(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054143
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】抗P-セレクチン抗体の使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240409BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006797
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020547136の分割
【原出願日】2019-03-07
(31)【優先権主張番号】62/640,113
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/640,117
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】520339068
【氏名又は名称】ミリアッチョ,アンナ リタ フランコ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ミリアッチョ,アンナ リタ フランコ
(72)【発明者】
【氏名】チャターベディ,シャリニ
(72)【発明者】
【氏名】ラディメルスキ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メンセン,ハンス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨髄線維症の効果的な処置方法を提供する。
【解決手段】骨髄線維症の処置における抗P-セレクチン抗体又はその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブ又はその結合フラグメントの使用を提供する。また、a)抗P-セレクチン抗体及びb)少なくとも1つのさらなる治療剤、好ましくは、ルクソリチニブ又は薬学的に許容されるその塩を含む薬学的な組み合わせを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における骨髄線維症(MF)の処置に使用するための、抗P-セレクチン抗体また
はその結合フラグメント。
【請求項2】
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(PET
-MF)および真性多血症後骨髄線維症(PPV-MF)を含む、請求項1に記載の使用
のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項3】
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)である、請求項1または2に記載の使用の
ための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項4】
生存期間中央値が、少なくとも3か月増加する、請求項1から3のいずれか1項に記載
の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項5】
前記患者は、前記処置に完全奏効する、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用の
ための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項6】
前記MFは、新規に診断されたMFである、請求項1から5のいずれか1項に記載の使
用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項7】
前記P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、少なくとも1つのさらなる
活性剤と組み合わせて投与される、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用のための
、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項8】
前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK1/JAK2阻害剤、JAK2/FL
T3阻害剤、JAK2V617F阻害剤、JAK2阻害剤、JAK1阻害剤またはJAK
2/Src阻害剤、例えば、ルクソリチニブ、または薬学的に許容されるその塩である、
請求項7に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項9】
ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩は、1日に2回5mg、1日に2回1
0mg、1日に2回15mg、1日に2回20mgまたは1日に2回25mgなどの1日
に2回5mgから1日に2回25mgの量で投与される、請求項8に記載の使用のための
、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項10】
前記P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、クリザンリズマブまたはその
結合フラグメントである、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-
セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項11】
クリザンリズマブは、2.5mg/kgから20mg/kgの量で、特に、5mg/k
gまたは7.5mg/kgの量で投与される、請求項10に記載の使用のための、抗P-
セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項12】
クリザンリズマブは、4週毎(+/-3日)に投与される、請求項10または11に記
載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項13】
クリザンリズマブの最初の2用量が2週間(+/-3日)あけて与えられ、これに4週
毎(+/-3日)に与えられるさらなる用量が続き、各用量は、2.5mg/kgから2
