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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005408
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】カメラ設置ケース
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20240110BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B61D37/00 Z
B61D19/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105584
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】宮原 宏和
(72)【発明者】
【氏名】小島 周平
(72)【発明者】
【氏名】ドー スアン チン
(57)【要約】
【課題】鉄道車両内に設置されたカメラに対する迷惑行為を確実に防止することができるカメラ設置ケースを提供する。
【解決手段】側壁1の一部は開閉可能な壁面部1aとして、通常は開かず車両壁面1に連なる閉じた状態に拘束される。カメラ設置ケース10の背面部11は、壁面部1aの表側に、該壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作により固定される。背面部11に対するケース本体10aの開閉は、壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作により可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車両壁面に設置され周囲の状況を撮影記録するカメラを収容するためのカメラ設置ケースにおいて、
前記車両壁面の一部は開閉可能な壁面部として、通常は開かず前記車両壁面に連なる閉じた状態に拘束され、
前記壁面部の表側に、該壁面部を開いた時にその裏側からの操作により固定される取付部と、
前記取付部に対して開閉可能であり、開いた時に内部にカメラを収容可能なケース本体と、を備え、
前記取付部に対する前記ケース本体の開閉が、前記壁面部を開いた時にその裏側からの操作により可能に構成したことを特徴とするカメラ設置ケース。
【請求項2】
前記ケース本体と前記取付部とに、前記ケース本体を閉じた時に互いに合致する位置に取付孔を設け、前記壁面部に、前記取付部の取付孔と合致する位置に挿通孔を設け、
前記壁面部を開いた時にその裏側から前記挿通孔に通したネジを、前記各取付孔に締結することで、前記取付部に対して前記ケース本体が閉じられ、前記ネジを前記各取付孔から緩めることにより、前記取付部に対して前記ケース本体を開ける構成としたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ設置ケース。
【請求項3】
前記ケース本体に、その内部に収容した前記カメラにおける記録媒体の挿脱口に合致する位置に記録媒体用開口部を設け、
前記取付部に、前記ケース本体を閉じた時に前記記録媒体用開口部を覆う覆い部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ設置ケース。
【請求項4】
前記ケース本体に設けた錠前部と、
前記錠前部における施錠ないし開錠に伴い変位するロック部材と、を備え
前記ロック部材は、
前記錠前部の施錠時は、前記カメラにおける記録媒体の挿脱口から前記記録媒体の挿脱を不能とする拘束位置となる一方、前記錠前部の開錠時は、前記カメラの挿脱口から前記記録媒体の挿脱を可能とする解除位置となる第1ロック部と、
前記錠前部の施錠時は、前記ケース本体内から前記カメラの取り出しを不能とする拘束位置となる一方、前記錠前部の開錠時は、前記ケース本体内から前記カメラの取り出しを可能とする解除位置となる第2ロック部と、のうち少なくとも何れか一方を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ設置ケース。
【請求項5】
前記車両壁面は、車両客室内の側壁であり、
前記壁面部は、ドアの上方の鴨居であり、
前記取付部は、前記ケース本体の背面開口を覆う背面部であり、
