(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054087
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】酸化物系薄膜シート、酸化物系固体電解質シート及び全固体リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20240409BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240409BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240409BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/052
H01M10/0562
H01B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023170830
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0126435
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0130397
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム キョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン キュ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA13
5G301CA14
5G301CA16
5G301CA18
5G301CA19
5G301CA21
5G301CA22
5G301CA25
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
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5H029DJ09
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ09
5H029HJ14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性などの性能に優れた酸化物系固体電解質シートを製造することができる酸化物系薄膜シート、前記酸化物系固体電解質シート及び該シートを含んで安全性、エネルギー密度などが向上した全固体リチウム二次電池を提供する。
【解決手段】本開示の一実施例による酸化物系薄膜シートは、酸化物系粒子211を含み、上記酸化物系粒子は可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子222を含む。本開示の一実施例による酸化物系固体電解質シート200は、上記酸化物系薄膜シートを光焼結して製造できる。本開示の一実施例によると、光焼結を介して粒子間の連結形態、粒子形状、気孔度などが適宜形成された酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物系粒子を含み、
前記酸化物系粒子は可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子を含む、酸化物系薄膜シート。
【請求項2】
前記有色の酸化物粒子は酸化物系粒子の全体重量を基準に0.1~10重量%含まれる、請求項1に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項3】
前記有色の酸化物粒子はクロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレニウム(Se)の中から選択された1種以上の元素の酸化物を含む、請求項1に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項4】
前記酸化物系粒子はリチウム伝導性酸化物系粒子を含む、請求項1に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項5】
前記リチウム伝導性酸化物系粒子はガーネット(Garnet)化合物、ナシコン(NASICON)化合物及びペロブスカイト(Perovskite)化合物の中から選択された1種以上の化合物を含む、請求項4に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項6】
前記リチウム伝導性酸化物系粒子はジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上を含む、請求項4に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項7】
前記酸化物系薄膜シートは、前記有色の酸化物粒子を含むスラリーを基板上に形成した後、乾燥させて製造される、請求項1に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項8】
CIELAB色差計によるL値が80以下である、請求項1に記載の酸化物系薄膜シート。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項による酸化物系薄膜シートを光焼結して製造される、酸化物系固体電解質シート。
【請求項10】
前記光焼結は、パルス方式で行われる、請求項9に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項11】
前記光焼結時のパルス当たりの光照射時間(On-time)は、1000~4500μsである、請求項10に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項12】
前記光焼結時の作動電圧は100~450Vである、請求項10に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項13】
前記光焼結時の基板の温度は、300℃以下に維持される、請求項9に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項14】
前記光焼結時に照射された光エネルギーは、25~150J/s・cm2である、請求項9に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項15】
前記酸化物系固体電解質シートは、0.25cm2以上の面積及び10~300μmの厚さを有する、請求項9に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項16】
前記酸化物系固体電解質シートは、0.1~40%の空隙率及び10-6S/cm~10-2S/cmのイオン伝導度を有する、請求項9に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項17】
基板;及び前記基板上の焼結された酸化物系固体電解質シートを含み、
前記酸化物系固体電解質シートは、0.1~40%の空隙率及び10-6S/cm~10-2S/cmのイオン伝導度を有し、
前記酸化物系固体電解質シートは、0.25cm2以上の面積及び10~300μmの厚さを有する、固体電解質構造体。
【請求項18】
前記酸化物系固体電解質シートの方面でEDS分析時、前記酸化物系固体電解質シートに含まれたバインダバーニング残存物の含量は10at%~80at%である、請求項17に記載の固体電解質構造体。
【請求項19】
前記酸化物系固体電解質シートは、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上;及びクロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレニウム(Se)の中から選択された1種以上の元素を含む、請求項17に記載の固体電解質構造体。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項による固体電解質構造体を含む、全固体リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文献に開示された技術及び実施例は、全固体リチウム二次電池技術に関するものであって、さらに具体的に、リチウム二次電池のための固体電解質技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、環境問題に対する関心が高まるにつれて、化石燃料を基盤とした車両に代替できる電気自動車(EV)、新再生エネルギーを活用するESS(Energy Storage System)などに対する研究が活発に行われている。このような電気自動車(EV)などの動力源として高い放電電圧及び出力安定性を有するリチウム二次電池が主に用いられている。
