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特開2024-54082鶏卵分布測定装置、採卵鶏舎飼養管理システム及び鶏卵分布測定方法
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  • 特開-鶏卵分布測定装置、採卵鶏舎飼養管理システム及び鶏卵分布測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054082
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】鶏卵分布測定装置、採卵鶏舎飼養管理システム及び鶏卵分布測定方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 45/00 20060101AFI20240409BHJP
   A01K 31/16 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A01K45/00 A
A01K31/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161770
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2022160041
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023081367
(32)【優先日】2023-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522044250
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ビー・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】南部 邦男
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA07
2B101EC05
2B101EC14
(57)【要約】
【課題】ケージ単位ではなくケージ列全体における鶏卵分布、鶏卵の体積分布、鶏卵の重量分布又は鶏卵の汚れ分布等の監視を行うことで、ケージ列における病気が発生している領域や環境状態が悪化している領域等を発見する。
【解決手段】ケージ列12からの鶏卵Eを集卵する集卵ベルト14に沿って移動し、集卵ベルト14上の鶏卵E、当該鶏卵Eの物理的性状(例えば、鶏卵の体積、重量、外形又は外観等)を検出する鶏卵センサ2と、鶏卵センサ2の検出信号に基づいて鶏卵がカウントされる毎に、鶏卵のカウント情報に鶏卵の位置情報と当該位置近傍のケージの収容羽数情報とを紐付けて記録するとともに、鶏卵センサ2の移動動作の日時情報を記録する記録部34とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケージ列からの鶏卵を集卵する集卵ベルトの動作が停止された状態で前記集卵ベルトに沿って移動し、前記集卵ベルト上の鶏卵又は当該鶏卵の物理的性状を検出する鶏卵センサと、
前記鶏卵センサの検出信号に基づいて鶏卵が検出される毎に、当該鶏卵の検出情報に当該鶏卵の位置情報を紐付けて記録するとともに、前記鶏卵センサによる検出移動動作の日時情報を記録する記録部とを有する、鶏卵分布測定装置。
【請求項2】
前記鶏卵センサによる検出移動動作中において、鶏卵ストッパにより前記ケージ列から新たな鶏卵が前記集卵ベルトに移動しないようにする、請求項1に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項3】
前記鶏卵センサによる検出移動動作により得られた前記検出情報及び前記位置情報に基づいて、前記集卵ベルト上の鶏卵分布、鶏卵の体積分布、鶏卵の重量分布又は鶏卵の汚れ分布を示す分布情報を生成する分布情報生成部をさらに備える、請求項1又は2に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項4】
前記分布情報生成部は、一の検出移動動作により得られた分布情報とその次の検出移動動作により得られた分布情報とに基づいて、所定の単位期間における分布情報を生成する、請求項3に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項5】
