(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054080
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
B25J9/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156258
(22)【出願日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 125 563.8
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】517273548
【氏名又は名称】イョット.シュマルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミア シプル
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS15
3C707BT01
3C707CV07
3C707CW07
3C707FS01
3C707GS06
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる向き、外形を有する対象物を柔軟かつ迅速に把持できるハンドリング装置を提供する。
【解決手段】本発明は、マニピュレータ(12)及びカップリング装置(16)を含むハンドリング装置(10)に関し、カップリング装置(16)はエンドエフェクタ(14)をマニピュレータに連結するためのカップリング部を有する。マニピュレータは、Z軸(24)に対してカップリング装置の並進及び/又は回転運動を駆動するためのZ軸(24)に沿って延在するスピンドル(22)を備え、、前記カップリング部は、スピンドルに対して少なくとも1つの自由度について調節可能であり、前記少なくとも1つの自由度についてカップリング部の位置決め運動を駆動するための駆動装置(50)が設けられ、前記カップリング装置は、スピンドルの第1端(26)に配置され、前記駆動装置の駆動ユニットは、第2端に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータ(12)、特にSCARAロボット(28)と、エンドエフェクタ(14)を前記マニピュレータ(12)に連結するためのカップリング部(48)を有するカップリング装置(16)と、を備えるハンドリング装置(10)であって、
前記マニピュレータ(12)は、前記カップリング装置(16)及びカップリング装置に任意に連結されるエンドエフェクタ(14)の、Z軸(24)に対する並進及び/又は回転運動を駆動するためのスピンドルドライブ(20)を含み、
前記スピンドルドライブ(20)は、Z軸(24)に沿って延在するスピンドル(22)を備え、
前記カップリング部(48)は、少なくとも1の自由度について、前記スピンドル(22)に対して調整可能であり、
前記少なくとも1の自由度についての前記カップリング部(48)の位置決め移動を駆動する駆動装置(50)が設けられており、
前記駆動装置(50)は、駆動ユニット(52)と、前記駆動ユニット(52)の駆動移動を前記カップリング部(48)に伝達するための力伝達装置(54)と、を備え、
前記カップリング装置(16)は、前記スピンドル(22)の第1の端部(26)に配置され、前記駆動ユニット(52)は、前記スピンドル(22)の第2の端部(56)に配置される、ハンドリング装置(10)。
【請求項2】
前記スピンドル(22)は、内部中空空間(72)を有する中空スピンドル(70)として設計されており、前記力伝達装置(54)は、少なくとも前記内部中空空間(72)を貫通するセクションに案内される、請求項1に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項3】
前記力伝達装置(54)は、少なくとも1つの力伝達要素(62)を備え、
前記少なくとも1つの力伝達要素(62)は前記中空スピンドル(70)の前記内部中空空間(72)のセクションに少なくとも配置され、
特に前記少なくとも1つの力伝達要素(62)は、前記内部中空空間(72)を前記Z軸(24)に沿って移動し、又は、前記Z軸周りに回転する、請求項2記載のハンドリング装置(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの力伝達要素(62)が、押し棒(64)、ボーデンケーブル、ラック、またはスピンドルを備える、請求項3に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項5】
前記カップリング部(48)は、ピボット軸(46)を中心にして前記スピンドル(22)に対して旋回可能であり、特にZ軸(24)に対して直交して延び、
前記駆動装置(50)は、前記ピボット軸(46)を中心にして前記カップリング部(48)の旋回運動を駆動するように構成されている、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項6】