0mg/kgの間である、請求項11または12に記載の使用のための、抗P-セレクチ
ン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項14】
クリザンリズマブの各用量は、5mg/kgまたは7.5mg/kgの量で投与される
、請求項13に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント
。
【請求項15】
前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、HSP90阻害剤(例えば、PU-H71、
ルミネスピブ、ガネテスピブ(ganatespib));HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタ
ット、ギビノスタット、プラシノスタット、ボリノスタット);DNAメチルトランスフ
ェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン、デシタビン);mTOR阻害剤(例えば、
ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害剤(例えば、MK-2206);PI3K阻
害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ);ヘッジホッグ阻害剤(例えば、グラスデ
ギブ、サリデギブ、エリスモデギブ);SMO阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギ
ブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ、血清アミロイドPまたはモノクローナル抗体
(例えば、フレソリムマブ、シムツズマブ);オーロラAキナーゼ阻害剤(例えば、ジメ
チルファスジル(dimetylfasudil)、アリセルチブ);TNF-アルファ調節物質(例えば
、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド);
グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン);テロメラーゼ阻害剤(例えば、イメテル
スタット);抗貧血剤(例えば、ソタテルセプトなどの赤血球生成促進剤);CYP3A
4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ネファゾ
ドン、テリスロマイシン);およびCYP2C9-CYP3A4二重阻害剤(例えば、フ
ルコナゾール);または、それぞれの場合において、薬学的に許容されるその塩からなる
群から選択される、請求項7~14のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレク
チン抗体またはその結合フラグメント。
【請求項16】
前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるそ
の塩であり、少なくとも1つの追加のさらなる活性剤が、HDAC阻害剤(例えば、パノ
ビノスタット、ギビノスタット、プラシノスタット、ボリノスタット);DNAメチルト
ランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン、デシタビン);mTOR阻害剤(
例えば、ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害剤(例えば、MK-2206);P
I3K阻害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ);ヘッジホッグ阻害剤(例えば、
グラスデギブ、サリデギブ、エリスモデギブ);SMO阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビ
スモデギブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ、血清アミロイドPまたはモノクロー
ナル抗体(例えば、フレソリムマブ、シムツズマブ);オーロラAキナーゼ阻害剤(例え
ば、ジメチルファスジル(dimetylfasudil)、アリセルチブ);TNF-アルファ調節物質
(例えば、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマ
イド);グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン);テロメラーゼ阻害剤(例えば、
イメテルスタット);抗貧血薬剤(例えば、ソタテルセプトなどの赤血球生成促進剤);
CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、クラリスロマイシン、イトラコナゾール
、ネファゾドン、テリスロマイシン);およびCYP2C9-CYP3A4二重阻害剤(
例えば、フルコナゾール);または、それぞれの場合において、薬学的に許容されるその
塩からなる群から選択される、請求項7~14のいずれか1項に記載の使用のための、抗
P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗P-セレクチン抗体およびその組み合わせの使用に関する。
【0002】
発明の分野
本発明は、骨髄線維症(MF)の処置における抗P-セレクチン抗体、またはその結合
フラグメントの使用に関する。本発明はまた、a)P-セレクチン結合抗体(「抗P-セ
レクチン抗体」)およびb)少なくとも1つのさらなる治療剤を含む薬学的な組み合わせ
に関する。
【背景技術】
【0003】
骨髄増殖性腫瘍(MPN)は、骨髄線維症(MF)、本態性血小板血症(ET)および
真性多血症(PV)を含む、成熟骨髄細胞の増殖および蓄積を特徴とする血液疾患の特有
で不均一な群である。重要なことに、MFは、フィラデルフィア染色体陰性(すなわち、
BCR-ABL1陰性)骨髄増殖性腫瘍の最も重症な形態であり、有病率は、100,0
00人あたり2.2人であると推定される。骨髄線維症(MF)は、新規の障害(PMF
)として存在する場合も、あるいは先行するPVまたはETから生じる(PPV-MFも
しくはPET-MF)場合もある。報告頻度の範囲は、post-PV MFに関しては