前記鶏卵センサは、前記ケージ列に沿って移動する走行台車に設けられており、
前記走行台車には、少なくとも温度センサが設けられており、
前記記録部は、前記鶏卵センサの前記ケージ列に沿った移動に対して、前記温度センサにより得られる温度情報を含む環境情報を記録する、請求項1又は2に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項6】
前記鶏卵センサは、カメラ又はラインセンサを有しており、
前記カメラ又は前記ラインセンサにより得られた撮像画像に基づいて、ケージの異常又は集卵ベルトの異常を検出する機能をさらに備える、請求項1又は2に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項7】
前記記録部は、前記ケージ列における各ケージに収容された採卵鶏の個体数を含むケージ列情報を記憶しており、
前記ケージ列情報及び前記検出情報の時間変化に基づいて、前記ケージ列における環境変化又は産卵変化を検出する機能をさらに備える、請求項1又は2に記載の鶏卵分布測定装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の鶏卵分布測定装置を備えた採卵鶏舎飼養管理システムであって、
前記ケージ列と前記集卵ベルトとの間に、前記ケージ列から鶏卵が前記集卵コンベアに移動することを防止する鶏卵ストッパが設けられており、
前記鶏卵センサによる検出移動動作中において、前記集卵ベルトの動作を停止させるとともに、前記鶏卵ストッパを動作することにより、前記ケージ列から新たな鶏卵が前記集卵ベルトに移動することを防止する、採卵鶏舎飼養管理システム。
【請求項9】
採卵鶏のケージ列における各ケージの収容羽数情報を記憶装置に記録しておき、
前記ケージ列からの鶏卵を集卵する集卵ベルトの動作が停止された状態で前記集卵ベルトに沿って鶏卵センサを移動させ、
前記鶏卵センサによって鶏卵が検出される毎に、当該鶏卵の検出情報に当該鶏卵に対応する位置近傍のケージを紐付けて前記記憶装置に記録するとともに、前記鶏卵センサによる検出移動動作の日時情報を前記記憶装置に記録する、鶏卵分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏卵分布測定装置、採卵鶏舎飼養管理システム及び鶏卵分布測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から採卵鶏舎において個々のケージ毎に採卵鶏の産卵数を管理することが考えられている。例えば、特許文献1では、鶏卵の有無を検知するフォトセンサ及びケージを認識するフォトセンサを用いて、ケージ毎の産卵数を管理している。また、特許文献2では、コンベアベルトに仕切りを設けることで各ケージに対応したバケットを形成し、バケットの上の鶏卵の有無を検知するとともに、そのバケットを特定して、ケージ毎の産卵数を管理している。
【0003】
しかしながら、鶏卵はその独特な形から転がる方向が一様ではなく、ケージから鶏卵を集卵する集卵ベルトには、どのケージから鶏卵が転がってきたかは厳密には分からない。例えば、互いに隣り合うケージA及びケージBにおいて、その中間に位置する集卵ベルト上の鶏卵は、ケージAから転がってきた鶏卵なのか、ケージBから転がってきた鶏卵なのかは、判別不可能である。
【0004】
また、特許文献2のように、コンベアベルトに仕切りを設けることで各ケージに対応したバケットを形成する構成は、ケージ列が長くなればなるほど困難である。例えば全長80m程度のケージ列では、そのコンベアベルトの伸びやゴミ・汚れの付着等の影響があるため、実用化に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-141734号公報
【特許文献2】実開昭63-109764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年の養鶏は60cm角程度のケージ(3600平方センチ)に7羽から10羽もの採卵鶏を飼養し、そのケージ列が全長80mにも及ぶほど大型化している。そのため、上記の特許文献1、2のように1ケージに一羽の鶏を飼養する単飼養で産卵率を観測する技術を採用することは不可能である。ところが、飼養管理において、なるべく少ない羽数ごとに産卵数を管理し、鶏の健康や環境の変化等を管理したいという要求は、大型高密度化した近年では以前にもまして大きなものとなっている。