前記背面部は、前記鴨居の表側に、該鴨居を開いた時にその裏側からのネジ止めにより固定されたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載のカメラ設置ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車両壁面に設置され周囲の状況を撮影記録するカメラを収容するためのカメラ設置ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両内において、正常な列車運行を妨げる行為やトラブルの発生を監視して記録する鉄道車両用防犯カメラシステムが提案されている(特許文献1参照)。この鉄道車両用防犯カメラシステムは、鉄道車両に配置されるレンズユニットとメインユニットとを備え、レンズユニットで撮影された画像を、メインユニットが備える処理部が記録部に記録するものであった。
【0003】
ここでレンズユニットは、いわゆるカメラに相当しており、レンズユニットケースに収納された状態で、鉄道車両内を撮影する場所として、例えばドアの上側付近に設置される。このような鉄道車両用防犯カメラシステムによれば、鉄道車両内での設置が可能で、記録録画の確認が容易なシステムであり、トラブル等の発生状況を後に記録録画を見ながら解析可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3214832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来の技術によれば、正常な鉄道運行を妨げる行為やトラブルの発生を監視して記録し、適時にその再生を行うことができるものであるが、SDカード等の記録媒体やカメラ自体の不正な取り外しを防ぐことに対しては、何ら配慮された構成ではなかった。
【0006】
そのため、鉄道車両内に設置されたカメラから記録媒体を不正に持ち出すことや、あるいはカメラ自体を設置場所から不正に取り外すような迷惑行為を、事前に防止するための何らかの対策が希求されていた。
【0007】
本発明の目的は、以上のような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、鉄道車両内に設置されたカメラに対する迷惑行為を確実に防止することができるカメラ設置ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
鉄道車両の車両壁面に設置され周囲の状況を撮影記録するカメラを収容するためのカメラ設置ケースにおいて、
前記車両壁面の一部は開閉可能な壁面部として、通常は開かず前記車両壁面に連なる閉じた状態に拘束され、
前記壁面部の表側に、該壁面部を開いた時にその裏側からの操作により固定される取付部と、
前記取付部に対して開閉可能であり、開いた時に内部にカメラを収容可能なケース本体と、を備え、
前記取付部に対する前記ケース本体の開閉が、前記壁面部を開いた時にその裏側からの操作により可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカメラ設置ケースによれば、鉄道車両内に設置されたカメラに対する迷惑行為を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るケースを後側上方から見た分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るケースを前側上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るケースを後側上方から見た斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るケース本体を開いて後側上方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係るケース本体を開いて後側側方から見た斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るロック部材が拘束位置にある状態を示す後側上方から見た斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るロック部材が解除位置にある状態を示す後側上方から見た斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るロック部材を示す斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る鴨居にケースを装着する様子を示す説明図である。
