(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054089
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】チューブ状フィルムの冷却リング
(51)【国際特許分類】
B29C 48/885 20190101AFI20240409BHJP
B29C 48/325 20190101ALI20240409BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240409BHJP
B29C 55/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B29C48/885
B29C48/325
B29C48/92
B29C55/28
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171321
(22)【出願日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】22199516.0
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523375881
【氏名又は名称】プラスト-コントロール ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Plast-Control GmbH
【住所又は居所原語表記】Walter-Freitag-Str. 15, 42899 Remscheid, Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン コナーマン
(72)【発明者】
【氏名】マーチン ヴィンハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】マルジム シャバニ
【テーマコード(参考)】
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AK02
4F207AR07
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KA19
4F207KK56
4F207KL88
4F207KM15
4F210AJ08
4F210AK02
4F210AR07
4F210AR12
4F210QA01
4F210QC03
4F210QC07
4F210QD25
4F210QD42
4F210QG04
4F210QG18
4F210QK05
4F210QK23
(57)【要約】
【課題】コンパクトで、厚さプロファイルを正確に制御できる冷却リングを提供する。
【解決手段】フィルムブロー装置においてチューブ状フィルム14を冷却するための冷却リング10であって、冷却ガス入口18と、冷却ガスを前記チューブ状フィルム14の周囲に分配するための分配システム20と、前記冷却ガスを前記チューブ状フィルム14に向かって半径方向に案内する供給ギャップ28と、前記チューブ状フィルム14を取り囲み、半径方向に対して所定の傾斜角で傾斜する環状ギャップ34を形成する冷却ガス出口と、前記環状ギャップ34内に円周方向に配置された、可撓性を有する調整リング36,36’と、前記調整リング36の局所的な半径方向の変形のため、個別に制御可能な調整要素44,44’のカラーと、を備え、前記調整リング36は、前記環状ギャップ34の、円周方向に連続的に延びている壁32,38’と係合して配置され、前記環状ギャップ34から出る冷却ガス流16に対する制限壁42を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムブロー装置においてチューブ状フィルム(14)を冷却するための冷却リング(10)であって、
冷却ガス入口(18)と、
冷却ガスを前記チューブ状フィルム(14)の周囲に分配するための分配システム(20)と、
前記冷却ガスを前記チューブ状フィルム(14)に向かって半径方向に案内する供給ギャップ(28)と、
前記チューブ状フィルム(14)を取り囲み、半径方向に対して所定の傾斜角で傾斜する環状ギャップ(34)を形成する冷却ガス出口と、
前記環状ギャップ(34)内に円周方向に配置された、可撓性を有する調整リング(36,36’)と、
前記調整リング(36)の局所的な半径方向の変形のため、個別に制御可能な調整要素(44,44’)のカラーと、を備え、