【0007】
一方、本願発明者は、ケージ毎に採卵鶏の産卵数を管理するのではなく、ケージ列全体における産卵分布を監視して、病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所や区域等を発見できるようにすることを目的としている。これにより、早期に病気の発生のみならず、環境状態の悪化や給水器の断水による産卵数の減少を発見しようというものである。また、感染症の性格からしても金網で囲まれた1つのケージを観察対象とするよりも、ウイルス感染が疑わしい場所や区域等を特定することの方が混乱を防ぐために現実的であると言える。
【0008】
また、本願発明者は、産卵数が減少する前段階においては、鶏卵の体積減少や重量減少等が発生すると考えられ、それら体積減少や重量減少をケージ列全体で監視することにより、病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所や区域等を発見できると考えている。なお、環境状態の悪化などは卵殻の汚れ具合に反映させると考えられ、卵殻の汚れ具合を監視することにより、病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所や区域等を発見できると考えている。
【0009】
そこで、本発明は、1ケージ単位ではなくケージ列全体における鶏卵分布、鶏卵の体積分布、鶏卵の重量分布又は鶏卵の汚れ分布等の監視を行うことで、ケージ列における病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所等を発見することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る鶏卵分布測定装置は、ケージ列からの鶏卵を集卵する集卵ベルトの動作が停止された状態で前記集卵ベルトに沿って移動し、前記集卵ベルト上の鶏卵又は当該鶏卵の物理的性状(例えば、鶏卵の体積、重量、外形又は外観等)を検出する鶏卵センサと、前記鶏卵センサの検出信号に基づいて鶏卵が検出される毎に、当該鶏卵の検出情報(例えば鶏卵の有無、鶏卵の物理的性状、又は、鶏卵の汚れ)に当該鶏卵の位置情報を紐付けて記録するとともに、前記鶏卵センサによる検出移動動作の日時情報を記録する記録部とを有することを特徴とする。
【0011】
この鶏卵分布測定装置であれば、集卵ベルトに沿って鶏卵センサを移動させ、鶏卵センサの検出信号に基づいて鶏卵が検出される毎に、鶏卵の検出情報に鶏卵の位置情報を紐付けて記録するので、集卵ベルト全体における鶏卵分布、鶏卵の体積分布、鶏卵の重量分布又は鶏卵の汚れ分布を求めることができる。その結果、ケージ列全体における産卵分布又はその変化、鶏卵の体積分布又はその変化、鶏卵の重量分布又はその変化、或いは、鶏卵の汚れ分布又はその変化の監視を行うことができる。ここで、鶏卵の検出情報に鶏卵センサによる検出移動動作の日時情報を紐付けて記録しているので、前回の検出移動動作から今回の検出移動動作までの時間間隔がわかり、その時間間隔が産卵に要した時間であることがわかる。また、鶏卵の体積減少、重量異常や汚れ異常等の鶏卵の異常が発生した期間であることがわかる。これにより、ケージ列全体における産卵分布、体積分布、重量分布又は汚れ分布の時間変化を知ることができ、ケージ列における病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所等を発見することができる。また、採卵鶏の産卵ピークの時間帯を正確に知ることができる。さらに、飲水の供給減少や呼吸器系の感染症の罹患の初期症状を発見することにも有益である。
【0012】
ケージ列全体における産卵分布、体積分布、重量分布や汚れ分布等を精度良く測定するためには、前記鶏卵センサによる検出移動動作中において、鶏卵ストッパにより前記ケージ列から新たな鶏卵が前記集卵ベルトに移動しないようにすることが望ましい。
【0013】
鶏卵分布測定装置の具体的な実施の態様としては、前記鶏卵センサによる検出移動動作により得られた前記検出情報及び前記位置情報に基づいて、前記集卵ベルト上の鶏卵分布、体積分布、重量分布又は汚れ分布を示す分布情報を生成する分布情報生成部をさらに備えることが望ましい。
