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特開2024-54088酸化物系薄膜焼結体、酸化物系固体電解質シート、及び全固体リチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054088
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】酸化物系薄膜焼結体、酸化物系固体電解質シート、及び全固体リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20240409BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240409BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240409BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240409BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20240409BHJP
   C04B 35/488 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C04B35/50
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/08
C04B35/488
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171269
(22)【出願日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0126399
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0068607
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム キョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン キュ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA04
5G301CA12
5G301CA13
5G301CA14
5G301CA16
5G301CA18
5G301CA19
5G301CA21
5G301CA22
5G301CA25
5G301CA27
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ20
(57)【要約】
【課題】本開示は、酸化物系薄膜焼結体、酸化物系固体電解質シート、及びそれを含む全固体リチウム二次電池に関する。
【解決手段】エネルギーバンドギャップが0.1~15eVである酸化物粒子を含み、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収し、表面粗さRaが0.1~3μmである、酸化物系薄膜焼結体を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物粒子を含む酸化物系薄膜焼結体であって、
前記酸化物系薄膜焼結体は、表面粗さRaが0.1~3μmであり、前記Raは表面の算術平均高さであり、
前記酸化物粒子は、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収し、エネルギーバンドギャップが0.1~15eVである、酸化物系薄膜焼結体。
【請求項2】
表面粗さSaが1~10μmである、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項3】
前記酸化物粒子は、隣接した他の酸化物粒子との接触面積(A)が次の式を満たす、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
A=πxa<3πr (1)
(前記式(1)中、rは、酸化物粒子と隣接した他の酸化物粒子との接触により生じる接触面の長軸半径であり、aは、前記接触面の短軸半径であって、0.1r≦x≦3rである。)
【請求項4】
前記酸化物系薄膜焼結体は気孔を含み、気孔度が1~70%である、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項5】
前記酸化物粒子の少なくとも1つはリチウム元素を含む、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項6】
前記酸化物粒子の少なくとも1つはリチウム以外の金属元素を含む、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項7】
前記酸化物粒子は2種以上である、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項8】
前記酸化物粒子は、ガーネット(Garnet)化合物、ナシコン(NASICON)化合物、及びペロブスカイト(Perovskite)化合物からなる群から選択される少なくとも1種のリチウムイオン伝導性酸化物粒子を含む、請求項1項に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項9】
前記酸化物粒子の少なくとも1つはLLZOである、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項10】
XPS分析の結果、50~60eVの結合エネルギー(binding Energy)値でピークを有する、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項11】
前記酸化物系薄膜焼結体は、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子をさらに含む、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項12】
前記有色の酸化物粒子は、遷移金属元素及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも一種の酸化物である、請求項11に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項13】
前記有色の酸化物粒子は、V、W、Fe、Bi、Zn、Co、Mn、Cu、Ce、As、Se、Sb、Cr、Ni、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Pr、Nd、Tb、及びErからなる群から選択される元素の少なくとも一種、または前記元素の少なくとも一種及びリチウムを含むか若しくは含まない酸化物粒子である、請求項11に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項14】
前記酸化物系薄膜焼結体は、300μm以下の厚さを有する、請求項1に記載の酸化物系薄膜焼結体。
【請求項15】
酸化物粒子を含む酸化物系薄膜焼結体を含み、
前記酸化物系薄膜焼結体の表面粗さRaが0.1~3μmであり、Raは表面の算術平均高さであり、
前記酸化物粒子は、10~1200nmの波長範囲の光エネルギーを吸収し、0.1~15eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する、酸化物系固体電解質シート。
【請求項16】
イオン伝導度が0.001~10mS/cmである、請求項15に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項17】
前記酸化物系薄膜焼結体の厚さが300μm以下である時に、硬度が10GPa以下である、請求項15に記載の酸化物系固体電解質シート。
【請求項18】