【0003】
一方、有機溶媒などの液体電解質を適用する従来のリチウム二次電池は、電解質の漏れによる発火危険性が存在し、電極反応によって電解質が分解されて電池が膨張するという問題点などが存在する。また、このような問題点を防止するために従来のリチウム二次電池に含まれる分離膜によって、電池の高エネルギー密度を確保することに限界が存在する。これによって、上記問題点を解決するために固体状態の電解質を適用した全固体リチウム二次電池に対する研究及び開発が活発に行われている。
【0004】
全固体リチウム二次電池に適用される固体電解質は、主に硫化物系、高分子系、酸化物系固体電解質などに分類され、このうち酸化物系固体電解質は、化学的/熱的安定性、機械的強度などに優れて次世代の固体電解質素材として注目されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一側面によると、耐久性などの性能に優れた酸化物系固体電解質シートを製造することができる酸化物系薄膜シートが提供される。
【0006】
本開示の他の側面によると、短期間に製造可能であり、追加加工工程なしに薄膜化及び大面積化が可能な酸化物系固体電解質シートを提供することができる。
【0007】
本開示の他の側面によると、基板変形、シート損傷などの問題なく製造され、耐久性などに優れた酸化物系固体電解質シートを提供することができる。
【0008】
本開示の他の側面によると、優れた性能を有する酸化物系固体電解質シートを含んで安全性、エネルギー密度などが向上した全固体リチウム二次電池を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施例による酸化物系薄膜シートは、酸化物系粒子を含み、上記酸化物系粒子は可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子を含む。
【0010】
一実施例によると、上記有色の酸化物粒子は酸化物系粒子の全体重量を基準に0.1~10重量%含まれることができる。
【0011】
一実施例によると、上記有色の酸化物粒子はクロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレニウム(Se)の中から選択された1種以上の元素の酸化物を含むことができる。
【0012】
一実施例によると、上記酸化物系粒子はリチウム伝導性酸化物系粒子を含むことができる。
【0013】
一実施例によると、上記リチウム伝導性酸化物系粒子はガーネット(Garnet)化合物、ナシコン(NASICON)化合物及びペロブスカイト(Perovskite)化合物の中から選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0014】
一実施例によると、上記リチウム伝導性酸化物系粒子はジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上を含むことができる。
【0015】
一実施例によると、上記酸化物系薄膜シートは、上記有色の酸化物粒子を含むスラリーを基板上に形成した後、乾燥させて製造されることができる。
【0016】
一実施例によると、上記酸化物系薄膜シートは、CIELAB色差計によるL値が80以下であることができる。
【0017】
本開示の一実施例による酸化物系固体電解質シートは、上述した実施例のいずれか一つによる酸化物系薄膜シートを光焼結して製造される。
【0018】
一実施例によると、上記光焼結はパルス方式で行われることができる。
【0019】
一実施例によると、上記光焼結時のパルス当たりの光照射時間(On-time)は、1000~4500μsであることができる。
【0020】
一実施例によると、上記光焼結時の作動電圧は100~450Vであることができる。
【0021】
一実施例によると、上記光焼結時の基板の温度は300℃以下に維持されることができる。
【0022】
一実施例によると、上記光焼結時に照射された光エネルギーは、25~150J/s・cm2であることができる。
【0023】
一実施例によると、上記酸化物系固体電解質シートは、0.25cm2以上の面積及び10~300μmの厚さを有することができる。
【0024】
一実施例によると、上記酸化物系固体電解質シートは、0.1~40%の空隙率及び10-6S/cm~10-2S/cmのイオン伝導度を有することができる。
【0025】
本開示の一実施例による固体電解質構造体は基板;及び上記基板上の焼結された酸化物系固体電解質シートを含み、上記酸化物系固体電解質シートは、0.1~40%の空隙率及び10-6S/cm~10-2S/cmのイオン伝導度を有し、上記酸化物系固体電解質シートは、0.25cm2以上の面積及び10~300μmの厚さを有する。
【0026】
一実施例によると、上記酸化物系固体電解質シートの方面でEDS分析時に、上記酸化物系固体電解質シートに含まれたバインダバーニング残存物の含量は10at%~80at%であることができる。
【0027】
一実施例によると、上記酸化物系固体電解質シートは、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上;及びクロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレニウム(Se)の中から選択された1種以上の元素を含むことができる。
【0028】
本開示の一実施例による全固体リチウム二次電池は、上述した実施例のいずれか一つによる固体電解質構造体を含む。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一実施例によると、粒子間の連結形態、粒子形状、粗密度などが適宜形成された酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0030】
本開示の他の一実施例によると、耐久性及びイオン伝導度に優れた酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0031】
本開示の他の一実施例によると、基板から剥離現象などの発生なしに酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0032】
本開示の他の一実施例によると、リチウムなどの材料消失又は基板破壊なく短期間に酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0033】
本開示の他の一実施例によると、追加加工工程なしに酸化物系固体電解質シートを薄膜化及び大面積化することができる。
【0034】
本開示の他の一実施例によると、基板とシートとの間の元素拡散による界面形成及び抵抗増加を抑制して酸化物系固体電解質シートの性能を向上させることができる。
【0035】
本開示の他の一実施例によると、優れた性能を有する酸化物系固体電解質シートを含んで安全性、エネルギー密度などに優れた全固体リチウム二次電池が提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1a】焼結進行によって粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【
図1b】焼結進行によって粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【
図1c】焼結進行によって粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【
図1d】焼結進行によって粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【
図2a】一実施例による酸化物系薄膜シートの構造及び上記酸化物系薄膜シートに含まれる酸化物系粒子間の接触形態を概略的に示す概念図である。
【
図2b】一実施例による酸化物系固体電解質シートの構造及び上記酸化物系固体電解質シートに含まれる酸化物系粒子間の接触形態を概略的に示す概念図である。
【
図3a】一実施例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【
図3b】一実施例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【
図4a】比較例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【
図4b】比較例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【
図5a】実施例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【
図5b】実施例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【
