用ボルト5の螺合が弛んだとしても該吊りボルト固定部材3の後端の後退抑止部33がL字状本体部材2の長孔21内に入り込んでいるため後退を抑止して吊りボルト7に対する圧接を保持することができる。従って、吊りボルト7に対する連結金具1の固定が弛んだり脱落することを防止できる。
【0035】
また、吊りボルト固定部材3の丸孔31は本実施例に図示するように雌ネジ構成であることが好ましい。かかる構成によれば、ナットを用いることなく固定用ボルト5を螺合することができる。雌ネジ構成によれば、緊締の際にナットの供回りがないため作業性が高い。更に、図16に示すように、固定ボルト5の先端部分のネジ山の少なくとも1箇所(図16では4箇所)をツブシ加工して先端抜け止め防止構成とすることが好ましい。先端抜け止め防止構成によって、組み立てられた本発明の連結金具1が取付作業時等に各パーツの分離による分解や一部のパーツの脱落を防止することができる。尚、先端抜け止め防止構成は、ツブシ加工に限らず、固定ボルト5の先端にワッシャーを溶接したり、或いは抜け止めワッシャーやスナップリング等を固定する等の構成としてもよい。尚また、丸孔31は雌ネジ構成に代えて単なる透孔とし、固定用ボルト5の螺合はナットを用いる構成とすることもできる。
【0036】
コイルバネ6は上記した構成の他、本実施例に図示するように樽形コイルバネであることが好ましい。樽形コイルバネの太径部分から細径部分に変異する部分を長尺ボルト8の外周に押圧することにより、長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込ませた長尺ボルト8を該掛止部42内において付勢力で抑え込むこと構成となっている。
かかる構成によれば、樽形であるコイルバネ6の太径部分から細径部分に変異する部分を長尺ボルト8の外周に押圧することにより、長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込ませた長尺ボルト8を該掛止部42内において付勢力で抑え込む構成によって、該掛止部42から長尺ボルト8が脱落することのない状態を維持しつつ且つ軸方向への位置調整が可能な状態での仮固定が可能である。また、樽形のコイルバネ6は両端が細径であるため、固定用ボルト5に外装された状態で側方から押圧されても、両端の細径部分は偏芯することがなく、略中央の太径部分は偏芯したとしても常に軸芯方向に付勢力が働いているので押圧が解除され次第に偏芯状態から復帰することになる。従って、安定した状態で長尺ボルト8を掛止部42内において抑え込むことができる。
【0037】
上記構成を有する本発明の連結金具1を吊りボルト7に取り付ける際、L字状本体部材2に取り付けられている2つの吊りボルト固定部材3と取付固定する固定用ボルト5のいずれについても取り外すことなく取り付けた状態のまま、即ち、分解することなく組立済みの完成品状態のまま、2つの吊りボルト固定部材3をL字の角部22から離れる方向に且つ固定用ボルト5が貫通している長孔51の範囲内において後退した状態となっていることにより、L字の角部22の内側に吊りボルト7を配設するスペースが存在することになる。このL字の角部22の内側に吊りボルト7が接するように配設する(図6図7参照)。
【0038】
尚、図7図15に示す本実施例の図では、吊りボルト固定部材3、長尺ボルト取付部材4、固定用ボルト5、コイルバネ6、長尺ボルト8の各構成部材について、動作構成等を判り易く説明するために、L字状本体部材2を構成するL字状板材の一辺部分の側のみの各構成部材を図示し、他辺部分の側の各構成部材の図示を省略して説明しているが、図1図6に示すように他辺部分の側も各構成部材が配設されていることは勿論である。
【0039】
図6に示す状態から、図7に示すように吊りボルト7にL字の角部22の内側を当接させた後、図7から図8に示すように後退状態の2つの吊りボルト固定部材3を各々の曲げ部32が吊りボルト7を圧接する位置まで前進させることによって図9及び図10に示すように吊りボルト7を仮固定することができる。