酸化物系固体電解質シートを含む二次電池であって、前記酸化物系固体電解質は、酸化物粒子を含む酸化物系薄膜焼結体を含み、前記酸化物系薄膜焼結体の表面粗さRaは0.1~3μmであり、前記Raは、表面の算術平均高さであり、
酸化物粒子は、10~1200nmの波長範囲の光エネルギーを吸収し、0.1~15eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する、酸化物系固体電解質シートを含む二次電池。
【請求項19】
前記酸化物系固体電解質シートは、0.001~10mS/cmのイオン伝導度を有する、請求項18に記載の二次電池。
【請求項20】
前記酸化物系薄膜焼結体は、300μm以下の厚さを有し、10GPa以下の硬度を有する、請求項18に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化物系薄膜焼結体、酸化物系固体電解質シート、及びそれを含む全固体リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心が大きくなっており、かかる環境問題を解決するための多様な取組みの一つとして、大気汚染の主原因の一つである化石燃料に基づく車両に代替するものや、太陽光、風力などの新再生可能エネルギーを貯蔵できる電池に基づくエネルギー貯蔵装置(Energy Storage System、ESS)を提供することが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の一目的は、光焼結工程により、優れた性能を有する酸化物系固体電解質シートを製造することができる酸化物系薄膜焼結体を提供することにある。
【0004】
本開示の他の目的は、光焼結により高速で焼結され、短期間で製造が可能であり、追加加工工程なしに薄膜化及び大面積化が可能な酸化物系固体電解質シートを提供することにある。
【0005】
本開示の他の目的は、基板の変形やシートの損傷などの問題が起こることなく製造され、耐久性などに優れた酸化物系固体電解質シートを提供することにある。
【0006】
本開示の他の目的は、優れた性能を有する酸化物系固体電解質シートを含み、安全性、エネルギー密度などが向上した全固体リチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、酸化物粒子を含む酸化物系薄膜焼結体であって、上記酸化物系薄膜焼結体は、表面粗さRaが0.1~3μmであり、上記Raは表面の算術平均高さであり、上記酸化物粒子は、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収し、エネルギーバンドギャップが0.1~15eVである。
【0008】
上記酸化物系薄膜焼結体は、表面粗さSaが1~10μmであることができる。
【0009】
上記酸化物粒子は、隣接した他の酸化物粒子との接触面積(A)が次式A=πxa<3πr(1)を満たすことができる。この時、上記式(1)中、rは、酸化物粒子と隣接した他の酸化物粒子との接触により生じる接触面の長軸半径であり、aは、上記接触面の短軸半径であって、0.1r≦x≦3rである。
【0010】
上記酸化物系薄膜焼結体は気孔を含み、気孔度が1~70%であることができる。
【0011】
上記酸化物粒子の少なくとも1つは、リチウム元素を含むことができる。
【0012】
上記酸化物粒子の少なくとも1つは、リチウム以外の金属元素を含むことができる。
【0013】
上記酸化物粒子は2種以上であることができる。
【0014】
上記酸化物粒子は、ガーネット(Garnet)化合物、ナシコン(NASICON)化合物、及びペロブスカイト(Perovskite)化合物からなる群から選択される少なくとも1種のリチウムイオン伝導性酸化物粒子を含むことができる。
【0015】
上記酸化物粒子の少なくとも1つはLLZOであることができる。
【0016】
XPS分析の結果、50~60eVの結合エネルギー(binding Energy)値でピークを有することができる。
【0017】
上記酸化物系薄膜焼結体は、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収することができる有色の酸化物粒子をさらに含むことができる。
【0018】
上記有色の酸化物粒子は、遷移金属元素及びランタノイド元素からなる群から選択される少なくとも一種の酸化物であることができる。
【0019】
上記有色の酸化物粒子は、V、W、Fe、Bi、Zn、Co、Mn、Cu、Ce、As、Se、Sb、Cr、Ni、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Pr、Nd、Tb、及びErからなる群から選択される元素の少なくとも一種、または上記元素の少なくとも一種及びリチウムを含む酸化物粒子であることができる。
【0020】
上記酸化物系薄膜焼結体は、300μm以下の厚さを有することができる。
【0021】
本開示は、また、酸化物粒子を含む酸化物系薄膜焼結体を含み、前記酸化物系薄膜焼結体の表面粗さRaが0.1~3μmであり、Raは表面の算術平均高さであり、前記酸化物粒子は、10~1200nmの波長範囲の光エネルギーを吸収し、0.1~15eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する、酸化物系固体電解質シートを提供する。
【0022】
上記酸化物系固体電解質シートは、イオン伝導度が0.001~10mS/cmであることができる。
【0023】
上記酸化物系薄膜は、厚さが300μm以下である時に、硬度が10GPa以下であることができる。
【0024】
本開示は、また、酸化物粒子を含む上記酸化物系固体電解質シートを含み、前記酸化物系薄膜焼結体の表面粗さRaが0.1~3μmであり、上記Raは表面の算術平均高さであり、上記酸化物粒子は10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収し、0.1~15eVの範囲のエネルギーバンドギャップを有する酸化物系固体電解質シートを含む二次電池提供する。
【0025】
上記酸化物系固体電解質シートは、0.001~10mS/cmのイオン伝導度を有することができる。
【0026】
上記酸化物系薄膜焼結体は、300μm以下の厚さを有し、硬度が10GPa以下であることができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示の一実現例によると、光焼結により、粒子間の連結形態、粒子形状、稠密度などが適切に形成されることで、耐久性及びイオン伝導度に優れており、基板からの剥離現象などが発生することなく酸化物系固体電解質シートを製造することができる酸化物系薄膜焼結体が提供される。
【0028】
本開示の一実現例によると、光焼結により高速で焼結され、リチウムなどの材料消失または基板破壊が起こることなく短期間で製造され、追加加工工程なしに薄膜化及び大面積化が可能な酸化物系薄膜焼結体が提供される。
【0029】
本開示の一実現例によると、相対的に短期間で焼結が進行され、基板とシートとの間における元素拡散による界面形成及び抵抗増加の問題が発生することを抑えることで、優れた特性を有する酸化物系固体電解質シートが提供される。
【0030】
本開示の一実現例によると、耐久性、イオン伝導度などの性能に優れた酸化物系固体電解質シートを含み、安全性、エネルギー密度などに優れた全固体リチウム二次電池が提供される。
【0031】
本開示の一部の実現例は、リチウム二次電池を含む多様な装置の構成に幅広く用いられることができる。本開示によるリチウム二次電池は、化石燃料に基づくエンジンを用いる車両の代案として、電気自動車(EV)に動力を供給し、太陽光、風力などの新再生可能エネルギーを貯蔵する電池に基づくエネルギー貯蔵システム(ESS)を提供することで、大気汚染及び温室ガス排出などの多様な悪影響を解決するために用いられることができる。
【0032】