図6a】比較例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【
図6b】比較例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【
図7a】実施例及び比較例による酸化物系固体電解質シートについて多孔度分析を実施してシート空隙分布形態を観察した様子を示した図面である。
【
図7b】実施例及び比較例による酸化物系固体電解質シートについて多孔度分析を実施してシート空隙分布形態を観察した様子を示した図面である。
【
図8】有色の酸化物粒子の含量を異ならせて製造された実施例による酸化物系固体電解質シートについて波長200~1200nmで吸光度分析を行った結果を示したグラフである。
【
図9】それぞれ実施例及び比較例による酸化物系固体電解質シートについてイオン伝導度を測定した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、様々な実施例を参照して、多様な実施形態を説明する。しかし、実施形態は以下で説明する実施例に限定されるものではなく、様々な他の形態で変更されることができる。
【0038】
本明細書において、「焼結(Sintering)」現象とは、外部エネルギーによって粉末形態の粒子が互いに固く密着して固結する現象である。例示的に、「焼結(Sintering)」現象は、上記粉末形態の粒子が熱的活性化過程を介して密着して一つの塊になる過程を意味する。
【0039】
本明細書において、「光焼結(Light-Sintering)」とは、物質が有する固有の波長領域と光の波長領域との間の共鳴現象によって表れる発熱現象または吸収された光が熱に変換される光熱変換による熱伝達現象を光を介して誘導して、材料内に熱的活性化反応を発生させて焼結することを意味する。
【0040】
本明細書において、「有色の酸化物粒子(Colored-Oxide Particles)」とは、理論上すべての光を反射する完璧な白色(すなわち、CIELAB色差計によるL値が100である場合)を除いたすべての色相を有する酸化物粒子を意味する。このとき、「有色(Colored)」は、CIELAB色差計によるL値が100未満、さらに具体的には80以下である場合を意味し、「酸化物粒子(Oxide Particles)」は金属元素を含む金属酸化物が粉末化された形態である粒子を意味する。
【0041】
一般的な高温焼結工程を酸化物成形体の製造時に適用する場合、1000℃以上の温度で1時間~24時間以上の長期間の間、酸化物成形体を焼結して形成することによってリチウムなどの成分が揮発または蒸発して材料が損失されることがあり、焼結条件による密度制御が難しいことがある。また、基板の全体が加熱されることによって基板が変形又は破壊される問題が発生することがあり、製造される酸化物系シートの薄膜化及び均質な表面形成に困難が伴われ、さらなる加工工程が求められることがある。
【0042】
一方、RTA(Rapid Thermal Annealing)工程やマイクロウェーブ(Microwave)を用いる工程の場合、昇温を速い時間内に進行して一般的な高温焼結工程に対して短期間で行うことが可能であるが、基板が変形されたり破壊される問題は依然として解決することが困難であることがある。また、レーザ(Laser)を用いる工程の場合、レーザが入射する領域付近で局部的に反応が行われることによって焼結工程時の適用面積が狭小して焼結工程に長期間を要することがある。
【0043】
本開示の一実施例によると、可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子を活用し、光エネルギーを用いる光焼結工程を介して酸化物系固体電解質シートを製造することで、上記問題点を実質的に解決することができる。
【0044】
以下、
図1a~
図9を参考して具体的な実施例を以下で開示する。
【0045】
図1a~
図1dは、焼結進行により粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【0046】
図2aは、一実施例による酸化物系薄膜シートの構造及び上記酸化物系薄膜シートに含まれる酸化物系粒子間の接触形態を概略的に示す概念図である。
【0047】
図2bは、一実施例による酸化物系固体電解質シートの構造及び上記酸化物系固体電解質シートに含まれる酸化物系粒子間の接触形態を概略的に示す概念図である。
【0048】
図3a及び
図3bは、それぞれ一実施例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【0049】
図4a及び
図4bは、それぞれ比較例による酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察した様子を示した図面である。
【0050】
図5a及び
図5bは、それぞれ実施例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【0051】
図6a及び
図6bは、それぞれ比較例による固体電解質構造体について酸化物系固体電解質シートの方面で元素分析を実施して元素分布結果が重ねられたイメージ及び炭素元素(C K-α)に対する個別分析結果を示した図面である。
【0052】
図7a及び
図7bは、それぞれ実施例及び比較例による酸化物系固体電解質シートについて多孔度分析を実施してシート空隙分布形態を観察した様子を示した図面である。
【0053】
図8は、有色の酸化物粒子の含量を異ならせて製造された実施例による酸化物系固体電解質シートについて波長200~1200nmで吸光度分析を行った結果を示したグラフである。
【0054】
図9は、それぞれ実施例及び比較例による酸化物系固体電解質シートについてイオン伝導度を測定した結果を示したグラフである。
【0055】
酸化物系薄膜シート20
図2aを参考すると、一実施例による酸化物系薄膜シート20は、酸化物系粒子を含み、上記酸化物系粒子は可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子22を含む。
【0056】
上記有色の酸化物粒子22は、可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができ、可視光線スペクトルの光エネルギーとは、400~700nmの波長範囲内の電磁気波領域が有する光エネルギーを意味する。上記酸化物系薄膜シート20がこのような有色の酸化物粒子22を含む場合、以下で説明する光焼結工程の進行時にさらに円滑に焼結が行われて耐久性、イオン伝導度などに優れた酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0057】
上記酸化物系薄膜シート20に対して光を照射すると、反射光と透斜光を除いた吸収光によって熱が発生してシート内の物質の温度が上昇することができる。このような過程を繰り返す場合、発熱によって上昇したシート内の物質の温度が瞬間的に維持されながら焼結効果(以下、「光焼結」ともいう)が示されることがある。上記酸化物系薄膜シート20について光焼結工程を進行することで、以下で説明する酸化物系固体電解質シート200を製造することができる。上記酸化物系薄膜シート20は可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子22を含み、光焼結過程時に有色の酸化物粒子の種類、含量などの特性を制御して酸化物系薄膜シート20に吸収される光の吸収率を調節することができる。これにより、光焼結で製造される酸化物系固体電解質シート200の物性を必要に応じて容易に調節することができる。
【0058】
上記有色の酸化物粒子22は、酸化物系粒子の全体重量を基準に0.1~10重量%含まれることができる。具体的に、上記有色の酸化物粒子22は酸化物系粒子の全体重量を基準に0.5~5重量%含まれることができ、0.7~2重量%含まれることができる。上記有色の酸化物粒子22の含量が上述した範囲内である場合、母材酸化物粒子、例えば、リチウム伝導性酸化物系粒子などの含量を高く維持しながらも吸光度を向上させることで、製造される固体電解質シートのイオン伝導性などの特性が維持されながらも光焼結工程を円滑に進行させることができ、固体電解質シートの耐久性などをさらに向上させることができる。上記有色の酸化物粒子22の添加量は例えば、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)の方法で全体酸化物系粒子から有色の酸化物粒子の分率を測定して確認することができる。
【0059】
