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特開2024-54107エッチングチャンバーをコーティングする為の粉末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054107
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】エッチングチャンバーをコーティングする為の粉末
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/11 20160101AFI20240409BHJP
   C01F 17/218 20200101ALI20240409BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240409BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C23C4/11
C01F17/218
H01L21/302 101G
C04B41/87 K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024001523
(22)【出願日】2024-01-09
(62)【分割の表示】P 2020541436の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】1850821
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン-ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】アラン アリマン
(72)【発明者】
【氏名】ハワード ウォーラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プラズマによる沈着に好適な粉末、そのような粉末を製造する為の方法、及び上記粉末のプラズマ溶射により得られるコーティング物、より詳細には半導体エッチングチャンバーコーティング用のコーティング物を提供する。
【解決手段】粒子の粉末であって、該粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を有し、該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして、99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含み、該粉末は、15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD90、及び、2未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び90%超の相対密度を有する、前記粉末。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された粒子の粉末であって、該粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を有し、該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして、99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含み、
該粉末は、
15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD90、及び、2未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び
90%超の相対密度
を有し、前記粉末のパーセンタイルDは、該粉末における粒子サイズの累積分布曲線における数量パーセント、n%、に対応する粒子サイズであり、該粒子サイズは昇順で分類される、前記粉末。
【請求項2】
5%超である、5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセント、及び/又は
10μm未満であるメジアン粒子サイズ(D50)、及び/又は
25μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズ(D90)、及び/又は
40μm未満である99.5パーセンタイルの粒子サイズ(D99.5)、及び/又は
1.5未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10
を有する、請求項1記載の粉末。
【請求項3】
該粉末のメジアン粒子サイズ(D50)が8μm未満である、請求項1又は2記載の粉末。
【請求項4】
酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%超のYb及び/又はY及び/又はYAl12及び/又はオキシフッ化イットリウム、好ましくは式Y(式中、aは1であり、bは0.7~1.1であり、cは1~1.5である)、好ましくは、YOF及びYから選択されるオキシフッ化物、又はこれらのオキシフッ化物の混合物、を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の粉末。
【請求項5】
下記の工程を含む、請求項1~4のいずれか1項記載の粉末の製造方法
a)粒子供給物を顆粒化して、20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する顆粒粉末を得る工程であり、前記粒子供給物が、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含む、前記工程
b)前記顆粒粉末を、キャリヤガスを介して、少なくとも1つの注入開口部を通して、注入条件下、プラズマガンにより発生されたプラズマジェットに注入する工程であり、
前記注入条件は、
溶融された小滴を得るように、注入された顆粒の50数量%超をバーストさせ、
注入された顆粒粉末の流速が該プラズマガンの電力1kW当たり2g/分未満であり、及び、
該注入開口部経由で、好ましくは注入開口部毎により注入された顆粒の質量と、前記注入開口部の表面積との比は、前記注入開口部の表面積1mm当たり16g/分超である、前記工程
c)前記溶融された小滴を冷却して、請求項1~4のいずれか1項記載の供給粉末を得る工程、及び
d)任意的に、前記供給粉末に粒子サイズ選択を実施する工程。
【請求項6】
注入された顆粒の70%超(数量パーセントとして)をバーストさせるように前記注入条件が決定される、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
注入された顆粒の90%超(数量パーセントとして)をバーストさせるように前記注入条件が決定される、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程b)において、前記注入条件は、40~65kWの電力を有し、及び各注入開口部経由で注入された顆粒の質量が注入開口部の表面積1mm当たり10g/分超であるプラズマジェットを発生するプラズマガンと同一の、バーストする顆粒の割合をもたらすように適合される、請求項5~7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