【0040】
この吊りボルト固定部材3の前進を行うには、図7に示すように固定用ボルト5を手指等で矢符A方向に押して、図8に示すように吊りボルト固定部材3を該吊りボルト固定部材3の後端に設けられている後退抑止部33がL字状本体部材2に引っ掛かることのない位置まで浮かした後に該吊りボルト固定部材3を矢符B方向に押すことによりL字の角部22方向に前進させることができる。
【0041】
吊りボルト7は、L字の角部22の内側面において、L字状本体部材2の一辺部分の内側面と他辺部分の内側に配設された吊りボルト固定部材3の曲げ部32とで圧接挟持されると共に、L字状本体部材2の他辺部分の内側面と一辺部分の内側に配設された吊りボルト固定部材3の曲げ部32とで圧接挟持されることになるため、極めて安定した状態で吊りボルト7に連結金具1を固定することができる。
尚、吊りボルト7に対する連結金具1の固定は、固定用ボルト5の緊締前であるため、圧接力に抗して固定高さ位置を吊りボルト7の軸方向に移動させることができる仮固定の状態となっている。
【0042】
また、吊りボルト7に対する連結金具1の固定をより強固とするために、L字状本体部材2の角部22の内側や、吊りボルト固定部材3の曲げ部32の内側に凸条等を設けたり粗面加工を施すことにより、該凸条が吊りボルト7のネジ山に食い込んだり、或いは粗面と吊りボルト7のネジ山との摩擦力によって、取付固定時の位置ズレを防止することができる。図17はL字状本体部材2の角部22の内側にツメ部24を設けた構成を示し、図18は吊りボルト固定部材3の曲げ部32の内側にツメ部34を設けた構成を示す。これらの構成によれば、吊りボルト7のネジ山にツメ部24・ツメ部34が食い込むため、取付固定時の位置ズレを防止することができる。
【0043】
吊りボルト7に連結金具1を仮固定した後は、この吊りボルト7の両隣のスパンの各々に斜めに掛け渡すことにより防振補強する長尺ボルト8を連結金具1の外側に配設されている長尺ボルト取付部材4に取り付けることになる。
【0044】
斜めに架け渡す長尺ボルト8の固定は、長尺ボルト取付部材4の掛止部42の内側に長尺ボルト8を側方から入り込ませることにより(図11及び図12参照)、該掛止部42内において抱え込まれると共にコイルバネ6によって長尺ボルト8の外周を押圧することにより該長尺ボルト8を仮固定することができる(図13参照)。
尚、長尺ボルト8を長尺ボルト取付部材4の掛止部42に側方から入り込ませる前に、該長尺ボルト取付部材4の傾きを斜めに架け渡す長尺ボルト8の傾きに対応させるために、該長尺ボルト取付部材4を図10に示す向きから図11に示す向きに回動させることが好ましい。
【0045】
長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込まれた長尺ボルト8は、固定用ボルト5に外装されている樽形のコイルバネ6の太径部分から細径部分に変異する部分に押圧されることにより、該コイルバネ6の付勢力によって掛止部42内において抑え込まれた状態となる。
掛止部42内の長尺ボルト8は、固定用ボルト5の緊締前であるため、該掛止部42から脱落することのない状態を維持しつつ且つ長尺ボルト8の軸方向への位置調整が可能な状態での仮固定されている。
【0046】
また、掛止部4に抱え込まれた長尺ボルト8の固定をより強固とするために、長尺ボルト取付部材4の内側に凸条等を設けたり粗面加工を施すことにより、該凸条が吊り長尺ボルト8のネジ山に食い込んだり、或いは粗面と長尺ボルト8のネジ山との摩擦力によって、取付固定時の位置ズレを防止することができる。図19は長尺ボルト取付部材4の内側にツメ部43を設けた構成を示す。かかる構成によれば、長尺ボルト8のネジ山にツメ部43が食い込むため、取付固定時の位置ズレを防止することができる。
【0047】
吊りボルト7に対して仮固定し、更に長尺ボルト8を仮固定した後、各々の取付位置を調整して位置決めした後、固定用ボルト5を緊締することにより仮固定を本固定とすることができる。