【0014】
前記分布情報生成部は、集卵ベルトの動作が停止された状態であれば、鶏卵センサの一の検出移動動作により得られた分布情報とその次の検出移動動作により得られた分布情報とに基づいて、所定の単位期間における分布情報を生成することが望ましい。
この構成であれば、ケージ列における産卵数や産卵分布、体積分布、重量分布又は汚れ分布等の時間的な変化を正確に捉えることができる。その結果、汚卵の発生状況や卵重減少の可能性がある場所(例えば、直近の2、3日で徐々に卵重又は体積が減少している等)を正確に捉えることができる。
【0015】
前記鶏卵センサは、前記ケージ列に沿って移動する走行台車に設けられており、前記走行台車には、少なくとも温度センサが設けられており、前記記録部は、前記鶏卵センサの前記ケージ列に沿った移動に対して、前記温度センサにより得られる温度情報を含む環境情報を記録することが望ましい。前記記録部は、例えば、前記鶏卵センサの検出信号に基づいて鶏卵が検出される毎に、前記鶏卵センサからの検出情報を記録すると共に前記温度センサにより得られる温度情報を含む環境情報を記録することが望ましい。
この構成であれば、集卵ベルトの周囲温度等の環境情報を取得することができ、産卵数減少の原因推定により効果的である。また、採卵鶏舎に設けられている給餌器等を有する走行台車に鶏卵センサを設けることで、鶏卵センサを移動させる構成を簡略化することができる。
【0016】
採卵鶏舎には、複数の前記ケージ列が上下多段に配置されており、各ケージ列に対応して前記集卵ベルトが設けられているものがある。
この採卵鶏舎において、効率良く各集卵ベルト上の鶏卵を検出できるようにするためには、前記鶏卵センサは、前記ケージ列に沿って移動する走行台車において、前記集卵ベルトに対応して複数設けられていることが望ましい。
【0017】
ケージ列全体における産卵分布、体積分布、重量分布又は汚れ分布の監視だけでなく、ケージの異常や集卵ベルトの異常等を検出するためには、前記鶏卵センサは、カメラ又はラインセンサ等であってもよく、鶏卵分布測定装置は、前記カメラ又は前記ラインセンサ等により得られた撮像画像に基づいて、鶏卵、当該鶏卵の物理的性状(例えば、鶏卵の体積、重量、外形又は外観等)の検出にとどまらず、ケージの異常や集卵ベルト等の異常を検出する機能をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、ケージの汚れ、採卵鶏の死骸、死鳥の足が集卵ベルト上に出ている等の早期発見が可能となる。
【0018】
前記記録部は、前記ケージ列における各ケージに収容された採卵鶏の個体数を含むケージ列情報を記憶しており、鶏卵分布測定装置は、前記ケージ列情報及び前記検出情報の時間変化に基づいて、前記ケージ列における環境変化又は産卵変化を検出する機能をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、ケージ列情報及び検出情報の時間変化に基づいて環境変化や産卵変化等を検出することにより、ケージ列における病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所等をより正確に発見することができる。
【0019】
また、本発明に係る採卵鶏舎飼養管理システムは、上述した鶏卵分布測定装置を備えたものであって、前記ケージ列と前記集卵ベルトとの間に、前記ケージ列から鶏卵が前記集卵コンベアに移動することを防止する鶏卵ストッパが設けられており、前記鶏卵センサによる検出移動動作中において、前記集卵ベルトの動作を停止させるとともに、前記鶏卵ストッパを動作することにより前記ケージ列から新たな鶏卵が前記集卵ベルトに移動することを防止することで、より精度の高い分布情報を得ることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明に係る鶏卵分布測定方法は、採卵鶏のケージ列における各ケージの収容羽数情報を記憶装置に記録しておき、前記ケージ列からの鶏卵を集卵する集卵ベルトの動作が停止された状態で前記集卵ベルトに沿って鶏卵センサを移動させ、前記鶏卵センサによって鶏卵が検出される毎に、当該鶏卵の検出情報に当該鶏卵に対応する位置近傍のケージを紐付けて前記記憶装置に記録するとともに、前記鶏卵センサによる検出移動動作の日時情報を前記記憶装置に記録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、事実上不可能な1ケージ単位ではなく現実的なケージ列全体における産卵分布の監視を行うことで、ケージ列における病気の発生している領域や環境状態が悪化している領域、また給水器の故障等を早期に発見することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る採卵鶏舎飼養管理システムを模式的に示す平面図である。