上記有色の酸化物粒子22は、可視光線スペクトルの光エネルギーを吸収することができる粒子として、理論上すべての光を反射する完璧な白色(すなわち、CIELAB色差計によるL値が100である場合)を除いたすべての色相を有する酸化物粒子であれば特に限定されない。例示的に、上記有色の酸化物粒子22は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)などの遷移金属元素;セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、及びエルビウム(Er)などのランタン族元素;亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)などのその他の金属元素;ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などの準金属元素;セレニウム(Se)などの非金属元素の中から選択された1種以上の元素の酸化物を含むことができる。また、上記有色の酸化物粒子22は、上述した種類の元素を酸化物の形態で含むことができる。例示的に、上記有色の酸化物粒子22がバナジウム(V)元素を含む際に、上記有色の酸化物粒子はバナジウム(IV)オキサイド(V2O4)などのバナジウム酸化物粒子を含むことができ、上記有色の酸化物粒子22がタングステン(W)元素を含む場合、上記有色の酸化物粒子はタングステン(III)オキサイド(WO3)などのタングステン酸化物粒子を含むことができ、上記有色の酸化物粒子22が鉄(Fe)元素を含む場合、上記有色の酸化物粒子は鉄(III)オキサイド(Fe2O3)などの酸化鉄粒子を含むことができ、上記有色の酸化物粒子22がビスマス(Bi)元素を含む場合、上記有色の酸化物粒子はビスマス(III)オキサイド(Bi2O3)などのビスマス酸化物粒子を含むことができる。
【0060】
上述した種類の元素が含まれた酸化物は明度が低い有色の酸化物として相対的に暗い色を帯びるため、上記有色の酸化物粒子22を含む酸化物系固体電解質シート200の吸光特性(Absorbance)に優れることができる。
【0061】
上記酸化物系粒子はリチウム伝導性酸化物系粒子21を含むことができる。例示的に、上記酸化物系粒子は有色の酸化物粒子22に対する母材(Basic Material)酸化物粒子でリチウム伝導性酸化物系粒子21を含むことができる。上記リチウム伝導性酸化物系粒子21は酸素元素を含み、リチウムイオンに対する伝導性を有する化合物を粉末化した形態の粒子であることができ、上記リチウム伝導性酸化物系粒子21は、ガーネット(Garnet)化合物、ナシコン(NASICON)化合物及びペロブスカイト(Perovskite)化合物の中から選択された1種以上の化合物を含むことができる。
【0062】
上記ガーネット(Garnet)化合物は、ガーネット結晶構造又はガーネット類似結晶構造を有する化合物として、Li7La3Zr2O12などの化学式で表されるリチウムランタンジルコニウムオキサイド(LLZO)系化合物であることができる。
【0063】
上記ナシコン(NASICON)化合物は、NASICON結晶構造又はNASICON類似結晶構造を有する化合物として、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3などの化学式で表されるリチウムアルミニウムチタンリン酸塩(LATP)系化合物であることができる。
【0064】
上記ペロブスカイト(Perovskite)化合物は、ペロブスカイト結晶構造またはペロブスカイト類誌結晶構造を有する化合物として、Li0.31La0.56TiO3などの化学式で表されるリチウムランタンチタネートオキサイド(LLTO)系化合物であることができる。
【0065】
上記リチウム伝導性酸化物系粒子21は、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上を含むことができる。例示的に、上記リチウム伝導性酸化物系粒子21は、リチウムランタンジルコニウムオキサイド(LLZO)系化合物、リチウムランタンチタネートオキサイド(LLTO)系化合物、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸塩(LAGP)系化合物、リチウムアルミニウムチタンリン酸塩(LATP)系化合物の中から選択された1種以上の化合物であることができる。さらに具体的に、上記リチウム伝導性酸化物系粒子21はLi7La3Zr2O12の化学式で表され、ガーネット(Garnet)構造を有するリチウムランタンジルコニウムオキサイド(LLZO)系化合物であることができる。上記リチウム伝導性酸化物系粒子21で上述した種類の化合物、具体的にLLZO系化合物を適用する場合、優れたイオン伝導度、リチウム金属との安定性、広い電位窓範囲などの特性を有する酸化物系固体電解質シート200を製造することができる。
【0066】
上記酸化物系薄膜シート20は、10~300μmの厚さを有することができる。一部実施例において、上記酸化物系薄膜シート20の厚さは、30μm~200μm、または30μm~100μmであることができる。上記酸化物系薄膜シート20の厚さが上述した範囲内である場合、薄い厚さで薄膜化され、エネルギー密度、耐久性などに優れた酸化物系固体電解質シート200を製造することができる。
【0067】
上記酸化物系薄膜シート20は、上記有色の酸化物粒子22を含むスラリーを基板10上に形成した後、乾燥させて製造されることができる。
【0068】
上記スラリーはバインダをさらに含むことができる。上記バインダは酸化物系粒子を適宜結合し、基板に対するスラリーの接着力向上に寄与することができる成分であれば、特に限定されず、例示的に、ポリアクリル樹脂(polyacrylic resin)、エチルセルロース(ethyl-cellulose)、メチルセルロース(methyl-cellulose)及びポリビニルブチラール樹脂(polyvinyl butyral resin)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride)、カルボン酸アルキルエーテル系単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体の中から選択された1種以上の化合物であることができる。また、上記スラリーがバインダをさらに含む場合、スラリー内のバインダの含量は0.1~30重量%であることができる。
【0069】
上記基板10は特に限定されず、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)ホイル形態の集電体であることもでき、全固体リチウム二次電池用負極または正極であることもできる。このあと、進行する光焼結工程及びスラリー特性を考慮して、基板10の柔軟性、形状、種類などを適宜選択することができる。
【0070】
上記スラリーを基板10上に形成する方法は、特に限定されず、バーコーティング、キャスティング、または噴霧などの方法で形成することができる。
【0071】
上記スラリーは、基板10上に50~5000mg/cm2のローディング重量(LW)で形成されることができる。
【0072】
基板10上に形成されたスラリーを乾燥させる方法は、特に限定されず、コンベクションオーブン(Convection Oven)などによって乾燥を行うことができる。上記乾燥は、50~200℃で行われることができ、または、80~120℃で行われることができる。また、上記乾燥は0.5時間~5時間の間行われることができ、または1時間~3時間の間行われることができる。
【0073】
上記酸化物系薄膜シート20はCIELAB色差計によるL値が80以下であることができる。上記L値は明るさを示し、L値が0である場合、完全な黒色、100である場合、完全な白色を意味する。有色の酸化物粒子22を含む上記酸化物系薄膜シート20は、CIELAB色差計によるL値が0~80であることができる。具体的に、上記酸化物系薄膜シート20のL値は添加される有色の酸化物粒子22の含量が増加するほど低くなり、暗い色相を帯びるようになる。
【0074】
酸化物系固体電解質シート200
一実施例による酸化物系固体電解質シート200は、上述した実施例のいずれか一つによる酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造される。例示的に、上記酸化物系固体電解質シート200は、酸化物系粒子を含む酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造されることができ、上記酸化物系薄膜シート20は、有色の酸化物粒子22を含むことができる。上記酸化物系薄膜シート20、光焼結、有色の酸化物粒子22などに対する詳細な説明は上述と重複されるため、その記載を省略する。
【0075】
上述したように、光焼結を用いると短期間に焼結を行うことが可能であり、これによって焼結度を調節することが可能である。
図1a~
図1dを参考してこれを具体的に説明する。焼結過程で粒子5間の粒界(粒子が互いに接している境界;GB)は