本開示では、特定実施形態の実現の特定例のみが説明されるが、開示された実施形態及び他の実施形態の変形、改善、及び向上が、この特許文書の開示に基づいてなされることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】鉄系有色酸化物、バナジウム系有色酸化物、ホスフェート酸化物、及びリチウム伝導性ガラスの、光の波長による光吸水性を示したグラフである。
図2】焼結の進行につれて、粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
図3】酸化物粒子を用いて成形した成形体のSEM写真、及び酸化物粒子が点接触を成していることを概念的に示した図である。
図4図3の酸化物粒子からなる成形体を光焼結した酸化物系薄膜焼結体をSEM撮影した写真、及び粒子間に面接触を成しながら気孔を維持していることを概念的に示した図である。
図5図3の酸化物粒子からなる成形体を熱焼結した酸化物系薄膜焼結体をSEM撮影した写真、及び光焼結により粒子の粗大化が起こって体積収縮が発生したことを概念的に示した図である。
図6】本発明による酸化物系薄膜焼結体を固体電解質として含む全固体二次電池の概念図である。
図7】実施例3で製造した酸化物系薄膜焼結体をSEM撮影した写真を示し、ナノサイズ粒子間の接触が均一に行われて、3次元多孔性構造体を形成していることを示した図である。
図8】実施例1、2及び比較例1で得られた酸化物系薄膜焼結体の表面粗さを測定した写真であって、(a)は実施例1で得られた酸化物系薄膜焼結体であり、(b)は実施例2で得られた酸化物系薄膜焼結体であり、(c)は比較例1で得られた酸化物系焼結体である。
図9】実施例1、2及び比較例1の焼結により製造された酸化物系薄膜焼結体のインピーダンスを測定した結果を示したグラフである。
図10】実施例2及び比較例1の成形体及び酸化物系薄膜焼結体の表面を撮影した写真であって、(a)は実施例2の成形体を撮影した写真であり、(b)は実施例2の成形体を光焼結して得られた酸化物系薄膜焼結体を撮影した写真であり、(c)は比較例1の成形体を撮影した写真であり、(d)は比較例1の成形体を熱焼結して得られた酸化物系焼結体を撮影した写真である。
図11】比較例1及び実施例2の酸化物系薄膜焼結体を熱重量分析器(Thermogravimetric Analyzers、TGA)を用いて測定した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、多様な実施例を参照して本開示の好ましい実施形態を説明する。しかし、本開示の実施形態は様々な他の形態に変形可能であり、本開示の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0035】
本明細書において、「焼結(Sintering)」とは、外部エネルギーにより、粉末状の粒子が互いに強固に密着して固結する現象を意味し、例えば、粉末及びバインダーを含むスラリーを用いて所定の形状の成形体を製造した後、成形体に含まれている上記粉末状の粒子が熱的活性化過程を経て密着し、1つの塊で形成されることを含むことができる。
【0036】
本明細書において、「光焼結(Photosinteringまたはphotonic sintering)」とは、物質が有する固有の波長領域と光の波長領域の共鳴現象により現れる発熱現象、または吸収された光が熱に変換される光熱変換による熱伝達を活用して焼結することを意味する。
【0037】
本開示の一部の実現例において、光焼結に関連して用いられる「光(light)」という用語は、一般に電磁放射を意味し;酸化物粒子により吸収できる電磁放射線の「光」、特に、電磁放射線または最大1200nmの波長領域の光が用いられることができる。
【0038】
一部の実現例において、「光焼結」という用語は、光源からの光を用いて行われる材料層の熱処理を表し、例えば、熱処理は、粒子を固体塊に変換できる焼結、アニール、または任意の処理を含むことができる。一実現例として、光焼結は、粒子を完全に溶かさずに粒子を固体塊に変換することができる。
【0039】
一部の実現例において、上記光源は、例えば、光ランプ、フラッシュランプ、キセノンランプ、フラッシュチューブ、または、1200nmまでの領域、特に、10~1200nmの範囲の広範囲な波長範囲の強い光または電磁放射(electromagnetic radiation)を生成可能な他の光源を含むことができる。一例として、フラッシュランプまたはフラッシュチューブは、非常に強くかつ一貫性のない全スペクトルの白色光を非常に短時間で生成することができる。一例として、光源はキセノンランプを含むことができる。このように、光焼結は、フラッシュランプアニール(FLA)またはフラッシュランプ焼結(FLS)を含むことができる。
【0040】
一実現例において、焼結により全固体電池の酸化物系電解質薄膜シートを製造する場合、酸化物粉末を含むスラリーで製造された成形体を高温で焼結することで、酸化物系電解質薄膜シートを製造することができる。一例として、このような焼結は、「熱焼結(thermal sintering)」または「高温焼結(high temperature sintering)」ともいえる。
【0041】
かかる熱焼結は、通常、1000℃以上の高温で行われ、昇温速度の限界などにより、1~24時間の長時間にわたって進行される。そのため、熱焼結の時には、リチウムのような揮発性物質の揮発による物質の損失が発生することがあり、これにより、焼結体の密度を制御しにくいという問題がある。
【0042】
一方、金属酸化物膜を形成するにあたり、短時間で焼結可能な例示的な方法として、RTA(Rapid Thermal Annealing)、レーザー(Laser)焼結、またはマイクロウェーブ焼結などのような熱処理により短時間焼結が行われることができる。
【0043】
中でも、RTA焼結は、非常に速い時間内に昇温させて焼結する工程であり、短期間で焼結工程を行うことができるが、急速加熱に起因する熱衝撃により、基板の変形や破壊が発生することがあるまた、上記レーザー焼結は、レーザーが入射される領域が狭いため局所的に焼結され、これにより、長時間かかる可能性がある。また、マイクロウェーブ(Microwave)焼結は、焼結の深さ(Depth)が浅いため、成形体の表面のみに焼結が行われ、また、基板の選択が容易ではないことがある。
【0044】
本開示によると、一実現例として、従来の高温焼結により製造された焼結体と同等または同等以上のイオン伝導度の効果を有する薄膜焼結体を形成することができる。また、本開示によると、高温で長時間焼結した時に生じる問題が抑えられた薄膜焼結体を提供することができる。
【0045】
一実現例による酸化物系薄膜焼結体は、酸化物粒子を含むスラリーを用いて製造された成形体を光焼結することで製造されるものであることができる。本開示は、光焼結を行うことで、短時間で焼結段階を調節して焼結体を製造することができ、また、従来のような長時間の高温焼結工程により得られた酸化物系焼結体で現れる粒子粗大化現象を抑えるとともに、良好な粒子間接触性を維持することができる。
【0046】
上記成形体の製造のためのスラリーは酸化物粒子を含む。一実現例として、上記酸化物粒子は特に限定されず、リチウム元素を含む酸化物粒子であることができる。具体的に、上記酸化物粒子は、リチウム伝導性酸化物系粒子であることができる。上記リチウム伝導性酸化物系粒子は酸素元素を含み、リチウムイオンに対する伝導性を有する化合物粒子であって、粉末化した形態であることができる。また、リチウム元素の他に、ジルコニウム(Zr)、リン酸塩(PO)、及びチタン(Ti)のような他の金属元素を少なくとも1種以上含むリチウム伝導性酸化物系粒子であることができ、2種以上の酸化物粒子を含んでもよい。
【0047】
