(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054086
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】水面上漂流物の遮蔽及び回収方法、並びにそれに用いる遮蔽及び回収装置
(51)【国際特許分類】
E02B 15/10 20060101AFI20240409BHJP
E02B 15/00 20060101ALI20240409BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20240409BHJP
【FI】
E02B15/10 A
E02B15/00 Z
C02F1/40 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169443
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022160179
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一比古
(72)【発明者】
【氏名】藤原 智
(72)【発明者】
【氏名】山本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】須賀 葵
【テーマコード(参考)】
2D025
4D051
【Fターム(参考)】
2D025AA00
2D025BA23
4D051AA01
4D051AA06
4D051AB07
4D051CA02
4D051CA09
4D051CA27
(57)【要約】
【課題】水面を浮遊して漂流する各種物質(漂流物)の遮蔽に加えて所定位置への輸送(回収)を行えると共に、輸送の際に漂流物の付着により発生する可能性がある不具合を防止できる水面上漂流物の遮蔽及び回収方法、並びにそれに用いる遮蔽及び回収装置を提供する。
【解決手段】水面上漂流物の遮蔽及び回収装置は、水面1に配置され水面1を漂流する漂流物2の移動を遮る管体10と、管体10の外面に螺旋状に設けられた螺旋状フィン20と、管体10を管軸周りに回転させる回転駆動装置30と、回転駆動装置30を制御する制御装置60を備え、漂流物2を回転駆動装置30により管体10を回転させることで管体10の端部に寄せる漂流物回収機能と、回転駆動装置30の回転速度を周期的に変化させることで管体10に振動を生じさせる振動機能を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に配置され前記水面を漂流する漂流物の移動を遮る管体と、
前記管体の外面に螺旋状に設けられた螺旋状フィンと、
前記管体を管軸周りに回転させる回転駆動装置と、
前記回転駆動装置を制御する制御装置を備え、
前記漂流物を前記回転駆動装置により前記管体を回転させることで前記管体の端部に寄せる漂流物回収機能と、
前記回転駆動装置の回転速度を周期的に変化させることで前記管体に振動を生じさせる振動機能を有することを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記振動機能における前記回転速度の周期的な変化幅としての振幅を、前記管体に接触した前記漂流物を前記管体の前記端部に寄せる通常回転速度の5%以上20%以下となるように前記回転駆動装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記管体に接触した前記漂流物を前記管体の前記端部に寄せる通常回転速度よりも回転の速い高回転速度に前記回転駆動装置を制御し、前記管体の回転により生じた管軸方向の水流により前記漂流物を前記管体の前記端部に寄せる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項4】
前記制御装置は、選択された回転方向に前記回転駆動装置を制御し、前記漂流物の前記管体の前記端部に寄せる方向を変更することを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項5】
前記管体の回転に要するトルクをリアルタイムに測定するトルクセンサが前記回転駆動装置に設けられており、前記制御装置は、前記振動機能を実行するか否か及び前記漂流物の漂着状況の少なくとも一方を前記トルクセンサが取得したトルク値に基づいて判断することを特徴とする請求項3に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項6】
前記管体は、軟質材料で形成された中空可撓管であって内部に気体が封入されており、浮力によって前記水面の形状に沿うように曲げ変形しながら浮かぶことを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項7】
前記管体は、前記外面又は内面に、前記管軸周りのねじり剛性及び管軸方向の軸剛性を高めるための補強材が螺旋状に設けられており、
前記補強材は、螺旋の巻き方向を異にした一方の線状材と他方の線状材とが交差してなることを特徴とする請求項6に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項8】
軟質材料で形成されたバラスト体を備え、
前記バラスト体は、前記管体の内部に配置され、液体又は気体を注入する注入口と、前記液体又は前記気体を排出する排出口を有することを特徴とする請求項6に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項9】
前記バラスト体は螺旋状に形成された螺旋状管であり、
前記螺旋状管は、長手方向を前記管体の管軸と平行として前記管体の内面に接して配置され、一端が前記注入口、他端が前記排出口となっており、
前記螺旋状管の管軸線は、前記管体の前記管軸と垂直な平面との間に成す角度が45度以下であることを特徴とする請求項8に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項10】
前記管体の一方の前記端部側に配置される第一の浮体と、前記管体の他方の前記端部側に配置される第二の前記浮体と、前記浮体を係留する係留索を備え、
前記管体の一方の前記端部は、第一の前記回転駆動装置の軸と連結され、
前記管体の他方の前記端部は、軸受装置に軸支されているか又は第二の前記回転駆動装置の軸と連結され、
第一の前記浮体には、第一の前記回転駆動装置が固定され、
第二の前記浮体には、前記軸受装置又は第二の前記回転駆動装置が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項11】
前記管体の一方の前記端部と第一の前記回転駆動装置の前記軸は、前記管軸周りのトルクのみを伝えて不要な曲げモーメントを逃がす第一の自在継手を介して接続され、
前記管体の他方の前記端部と前記軸受装置又は前記第二の回転駆動装置の前記軸は、第二の前記自在継手を介して接続されていることを特徴とする請求項10に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項12】
前記浮体の下面から前記水面までの距離を調節するための沈み度合調節体を備えることを特徴とする請求項10に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項13】
第一又は第二の前記浮体に前記管体の管軸に対して垂直方向の推力を付与する移動用推進手段を備え、
第一又は第二のどちらか一方の前記浮体は、他方の前記浮体を支点として前記移動用推進手段の推力により前記水面を弧状に移動可能であることを特徴とする請求項10に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項14】
前記浮体が弧状に移動している際の前記管体の湾曲度合を調節する機構として、前記移動用推進手段による推力が付与される前記浮体に前記管体の前記管軸と平行方向の推力を付与する湾曲調節用推進手段を備えることを特徴とする請求項13に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項15】
前記螺旋状フィンの厚みは、前記管体の前記外面に接する基部で最大であり、前記基部から先端部にかけて漸次小さくなることを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項16】
前記管体は、前記外面のうち前記螺旋状フィンが設けられていない部分に突起又は粗面の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記管体に接触した前記漂流物を前記管体の前記端部に寄せる通常回転速度よりも回転の遅い低回転速度に前記回転駆動装置を制御し、前記突起又は前記粗面により前記漂流物を前記外面に付着させた状態で回転させ、前記漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側に前記漂流物を移動させることを特徴とする請求項16に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項18】
前記螺旋状フィンは、前記管体の一方の前記端部側から途中までに設けられている第一部分と、前記第一部分に続いて前記管体の他方の前記端部側まで設けられている第二部分とで螺旋の向きが逆であることを特徴とする請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置。
【請求項19】
請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記振動機能により前記管体を一定時間振動させた後、前記振動機能を止めた状態で前記漂流物回収機能を実行することを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項20】
請求項1に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記漂流物回収機能の実行前後における一定時間、及び前記漂流物回収機能を実行している間において、前記振動機能により前記管体を振動させることを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項21】
請求項5に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記漂流物回収機能の実行前における一定時間、前記漂流物回収機能を実行している間、及び前記漂流物回収機能の実行後における一定時間のそれぞれについて、前記振動機能により前記管体を振動させるか否かを、前記漂流物の種類と、前記トルクセンサが取得したトルク値から把握される前記漂流物の粘度とに基づいて判断することを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項22】
請求項8に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいて前記バラスト体における前記液体の量を調節することを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項23】
請求項8を引用する請求項13に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいて前記バラスト体における前記液体の量を調節し、前記浮体を弧状に移動させることを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項24】
請求項13に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記漂流物回収機能の実行時に前記移動用推進手段により前記浮体を弧状に移動させるとき、前記管体の一方の前記端部側に接触した或る前記漂流物が前記管体の管軸周りの回転により前記管体の他方の前記端部側に寄せられるまでの時間における前記浮体の移動距離を、前記管体の外径の1.2倍以下とすることを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項25】
請求項16に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記管体の回転方向を、前記管体のうち前記水面に露出した上部が前記漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側へ回る方向とすることを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項26】