各注入開口部経由で、注入された顆粒の質量が、前記注入開口部の表面積1mm当たり15g/分超である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記注入開口部は、該注入開口部の等価直径の少なくとも1倍超の長さを有する注入チャンネルを規定する、請求項5~9のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記長さが、前記等価直径の少なくとも2倍超である、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
工程b)において、顆粒粉末の流速は、プラズマガン電力1kW当たり3g/分未満である、請求項5~11のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記顆粒化が噴霧を含む、請求項5~12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項記載の粉末又は請求項5~13のいずれか1項に従い製造された粉末を熱溶射する工程を含む、熱溶射プロセス。
【請求項15】
半導体用処理チャンバーであり、前記チャンバーがコーティングにより保護された壁を有し、該コーティングは、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%を超える、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウムを含み、及び1.5%以下の空隙率を有し、及び、前記コーティングは請求項1~4のいずれか1項記載の粉末又は請求項5~13のいずれか1項に従い製造された粉末を熱溶射して得られたものである、前記半導体用処理チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマによる沈着に好適な粉末、そのような粉末を製造する為の方法、及び上記粉末のプラズマ溶射により得られるコーティング物、より詳細には半導体エッチングチャンバーコーティング用のコーティング物、に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、例えばシリコンウエハを処理する(例えば、プラズマエッチングにより)のに使用されるチャンバーの内面は、プラズマ溶射により適用されるセラミックコーティングを用いて慣用的に保護される。このコーティングは、ハロゲンを含むプラズマ、又はきわめて腐食性の環境に対して高い耐性を有する必要がある。プラズマ溶射は、供給粉末として、高い流動性を示す粉末、及び溶射期間中に適切な加熱を可能にする粒子形態を必要とする。より詳細には、粒子のサイズは、該粒子がプラズマを貫通するのに十分であり、且つ蒸発損失を制限するのに十分でなければならない。
【0003】
例えば、熱分解性又は化学的製造プロセスにより直接得られる非常に微細な粉末は、大型(及び多孔性)の凝集物、より詳細には焼結凝集物、を形成するための緻密化という追加工程のないプラズマ溶射には、好適ではない。プラズマ溶射は凝集物全ての溶融をもたらすものではないため、得られるコーティング物は多孔性を示す。焼結凝集物の溶射により得られたコーティングの総空隙率は、典型的に、2~3%であり、半導体エッチングチャンバーの内面を保護するのに適さない。より詳細には、米国特許第6,916,534号明細書、米国特許出願公開第2007/077363号明細書、又は米国特許出願公開第2008/0112873号明細書に記載されている焼結粉末は、熱溶射によって非常に高密度のコーティングを実現することができない。更に、多孔性の凝集物から得られるコーティング物は、時間の経過とともに、腐食性の環境に曝露されると粒子を放出する結果となる。
【0004】
米国特許第7,931,836号明細書又は米国特許出願公開第2011/0129399号明細書は、自由落下する際に固化する液状の小滴を形成する為のプラズマ溶融に起因する粒子粉末について開示する。いくつかの実施態様では、出発物質の粒子の90%超が、完全又は部分的に液状形態に変換されうる。得られた粉末の嵩密度は、1.2~2.2g/cmである。
【0005】
上記で引用された出願において、溶融塊の研削加工(グラインディング)により得られた粉末も、研削加工(グラインディング)工程中に不純物が添加されるので適さない。
【0006】
希土類金属酸化物、及び/又は酸化ハフニウム、及び/又は酸化イットリウム-アルミニウムは、化学的攻撃に対して特有の高い耐性を示すことが公知である。しかしながら、それらが有する溶融温度は高く、また熱拡散性は低い。それ故に、プラズマ溶射により、これらの粒子から非常に高密度のコーティング物を得るのは困難である。
【0007】
これらの問題を解決する為に、国際公開第2014/083544号パンフレットは、粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を示す粒子の粉末を記載しており、該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%を超える、希土類金属酸化物、及び/又は酸化ハフニウム、及び/又は酸化アルミニウムを含み、
10~40ミクロンのメジアン粒子サイズD50、及び3未満の、D50に対するサイズ分散インデックス(D90-D10)/D50
5%未満である、5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセント、及び
0.2未満の嵩密度分散インデックス(P<50-P)/P
を有し、
但し、1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積が、該粉末のバルク容積の10%未満であり、
該粉末のパーセンタイルDは、該粉末中の粒子サイズの累積分布曲線に基づき、数量パーセント、n%、に対応する粒子サイズであり、該粒子サイズは昇順で分類され、
密度P<50は、D50以下のサイズを有する粒子の画分の嵩密度であり、密度Pは、粉末の嵩密度である、
粒子の粉末を記載している。
【0008】
この粉末は、プラズマにより、高い生産性を伴い効率的に溶射されることができ、また非常に純粋且つきわめて高密度のコーティング物をもたらす。
【0009】
それにもかかわらず、耐浸食性の向上及び欠陥数の低下を示す半導体エッチングチャンバーコーティングについてなおも必要性が存在する。
【0010】
国際公開第2014/083544号パンフレットの粉末の長所を保持しつつ、この必要性を満たすことが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0011】