前記調整リング(36)は、前記環状ギャップ(34)の、円周方向に連続的に延びている壁(32,38’)と係合して配置され、前記環状ギャップ(34)から出る冷却ガス流(16)に対する制限壁(42)を形成する冷却リング。
【請求項2】
前記調整リング(36)は、ホルダーリング(38)にスライド可能に保持され、当該ホルダーリング(38)を越えて突出し、その端部が前記制限壁(42)を形成する請求項1に記載の冷却リング。
【請求項3】
前記調整リング(36)は、2つの平行な前記ホルダーリング(38,40)の間でスライド可能であり、当該ホルダーリング(38,40)の少なくとも1つを越えて突出し、その端部が前記制限壁(42)を形成する請求項2に記載の冷却リング。
【請求項4】
前記調整リング(36)は、前記環状ギャップ(34)の前記壁(38’)に堅固に取り付けられ、当該壁(38’)から前記環状ギャップ(34)内に自由に突出し、
前記調整要素(44)は、前記壁(38’)からオフセットされた位置で前記調整リング(36)と係合し、前記調整リング(36)に曲げモーメントを加えるように構成されている請求項1に記載の冷却リング。
【請求項5】
前記調整要素(44)は、前記環状ギャップ(34)の前記壁(32)をスライド可能に通過し、前記調整リング(36)に取り付けられる、半径方向に延びる調整ロッド(46)を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却リング。
【請求項6】
前記調整要素(44)は、前記調整リング(36’)の膨張可能なセグメント(50)を膨張させるように構成されている請求項1に記載の冷却リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムブロー装置におけるチューブ状フィルムを冷却するための冷却リングに関する。本発明の冷却リングは、冷却ガス入口と、冷却ガスをチューブ状フィルムの周囲に分配するための分配システムと、冷却ガスをチューブ状フィルムに向かって半径方向に案内する供給ギャップと、チューブ状フィルムを取り囲み、半径方向に対してある傾斜角で傾斜する環状ギャップを形成する冷却ガス出口と、環状ギャップ内に円周方向に配置された可撓性を有する調整リングと、調整リングの局所的な半径方向の変形のために個別に制御可能な調整要素のカラーと、を備える。
【背景技術】
【0002】
インフレーションフィルムの製造において、チューブ状フィルムを冷却するために上記タイプの冷却リングが供される。チューブ状フィルムは、空気などの冷却ガスがチューブ状フィルムの内側及び/又は外側から供給されることにより、環状ダイスから押し出される。内部に空気を吹き込むことによりチューブ状フィルムが膨張してフィルム気泡が形成され、熱可塑性フィルム素材が引き伸ばされる。延伸プロセスは、フィルム材料の温度が低下して材料の可塑性と伸縮性が失われる、いわゆるフロストラインで終了する。フィルムの冷却が速いほど、延伸量は少なくなり、フィルムの厚さは厚くなる。調整リングと調整要素は、チューブ状フィルムの全周上で均一なフィルム厚さが達成されるように、冷却作用を制御するために供される。
【0003】
独国特許文献DE4001287A1には、上記タイプの冷却リングが開示されている。当該文献に開示された可撓性を有する調整リングは、調整リングが冷却空気の流れを2つの部分流れに分離し、一方がフィルム気泡に沿って流れ、他方がフィルム気泡から離れる方向に向けられるように、垂直上方に開いた環状ギャップ内に配置され、したがって、冷却には寄与しない。調整要素によって、調整リングの各円周セグメントの半径方向の位置が調整され、冷却効果が制御される。周囲に沿った膜厚はフロストラインより上で測定され、調整要素を制御することによってフィードバックループで制御される。
【0004】
米国特許文献US5676893には冷却リングが開示され、水平に延びる供給ギャップ内に突出する垂直方向に移動可能なスライドのカラーによって調整リングが形成されている。個別に可動なスライドは、高さを局所的に調整でき、冷却空気の流路を多かれ少なかれ制限する環状ダムを形成するように互いに係合して配置される。冷却リングの半径方向内端に向かう途中で、冷却ガスの流れは滑らかになり、冷却ガスの流れは円周方向にのみ滑らかに変化する。
【0005】
欧州特許文献EP3132913A1には、供給ギャップの制限が可撓性調整リングを調整することによって達成される同様の冷却リングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許公開DE4001287A1