前記漂流物の侵入を阻止すべき側から前記管体に対して水流を向かわせることを特徴とする請求項25に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項27】
請求項17に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、
前記低回転速度を前記通常回転速度の50%以下にして前記漂流物を反対側に移動させることを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項28】
対象とする漂流物の種類や水域を含む諸条件を考慮する条件考慮ステップと、
前記諸条件に従って、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を選択する遮蔽及び回収装置選択ステップと、
前記遮蔽及び回収装置と計測機器を設置する装置及び機器設置ステップと、
前記遮蔽及び回収装置と前記計測機器によるリアルタイムデータを取得するデータ取得ステップと、
前記リアルタイムデータに基づいて、前記遮蔽及び回収装置を自動制御する自動制御ステップとを有することを特徴とする水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【請求項29】
前記自動制御に当たっては、試験データや実データを基に機械学習や深層学習を予めしたAI(人工知能)を活用することを特徴とする請求項28に記載の水面上漂流物の遮蔽及び回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面上を浮遊・漂流する各種物質(漂流物)の遮蔽及び回収方法、並びにそれに用いる遮蔽及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事故により流出した油・化学物質や、海底火山の噴火に伴う軽石等の各種物質が、海洋・河川・湖などの水面上を浮遊しながら漂流し、港湾施設や各種プラントの取水口、リゾート地の海岸等に漂着して甚大な悪影響を及ぼすことがある。
ここで、特許文献1には、円筒管に平鋼を螺旋状に巻き付け、鋼板と円筒管で中空状態とし、円筒管の中にワイヤーロープを通しホルダーに依って固定連結し撚り戻し機構を介してアンカーで繋留し、電動回転機または手動回転機を駆動し装置を回転させる構造の浮き堤防が開示されている。
また、特許文献2には、浮力を有する複数のブロックを一列に連結し、ブロックを連結方向に対して直交方向に回転可能に支持してなり、水面上に展張することにより水面の泡を遮蔽すると共に、ブロックが水流によって回転することにより消泡する消泡ブロックフェンスが開示されている。
また、特許文献3には、軸方向の先端に油の回収口を有すると共に後端側に回収された油の排出口を有する円筒状のケーシング内部に軸方向に沿ってスクリューが回転可能に収容され、流出油を含む油水をスクリューの回転力によって回収口から排出口に向けて移送するスクリューコンベアを有する流出油回収装置が開示されている。
また、特許文献4には、多数の吸入口を有する細長い吸入室の一端をタンクに接続し、吸入室内に螺旋状の回転体を装着し、タンク内の液状物を水中ポンプで排出しつつ、モータにより回転体を回転駆動することで各吸入口から液状物を吸い込み、タンク内に回収した液状物は排出管を介して外部の処理装置へ排出する液状物回収装置において、フロートの浮力調節をすることで、浮揚させて流出油の回収に使うか、水底でヘドロの浚渫に使うかどちらかに切り替えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-348845号公報
【特許文献2】特開2008-194583号公報
【特許文献3】特開2013-160040号公報
【特許文献4】特開2000-254414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような漂流物を遮蔽して取水口や海岸等への流入を防止するためには、通常、オイルフェンスやシルトフェンスが用いられるが、それらの機能は遮蔽機能のみに限定されており、遮蔽した後、フェンス近傍に溜まった漂流物を除去するには、別途回収手段を設ける必要がある。水面上を浮遊する漂流物の回収手段としては、専用回収船による回収や、水面に設置したホースとポンプを組み合わせた回収等が考えられるが、船の操縦やホース吸入口の設置及び移動など、いずれも専従作業員がついて継続的に操作を行う必要があり、多大な手間と時間を要するため、より効率的で省力化された回収方法が待望されている。
ここで、特許文献2に記載の発明は、消泡を目的としたものであり、漂流物の回収については記載が無い。
また、特許文献3、4に記載の発明は、流出油等の回収を目的としたものであり、流出油等を遮蔽するものではない。
一方、特許文献1に記載の発明は、円筒管等で構成された浮き堤防による漂流物(浮遊物)の堰止めと、浮き堤防の回転による漂流物の移送を行うものであるため、漂流物の遮蔽と回収を効率的に行える可能性がある。しかしながら、漂流物が、比率的に多くの細粒(粉)を含み水と混合されて粘り気を有する軽石や、高粘度の重油・原油等の場合は、漂流物が浮き堤防と一緒に回転してしまい、回収不能となったり、回転に要するトルクが不足したり、浮き堤防自体が破損したりする恐れがある。
そこで本発明は、水面を浮遊して漂流する各種物質(漂流物)の遮蔽に加えて所定位置への輸送(回収)を行えると共に、輸送の際に漂流物の付着により発生する可能性がある不具合を防止できる水面上漂流物の遮蔽及び回収方法、並びにそれに用いる遮蔽及び回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に対応した水面上漂流物の遮蔽及び回収装置においては、水面に配置され水面を漂流する漂流物の移動を遮る管体と、管体の外面に螺旋状に設けられた螺旋状フィンと、管体を管軸周りに回転させる回転駆動装置と、回転駆動装置を制御する制御装置を備え、漂流物を回転駆動装置により管体を回転させることで管体の端部に寄せる漂流物回収機能と、回転駆動装置の回転速度を周期的に変化させることで管体に振動を生じさせる振動機能を有することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、管体で漂流物を遮り陸側等への流入を阻止できると共に、螺旋状フィンが設けられた管体の回転により自動的に陸地近傍等まで輸送して効率的にまとめて回収することが可能となるため、水面漂流物の遮蔽及び回収に要する手間、時間及びコストを大幅に低減することができる。さらに、管体に振動を付与し、管体の外面や螺旋状フィンの表面に付着した漂流物を振動により離脱させることができるため、漂流物が管体や螺旋状フィンに付着したまま管体と一緒に回転してしまい回収不能等の不具合が生じることを防止できる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、制御装置は、振動機能における回転速度の周期的な変化幅としての振幅を、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度の5%以上20%以下となるように回転駆動装置を制御することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、比較的小振幅の振動成分を管体に作用させることで、管体や螺旋状フィンに付着した漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0007】
請求項3記載の本発明は、制御装置は、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度よりも回転の速い高回転速度に回転駆動装置を制御し、管体の回転により生じた管軸方向の水流により漂流物を管体の端部に寄せる制御を行うことを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、漂流物は、高回転速度で回転する螺旋状フィンにより管体の近傍において生じた勢いのある管軸方向の水流により自動的に陸地近傍等まで輸送されるため、漂流物を螺旋状フィンに接する前に回収することができる。また、この水流は一種のエアカーテンのような作用を発揮するため、漂流物が管体及び螺旋状フィンに到達する前に遮蔽効果を発現することができる。さらに、水流の範囲は水面近傍だけでなく管体及び螺旋状フィンの没水部周り全体に及ぶため、管体や螺旋状フィンに触れない程度の若干深い水深を漂流してくる没水した漂流物に対しても、回収効果やオイルフェンスと同等の遮蔽効果を発現することができる。
【0008】
請求項4記載の本発明は、制御装置は、選択された回転方向に回転駆動装置を制御し、漂流物の管体の端部に寄せる方向を変更することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、管体の両端部のどちらにも選択的に漂流物を寄せることができる。
【0009】
請求項5記載の本発明は、管体の回転に要するトルクをリアルタイムに測定するトルクセンサが回転駆動装置に設けられており、制御装置は、振動機能を実行するか否か及び漂流物の漂着状況の少なくとも一方をトルクセンサが取得したトルク値に基づいて判断することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、計測されたトルク値によって、回収対象としている漂流物の大凡の粘度特性を把握し、管体に振動を付与する時期等を適切に決定することや漂流物の漂着状況の判断をすることができる。また、制御装置の判断によって適切な時期に管体に振動が付与されるため、漂流物の付着に起因して回収不能等の不具合が生じることを自動的に防止することや遮蔽及び回収装置を自動制御することができる。
【0010】
請求項6記載の本発明は、管体は、軟質材料で形成された中空可撓管であって内部に気体が封入されており、浮力によって水面の形状に沿うように曲げ変形しながら浮かぶことを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、管体は軟質材料で形成されているため可撓性に富んでおり、波浪等による水面の局所的凹凸があったとしても曲げ変形により柔軟に追従することが可能なため、管体が剛であまり変形しない場合と比較して、より効果的に遮蔽及び回収作業を行うことができる。
【0011】
請求項7記載の本発明は、管体は、外面又は内面に、管軸周りのねじり剛性及び管軸方向の軸剛性を高めるための補強材が螺旋状に設けられており、補強材は、螺旋の巻き方向を異にした一方の線状材と他方の線状材とが交差してなることを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、回転駆動装置から回転力(トルク)が伝達される管体を螺旋状の補強材により補強してトルクや軸力の伝達特性を向上させると共に、ねじり方向及び管軸方向の強度や耐久性を増すことができる。
【0012】
請求項8記載の本発明は、軟質材料で形成されたバラスト体を備え、バラスト体は、管体の内部に配置され、液体又は気体を注入する注入口と、液体又は気体を排出する排出口を有することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、バラスト体に溜まる液体の量を適宜コントロールすることにより浮力を制御して管体全体の喫水を自由に設定することができるため、漂流物の状態に応じて管体の喫水を変えて運用することができる。
【0013】
請求項9記載の本発明は、バラスト体は螺旋状に形成された螺旋状管であり、螺旋状管は、長手方向を管体の管軸と平行として管体の内面に接して配置され、一端が注入口、他端が排出口となっており、螺旋状管の管軸線は、管体の管軸と垂直な平面との間に成す角度が45度以下であることを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、管体の内部にバラスト体を配置しても管体の可撓性を損なわないようにすることができる。
【0014】
請求項10記載の本発明は、管体の一方の端部側に配置される第一の浮体と、管体の他方の端部側に配置される第二の浮体と、浮体を係留する係留索を備え、管体の一方の端部は、第一の回転駆動装置の軸と連結され、管体の他方の端部は、軸受装置に軸支されているか又は第二の回転駆動装置の軸と連結され、第一の浮体には、第一の回転駆動装置が固定され、第二の浮体には、軸受装置又は第二の回転駆動装置が固定されていることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、管体を水面の所望の位置に維持しつつ回転体を円滑に回転させることができる。