図1aに示したように焼結の初期段階時の点(Point)接触の形態で
図1b及び1cに示したように徐々に面(Surface)接触の形態で接触領域が拡張される。
図1dにおいては、焼結によって粒子間にはっきりとした境界がなくなって、粒子を区別することができなくなる。
図1aに示したように、それぞれの粒子が初期形状を有している点(Point)接触形態の場合、単なる接触を形成することによってイオンは移動時に大きな抵抗を受けるようになる。一方、焼結を介して接触面積が増加して面(Surface)接触形態になる場合、イオン移動経路の抵抗が低くなって速いイオン伝導が可能であり、粗密化によって耐久性が増加してシート形状が良く維持されることができる。
【0076】
一方、このような粒子間の接触領域拡張によって粒子間の空隙である気孔が減り、体積収縮が発生する。このとき、粒子間の接触形態及び粗大化の程度によって体積収縮率に差異が発生することがある。具体的に、焼結進行によって結晶粒界(Grain Boundary;GB)が形成される段階の場合、体積収縮率が3%以内に該当する一方(
図1b参考)、続いた焼結によって粒子間の接触面積増加及び粗大化が進行された段階の場合、体積収縮率が10%から20%内外まで増加するようになる(
図1c~
図1d参考)。このように、薄膜内の粒子の過度の粗大化及び体積収縮率の増加時、基板から剥離及び/または薄膜の亀裂が発生して機能が低下するなどの問題が発生する。
【0077】
これにより、焼結後の過度の粗大化及び体積収縮による剥離現象などが起こらないように接触形態を適宜調節するが、面接触状態を維持して粗密な構造及びイオン移動経路を確保してイオン伝導が行われる構造を有することが必要である(
図1b参考)。これに関して光焼結工程を適用する場合、高速で焼結が可能であり、焼結程度の調節によって粒子の形状を制御して
図1bのような粒子形態を形成することが可能である。また、基板の柔軟性、形状などを考慮して必要によって粒子を適宜粗大化することもできる。
【0078】
上記酸化物系固体電解質シート200は、上記酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造されることによって、
図2bに示したように上記酸化物系固体電解質シート200は、光焼結された有色の酸化物粒子222を含むことができる。上記光焼結された有色の酸化物粒子222は、上記有色の酸化物粒子22が光焼結されて粒子の形態、色、粒子間の連結構造などが互いに異なることができる。
【0079】
上記酸化物系固体電解質シート200は、光焼結されたリチウム伝導性酸化物系粒子211を含むことができる。上述したリチウム伝導性酸化物系粒子21を含む酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造される酸化物系固体電解質シート200において、光焼結されたリチウム伝導性酸化物系粒子211は上記リチウム伝導性酸化物系粒子21に対応することができる。上記光焼結されたリチウム伝導性酸化物系粒子211は、リチウム伝導性酸化物系粒子21が光焼結されて粒子の形態、色、粒子間の連結構造などが互いに異なることができる。
【0080】
上記光焼結は、パルス方式で行われることができる。上記パルス方式とは、光を発生させるランプなどの装置に強い電圧をパルスで印加して瞬間的に発生する強い光を照射する方式を意味し、照射されて供給された光エネルギーは熱を発生させて光焼結を誘導することができる。このとき、パルス方式で光を発生させる光焼結装置は、下記のように設定されたパルス条件などで作動することができる装置であれば、特に制限されない。
【0081】
上記光焼結時のパルス当たりの光照射時間(On-time)、作動電圧(V)、デューティサイクル(Duty cycle)(%)、サイクル回数、総パルスを構成する昇温周波数(Firing frequency、Hz)、繰り返し回数などは光焼結装置のコントローラ、パワーサプライなどを制御して適宜可変(調節)することができる。
【0082】
上記光焼結時のパルス当たりの光照射時間(On-time)は、1000~4500μsであることができる。具体的に、パルス当たりの光照射時間(On-time)は1200μs以上、または1400μs以上であることができ、4400μs以下、4200μs以下、または4000μs以下であることができる。
【0083】
上記光焼結時の作動電圧(V)は、100~450Vであることができる。具体的に、作動電圧(V)は、120V以上、または150V以上であることができ、440V以下、430V以下、または420V以下であることができる。
【0084】
上記光焼結時のデューティサイクル(%)は、10~100%であることができる。具体的に、デューティサイクル(%)は、20~90%であることができる。上記デューティサイクルは、パルス周期に対して上記パルス当たりの光照射時間(On-time)の割合(%)の値で計算されることができる。
【0085】
上記光焼結時のサイクル回数は、1~20回であることができる。具体的に、上記光焼結時にサイクル回数は、5~15回であることができる。
【0086】
上記光焼結時の光照射時間(On-time)、作動電圧(V)、デューティサイクル(%)、サイクル回数が上述した範囲内に制御される場合、下記式1によって算出される光焼結工程時間を短縮させることができて、短期間に焼結過程を行うことができる。
[式1]
Ts=C/Tr
上記式1において、Tsは光焼結工程時間(s)であり、Trは昇温周波数(Firing frequency、Hz)であり、Cは繰り返し回数である。
【0087】
上記光焼結時に総パルスを構成する昇温周波数(Firing frequency、Hz)は1~50Hzであることができる。具体的に、上記光焼結時に総パルスを構成する昇温周波数(Firing frequency、Hz)は10Hz以上であることができ、40Hz以下であることができる。
【0088】
上記光焼結時の繰り返し回数は、50~1000回であることができる。具体的に、上記光焼結時に繰り返し回数は、100回以上であることができ、400回以下であることができる。
【0089】
上記光焼結時の基板の温度は300℃以下に維持されることができる。具体的に、上記光焼結時の基板の温度は5~100℃、10~50℃、15~30℃で維持されることができる。さらに具体的に、上記光焼結時の基板の温度は実質的に20~25℃の室温(RT)で維持されることができる。上記基板の温度が光焼結時に上述した範囲内に維持される場合、基板に熱応力(Thermal Stress)が残留することを防止することができて、基板の破壊、耐久力減少などの問題が発生することを実質的に緩和することができ、制約なしに多様な種類の基板を選択して光焼結工程に適用することができる。
【0090】
上記光焼結時に照射された光エネルギーは、25~150J/s・cm2であることができる。具体的に、上記光焼結時に照射された光エネルギーは、40~120J/s・cm2であることができる。
【0091】
上記酸化物系固体電解質シート200は、0.25cm2以上の面積を有することができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200は、0.5~50cm2の面積を有することができる。
【0092】
上記酸化物系固体電解質シート200の幅及び長さはそれぞれ0.5cm以上であることができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200の幅及び長さはそれぞれ0.5~10cmであることができる。
【0093】
上記酸化物系固体電解質シートの面積、幅、長さなどが上述した範囲である場合、上記酸化物系固体電解質シートは、従来工程で製造される酸化物系固体電解質シートに対して相対的に大きい面積及び大きさを有するものであって、酸化物系固体電解質シートの製造の生産性、経済性などにさらに優れることができる。
【0094】
上記酸化物系固体電解質シート200は、10~300μmの厚さを有することができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200の厚さは、30μm~200μm、または30μm~100μmであることができる。上記酸化物系固体電解質シート200の厚さが上述した範囲内である場合、上記酸化物系固体電解質シートは、薄い厚さを有する薄膜としてイオン伝導性に優れ、全固体リチウム二次電池に適用時にさらに高いエネルギー密度を確保することができる。
【0095】
上記酸化物系薄膜シート20は、基板10上に位置することができ、上記酸化物系固体電解質シート200は上記酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造されることができ、以下で基板及び上記基板上に焼結された酸化物系固体電解質シートが形成された構造体を固体電解質構造体ともいう。すなわち、一実施例による固体電解質構造体は、基板;及び上記基板上の焼結された酸化物系固体電解質シートを含む。