、それぞれ、10年目に4.9~6%および15年目に6~14%であり、それぞれ、p
ost-ET MFに関しては10年目に0.8~4.9%および15年目に4~11%
である(S Cerquozzi and A Tefferi, Blood Cancer Journal(2015) 5, e366)。
【0004】
PV、ETから生じたMFか、または原発性障害としてのMFかにかかわらず、これは
、高レベルのいくつかの炎症性および血管新生サイトカインの産生と関連づけられるクロ
ーン性幹細胞増殖を特徴とし、この結果としてさまざまな程度のレチクリンおよび/また
はコラーゲン線維化、骨硬化および血管形成、ある程度の巨核球異形成ならびにさまざま
な程度の循環前駆細胞を伴う白赤芽球症のパターンを示す末梢血塗抹を含む骨髄間質反応
を生じる。異常な骨髄環境は、こうした部位において造血幹細胞の血液への放出、髄外造
血、および臓器肥大をもたらす。臨床的に、MFは、進行性貧血、白血球減少症または白
血球増加症、血小板減少症または血小板血症ならびに、最も顕著に脾臓に影響を与えて、
巨大脾腫、重度の全身症状、代謝亢進状態、悪液質、および早期死亡につながる多臓器髄
外造血を特徴とする。
【0005】
かなりの数のサイトカインおよび増殖因子受容体は、非受容体型チロシンキナーゼ、ヤ
ヌスキナーゼ(JAK)を利用して、細胞外リガンド結合を細胞内応答として伝える。例
えば、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよび顆粒球単球コロニー刺激因子はすべて
、JAK2を利用する受容体を介してシグナル伝達することが知られている。JAKは、
重要な潜在的転写因子のファミリーであるSTAT(転写のシグナルトランスデューサー
およびアクチベーター)を含む、増殖および生存に関わる多くの下流経路を活性化する。
【0006】
骨髄線維症は、現在、分子(JAK2V617F、MPLW515L/K)および細胞
遺伝学的(13q-、20q-)マーカーによって特徴づけられるクローン性幹細胞疾患
であることが知られている(Pikman Y, Lee BH, Mercher T, et al. PLoS Med. 2006;3(7
):e270;Scott LM, Tong W, Levine RL, et al. N Engl J Med. 2007;356:459-468)。9
5%を超えるPVの患者およびおよそ50%のETおよびPMFの患者でJAK2V61
7F変異が特定された。さらに、前臨床現場において、動物試験は、この変異がMF様症
候群につながる可能性があることを示した。JAK2V617F変異は、JAK2チロシ
ンキナーゼを構成的に活性に変える。結果として、増殖因子調節とは無関係に赤血球増加
症、血小板血症および白血球増加症が発現することがある。JAK2変異が確認されなか
った患者であっても、STAT活性化の検出は、調節不全のJAK活性を示唆する。実際
、JAK2の変異状態にかかわらず、悪性細胞は、JAK活性化サイトカインおよび/ま
たは増殖因子に対する応答性を保持するようであり、したがって、それらは、JAK阻害
から利益を得る可能性もある。ルクソリチニブ(商標名Jakavi)を含む、いくつか
のJAK阻害剤が、MFの処置に対して認可されたが、症状の処置にのみ効果が証明され
た。疾患の進行は、止められず、最終的に患者は、早期に死亡することもある。
【0007】
したがって、骨髄線維症の処置を進歩させるための新規の効果的な処置の選択肢を発見
することに対する満たされていない高い医学的ニーズがある。
【発明の概要】
【0008】
骨髄線維症の処置のための薬剤を提供することが本発明の目的である。本発明は、抗P
-セレクチン抗体、またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブ(crizanli
zumab)またはその結合フラグメントが、対象における骨髄線維症の処置に有用であると
いう本発明者らの驚くべき発見に基づくものである。
【0009】
本発明はまた、少なくとも1つのさらなる治療剤と組み合わせた、抗P-セレクチン抗
体、またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブもしくはその結合フラグメ
ントが、対象における骨髄線維症の処置に有用であるという発見に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
「抗P-セレクチン抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、P-セレクチ
ンと特異的に結合することができる抗体を指し、すなわち、これは、P-セレクチンと特
異的に結合しないことが周知の抗体よりも、高い親和性でP-セレクチンと結合する。「
結合フラグメント」という用語は、本明細書中で使用される場合、特異的にP-セレクチ
ンと結合することができる抗体の部分を指す。親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴(
BIAcore(商標))アッセイによって適切に求めることができる。理想的には、P
-セレクチン抗体またはそのフラグメントのKdは、≦1000nM、もしくは≦500
nM、もしくは≦100nM、もしくは≦50nM、またはより好ましくはKd≦25n
M、さらにより好ましくは、Kd≦10nM、さらにより好ましくは、Kd≦5nM、も
しくは≦1nM、もしくは≦0.1nMである。
【0011】
一実施形態において、結合フラグメントは、抗原結合および/または可変領域を含んで
もよい。単なる例として、適した結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)
2、FvおよびscFvからなる群から選択されてもよい。
【0012】
適切には、抗体(またはその結合フラグメント)のP-セレクチンとの結合は、P-セ
レクチンのPSGL-1との結合を阻害し、それにより、P-セレクチン/PSGL-1
複合体の形成を低減する。適切には、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント
は、適した対照(例えば、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントが存在しな
いサンプル)と比較して、P-セレクチン/PSGL-1複合体の形成を少なくとも30