図10】本発明の実施形態に係る鴨居にケースを設置した状態を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る鴨居にケースを設置する前の状態を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態に係る鉄道車両間の仕切戸の上にケースを設置した状態を示す説明図である。
図13図12を横から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1から図13は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係るカメラ設置ケース10は、鉄道車両の車両壁面に設置されて、周囲の状況を撮影記録するカメラ30を収容するものである。ここでカメラ30とは、広義のカメラであって、単に静止画を撮影するだけの機器に限らず、撮影した映像や音声を記録する様々な種類の撮影記録装置全般を含む広い概念であり、例えばドライブレコーダ等も含まれる。なお、以下の実施形態に記載される構成や形状等は、あくまで本発明の一例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
【0012】
<カメラ設置ケース10の概要>
図1に示すように、本実施形態に係るカメラ設置ケース10は、カメラ30を撮影可能な状態で収容するケース本体10aと、該ケース本体10aにカメラ30を出し入れする背面開口を覆う背面部11と、を有してなる。本実施形態では背面部11が、本発明の「取付部」に相当する。図10に示すように、カメラ設置ケース10を設置する車両壁面は、例えば車両客室内の側壁1であり、その一部として、ドア2の上側の部分が壁面部1aとして開閉可能に構成されている。
【0013】
図10に示すように、壁面部1aは、通常は「鴨居」と称される部位であり、側壁1においてドア2の上側に開設された開口部(図示せず)を覆うパネル状に形成されている。壁面部1aが覆う開口部は、ドア2の駆動系の保守点検等を行うためのものである。壁面部1aである鴨居は、通常は両開きのドア2,2の一端から他端に亘って、その上側で両側方向に延びる長方形に形成されている。
【0014】
壁面部1aは、例えばその上端側を回動中心として、下端側を前後方向に開閉可能であるが、通常は開かれることはなく、閉じた状態に拘束されている。すなわち、壁面部1aの開閉は、例えば鉄道事業者による前記保守点検時等の特別な機会に限られている。なお、壁面部1aには、各種情報を表示する表示装置3が配設されており、この直ぐ上側にカメラ設置ケース10が設置されている。
【0015】
カメラ設置ケース10の背面部11は、詳しくは後述するが壁面部1aの表側に対して、該壁面部1aを特別に開いた時に、その裏側から固定されている。また、ケース本体10aは、これも詳しくは後述するが、背面部11に対して開閉可能に連結されている。ここで背面部11に対するケース本体10aの開閉は、壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作によってのみ可能に構成されている。なお、壁面部1aの表側とは、客室内を向く表面であり、壁面部1aの裏側とは、側壁1の開口より内側を臨む裏面である。また、背面部11に対するケース本体10aの開閉は、逆に言えば、ケース本体10aに対する背面部11の開閉と同義である。
【0016】
<カメラ30>
カメラ30は、その筐体の正面側にあるレンズを通じて、周囲の状況として客室内の乗客の様子等を撮影して記録する装置であれば足り、具体的には例えば、一般のドライブレコーダを採用している。なお、ドライブレコーダ自体の構成は、周知であるので詳細な説明は省略する。カメラ30の必須の構成としては、その筐体の一側面側に、撮影した映像や音声等を記録する記録媒体を電気的に挿脱するための挿脱口31(図1参照)を有している。記録媒体としては、例えばSDカード等が該当し、何れも挿脱口31から挿脱できるものである。
【0017】
また、カメラ30の電源に関しては、例えば専用バッテリーを用意して、後述する背面部11を固定する壁面部1aの裏側等に配設しても良い。あるいは、本実施形態では、カメラ設置ケース10の近傍に表示装置3があるため、この表示装置3に用いられる電源を流用するように構成しても良い。カメラ設置ケース10の後述する背面部11には、内部に電源コードを通すための電通孔112が設けられている。また、壁面部1aにも、電通孔112と合致する位置に電通孔1e(図9参照)が設けられている。
【0018】
<ケース本体10a>