【0096】
このとき、上記固体電解質構造体を上記酸化物系固体電解質シート200の方面でEDS分析時に、上記酸化物系固体電解質シート200に含まれた元素の含量は92at%以上であることができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200に含まれた元素の含量は95at%~100at%、99at%~99.999at%、または99.5at%~99.9at%であることができる。
【0097】
上記酸化物系固体電解質シート200がバインダを含むスラリーで製造される場合、上記酸化物系固体電解質シート200内に含まれたバインダバーニング(Burning)残存物の含量は10at%~80at%、または20at%~60at%であることができる。例示的に、上記バインダバーニング残存物は、炭素原子(C)であることができ、上記バインダに対する詳細な説明は上述と重複されるため、その記載を省略する。
【0098】
上記基板10に含まれた元素及び/またはバインダバーニング残存物の含量が上述した範囲内である場合、上記酸化物系固体電解質シート200が円滑な光焼結工程を介して製造されて上記基板及びシート間の元素拡散が抑制され、これにより基板及びシート間の界面形成及び抵抗増加が実質的に抑制されることを確認することができる。
【0099】
上記酸化物系固体電解質シート200内の元素分布はEDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)、EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)などの表面分析方法を介して添加された物質の含量を定量的に分析して確認することができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シートの表面について厚さ方面(すなわち、基板と当接する面を基準に平行な面)でEDS分析を実施して分析することができる。
【0100】
上記酸化物系固体電解質シート200は、空隙率が0.1~40%であることができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200は空隙率が1%以上、または8%以上であることができ、35%以下であることができる。上記酸化物系固体電解質シート200の空隙率が上述した範囲内である場合、光焼結が円滑に進行されたと判断することができる。
【0101】
上記酸化物系固体電解質シート200のイオン伝導度は10-6S/cm~10-2S/cmであることができ、具体的に10-5S/cm~10-2S/cmであることができ、さらに具体的には、10-5S/cm~10-3S/cmであることができる。このとき、上記イオン伝導度値は常温(25℃)で測定された値であることができる。
【0102】
上記酸化物系固体電解質シート200は、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上を含むことができる。
【0103】
上記酸化物系固体電解質シート200は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)などの遷移金属元素;セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)などのランタン族元素;亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)などのその他の金属元素;ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などの準金属元素;セレニウム(Se)などの非金属元素の中から選択された1種以上の元素を含むことができる。具体的に、上記酸化物系固体電解質シート200は、有色の酸化物粒子22を含む酸化物系薄膜シート20を光焼結して製造されることによって、有色の酸化物粒子22が含む元素をそのまま含むことができる。また、上記酸化物系固体電解質シート200は、上述した種類の元素をその酸化物の形態で含むことができる。上述した種類の元素及びその酸化物に対する詳細な説明は、上述と重複されるため、その記載を省略する。
【0104】
上記酸化物系固体電解質シート200は、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO4)及びチタン(Ti)の中から選択された1種以上;及びクロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレニウム(Se)の中から選択された1種以上の元素を含むことができる。
【0105】
全固体リチウム二次電池
一実施例による全固体リチウム二次電池は、上述した実施例のいずれか一つによる酸化物系固体電解質シート200を含む。
【0106】
他の一実施例による全固体リチウム二次電池は、上述した実施例のいずれか一つによる固体電解質構造体を含む。このとき、上記基板は全固体リチウム二次電池用正極または負極であることができる。具体的に、上記全固体リチウム二次電池は、全固体リチウム二次電池用正極及び負極間に上記酸化物系固体電解質シート200を含むことができる。
【0107】
上記正極は特に制限されず、上記正極は正極集電体及び上記正極集電体の少なくとも一面に配置された正極合剤層を含むことができる。
【0108】
上記正極集電体は、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタンまたはこれらの合金を含むことができる。上記正極集電体は、カーボン、ニッケル、チタン、銀で表面処理されたアルミニウム又はステンレス鋼を含むこともできる。上記正極集電体の厚さは、例示的に、10~50μmであることができるが、これに限定されない。
【0109】
上記正極合剤層は、正極活物質を含むことができる。上記正極活物質はリチウムイオンを可逆的にインターカレーション及びディインターカレーションできる化合物を含むことができる。
【0110】
例示的な実施例によると、上記正極活物質は、リチウム-ニッケル金属酸化物を含むことができる。上記リチウム-ニッケル金属酸化物は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)の少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0111】
一部実施例において、上記正極活物質または上記リチウム-ニッケル金属酸化物は、下記化学式1で表される層状構造又は結晶構造を含むことができる。
[化学式1]
LixNiaMbO2+z
一部実施例において、化学式1のうち、0.9≦x≦1.2、0.6≦a≦0.99、0.01≦b≦0.4、-0.5≦z≦0.1であることができる。上述したように、MはCo、Mn及び/またはAlを含むことができる。
【0112】
上記化学式1で表される化学構造は、正極活物質の層状構造または結晶構造内に含まれる結合関係を示し、他のさらなる元素を排除するものではない。例示的に、MはCo及び/またはMnを含み、Co及び/またはMnはNiとともに正極活物質の主活性元素(main active element)として提供されることができる。上記化学式1は、上記主活性元素の結合関係を表現するために提供されたものであり、さらなる元素の導入及び置換を包括する式として理解する必要がある。
【0113】
一実施例において、上記主活性元素に追加されて正極活物質または上記層状構造/結晶構造の化学的安定性を増進するための補助元素がさらに含まれることができる。上記補助元素は、上記層状構造/結晶構造内にともに混入されて結合を形成することができ、この場合にも化学式1で表される化学構造範囲内に含まれるものと理解する必要がある。
【0114】
上記補助元素は、例えば、Na、Mg、Ca、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Sr、Ba、Ra、PまたはZrの少なくとも一つを含むことができる。上記補助元素は、例えば、AlのようにCoまたはMnとともに正極活物質の容量/出力活性に寄与する補助活性元素として作用することもできる。
【0115】
例示的に、上記正極活物質または上記リチウム-ニッケル金属酸化物は下記の化学式1-1で表される層状構造又は結晶構造を含むことができる。
[化学式1-1]
LixNiaM1b1M2b2O2+z
化学式1-1のうち、M1はCo、Mn及び/またはAlを含むことができる。M2は上述した補助元素を含むことができる。化学式1-1のうち、0.9≦x≦1.2、0.6≦a≦0.99、0.01≦b1+b2≦0.4、-0.5≦z≦0.1であることができる。
【0116】