【0015】
請求項11記載の本発明は、管体の一方の端部と第一の回転駆動装置の軸は、管軸周りのトルクのみを伝えて不要な曲げモーメントを逃がす第一の自在継手を介して接続され、管体の他方の端部と軸受装置又は第二の回転駆動装置の軸は、第二の自在継手を介して接続されていることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、必要なトルクだけを伝えて不要な曲げモーメントを逃がす自在継手を用いることで、回転駆動装置や軸受装置の軸部に過大な曲げモーメントがかかって損傷等の不具合が生じることを防止できると同時に、管体の管軸周りの回転を円滑なものとすることができる。
【0016】
請求項12記載の本発明は、浮体の下面から水面までの距離を調節するための沈み度合調節体を備えることを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、浮体の喫水を適宜調節可能であることで、管体と回転駆動装置との間に不要な曲げモーメントが生じないようにするため管体の設置高さを水面の高さと同程度に合わせる作業等を手早く行うことができる。
【0017】
請求項13記載の本発明は、第一又は第二の浮体に管体の管軸に対して垂直方向の推力を付与する移動用推進手段を備え、第一又は第二のどちらか一方の浮体は、他方の浮体を支点として移動用推進手段の推力により水面を弧状に移動可能であることを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、面状に分布している漂流物を円滑に面的除去することができる。
【0018】
請求項14記載の本発明は、浮体が弧状に移動している際の管体の湾曲度合を調節する機構として、移動用推進手段による推力が付与される浮体に管体の管軸と平行方向の推力を付与する湾曲調節用推進手段を備えることを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、管体の管軸方向に推力を与える湾曲調節用推進手段を適宜作動させて管体に管軸方向の張力を適宜発生させることで、管体が過度に湾曲することを防止して漂流物の面的除去を円滑に行うことができる。
【0019】
請求項15記載の本発明は、螺旋状フィンの厚みは、管体の外面に接する基部で最大であり、基部から先端部にかけて漸次小さくなることを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、管体と螺旋状フィンとの接続箇所には螺旋状フィンが漂流物を押圧する際に大きな曲げモーメントが作用するが、螺旋状フィンを板厚が基部を最大として先端部に行くにつれて比例的に減じていく断面形状とすることで、螺旋状フィンと管体との接続箇所に損傷が生じることを防止できる。
【0020】
請求項16記載の本発明は、管体は、外面のうち螺旋状フィンが設けられていない部分に突起又は粗面の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、外面に突起又は粗面を設けた管体を所定の方向へ回転させることにより、遮蔽しきれず陸側等に漏れた漂流物を沖側等に戻すことができる。
【0021】
請求項17記載の本発明は、制御装置は、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度よりも回転の遅い低回転速度に回転駆動装置を制御し、突起又は粗面により漂流物を外面に付着させた状態で回転させ、漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側に漂流物を移動させることを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、低回転速度とすることで漂流物を突起又は粗面へより確実に付着させて反対側へ移動させることができる。
【0022】
請求項18記載の本発明は、螺旋状フィンは、管体の一方の端部側から途中までに設けられている第一部分と、第一部分に続いて管体の他方の端部側まで設けられている第二部分とで螺旋の向きが逆であることを特徴とする。
請求項18に記載の本発明によれば、一方向に回転する管体の近傍の水面上に浮遊している漂流物は、螺旋状フィンの螺旋の向きに応じて左右異なる方向に分けられて輸送及び回収され、管体の両端部の近傍にそれぞれ集積されるため、管体の長さ方向中央部付近にある漂流物を早期かつ効率的に除去するとともに、管体の両端部の近傍における最終的な陸地側からの回収作業を、左右二箇所に分けて効率的に行うことができる。
【0023】
請求項19記載に対応した水面上漂流物の遮蔽及び回収方法においては、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、振動機能により管体を一定時間振動させた後、振動機能を止めた状態で漂流物回収機能を実行することを特徴とする。
請求項19に記載の本発明によれば、漂流物の回収を開始する前に管体を振動させる(予備振動)ことで、中程度の粘度を有する漂流物を対象として、管体や螺旋状フィンに付着している漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0024】
請求項20記載に対応した水面上漂流物の遮蔽及び回収方法においては、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、漂流物回収機能の実行前後における一定時間、及び漂流物回収機能を実行している間において、振動機能により管体を振動させることを特徴とする。
請求項20に記載の本発明によれば、漂流物の回収前後の一定時間及び回収中に通常回転速度の変化に関わらず常に管体を振動させる(常時振動)ことで、比較的高粘度の漂流物を対象として、管体や螺旋状フィンに付着している漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0025】
請求項21記載の本発明は、漂流物回収機能の実行前における一定時間、漂流物回収機能を実行している間、及び漂流物回収機能の実行後における一定時間のそれぞれについて、振動機能により管体を振動させるか否かを、漂流物の種類と、トルクセンサが取得したトルク値から把握される漂流物の粘度とに基づいて判断することを特徴とする。
請求項21に記載の本発明によれば、計測されたトルク値によって回収対象としている漂流物の大凡の粘度特性を把握し、管体に振動を付与する時期を適切に決定することができる。
【0026】
請求項22記載の本発明は、漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいてバラスト体における液体の量を調節することを特徴とする。
請求項22に記載の本発明によれば、漂流物の水深方向の分布状況に応じて管体の喫水を変更し、漂流物をより確実に堰き止めて回収することができる。
【0027】
請求項23記載の本発明は、漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいてバラスト体における液体の量を調節し、浮体を弧状に移動させることを特徴とする。
請求項23に記載の本発明によれば、面状に分布している漂流物の水深方向の分布状況に応じて管体の喫水を変更したうえで面的除去が行われるため、漂流物をより効率的に回収することができる。
【0028】
請求項24記載の本発明は、漂流物回収機能の実行時に移動用推進手段により浮体を弧状に移動させるとき、管体の一方の端部側に接触した或る漂流物が管体の管軸周りの回転により管体の他方の端部側に寄せられるまでの時間における浮体の移動距離を、管体の外径の1.2倍以下とすることを特徴とする。
請求項24に記載の本発明によれば、面的除去を行う際の浮体の移動速度を所定以下とすることで、漂流物が管体から離れすぎるのを抑えて効率よく回収することができる。
【0029】
請求項25記載の本発明は、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、管体の回転方向を、管体のうち水面に露出した上部が漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側へ回る方向とすることを特徴とする。
請求項25に記載の本発明によれば、外面に突起又は粗面を設けた管体を所定の方向へ回転させることにより、遮蔽しきれず阻止すべき側に漏れた漂流物を元々存在していた側に戻すことができる。
【0030】
請求項26記載の本発明は、漂流物の侵入を阻止すべき側から管体に対して水流を向かわせることを特徴とする。
請求項26に記載の本発明によれば、侵入を阻止すべき側に漏れ出た水面漂流物が水流により自ずと管体の近傍に寄り集まってくるので、遮蔽しきれず阻止すべき側に漏れた漂流物をより効率的に元の側に戻すことができる。
【0031】
請求項27記載の本発明は、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、低回転速度を通常回転速度の50%以下にして漂流物を反対側に移動させることを特徴とする。
請求項27に記載の本発明によれば、管体の外面に付着させて反対側へ移動させる漂流物を、反対側の水面に達するまで管体の外面から更に離れがたくすることができる。
【0032】
請求項28記載に対応した水面上漂流物の遮蔽及び回収方法においては、対象とする漂流物の種類や水域を含む諸条件を考慮する条件考慮ステップと、諸条件に従って、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を選択する遮蔽及び回収装置選択ステップと、遮蔽及び回収装置と計測機器を設置する装置及び機器設置ステップと、遮蔽及び回収装置と計測機器によるリアルタイムデータを取得するデータ取得ステップと、リアルタイムデータに基づいて、遮蔽及び回収装置を自動制御する自動制御ステップとを有することを特徴とする。
請求項28に記載の本発明によれば、回収作業の自動化や無人化が可能となるので、遮蔽及び回収装置と必要な計測器を設置した後は、例えば、夜間に漂流物が漂着するような場合においても滞りなく漂流物を回収することができる。
【0033】
請求項29記載の本発明は、自動制御に当たっては、試験データや実データを基に機械学習や深層学習を予めしたAI(人工知能)を活用することを特徴とする。
請求項29に記載の本発明によれば、AIを利用して遮蔽及び回収装置の漂流物回収性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置によれば、管体で漂流物を遮り陸側等への流入を阻止できると共に、螺旋状フィンが設けられた管体の回転により自動的に陸地近傍等まで輸送して効率的にまとめて回収することが可能となるため、水面漂流物の遮蔽及び回収に要する手間、時間及びコストを大幅に低減することができる。さらに、管体に振動を付与し、管体の外面や螺旋状フィンの表面に付着した漂流物を振動により離脱させることができるため、漂流物が管体や螺旋状フィンに付着したまま管体と一緒に回転してしまい回収不能等の不具合が生じることを防止できる。
【0035】
また、制御装置は、振動機能における回転速度の周期的な変化幅としての振幅を、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度の5%以上20%以下となるように回転駆動装置を制御する場合には、比較的小振幅の振動成分を管体に作用させることで、管体や螺旋状フィンに付着した漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0036】
また、制御装置は、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度よりも回転の速い高回転速度に回転駆動装置を制御し、管体の回転により生じた管軸方向の水流により漂流物を管体の端部に寄せる制御を行う場合には、漂流物は、高回転速度で回転する螺旋状フィンにより管体の近傍において生じた勢いのある管軸方向の水流により自動的に陸地近傍等まで輸送されるため、漂流物を螺旋状フィンに接する前に回収することができる。また、この水流は一種のエアカーテンのような作用を発揮するため、漂流物が管体及び螺旋状フィンに到達する前に遮蔽効果を発現することができる。さらに、水流の範囲は水面近傍だけでなく管体及び螺旋状フィンの没水部周り全体に及ぶため、管体や螺旋状フィンに触れない程度の若干深い水深を漂流してくる没水した漂流物に対しても、回収効果やオイルフェンスと同等の遮蔽効果を発現することができる。
【0037】