【特許文献2】米国特許US5676893
【特許文献3】欧州特許公開EP3132913A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コンパクトで、厚さプロファイルを正確に制御できる冷却リングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記目的を達成するために、調整リングは、環状ギャップの壁と係合して配置され、環状ギャップから出る冷却ガス流に対する、円周方向に連続的に延びる制限壁を形成する。
【0009】
調整要素を制御することにより、調整リングを半径方向に変形させることができ、これによって環状ギャップの有効幅が局所的に減少し、その結果、関連する円周セグメントでの冷却効果が減少し、冷却空気は、環状ギャップがより大きな流れ断面を有する隣接するセグメントに逃げる。これにより、ブロワーやポンプから供給される冷却ガスの流れを全てフィルムの冷却に無駄なく利用できるため、エネルギー消費が少ない。
【0010】
調整リングの可撓性により、冷却空気の有効流路を画定する調整リングの表面が円周方向に連続した形状を有し、冷却ガスの流れに渦が発生しないことが保証される。調整リングは、調整要素のそれぞれの位置に関係なく、冷却リングの壁に接触したままとなるように冷却リングの壁に保持されるため、実質的に漏れは生じない。断面の制限は冷却ガス出口で即座に発生するため、フィルム気泡の厚さプロファイルを高い角度分解能で制御できる。調整動作は半径方向に発生するため、冷却リングの高さ寸法はさらに小さくてもよい。
【0011】
本発明の有用な実施形態は、従属請求項に示されている。一の実施形態では、調整リングは、2つの平行なホルダーリングの間の空間内で案内され、調整要素の位置に応じて、調整要素によって多少の間隙から突出するように、調整要素によって変形されるように適合されている。この場合、ホルダーリングは、調整リングの局所的な半径方向の位置に関係なく、冷却リングの壁に調整リングが堅固に係合することを保証する。
【0012】
別の実施形態では、調整リングは、冷却リングの壁に堅固に保持される取付面を有し、調整要素は、取付面から離れた位置で調整リングと係合し、調整リングに曲げモーメントを加える。さらに別の実施形態では、調整リングはセグメントごとに膨張可能である。
【0013】
本発明は、内部冷却リングと外部冷却リングの両方に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る冷却リングの実施形態を示す半断面図である。
【
図2】本発明に係る冷却リングの実施形態を示す、部分断面を含む平面図である。
【
図3】本発明に係る冷却リングの他の実施形態の2つの異なる状態(その1)における要部拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る冷却リングの他の実施形態の2つの異なる状態(その2)における要部拡大断面図である。
【
図5】本発明に係る冷却リングのさらに他の実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、フィルムブロー装置の環状ダイ12のすぐ上に配置された冷却リング10の半径方向半分の断面を示し、環状ダイ12は仮想線で示されている。環状ダイ12からチューブ状フィルム14を押し出し、上方に引き抜き、内部にエアを吹き込んで放射状に膨張させてフィルム材料を延伸する。図示の例では、冷却リング10は、フィルムに沿って流れるようにチューブ状フィルム14に対して冷却ガス流16(矢印で示す)を向けることにより、延伸段階中にチューブ状フィルム14を冷却する働きをする外部冷却リングである。
【0016】
冷却リング10は、その外周に少なくとも1つの冷却ガス入口18を有する。ブロワーなどの冷却ガス源から供給される冷却ガスは、この冷却ガス入口18を介して、冷却リング10の内部の分配システム20に供給される。冷却リング10の外周領域において、分配システム20は、下部部材24と上部部材26によって画定され、冷却ガスがチューブ状フィルム14の全周に均一に広がることができる円周方向に延びるリング空間22を形成する。リング空間22は、半径方向の内側で水平な供給ギャップ28に接続され、これを介して冷却ガスが、チューブ状フィルム14に向かって半径方向内側に案内され、同時に流れが平滑化される。冷却リング10の下部部材24は、その内周縁において、チューブ状フィルム14の輪郭に厳密に一致し、冷却ガス流16をフィルムとほぼ平行な方向に偏向させる偏向ベル30を形成する。