図1および図2に示すように、ケース本体10aは、その背面側が開口して、カメラ30を収容可能な内部空間を6面で囲う箱状であり、例えば板金等で構成されている。詳しく言えばケース本体10aは、背面部11を閉じた状態で、該背面部11と対向する上下の上面部15および前面部12と、その左右両側の側面部13a,13bと、底面部14と、天面部16と、を有している。
【0019】
底面部14は、横長矩形の板状であり、カメラ30を載置するベースとなる。一対の側面部13a,13bは、それぞれ同一の五角形の板状であり、底面部14の両側縁よりそれぞれに垂直に立ち上げられている。なお、図1から図5において、側面部13bは、顕わには描かれていない。また、底面部14と平行に対向する天面部16は、平面視で横長矩形であり、底面部14よりも前後幅が狭い板状である。
【0020】
前面部12は、横長矩形の板状であり、水平に配置される底面部14の前端縁より立ち上がるが、全体的に下方に向かうように傾斜している。前面部12の略中央には、撮影用開口部121が円形に形成されている。ここで前面部12は、下方に向かうように傾斜しており、カメラ30は、そのレンズ(図示せず)が撮影用開口部121を通じて、客室内部を下方に向かって臨む状態に収容される。
【0021】
図5等に示すように、ケース本体10aを後側から見て、その右側の側面部13bの後端縁には、上下に並ぶ一対のヒンジ17,17を介して背面部11が開閉可能に連結されている。ここでのヒンジ17は、例えばヒンジの軸を表に見せない隠し丁番を採用しても良い。また、左側に側面部13aの後端縁の上側に沿って、縦長に延びたフランジ状の係合片18が設けられている。この係合片18には、後述するが背面部11に対してケース本体10aを固定するための取付孔19が設けられている。
【0022】
図6等に示すように、ケース本体10aを後側から見て、その左側の側面部13aの後端寄りの略中央には、ケース本体10aの内部に収容されたカメラ30における記録媒体の挿脱口31に合致する位置に、記録媒体用開口部132が設けられている。記録媒体用開口部132は、側面部13aの後端縁から前方へ向かい矩形状に広がる切り欠きとして形成されている。この記録媒体用開口部132は、カメラ30をカメラ設置ケース10内に収容した状態のままでも、外部から挿脱口31にアクセスして記録媒体を挿脱するための部位である。さらに、側面部13aの後端寄りの下側には、錠前部131が設けられているが、詳しくは後述する。
【0023】
また、図1に示すように、天面部16の後端縁には、左右一対に並び下方へ垂下する固定片161,161が設けられている。各固定片161には、ビス止め用にビス孔が予め設けられている。そして、各固定片161には、ケース本体10a内のカメラ30を、その背面側の周囲から内側へ押さえ付ける枠体32が、ビス33によって固定されている。枠体32は、例えば横長矩形の板金の内側が、一回り小さい同じく矩形状に刳り抜かれた略ロ字形の板材として形成されている。なお、カメラ30は、ケース本体10a内で底面部14上に固定されているが、図4に示すように、例えば底面部14上に、カメラ30を位置決めしたり、枠体32の下部を後方より覆うような台座34を設けても良い。
【0024】
<背面部11>
図1に示すように、背面部11は、ケース本体10aの背面開口に合致する大きさの横長矩形の平板状に形成されている。背面部11の一端縁は、前述したように側面部13bの後端縁に、上下に並ぶ一対のヒンジ17,17を介して開閉可能に連結されている。背面部11の他端縁である開閉端には、ケース本体10aを閉じた時に、前述した側面部13aの後端縁にある記録媒体用開口部132を覆う覆い部115が設けられている。覆い部115は、記録媒体用開口部132よりも若干大きい矩形状の舌片として形成され、背面部11の開閉端より直角に折れ曲がるように一体に設けられている。
【0025】
図3図4に示すように、背面部11の背面視で左側上方には、ケース本体10aを閉じた時の取付孔19に合致する取付孔111が設けられている。また、背面部11の背面視で右側下方には、カメラ30に接続する電源コードを通すための電通孔112が設けられている。さらに、背面部11の外面側には、縦方向の略中央で両側方向に離れて並ぶ一対のスタッドボルト113,113が外面上に垂直に突設されている。各スタッドボルト113は、取付孔111と電通孔112との間に位置するように配されている。
【0026】