また、制御装置は、選択された回転方向に回転駆動装置を制御し、漂流物の管体の端部に寄せる方向を変更する場合には、管体の両端部のどちらにも選択的に漂流物を寄せることができる。
【0038】
また、管体の回転に要するトルクをリアルタイムに測定するトルクセンサが回転駆動装置に設けられており、制御装置は、振動機能を実行するか否か及び漂流物の漂着状況の少なくとも一方をトルクセンサが取得したトルク値に基づいて判断する場合には、計測されたトルク値によって回収対象としている漂流物の大凡の粘度特性を把握し、管体に振動を付与する時期等を適切に決定することや漂流物の漂着状況の判断をすることができる。また、制御装置の判断によって適切な時期に管体に振動が付与されるため、漂流物の付着に起因して回収不能等の不具合が生じることを自動的に防止することや遮蔽及び回収装置を自動制御することができる。
【0039】
また、管体は、軟質材料で形成された中空可撓管であって内部に気体が封入されており、浮力によって水面の形状に沿うように曲げ変形しながら浮かぶ場合には、管体は軟質材料で形成されているため可撓性に富んでおり、波浪等による水面の局所的凹凸があったとしても曲げ変形により柔軟に追従することが可能なため、管体が剛であまり変形しない場合と比較して、より効果的に遮蔽及び回収作業を行うことができる。
【0040】
また、管体は、外面又は内面に、管軸周りのねじり剛性及び管軸方向の軸剛性を高めるための補強材が螺旋状に設けられており、補強材は、螺旋の巻き方向を異にした一方の線状材と他方の線状材とが交差してなる場合には、回転駆動装置から回転力(トルク)が伝達される管体を螺旋状の補強材により補強してトルクや軸力の伝達特性を向上させると共に、ねじり方向及び管軸方向の強度や耐久性を増すことができる。
【0041】
また、軟質材料で形成されたバラスト体を備え、バラスト体は、管体の内部に配置され、液体又は気体を注入する注入口と、液体又は気体を排出する排出口を有する場合には、バラスト体に溜まる液体の量を適宜コントロールすることにより浮力を制御して管体全体の喫水を自由に設定することができるため、漂流物の状態に応じて管体の喫水を変えて運用することができる。
【0042】
また、バラスト体は螺旋状に形成された螺旋状管であり、螺旋状管は、長手方向を管体の管軸と平行として管体の内面に接して配置され、一端が注入口、他端が排出口となっており、螺旋状管の管軸線は、管体の管軸と垂直な平面との間に成す角度が45度以下である場合には、管体の内部にバラスト体を配置しても管体の可撓性を損なわないようにすることができる。
【0043】
また、管体の一方の端部側に配置される第一の浮体と、管体の他方の端部側に配置される第二の浮体と、浮体を係留する係留索を備え、管体の一方の端部は、第一の回転駆動装置の軸と連結され、管体の他方の端部は、軸受装置に軸支されているか又は第二の回転駆動装置の軸と連結され、第一の浮体には、第一の回転駆動装置が固定され、第二の浮体には、軸受装置又は第二の回転駆動装置が固定されている場合には、管体を水面の所望の位置に維持しつつ回転体を円滑に回転させることができる。
【0044】
また、管体の一方の端部と第一の回転駆動装置の軸は、管軸周りのトルクのみを伝えて不要な曲げモーメントを逃がす第一の自在継手を介して接続され、管体の他方の端部と軸受装置又は第二の回転駆動装置の軸は、第二の自在継手を介して接続されている場合には、必要なトルクだけを伝えて不要な曲げモーメントを逃がす自在継手を用いることで、回転駆動装置や軸受装置の軸部に過大な曲げモーメントがかかって損傷等の不具合が生じることを防止できると同時に、管体の管軸周りの回転を円滑なものとすることができる。
【0045】
また、浮体の下面から水面までの距離を調節するための沈み度合調節体を備える場合には、浮体の喫水を適宜調節可能であることで、管体と回転駆動装置との間に不要な曲げモーメントが生じないようにするため管体の設置高さを水面の高さと同程度に合わせる作業等を手早く行うことができる。
【0046】
また、第一又は第二の浮体に管体の管軸に対して垂直方向の推力を付与する移動用推進手段を備え、第一又は第二のどちらか一方の浮体は、他方の浮体を支点として移動用推進手段の推力により水面を弧状に移動可能である場合には、面状に分布している漂流物を円滑に面的除去することができる。
【0047】
また、浮体が弧状に移動している際の管体の湾曲度合を調節する機構として、移動用推進手段による推力が付与される浮体に管体の管軸と平行方向の推力を付与する湾曲調節用推進手段を備える場合には、管体の管軸方向に推力を与える湾曲調節用推進手段を適宜作動させて管体に管軸方向の張力を適宜発生させることで、管体が過度に湾曲することを防止して漂流物の面的除去を円滑に行うことができる。
【0048】
また、螺旋状フィンの厚みは、管体の外面に接する基部で最大であり、基部から先端部にかけて漸次小さくなる場合には、管体と螺旋状フィンとの接続箇所には螺旋状フィンが漂流物を押圧する際に大きな曲げモーメントが作用するが、螺旋状フィンを板厚が基部を最大として先端部に行くにつれて比例的に減じていく断面形状とすることで、螺旋状フィンと管体との接続箇所に損傷が生じることを防止できる。
【0049】
また、管体は、外面のうち螺旋状フィンが設けられていない部分に突起又は粗面の少なくとも一方が設けられている場合には、外面に突起又は粗面を設けた管体を所定の方向へ回転させることにより、遮蔽しきれず陸側等に漏れた漂流物を沖側等に戻すことができる。
【0050】
また、制御装置は、管体に接触した漂流物を管体の端部に寄せる通常回転速度よりも回転の遅い低回転速度に回転駆動装置を制御し、突起又は粗面により漂流物を外面に付着させた状態で回転させ、漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側に漂流物を移動させる場合には、低回転速度とすることで漂流物を突起又は粗面へより確実に付着させて反対側へ移動させることができる。
【0051】
また、螺旋状フィンは、管体の一方の端部側から途中までに設けられている第一部分と、第一部分に続いて管体の他方の端部側まで設けられている第二部分とで螺旋の向きが逆である場合には、一方向に回転する管体の近傍の水面上に浮遊している漂流物は、螺旋状フィンの螺旋の向きに応じて左右異なる方向に分けられて輸送及び回収され、管体の両端部の近傍にそれぞれ集積されるため、管体の長さ方向中央部付近にある漂流物を早期かつ効率的に除去するとともに、管体の両端部の近傍における最終的な陸地側からの回収作業を、左右二箇所に分けて効率的に行うことができる。
【0052】
本発明の水面上漂流物の遮蔽及び回収方法によれば、漂流物の回収を開始する前に管体を振動させる(予備振動)ことで、中程度の粘度を有する漂流物を対象として、管体や螺旋状フィンに付着している漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0053】
本発明の水面上漂流物の遮蔽及び回収方法によれば、漂流物の回収前後の一定時間及び回収中に通常回転速度の変化に関わらず常に管体を振動させる(常時振動)ことで、比較的高粘度の漂流物を対象として、管体や螺旋状フィンに付着している漂流物を円滑に離脱させることができる。
【0054】
また、漂流物回収機能の実行前における一定時間、漂流物回収機能を実行している間、及び漂流物回収機能の実行後における一定時間のそれぞれについて、振動機能により管体を振動させるか否かを、漂流物の種類と、トルクセンサが取得したトルク値から把握される漂流物の粘度とに基づいて判断する場合には、計測されたトルク値によって回収対象としている漂流物の大凡の粘度特性を把握し、管体に振動を付与する時期を適切に決定することができる。
【0055】
また、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいてバラスト体における液体の量を調節する場合には、漂流物の水深方向の分布状況に応じて管体の喫水を変更し、漂流物をより確実に堰き止めて回収することができる。
【0056】
また、漂流物の水深方向の分布状況を観察し、観察結果に基づいてバラスト体における液体の量を調節し、浮体を弧状に移動させる場合には、面状に分布している漂流物の水深方向の分布状況に応じて管体の喫水を変更したうえで面的除去が行われるため、漂流物をより効率的に回収することができる。
【0057】
また、漂流物回収機能の実行時に移動用推進手段により浮体を弧状に移動させるとき、管体の一方の端部側に接触した或る漂流物が管体の管軸周りの回転により管体の他方の端部側に寄せられるまでの時間における浮体の移動距離を、管体の外径の1.2倍以下とする場合には、面的除去を行う際の浮体の移動速度を所定以下とすることで、漂流物が管体から離れすぎるのを抑えて効率よく回収することができる。
【0058】
また、管体の回転方向を、管体のうち水面に露出した上部が漂流物の侵入を阻止すべき側からその反対側へ回る方向とする場合には、外面に突起又は粗面を設けた管体を所定の方向へ回転させることにより、遮蔽しきれず阻止すべき側に漏れた漂流物を元々存在していた側に戻すことができる。
【0059】
また、漂流物の侵入を阻止すべき側から管体に対して水流を向かわせる場合には、侵入を阻止すべき側に漏れ出た水面漂流物が水流により自ずと管体の近傍に寄り集まってくるので、遮蔽しきれず阻止すべき側に漏れた漂流物をより効率的に元の側に戻すことができる。
【0060】
また、水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を用い、低回転速度を通常回転速度の50%以下にして漂流物を反対側に移動させる場合には、管体の外面に付着させて反対側へ移動させる漂流物を、反対側の水面に達するまで管体の外面から更に離れがたくすることができる。
【0061】
本発明の水面上漂流物の遮蔽及び回収方法によれば、回収作業の自動化や無人化が可能となるので、遮蔽及び回収装置と必要な計測器を設置した後は、例えば、夜間に漂流物が漂着するような場合においても滞りなく漂流物を回収することができる。
【0062】
また、自動制御に当たっては、試験データや実データを基に機械学習や深層学習を予めしたAI(人工知能)を活用する場合には、AIを利用して遮蔽及び回収装置の漂流物回収性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の第一の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図
【
図2】同遮蔽及び回収装置における回転駆動装置の回転速度の変化(振動なし)の例を表すグラフ
【
図3】同遮蔽及び回収装置における回転駆動装置の回転速度の変化(予備振動あり)の例を表すグラフ
【
図4】同遮蔽及び回収装置における回転駆動装置の回転速度の変化(常時振動あり)の例を表すグラフ
【
図5】本発明の第二の実施形態による漂流物の遮蔽及び回収装置の部分側視図
【
図7】本発明の第三の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の部分側視図
【
図8】本発明の第四の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図
【
図9】本発明の第五の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図
【
図10】本発明の第六の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図
【
図11】本発明の水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を設置・運用する際の基本的な全体フローを示す図
【
図12】本発明の実施形態に関する実験における実験装置の概観写真
【
図13】同模擬漂流物として用いた木材チップの概観写真
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の第一の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。
図1は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は立面(側面)図である。
水面上漂流物の遮蔽及び回収装置(以下、単に「遮蔽及び回収装置」という場合がある。)は、水面1に配置され水面1を漂流する漂流物の移動を遮る管体10と、管体10の外面に螺旋状に設けられた螺旋状フィン20と、管体10を回転させる回転駆動装置30と、管体10の端部を支持する軸受装置40と、管体10と回転駆動装置30又は軸受装置40とを連結する軸(回転軸)50と、回転駆動装置30を制御する制御装置60と、浮体70と、浮体70を海底、水底又は陸地に係留する係留索80を備える。