上記正極活物質は、コーティング元素及び/またはドーピング元素をさらに含むことができる。例えば、上述した補助元素と実質的に同一であるか、類似した元素がコーティング元素及び/またはドーピング元素で用いられることができる。例えば、上述した元素のうち、単独でまたは2以上が組み合わさってコーティング元素及び/またはドーピング元素で用いられることができる。
【0117】
上記コーティング元素及び/またはドーピング元素は、リチウム-ニッケル金属酸化物粒子の表面上に存在するか、上記リチウム-ニッケル金属酸化物粒子の表面を介して浸透して上記化学式1または化学式1-1で示す結合構造内に含まれることもできる。
【0118】
上記正極活物質は、ニッケル-コバルト-マンガン(NCM)系リチウム酸化物を含むことができる。この場合、上記NCM系リチウム酸化物は増加されたニッケル含量を有することができる。
【0119】
Niは、リチウム二次電池の出力及び容量に連関された遷移金属として提供されることができる。したがって、上述したように、高含量(High-Ni)組成を上記正極活物質に採用することによって、高容量正極及び高容量リチウム二次電池を提供することができる。
【0120】
しかし、Niの含量が増加するにつれて、相対的に正極及び/または二次電池の長期保存安定性、寿命安定性が低下することがあり、電解質との副反応も増加することがある。しかし、例示的な実施例によるとCoを含ませて電気伝導性を維持しながら、Mnを介して寿命安定性、容量維持特性を向上させることができる。
【0121】
上記NCM系リチウム酸化物のうち、Niの含量(例えば、ニッケル、コバルト及びマンガンの総モル数のうちニッケルのモル分率)は、0.6以上、0.7以上、または0.8以上であることができる。一部実施例において、Niの含量は0.8~0.95、0.82~0.95、0.83~0.95、0.84~0.95、0.85~0.95、または0.88~0.95であることができる。
【0122】
一部実施例において、上記正極活物質はリチウムコバルト酸化物系活物質、リチウムマンガン酸化物系活物質、リチウムニッケル酸化物系活物質またはリチウムリン酸鉄系(LFP)活物質(例示的に、LiFePO4)を含むこともできる。
【0123】
一部実施例において、上記正極活物質は例示的に化学式2で表される化学構造または結晶構造を有するMn-rich系活物質、LLO(Li rich layered oxide)/OLO(Over Lithiated Oxide)系活物質、またはCo-less系活物質を含むことができる。
[化学式2]
p[Li2MnO3]・(1-p)[LiqJO2]
化学式2のうち、0<p<1であり、0.9≦q≦1.2であり、JはMn、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Ti、Al、Mg及びBの少なくとも一つの元素を含むことができる。
【0124】
上記正極の製造方法は、特に限定されない。例示的に、溶媒内に上記正極活物質を混合して正極スラリーを製造することができる。上記正極スラリーを正極集電体にコーティングした後、乾燥及び圧延して正極合剤層を製造することができる。上記コーティング工程は、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、多層同時ダイコーティング、インプリンティング、ドクターブレードコーティング(Doctor Blade Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、バーコーティング(Bar Coating)、キャスティング(Casting)などの工法で行われることができ、これに限定されない。上記正極合剤層はバインダをさらに含むことができ、選択的に(optionally)導電材、増粘剤などをさらに含むことができる。
【0125】
上記正極合剤層の製造に用いられる溶媒の非制限的な例として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0126】
上記バインダはポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(Poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などを含むことができる。一実施例において、正極バインダとしてPVDF系列バインダを用いることができる。
【0127】
上記導電材は正極合剤層の導電性及び/またはリチウムイオンまたは電子の移動性を増進するために添加されることができる。例示的に、上記導電材は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラフェン、炭素ナノチューブ、VGCF(vapor-grown carbon fiber)、炭素繊維などの炭素系列導電材及び/またはスズ、酸化スズ、酸化チタン、LaSrCoO3、LaSrMnO3などのペロブスカイト(perovskite)物質などを含む金属系列導電材を含むことができるが、これに限定されない。
【0128】
一部実施例において、上記正極合剤層は増粘剤及び/または分散剤などをさらに含むことができる。一実施例として、上記正極合剤層は、例示的に、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの増粘剤を含むことができる。
【0129】
上記負極は特に制限されず、上記負極は負極集電体及び上記負極集電体の少なくとも一面に配置された負極合剤層を含むことができる。
【0130】
上記負極集電体の非制限的な例として、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材などが挙げられる。上記負極集電体の厚さは、例示的に、10~50μmであることができるが、これに限定されない。
【0131】
上記負極合剤層は、負極活物質を含むことができる。上記負極活物質としてリチウムイオンを吸着及び脱離できる物質が用いられることができる。例示的に、上記負極活物質は、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素繊維などの炭素系列材料;リチウム金属;リチウム合金;シリコン(Si)含有物質またはスズ(Sn)含有物質などが用いられることができる。
【0132】
上記非晶質炭素の例としてハードカーボン、ソフトカーボン、コークス、メゾカーボンマイクロビード(mesocarbon microbead:MCMB)、メゾフェースピッチ系炭素繊維(mesophase pitch-based carbon fiber:MPCF)などが挙げられる。
【0133】
上記結晶質炭素の例として天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB、黒鉛化MPCFなどの黒鉛系炭素が挙げられる。
【0134】
上記リチウム金属は、純粋なリチウム金属またはデンドライト成長抑制などのための保護層が形成されたリチウム金属が挙げられる。一実施例において、負極集電体上に蒸着またはコーティングされたリチウム金属含有層が負極活物質層で用いられることができる。一実施例において、リチウム薄膜層が負極活物質層で用いられることもできる。
【0135】
上記リチウム合金に含まれる元素として、アルミニウム、亜鉛、ビスマス、カドミウム、アンチモン、シリコン、ロウ、スズ、ガリウムまたはインジウムなどが挙げられる。
【0136】
上記シリコン含有物質は、より増加した容量特性を提供することができる。上記シリコン含有物質は、Si、SiOx(0<x<2)、金属ドーピングされたSiOx(0<x<2)、シリコン-炭素複合体などを含むことができる。上記金属は、リチウム及び/またはマグネシウムを含むことができ、金属ドーピングされたSiOx(0<x<2)は金属シリケートを含むことができる。
【0137】
上記負極の製造方法は、特に限定されない。例示的に、溶媒内に上記負極活物質を混合して負極スラリーを製造することができる。上記負極スラリーを負極集電体にコーティング/蒸着した後、乾燥及び圧延して負極合剤層を製造することができる。上記コーティング工程は、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、多層同時ダイコーティング、インプリンティング、ドクターブレードコーティング(Doctor Blade Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、バーコーティング(Bar Coating)、キャスティング(Casting)などの工法で行われることができ、これに限定されない。上記負極合剤層はバインダをさらに含むことができ、選択的に(optionally)導電体、増粘剤などをさらに含むことができる。
【0138】
一部実施例において、負極は蒸着/コーティング工程を介して形成されたリチウム金属形態の負極活物質層を含むこともできる。
【0139】