【0017】
冷却リングの上部部材26には、軸方向に立ち上がる壁32が形成され、偏向ベル30とともに、半径方向に対して斜めに傾斜し、そこから冷却ガス流16が出る環状ギャップ34を画定する。環状ギャップ34には、シリコン等のゴム弾性材料からなる調整リング36が周方向に配置されている。ここで、上部部材26は、下部ホルダーリング38と上部ホルダーリング40を形成している。調整リング36は、その全周にわたってこれらのホルダーリング38,40間で半径方向に変位可能に案内される。調整リング36の半径方向の内縁は、ホルダーリング38,40間の隙間から突出し、その結果、調整リング36の内側の内壁42が、偏向ベル30とともに、冷却ガスの流れ16のための出口間隙の断面積を決定する。調整要素44のカラーは、冷却リング10の上部部材26に配置され、調整リング36の様々な円周方向セグメントにおける調整リング36の半径方向の位置を本質的に互いに独立して調整するのに供される。各調整要素44は調整ロッド46を有し、その一端は調整リング36に固定され、壁32を貫通し、調整ロッド46の半径方向の位置が調整できる関連する伝動装置を備えた駆動モータ48に向かって設けられている。
【0018】
図2の平面図には、偏向ベル30と壁32が、
図1のII-II線に沿う断面図で示されている。ここで示されるのは、上部ホルダーリング40と、上部ホルダーリング40の縁部を越えて半径方向の内側に突出する調整リング36の縁部である。さらに、図示する例では、調整リング36の内壁42の輪郭が正確に円形ではないことが分かる。
図2の上部では、調整ロッド46がある程度引き込まれており、その結果、内壁42は、冷却ガス流16の出口間隙の幅が拡大される湾曲部50を形成している。このようにして、チューブ状フィルム14の対応する円周領域において、より強力な冷却が達成され、その結果、フィルムの厚さがより厚くなる。
【0019】
しかしながら、調整リング36の材料の可撓性により、内壁42の輪郭は、全周にわたって、冷却ガス流16に渦を生じさせる可能性のある不連続性のない連続した(かつ微分可能な)曲線であることが保証される。調整要素44用の電子コントローラ(ここでは図示せず)は、隣接する調整ロッド46の各対の半径方向位置の差が制限されるように設計することができ、その結果、調整リング36の過剰な(剪断)変形が回避される。
【0020】
図1では、調整リング36は長方形の断面を有するように示されているが、内壁42の領域で適切に丸くすることもできる。この実施形態では、
図1に示すように、冷却リング10の下部部材24は、冷却ガス用の第2の出口ギャップ52を形成する。出口ギャップ52は、冷却ガス流16の一部が環状ダイ12の口で直接開口している出口ギャップ52にそらされるように、その外周にある開口部54のカラーを介して供給ギャップ28に接続されている。
【0021】
図3および
図4は、改変された実施形態による冷却リング10’の一部を示す。この実施形態は、
図1及び
図2による実施形態とは次の点で異なる。
図1及び
図2との相違点は、調整リング36が下部ホルダーリング38の壁38’に堅固に取り付けられており、上部ホルダーリング40を省略できる点だけである。その代わりに、この場合は、特定の流線形プロファイルを有する調整リング36が、環状ギャップ34内に自由に突出する。調整ロッド46の取り付け点は、調整リング36と壁32との間の接触面からオフセットされているため、調整ロッド46は、調整リング36に曲げモーメントを加え、これにより、
図4に示すように例えば調整リング36を変形させることが可能になる。ここには示されていない別の実施形態では、調整リング36も壁32’上でスライド可能であってもよい。
【0022】
図5は、円周方向に一連の膨張可能セグメント50に分割された調整リング36’を有する冷却リング10’’を示す。この場合、調整要素48’は、セグメント50内の圧力を個別に制御できる空気圧要素として構成される。
【符号の説明】
【0023】
10…冷却リング
12…環状ダイ
14…チューブ状フィルム
16…冷却ガス流
18…冷却ガス入口
20…分配システム
22…リング空間
24…下部部材
26…上部部材
28…供給ギャップ
30…偏向ベル
32…壁
34…環状ギャップ
36…調整リング
38…下部ホルダーリング
40…上部ホルダーリング
42…内壁(制限壁)
44…調整要素
46…調整ロッド
48…駆動モータ
50…湾曲部(セグメント)
52…出口ギャップ
54…開口部