【0065】
遮蔽及び回収装置の主体は、外周に螺旋状フィン20を設けた管体10である。螺旋状フィン20の螺旋の向きは、所謂S巻き又はZ巻きとするが、本実施形態では
図1に示すようにZ巻きとしている。管体10のサイズは、例えば、長さ10~50m、外径30cm~100cm等である。
管体10の一方の端部10A側には、回転駆動装置30が直列に配置されている。管体10の一方の端部10Aには軸50を介して回転駆動装置30が連結しており、管体10に回転駆動装置30からの回転力(トルク)を伝達できるようになっている。
管体10の他方の端部10B側には、軸受装置40が直列に配置されている。管体10の他方の端部10Bは、軸50を介して軸受装置40に連結することで軸支されている。なお、他方の端部10B側も一方の端部10A側と同様に回転駆動装置(第二の回転駆動装置)30を直列に配置し、他方の端部10Bを第二の回転駆動装置30と連結することもできるが、この場合には、一方の端部10Aに連結している回転駆動装置(第一の回転駆動装置)30と他方の端部10Bに連結している第二の回転駆動装置30が連動して同方向かつ同速度で管体10を回転させるようにしておく。
なお、管体10と第一の回転駆動装置30を継手を介して連結すること、管体10と軸受装置40又は第二の回転駆動装置30を継手を介して連結することもでき、この場合には、回転可能な自在継手を含ませることが好ましい。これにより、管体10に対して必要なトルクだけを伝えて不要な曲げモーメントを逃がし、回転駆動装置30や軸受装置40の軸部に過大な曲げモーメントがかかって損傷等の不具合が生じることを防止できると同時に、管体10の管軸周りの回転を円滑なものとすることができる。
回転駆動装置30の原動力は、電動モータやガソリンエンジン等、任意のものを採用できるが、変圧器や減速ギアボックス等を適宜用いることにより、軸50の回転速度Nを、例えばN=0.2~5[回転/秒](12~300[rpm])程度など、適切な範囲で調節できるようにしておく。
【0066】
遮蔽及び回収装置は、
図1のような状態で水面1に設置することにより、管体10が障害物となって漂流物の自由な通過を妨げるため、漂流物に対する遮蔽(遮断)効果を発現することができる。
また、
図1のような状態で水面1に設置された遮蔽及び回収装置において、回転駆動装置30を駆動して軸50を回転駆動装置30側から見て時計回りに一定速度で回転させると、連結された管体10及び螺旋状フィン20も同方向に回転する。螺旋状フィン20の螺旋の向きは所謂Z巻きとしているため、管体10に接しているか又は近傍の水面1に浮遊している漂流物は、回転する螺旋状フィン20から連続的な押圧力を受け、
図1(a)に矢印で示した方向に寄せられていく。したがって漂流物は管体10の回収方向側の端部(この場合では一方の端部10A)へ次々と輸送されるため、効率よく回収作業を行うことができる。
また、回転駆動装置30による軸50の回転方向は、時計回りと反時計回りを任意に選択可能としている。ユーザーが、一方の端部10A側と他方の端部10B側のどちらに漂流物を寄せたいかによって螺旋状フィン20の螺旋の向きも考慮しつつ回転方向を選択すると、制御装置60は、選択された回転方向に軸50が回転するように回転駆動装置30を制御する。このように漂流物を管体10の端部に寄せる方向が変更可能であることにより、管体10の両端のどちらにも選択的に漂流物を寄せることができる。例えば、
図1に示す場合とは逆に、軸50が回転駆動装置30側から見て反時計回りに回転する回転方向を選択した場合は、軸50に連結された管体10及び螺旋状フィン20も同方向に回転し、管体10に接しているか又は近傍の水面1に浮遊している漂流物は、回転する螺旋状フィン20から連続的な押圧力を受け、
図1(a)に矢印で示した方向とは反対の方向へ寄せられていき、他方の端部10B側に集められる。
このように遮蔽及び回収装置は、回転駆動装置30により管体10を時計回りか反時計回りのどちらか一方向に回転させ、管体10が遮蔽している漂流物を管体10の端部に寄せる漂流物回収機能を有する。これにより、管体10で漂流物を遮り陸側等への流入を阻止できると共に、螺旋状フィン20が設けられた管体10の回転により自動的に漂流物を管体10の回収方向側の端部へ次々と輸送し、陸地近傍等において効率的にまとめて回収することが可能となるため、漂流物の遮蔽及び回収に要する手間、時間及びコストを大幅に低減することができる。なお、回収した漂流物は、任意の手段を用いて処分、又は廃棄場所への輸送等を行う。
【0067】
管体10は、主として樹脂、ゴム等の軟質材料によって形成された中空可撓管であり、管内(内部)には空気等の気体が封入されており浮力を有する。基本的には、水面1に浮かべた管体10の管軸線と水面1とが同程度の高さとなるように、遮蔽及び回収装置の重量と浮力とを適宜バランスさせて設計することが好ましい。
螺旋状フィン20は、管体10と同様に主として樹脂、ゴム等の軟質材料によって形成されたフィンを、
図1に示す通り、管体10の周囲に一定の角度で螺旋状に配置したものである。
このように管体10及び螺旋状フィン20は、いずれも樹脂やゴム等の軟質材料で形成されているため可撓性に富んでおり、波浪等による水面1の局所的凹凸があったとしても曲げ変形により柔軟に追従することが可能なため、管体10が剛であまり変形しない場合と比較して、より効果的に遮蔽及び輸送(回収)作業を行うことができる。
【0068】
螺旋状フィン20のリード角(螺旋状フィン20の板厚中央面が管体10の管軸と垂直な平面との間に成す角度)αの値は、α≦45°であることが好ましい。これにより、管体10の外面まで到達した漂流物を漂流物回収機能により管体10の端部に回収する場合における、漂流物を管体10と共に回転する螺旋状フィン20で押圧して移動させる動作を一層スムーズなものとすることができる。また、螺旋状フィン20のリード角αの値は、α≦30°であることが更に好ましい。これにより、螺旋状フィン20を設けることによって管体10全体の可撓性が損なわれてしまうことを抑制できる。
螺旋状フィン20は、管体10の管壁と一体に成型してもよいし、管体10の外周に後から巻回して接着又は溶着など任意の手段により固着してもよい。また、螺旋状フィン20は、板厚が管体10の外面に接する基部を最大として外縁部(先端部)に行くにつれて比例的に減じていくような断面形状とすることが好ましい。螺旋状フィン20と管体10との接続箇所には螺旋状フィン20の外面が漂流物を押圧する際に大きな曲げモーメントが作用するが、螺旋状フィン20を基部の厚みが最大であり先端部にかけて漸次厚みが小さくなる形状とすることで、螺旋状フィン20と管体10との接続箇所に損傷が生じることを防止できる。
【0069】
管体10の管壁の外面又は内面には、螺旋の巻き方向を異にした一方の線状材と他方の線状材とが、リード角α±45°程度で互いに交差する補強材を螺旋状に設けることが好ましい。これにより、回転駆動装置30の軸50や継手からの回転力(トルク)が伝達される管体10を螺旋状の補強材により補強してトルクや軸力の伝達特性を向上させると共に、ねじり方向及び管軸方向の強度や耐久性を増すことができる。
補強材の線状材の材質は繊維等であり、螺旋の巻方向を異にするとは、例えば、一方の線状材をS巻きとし他方の線状材をZ巻きとすることである。
【0070】
水面1近傍に配置される浮体(フロート)70は、管体10の一方の端部10A側に配置される第一の浮体70Aと、管体10の他方の端部10B側に配置される第二の浮体70Bがあり、第一の浮体70Aと第二の浮体70Bは、それぞれ係留索80によって海底等に係留されている。
第一の浮体70Aには回転駆動装置30が固定され、第二の浮体70Bには軸受装置40が固定されている。これにより、管体10を水面1の所望の位置に維持しつつ管体10を円滑に回転させることができる。なお、管体10の他方の端部10Bを軸受装置40でなく第二の回転駆動装置30と連結する場合は、第二の浮体70Bには第二の回転駆動装置30が固定される。
回転駆動装置30及び軸受装置40には管体10に付与する回転力の反力としてのトルクがかかるため、浮体70は、管体10の管軸と直交し水面1と平行な方向の幅が、このトルクを十分に吸収できるだけの大きさを有している必要がある。
また、浮体70の浮力の大きさは、
図1(b)に示すように、水面上に管体10を浮かべた時に一方の端部10Aと他方の端部10Bにそれぞれ接続された軸50や継手が水面1と同程度の高さに位置し、管体10との間に不要な曲げモーメントが生じないよう、固定(搭載)している回転駆動装置30及び軸受装置40の重量と適宜バランスを取って設定することが好ましく、小型のバラストタンク等の沈み度合調節体(図示略)を備えることにより浮体70の下面から水面1までの距離(水面1に対する浮体70の上面の相対位置)を適宜調節できるようにしておくことが更に好ましい。沈み度合調節体により浮体70の喫水を適宜調節可能であることで、軸50や継手の設置高さを水面1の高さと同程度に合わせる作業等を手早く行うことができる。
なお、浮体70は、小型のボート等により代替することも可能である。
【0071】
図2は遮蔽及び回収装置における回転駆動装置の回転速度の変化(振動なし)の例を表すグラフである。
上述のように回転駆動装置30を駆動して軸50を回転駆動装置30側から見て時計回り(=正方向)に基本的には一定速度で回転させる場合、回転速度N[回転/秒]の変化は
図2に示すようになる。即ち、時刻t
0~t
1において回転速度Nはゼロであり、時刻t
1を過ぎると回転速度Nが直線的に増加し、時刻t
2で回転速度Nは1.0[回転/秒]に達し、その後、時刻t
3までそのままの回転速度Nを維持して回収作業(漂流物を管体10の回転により管体10の一方の端部10Aに寄せる作業)を継続する。時刻t
3で回収作業を終えると、今度は回転速度Nが直線的に減少し、時刻t
4で回転速度Nはゼロとなる。
【0072】
遮蔽及び回収の対象とする漂流物が、通常の軽石や低粘度の軽油等の場合は、
図2に示すような回転速度のパターンで回収することが可能だが、比率的に多くの細粒(粉)を含み水と混合されて粘り気を有する軽石や、高粘度の重油・原油等の場合は、漂流物が管体10の外面や螺旋状フィン20の表面に付着したまま一緒に回転してしまい、回収不能となったり、回転に要するトルクが不足したり、遮蔽及び回収装置自体が破損したりする恐れがある。
これらを防ぐため、遮蔽及び回収装置には、回転駆動装置30の回転速度を周期的に変化させることで管体10に振動を生じさせる振動機能をもたせている。管体10に振動を生じさせることにより、管体10の外面や螺旋状フィン20の表面を振動させることができる。
回転駆動装置30により管体10を一定速度で回転するのではなく、振動機能によって比較的小振幅の振動成分を予備的に作用させたり、あるいは常時重畳させたりすることで、これらの振動成分の作用により、管体10の外面や螺旋状フィン20の表面に近接する漂流物との間に振動により慣性運動上のずれを生じさせたり、漂流物がチクソトロピック性を有する粘性流体と見做せる場合には、管体10の外面や螺旋状フィン20の表面近傍における漂流物のせん断速度を局所的に上げてみかけの粘度を低下させたりすることにより、漂流物を管体10の外面や螺旋状フィン20の表面から円滑に離脱させることが可能となる。
制御装置60は、振動機能における回転速度の周期的な変化幅としての振幅を、管体10に接触した漂流物を管体10の端部に寄せる通常回転速度Nの5%以上20%以下となるように回転駆動装置30を制御することが好ましい。このような比較的小振幅の振動成分を管体10に作用させることで、管体10や螺旋状フィン20に付着した漂流物を円滑に離脱させることができ、漂流物の付着により発生する不具合を防止し、回収効率を向上できる。なお、「通常回転速度」とは、振動を付与するための回転とは別に、漂流物回収機能実行時において管体10を一方向へ一定速度で軸周りに回転させるときの速度として定められている所定の回転速度であり、例えば、約0.50~0.90[回転/秒]に設定する。
【0073】
図3及び
図4は遮蔽及び回収装置における回転駆動装置の回転速度の変化(振動あり)の例を表すグラフであり、振動機能による小振幅振動を用いた回転速度の変化の例を示している。
まず、
図3は、中程度の粘度を有する漂流物を対象とした場合における軸50の回転速度N[回転/秒]の変化を示している。この場合は、回転速度Nの増加が始まるまでの時刻t
0~t