図9に示すように、背面部11は、壁面部1aの表側に、該壁面部1aを特別に開いた時にその裏側からの操作により固定されている。壁面部1aで背面部11の取り付け部位には、各スタッドボルト113に対応する一対の固定孔1c,1cが設けられている。よって、背面部11を、壁面部1aの表側から取り付け部位に宛がいつつ、各スタッドボルト113を各固定孔1cに貫通させて位置決めし、壁面部1aの裏側から各スタッドボルト113にナット(図示せず)を螺合させる「操作」によって、背面部11は壁面部1aの表側に固定される。なお、各スタッドボルト113の余った先には、例えばカメラ30の専用バッテリー(電源)を共締めすることも可能である。
【0027】
そして、背面部11に対するケース本体10aの開閉は、壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作によってのみ可能に構成されている。図9に示すように、壁面部1aで背面部11の取り付け部位には、背面部11の取付孔111に対応する挿通孔1dが設けられている。よって、壁面部1aを特別に開いた時に、その裏側から挿通孔1dを通したネジ114を、各取付孔111,19に締結する「操作」により、背面部11に対してケース本体10aが閉じられる。逆に、ネジ114を各取付孔111,19から緩める「操作」により、背面部11に対してケース本体10aを開けることができる。
【0028】
ここで背面部11の取付孔111には、単にネジ114を挿通できれば足り、実際にネジ114を螺合させるのは、ケース本体10aにある取付孔19だけでも良い。また、壁面部1aの挿通孔1dは、ネジ114の頭部も挿通可能な内径に設計することで、ケース本体10aを開いた時に、ネジ114全体が壁面部1dを通り抜けてケース本体10a側に取り付いた状態となる。ここでネジ114としては、具体的には例えば、取付孔19のある係合片18のように薄板状の部位にも確実に締め付け可能なパネルファスナが適している。
【0029】
<錠前部131、ロック部材20>
図6図7に示すように、ケース本体10aの側面部13aの後端寄りの下側に、錠前部131と、ロック部材20と、が設けられている。錠前部131は、側面部13aの外側から操作できるように配置されており、具体的には例えば、カムロック式のシリンダー錠を採用している。すなわち、錠前部131は、シリンダーの鍵穴に円筒形の専用キー(図示せず)を差し込み回転させることで、シリンダー内部に基端が支持されたカム片の先端を、例えば0度の開錠角度から90度の施錠角度に回転可能に構成されたものである。
【0030】
錠前部131であるシリンダー錠の内部機構は、周知であるので詳細な説明は省略するが、本実施形態では、通常のカム片の代わりにロック部材20を設けている。すなわち、錠前部131における施錠ないし開錠に伴って、ロック部材20が、例えば上方に向かう拘束位置(図6参照)と、後方へ90度倒れる解除位置(図7参照)と、に回転(変位)するように構成されている。ロック部材20は、側面部13aの内面側に沿って、カメラ30の挿脱口31がある一側面との間で回動可能に配置されている。
【0031】
図8に示すように、ロック部材20は、長手方向に細幅に延びるベース部21を基幹としている。ベース部21の一端側は、錠前部131の内部で回転可能に軸支された回転操作部22となり、ベース部21の他端は、そのまま第1ロック部23となっている。また、ベース部21の途中には、ベース部21に対して直角に延びる延出部24が設けられており、その先端よりさらに直角に折れ曲がるように第2ロック部25が一体に設けられている。なお、第1ロック部23および第2ロック部25の先端側は、それぞれ平面視で半円形に形成されている。
【0032】
図6に示すように、錠前部131の施錠時は、ロック部材20は、ベース部21が垂直方向になるように回転している。このとき、第1ロック部23は、記録媒体用開口部132の内側の一部を塞ぐ拘束位置にあり、カメラ30の挿脱口31から記録媒体を挿脱することはできない。同時に、第2ロック部25は、ケース本体10a内に収容されているカメラ30の一部を背面開口上で覆う拘束位置にあり、ケース本体10a内からカメラ30を取り出すことはできない。
【0033】
一方、図7に示すように、錠前部131を専用キーで開錠すると、ロック部材20は、ベース部21が背後に向かって水平方向になるように回転する。すると、第1ロック部23は、記録媒体用開口部132を塞がない解除位置となり、カメラ30の挿脱口31から記録媒体を挿脱することができる。また、第2ロック部25は、ケース本体10a内に収容されているカメラ30の一部を覆わない解除位置となり、ケース本体10a内からカメラ30を取り出すことが可能になる。