これを目的として、本発明は、溶融された粒子(以後「供給粒子」)の粉末(以後「供給粉末」)であって、上記粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を示し、上記粉末が、酸化物に基づく質量パーセントとして、99.8%超えの希土類金属酸化物、例えばYb若しくはY及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウムを含み、
15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD90、及び2未満である、10パーセンタイルの粒子サイズD10に対するサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び
90%を上回る、好ましくは95%を上回る、相対密度
を有し、1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積が、粉末のバルク容積の好ましくは10%未満である、前記粉末を提供する。
【0012】
それ故に、本発明に従う供給粉末は、大部分が球状粒子から構成される非常に純粋な粉末である。この粉末は、より詳細には、D10に対する粒子のサイズ分散が非常に低く、30μmを上回るサイズを有する粒子が少量であり、そして相対密度が非常に高いことから特筆される。
【0013】
この後者の特性は、中空粒子の量が非常に低いこと、又は実質的にゼロであることさえも示唆する。粒子サイズ分布は、溶射期間中の溶融が非常に均一であることを保証する。
【0014】
最後に、本発明に従う供給粉末は高流動性を示し、従って複雑な供給デバイスを用いずにコーティング物が製造されるのを可能にする。
【0015】
本発明では、「酸化物」という語は、単純な酸化物の他、より複雑な酸化物、例えばオキシフッ化物、も含みうるが、例としては、オキシフッ化イットリウム又はオキシフッ化イッテルビウムである。
【0016】
本発明に基づく供給粉末は、下記の任意的な特性のうちの1以上も含みうる。
数量として95%を超える、好ましくは99%を超える、好ましくは99.5%を超える、上記粒子が、0.87以上の、好ましくは0.90以上の、真円度を有する、
該粉末は、99.9%を超える、99.950%を超える、99.990%を超える、好ましくは99.999%を超える、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、より詳細にはYAG、を含み;それ故に、他の酸化物の量は非常に低いため本発明に従う供給粉末にて得られる結果において有意な効果を有することはできない、
該酸化物は、該粉末の質量の98%超、99%超、99.5%超、99.9%超、99.95%超、99.985%超、又は99.99%超を占める、
上記希土類金属は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、及びランタニドからなる群から選択され、
好ましくは、希土類金属は、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジミウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)から選択され、好ましくは、上記希土類金属はイットリウムである、
酸化アルミニウムは、酸化イットリウム-アルミニウム複合物、好ましくはYAG(イットリウム-アルミニウムガーネットYAl12、およそ58質量%の酸化イットリウムを含む)、及び/又はYAP(イットリウム-アルミニウムペロブスカイト、およそ68.9質量%の酸化イットリウムを含む)、
5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセントは、5%を上回る、好ましくは10%を上回る、
0.5μm以上のサイズを有する粒子の数量パーセントは、10%を上回る、
該粉末中のメジアン粒子サイズ(D50)は、0.5μmを上回り、好ましくは1μmを上回り、若しくは2μmさえも上回り、及び/又は13μm未満、好ましくは12μm未満、好ましくは10μm未満若しくは8μm未満、である、
10パーセンタイルの粒子サイズ(D10)が、0.1μmを上回り、好ましくは0.5μmを上回り、好ましくは1μmを上回り、又は2μmを上回る、
90パーセンタイルの粒子サイズ(D90)が、25μm未満、好ましくは20μm未満、好ましくは15μm未満、である、
99.5パーセンタイルの粒子サイズ(D99.5)が、40μm未満、好ましくは30μm未満、である、
サイズ分散インデックス(D90-D10)/D10が、好ましくは1.5未満である、これは優れたコーティング密度を有利にもたらす、
好ましくは、該粉末は、単峰性(monomodal)の粒子サイズ分布、換言すれば単一のメインピークを示す、
該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%超えの、Yb及び/若しくはY及び/若しくはYAl12、並びに/又はオキシフッ化イットリウム、好ましくは式Y(式中、aは1に等しく、bは0.7~1.1であり、cは1~1.5である)、好ましくは、YOF及びYから選択されるオキシフッ化物、又はこれらのオキシフッ化物の混合物、を含む、
1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は、該粉末のバルク容積の8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3.5%未満、である、
該供給粉末の比表面積は、好ましくは0.4m/g未満、好ましくは0.3m/g未満、である。
【0017】
本発明は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法であって、下記の連続的な工程を含む、方法に関係する。
a)粒子供給物を顆粒化して、20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する顆粒粉末を得ること、ここで上記粒子供給物は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%を超える、希土類金属酸化物、及び/又は酸化ハフニウム、及び/又は酸化アルミニウムを含む、
b)注入された顆粒の数量によるパーセントとして50数量%超、好ましくは60数量%超、好ましくは70数量%超、好ましくは80数量%超、好ましくは90数量%超、が溶融する前にバーストさせる条件下で、キャリヤガスを介し、少なくとも1つの注入開口部(オリフィス)を通じて、上記顆粒粉末をプラズマガンにより発生されたプラズマジェットに注入し、次いで顆粒及び顆粒の小片を溶融させて小滴を得ること、
c)上記小滴を冷却して、本発明に従う供給粉末を得ること、
d)任意的に、上記供給粉末について、好ましくは篩分けにより又は空気圧分級(pneumatic classification)により、粒子サイズ選択を実施すること。
【0018】
工程b)では、注入条件は、バーストのリスクを制限する為に穏和な注入を推奨する国際公開第2014/083544号パンフレットの14頁に記載されている条件とは異なる。
【0019】