以上の構成によって、L字状本体部材2、2つの吊りボルト固定部材3、2の長尺ボルト取付部材4、2本の固定用ボルト5、2つのコイルバネ6から構成されるボルト連結金具1は、これらの各構成部材を取り外したり分離することなく組み立てられた状態のままで吊りボルト7に対する取付固定と長尺ボルト8の架け渡し固定が可能となる。
【0048】
本発明の連結金具1は、組み立てられた状態のまま取付作業を行うことができるので、ボルトやナット等の小さな部品の取外しや取付け作業が無いことから部品の落下の虞を著しく減じることができ、作業効率が高いと共に、作業時の危険性も大いに減じることができ安全である。
更に、各々の固定、即ち、吊りボルト7に対する固定と、長尺ボルト8を架け渡した固定は仮固定であるため、各々の位置調整は各々の部材を手指で移動させることにより可能であるため極めて容易である。
更にまた、固定用ボルト5を緊締するだけで吊りボルト7に対する仮固定と長尺ボルト8の仮固定の両方の仮固定を本固定とすることができる。
【0049】
以上、本発明に係るボルト連結金具について説明したが、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の範囲内において他の態様を採ることができる。
【0050】
例えば、コイルバネ6は上記実施例では樽形コイルバネ構成であったが、図20に示すように両端部61・62と中央部63が太径であると共に、両端部61・62と中央部63の各々の中間部64・65が細径である変形樽形コイルバネであることも特に好ましい。
【0051】
変形樽形のコイルバネ6を用いることにより、図21及び図22に示すように、変形樽形のコイルバネ6の中央部63の太径部分から中間部64(又は65)の細径部分を経て一方の端部61(又は62)の太径部分にバネ径が円弧状に変異する部分に対して、長尺ボルト8の外周を部分的に円弧状に押圧することにより、長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込ませた長尺ボルト8を該掛止部42内において付勢力で抑え込む構成となっている。
【0052】
この長尺ボルト取付部材4の掛止部42に抱え込ませた長尺ボルト8を該掛止部42内において付勢力で抑え込む構成によって、該掛止部42から長尺ボルト8が脱落することのない状態を維持しつつ且つ軸方向への位置調整が可能な状態での仮固定が可能である。
【0053】
また、変形樽形コイルバネ6は中央部63と両端部61・62との各々の中間部64・65が細径であるため、固定用ボルト5に外装された状態で側方から押圧されても、各々の細径部分は偏芯することがなく、中央部63の太径部分は偏芯したとしても常に軸芯方向に付勢力が働いているので押圧が解除され次第に偏芯状態から復帰することになる。従って、安定した状態で長尺ボルト8を掛止部42内において抑え込むことができる。
【0054】
更に、両端部61・62が太径であるため、この変形樽形コイルバネ6の他方の端部62(又は61)とL字状本体部材2との間に介在させるワッシャー51を省略しても前記端部62(又は61)がL字状本体部材2に形成されている長孔21に入り込んでしまうことを防止することができる。従って、ワッシャー51の省略によって、パーツ数が減るだけでなく、製造組立時においてワッシャー51を介在させる手間が減ると共にワッシャー51の脱落や紛失が生じることがない。
【符号の説明】
【0055】
1 ボルト連結金具
2 L字状本体部材
21 長孔
22 角部
23 側壁部
24 ツメ部
3 吊りボルト固定部材
31 丸孔
32 曲げ部
33 後退抑止部
34 ツメ部
4 長尺ボルト取付部材
41 透孔
42 掛止部
43 ツメ部
5 固定用ボルト
51 ワッシャー
6 コイルバネ
61 端部
62 端部
63 中央部
64 中間部
65 中間部
7 吊りボルト
8 長尺ボルト

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22