例えば、上記リチウム伝導性酸化物粒子は、ガーネット(Garnet)、ナシコン(NASICON)、ペロブスカイト(Perovskite)、リポン(LiPON)、チオ-リシコン(Thio-LISICON)の構造を有するもの(以下、それぞれガーネット形酸化物、ナシコン構造の酸化物、ペロブスカイト形酸化物、リポン形酸化物、チオ-リシコン酸化物ともいう)であることができ、さらに、これに限定するものではないが、LiLaCaTa12、LiLaANb12(AはCaまたはSr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、Li1+xTi2-xAlSi(PO3-y(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiAlZr2-x(PO(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1)、LiTiZr2-x(PO(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1)を含むことができる。
【0048】
上記ガーネット形酸化物は、リチウム、ランタン、ジルコニウム、及び酸素を含むものであり、Li7-3x+y-zLa3-yZr2-z12の化学式で表される酸化物であることができる。上記化学式中、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であり、AはLiの置換ドープ元素であり、BはLaの置換ドープ元素であり、MはZrの置換ドープ元素であり、上記A及びBは、それぞれ独立して、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カリウム(K)、セリウム(Ce)、及びルビジウム(Rb)からなる群から選択される少なくとも何れか1つであることができ、上記Mは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、及びタンタル(Ta)からなる群から選択される少なくとも何れか1つであることができる。上記ガーネット形酸化物は、これに限定するものではないが、例えば、LiLaZr12、LiLaNb12、LiLaTa12、またはLiLaBaTa12であることができる。
【0049】
上記ナシコン(NASICON)構造の酸化物としては、LAGP(Li1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦1))、LATP(Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦1))、及びLZP(Li1+4xZr2-x(PO(0≦x≦0.4))からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0050】
上記ペロブスカイト形酸化物としては、例えば、チタン酸リチウムランタンまたはニオブ酸リチウムランタン(LiLa(1-x)/3NbO)(0≦x≦1)が挙げられる。
【0051】
より具体的には、上記リチウム伝導性酸化物系粒子は、リチウムランタンジルコニウムオキサイド(LLZO)系化合物、リチウムランタンチタネートオキサイド(LLTO)系化合物、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸塩(LAGP)系化合物、リチウムアルミニウムチタンリン酸塩(LATP)系化合物から選択される1種以上の化合物であることができる。
【0052】
より具体的に、上記リチウム伝導性酸化物系粒子は、LiLaZr12の化学式で表され、ガーネット(Garnet)構造を有するリチウムランタンジルコニウムオキサイド(LLZO)系化合物であることができる。上記リチウム伝導性酸化物系粒子として、上述の種類の化合物、特に、LLZO系化合物を適用する場合、優れたイオン伝導度、リチウム金属との安定性、広い電位窓範囲などの特性を有する酸化物系固体電解質シートを製造することができる。
【0053】
理論上全ての光を反射できる完璧な白色を除いては、全ての色相の物質は光を吸収する特性を有するが、本開示においては、10~1200nmの波長領域の光を吸収する特性を有する酸化物粒子を含む。上記のような波長の光を照射すると、反射光と透過光を除いた光が上記酸化物粒子に吸収されて発熱されることで、酸化物粒子の温度が上昇するようになるが、光焼結は加熱速度(heating rate)が10~10K/secであって、短時間で高温に昇温させることができる。
【0054】
上記のような波長領域の光を複数回、例えば、数百回繰り返し照射すると、物質の温度が発熱により上昇し、上昇した物質の温度が維持され、焼結効果を得ることができる。このような点から、一部の例による光焼結は、従来の高温焼結工程と同等な焼結効果を得ることができ、光焼結は、短時間行うことにより酸化物粒子の焼結効果を提供することができる。よって、一部の実現例によると、長時間進行される高温焼結工程における体積収縮による粒子の粗大化を抑えることができ、収縮率が大きい場合に基材から剥離されるという問題も防止することができる。また、光焼結は、従来の高温焼結とは異なり、基板自体に対する加熱を引き起こさないため、基板の変形や破壊を防止することができる。
【0055】
上記酸化物粒子は、また、価電子帯(valance band)の電子(electron)がエネルギーを受けて伝導帯(conduction band)に移動しながら発生するエネルギー移動現象を活用する側面から、エネルギーバンドギャップが0.1~15eVであることができる。
【0056】
酸化物粒子の平均粒度D50は、1μm以下であってもよく、例えば750nm以下であってもよく、例えば600nm以下であってもよく、例えば500nm以下であってもよい。
【0057】
上記成形体を製造するスラリーは、酸化物粒子とともにバインダーを含むことができる。上記バインダーは、酸化物系粒子を適宜結合させ、基板を用いる場合には基板へのスラリーの接着力を向上させるものであり、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル樹脂(polyacrylic resin)、エチルセルロース(ethyl-cellulose)、メチルセルロース(methyl-cellulose)、ポリビニルブチラール樹脂(polyvinyl butyral resin)、ポリフッ化ビニリデン、カルボン酸アルキルエステル系、及びエチレン性不飽和カルボン酸重合体が挙げられ、これらのうち何れか1つが使用できることは言うまでもなく、2以上を混合して用いてもよい。
【0058】
上記バインダーは、これに限定するものではないが、例えば、固形分の全重量に対して0.1~30重量%の含量で含むことができる。
【0059】
上記スラリーは溶媒をさらに含むことができる。上記溶媒としては、特に限定しないが、例えば、アルコール、ケトン、アミド、エステル、エーテルなどの炭化水素系溶媒を用いることができる。上記溶媒の使用量は特に限定しないが、例えば、スラリーの全重量に対して、固形分と溶媒の重量比が30~40:60~70の重量比となるように用いられることができる。
【0060】
本開示の一部の実現例によるスラリーは、必要に応じて、有色の酸化物粒子をさらに含むことができる。上記「有色の酸化物粒子(Colored-Oxide Particles)とは、理論上全ての光を反射する完璧な白色(すなわち、CIELAB色差計によるL値が100である場合)を除いた全ての色相を有する酸化物粒子を意味する。よって、「有色(Colored)」は、CIELAB色差計によるL値が100未満である場合を意味し得る。
【0061】
上記有色の酸化物粒子としては、380~780nmの波長領域である可視光線領域の光エネルギーを吸収可能なものを用いることができる。本開示の一実現例において、上記有色の酸化物粒子を含む場合、光焼結工程で上記領域の光をより効果的に吸収することができるため、より円滑に光焼結を進行することができ、これにより、密で且つ耐久性などに優れた酸化物系薄膜焼結体を製造することができる。
【0062】
また、光焼結過程時に、かかる有色の酸化物粒子の種類、含量などの特性を調節することで、成形体に吸収される光の吸収率を調節することができ、これにより、光焼結により製造される酸化物系薄膜焼結体の物性を必要に応じて自由に調節することもできる。
【0063】