該粉末の激しい注入は、該供給粉末のメジアンサイズの低下、及び中空粒子の割合の低下を同時に可能にする有利な効果を有する。従って、非常に高い相対密度を得ることを可能にする。
【0020】
好ましくは、該プラズマガンは、40kWを上回り、好ましくは50kWを上回り、及び/又は65kW未満、好ましくは60kW未満、の電力を有する。
【0021】
好ましくは、該プラズマガンは、40~65kWの電力を有し、及び注入開口部経由で、好ましくは各注入開口部により注入された顆粒の質量と上記注入開口部の表面積との比は、上記注入開口部の表面積1mm当たり10g/分を上回り、好ましくは15g/分を上回り、好ましくは16g/分を上回り、好ましくは17g/分以上、である。
【0022】
該注入開口部、好ましくは各注入開口部、は該注入開口部の等価直径の1倍超、好ましくは2倍超、又は3倍を上回る長さを有するチャンネルから好ましくはなる。
【0023】
好ましくは、注入された顆粒粉末の流速は、該プラズマガンの電力1kW当たり2.4g/分未満、好ましくは2.0g/分未満、である。
【0024】
工程a)とb)との間に中間的な焼結工程は存在せず、また好ましくは緻密化、は存在しない。このように中間的な緻密化工程が存在しないことは、該供給粉末の純度の改善という有利な効果を有する。このことは、工程b)における該顆粒のバーストも容易にする。
【0025】
本発明に従う粉末を製造する為の方法は、下記の任意的な特性のうちの1以上も含みうる。
工程a)において、顆粒化は、好ましくは噴霧(atomization)又はスプレー乾燥又はペレット化(ペレットへの変換)のプロセスである、
工程a)において、該顆粒粉末の鉱物組成は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.9%を超える、99.95%を超える、99.99%を超える、好ましくは99.999%を超える、希土類金属の酸化物、及び/又は酸化ハフニウム、及び/又は酸化アルミニウムを含む、
該顆粒粉末のメジアン真円度C50は、好ましくは0.85を上回り、好ましくは0.90を上回り、好ましくは0.95を上回り、より好ましくは0.96を上回る、
該顆粒粉末の真円度5パーセンタイルCは、好ましくは0.85以上、好ましくは0.90以上、である、
該顆粒粉末のメジアンアスペクト比A50は、好ましくは0.75を上回る、好ましくは0.8を上回る、
該顆粒粉末の比表面積は、好ましくは15m/g未満、好ましくは10m/g未満、好ましくは8m/g未満、好ましくは7m/g未満、である、
水銀ポロシメトリーにより測定される、半径が1μm未満である該顆粒粉末の細孔の累積体積は、好ましくは0.5cm/g未満、好ましくは0.4cm/g未満、又は好ましくは0.3cm/g未満、である、
該顆粒粉末の嵩密度は、好ましくは0.5g/cmを上回り、好ましくは0.7g/cmを上回り、好ましくは0.90g/cmを上回り、好ましくは0.95g/cmを上回り、好ましくは1.5g/cm未満、好ましくは1.3g/cm未満、好ましくは1.1g/cm未満、である、
該顆粒粉末の10パーセンタイルの粒子サイズ(D’10)は、好ましくは10μmを上回り、好ましくは15μmを上回り、好ましくは20μmを上回る、
該顆粒粉末の90パーセンタイルの粒子サイズ(D’90)は、好ましくは90μm未満、好ましくは80μm未満、好ましくは70μm未満、好ましくは65μm未満、である、
該顆粒粉末は、好ましくは20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する、
該顆粒粉末は、好ましくは20~25μmのパーセンタイルD’10及び60~65μmのD’90を有する、
該顆粒粉末の99.5パーセンタイルの粒子サイズ(D’99.5)は、好ましくは100μm未満、好ましくは80μm未満、好ましくは75μm未満、である、
該顆粒粉末のD’50に対するサイズ分散インデックス(D’90-D’10)/D’50は、好ましくは2未満、好ましくは1.5未満、好ましくは1.2未満、より好ましくは1.1未満、である、
工程b)において、各注入開口部の直径は、2mm未満、好ましくは1.8mm未満、好ましくは1.7mm未満、好ましくは1.6mm未満、である、
工程b)において、注入条件は、40~65kWの電力を有し、及びプラズマジェットを発生するプラズマガンの条件と等価であり、その場合、注入開口部経由、好ましくは各注入開口部経由で注入された顆粒の質量(上記注入開口部の表面積1mm当たりのg/分として表される)は、1mm当たり10g/分を上回る、好ましくは1mm当たり15g/分を上回り、「等価」とは、「顆粒のバーストの割合(注入された顆粒の数に対するバースト顆粒の数)が同一であるように構成される」ことを意味する、
注入開口部、好ましくは各注入開口部、は上記注入開口部の等価直径よりも少なくとも1倍、好ましくは少なくとも2倍、又は3倍を上回る、長さを有する、好ましくは円筒形、好ましくは円形の断面、である注入チャンネルを規定し、該等価直径は該注入開口部と同一の表面積を有するディスクの直径である、
工程b)において、顆粒粉末の流速は、該プラズマガンの電力1kW当たり3g/分未満、好ましくは2g/分未満、である、
該キャリヤガスの流速(注入開口部毎(すなわち、「粉末ライン」毎))は5.5 L/分を上回り、好ましくは5.8 L/分を上回り、好ましくは6.0 L/分を上回り、好ましくは6.5 L/分を上回り、好ましくは6.8 L/分を上回り、好ましくは7.0 L/分を上回る、
該顆粒粉末は、注入開口部毎に20g/分を上回り、好ましくは25g/分を上回り、及び/又は60g/分未満、好ましくは50g/分未満、好ましくは40g/分未満、の供給速度で該プラズマジェット中に注入される、
顆粒の全供給速度(全注入開口部について累積的)は、70g/分を上回り、好ましくは80g/分を上回り、及び/又は好ましくは180g/分未満、好ましくは140g/分未満、好ましくは120g/分未満、好ましくは100g/分未満、である、及び
好ましくは、工程c)において、溶融小滴の冷却は、最高500℃、平均冷却速度は50000~200000℃/秒、好ましくは80000~150000℃/秒、である。
【0026】
同様に、本発明は、基材に対して本発明に従う供給粉末をプラズマ溶射してコーティング物を得る工程を含む、熱的溶射プロセスに関係する。
【0027】
同様に、本発明は、基材及び該基材を少なくとも部分的に被覆するコーティング物を含むボディに関係し、上記コーティング物は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%を超える、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウムを含み、1.5%以下の空隙率を示し、上記空隙率は、以下に記載されている、上記コーティング物の研磨された断面の写真上で測定される。好ましくは、該コーティング物の空隙率は1%未満である。
【0028】
好ましくは、該コーティング物は、酸化物に基づく質量パーセントとして99.9%を超え、99.95%を超え、99.97%を超え、99.98%を超え、99.99%を超え、好ましくは99.999%を超える、希土類金属酸化物、及び/又は酸化ハフニウム、及び/又は酸化アルミニウムを含む。