前記カップリング装置(16)は、連結部(40)とピボット部(42)を備え、前記連結部(40)は、前記スピンドル(22)に連結され、特に回転可能に取付けられ、前記ピボット部(42)は、前記連結部(40)にピボット軸(46)を中心に旋回可能となるように取り付けられ、前記カップリング部(48)は、ピボット部(42)に配置される、請求項5に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの力伝達要素(62)は、前記Z軸(24)に沿った前記少なくとも1つの力伝達要素(62)の変位運動が、前記ピボット軸(46)を中心とする前記ピボット部(42)のピボット運動を導くように、前記ピボット部(42)に機械的に結合される、請求項6に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項8】
前記駆動ユニット(52)は直線駆動装置として設計され、特に空気圧シリンダ(60)を備える、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項9】
前記カップリング装置(16)は、前記スピンドル(22)に回転可能に取付けられた状態で連結されている、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項10】
前記駆動ユニット(52)は、前記スピンドル(22)および/または少なくとも1つの力伝達要素(62)の、Z軸(24)を中心とした回転運動から、特に、対応して設計されたピボットベアリング(58、74)を介して分離されている、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10。
【請求項11】
前記カップリング部(48)が負圧出口および/または正圧出口を備え、特にエンドエフェクタ(14)の対応する流体カウンタインターフェースに接続するための流体インターフェースの形態を備える、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項12】
中空スピンドル(70)を介して流体、特に負圧または正圧の流体を案内するための少なくとも1つの流体供給路(76)をさらに備える、請求項2乃至11のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項13】
把持すべき物体の位置と場所を検出するように設計された検出装置と、
検出装置によって検出される物体の位置及び/又は場所を関数として、前記マニピュレータ(12)及び/又は前記駆動装置(50)を制御するように構成される、制御装置と、 を備える、請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【請求項14】
前記カップリング装置(16)を介して前記マニピュレータ(12)に接続される吸引把持装置(18)をさらに備える、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のハンドリング装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータ、特にSCARAロボットと、エンドエフェクタをマニピュレータに結合するためのカップリング装置とを備えるハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなハンドリング装置は、例えば、倉庫で商品を取り上げるときに使用され、そこで特に、複数の商品を有する貯蔵コンテナから商品を把持し(いわゆる「ビン-ピッキング」)、それらを別の場所へ、例えば、輸送コンテナへ移動するために使用される。
【0003】
この関連では、SCARA運動学を備えたロボットを使用することが知られており、ここで、Z軸に沿った並進および/または回転運動がスピンドルドライブによって提供され、そのスピンドル上にエンドエフェクタが配置される。スピンドル駆動部を有するこのようなロボットは、特に迅速で反復可能な動きを可能にし、したがって高い「把持率」を可能にする。
【0004】
典型的な適用状況では、上記の貯蔵コンテナは、例えば、異なる形状、サイズおよび重量も有し得る多数の商品を含む。特に、貯蔵コンテナ内に、対象物が無秩序に、すなわち異なる向きで置かれていること、および、異なる対象物の把持に適した外面領域が、異なる向きになっていることも考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、対象物を安全に把持するためには、把持すべき物体の外形および/または向きに応じてエンドエフェクタを整列させることが定期的に必要である。
【0006】