一実現例として、上記有色の酸化物粒子は、酸化物系粒子の全体を基準として、0.1~10重量%で含まれることができる。、一実現例として、上記有色の酸化物粒子は、酸化物系粒子の全体を基準として、0.5~5重量%含むことができる。他の実現例として、上記有色の酸化物粒子は、酸化物系粒子の全体を基準として、0.7~2重量%の含量で含まれることができる。上記有色の酸化物粒子が上記の範囲内の含量で含まれる場合、製造される酸化物系薄膜焼結体のイオン伝導性などのような特性に実質的に関与するリチウム伝導性酸化物系粒子などの酸化物粒子に影響を与えることなく光焼結を行うことができ、酸化物系薄膜焼結体の耐久性などの物性をより向上させることができる。
【0064】
上記有色の酸化物粒子は、明度の低い有色の酸化物を用いることが、吸光特性をより向上させることができ、例えば、遷移金属元素またはランタノイド元素の酸化物のうち1種以上を選択して用いることができ、具体的には、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、セリウム(Ce)、ヒ素(As)、セレン(Se)、アンチモン(Sb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、ロモリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、及びエルビウム(Er)からなる群から選択される少なくとも一種、または上記元素の少なくとも一種及びリチウムを含む酸化物粒子が挙げられる。
【0065】
上記のようなスラリーを用いて成形体を製造することができる。上記成形体は、基板上に上記スラリーを塗布して所定の形状に形成することができる。この時、上記基板は、スラリーの特性及び後続の光焼結工程などを考慮して、基板の柔軟性、形状、種類などを適宜選択することができる。上記基板は特に限定されず、例えば、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)箔の形態の集電体であることができ、全固体リチウム二次電池用負極または正極であってもよい。
【0066】
上記スラリーを基板上に塗布した後、スラリーを乾燥することで、成形体を製造することができる。上記乾燥は特に限定されず、例えば、コンベクションオーブン(Convection Oven)などにより行うことができる。
【0067】
上記乾燥は、一実現例として、50~200℃で行うことができ、一例として、80~120℃で行うことができる。また、上記乾燥は0.5時間~5時間行うことができ、一例として、1時間~3時間行うことができる。
【0068】
一実現例によると、所定の高温焼結によっては、一定の品質の焼結体を製造することができず、厚いバルク状に製造した後、研磨などの過程により所望の厚さを有するように追加の工程を適用する必要があったが、光焼結法を適用する場合、追加の工程がなくても薄膜の焼結体を得ることができるため、必要に応じて所望の厚さの焼結体が得られる成形体を製造することができる。したがって、上記スラリーを塗布することで形成される成形体の厚さは特に限定されず、光焼結により得られる焼結体の厚さが300μm以下となるように成形体の厚さを調節することができる。
【0069】
例えば、上記成形体は、スラリーの粘度及び酸化物粒子のサイズによって多様な厚さで製造することができ、例えば、10~100μmの厚さを有する成形体を製造することができる。さらに、10μm以下の厚さで製造することもでき、また、100μm以上の厚さで製造することができる。光の吸収率によって、300μm以下の厚さの焼結体が得られる成形体を製造することができる。
【0070】
上記スラリーを基板上に塗布する方法は特に限定されず、バーコート、キャスト、または噴霧などの方法により塗布することができる。上記スラリーは、基板上に50~5000mg/cmのローディング重量(LW)で塗布することができる。
【0071】
上記のような成形体に対して光焼結工程を適用することで、焼結体を製造することができる。上記成形体は、前述のように、酸化物粒子を含むことで光焼結を行うことができ、有色の酸化物粒子をさらに含む場合、光焼結効率を向上させることができる。
【0072】
これについては、図1に示す。図1は、リチウム伝導性ガラス、有色の酸化物粒子として鉄またはバナジウムを含むリチウム伝導性酸化物粒子、及び、ホスフェート酸化物に対して、各波長領域での吸光度を分析し、その結果を示したグラフである。上記吸光度は、UV-Vis装置(Jasco社製V-770)により分析することができる。
【0073】
Li伝導性ガラスは、ガラスの特性上、光の透過率が高いため、吸光度が可視光線領域で低い値を示し、ホスフェート酸化物を混合した電解質の物質は、HSV(h、s、v)(60゜、10%、{{{v}}}%)に類似した色相を示して、ガラス電解質に比べて全領域で高い吸光度の値を示し、バナジウム酸化物は黒い色相を示すものであって、これを固体電解質に混合すると薄い灰色を示し、高い吸光度を示す。一方、鉄酸化物は、暗い赤い色相を示すものであって、600nm以下の波長領域で特に高い吸光度を示した。
【0074】
このように、有色酸化物の色相によって、波長領域毎に異なる吸光度を示すことが分かる。上記の図1から分かるように、鉄系有色酸化物、バナジウム系有色酸化物、ホスフェート酸化物、及びリチウム伝導性ガラスは、何れも10~1200nmの波長領域の光エネルギー吸水性を有し、一例として、380~780nmの波長領域である可視光線領域の光エネルギーを吸収することができる。
【0075】
したがって、10~1200nm、一例として、380~780nmの波長領域の光エネルギーを吸収する特性を有する有色の酸化物をともに添加する場合、光エネルギー吸水性を用いて光焼結を行うことで、酸化物焼結体を製造することができる。
【0076】
本開示の一実現例による光焼結は、μs~msの短い時間に照射される10~1200nmの波長の光を、1ms~10分程度の時間に複数回繰り返し照射することで、一実現例による熱焼結と類似した粒子間の連結点を有する焼結体を製造することができる。
【0077】
このような光焼結を用いて上記成形体を焼結する場合、短期間で焼結体を得ることができ、さらに、焼結体の焼結度を調節することができる。この時、上記焼結度は、上記粒子間の連結点の程度で表現することができるものであり、図2(a)~(d)及び図3~5を参照して具体的に説明することができる。図2は、光焼結の進行による、酸化物系粒子間の接触状態の変化を概念的に示す図であり、図3~5は、図2の接触状態の変化に該当する焼結体を撮影したSEM写真を示す。
【0078】
焼結過程で、粒子間の結晶粒界(Grain Boundary、粒子が互いに接している境界)は、酸化物の初期段階では点(Point)接触の形態を成しており(図2(a)及び図3)、光焼結が進むにつれて、次第に接触面積が拡大されて面(Surface)接触を成し(図2(b)及び図2(c)及び図4)、終局的には粒子が粗大化される(図2(d)及び図5)。
【0079】
例えば、図2(a)及び図3のような点接触を成す場合には、単純接触であって、イオンの移動時に大きい抵抗を受けるようになる。
【0080】
これに対し、図2(b)及び図2(c)と図4に示したように、光焼結により焼結を進むにつれて結晶粒界(Grain Boundary;GB)が生成され、面接触の形態になって接触面積が増加する。このような粒子間の接触領域の拡張により粒子間の気孔が減少し、3%以下または10%以下程度の体積収縮が発生し、イオン移動経路の抵抗が低くなる。これにより、速いイオン伝導が可能であり、稠密化により耐久性が増加し、シート形状をよく維持することができる。
【0081】
しかし、図2(d)及び図5に示したように、焼結が続くにつれて粒子間の接触面積が過度に増加して粗大化された場合、例えば、体積収縮率が20%内外まで増加した場合には、基板からの剥離及び/または薄膜のクラックが発生し、機能が低下するなどの問題が発生する。
【0082】