【0029】
この種のコーティング物は、本発明に従う熱溶射プロセスを用いて製造されうる。
【0030】
該基材は、半導体の処理で使用されるオーブンの壁、より詳細にはプラズマエッチングチャンバーの壁、でありうる。
【0031】
該オーブンは、半導体、より詳細にはシリコンウエハ、を収容しうる。該オーブンは、化学蒸着(CVD)手段又は物理的蒸着(PVD)手段を備えうる。
【0032】
定義
「不純物」は、出発物質と共に意図せずに及び必然的に導入される、又は構成成分間の反応に起因する、不可避の構成成分である。該不純物は、必要な構成成分でなく、許容される構成成分にすぎない。純度のレベルは、好ましくはICP-AES(誘導結合プラズマ原子発光分析法)よりも正確であるGDMS(グロー放電質量分析法)により測定される。
【0033】
粉末の粒子の「真円度」は、典型的に、以下の通り決定される:
粉末が平板ガラス上に分散される。個々の粒子の画像が、粒子の焦点を保ち、該ガラスの下面から該粉末に光を当てながら、光学顕微鏡下で分散された粉末をスキャニングすることにより得られる。これらの画像は、Malvernより販売されているMorphologi(登録商標)G3装置を使用して分析されることができる。
【0034】
図4に示すように、粒子P’の「真円度」Cを評価する為に、この粒子の画像上で、粒子P’の面積Aに等しい面積を有するディスクDの周囲の長さPが決定される。この粒子の周囲の長さPも決定される。真円度は比P/Pに等しい。従って、
【0035】
【数1】
である。粒子の形状が引き伸ばされるほど、真円度は低下する。本手順は、Sysmex FPIA3000に関するユーザーマニュアルによっても記載されている(www.malvern.co.ukの「detailed specification sheets」を参照)。
【0036】
真円度のパーセンタイル(後述される)を決定する為に、該粉末は平板ガラス上に注がれ、そして上記説明のように観測される。該粉末がどのような方法でガラス上に注がれたとしても測定されたパーセンタイルが実質的に同一であるように、粒子の計測数は250を上回るべきである。
【0037】
粒子のアスペクト比Aは、該粒子の幅(粒子の長さ方向に対して直角のその最大寸法)と粒子の長さ(の最大寸法)との比として規定される。
【0038】
アスペクト比のパーセンタイルを決定する為に、該粉末は平板ガラス上に注がれ、そして該粒子の長さ及び幅を測定する為に、上記説明のように観測される。粒子の計測数は、該粉末が該ガラス上に注がれる方式がどのようであるにしても、実質的に同一であるように、250を上回るべきである。
【0039】
粒子粉末の粒子について、その特性Mのパーセンタイル又は「センタイル」である10(M10)、50(M50)、90(M90)、及び99.5(M99.5)、より一般的に「n」Mは、該粉末中の該粒子のこの特性に関係する累積度数分布曲線に基づき、それぞれ10%、50%、90%、99.5%、及びn%の数量パーセントに対するこの特性の数値であり、この特性に関係する数値が昇順で分類される。より詳細には、パーセンタイルD(又は顆粒粉末の場合D’)、A、及びCは、サイズ、アスペクト比、及び真円度とそれぞれ関連する。
【0040】
例えば、該粉末中の粒子の10数量%はD10未満のサイズを有し、粒子の90数量%はD10以上のサイズを有する。サイズに関係するパーセンタイルは、レーザー粒子サイズ分析装置により生み出される粒子サイズ分布により決定されうる。
【0041】
同様に、該粉末中の粒子の5数量%は、Cパーセンタイル未満の真円度を有する。換言すれば、この粉末中の粒子の95数量%は、C以上の真円度を有する。
【0042】
50パーセンタイルは、慣用的に「メジアン」パーセンタイルと呼ばれる。例えば、C50は、慣用的に「メジアン真円度」として知られている。同様に、D50パーセンタイルは、慣用的に「メジアンサイズ」として知られている。A50パーセンタイルも、やはり慣用的に「メジアンアスペクト比」を意味する。
【0043】
「粒子のサイズ」とは、粒子サイズ分布の慣用的な特徴付けによる所与の粒子のサイズを指し、該特徴付けはレーザー粒子サイズ分析装置を用いて実施される。使用されるレーザー粒子サイズ分析装置は、HORIBA製Partica LA-950でありうる。
【0044】
決定された最大サイズ以下のサイズを有する粒子の数量パーセント又は数量画分は、レーザー粒子サイズ分析装置により決定されうる。
【0045】
粉末1g当たりのcmとして表される、1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は、典型的に、標準ISO15901-1に基づき水銀ポロシメトリーにより測定される。累積比体積は、粉体工学ポロシメーターを用いて測定されうる。
【0046】
cm/gとして表される粉末のバルク容積は、該粉末の嵩密度の逆数である。
【0047】
粒子粉末の「嵩密度」Pは、典型的に上記粒子のバルク容積の合計で割り算された粉末の質量の比として定義される。実際には、Pは、200MPaの圧力において、マイクロメリティックス(Micromeritics)ポロシメーターを用いて測定されうる。
【0048】
粉末の「相対密度」は、その真の密度で割り算されたその嵩密度に等しい。該真の密度は、ヘリウムピクノメトリー(Helium Pycnometry)により測定されうる。
【0049】
コーティング物の「空隙率」は、該コーティング物の研磨された断面の画像を分析することにより評価されうる。コーティングされた基材は、研究室のカッターを使用して、例えばアルミナ基板のカッティングディスクを有するStruers Discotomデバイスを使用して、切片化される。次に、該コーティング物のサンプルは、例えばStruers Durocitタイプの低温封止樹脂を使用して、樹脂中に封止される。次に、封止されたサンプルは、微粉度を増加させながら研磨媒体を使用して研磨される。適した研磨用懸濁物と共に、研削ペーパー、又は好ましくは研磨ディスク、が使用される。慣用的な研磨手順は、サンプルをドレッシングし(例えば、Struers Piano220研削用ディスクを用いて)、次に研削用懸濁物に伴う研磨布地を替えることにより開始する。砥粒のサイズは、各微細研磨工程において低下し、ダイヤモンド砥粒のサイズは、例えば9ミクロンで開始し、次に3ミクロンになり、1ミクロンで終了する(Struers DiaProシリーズ)。砥粒の各サイズにおいて、光学顕微鏡下で観測された空隙率が一定に留まり次第、研磨は停止される。該サンプルは、工程間で、例えば水を用いて、慎重に洗浄される。最終研磨工程は、1μmダイヤモンド研磨工程の後に、柔軟なフェルト布地と併用するコロイドシリカ(OP-U Struers、0.04μm)によって実施される。洗浄の後、研磨済みのサンプルは、光学顕微鏡により、又はSEM(走査型電子顕微鏡)によりすぐに観察されることができる。優れた分解能及び際立ったコントラストを有するため、分析用として意図される画像を得るためにはSEMが好ましい。該空隙率は、閾値を調整しながら画像分析ソフトウェア(例えば、ImageJ、NIH)を使用することにより、画像から決定されうる。該空隙率は、該コーティング断面の表面積のパーセントとして与えられる。