本発明は、異なる向きおよび/または外形を有する対象物を柔軟かつ迅速に把持することができる作業に関する。さらに、把持中の低干渉動線が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載のハンドリング装置によって達成される。
【0008】
ハンドリング装置は、物体のハンドリング、特に物体の持ち上げ、移動、下降、配置のために設計されている。ハンドリング装置は、マニピュレータ、特にロボットと、エンドエフェクタをマニピュレータに結合するためのカップリング部を有するカップリング装置とを備える。特に、マニピュレータは、カップリング装置及びその上にオプションとして配置されるエンドエフェクタを変位させるように設計される。エンドエフェクタは、特に、把持装置、好ましくは吸引把持装置であってもよい。
【0009】
マニピュレータは、カップリング装置の並進及び/又は回転運動を駆動するためのスピンドルドライブと、スピンドルドライブにオプションとして、特に垂直Z軸に対して、連結されるエンドエフェクタとを備える。この点において、スピンドルドライブは、特に、Z軸に沿ったカップリング装置の並進位置決め運動を駆動するように、および/またはZ軸を中心とした回転運動を駆動するように設計されている。換言すれば、スピンドルドライブは、Z軸に沿っておよび/またはZ軸の周りに、カップリング装置およびそれに任意に配置されたエンドエフェクタを変位させるように設計される。
【0010】
スピンドルドライブは、Z軸に沿った主縦軸と共に延在されるスピンドルを備える。特に、スピンドルは、Z軸周りに回転可能に取り付けられ、好ましくは、Z軸周りの回転運動だけでなく、Z軸に沿った並進運動も、互いに独立して行うことができるようになっている。好ましくは、スピンドルはボールねじとして設計される。
【0011】
カップリング装置のカップリング部は、特にスピンドルの移動とは独立に、スピンドルに対して少なくとも1の自由度に関して調整可能である。特に、カップリング部は、スピンドルに対して旋回可能であってもよい。
【0012】
ハンドリング装置は、前記少なくとも1の自由度に対する前記カップリング部の位置決め運動を駆動する駆動装置をさらに備える。この点において、駆動装置は、スピンドルに対してカップリング部を少なくとも1の自由度に対して移動させるように設計されている。特に、駆動装置は、カップリング部をスピンドルに対して旋回させるように設計されてもよい。
【0013】
駆動装置は、駆動ユニット(アクチュエータ)と、駆動ユニットの駆動動作をカップリング部に伝達するための力伝達装置とからなる。
【0014】
カップリング装置は、スピンドルの第1の端部に配置され、特にこれに締結される。駆動装置の駆動ユニットは、スピンドルの第2の、相対する端部に配置され、特に、これに締結される。
【0015】
このようなハンドリング装置は、カップリング部を、したがって任意にその上に配置されたエンドエフェクタを、スピンドルに対して簡単かつ信頼性のある方法で調節することを可能にし、かくしてエンドエフェクタの配向を、例えば、必要に応じて把持される対象物の位置および場所に適合させることを可能にする。このようにして、異なる位置及び場所にある物体であっても確実に把持することができ、これは、特に、商品が通常、無秩序に、すなわち異なる向きで、貯蔵コンテナ内にある「ビン-ピッキング」において有利である。
【0016】
駆動ユニットがスピンドルの上端に締結されることにより、エンドエフェクタの領域における干渉動線が減少する。これは、貯蔵コンテナからの物体の把持を容易にし、特に、比較的狭い貯蔵コンテナ又は貯蔵コンテナのコーナー領域から物体を把持することを可能にする。さらに、提案されたハンドリング装置は、対象物が駆動ユニットの突起または凹部に引っ掛かるリスクを最小限にし、それによって駆動ユニットを損傷し、またはその機能を損なう可能性を最小限にする。このハンドリング装置は、この点において特に堅牢に設計されており、そのため、貯蔵コンテナ内で多くの把持サイクルを行った後でも、確実な動作が保証される。
【0017】
少なくとも1の自由度は、線形(並進)および/または回転自由度であってもよい。この点において、カップリング部は、スピンドルに対して並進変位及び/又は回転され得ることが考えられる。好ましくは、少なくとも1の自由度はピボット移動の自由度である。
【0018】
力伝達装置は、Z軸に沿って変位および/またはZ軸の周りに回転され得る、少なくとも1つの力伝達要素を備え得る。少なくとも1つの力伝達要素は、例えば、押し棒、ボーデンケーブル、歯付きラック、またはスピンドルであってもよい。特に、駆動ユニットは、Z軸に沿った少なくとも1つの力伝達要素の並進運動および/またはZ軸を中心とした少なくとも1つの力伝達要素の回転運動を駆動するように設計されてもよい。
【0019】
カップリング装置は、スピンドルに接続された連結部、特に回転可能な取付けで連結された連結部と、その上に移動可能に、特に回転可能にまたは旋回可能に配置された調整部とを有していてもよく、ここでカップリング部は調整部上に配置されている。駆動装置は、調整部を連結部に対して移動させるように構成されてもよい。