図2】同実施形態の採卵鶏舎飼養管理システムを模式的に示す側面図である。
図3】同実施形態の鶏卵分布測定装置の制御装置の機能ブロック図である。
図4】同実施形態の各検出移動動作(スキャン動作)における検出情報等を示す図である。
図5】同実施形態のケージ列の産卵分布状況(鶏卵分布情報)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る鶏卵分布測定装置を備えた採卵鶏舎飼養管理システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0024】
<1.システム構成>
本実施形態の採卵鶏舎飼養管理システム100は、図1に示すように、採卵鶏の密閉型鶏舎(ウインドレス鶏舎)等の人工環境調整機能を有する採卵鶏舎10と、当該採卵鶏舎10に設けられた鶏卵分布測定装置20とを有している。
【0025】
<2.採卵鶏舎10>
採卵鶏舎10は、採卵鶏を収容する複数のケージ11が一方向に沿って配置された複数のケージ列12が設けられている。本実施形態の複数のケージ列12は、図1及び図2に示すように、左右に並んで配置されるとともに、上下多段に配置されている。
【0026】
また、採卵鶏舎10には、ケージ列12に沿って移動する走行台車13が設けられている。この走行台車13は、ケージ列12に沿って設けられた餌樋(不図示)に給餌する給餌器(不図示)等が設けられている。本実施形態の走行台車13は、走行駆動モータ131により車輪132が回転することにより移動する。なお、走行台車13(走行駆動モータ131)は、後述する制御演算機器3の機能により制御される。
【0027】
さらに、採卵鶏舎10には、ケージ列12からの鶏卵Eを集卵する集卵ベルト14が設けられている。本実施形態では、各ケージ列12に対応して集卵ベルト14が設けられている。各集卵ベルト14は、ベルト駆動モータ(不図示)により駆動されて、各ケージ列12の一端側に向かって移動する。そして、各ケージ列12の一端側に移送された鶏卵Eは、別の集卵装置15に移送される。
【0028】
その上、各ケージ列12と各集卵ベルト14との間には、ケージ列12から鶏卵Eが集卵ベルト14に移動することを防止する鶏卵ストッパ16が設けられている。この鶏卵ストッパ16は、図示しないアクチュエータにより、集卵ベルト14への移動を止める遮断位置と、集卵ベルト14への移動を開放する開放位置との間で移動する。なお、鶏卵ストッパ16は、後述する制御演算機器3の機能により制御される。
【0029】
<3.鶏卵分布測定装置20>
鶏卵分布測定装置20は、各集卵ベルト14上の鶏卵分布を測定することによって、各ケージ列12全体における産卵分布を監視するためのものである。
【0030】
具体的に鶏卵分布測定装置20は、図1及び図2に示すように、各集卵ベルト14の動作が停止された状態で集卵ベルト14に沿って移動し、集卵ベルト14上の鶏卵Eを検出する鶏卵センサ2と、鶏卵センサ2の検出信号等に基づいて、各集卵ベルト14上の鶏卵分布を演算する制御演算機器3とを備えている。
【0031】
<3-1.鶏卵センサ2の構成>
鶏卵センサ2は、図1及び図2に示すように、ケージ列12に沿って移動する走行台車13において、複数の集卵ベルト14に対応して複数設けられている。本実施形態では、左右2つのケージ列12が上下2段に配置されており、集卵ベルト14が左右に上下2段に配置されることから、鶏卵センサ2は、走行台車13において左右に2つずつ上下に配置されている。
【0032】
本実施形態の鶏卵センサ2は、カメラ又はラインセンサ等の撮像センサであり、集卵ベルト14に沿って移動することで、集卵ベルト14及び集卵ベルト14上の鶏卵Eを含む二次元画像データを取得するものである。なお、鶏卵センサ2としては、超音波センサ、光センサ(例えば透過型又は反射型の光電センサ)、静電容量センサや機械式スイッチ(リミットスイッチ)等を用いても良い。