【0034】
<カメラ設置ケース10の作用>
次に、本実施形態に係るカメラ設置ケース10の作用について説明する。
ケース本体10aを製造するには、例えば背面部11、前面部12、一対の側面部13a,13b、底面部14、上面部15および天面部16の各パーツを個別に1枚の板金から裁断して溶接等で一体に組み立てても良い。あるいは、1枚の板金を折り曲げて、各面部12,13a,13b,14,15,16を一体的に形成しても良い。
【0035】
また、背面部11は、板材から簡単に形成することができ、背面部11は、ヒンジ17、ヒンジ17を介してケース本体10aに開閉可能に取り付ける。また、ケース本体10aに組み付ける錠前部131は、例えば一般のシリンダー錠を採用して、そのカム片の代わりにロック部材20を取り付ければ良い。ここでロック部材20も、図8に示すように、その形状に合わせて裁断した板金を折り曲げるだけで形成することができる。このようにカメラ設置ケース10は、全体的に簡易な構成であり、容易に製造することができる。
【0036】
<<カメラ設置ケース10の設置>>
図9から図11は、カメラ設置ケース10を、車両客室内においてドア2の上の鴨居に相当する壁面部1aに取り付ける例を示している。図11に示すように、壁面部1a側で必要な加工としては、カメラ設置ケース10の取付用の一対の固定孔1c,1cおよび挿通孔1d、それに電線を通す電通孔1eと、合計4つの孔を開けるだけで足りる。このような極めて簡単な加工だけで、セキュリティーの高いカメラ設置ケース10の設置を実現することができる。
【0037】
カメラ設置ケース10を壁面部1aに設置するには、先ずは壁面部1aを特別に開けた状態にする。そして、取付部に相当する背面部11を、壁面部1aの表側から取り付け部位に宛がいつつ、各スタッドボルト113を各固定孔1cに貫通させて位置決めする。続いて、開いた壁面部1aの裏側から、各スタッドボルト113にナット(図示せず)を螺合させれば良い。
【0038】
このように背面部11は壁面部1aの表側に対して、該壁面部1aを特別に開いた時にその裏側からの操作によって固定することができる。従って、壁面部1aに対するカメラ設置ケース10の取付箇所が、通常は閉じている壁面部1aの表側から見えることはなく、壁面部1aの表側から取り外すような操作もできない。背面部11には、ケース本体10aが開閉可能に取り付けられているが、ケース本体10aの開閉も、壁面部1aの裏側からの操作により可能となる。
【0039】
すなわち、壁面部1aを特別に開けた状態にして、その裏側から挿通孔1dにネジ114を通し、背面部11にある取付孔111と、ケース本体10aにある取付孔19に締結すれば良い。これにより、ケース本体10aを背面部11に対して開かぬように固定することができる。このとき、背面部11は、壁面部1aから取り外す必要はなく、そのまま壁面部1aに固定した状態を維持することができる。
【0040】
そして、カメラ30の動作確認等のために、ケース本体10aを開ける必要がある場合には、ネジ114を各取付孔111,19から緩めることで、容易にケース本体10aを開けることができる。このように、カメラ設置ケース10自体を壁面部1aから取り外すだけでなく、ケース本体10aを開けることも、壁面部1aを特別に開けてから行うことになる。従って、カメラ設置ケース10だけでなく、カメラ30の不正な取り出しも防止することができる。
【0041】
<ロック部材20の動作>
本実施形態のカメラ設置ケース10によれば、壁面部1aへの取り付けと、ケース本体10aの開閉に関するセキュリティーだけでなく、さらに、カメラ30の記録媒体に関するセキュリティーも格段に高めることができる。すなわち、壁面部1aを開けてケース本体10aを開くことにより、カメラ30の背面側の表示パネルを目視する等の動作確認はできるが、カメラ30からSDカード等の記録媒体を抜き出したり、ケース本体10aからカメラ30自体を取り出すためには、さらにロック部材20による拘束を解除するための操作が必要となる。
【0042】
すなわち、背面部11からケース本体10aを開いても、図6に示すように、錠前部131が施錠されており、ロック部材20は、ベース部21が垂直方向になるように回転している。これにより、第1ロック部23が、記録媒体用開口部132の内側の一部を塞ぐ拘束位置にあり、カメラ30の挿脱口31から記録媒体を不正に取り出すことを防止することができる。同時に、第2ロック部25は、ケース本体10a内に収容されているカメラ30の一部を背面開口上で覆う拘束位置にあり、カメラ30を不正に取り出すことも防止することができる。