【0020】
特に、カップリング装置は、エンドエフェクタを反復可能な方法でマニピュレータに取り外し可能に接続するように設計されてもよい。好ましくは、カプリング部は、クイックチェンジ継手として設計されてもよい。例えば、カップリング装置が、エンドエフェクタとカップリング部との間に有効な磁気接続を備えることが考えられる。この点において、エンドエフェクタをピボット部分に結合するか又はこれから切り離すために、単純な移動パターンのみが必要であり、これはエンドエフェクタの自動的な変更を助長する。
【0021】
特に、マニピュレータはSCARAロボットとして設計することができる。この点において、マニピュレータは、ロボットベース及びロボットアームを有することができ、これは、順番に配置された3つの要素を有する。特に、第1の要素が、旋回可能であるように、特に回転可能であるようにロボットベースに第1の軸周りに接続され、第2の要素が旋回可能であるように、特に回転可能であるように、第1の要素に第2の軸周りに接続され、第3の要素が、スピンドルによって提供されてもよい。特に、スピンドルは、第3の軸(Z軸)を中心として第2の要素に回転可能に接続される。好ましくは、第1軸、第2軸および第3軸(Z軸)は、互いに平行であり、好ましくは垂直方向に伸びる。特に、第2の要素は、Z軸を中心とするスピンドルの回転運動を駆動するための、駆動モータおよび/または任意にスピンドルドライブの歯車装置を備えてもよい。スピンドルは好ましくはボールねじとして設計される。
【0022】
有利な更なる開発の枠組みの中で、スピンドルは、中空スピンドルとして設計され得る。この点において、中空スピンドルは、内部、好ましくは中心に、中空空間を備えてもよい。好ましくは、中空空間は、Z軸に沿って、スピンドルの第1の端部からスピンドルの第2の端部まで、特に連続的に延在する。この接続において、力伝達装置が、中空スピンドルの中空空間を通って少なくとも部分的に案内されるならば、有利である場合がある。このような設計では、把持中に干渉動線がさらに減少する。さらに、力伝達装置は、環境の影響から保護され、特に、複数の対象物を「ビン-ピッキング」する場合に、損傷のリスクを低減する。この点において、このような実施形態は、ハンドリング装置の、特に信頼性が高く、トラブルのない動作を可能にする。
【0023】
力伝達装置は、中空スピンドルの中空空間内の少なくとも一部分に配置される、少なくとも1つの力伝達要素を備えることができる。特に、少なくとも1つの力伝達要素は、スピンドルの第1の端部からスピンドルの第2の端部までZ軸に沿って延在してもよい。駆動ユニットの駆動運動をカップリング部に伝達するために、少なくとも1つの力伝達要素を、Z軸に沿って中空空間内で変位させ、特に前後に移動させ、および/またはZ軸を中心に回転させてもよい。
【0024】
力伝達要素が押し棒であることが考えられる。特に、押し棒は、Z軸に沿った並進運動および/またはZ軸を中心とした回転運動を、カップリング装置のカップリング部に伝達するように設計されてもよい。また、力伝達要素がボーデンケーブルであることも考えられる。あるいは、力伝達要素が歯付きラックとして設計されることも考えられる。さらなる実施形態の文脈内では、力伝達要素がスピンドルであることも考えられる。次いで、駆動ユニットのスピンドルは、特にマニピュレータのスピンドルに対して、Z軸の周りに回転されてもよい。
【0025】
有利な実施形態の範囲内では、少なくとも1の自由度は、ピボット運動の自由度であってもよい。特に、カップリング部は、旋回軸を中心として、好ましくはZ軸に直交して、スピンドルに対して旋回可能である。駆動装置は、次いで、旋回軸を中心とするカップリング部の旋回運動を駆動するように構成することができる。カップリング部を旋回させることによって、特に、エンドエフェクタの配向を変化させることが可能となり、したがって、異なる位置および場所にある物体を簡単な方法で把持することが可能となる。
【0026】
具体的には、カップリング装置は、カップリング装置をスピンドルに接続するための連結部と、ピボット部とを備えていてもよく、ここで連結部はピボット部上に配置されている。次いで、ピボット部は、好ましくは、ピボット軸を中心に旋回可能であるように、連結部に取り付けられる。この接続において、ピボット部がピボット軸を中心に連続的に旋回することができるならば、有利である。特に、ピボット部の最大ピボット角は、0°乃至90°を含み、特に30°、さらに特に45°である。特に、連結部は、回転可能に取り付けられる方法でスピンドルに接続されてもよい。
【0027】