%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少な
くとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも9
7%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上低減することができる。
【0013】
さらにまたはあるいは、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、予め形
成されたP-セレクチン/PSGL-1複合体を解離させることができる。適した実施形
態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、少なくとも30%、
少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくと
も80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%
、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上の予め形成されたP-セレクチ
ン/PSGL-1複合体を解離させることができる。前述のとおり、この特性は、適した
対照(例えば、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントが存在しないサンプル
)と比較されてもよい。
【0014】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、任意の適
したエピトープでP-セレクチンと結合してもよい。適切には、抗P-セレクチン抗体ま
たはその結合フラグメントは、P-セレクチンレクチン様ドメインに見られるエピトープ
と結合してもよい。
【0015】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列番号
1のアミノ酸位置1から35においてP-セレクチンと結合する。適切には、抗P-セレ
クチン抗体またはその結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸位置4から23におい
てP-セレクチンと結合する。さらに適切には、抗P-セレクチン抗体またはその結合フ
ラグメントは、配列番号1のアミノ酸位置4、14、17、21、および22においてP
-セレクチンと結合する。
【0016】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、KASQ
SVDYDGHSYMN(配列番号2)、AASNLES(配列番号3)およびQQSD
ENPLT(配列番号4)からなる群から選択されるCDR配列を有する軽鎖可変領域を
含む。
【0017】
適した実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、KA
SQSVDYDGHSYMN(配列番号2)、AASNLES(配列番号3)およびQQ
SDENPLT(配列番号4)からなる群から選択される配列から、4個を超えないアミ
ノ酸残基、3個を超えないアミノ酸残基、2個を超えないアミノ酸残基、または1個を超
えないアミノ酸残基だけ変化したアミノ酸配列を有する軽鎖可変CDRを含んでもよい。
【0018】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列番号
5を含む軽鎖可変領域を含む。
【0019】
適した実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列
番号5と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%一致するポリペプチドを含むか、またはそれ
からなる軽鎖可変領域を含む。
【0020】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、SYDI
N(配列番号6)、WIYPGDGSIKYNEKFKG(配列番号7)およびRGEY
GNYEGAMDY(配列番号8)からなる群から選択されるCDR配列を有する重鎖可
変領域を含む。
【0021】
適した実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、SY
DIN(配列番号6)、WIYPGDGSIKYNEKFKG(配列番号7)およびRG
EYGNYEGAMDY(配列番号8)からなる群から選択される配列から、4個を超え
ないアミノ酸残基、3個を超えないアミノ酸残基、2個を超えないアミノ酸残基、または
1個を超えないアミノ酸残基だけ変化したアミノ酸配列を有する重鎖可変CDRを含んで
もよい。
【0022】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列番号
9を含む重鎖可変領域を含む。
【0023】
適した実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列
番号9と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%一致するポリペプチドを含むか、またはそれ
からなる重鎖可変領域を含む。
【0024】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、それぞれ
、配列番号6、配列番号7、および配列番号8から基本的になるか、またはそれからなる
3つのCDRを含む重鎖可変領域ならびに、それぞれ、配列番号2、配列番号3、および
配列番号4から基本的になるか、またはそれからなる3つのCDRを含む軽鎖可変領域を
含む。
【0025】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、配列、配
列番号5を含むか、それから基本的になるか、またはそれからなる軽鎖可変領域、および
配列、配列番号9を含むか、それから基本的になるか、またはそれからなる重鎖可変領域
を含む。
【0026】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体は、配列番号10と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも
99%一致する軽鎖を含む。適切には、抗P-セレクチン抗体は、配列番号10に従う軽
鎖を含む。
【0027】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体は、配列番号11と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも
99%一致する重鎖を含む。適切には、抗P-セレクチン抗体は、配列番号11に従う重
鎖を含む。
【0028】
適した実施形態において、抗P-セレクチン抗体は、配列番号10と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なく
とも99%一致する軽鎖、および配列番号11と少なくとも90%、少なくとも95%、
少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%一致する重
鎖を含む。適切には、抗P-セレクチン抗体は、配列番号10に従う軽鎖、および配列番
号11に従う重鎖を含む。
【0029】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、クリザン
リズマブまたはその結合フラグメントである。
【0030】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、P-セレ
クチンに対して強い親和性を有してもよい。適切には、P-セレクチンに対するこの抗体
またはその結合フラグメントの親和性は、PSGL-1に対するP-セレクチンの親和性
よりも高くてもよい。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「クリザンリズマブ」(かつては、SelG1、国際一
般名(INN)データベースに番号10316で登録されていた)という用語は、参照に
よって本明細書に組み込んだものとする国際公開第2008/069999号パンフレッ
トおよび国際公開第2012/088265号パンフレットに記載されている抗P-セレ
クチン抗体を指す。クリザンリズマブは、P-セレクチンを標的とするヒト化モノクロー
ナル抗体であり、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1(PSGL-1)との相互作用
をブロックする。P-セレクチン(P-selecting)とPSGL-1の間の相互作用をブロ
ックすることに加えて、クリザンリズマブは、すでに形成されたP-セレクチン/PSL
G-1複合体も解離させる。
【0032】
その他の適した抗P-セレクチン抗体は、その全体を参照により本明細書に組み込んだ
ものとする国際公開第2005/100402号パンフレット、国際公開第1993/0
21956号パンフレットおよび国際公開第1994/025067号パンフレットに開
示されている。一実施形態において、適した抗P-セレクチン抗体またはそのフラグメン
トは、インクラクマブ(inclacumab)またはその結合フラグメントである。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「ルクソリチニブ」は、式:
【0034】
【化1】
の、3(R)-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-
4-イル)-1H-ピラゾル-1-イル]プロパンニトリルとも呼ばれる、JAK1/J
AK2阻害剤(R)-3-(4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)
-1H-ピラゾル-1-イル)-3-シクロペンチルプロパンニトリルであり、
例えば、参照によって本明細書に組み込んだものとする国際公開第2007/07051
4号パンフレットに記載されているとおりに調製することができる。本明細書中で使用さ
れる場合、「ルクソリチニブ」は、遊離型を指し、任意の「薬学的に許容されるその塩」
の言及は、「薬学的に許容されるその酸付加塩」、特にルクソリチニブリン酸塩を指し、
これは、例えば、参照によって本明細書に組み込んだものとする国際公開第2008/1
57208号パンフレットに記載されているとおりに調製することができる。ルクソリチ
ニブは、中から高リスクの骨髄線維症の処置に対して商標名Jakafi(登録商標)/
Jakavi(登録商標)として認可されている。
【0035】
ルクソリチニブ、または薬学的に許容されるその塩、特にルクソリチニブリン酸塩は、
経口投与される単位剤形(例えば、錠剤)であってもよい。
【0036】
一実施形態において、「ルクソリチニブ」はまた、同位体的に標識された形態を表すこ
とも意図される。同位体的に標識された化合物は、1つ以上の原子が選択された原子質量
または質量数を有する原子によって置換されることを除いて、上記式によって表される構
造を有する。ルクソリチニブに組み込むことができる同位体、例えば、水素の同位体、す
なわち、式:
【0037】
【化2】
の化合物、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17はそれぞれ、独立してHま
たは重水素から選択され、ただし、化合物中に存在する少なくとも1つの重水素がある。
他の実施形態においては、化合物中に存在する複数の重水素原子がある。適切な化合物は
、その全体を本明細書に組み込んだものとする米国特許第9,249,149号明細書に
開示されている。
【0038】
好適な一実施形態において、重水素化ルクソリチニブは、
【0039】
【化3】
または前述のもののいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0040】
好適な実施形態において、重水素化ルクソリチニブは、
【0041】
【0042】
本明細書中で使用される場合、「イタシチニブ(itacitinib)」は、式
【0043】
【化5】
の、2-[1-[1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-カル
ボニル]ピペリジン-4-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン
-4-イル)ピラゾル-1-イル]アゼチジン-3-イル]アセトニトリルとも呼ばれる