【0033】
また、鶏卵センサ2は、走行台車13が集卵ベルト14の一端から他端に亘って移動することにより、集卵ベルト14の一端から他端に亘って移動することになる。なお、以下では、鶏卵センサ2が集卵ベルト14の一端から他端に亘って鶏卵検出のために一回移動することを1回の検出移動動作(スキャン動作)という。
【0034】
その他、走行台車13には、温度センサ、空気質センサ(例えばCOセンサ等)や湿度センサ等の鶏舎内の環境情報を取得するための環境センサ4を設けても良い。
【0035】
<3-2.制御演算機器3の構成>
制御演算機器3は、鶏卵分布を測定するための各種機器の制御を行うとともに、集卵ベルト14の制御を行うものである。なお、制御演算機器3は、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器、入力装置や表示装置等を有するコンピュータにより構成される。そして、メモリに格納された所定のプログラムに基づいて、CPU及び周辺機器が協働することによって、制御演算機器3の各機能を発揮する。また、制御演算機器3は、単一のコンピュータにより構成しても良いし、複数のコンピュータにより構成しても良い。
【0036】
具体的に制御演算機器3は、図3に示すように、走行台車13を走行させて鶏卵センサ2を移動させる移動制御部31と、集卵ベルト14のベルト駆動モータを制御するベルトモータ制御部32とを有している。
【0037】
ここで、ベルトモータ制御部32は、移動制御部31により走行台車13が走行して鶏卵センサ2が移動している最中(検出移動中)は集卵ベルト14を停止させている。そして、鶏卵センサ2の検出移動動作(スキャン動作)が終了すると、ベルト駆動モータを起動して集卵ベルト14を移動させ、鶏卵Eを別の集卵装置15に移送する。
【0038】
そして、制御演算機器3は、鶏卵Eを検出してカウントする鶏卵検出部33と、鶏卵Eの検出情報に当該鶏卵Eの位置情報を紐付けて記録するとともに、鶏卵センサ2の移動動作の日時情報を記録する記録部34とを有している。
【0039】
具体的に鶏卵検出部33は、鶏卵センサ2の検出信号に基づいて、鶏卵Eを検出してカウントするものである。本実施形態の鶏卵センサ2がカメラ又はラインセンサ等の撮像センサであることから、鶏卵カウント部33は、カメラ又はラインセンサ等の撮像センサにより得られた二次元画像データを画像処理することで、鶏卵Eを検出してカウントする。
【0040】
ここで、制御演算機器3は、鶏卵センサ2による検出移動動作中において、鶏卵ストッパ16を作動させて鶏卵ストッパ16を遮断位置とし、ケージ列12から新たな鶏卵Eが集卵ベルト14に移動することを防止している。この鶏卵ストッパ16の制御は、ストッパ制御部35により行われる。
【0041】
記録部34は、図4に示すように、鶏卵Eが検出される毎に、当該鶏卵Eの検出情報(カウント情報)に当該鶏卵Eの位置情報を紐付けて記録するとともに、鶏卵センサ2による検出移動動作の日時情報を記録する。また、記録部34は、鶏卵センサ2のケージ列12に沿った移動に対して、走行台車13に設けられた環境センサ4により得られる温度情報を含む環境情報を記録しても良い。具体的に記録部34は、鶏卵Eが検出される毎に、走行台車13に設けられた環境センサ4により得られる温度情報を含む環境情報を記録しても良い。
【0042】
ここで、鶏卵Eの位置情報は、所定の基準位置からの距離により求めることができる。本実施形態では、制御演算機器3の位置情報取得部36が、所定の基準位置(例えば集卵ベルト14の一端側に設定された位置)からの走行台車13の走行距離を取得することによって、鶏卵Eの位置情報を取得する。走行台車13の走行距離は、走行台車13を駆動する走行駆動モータ131のエンコーダからの出力信号を用いて求めることができる。
【0043】
また、走行台車13は車輪132のスリップ等により走行距離の誤差が生じる場合がある。このため、本実施形態では、ケージ列12又は集卵ベルト14に位置表示部5を設けておき、走行台車13に設けた位置表示読取部6により位置表示部5を読み取ることで、走行台車13の位置情報を補正することができる。この位置情報の補正は、位置情報取得部36により行われる。なお、位置表示部5は、例えばケージ11毎に設けることが考えられる。