ピボット部を備えた実施形態の場合、駆動装置は、次に、特に、ピボット軸を中心とするピボット部のピボット運動を駆動するように構成される。特に、力伝達装置は、Z軸に沿った少なくとも1つの力伝達要素の並進変位運動が、旋回軸を中心とするピボット部の旋回運動を導くように、ピボット部に機械的に連結される少なくとも1つの力伝達要素を備え得る。この接続において、例えば少なくとも1つの力伝達要素、例えばプッシュロッドが、さらにピボットジョイントを介してピボット部に接続されていることが考えられる。このような実施形態では、力伝達要素とピボット部との間のピボット軸と、連結部とピボット部との間のピボット軸とが、互いに平行である場合に有利である場合がある。
【0028】
Z軸に沿った少なくとも1つの力伝達要素の変位運動を駆動するために、駆動ユニットがZ軸に沿った並進運動を駆動するための直線駆動装置として設計されるならば、有利であり得る。例えば、駆動ユニットは空気圧シリンダを備えることができる。空気圧シリンダの1つの移動軸は、Z軸と平行または同一であることが好ましい。また、駆動装置は、電動シリンダ及び/又はレバー付き電動ドライブを備えることも考えられる。
【0029】
さらに、駆動ユニットは、任意に、Z軸を中心とする少なくとも1つの力伝達要素の回転運動を駆動するように設計されてもよい。例えば、カップリング部又はカップリング装置全体をスピンドルに対してZ軸周りに回転させることが可能であることが考えられる。
【0030】
一般的な態様の範囲内では、カップリング装置が、特に連結部を介して、Z軸を中心として回転可能に取り付けられてスピンドルに結合され、その結果、Z軸を中心とするスピンドルの回転運動が、カップリング装置に伝達され、それに任意に結合されたエンドエフェクタに伝達される場合にも有利であり得る。このような実施形態は、Z軸周りの回転運動を駆動装置によって提供する必要がないので、特に設計において単純であり、堅牢である。この関連では、少なくとも1つの力伝達要素が、Z軸を中心として回転可能に取付けられでスピンドルに連結されることが考えられる。これは、例えば、少なくとも1つの力伝達要素が、回転可能に取り付けられてカップリング装置に接続され、カップリング装置が回転可能に取り付けられてスピンドルに接続されることによってもたらされ得る。
【0031】
さらに、駆動ユニットが、スピンドルおよび/またはZ軸の周りの少なくとも1つの力伝達要素の回転運動から切り離される場合に有利であることが証明される。例えば、駆動ユニットがピボット軸受を介してスピンドルに接続されていることが考えられる。Z軸を中心とするスピンドルの回転運動に応じて、駆動装置は同様に回転されず、静止状態を維持する。これは、例えば電力ケーブルまたは流体ラインを接続するための駆動ユニットの供給接続が常に同じ方向を指すという利点を有し、これにより、容易なケーブルまたはホースの引き回しが可能になる。これに関連して、駆動ユニットがガイドロッドによってZ軸周りの回転に対して取付けられる場合にも有利である。
【0032】
少なくとも1つの力伝達要素が、Z軸を中心として回転可能に取り付けられてスピンドルに連結される実施形態の場合、少なくとも1つの力伝達要素に連結される駆動ユニット、特にアクチュエータ、例えばシリンダが、Z軸を中心とする少なくとも1つの力伝達要素の回転運動から切り離される場合にも有利であり得る。例えば、アクチュエータは、対応するピボット軸受を介して少なくとも1つの力伝達要素に接続されることが考えられる。
【0033】
一般的な態様の範囲内では、例えば、エンドエフェクタを動作させるために、流体供給、特に、負圧供給および/または正圧供給がカップリング装置に提供される場合に有利であり得る。特に、カップリング部が負圧出口及び/又は正圧出口を有する場合に有利である。正圧出口および/または負圧出口は、特に、エンドエフェクタの対応する流体カウンタインターフェースに接続するためのそれぞれの流体インターフェースの形成で設計されてもよい。この点において、カップリング部は、カップリング装置とエンドエフェクタとの間に流体接続を確立するように設計され得る。カップリング装置は、エンドエフェクタがカップリング部に固定されたときに、少なくとも1つの流体接続がカップリング部とエンドエフェクタとの間に形成されるように設計されており、エンドエフェクタの容易な交換を可能にするならば、特に有利である。
【0034】
この関連では、カップリング部が、負圧流体接続だけでなく、エンドエフェクタとカップリング部との間の正圧流体接続を確立するように設計されていることも考えられる。例えば、カップリング部は、負圧出口および正圧出口を有し、エンドエフェクタは、負圧入口および/または正圧入口を対応する対向カウンターカップリング側に有することが可能である。エンドエフェクタがカップリング部に固定されるときに、負圧出口および負圧入口、また正圧出口および正圧入口がそれぞれ流体接続部を形成するように、負圧出口および負圧入口、または正圧出口および正圧入口がそれぞれ設計され、配置されている場合、特に有利であり得る。
【0035】