【0050】
「比表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60 (1938), 309~316に記載されるような、BET(Brunauer Emmet Teller)法により慣用的に測定される。
【0051】
「顆粒化」操作は、バインダー、例えばバインダーポリマーによって粒子を凝集させて、おそらくは顆粒でありうる凝集した粒子を形成する為の方法である。顆粒化は、より詳細には、噴霧若しくはスプレー乾燥、及び/又は顆粒化装置若しくはペレット化装置の使用を含むが、これらプロセスに限定されない。典型的に、バインダーは、酸化物を実質的に含まない。
【0052】
「顆粒」は、0.8以上の真円度を有する凝集した粒子である。
【0053】
緻密化工程は、該顆粒内で、有機バインダーによる結合を拡散結合に置き換えるように意図されている操作である。一般的に、加熱処理によるが、該顆粒を完全溶融させずに実施される。
【0054】
プラズマ溶射プロセスの「沈着収率」は、該基材上に沈着された材料の量をプラズマジェット内に注入された供給粉末の量で割り算した比として定義され、質量パーセントとして表される。
【0055】
「溶射生産性」は、単位時間当たりの沈着された物質の量として定義される。
【0056】
L/分で表される流速が「標準」であり、流速は、1barの圧力下、20℃の温度で測定されることを意味する。
【0057】
「含む」は、別途明示されない限り、非限定的と理解すべきである。
【0058】
別途明示されない限り、全ての組成のパーセントは、酸化物の質量に基づく質量パーセントである。
【0059】
該粉末の特性は、実施例で使用される特徴付け方法により評価されうる。
【0060】
本発明の他の特徴及び長所は、下記の説明を閲読し、添付の図面を検討すれば、より明確になろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は、本発明に従う方法の工程a)を図式的に表す図である。
図2図2は、本発明に従う供給粉末を製造する為のプラズマトーチを図式的に表す図である。
図3図3は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法を図式的に表す図である。
図4図4は、粒子の真円度を評価するのに使用される技術について例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
供給粉末を製造する為の方法
図1は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法について、その工程a)の1つの実施態様を例証する。
【0063】
任意の公知の顆粒化プロセスが使用されうる。より詳細には、当業者は、顆粒化に適するスリップを調製する方法を知っている。
【0064】
1つの実施態様では、バインダー混合物は、PVA(ポリビニルアルコール)2を、脱イオン水4に添加することにより調製される。次に、このバインダー混合物6は、5μmフィルター8を通じて濾過される。1μmのメジアンサイズを有する、粉末化された酸化イットリウム10(例えば、99.99%の純度を有する)からなる粒子供給物は、濾過されたバインダー混合物に混合されて、スリップ12を形成する。該スリップは、質量として、例えば55%の酸化イットリウム及び0.55%のPVAを含みうるが、100%までの残部は水からなる。このスリップは、噴霧機(atomizer)14中に注入されて、顆粒粉末16を得る。当業者は、所望の粒子サイズ分布を得るために該噴霧機を適合する方法を知っている。
【0065】
顆粒は、好ましくは3μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満、のメジアンサイズを示す酸化物材料からなる粒子の凝集物であるのが好ましい。
【0066】
好ましくは、該粒子が、混合された酸化物又はオキシフッ化物相、例えば、オキシフッ化イットリウム若しくはイッテルビウム、又はYAG若しくはYAP相を含むような供給粉末を製造する為に、好ましくはこの相をすでに含む顆粒が使用され、これらは、それぞれ、オキシフッ化イットリウム若しくはイッテルビウム、YAG又はYAPの粒子から形成される顆粒である。
【0067】
該顆粒粉末は篩分けされ(例えば、5mmの篩18)、噴霧機の壁から落下した残留物が存在する可能性を取り除くことができる。
【0068】
得られた粉末20は、「スプレー乾燥に限定された(SDO)」顆粒粉末である。
【0069】
図2及び図3は、本発明に従う供給粉末を製造する為の方法について、その溶融工程b)の1つの実施態様を例証する。
【0070】
例えば、図1で例証される方法により製造されるようなSDO顆粒粉末20は、例えばProplasma HPプラズマトーチのプラズマガン24により発生されたプラズマジェット22中に、注入装置21によって注入される。慣用的な注入及びプラズマ溶射デバイスが、例えば該SDO顆粒粉末をキャリヤガスと混合し、そうして得られた混合物をホットプラズマの中心部に注入する為に使用されうる。
【0071】
しかしながら、注入された顆粒粉末は緻密化される必要はなく(SDO)、また該プラズマジェットへの注入は顆粒の破壊を促進するために激しくなされるべきである。衝撃の強度は該顆粒のバースト強度、従って製造される粉末のメジアンサイズを決定する。
【0072】
当業者は、工程c)又はd)の終了時に得られた供給粉末が本発明に従う粒子サイズ分布を有するように、該顆粒を激しく注入する為の注入パラメーターを調節する方法を知っている。
【0073】
より詳細には、当業者は、
顆粒の注入の軸Yとプラズマジェットの軸Xとの間の注入の角度θを90°に接近させること
注入開口部の表面積1mm当たりの粉末の流速を増加させること、
ガンの電力1kW当たりの粉末の流速(g/分)を低下させること、及び
プラズマ形成ガスの流速を増加させること
が顆粒の破壊を促進する因子であることを認識している。
【0074】
より詳細には、国際公開第2014/083544号パンフレットは、下記の実施例に記載されるような、顆粒の50数量%超の破壊を可能にする注入パラメーターについて開示していない。
【0075】
非常に高速で流れる非常に粘稠性のプラズマジェット中に該粒子を分散する為に、該粒子が急速に注入されることが好ましい。
【0076】
注入された顆粒が該プラズマジェットと接触するとき、該顆粒は強力な衝撃を受け、小片に分解しうる。該プラズマジェットを貫通する為に、緻密化されていない、より詳細には未焼結の、分散されるべき顆粒が、高い運動エネルギーの恩恵を受けるほど十分に高速で注入されるが、しかしながら、このスピードは、きわめて効率的なバーストを保証する為に制限される。該顆粒の緻密化がなければ、その機械的強度は低下し、従ってこのような衝撃に対するその耐性は低下する。
【0077】
当業者は、顆粒のスピードは、該キャリヤガスの流速及び注入開口部の直径により決定されることを認識している。