したがって、一実現例による光焼結工程を適用して酸化物成形体を焼結する場合には、焼結工程などを適宜調節することで、過度な粗大化及び体積収縮により剥離現象などが起こることを防止するとともに、粒子間の面接触状態を維持し、密な構造及びイオン移動経路を確保してイオン伝導度を向上させることができる。
【0083】
さらに、光焼結工程を適用する場合、高速で焼結が可能であり、焼結程度を調節することで粒子の形状を制御し、図2bのような粒子形態を形成することが可能である。また、一例として、基板の柔軟性、形状などを考慮して、必要に応じて粒子を適宜粗大化することもできる。
【0084】
本開示の一実現例による光焼結により得られた酸化物系薄膜焼結体は、上記成形体に含まれている酸化物粒子の焼結体を含み、必要に応じて添加され得る有色の酸化物粒子の焼結体をさらに含むことができる。上記焼結体は、酸化物粒子の焼結体と有色の酸化物粒子の焼結体の全体を基準として0.1~10重量%で含まれることができる。
【0085】
焼結体中に含まれている有色の酸化物粒子の添加量は、必ずしもこれに限定するものではないが、例えば、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)の方法により、全酸化物系粒子における有色の酸化物粒子の分率を測定して確認することができる。
【0086】
したがって、本開示の一実現例による酸化物系薄膜焼結体は、エネルギーバンドギャップが0.1~15eVである酸化物粒子を含み、10~1200nmの波長領域の光エネルギーを吸収する特性を有する。
【0087】
これに限定するものではないが、例えば、知されたLLZOのエネルギーバンドギャップは4.4eVであり、Feの知られたエネルギーバンドギャップは1.4eVであり、ホスフェート酸化物(リン酸塩酸化物)のエネルギーバンドギャップは2.6~2.8eVの水準である。
【0088】
上記光焼結された酸化物系粒子は、酸化物系粒子が光焼結されたものであり、粒子の形態、色、粒子間の連結構造などが互いに異なることができる。また、成形体に有色の酸化物粒子を含む場合には、上記有色の酸化物粒子が光焼結されることで、粒子の形態、色、粒子間の連結構造などが互いに異なることができる。例えば、上記有色の酸化物粒子は、光焼結により形状が変化して存在しないことができ、また、有色酸化物が酸化物系粒子にドープされることができ、また、有色元素の金属元素の一部が置換され、他の化学構造に変化されることができる。
【0089】
上記酸化物系薄膜焼結体は、成形体を基板上に位置させた状態で光焼結することで製造されるものであり、上記基板に含まれている元素の一部が上記酸化物系薄膜焼結体に拡散することができる。これにより、上記酸化物系薄膜焼結体は、基板に含まれている元素を含むことができる。例えば、上記酸化物系薄膜焼結体中に含まれている基板の元素は、9at%以下であることができ、例えば、5at%以下、3at%以下、1at%以下、0.5at%以下、0.01at%以上、または0.001at%以上であることができる。
【0090】
上記成形体がバインダーを含むスラリーで製造されたものである場合、上記酸化物系薄膜焼結体の酸化物中には、バインダーのバーニング(Burning)残留物として、炭素(C)元素を含むことができる。上記バインダーのバーニング残留物である炭素(C)の含量は、特に限定されないが、例えば、1at%以上、10at%以上、または20at%以上であり、45at%以下、40at%以下、または30at%以下であることができる。
【0091】
上記基板に含まれている元素及び/またはバインダーのバーニング残留物の含量が上述の範囲内である場合、上記酸化物系薄膜焼結体が円滑な光焼結工程により製造され、上記基板及びシートの間の元素拡散が抑えられることで、基板及びシートの間の界面形成及び抵抗増加が実質的に抑えられることができる。
【0092】
上記酸化物系薄膜焼結体中の元素の分布は、EDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)、EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)などの表面分析方法により、添加された物質の含量を定量的に分析して測定することができる。一実現例として、上記酸化物系薄膜焼結体の表面に対して、厚さ方法の面(すなわち、基板と当接する面を基準として平行な面)にEDS分析を施すことで分析することができる。
【0093】
一実現例による光焼結により得られた酸化物系薄膜焼結体は、均一な表面を有し、追加の加工工程が求められない。よって、所望の厚さを有する酸化物系薄膜焼結体を得ることができ、薄膜に形成することができる。一実現例による酸化物系薄膜焼結体は、例えば、300μm以下の厚さを有することができ、一例として、前記酸化物系薄膜焼結体は、10μm以上、30μm以上、50μm以上、または70μm以上であることができ、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、または100μm以下であることができる。一実現例として、前記酸化物系薄膜焼結体は、10μm以上100μm以下の厚さを有することができる。上記酸化物系薄膜焼結体の厚さが上述の範囲内である場合、薄膜として優れたイオン伝導性を有し、全固体リチウム二次電池において固体電解質シートに適用した時に、より高いエネルギー密度を確保することができる。
【0094】
上記酸化物系薄膜焼結体は、幅、長さなどにおいて特に制限されずに適用されることができる。したがって、従来の高温焼結工程により製造される酸化物系薄膜焼結体と比べて、相対的に大きい面積を有する焼結体を製造することができ、酸化物系固体電解質シートの製造の生産性、経済性などをより向上させることができる。
【0095】
本開示の一実現例による光焼結により得られた酸化物系薄膜焼結体は、薄膜に製造することができ、所望の厚さの焼結体を得るための別の研磨などの工程が不要である。
【0096】
したがって、本開示による例示的な酸化物系薄膜焼結体は高い表面粗さを有し、例えば、2次元表面粗さRaが0.1~3μmであることができ、一例として、2次元表面粗さRaは1.8μm以下であることができ、さらに他の例として、2次元表面粗さRaは1.5μm以下であることができる。また、3次元表面粗さSaが1~10μmであることができ、一例として、上記3次元表面粗さSaは5μm以下であることができ、さらに他の例として、3次元表面粗さSaは2.25μm以下であることができる。、一実現例として、上記酸化物系薄膜焼結体は、Raが0.25~2.55μmであることができ、例えば、Raが0.50~1.8μm、0.75~1.50μm、または0.8~1.25μmであることができ、Saが1.25~9.80μm、例えば、Saが1.2~5.0μm、または1.25~2.25μmであることができる。上記光焼結による酸化物粒子間の接触により、表面の屈曲が、焼結前の粒子自体により提供される屈曲に比べて一部減少するようになる。これにより、上記のような範囲の表面粗さを有することができる。
【0097】
一方、本開示の一実現例の酸化物系薄膜焼結体は、焼結体中の酸化物粒子と、それに隣接した酸化物粒子との間に、点接触以上の接触面積を有するものであり、すなわち、面接触を形成する。このような2つの粒子が互いに接触する接触面積Aは、酸化物粒子と隣接した他の酸化物粒子との接触により生じる接触面の長軸半径をrとし、上記接触面の短軸半径をaとしたときに、πxaで表することができ、3πrより大きい値を有することができる。この時、上記xは0.1r≦x≦3rの関系を有する。上記接触面積Aは、酸化物粒子同士が互いに単純に物理的に接触されていることではなく、初期粒子の形状が変形して物理化学的な接触が起こったことを意味し、酸化物粒子が上述の範囲の接触面積を有することで、酸化物粒子の間に適切な水準の気孔を維持しながらも、クラックの発生が抑えられることができる。
【0098】