流体をエンドエフェクタに供給するために、中空スピンドルを通る流体、特に負圧又は正圧の通路のために少なくとも1つの流体の供給路が設けられている場合には、中空スピンドルを有する実施形態の場合にも有利であり得る。例えば、中空スピンドルの中空空間内に流体ホースが案内されることが考えられる。しかしながら、中空スピンドル自体の中空空間の少なくとも部分体積が、少なくとも1つの流体供給路を提供することも考えられる。流体の供給路は、例えば外部ホース接続の場合のように、対象物を取り扱うときに干渉動線を構成しない。
【0036】
ピボット軸を中心とするピボット部のピボット運動中でさえもエンドエフェクタへの流体供給を確実にするために、ピボット部を備えたカップリング装置の実施形態の場合には、流体供給路と、カップリング部での負圧または正圧出口との間の流体接続がそれぞれピボットジョイントを通っている場合には、有利であり得る。
【0037】
ハンドリング装置の具体的な実施形態に関係なく、ハンドリング装置は、マニピュレータ及び駆動装置を制御するための制御装置を備えることができる。
【0038】
ハンドリング装置は、検出装置をさらに備えることができ、この検出装置は、把持される対象物の位置および場所、特に対象物の外面の位置および場所を検出するように設計されている。これは、エンドエフェクタが対象物に接近する前に、対象物を特徴付けること、特に対象物上の把持位置を特定することを可能にする。例えば、検出装置が1つまたは複数のカメラを備えることが考えられる。
【0039】
次いで、制御装置は、検出装置によって捕捉される対象物の配向、特に位置および場所を関数として、マニピュレータおよび/または駆動装置を制御するように特に構成されてもよい。
【0040】
上述のように、エンドエフェクタは、特に、把持装置であってもよい。「ビン-ピッキング」の分野での応用に対して、エンドエフェクタを吸引把持装置として設計すれば有利であることが証明されている。この点に関し、ハンドリング装置は、カップリング部を介してマニピュレータに接続される吸引把持装置を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明を、図を参照して以下により詳細に説明する。
【
図1】ハンドリング装置の実施形態の簡略化した略図を側面図で示す。
【
図2】スピンドルの領域における
図1によるハンドリング装置の拡大セクションを断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明および図において、同一の参照符号は、それぞれの場合において、同一または対応する特徴に使用される。
【0043】
図1は、物体(図示せず)を把持して取り扱うためのハンドリング装置の簡略化した概略図を示しており、これを全体として参照符号10で示す。ハンドリング装置10は、マニピュレータ(例えば、ロボット)12と、カップリング装置16を介してマニピュレータ12に接続されるエンドエフェクタ14とを備える。
【0044】
図示の例では、エンドエフェクタ14は、物体を吸引するための吸引把持装置18として設計されている。しかし、図示しない実施形態の場合には、エンドエフェクタ14が、例えば空気圧で作動する機械的グリッパとして、設計されることも考えられる。
【0045】
図1に概略的に示すように、マニピュレータ12は、Z軸24に沿って延在するスピンドル22を備えたスピンドルドライブ20を備える。
図1に示すように、カップリング装置16は、スピンドル22の第1の端部26に配置されており、Z軸24に対してスピンドル22によって並進および/または回転方向に変位される。
【0046】
スピンドル22は、Z軸24に沿った並進運動と、Z軸24を中心とした単純な回転運動の両方を可能にするボールねじとして設計されることが好ましい。
【0047】
図示の例では、マニピュレータ12は、4軸SCARAロボット28として設計されており、SCARAロボット28の第3軸及び第4軸の(Z軸24に対する並進及び回転運動)は、スピンドルドライブ20によって提供される。具体的な例では、SCARAロボット28は、ロボットベース30を備え、ロボットベース30に第1のロボット要素32が、垂直の第1軸34を中心に旋回可能に、特に回転可能に締結される。第2のロボット要素36は、第1のロボット要素32に取付けられ、第2軸38を中心に旋回可能であり、特に回転可能である。次に、第2のロボット要素36には、上述のスピンドル22が取付けられる。特に、第2のロボット要素36はまた、スピンドルドライブ20に対応する駆動および/または歯車装置を備える。一例として、好ましくは、第1軸34、第2軸38及びZ軸24(第3軸)は、互いに平行に配置されている。
【0048】
図示の例では、カップリング装置16は、好ましくは回転可能に取付けられた状態でスピンドル22に連結される連結部40を備えている。カップリング装置16は更にピボット部42を備えており、ピボット部は、ピボットジョイント44を介して連結部40に連結されており、従って、スピンドル22に対してピボット軸46を中心としてピボット回転可能である。一例として、ピボット軸46は、Z軸24(
図1参照)に対して直角に配向されることが好ましい。
【0049】