、JAK1/JAK2阻害剤2-(3-(4-(7H-ピロロ(2,3-d)ピリミジン
-4-イル)-1H-ピラゾル-1-イル)-1-(1-(3-フルオロ-2-(トリフ
ルオロメチル)イソニコチノイル)ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル)アセ
トニトリルを指し、
これは、例えば、参照によって本明細書に組み込んだものとする国際公開第2011/1
12662号パンフレットに記載されているとおりに調製することができる。本明細書中
で使用される場合、「イタシチニブ」は、遊離型を指し、任意の「薬学的に許容されるそ
の塩」の言及は、「薬学的に許容されるその酸付加塩」、特にイタシチニブアジピン酸塩
を指す。
【0044】
骨髄線維症の処置
フィラデルフィア染色体陰性MPNでは骨髄における巨核球(MK)増殖の増加が一般
的に観察される。MF患者では、細胞質内空胞(intracytoplasmic vacuole)および分離
膜系(demarcation membrane system)(DMS)においてP-セレクチンが増加した巨
核球が観察され、これが、好中球のエンペリポレーシス(emperipolesis)(別の細胞の
細胞質へ細胞の通過)の増加につながる。これらの好中球は、巨核球において酵素を放出
して、アルファ顆粒からのトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、血小板
由来増殖因子(PDGF)および線維芽細胞増殖因子(FGF)などのサイトカインの放
出につながる(Schmitt A, Jouault H, Guichard J, et al. Blood 2000;96:1342-7)。
放出されると、増殖因子は、線維芽細胞によるレチクリンおよびコラーゲン線維の沈着、
ならびに間質細胞および内皮細胞によるオステオプロテジェリンの産生増加を刺激して、
アンバランスな骨芽細胞増殖につながり、結果として骨硬化および血管新生をもたらす(
Cervantes F, Martinez-Trillos A. Expert Opin Pharmacother 2013;14:873-84;Chagra
oui H, Tulliez M, Smayra T, et al. Blood 2003;101:2983-9)。さらに、骨髄線維症の
マウスモデルであるGata1lowマウスに対する研究は、P-セレクチン遺伝子(P
-sel)の遺伝子欠失が、血栓イベントおよび前線維化期から線維化期への進行を低減
したことを示した(Spangrude et al, Stem Cells, 2016, 34: 67-82)。
【0045】
したがって、一態様において、本発明は、フィラデルフィア染色体陰性骨髄増殖性腫瘍
の処置に使用するための、単独またはJAK阻害剤、適切にはルクソリチニブもしくは薬
学的に許容されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメ
ント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供する。
【0046】
さらなる一態様において、本発明は、患者における骨髄線維症(MF)の処置に使用す
るための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマ
ブまたはその結合フラグメントを提供する。あるいは、一態様において、本発明は、患者
における骨髄線維症(MF)の処置のための薬剤の製造に使用するための、抗P-セレク
チン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグ
メントを提供する。あるいは、一態様において、本発明は、患者における骨髄線維症(M
F)を処置する方法であって、治療有効量の抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグ
メント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントを、前記患者に投与する
ステップを含む方法を提供する。
【0047】
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(PET
-MF)および真性多血症後骨髄線維症(PPV-MF)を含む。適切には、骨髄線維症
は、PMFである。
【0048】
「原発性骨髄線維症」(PMF)という用語は、本明細書中で使用される場合、"The 2
016 revision to the World Health Organization(WHO) classification of myeloid neo
plasms and acute leukemia",(Blood, 2016, 127:2391-2405に発表)を参照して定義さ
れる。原発性骨髄線維症は、前線維化/初期原発性骨髄線維症(prePMF)および線
維化期原発性骨髄線維症(線維化期PMF)を包含する。prePMFの診断は、表1の
prePMFに関する2016WHO分類に従った以下の3つの大基準、および少なくと
も1つの小基準を満たす必要がある。
【0049】
【0050】
線維化期PMFの診断は、表2の線維化期PMFに関する2016WHO分類に従った
以下の3つの大基準、および少なくとも1つの小基準を満たす必要がある。
【0051】
【0052】
「骨髄線維化」という用語は、本明細書中で使用される場合、
- 「線維化グレード0」:正常な骨髄に相当する交差部(交差)のない散在する線状の
レチクリン;
- 「線維化グレード1」:とりわけ、血管周囲領域に、多くの交差部を有する粗い網状
のレチクリン;
- 「線維化グレード2」:ときとして、局所的のみのコラーゲンの束を伴う広範囲に交
差部を有するレチクリンのびまん性かつ高密度の増加、および/または局所性の骨硬化;
- 「線維化グレード3」:粗いコラーゲンの束を伴う広範囲に交差部を有するレチクリ
ンのびまん性かつ高密度の増加、大幅な骨硬化と関連づけられることが多い;
などの2005欧州コンセンサスグレード分類(European consensus grading system)
に従って類別された骨髄線維化を指し(Thiele et. al., Haematologica, 2005, 90(8),
1128-1132、特に1130ページの表3および