本実現例による酸化物系薄膜焼結体は、図2(b)及び図2(c)に示されたように、面接触をなし、且つ粒子の間に気孔を有するものであり、気孔度が1~70%であることができる。気孔度が70%を超える場合には、構造的に不安定になる恐れがある。上記気孔度は、例えば、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、または20%以上であることができ、また、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、または45%以下であることができる。本開示において、上記気孔度は、酸化物系薄膜焼結体のSEM断面に対してImage Jプログラムを用いたり、酸化物系薄膜焼結体に対してポロシメータを用いて測定されることができる。
【0099】
一方、一実現例の酸化物系薄膜焼結体はリチウム元素を含むものであり、XPS分析の結果、50~60eVの結合エネルギー(binding Energy)値でピークを有することができる。上記XPS分析の結果は、X-rayにて、Al k alpha、1486.68eV、900umのビームサイズを用いて、CAE Modeで測定したものであることができる。この時、Pass energyは150eV(survey Scan)及び20eV(Narrow Scan)であることができる。
【0100】
上記酸化物系薄膜焼結体は酸化物系固体電解質シートであることができ、本開示の一実現例によると、上記酸化物系固体電解質シートを含む全固体リチウム二次電池を提供する。上記全固体リチウム二次電池は、全固体リチウム二次電池用正極と負極との間に、上記酸化物系固体電解質シートを含むことができる。全固体リチウム二次電池の例示的な構造を図6に概略的に示した。図6に示したように、全固体リチウム二次電池は、正極、負極、及び上記正極と負極との間に酸化物系固体電解質シートを含むことができる。
【0101】
上記正極は特に制限されず、正極活物質として、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、またはリチウムニッケル酸化物(LiNiO)などのリチウム-遷移金属酸化物、またはこれらの遷移金属の一部が他の遷移金属で置換されたリチウム-遷移金属複合酸化物を含むことができる。
【0102】
例えば、上記リチウム-遷移金属酸化物はニッケル(Ni)を含み、コバルト(Co)またはマンガン(Mn)からなる群から選択される少なくとも1つをさらに含むことができる。例えば、上記正極活物質は、NCM系正極活物質;Mn-rich系正極活物質;またはLLO(Li rich layered oxides、Over Lithiated Oxides、Over-lithiated layered oxide、OLO、LLOs)系正極活物質を含むことができる。例えば、上記リチウム-遷移金属酸化物は、下記の式1~3で表される構造を有することができる。
【0103】
[式1]
LiNi1-b
【0104】
上記式1中、0.9≦a≦1.2、b≧0.5であり、Mは、Na、Mg、Ca、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba、及びZrの少なくとも1つである。一例として、上記式1中、0.95≦a≦1.08であり、bは、0.6以上、0.8以上、0.8超過、0.9以上、または0.98以上であることができる。一例として、上記式1中、Mは、Co、Mn、またはAlを含むことができ、一例として、Mは、Co及びMnを含み、選択的にAlをさらに含むことができる。
【0105】
[式2]
pLiMnO・(1-p)LiqJO
【0106】
上記式2中、0<p<1であり、0.9≦q≦1.2であり、Jは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Zn、Ti、Al、Mg、及びBからなる群から選択される1つ以上の元素であることができる。
【0107】
[式3]
Li1+x1-x
【0108】
上記式3中、0≦x≦0.4であり、Mは、Na、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba、及びZrの少なくとも1つである。一例として、上記式3中、Mは、Ni、Co、Mn、またはAlを含むことができ、一例として、Ni、Co、及びMnを含み、選択的にAlをさらに含むことができる。
【0109】
また、上記正極活物質は、LiFePOの化学式で表されるリチウムリン酸鉄(LFP)系正極活物質であってもよい。
【0110】
また、上記リチウム-遷移金属酸化物は、複数の一次粒子が造粒または凝集されて実質的に1つの粒子として形成された二次粒子であってもよく、単一粒子の形態であってもよい。上記単一粒子の形態は、例えば、複数の一次粒子(例えば、10個超過)が造粒または凝集されて実質的に1つの粒子として形成された二次粒子を排除する意味であることができる。但し、上記単一粒子の形態は、2~10個の範囲の単一粒子が互いに付着または密着され、実質的に単一体の形態(例えば、単一粒子に変換された構造)を有することを排除するのではない。一部の実施形態において、上記正極活物質は、二次粒子の形態と単一粒子の形態の両方を含んでもよい。
【0111】
上記負極は特に制限されず、負極活物質として、人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素系活物質、シリコン酸化物(SiOx;0<x<2)、Si-C複合体、純Siなどのケイ素系活物質、リチウム金属、リチウム-金属合金などの金属を含むことができる。
【0112】
一方、上記全固体リチウム二次電池は、無負極二次電池であることができる。すなわち、電池の組み立て過程で、負極集全体上に負極活物質層を形成していない電池であることができる。無負極リチウム二次電池を初期充電もしくは最初充電すると、メイン正極活物質と犠牲正極活物質は脱リチウム化され、正極活物質から生成されたリチウムイオンは負極集電体上で還元され、リチウムメタル層もしくは固体リチウム層のリチウム層を形成することができる。
【0113】
上記全固体リチウム二次電池の製造方法は特に限定されないが、負極または正極活物質を含むスラリーを集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延工程を経て負極または正極をそれぞれ製造し、上記負極または正極上に、有色の酸化物粒子などを含むスラリーを塗布してから乾燥することで形成された酸化物系薄膜シート20に対して光焼結工程を進行することにより酸化物系固体電解質シートを形成する方式により、上記全固体リチウム二次電池を製造することができる。
【0114】
上記全固体リチウム二次電池が上述の酸化物系固体電解質シートを含む場合、電解質の漏れによる発火危険性などがなく、高エネルギー密度などに優れた性能を有することができる。
【0115】
実施例
以下、本開示の一部の実現例を実施例を挙げてより具体的に説明する。以下の実施例は、本開示をより具体的に説明するためのものであり、これにより本開示が限定されるものではない。
【0116】
実施例1
リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO;LiLaZr12)粒子及びα-テルピネオール溶媒にPVB系高分子が分散されたバインダー溶液(Ferro社、Electroscience Lab、441)を4:1の重量比で混合し、スラリーを製造した。
【0117】
上記スラリーを、厚さ20μmの銅箔上に2000mg/cmのローディング重量(LW)でキャストした後、100℃のコンベクションオーブン(Convection Oven)にて2時間乾燥し、約60μmの厚さを有する酸化物系成形体を製造した。
【0118】
上記製造された酸化物系成形体を0.5cmX0.5cmのサイズにカットして試験片を製造した。
【0119】
上記酸化物系成形体の試験片を光焼結装置(ノバセントリックス社、PulseForge Invent)に装入した後、下記表1に示したような光焼結条件で光焼結し、酸化物系薄膜焼結体を製造した。
【0120】
【表1】
【0121】
実施例2
有色の酸化物粒子としてFeを、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)粒子の重量を基準として1重量%で添加及び混合したことを除き、実施例1と同様の方法によりスラリーを製造し、酸化物系成形体を製造して、試験片を製造した。