【0078】
該プラズマジェットのスピードもやはり高い。プラズマ形成ガスの流速は、選択されたアノード(anode)直径に対してトーチのコンストラクターにより推奨されるメジアン値を上回るのが好ましい。好ましくは、プラズマ形成ガスの流速は、50 L/分を上回り、好ましくは55 L/分を上回る。
【0079】
当業者は、該プラズマジェットのスピードは、小直径アノード(anode)を使用することで、及び/又は一次ガスの流速を上げることにより増加しうることを認識している。
【0080】
好ましくは、該一次ガスの流速は、40 L/分を上回り、好ましくは45 L/分を上回る。
【0081】
好ましくは、二次ガス、好ましくは二水素(H)ガス、の流速と、プラズマ形成ガス(一次及び二次ガスから構成される)の流速との間の比は、20%~25%である。
【0082】
もちろん、該二次ガスの流速により特に影響を受ける該プラズマジェットのエネルギーは、該顆粒の溶融を引き起こすのに十分高くなければならない。
【0083】
該顆粒粉末は、好ましくは液体を一切用いずに、キャリヤガスを用いて注入される。
【0084】
プラズマジェット22内では、該顆粒は小滴25に溶融される。該プラズマガンは、好ましくは溶融が実質的に完全であるように制御される。
【0085】
該溶融の有利な効果は、不純物のレベルを低下させることである。
【0086】
該プラズマジェットのホットゾーンから抜け出る際に、該小滴は、周辺の冷気の他に、冷却ガス、好ましくは空気、の強制的循環26によっても急速に冷却される。該空気は、水素の還元効果を有利に制限する。
【0087】
該プラズマトーチは、該プラズマジェットに注入された該顆粒粉末を加熱し、その結果生じた該小滴を冷却する為に、冷却流体、好ましくは空気、を注入するように配置構成された少なくとも1つのノズルを備えるのが好ましい。該冷却流体は、該プラズマジェットの下流に注入されるのが好ましく(図2に示すように)、且つ上記小滴の経路と該冷却流体の経路との間の角度γは、好ましくは80°以下、好ましくは60°以下、及び/又は10°以上、好ましくは20°以上、好ましくは30°以上、である。好ましくは、任意のノズル注入の軸Y及び該プラズマジェットの軸Xは交差している。
【0088】
好ましくは、注入の軸Yと該プラズマジェットの軸Xとの間の注入の角度θは、85°を上回り、好ましくはおよそ90°、である。
【0089】
好ましくは、強制的冷却は、例えば冷却ガスの実質的に円錐状又は環状の流れをつくりだすためにプラズマジェット22の軸Xの周辺に配置された一連のノズル28により生み出される。
【0090】
プラズマガン24は、地面に対して垂直に配置される。好ましくは、垂直と該プラズマジェットの軸Xとの間の角度αは、30°未満、20°未満、10°未満、好ましくは5°未満、好ましくは実質的にゼロ、である。それ故に、有利には、冷却ガスの流れは、該プラズマジェットの軸Xに関して完全に中央に位置する。
【0091】
好ましくは、該アノード(anode)の外面と冷却ゾーン(そこで該小滴が、注入された冷却流体と接触する)との間の最低距離dは、50mm~400mm、好ましくは100mm~300mm、である。
【0092】
有利には、該強制的冷却は、焼締チャンバー32内の懸濁物中にて、非常に大きく高温の粒子と小粒子との間の接触に起因する二次粒子の生成を制限する。更に、この種の冷却操作は、処理機器の全体的なサイズ、より詳細には収集チャンバーのサイズ、の低下を可能にする。
【0093】
小滴25を冷却すれば、焼締チャンバー32の下方部分において抽出されることができる供給粒子30を得ることが可能になる。
【0094】
該焼締チャンバーは、サイクロン34と接続されうるが、そこから流出する排気ガスは、非常に微細な粒子40を分離除去する為に塵埃コレクター36に向けられている。コンフィギュレーションに応じて、本発明に基づくいくつかの供給粒子は、該サイクロン内でも収集されうる。好ましくは、これらの供給粒子は、より詳細にはエアセパレーターを用いて、分離除去されることができる。
【0095】
任意的に、収集された供給粒子38は、メジアンサイズD50が15ミクロン未満であるように濾過されうる。
【0096】
下記の表1は、本発明に従う供給粉末を製造する為の好ましいパラメーターを提供する。
【0097】
カラムの特性は好ましくは組み合わされるが、しかし必ずしもそうではない。該2つのカラムの特性も組み合わされうる。
【0098】
該「ProplasmaHP」プラズマトーチは、Saint-Gobain Coating Solutionsより販売されている。このトーチは、国際公開第2010/103497号パンフレットに記載されているトーチT1に対応する。
【0099】
【表1】
【実施例0100】
下記の実施例は、例証目的で提供されるものであり、本発明の範囲を限定しない。
【0101】
供給粉末H1、I1(比較例)及びC1(比較例)は、Horibaレーザー粒子アナライザーを用いて測定された1.2ミクロンのメジアンサイズD50、及びY3の化学的純度99.999%を有する純粋なY粉末から、国際公開第2014/083544号パンフレットの図2に示すプラズマトーチと類似したプラズマトーチを用いて製造された。
【0102】
工程a)では、バインダー混合物は、PVA(ポリビニルアルコール)バインダー2(図1を参照)を、脱イオン水4に添加することにより調製される。次に、このバインダー混合物は、5μmフィルター8を通じて濾過される。酸化イットリウムの粉末10が、濾過されたバインダー混合物に混合されて、スリップ12を形成する。該スリップは、質量パーセントとして55%の酸化イットリウム及び0.55%のPVAを含むように調製され、100%までの残部は脱イオン水からなる。該スリップは、高剪断力スピードミキサーを使用して入念に混合される。
【0103】
その後、顆粒G3が、噴霧機(atomizer)14を使用して、該スリップの噴霧(atomization)により得られる。より詳細には、該スリップは、GEA Niro SD6.3Rアトマイザーのチャンバー内で噴霧(atomize)され、該スリップは、およそ0.38l/分の流速で導入される。
【0104】
Niro FS1モーターにより駆動される回転式噴霧化ホイールのスピードは、顆粒16(G3)の目標サイズを得るように制御される。
【0105】
該顆粒の残留含水量が0.5%~1%であるように、進入温度を295℃に、そして出口温度を125℃付近に維持するように空気の流速が調整される。
【0106】
次に、該顆粒粉末は、該顆粒粉末から残留物を抽出し、SDO顆粒粉末20を得る為に、篩18を用いて篩分けられる。
【0107】
工程b)では、工程a)に由来する顆粒が、プラズマガン24を用いて生成されたプラズマジェット22(図2を参照)内に注入される。注入及び溶融パラメーターは、下記の表2に示される。
【0108】
工程c)では、小滴を冷却する為に、Silventより販売されている7つのSilvent2021Lノズル28が、Silventより販売されているSilvent463環状ノズルホルダー上に固定された。ノズル28は、実質的に円錐状の空気の流れを生成する為に、該環状ノズルホルダーに沿って規則的に間隔が設けられている。