【0044】
鶏卵センサ2の移動動作の日時情報は、少なくとも鶏卵センサ2による検出移動動作の開始日時を含んでおり、本実施形態では、検出移動動作の開始日時だけでなく、検出移動動作の終了日時を含んでいる(図4参照)。この日時情報は、移動制御部31から得ることができる。
【0045】
さらに、制御演算機器3は、集卵ベルト14上の鶏卵分布を示す分布情報を生成する分布情報生成部37をさらに備えている。
【0046】
この分布情報生成部37は、図5に示すように、鶏卵センサ2による1回の検出移動動作により得られた検出情報及び位置情報に基づいて、1回の検出移動動作における鶏卵分布情報を生成する。ここで、一回の検出移動動作分の検出情報及び位置情報は、記録部34に記録されたものである。
【0047】
図5では、毎日所定時刻にスキャン動作(検出移動動作)を行うことで得られた産卵分布情報を示している。この図5において、日別の産卵分部情報から、ケージ#2付近で、9月23日頃から異常が発生している可能性があると判断することができる。制御演算機器3の分布情報生成部37は、この異常な状況を検知して、注意報を報知するようにしても良いし、異常な状況が所定日数継続した後(例えば9月25日)に警報を報知するようにしても良い。
【0048】
そして、分布情報生成部37は、集卵ベルト14の動作が停止された状態で、一の検出移動動作により得られた鶏卵分布情報とその次の検出移動動作により得られた鶏卵分布情報とに基づいて、所定の単位期間における鶏卵分布情報を生成することができる。具体的に分布情報生成部37は、一の検出移動動作により得られた鶏卵分布情報とその次の検出移動動作により得られた鶏卵分布情報との差を用いて、所定の単位期間における鶏卵分布情報を生成することができる。
【0049】
また、制御演算機器3は、カメラ又はラインセンサ等の撮像センサにより得られた二次元画像データに基づいて、ケージ11の異常、鶏卵Eの異常や集卵ベルト14の異常等を検出する異常検出部38をさらに備えている。
【0050】
この異常検出部38は、カメラ又はラインセンサ等の撮像センサにより得られた二次元画像データを画像処理することで、ケージ11の異常、鶏卵Eの異常、集卵ベルト14の異常や餌樋の異常等を検出するものである。そして、異常検出部38は、上記何れかの異常を検出した場合には、制御演算機器3のディスプレイ等の表示装置に、異常を報知するための報知信号を出力することができる。また、異常検出部38は、上記何れかの異常を検出した場合には、予め登録された管理者等のユーザ端末に、異常を報知するための報知信号を出力することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の記録部34には、ケージ列12における各ケージ11に収容された採卵鶏の個体数(収容羽数)を含むケージ列情報を記憶させておいても良い。この場合、記録部34には、鶏卵Eの検出情報(カウント情報)と、当該鶏卵Eの位置情報と当該位置近傍のケージ11の収容羽数情報とを紐付けて記録することができる。なお、このケージ列情報は、定期的に最新の個体数等に更新される。この場合、制御演算機器3は、記録部34のケージ列情報及び鶏卵Eの検出情報の時間変化に基づいて、ケージ列における環境変化又は産卵変化を検出する変化検出部39をさらに備えていても良い。ここで、変化検出部39による環境変化又は産卵変化の検出には、機械学習アルゴリズムを用いても良い。この機械学習アルゴリズムには、制御演算機器3の記録部34に蓄積された各種データを教師データとする教師あり学習であっても良いし、教師なし学習であっても良い。
【0052】
また、本実施形態の採卵鶏舎飼養管理システム100を用いた鶏卵分布測定方法は、以下である。
採卵鶏のケージ列12における各ケージ11の収容羽数情報を記憶装置(記録部34)に記録しておく。
そして、ケージ列12からの鶏卵Eを集卵する集卵ベルト14の動作が停止された状態で集卵ベルト14に沿って鶏卵センサ2を移動させる。
鶏卵センサ2によって鶏卵Eが検出される毎に、当該鶏卵Eの検出情報に当該鶏卵Eに対応する位置近傍のケージ11又は鶏卵Eの位置情報(又は基準位置からの距離情報)を紐付けて記憶装置(記録部34)に記録する。これに合わせて、鶏卵センサ2による検出移動動作の日時情報も記憶装置(記録部34)に記録する。