1において、回転駆動装置30は振幅0.1[回転/秒]の小振幅で正方向と逆方向の回転を繰り返す(予備振動)。これにより、管体10の外面や螺旋状フィン20の表面に付着した中粘度の漂流物が、上述したような原理によって円滑に離脱しやすくなる。なお、時刻t
1に達し回転速度Nの増加が始まった後の回転速度Nの変化は
図2に示す回転速度の変化の例と同様である。
次に、
図4は、比較的高粘度の漂流物を対象とした場合における軸50の回転速度N[回転/秒]の変化を示している。この場合は、通常回転速度Nの変化に関わらず回転駆動装置30が小振幅の加速と減速を繰り返すことで、常に振幅0.1[回転/秒]の振動が重畳される(常時振動)。これにより、管体10の外面や螺旋状フィン20に付着した比較的高粘度の漂流物が、上述したような原理によって表面から円滑に離脱しやすくなる。
【0074】
図2から
図4に示す漂流物の性状に応じた回転速度の制御を、漂流物の種類や大凡の粘度によって整理したものを下表1に示す。
【表1】
【0075】
回転駆動装置30は、管体10の回転に要するトルクをリアルタイムに計測するためのトルクセンサを備えていることが好ましい。トルクセンサを備えることにより、回収対象としている漂流物の大凡の粘度特性を計測されたトルク値から把握し、表1に示すような振動付加の有無、又は付加する振動形態の選定を適切に行うことが可能となる。また、トルク値に基づいて漂流物の漂着状況を判断することもできる。
振動を付加するか否かの判断、及び付加する場合の振動形態の選定は、人が行うこともできるし、制御装置60がトルクセンサ値に基づいて行うこともできる。後者の場合は、制御装置60の判断によって適切な時期に管体10に振動が付与されるため、漂流物の付着に起因して回収不能等の不具合が生じることを自動的に防止することや、遮蔽及び回収装置を自動制御することができる。
【0076】
次に、本発明の第二の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図5は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の部分側視図であり、
図6は管体10の軸方向部分見取り図である。
管体10では堰き止めきれずに、漂流物2が元々存在していた側から侵入を阻止すべき側に漏れてしまうことがある。そこで本実施形態においては、管体10の外面のうち螺旋状フィン20が設けられていない部分に、複数の突起90を互いの間隔をあけて周方向に連なるように設けている。突起90の高さは、螺旋状フィン20の高さよりも十分に低くしている。
ここで、「侵入を阻止すべき側」とは、漂流物2から守る(漂流物2が漂着しないようにする)べき施設や岸等がある側のことであり、海岸を例とすれば、通常は「陸側」となる。また、「元々存在していた側」とは、管体10を境にして「侵入を阻止すべき側」とは反対側のことであり、海岸を例とすれば、通常は「沖側」(漂流物2が最初に漂流して来る側)となる。
【0077】
本実施形態のように管体10の外面に突起90を設けることで、漂流物2が管体10に引っ掛かりやすくなる。そのため、侵入を阻止すべき側に漏れた漂流物2がある場合、管体10を、管体10のうち水面1に露出した上部が侵入を阻止すべき側からその反対側(元々存在していた側)へ回る方向、すなわち
図6に示すR方向に回転させることにより、侵入を阻止すべき側にある漂流物2を突起90に係着又は担持等させて管体10の回転に伴わせ元々存在していた側へ戻すことができる。
この時、突起90に係着又は担持等されて元々存在していた側に戻される漂流物2は、水面1より上に一旦持上げられたのち元々存在していた側の水面1に達すると同時に浮力を受けて管体10の突起90から離脱するため、管体10の回転によって水面下を通って再び侵入を阻止すべき側に移動することはない(
図6(c)参照)。
また、突起90の代わりに、管体10の外面のうち螺旋状フィン20が設けられていない部分を表面粗度を大きくした粗面とすることもできる。粗面とした場合は漂流物2が管体10の外面に付着しやすくなるため、突起90を設けた場合と同様に管体10をR方向に回転させることにより、侵入を阻止すべき側にある漂流物2を粗面に付着等させて管体10の回転に伴い元々存在していた側へ移動させることができる。
なお、管体10の外面のうち螺旋状フィン20が設けられていない部分に、突起90と粗面の両方を設けることも可能である。
R方向への回転速度としては、通常回転速度よりも回転速度が遅い低回転速度とすることが好ましい。これにより、突起90による漂流物2の係着又は担持等や、粗面とした外面への漂流物2の付着がより確実なものとなるため、反対側の水面1に達する前に管体10から離れて侵入を阻止すべき側に残ってしまう漂流物2を少なくできる。例えば、通常回転速度を約0.50~0.90[回転/秒]に設定している場合は、低回転速度を約0.05~0.49[回転/秒]に設定する。また、低回転速度を通常回転速度の50%以下とすれば、漂流物2を反対側の水面1に達するまで管体10から更に離れがたくすることができる。
【0078】
本実施形態における回転移動作用(管体10の回転により漂流物2を元々存在していた側へ移動させる作用)は、
図6に示すように、侵入を阻止すべき側から管体10に向かう水流Fが存在すると、侵入を阻止すべき側に漏れ出た漂流物2が水流Fにより自ずと管体10の近傍に寄り集まってくるので一層効果的となる。このため、漂流物2の侵入を阻止すべき側から管体10に対して水流Fを向かわせることが好ましい。
水流Fは、夜間の陸風により生じる流れや離岸流等の自然水流、又はファンやスクリュー等を用いて発生させた人工水流とすることができる。水流Fが自然水流である場合には、通常は沖側にも同様の水流Fが存在するため、元々存在していた側に回転移動させられた漂流物2は、一部がそのまま水流Fに乗って管体10が設置されている位置からさらに沖へと拡散し、管体10の近傍に残ったものは螺旋状フィン20によって移動回収される。
【0079】
次に、本発明の第三の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図7は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の部分側視図である。なお、一部を断面図としている。
本実施形態の遮蔽及び回収装置は、中空のバラスト体100を備える。バラスト体100は、管体10と同様に主として樹脂やゴム等の軟質材料によって形成されている。本実施形態のバラスト体100は、
図7に示すように螺旋状に形成された螺旋状管(バラストチューブ)であり、リード角(螺旋状管100の管軸線が管体10の管軸と垂直な平面との間に成す角度)βの値を45度以下(β≦45°)とすることが好ましい。これにより、管体10の内部にバラスト体100を配置しても管体10の可撓性が損なわれないようにすることができる。
【0080】
螺旋状管100は、長手方向を管体10の管軸と平行として管体10の内面に接して配置されており、一端が液体又は気体を注入する注入口101、他端が液体又は気体を排出する排出口102となっている。
螺旋状管100のうち注入口101が設けられている一端には、バラスト水(液体)と圧縮空気(気体)を切り替えて供給できるポンプ(図示略)が連結されており、排出口102が設けられている他端には逆止弁(図示略)が取り付けられている。
まず、中空の状態にある螺旋状管100に対し、注入口101からバラスト水を供給するようにポンプを作動させると、螺旋状管100の内部にバラスト水が溜まり、管体10全体の重量が増して没水(沈降)し、管体10の喫水が増大する。
一方、バラスト水が内部に入っている状態の螺旋状管100に対し、注入口101から今度は圧縮空気を供給するようにポンプを作動させると、螺旋状管100の内部に溜まったバラスト水が圧縮空気によって排除(押出)され、管体10全体の重量が減じて浮上し、管体10の喫水が当初(螺旋状管100が中空の状態)の位置まで回復する。
【0081】
このようにして、バラスト水又は圧縮空気を注入する注入口101とバラスト水又は圧縮空気を排出する排出口102とを有する螺旋状管(バラスト体)100を管体10の内部に配置し、螺旋状管100の内部に溜まるバラスト水の量を適宜コントロールすることにより浮力を制御して管体10全体の喫水を自由に設定することができるため、漂流物2の状態に応じて管体10の喫水を変更し、例えば以下のような臨機応変な運用が可能となる。これによって、漂流物2をより確実に堰き止めて回収することができる。
・漂流物の状態例I:漂流物2の浮力が大きく、ほぼ水面1近傍のみに浮遊している状態。
この場合は、螺旋状管100の内部をバラスト水が無い中空とし、管体10の管軸が水面1と略同じ高さとなるような喫水で運用する。
・漂流物の状態例II:漂流物2の浮力が減じており、水面1近傍のみならず、水面下にも一定の幅を持って分布している状態(例えば、長時間漂流した軽石が水分を吸収して、個々の軽石が内包する空気の量が減じたような場合)。
この場合は、螺旋状管100の内部にバラスト水を適宜注入し、管体10の管軸が漂流物2の水深方向分布の中央と略同じ高さとなるような喫水で運用する。
【0082】
なお、本実施形態では、螺旋状管100の注入口101としての開口部(ポンプ側)を一端(
図7においては右端)に、排出口102としての開口部(逆止弁側)を他端(
図7においては左端)に設けているが、螺旋状管100を二条(二重)の螺旋形に整形して他端側で連結し、注入口101と排出口102とがいずれも一端側に位置するようにしておくこともでき、この場合は、ポンプ操作や逆止弁操作等の作業を一箇所(一端側)で行えるので操作性が向上する。
【0083】
次に、本発明の第四の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図8は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図であり、
図8(a)は平面図、
図8(b)は立面(側視)図である。
本実施形態の遮蔽及び回収装置は、基本的な構成は第一の実施形態と同じだが、螺旋状フィン20が、管体10の一方の端部10A側から途中までに設けられている第一部分20Aと、第一部分20Aに続いて管体10の他方の端部10B側まで設けられている第二部分20Bとで、螺旋の向きが逆となっている。すなわち、螺旋状フィン20の巻回方向が管体10の途中で変わっており、中央より一方の端部10A側(
図8においては右側)では所謂Z巻きに、他方の端部10B側(
図8においては左側)では所謂S巻きに巻回してある。なお、巻回方向が変化する位置は必ずしも管体10の長さ方向中央部である必要はなく、任意に設定可能である。
【0084】
図8のような状態で遮蔽及び回収装置を水面上に設置し、回転駆動装置30を駆動して軸50や継手を回転駆動装置30から見て時計回りに回転させると、連結されている管体10及び螺旋状フィン20も同方向に回転する。
第一部分20Aの螺旋状フィン20はZ巻に巻回してあるため、管体10の中央より一方の端部10A側で管体10の近傍の水面1に浮遊している漂流物2は、回転する螺旋状フィン20から一方の端部10A向き(
図8においては右向き)に連続的な押圧力を受け、一方の端部10A側へ輸送(回収)される。
また、第二部分20Bの螺旋状フィン20はS巻きに巻回してあるため、管体10の中央より他方の端部10B側で管体10の近傍の水面1に浮遊している漂流物2は、回転する螺旋状フィン20から他方の端部10B向き(
図8においては左向き)に連続的な押圧力を受け、他方の端部10B側へ輸送(回収)される。
このようにして、一方向に回転する管体10の近傍の水面1に浮遊している漂流物2は、螺旋状フィン20の螺旋の向き(巻回方向)に応じて、左右異なる方向に分けられて輸送(回収)され、第一の浮体70Aの近傍と第二の浮体70Bの近傍にそれぞれ集積されるため、管体10の長さ方向中央部付近における漂流物2を早期かつ効率的に除去するとともに、浮体70の近傍における最終的な陸地側からの回収作業を、左右二箇所に分けて効率的に行うことが可能となる。
【0085】
次に、本発明の第五の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図9は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図であり、いずれも上方から見た平面見取図である。
図9(a)は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収方法を実行する前の状態を示し、
図9(b)は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収方法を実行中の状態を示している。