【0109】
収集された供給粒子38の収率は、収集された供給粒子の量と該プラズマジェット内に注入された顆粒の総量との比である。
【0110】
【表2-1】
【0111】
【表2-2】
【0112】
該顆粒内で1μm未満の半径を有する細孔の累積比体積は、260×10-3cm/gであった。
【0113】
従って、本発明は、非常に高密度のコーティング物をもたらすサイズ分布及び相対密度を有する供給粉末を提供する。更に、この供給粉末は、高い生産性を伴い、プラズマにより効率的に溶射されることができる。
【0114】
従って、本発明に従う供給粉末は、欠陥の集結がより少ないコーティング物の製造を可能にする。更に、該粉末は、プラズマ溶融されなかった同一のサイズの粉末に対して流動性の強化を示し、従って複雑な供給手段を用いずに注入を可能にする。
【0115】
当然のことながら、本発明は、記載され示されている実施態様に限定されない。
【0116】
本発明の一態様は下記の通りである。
[1]
溶融された粒子の粉末であって、該粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を有し、該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして、99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含み、
該粉末は、
15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD90、及び、2未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び
90%超の相対密度
を有し、前記粉末のパーセンタイルDnは、該粉末における粒子サイズの累積分布曲線における数量パーセント、n%、に対応する粒子サイズであり、該粒子サイズは昇順で分類される、前記粉末。
[2]
5%超である、5μm以下のサイズを有する粒子の数量パーセント、及び/又は
10μm未満であるメジアン粒子サイズ(D50)、及び/又は
25μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズ(D90)、及び/又は
40μm未満である99.5パーセンタイルの粒子サイズ(D99.5)、及び/又は
1.5未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10
を有する、[1]記載の粉末。
[3]
該粉末のメジアン粒子サイズ(D50)が8μm未満である、[1]又は[2]記載の粉末。
[4]
酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%超のYb2O3及び/又はY2O3及び/又はY3Al5O12及び/又はオキシフッ化イットリウム、好ましくは式YaObFc(式中、aは1であり、bは0.7~1.1であり、cは1~1.5である)、好ましくは、YOF及びY5O4F7から選択されるオキシフッ化物、又はこれらのオキシフッ化物の混合物、を含む、[1]~[3]のいずれか1項記載の粉末。
[5]
下記の工程を含む、[1]~[4]のいずれか1項記載の粉末の製造方法
a)粒子供給物を顆粒化して、20~60ミクロンのメジアンサイズD’50を有する顆粒粉末を得る工程であり、前記粒子供給物が、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含む、前記工程
b)前記顆粒粉末を、キャリヤガスを介して、少なくとも1つの注入開口部を通して、注入条件下、プラズマガンにより発生されたプラズマジェットに注入する工程であり、
前記注入条件は、
溶融された小滴を得るように、注入された顆粒の50数量%超をバーストさせ、
注入された顆粒粉末の流速が該プラズマガンの電力1kW当たり2g/分未満であり、及び、
該注入開口部経由で、好ましくは注入開口部毎により注入された顆粒の質量と、前記注入開口部の表面積との比は、前記注入開口部の表面積1mm2当たり16g/分超である、前記工程
c)前記溶融された小滴を冷却して、[1]~[4]のいずれか1項記載の供給粉末を得る工程、及び
d)任意的に、前記供給粉末に粒子サイズ選択を実施する工程。
[6]
注入された顆粒の70%超(数量パーセントとして)をバーストさせるように前記注入条件が決定される、[5]記載の製造方法。
[7]
注入された顆粒の90%超(数量パーセントとして)をバーストさせるように前記注入条件が決定される、[6]記載の製造方法。
[8]
前記工程b)において、前記注入条件は、40~65kWの電力を有し、及び各注入開口部経由で注入された顆粒の質量が注入開口部の表面積1mm2当たり10g/分超であるプラズマジェットを発生するプラズマガンと同一の、バーストする顆粒の割合をもたらすように適合される、[5]~[7]のいずれか1項記載の製造方法。
[9]
各注入開口部経由で、注入された顆粒の質量が、前記注入開口部の表面積1mm2当たり15g/分超である、[8]記載の製造方法。
[10]
前記注入開口部は、該注入開口部の等価直径の少なくとも1倍超の長さを有する注入チャンネルを規定する、[5]~[9]のいずれか1項記載の製造方法。
[11]
前記長さが、前記等価直径の少なくとも2倍超である、[10]記載の製造方法。
[12]
工程b)において、顆粒粉末の流速は、プラズマガン電力1kW当たり3g/分未満である、[5]~[11]のいずれか1項記載の製造方法。
[13]
前記顆粒化が噴霧を含む、[5]~[12]のいずれか1項記載の製造方法。
[14]
[1]~[4]のいずれか1項記載の粉末又は[5]~[13]のいずれか1項に従い製造された粉末を熱溶射する工程を含む、熱溶射プロセス。
[15]
半導体用処理チャンバーであり、前記チャンバーがコーティングにより保護された壁を有し、該コーティングは、酸化物に基づく質量パーセントとして99.8%を超える、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウムを含み、及び1.5%以下の空隙率を有し、及び、前記コーティングは[1]~[4]のいずれか1項記載の粉末又は[5]~[13]のいずれか1項に従い製造された粉末を熱溶射して得られたものである、前記半導体用処理チャンバー。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された粒子の粉末であって、該粒子の95数量%超が0.85以上の真円度を有し、該粉末は、酸化物に基づく質量パーセントとして、99.8%超の、希土類金属酸化物及び/又は酸化ハフニウム及び/又は酸化アルミニウム、を含み、
該粉末は、
15μm未満であるメジアン粒子サイズD50、30μm未満である90パーセンタイルの粒子サイズD90、及び、2未満であるサイズ分散インデックス(D90-D10)/D10、及び
90%超の相対密度
を有し、前記粉末のパーセンタイルDnは、該粉末における粒子サイズの累積分布曲線における数量パーセント、n%、に対応する粒子サイズであり、該粒子サイズは昇順で分類される、前記粉末。