上記負極合剤用の溶媒の非制限定な例として、水、純水、脱イオン水、蒸留水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、n-プロパノール、t-ブタノールなどが挙げられる。
【0140】
上記負極のバインダ、導電材及び増粘剤として正極製造時に用いられることができる上述した物質が用いられることができる。
【0141】
一部実施例において、負極バインダとしてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)系バインダ、カルボキシメチルセルロース(CMC)系バインダ、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)系バインダ、ポリエチレンジオキシチオフェン(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)、PEDOT)系バインダなどが用いられることができる。
【0142】
上記全固体リチウム二次電池の製造方法は、特に限定されないが、集電体上に負極活物質または正極活物質を含むスラリーを形成した後、乾燥、圧延などの工程を経て負極または正極をそれぞれ製造し、上記負極または正極上に有色の酸化物粒子などを含むスラリーを形成した後、乾燥して形成された酸化物系薄膜シート20について光焼結工程を進行し、酸化物系固体電解質シート200を形成する方式を介して上記全固体リチウム二次電池を製造することができる。
【0143】
上記全固体リチウム二次電池が上述した酸化物系固体電解質シート200を含む場合、電解質の漏れによる発火危険性などがなく、高エネルギー密度などの優れた性能を有することができる。
【0144】
実施例
1.酸化物系薄膜シートの製造
(1)実施例
リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO;Li7La3Zr2O12)粒子及びバインダ(Electroscience社441)を含むスラリーに有色の酸化物粒子(Fe2O3)をリチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO;Li7La3Zr2O12)粒子及び有色の酸化物粒子(Fe2O3)の全体重量を基準に1重量%添加及び混合して酸化物系薄膜シート形成用スラリーを製造した。このとき、スラリーに含有されたパウダー(リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO;Li7La3Zr2O12)粒子及び有色の酸化物粒子(Fe2O3))とバインダの重量比率は1:1.5に設定した。
【0145】
上記スラリーを20μmの厚さを有する基板(Cu-foil集電体)に2000mg/cm2のローディング重量(LW)でキャスティングした後、100℃のコンベクションオーブン(Convection Oven)で2時間の間乾燥して約40μmの厚さを有する酸化物系薄膜シートを製造した。
【0146】
(2)比較例
有色の酸化物粒子を含まないスラリーを適用したことを除いて、上記実施例と同一の方式で比較例の酸化物系薄膜シートを製造した。
【0147】
2.酸化物系固体電解質シートの製造
上記実施例及び比較例の酸化物系薄膜シートを0.5cmx0.5cmの大きさでカッティングして光焼結装備(ノバセントリックス社PulseForge Invent)に装入した。この後、下記表1に示したような光焼結条件によって上記酸化物系薄膜シートについて光焼結を進行して基板上に約40μmの厚さを有する酸化物系固体電解質シートを有する固体電解質構造体を製造した。製造された実施例及び比較例の酸化物系固体電解質シートの表面を顕微鏡を介して観察してそれぞれ
図3a及び
図4a(10μm基準)、
図3b及び
図4b(50μm基準)に示した。このとき、基板の温度は20~25℃の実温(RT)で維持された。
【0148】
【0149】
3.酸化物系固体電解質シートの評価
(1)シート内の元素分布の分析
実施例で製造された固体電解質構造体についてSEM装備(SEC社SNE-4500M plus)に付着されたエネルギー分光検出器(EDS)を介して上記酸化物系固体電解質シートの方面でEDS分析を実施してレイヤーされたイメージ及びC K-α分析結果をそれぞれ
図5a及び
図5b(それぞれ実施例)と
図6a及び
図6b(それぞれ比較例)に示した。実施例及び比較例の具体的なシート内の元素分布の分析結果は下記表2に示したとおりである。
【0150】
【0151】
(2)シート多孔度分析
製造された酸化物系固体電解質シートについてImage J softwareを介して多孔度分析を実施して、実施例及び比較例のシート空隙分布形態を
図7a及び
図7bに示した。また、実施例及び比較例のシート空隙率(Porosity)値を下記表3に示した。
【0152】
【0153】
図3a~
図7b、表1及び表2を参考すると、有色の酸化物粒子を含まない酸化物系薄膜シートで製造された比較例の固体電解質構造体は、上記酸化物系固体電解質シートの方面でEDS分析時、光焼結を介した焼結が円滑に行われず、用いられたバインダ成分が光焼結の後にも依然として残存しているものと示され、光による熱処理によるバインダの炭化(carbonization)が発生せず、炭素成分が検出されなかった。このように残存したバインダは伝導度がほとんどない不導体であるため、電気化学的な特性の側面で効果的なイオン伝達を妨害することがある。
【0154】
一方、実施例の固体電解質構造体内で上記酸化物系固体電解質シートの方面でEDS分析時、バインダバーニング(Burning)残存物である炭素原子(C)が比較的高い含量で検出され、バインダ成分が除去された部分が多孔性構造を形成して比較的有色の酸化物粒子が含まれていないシートより高い空隙率を有するようになる(表3参考)。このような結果を考慮すると、有色の酸化物粒子を含む薄膜シートで製造された酸化物系固体電解質シートの場合、光焼結を介した焼結が円滑に進行されて適切な空隙率を有し、電気化学特性の側面で利点をもたらすことができ、比較的短い時間内に焼結されて集電体とシートとの間の元素拡散が防止されると判断される。
【0155】
(3)シート吸光度分析
有色の酸化物粒子の含量を異ならせて製造された酸化物系固体電解質シートについて波長200~1200nmでUV-Vis装備(Jasco社V-770)を介して吸光度分析を進行してその結果を
図8に示した。具体的に、V0は、有色の酸化物粒子を含まない酸化物系薄膜シートで製造されたシート(比較例)に対する吸光度分析結果であり、V1は、有色の酸化物粒子を酸化物系粒子の全体を基準に1重量%含む酸化物系薄膜シートで製造されたシート(実施例)に対する吸光度分析結果である。また、V5及びV10は、有色の酸化物粒子を酸化物系粒子の全体を基準にそれぞれ5重量%及び10重量%含む酸化物系薄膜シートで製造されたシートに対する吸光度分析結果である。
【0156】
図8を参考すると、有色の酸化物粒子を添加していないサンプル(V0)に比べて、有色の酸化物粒子を添加したサンプル(V1、V5及びV10)でさらに高い吸光度差異があると示された。これを考慮すると、有色の酸化物粒子を適宜添加する場合、広い波長領域における吸光度を必要に応じて容易に調節して光焼結特性を適宜制御することができると判断される。
【0157】
(4)シートイオン伝導度分析
製造された酸化物系固体電解質シートに対して常温(25℃)の大気雰囲気でポテンショスタット(VMP-300)を介して電気化学インピーダンス分析を実施して、実施例及び比較例の抵抗成分を測定して下記式2によってイオン伝導度を計算及び比較した結果を
図9に示した。
[式2]
σ=D/(RXS)
上記式2において、σはイオン伝導度値(S/cm)であり、Dは酸化物系固体電解質シートの厚さ(cm)であり、Rは測定されたインピーダンス抵抗値(1/S)であり、Sは酸化物系固体電解質シートの面積(cm
2)である。
【0158】
図9を参考すると、光焼結の後、有色の酸化物粒子を添加していない比較例のサンプルの場合、イオン伝導度は2.78×10
-7S/cm、有色の酸化物粒子を添加した実施例のサンプルの場合、イオン伝導度は1.29×10
-5S/cmで確認され、有色の酸化物粒子を添加した実施例のサンプルでイオン伝導特性が約50倍さらに優れた性能を示した。
【0159】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、その範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本開示の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0160】
10 基板
20 酸化物系薄膜シート
21 リチウム伝導性酸化物系粒子
22 有色の酸化物粒子
200 酸化物系固体電解質シート
211 光焼結されたリチウム伝導性酸化物系粒子
222 光焼結された有色の酸化物粒子