【0053】
<4.本実施形態の効果>
本実施形態の採卵鶏舎飼養管理システム100によれば、集卵ベルト14に沿って鶏卵センサ2を移動させ、鶏卵センサ2の検出信号に基づいて鶏卵Eが検出される毎に、鶏卵Eの検出情報に鶏卵の位置情報を紐付けて記録するので、集卵ベルト14全体における鶏卵分布を求めることができる。その結果、ケージ列12全体における産卵分布の監視を行うことができる。ここで、鶏卵Eの検出情報に鶏卵センサ2による検出移動動作の日時情報を紐付けて記録しているので、前回の検出移動動作から今回の検出移動動作までの時間間隔がわかり、その時間間隔が産卵に要した時間であることがわかる。これにより、ケージ列12全体における産卵分布の時間変化を知ることができ、ケージ列12における病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所等を発見することができる。また、採卵鶏の産卵ピークの時間帯を正確に知ることができる。
【0054】
<5.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0055】
例えば、前記実施形態は、鶏卵検出部33を走行台車13とは別に設けられた制御演算機器3に設けているが、鶏卵検出部33を鶏卵センサ2とともに走行台車13に設けても良い。
【0056】
また、鶏卵分布測定装置20は、各集卵ベルト14上の鶏卵Eの体積分布、鶏卵Eの重量分布又は鶏卵Eの汚れ分布を測定するものであっても良い。この場合、鶏卵検出部33は、鶏卵センサ2である撮像センサからの二次元画像データを画像処理すること等により、鶏卵Eの物理的性状(例えば、鶏卵の体積、重量、外形又は外観等)を検出する。そして、分布情報生成部37は、鶏卵センサ2による1回の検出移動動作により得られた検出情報及び位置情報に基づいて、1回の検出移動動作における体積分布情報、重量分布情報又は汚れ分布情報を生成する。この構成であれば、体積分布、重量分布又は汚れ分布等の時間的な変化を正確に捉えることができる。その結果、汚卵の発生状況や卵重減少の可能性がある場所(例えば、直近の2、3日で徐々に卵重又は体積が減少している等)を正確に捉えることができる。
【0057】
また、制御演算機器3は、給餌器による給餌量や餌消費量を取得し、また、給水器による給水量や水消費量を取得して、それらデータとともに鶏卵分布情報から、採卵鶏舎内の環境変化や産卵変化等を検出するようにしても良い。
【0058】
さらに、制御演算機器3は、採卵鶏舎の空調機の稼働情報を取得し、その稼動情報とともに鶏卵分布情報から、採卵鶏舎内の環境変化や産卵変化等を検出するようにしても良い。
【0059】
前記実施形態では、鶏卵センサ2の検出信号により鶏卵Eを検出してカウントする構成であったが、鶏卵センサ2の検出信号により鶏卵Eを検出するとともに、集卵ベルト14における鶏卵Eが検出されない場所や区域を判別するように構成しても良い。この構成であっても、ケージ列12における病気が発生している場所や環境状態が悪化している場所等を発見することができる。
【0060】
走行台車13は、採卵鶏舎10の床面を走行する構成の他に、採卵鶏舎10の天井に吊るされたレール上を走行する構成であっても良いし、ケージ列12に沿って移動する構成であれば種々の方式が用いられる。
【0061】
前記実施形態の鶏卵センサ2は走行台車13に設けられているが、走行台車13に設けること無く、鶏卵分布測定装置20は、例えば鶏卵センサ2を集卵ベルト14に沿って移動させる例えばレールやワイヤを用いた移動機構を有する構成としても良い。
【0062】
前記実施形態の鶏卵分布測定装置20の制御演算機器3と、採卵鶏舎10の制御機器とを統合して、採卵鶏舎10及び鶏卵分布測定装置20を一括制御するように構成しても良い。
【0063】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
100・・・採卵鶏舎飼養管理システム
E ・・・鶏卵
12 ・・・ケージ列
13 ・・・走行台車
14 ・・・集卵ベルト
16 ・・・鶏卵ストッパ
20 ・・・鶏卵分布測定装置
2 ・・・鶏卵センサ
3 ・・・制御演算機器
34 ・・・記録部
37 ・・・鶏卵分布情報生成部
38 ・・・異常検出部
39 ・・・変化検出部
4 ・・・温度センサ(環境センサ)
図1
図2
図3
図4
図5