【0043】
一方、図7に示すように、錠前部131を専用キーで開錠すると、ロック部材20は、ベース部21が背後に向かって水平方向になるように回転する。その結果、第1ロック部23は、記録媒体用開口部132を塞がない解除位置となり、記録媒体を取り出すことが可能になる。また、第2ロック部25は、ケース本体10a内に収容されているカメラ30の一部を覆わない解除位置となり、カメラ30を取り出すことも可能となる。このような錠前部131によるロック部材20の操作は、例えば鉄道事業者のうち特別な権限を有する者しか行えないように限定することができる。
【0044】
本実施形態のロック部材20は、第1ロック部23と第2ロック部25の双方を備えるが、例えば第1ロック部23のみ、あるいは第2ロック部25のみを備えるように、構成を簡略化することも考えられる。また、ベース部21の大きさを適宜に設定して、第1ロック部23が記録媒体用開口部132のケース本体10aにおける内側箇所の全てを塞ぐようにしても良い。また、第2ロック部25の長さをさらに延ばして、ケース本体10aの背面内側の横方向を横断する長さとすれば、カメラ30をいっそう取り出し難くすることもできる。
【0045】
<<カメラ設置ケース10の別の設置例>>
図12は、車両客室内から妻側を見た車両間の縦断面的な説明図であり、車両間を仕切る仕切戸4の上部5にカメラ設置ケース10を設置した状態を示している。図13は、仕切戸4を横から見た縦断面的な説明図である。このように、カメラ設置ケース10を取り付ける車両壁面は、図10に示す前述した鴨居に限定されることはなく、開閉可能な壁面の一部であれば何処でも可能である。他に例えば、客室内の天井に設置することも考えられる。
【0046】
図12図13に示した例では、カメラ設置ケース10に収容したカメラは、客室内側で乗客の様子を撮影するメインカメラであり、その反対側には、小型のリアカメラ30Aが設置されている。リアカメラ30Aも、カメラ設置ケース10を小型化したもの等、同等のケース内に収容して設置しても良い。リアカメラ30Aによって、出入口デッキの様子も合わせて撮影することができる。なお、リアカメラ30Aで撮影した映像も、カメラ設置ケース10内のカメラの記録媒体に記憶させたり、同じ電源を用いるように構成しても良い。
【0047】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0048】
先ず、本発明は、鉄道車両の車両壁面1に設置され周囲の状況を撮影記録するカメラ30を収容するためのカメラ設置ケース10において、
前記車両壁面1の一部は開閉可能な壁面部1aとして、通常は開かず前記車両壁面1に連なる閉じた状態に拘束され、
前記壁面部1aの表側に、該壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作により固定される背面部(取付部)11と、
前記背面部(取付部)11に対して開閉可能であり、開いた時に内部にカメラ30を収容可能なケース本体10aと、を備え、
前記背面部(取付部)11に対する前記ケース本体10aの開閉が、前記壁面部1aを開いた時にその裏側からの操作により可能に構成したことを特徴とする。
【0049】
このような構成によれば、カメラ設置ケース10自体を壁面部1aから取り外すためには、先ず壁面部1aを特別に開ける必要があり、カメラ設置ケース10自体を不正に取り外すことを防止することができる。また、壁面部1aが閉じている通常時は、背面部11からケース本体10aを開けることもできない。これにより、ケース本体10aに収容されたカメラ30や記録媒体を不正に取り出すことも防止することができる。
【0050】
また、本発明は、前記ケース本体10aと前記背面部(取付部)11とに、前記ケース本体10aを閉じた時に互いに合致する位置に取付孔19,111を設け、前記壁面部1aに、前記背面部(取付部)11の取付孔111と合致する位置に挿通孔1dを設け、
前記壁面部1aを開いた時にその裏側から前記挿通孔1dに通したネジ114を、前記各取付孔に締結することで、前記背面部(取付部)11に対して前記ケース本体10aが閉じられ、前記ネジ114を前記各取付孔19,111から緩めることにより、前記背面部(取付部)11に対して前記ケース本体10aを開ける構成としたことを特徴とする。
【0051】