ピボット部42は、エンドエフェクタ14が、特に反復可能で解放可能な方法で結合され得るカップリング部48を含む(
図2参照)。カップリング状態では、ピボット軸46を中心とするピボット部42のピボット運動によって、エンドエフェクタ14の配向を変えることができる。
【0050】
上述したように、カップリング部48は、クイックチェンジ式の結合として設計することができる。例えば、エンドエフェクタ14が磁気接続を介してカップリング部48に接続されていてもよいことが考えられる。
【0051】
ハンドリング装置10は、ピボット軸46を中心とするピボット部42、ひいてはカップリング部48のピボット運動を作動させるための駆動装置50をさらに備える。駆動装置50は、駆動ユニット52と、駆動ユニット52の駆動力をピボット部42(
図2参照)に伝達する力伝達装置54とからなる。
【0052】
駆動ユニット52は、カップリング装置16と反対位置のスピンドル24の第2の端部56に配置される(
図1参照)。この点において、駆動ユニット52とカップリング装置16とは空間的に互いに分離されている。好ましくは、駆動ユニット52は、ピボット軸受58を介してスピンドル22に取り付けられ、かくしてZ軸24の周りのスピンドル22の回転運動から切り離される(
図2参照)。
【0053】
図2に示すように、図示の例における駆動ユニット52は、Z軸24に沿った並進運動を行うように設計された空気圧シリンダ60を備えている。図示しない実施形態では、駆動ユニット52が、例えば、電気モータによって駆動されるシリンダを有することも考えられる。
【0054】
駆動ユニット52または空気圧シリンダ60の駆動運動をそれぞれピボット部42に伝達するために、力伝達装置54は、少なくとも1つの力伝達要素62を備え、この要素は、図示の例では、押し棒64(
図2参照)として設計されている。図示しない実施形態の場合、力伝達要素62がボーデンケーブル、歯付きラックまたはスピンドルとして設計されることも考えられる。
【0055】
図2から分かるように、押し棒64は、一方では空気圧シリンダ60に、他方ではピボット部42に接続されている。押し棒64のZ軸24に沿った変位運動が、ピボット軸46を中心としたピボット部42のピボット運動に至るように、押し棒64とピボット部42との間にカップリングが設けられている。
【0056】
この目的のために、実施例における押し棒64は、ピボット軸68(
図2参照)を中心に旋回可能であるように、ピボットジョイント66を介してピボット部42に連結されている。一例として、最も好ましくは、連結部40とピボット部42との間のピボット軸46と、力伝達要素62とピボット部42との間のピボット軸68とが、互いに平行である。
【0057】
図2に例として示されているように、力伝達装置54、特に力伝達要素62は、スピンドル22を通るセクションでガイドされることが好ましい。具体的には、スピンドル22は中空スピンドル70として設計され、第1の端部26から第2の端部56までZ軸27に沿って延在する中空の空間72を有する。
【0058】
この例では、押し棒64は、中空空間72内に配置され、Z軸24に沿って前後に変位することができる。図示の例では、押し棒64は、カップリング装置16を介して、Z軸24を中心にしてスピンドル22に回転可能に固定された状態で結合されている。例示的且つ好ましい実施形態において、押し棒64は、さらに、対応するピボット軸受74を介して空気圧シリンダ60に接続され、その結果、空気圧シリンダ60は、Z軸24を中心とする押し棒の回転運動から切り離される。
【0059】
図2に概略的に示すように、押し棒64は、好ましくは、中空スピンドル70の中空空間72を完全に満たさないように、すなわち中空空間72の部分容積が自由であるように、寸法決めされ得る。次いで、中空空間の残りの部分容積は、任意に、例えば、圧縮空気および/または負圧をカップリング装置16に導き、次いでエンドエフェクタ14に導くために、流体供給孔76として使用されてもよい。図示しない実施形態の場合、この目的のために中空空間72に流体ホースを設けることも考えられる。
【0060】
エンドエフェクタ14に流体、特に負圧及び/又は正圧を供給するために、カップリング部48が、エンドエフェクタ14の対応する流体受けインターフェースに接続するための流体インターフェース(図示せず)を含む場合に、更に有利である。具体的には、カップリング部48は、負圧出口及び/又は正圧出口(図示せず)を有することができる。
【0061】
上述のように、ハンドリング装置10は、任意に、把持されるべき物体の位置および場所を検出するように設計された検出装置(図示せず)を備えてもよい。
【0062】
特に、ハンドリング装置10は、マニピュレータ12及び駆動装置50を制御するための制御装置(図示せず)も含む。特に、制御装置は、検出装置によって検出される、把持される対象物の位置および場所に応じてマニピュレータ12および/または駆動装置50を制御するように構成されてもよい。