本実施形態の基本的な構成は第一の実施形態と同じだが、管体10の他方の端部10B側に位置する第二の浮体70Bに移動用推進手段110と湾曲調節用推進手段120を備えている点において第一の実施形態と異なる。
移動用推進手段110は、第二の浮体70Bに管体10の管軸に対して垂直方向に±Tyの推力を付与する。Tyの値は任意に制御可能である。一方、湾曲調節用推進手段120は、第二の浮体70Bに管体10の管軸と平行方向に±Txの推力を付与する。Txの値も任意に制御可能である。
【0086】
いま、
図9(a)に示すように、管体10よりも沖側に、漂流物2が面状に分布しているとする。この状態で回転駆動装置30を作動させると、第一の実施形態と同様に、管体10の近傍にある漂流物2は、螺旋状フィン20からの押圧力を受け一方の端部10Aの方向に輸送(回収)され始める。
次に、移動用推進手段110を作動させて管体10の管軸と垂直方向に推力Tyを発生させると、第二の浮体70Bは沖側に移動し始め、それに伴って管体10は第一の浮体70Aを支点として徐々に回転移動し始める。
図9(b)は、第一の浮体70Aを支点とした管体10全体の回転角がθに達したときの状態を示しており、回転する管体10が通過した扇形(中心角度θ)の領域では漂流物2が面的に除去されて一方の端部10Aの近傍に輸送(回収)されている。このように、第二の浮体70Bに管体10の管軸に対して垂直方向の推力を付与する移動用推進手段110を備え、第二の浮体70Bが第一の浮体70Aを支点として移動用推進手段110の推力により水面1を弧状に移動可能とすることで、面状に分布している漂流物2を円滑に面的除去することができる。
このとき、管体10の管軸方向に±Txの推力を与える湾曲調節用推進手段120を適宜作動させて管体10に管軸方向の張力を適宜発生させ、管体10が過度に湾曲したりしないようにすることで、漂流物2の面的除去を円滑に行うことができる。
図9(b)の状態から、更に移動用推進手段110の作動及び管体10全体の第一の浮体70Aを支点とした回転移動を継続することにより、漂流物2が除去される扇形の範囲が更に拡大し、この例ではθ≒90°に達したところで面的除去及び回収が完了することになる。
【0087】
回転駆動装置30及び軸50や継手による管体10の回転速度をN[回転/秒]、管体10の外径をD、螺旋状フィン20のリード角をαとしたとき、螺旋状フィン20が漂流物2を押圧して一方の端部10Aがある方向(
図9に矢印で示す回収方向)に移動させる速度Vは、下式(1)により求められる。
[数1]
V=N・πDtanα
【0088】
管体10の長さをLとすれば、
図9(a)において管体10の他方の端部10Bの近傍にある漂流物2が螺旋状フィン20により押圧されて移動し、管体10の一方の端部10Aの近傍まで回収されるのに要する時間Tは、下式(2)により求められる。
[数2]
T=L/V=L/(N・πDtanα)
【0089】
本実施形態における第二の浮体70Bの管軸垂直方向の移動距離は、式(2)により求められる時間Tの間に管体10の外径の0.8倍以上1.2倍以下程度に抑えることが好ましく、外径程度に抑えることが更に好ましい。この条件を式で表すと下式(3)のようになる。
[数3]
Vf・T=Vf・L/(N・πDtanα)≦Dより、
Vf≦N・πD2tanα/L
(但しVfは第二の浮体70Bの管軸垂直方向速度である)
【0090】
いま、一例として、管体10の長さL=30m、外径D=0.5m、螺旋状フィン20のリード角α=30°、管体10の回転速度N=1[回転/秒]の場合を考えると、螺旋状フィン20が漂流物2を押圧して移動させる速度Vは、式(1)により、
V=N・πDtanα=1・π×0.5/√3=0.907[m/sec]となる。
次に、
図9(a)において管体10の他方の端部10Bの近傍にある漂流物2が螺旋状フィン20により押圧されて移動し、管体10の一方の端部10Aの近傍まで回収されるのに要する時間Tは、式(2)により、
T=L/V=30/0.907=33.1[sec]となる。
このとき、第二の浮体70Bの管軸垂直方向速度V
fの満たすべき条件は、式(3)より、
V
f≦D/T=0.5/33.1[sec]=0.0151[m/sec]となる。
このように、漂流物回収機能の実行時において、移動用推進手段110により第二の浮体70Bを弧状に移動させ面的除去を行うとき、第二の浮体70Bの移動速度を所定以下とすることで、漂流物2が管体10から離れすぎるのを抑えて効率よく回収することができる。
【0091】
なお、本実施形態では第二の浮体70Bに移動用推進手段110と湾曲調節用推進手段120を設けているが、第一の浮体70Aのみ、又は第一の浮体70Aと第二の浮体70Bの両方に移動用推進手段110及び湾曲調節用推進手段120を設けることもできる。
また、本実施形態の面的な回収方法を、上記の第三の実施形態と適宜組み合わせて実施することにより、水深方向(上下方向)にも一定の幅を持たせた立体的な(3次元の)回収方法とすることが可能である。この場合、面状に分布している漂流物2の水深方向の分布状況に応じて管体10の喫水を変更したうえで面的除去が行われるため、漂流物2をより効率的に回収することができる。
【0092】
次に、本発明の第六の実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置と、水面上漂流物の遮蔽及び回収方法について説明する。なお、上記した実施形態と同一機能部材等には同一符号を付して説明を省略する。
図10は本実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置の全体図であり、
図10(a)は平面図、
図10(b)は立面(側面)図である。
本実施形態の遮蔽及び回収装置の基本的な構成は第一の実施形態と同じだが、第一の実施形態は漂流物が回転する螺旋状フィン20から連続的な押圧力を受けることにより輸送及び回収されるものであるのに対し、本実施形態はそれに加えて漂流物を螺旋状フィン20からの連続的な押圧力によることなく輸送及び回収することもできる点において異なる。
本実施形態の遮蔽及び回収装置は、管体10に接触した漂流物を管体10の端部に寄せるべく通常回転速度で軸50を回転させる通常回転モードの他に、通常回転速度よりも速い高回転速度で軸50を回転させる高速回転モードを有する。高速回転モードにおいて、制御装置60は、回転駆動装置30の出力を通常回転モードのときよりも増して管体10の回転数を次第に増大させ、軸50の回転速度が高回転速度となるように回転駆動装置30を制御する。例えば、通常回転速度を約0.50~0.90[回転/秒]に設定している場合は、高回転速度を約0.91~2.00[回転/秒]に設定する。なお、所定の高回転速度に到達した後は、その高回転速度で定速回転するように制御装置60が回転駆動装置30を制御する。
高回転速度で回転する管体10の近傍には高速で回転する螺旋状フィン20によって勢いのある水流が生じ、漂流物はもはや螺旋状フィン20に接することなく、この水流に乗って
図10(a)に示すように一方の端部10A側へ輸送(回収)される状態となる。なお、
図10に示す場合とは逆に回転駆動装置30側から見て反時計回りに高回転速度で軸50を回転させた場合は、漂流物は水流に乗って他方の端部10B側へ寄せられる。
さらに、水流の範囲は水面1の近傍にとどまらず、管体10及び螺旋状フィン20の没水部周り全体に及ぶため、
図10(b)に示すように、管体10又は螺旋状フィン20の先端部や、それよりも若干深い水深を漂流してくる没水した漂流物に対しても回収効果を発現することができる。
【0093】
また、回転駆動装置30の出力を増して管体10の回転数を増大させることにより管体10の近傍に生じる勢いのある水流は、漂流してくる漂流物に対して一種のエアカーテンのような作用を及ぼすため、漂流物は管体10及び螺旋状フィン20に到達する前に水流によって遮られ、
図10(a)に示すように、結果として漂流物の自由な通過を妨げる遮蔽効果を発現することができる。
さらに、その水流の範囲は水面1の近傍にとどまらず、管体10及び螺旋状フィン20の没水部周り全体に及ぶため、
図10(b)に示すように、管体10又は螺旋状フィン20の先端部や、それよりも若干深い水深を漂流してくる没水した漂流物に対しても遮蔽効果が作用することになり、オイルフェンスと同等の効果を発現することができる。
なお、上記した他の実施形態による遮蔽及び回収装置においても、通常回転モードの他に高速回転モードを有する構成とすることができ、その場合は、高速回転モードにおいて、本実施形態の高速回転モードと同様の遮蔽効果と回収効果を発現することができる。
【0094】
次に、上記した各実施形態による水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を、実際に設置して運用する場合の基本的なフローについて説明する。
図11は水面上漂流物の遮蔽及び回収装置を設置・運用する際の基本的な全体フローを示す図である。
最初に、対象とする漂流物2の種類や水域を含む諸条件を考慮する(S1:条件考慮ステップ)。条件考慮ステップS1においては、遮蔽及び回収装置を設置しようとしている水域に関する情報、その水域近くの地形に関する情報、遮蔽及び回収対象とする漂流物2の種類に関する情報、及び当該水域の気象に関する情報等を収集する。考慮すべき諸条件は、例えば、水域については海、湖沼、河川等の別、地形については浜、湾、護岸等の別、漂流物2の種類については軽石、油、化学物質等の別、気象については水流及び風波の大きさや方向等である。
条件考慮ステップS1の後、諸条件に従って遮蔽及び回収装置を選択する(S2:遮蔽及び回収装置選択ステップ)。遮蔽及び回収装置選択ステップS2においては、条件考慮ステップS1で考慮した諸条件に基づいて、使用すべき管体10の選択と基本設計を施すと共に、例えば上記した六つの実施形態の中から最適と思われる実施形態を選択する。
遮蔽及び回収装置選択ステップS2の後、選択された遮蔽及び回収装置と必要な計測機器を対象水域に設置する(S3:装置及び機器設置ステップ)。
【0095】
設置完了後、漂流物2の漂着が予想される場合、又は既に漂流物2が漂着している場合には、遮蔽及び回収装置と計測機器によるリアルタイムデータを取得する(S4:データ取得ステップ)。このリアルタイムデータは、遮蔽及び回収装置を駆動する際のパラメータである装置駆動パラメータの決定に際して必要となるものであり、漂流物2の形状寸法、量、性質、広がり、遮蔽及び回収状況などを示すデータ(各種画像データを含む)、水流、風速、波高などの気象計測データ、トルクセンサにより計測された管体10の駆動トルクの計測値、管体10の全体形状データ(方向・湾曲等の画像データ)等が含まれる。なお、各種画像データの収集には、高所カメラやドローンカメラ、暗視・水中カメラ等を用いることができる。
データ取得ステップS4で計測・収集されるリアルタイムデータは多岐に亘り、これらをすべて勘案した上で最適な装置駆動パラメータを手動で決定することは困難であるため、制御装置60に専用の制御プログラムを組み込み、制御装置60が最適な装置駆動パラメータを自動的に決定する自動制御システムを構築しておくことが好ましい。
その後、取得したリアルタイムデータに基づいて、遮蔽及び回収装置を自動制御する(S5:自動制御ステップ)。例えば、上記の自動制御システムを構築している場合は、決定及び出力された詳細な装置駆動パラメータを用いて、制御装置60による制御のもと管体10や浮体70の駆動を行い、漂流物2の遮蔽(回収)を実施する。管体10の駆動については、回転方向、回転速度、振動付与の有無、及びバラスト水量等が制御され、浮体70の駆動については、移動方向及び移動速度等が制御される。
更に、遮蔽及び回収の結果は、リアルタイムデータの計測・収集プロセスであるデータ取得ステップS4にフィードバックされ、制御装置60は装置駆動パラメータの修正を適宜行いながら遮蔽及び回収プロセスを継続する。
【0096】
自動制御システムを構築する際の専用の制御プログラムには、水面1を漂流する漂流物2の遮蔽及び回収に関する試験データや実データを基に機械学習や深層学習を施したAI(人工知能)を活用することが好ましい。これにより、AIを利用して遮蔽及び回収装置の漂流物回収性能を向上させることができる。
なお、
図11のフロー中、点線で囲んだ部分は、ドローンカメラの操縦等の一部を除き、概ね自動化(無人化)が可能なプロセスであり、自動化を図ることにより、例えば、夜間に漂流物2が漂着するような場合においても、滞りなく遮蔽及び回収作業を継続的かつ効率的に行うことが可能となる。
【0097】
次に、上記した第一、二、四及び六の実施形態の例として実施した、小型の水槽と模型を用いた実験について説明する。