このように、複数の孔1d,19,111と、ネジ114だけの簡易な構成によって、鉄道車両内に設置されたカメラ30に対する迷惑行為を確実に防止することができ、カメラ30を含むシステムのセキュリティーを高めることが可能となる。なお、ネジ114を締結したり緩めることが、前記「操作」に該当する。
【0052】
また、本発明は、前記ケース本体10aに、その内部に収容した前記カメラ30における記録媒体の挿脱口31に合致する位置に記録媒体用開口部132を設け、
前記背面部(取付部)11に、前記ケース本体10aを閉じた時に前記記録媒体用開口部132を覆う覆い部115を設けたことを特徴とする。
【0053】
このような構成によれば、覆い部115が記録媒体用開口部132を覆うことにより、記録媒体用開口部132から記録媒体を不正に取り出すことを、いっそう確実に防止することができる。
【0054】
また、本発明は、前記ケース本体10aに設けた錠前部131と、
前記錠前部131における施錠ないし開錠に伴い変位するロック部材20と、を備え
前記ロック部材20は、
前記錠前部131の施錠時は、前記カメラ30における記録媒体の挿脱口31から前記記録媒体の挿脱を不能とする拘束位置となる一方、前記錠前部131の開錠時は、前記カメラ30の挿脱口から前記記録媒体の挿脱を可能とする解除位置となる第1ロック部と、
前記錠前部131の施錠時は、前記ケース本体10a内から前記カメラ30の取り出しを不能とする拘束位置となる一方、前記錠前部131の開錠時は、前記ケース本体10a内から前記カメラ30の取り出しを可能とする解除位置となる第2ロック部25と、のうち少なくとも何れか一方を有することを特徴とする。
【0055】
このような構成によれば、錠前部131が施錠されると、ロック部材20の第1ロック部23が、例えば記録媒体用開口部132の少なくとも一部を覆う等、カメラ30の挿脱口31から記録媒体の挿脱を不能とする拘束位置になるので、記録媒体の不正な取り出しをよりいっそう防止することができる。
【0056】
また、錠前部131が施錠されると、ロック部材20の第2ロック部25が、例えばカメラ30の一部を覆う等して、ケース本体10a内からカメラ30の取り出しを不能とする拘束位置になるので、カメラ30自体の不正な取り出しをよりいっそう防止することができる。
【0057】
さらに、本発明として、前記車両壁面は、車両客室内の側壁1であり、
前記壁面部1aは、ドア2の上方の鴨居であり、
前記背面部(取付部)11は、前記ケース本体10aの背面開口を覆う背面部であり、
前記背面部(取付部)11は、前記鴨居の表側に、該鴨居を開いた時にその裏側からのネジ止めにより固定されたことを特徴とする。
【0058】
このような構成によれば、そもそも鉄道車両内の鴨居を開けるには、例えば特殊工具等を使用しなければならないので、背面部11からケース本体10aを開けることに辿り着くこと(アクセスすること)は極めて困難となる。このため、カメラ設置ケース10を不正に取り外すことは極めて困難となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、カメラ設置ケース10を設置する車両壁面は、必ずしも客室内の内壁に限られるものではなく、例えば車両の外壁に設置して、車両の外部の様子を撮影記録するカメラに適用することも考えられる。
【0060】
さらに、カメラ設置ケース10において、壁面部の表側に固定される取付部は、必ずしも背面部11である必要はなく、他の面部を取付部として構成しても良い。例えば、天井部ないし上面部を、車両壁面の天井側に固定する取付部として、その下側でケース本体が開閉するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、様々な種類の鉄道車両において、その車両壁面であれば客室内壁あるいは外壁を問わず周囲の状況を撮影記録するカメラを収容するためのケースとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…カメラ設置ケース
10a…ケース本体
11…背面部(取付部)
12…前面部
13a…側面部
13b…側面部
14…底面部
15…上面部
16…天面部
17…ヒンジ
18…係合片
19…取付孔
20…ロック部材
21…ベース部
22…回転操作部
23…第1ロック部
25…第2ロック部
30…カメラ
31…挿脱口
32…枠体
33…ビス
34…台座
111…取付孔
112…電通孔
113…スタッドボルト
114…ネジ
115…覆い部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13