【0122】
また、上記酸化物系成形体の試験片を実施例1と同様の方法により光焼結し、酸化物系薄膜焼結体を製造した。
【0123】
実施例3
リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZO)の平均粒子のサイズが500nm以下であり、粒子の形状が球形であることを除いては、実施例2と同様の方法によりスラリーを製造し、酸化物系成形体を製造して、試験片を製造した。
【0124】
また、上記酸化物系成形体の試験片を実施例1と同様の方法により光焼結し、酸化物系薄膜焼結体を製造した。
【0125】
比較例1
実施例1で得られた酸化物系成形体と厚さが異なることを除き、実質的に同一の成形体の表面に、同一の組成のLLZOを母粉末として用いて試験片の表面及び側面が空気中に直接露出しないように覆い、これを電気炉内に装入した後、1150℃に昇温し、12時間維持して焼結することで酸化物系薄膜焼結体を製造した。
【0126】
[物性の分析]
実施例1、2及び比較例1の焼結体に対して物性をそれぞれ測定し、その結果を表2に示した。
【0127】
【表2】
【0128】
一方、実施例3で製造された酸化物系薄膜焼結体のSEM写真を図7に示した。図7から、ナノサイズ粒子間の接触が均一に行われて、3次元多孔性構造体を形成していることが分かる。
【0129】
-厚さ-
焼結体の厚さをマイクロメーターで測定し、表2に示した。上記表2から分かるように、実施例1及び2からは約40μmの厚さの酸化物系薄膜焼結体が得られ、比較例1の焼結体の厚さは、製造された焼結体の表面から200meshの紙やすりを用いて上記母粉末を除去してから焼結体の厚さを測定したものであって、約500μmの厚さを有することを確認した。
【0130】
-表面粗さRa及びSaの測定-
表2に示した表面粗さは、Olympus社のOLS4100を用いて、試料の表面にレーザーを照射する非接触式で2つの共焦点光学システムを用いて画像を実現し、表面粗さRaとSaを測定して示したものである。この時に得られた画像を図8(a)~(c)に示した。
【0131】
表2及び図8(a)~(c)から、実施例1及び2の焼結体シートは、スラリーを均一にキャストし、短時間で光焼結することで得られたものであって、熱焼結により得られた焼結体と比べてRaとSaが小さい値を示し、滑らかな表面を有することが分かった。このような低い表面粗さ値から、リチウムイオンの揮発が少なかったと評価され、これは、光焼結により、焼結過程における空気との反応が少なかったためであるといえる。
【0132】
これに対し、比較例1の焼結体は、高温での熱焼結により得られたものであり、焼結過程で、成形体の表面におけるリチウムの揮発を抑えるために母粉末で覆うことが求められ、かかる母粉末を除去することで、焼結体の表面が均一ではなく、高い表面粗さ値を示した。このような高い表面粗さ値を示すことから、熱焼結による焼結体は、表面の均一化のために別途加工のための研磨工程が必要であると評価された。
【0133】
-焼結体の気孔率-
実施例1、2及び比較例1で製造された焼結体に対して、Image Jソフトウェアにより多孔度の分析を実施した。
【0134】
上記表2に記載の焼結体の気孔率値から、実施例1及び2の焼結体は、熱焼結による比較例1と比べて高い気孔率を有していることが確認できた。このような高い気孔率は、粒子形状を維持しており、粒子粗大化現象が大きくないことを意味するといえる。
【0135】
-イオン伝導度-
イオン伝導度を下記数式2に基づいて測定し、表2に示す。
【数1】
【0136】
この時、lは試料の厚さを表し、Aは試料面積を表し、Rは抵抗値を表すものであり、上記抵抗値は、VMP-300インピーダンス測定器を用いて測定した。
【0137】
実施例1、2及び比較例1の焼結体のインピーダンスを測定した結果を図9に示した。図9から分かるように、有色酸化物が添加されていない実施例1の焼結体が、有色酸化物が添加された実施例2の焼結体と比べてより高い抵抗値を示した。
【0138】
そこで、同一のサンプルサイズに対して上記式(2)によりイオン伝導度を計算し、その結果を表2に示した。上記表2及び図9から分かるように、抵抗値が高い時に低いイオン伝導度を示した。
【0139】
一方、表2から、実施例1及び2のイオン伝導度値が比較例1と比べて底いことが分かる。特に、一実現例として、実施例1は実施例2と比べても大きい差を示すが、このような結果は、実施例2と異なって、有色酸化物を添加せずに光焼結を行うことによる結果である。しかし、実施例1は、40%の高い気孔率を示すにもかかわらずイオン伝導度値を有し、粒子間の単純接触を超える程度の焼結効果があることを示す。したがって、光焼結による焼結体もイオン伝導の効果を得ることができ、さらに、光焼結条件を調節することで、より高いイオン伝導度を有する焼結体を製造することができることが分かる。
【0140】
また、実施例2の焼結体は、熱焼結による比較例1の焼結体と比べて35%の高い気孔率を有するにもかかわらず、熱焼結による焼結体に準ずるレベルのイオン伝導度を示すことから、効果的に粒子間接触がなされていることが確認できる。
【0141】
[焼結体表面の特性]
実施例2の光焼結前の酸化物系成形体の試験片、光焼結後に得られた酸化物系薄膜焼結体、比較例1の熱焼結前の酸化物系成形体の試験片、及び熱焼結後に得られた酸化物系焼結体の表面を撮影し、これを図10(a)~(d)にそれぞれ示した。
【0142】
図10(a)は実施例2の光焼結前の成形体を撮影した写真であり、(b)は実施例2の成形体を光焼結した酸化物系薄膜焼結体を撮影した写真であり、(c)は比較例1の熱焼結前の成形体を撮影した写真であり、(d)は比較例1の成形体を熱焼結した酸化物系焼結体を撮影した写真である。
【0143】
図10(a)及び(b)から分かるように、実施例2の成形体は有色酸化物を含み、成形体の色相が白色ではない色相を有するものであり、光焼結された酸化物系薄膜焼結体は、光焼結により有色酸化物が焼結されたため白色を示した。
【0144】
一方、図10(c)及び(d)から分かるように、有色酸化物を含まない成形体は白色を示したが、熱焼結による酸化物系薄膜焼結体は、熱焼結過程で空気中の二酸化炭素と反応し、リチウムカーボネートが形成されることにより不純物膜が形成されるか、上記リチウムカーボネートが揮発するなどによって表面反応により色相が変化し、焼結体の表面にクラックが観察されるなど、不均一な形成を示した。
【0145】
比較例2の熱焼結による酸化物系焼結体は、粒子の粗大化により過焼結の様相を示す場合、粒界が必要以上に発達し、酸化物系焼結体の角及び表面にクラックが発生することが確認できた。このようなクラックは、過焼結により粗大粒子の間に粒界が発達することで、該当粒界に機械的応力が集中されたため現れたものである。
【0146】
一実現例として、実施例1及び2の光焼結による酸化物系薄膜焼結体ではクラックが発見されず、粒子の粗大化を引き起こさないため、小さい粒界が焼結体の全体にわたって均一に分散され、これにより、焼結体に応力が加えられてもエネルギーを分散させることができ、クラックの生成を抑えることができるため、機械的強度低下の問題が起こらないと評価される。
【0147】
[焼結体の熱的特性]
実施例2の酸化物系薄膜焼結体と実施例3の酸化物系薄膜焼結体を収得し、熱重量分析器を用いて温度の変化による試料の重量変化を確認した。
【0148】
図11を参照すると、分当たり10℃で昇温することによって実施例2と比較例1の薄膜焼結体は、重量減少の形状が類似し、実施例2及び比較例1の薄膜焼結体のいずれも400℃で見えるバインダー燃焼ピークが見えないため、バインダーの燃焼が完了された状態であることを確認することができる。したがって、実施例2のように、光焼結によっても熱焼結による比較例1の薄膜焼結体でのように焼結が起こったことが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11