図12は実験装置の概観写真である。同図において、小型水槽200に配置した管体模型210(管体10相当)を挟んで向こう側が水面上を漂流する模擬漂流物220(漂流物2相当)の侵入を阻止すべき側(陸側)であり、手前側は模擬漂流物220が流れてくる側(沖側)である。実験装置を構成する各要素の詳細は以下の通りである。
【0098】
<小型水槽>
小型水槽200には、樹脂製で大きさ1230×770×210mmのタフブネ(登録商標)を用い、設置した管体模型210が半没水状態となるまで(水面が後述するアルミ合金丸棒の直下に達するまで)水道水を注水して実験に供した。
【0099】
<水面上漂流物>
図13は模擬漂流物として用いた木材チップの概観写真である。模擬漂流物220には、燻製用の木材チップ((株)尾上製作所製、材質:サクラ)を用いた。木材チップの寸法は、大凡3mm~10mm程度である。木材チップは水面上に撒いてから一定時間経過すると吸水して沈下するものが出てくるため、乾燥した新品を適宜追加しながら実験を行った。
【0100】
<回転駆動装置及び制御装置>
管体模型210の回転駆動装置240(回転駆動装置30相当)には、ギヤードモーター(ツカサ電工(株)製TG-47G-SG-75-HA、定格DC12V、減速比75、定格回転数58.8rpm)を1個用いた。
回転駆動装置240を制御する制御装置(制御装置60相当)には、直流安定化電源((株)エー・アンド・デイ製AD8722D、DC 0~20V)を用い、出力電圧を適宜変化させることによりギヤードモーターの回転数、ひいては管体模型210の回転数を制御した。
【0101】
<管体模型>
螺旋状フィン230(螺旋状フィン20相当)が設けられた二つの管体部分模型を直列に接続して管体模型210とした。
図14は管体部分模型及び管体模型の概観写真であり、
図14(a)は螺旋状フィンをZ巻きとした管体部分模型、
図14(b)は螺旋状フィンをS巻きとした管体部分模型、
図14(c)は管体部分模型を組み合わせた管体模型である。
管体部分模型は、3Dプリンター(日本3Dプリンター(株)製、Raise3D Pro3)を用いて製作した。管体部分模型の詳細仕様は以下の通りである。
材質:ABS樹脂(円筒部:白色、フィン部:灰色)
全長:円筒部の両端スパンで250mm
円筒部寸法:外径30mm、内径26mm、肉厚t=2mm
螺旋状フィン寸法:外径70mm、内径30mm、高さ20mm
螺旋状フィン仕様:Z巻き及びS巻き、リード角θ=15°、リード25.25mm
図14(a)(b)に示す管体部分模型は、3D印刷完了後、印刷時に螺旋状フィン230を支えていた支持材を工具により除去して完成させたものである。実験では、これら管体部分模型の内側に略径寸法を合わせたアクリルパイプ(外径25mm、肉厚2mm、長さ600mm)を通して2本直列に固定配置し、全長に亘り螺旋状フィンがZ巻きのみのもの(第一の実施形態)と、中点を挟んでZ巻きの螺旋状フィンからS巻きの螺旋状フィンへと変化するもの(第四の実施形態)の二通りを用いた。
アクリルパイプの両端には、中央部にφ5mmの円孔の開いたゴム栓をはめ込み、パイプの内部は中空とした。ゴム栓の円孔にはφ5mmのアルミ合金(JIS A5056)丸棒を通し、これを管体模型210の駆動軸211として小型水槽200の外側に固定配置したギヤードモーターの回転軸に連結した。
図14(c)は第四の実施形態に関する実験に用いた管体模型210を示しており、実際に管体部分模型をアクリルパイプに通して固定配置し、ゴム栓及び駆動軸としてのアルミ合金丸棒を取り付けて小型水槽200に設置した。小型水槽200の左右側壁にはφ5mmよりも僅かに大きな円孔を開け、円孔に通したアルミ合金丸棒が滑らかに回転するように調整した。
【0102】
<風発生装置>
図12に太い矢印で示したように、小型水槽200に張った水の表面近傍には、沖側(
図12の手前側)から陸側(
図12の向こう側)に向かう風速V
W[m/s]の風を吹かせ、模擬漂流物220である木材チップが連続的に管体模型210の方向に移動していくような表面水流を生じせしめた。風の発生には小型のサーキュレータ(アイリスオーヤマ(株)製、PCF-HD18-W)を用い、管体模型210の中央部近傍における風速がV
W=1.4~1.5[m/s]となるように設定した。
【0103】
以上の各要素を含む実験装置を用い、本実施形態による実施例と比較例について実験を行った。
実施例についての実験においては、管体模型210を設置した小型水槽200に水を張り(水深約17cm)、沖側(
図12の手前側)の水面上に適量の模擬漂流物220を撒いた状態で風を送り、模擬漂流物220が管体模型210の方向に向かう流れに乗って移動し始めたところで直流安定化電源の出力電圧を設定値まで上昇させて回転駆動装置240により管体模型210を回転させ、模擬漂流物220の挙動を観察し、静止画及び動画の撮影を適宜行った。なお、管体模型210を回転させる場合の回転方向は、すべて回転駆動装置240側から見て時計回り方向とした。
比較例についての実験においては、管体模型210もアクリルパイプも設置しないか、又は回転しないアクリルパイプのみを設置した小型水槽200に水を張り(水深約17cm)、沖側の水面上に適量の模擬漂流物220を撒いた状態で風を送り、模擬漂流物220の挙動を観察し、静止画及び動画の撮影を適宜行った。なお、比較例3においては、模擬漂流物220が陸側に向かう流れに乗って移動し始めたところで直流安定化電源の出力電圧を設定値まで上昇させて回転駆動装置240により管体模型210を回転させた。
各実施例と比較例について実施した実験の条件及び結果を下表2に纏めて示す。
【表2】
【0104】
各比較例についての実験結果の概要は以下の通りである。
[比較例1]
管体模型210とアクリルパイプを小型水槽200に設置せずに行ったものであり、当然ながら遮蔽効果も回収効果も認められなかった。
[比較例2]
アクリルパイプのみ(管体模型210無し)を小型水槽200に設置し、アクリルパイプを回転させずに行ったものであり、遮蔽効果は認められたが、回収効果は認められなかった。
[比較例3]
アクリルパイプのみ(管体模型210無し)を小型水槽200に設置し、アクリルパイプの回転数を0.31~1.10[回転/秒]の範囲で変化させて行ったものであり、遮蔽効果は認められたが、回収効果は認められなかった。
【0105】
各実施例についての実験結果の概要は以下の通りである。
[実施例1]
全長に亘りZ巻きの螺旋状フィン230を設けた管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を0.31[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果と回収効果はともに「△:一部効果あり」という結果となった。
これは、管体模型210の回転数が低いため、管体模型210の表面に模擬漂流物220としての木材チップが付着しやすく、付着した模擬漂流物220がそのまま管体模型210の回転とともに陸側に移動してしまうということに起因しているが、一方で、第二の実施形態の説明における「R方向への回転速度としては、通常回転速度よりも回転速度が遅い低回転速度とすることが好ましい。これにより、・・外面への漂流物2の付着がより確実なものとなる」との記載を裏付ける結果ともなっている。
[実施例2]
全長に亘りZ巻きの螺旋状フィン230を設けた管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を0.71[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果と回収効果はともに「〇:効果あり」という結果となった。
図15は実施例2の観察結果の写真であり、
図15(a)は回収開始時の状況を、
図15(b)は回収開始から20秒後の状況をそれぞれ示している。開始時には管体模型210の近傍に分布していた模擬漂流物220が、20秒後には回転駆動装置240側(管体模型210の一方の端部側)に輸送(回収)されている様子が
図15から見てとれる。
[実施例3]
全長に亘りZ巻きの螺旋状フィン230を設けた管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を1.10[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果と回収効果はともに「〇:効果あり」という結果となった。
本実施例では、管体模型210の回転数が高いため、管体模型210の近傍には高速で回転する螺旋状フィン230によって勢いのある水流が生じ、模擬漂流物220は螺旋状フィン230に接することなく遮蔽されるとともに、この水流に乗って回転駆動装置240側に輸送(回収)されるというように、第六の実施形態で説明した遮蔽効果及び回収効果が発現した。
[実施例4]
中点を挟んでZ巻きの螺旋状フィン230からS巻きの螺旋状フィン230へと変化する管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を0.31[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果は「△:一部効果あり」、回収効果は「〇:効果あり」という結果となった。
これは、管体模型210の回転数が低いため、管体模型210の表面に模擬漂流物220としての木材チップが付着しやすく、模擬漂流物220がそのまま管体模型210の回転とともに陸側に移動してしまうということに起因しているが、一方で、第二の実施形態の説明における「R方向への回転速度としては、通常回転速度よりも回転速度が遅い低回転速度とすることが好ましい。これにより、・・外面への漂流物2の付着がより確実なものとなる」との記載を裏付ける結果ともなっている。
[実施例5]
中点を挟んでZ巻きの螺旋状フィン230からS巻きの螺旋状フィンへ230と変化する管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を0.71[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果と回収効果はともに「〇:効果あり」という結果となった。
図16は実施例5の観察結果の写真であり、
図16(a)は回収開始時の状況を、
図16(b)は回収開始から40秒後の状況をそれぞれ示している。開始時には管体模型210の近傍に分布していた模擬漂流物220が、40秒後には管体模型210の両端部近傍に輸送回収されている様子が見てとれる。
[実施例6]
中点を挟んでZ巻きの螺旋状フィン230からS巻きの螺旋状フィン230へと変化する管体模型210を小型水槽200に設置し、管体模型210の回転数を1.10[回転/秒]として行ったものであり、遮蔽効果と回収効果はともに「〇:効果あり」という結果となった。
本実施例では、管体模型210の回転数が高いため、管体模型210の近傍には高速で回転する螺旋状フィン230によって勢いのある水流が生じ、模擬漂流物220は螺旋状フィン230に接することなく遮蔽されるとともに、この水流に乗って輸送(回収)され、第六の実施形態で説明した遮蔽効果及び回収効果が発現した。
図17は実施例6の観察結果の写真であり、
図17(a)は回収開始時の状況を、
図17(b)は回収開始から47秒後の状況をそれぞれ示している。模擬漂流物220は、開始時には比較的高速で回転する螺旋状フィン230によって管体模型210の近傍に生じた勢いのある水流のすぐ外側に分布しているがが、その後、水流に乗って管体模型210の両端部側へ輸送され、47秒後には管体模型210の両端部近傍まで寄せられている様子が見てとれる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、事故等により流出した油・化学物質や、海底火山の噴火に伴う軽石等の各種物質の遮蔽(遮断)と効率的な回収に利用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 水面
2 漂流物
10 管体(中空可撓管)
10A 一方の端部
10B 他方の端部
20 螺旋状フィン
20A 第一部分
20B 第二部分
30 回転駆動装置
40 軸受装置
50 軸
60 制御装置
70 浮体
70A 第一の浮体
70B 第二の浮体
80 係留索
90 突起
100 バラスト体(螺旋状管)
101 注入口
102 排出口
110 移動用推進手段
120 湾曲調節用推進手段
S1 条件考慮ステップ
S2 遮蔽及び回収装置選択ステップ
S3 装置及び機器設置ステップ
S4 データ取得ステップ
S5 自動制御ステップ