図1において定義されるとおり)、この場
合、グレード分類(すなわち、線維密度および性質のグレード分類)は、骨髄バイオプシ
ー試料の評価に基づいて行われる。
【0053】
「本態性血小板血症」(ET)という用語は、本明細書中で使用される場合、"The 201
6 revision to the World Health Organization(WHO) classification of myeloid neopl
asms and acute leukemia", (Blood, 2016, 127:2391-2405に発表)を参照して定義され
る。「本態性血小板血症後骨髄線維症」(PET-MF)という用語は、本明細書中で使
用される場合、ETに続発するMF(すなわち、ETの進行の結果として生じるMF)を
指し、ETは、本明細書の上で定義されるとおりである。IWG-MRT基準(Barosi G
et al, Leukemia(2008) 22, 437-438)によると、本態性血小板血症後骨髄線維症を診断
するための基準は、以下のとおりである。
【0054】
【0055】
「真性多血症」(PV)という用語は、本明細書中で使用される場合、"The 2016 revi
sion to the World Health Organization(WHO) classification of myeloid neoplasms a
nd acute leukemia", (Blood, 2016, 127:2391-2405に発表)を参照して定義される。「
赤血球増加症後骨髄線維症」(PPV-MF)という用語は、本明細書中で使用される場
合、PVに続発するMF(すなわち、PVの進行の結果として生じるMF)を指す。IW
G-MRT基準(Barosi G et al, Leukemia(2008) 22, 437-438)によると、赤血球増加
症後骨髄線維症を診断するための基準は、以下のとおりである。
【0056】
【0057】
本明細書中で使用される場合、MFに関するInternational Worki
ng Group-Myeloproliferative Neoplasms Re
search and Treatment(IWG-MRT)およびEuropean
Leukemia Net(ELN)反応基準(全体を参照によって組み込んだものと
するTefferi et al, Blood 2013 122:1395-1398)によって定義される以下の反応基準が
ここでは使用される。
【0058】
【0059】
一実施形態において、本発明は、骨髄線維症、特に原発性MFの処置に使用するための
、単独またはJAK阻害剤、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩
と組み合わせた、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供し、患者は、表5
の基準による、処置に対する完全奏効を達成する。
【0060】
一実施形態において、本発明は、骨髄線維症、特に原発性MFの処置に使用するための
、単独またはJAK阻害剤、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩
と組み合わせた、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供し、患者は、表5
の基準による、処置に対する部分奏効を達成する。
【0061】
患者において、骨髄線維症は、急性白血病への疾患転化、急性転化せずに進行、心血管
系合併症もしくは血栓症、感染症または門脈圧亢進症のために、高い頻度で生存期間を短
縮させる。骨髄線維症患者の生存期間中央値を改善することが本発明の目的の1つである
。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「生存期間中央値」という用語は、最良の利用可能な処
置を与えられている患者と比較してまたはプラセボを与えられている患者と比較して、疾
患と診断された患者の群の半分の患者が依然として生存している、診断のまたは本発明に
よる処置の開始の時間からの時間を指し、患者は、例えば、その全体を参照により本明細
書に組み込んだものとするGangat et al(J Clin Oncol. 2011 Feb 1;29(4):392-397)に
よって示されているとおり骨髄線維症の同じリスク群に属する。
【0063】
したがって、一実施形態において、本発明は、骨髄線維症、特に原発性MFの処置に使
用するための、単独またはJAK阻害剤、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容
されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切
にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供し、生存期間中央値は、高リス
クMF患者の群において少なくとも3か月または中リスクMF患者の群において少なくと
も6か月、好ましくは、少なくとも12か月増加する。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを指す。
【0065】
「処置する」、「処置すること」、「処置」または「治療」という用語は、本明細書中
で使用される場合、有益または所望の結果、例えば、臨床結果を得ることを意味する。有
益または所望の結果としては、本明細書中で定義される1つ以上の症状の緩和を挙げるこ
とができるが、これに限定されるものではない。処置の一態様は、例えば、前記処置が、
患者に対する有害な影響が最低限でなければならず、例えば、使用される薬剤が、例えば
、予め知られた治療の副作用をもたらすことなく、高いレベルの安全性を有していなけれ
ばならないということである。例えば、状態の症状に関する「緩和」という用語は、本明
細書中で使用される場合、患者における状態の症状の頻度および大きさの少なくとも1つ
を低減することを指す。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「新規に診断される」という用語は、障害、例えば、骨
髄線維症の診断を指し、前記患者はいかなる処置も受けていない。一実施形態において、
本発明は、新規に診断された骨髄線維症患者の処置に使用するための、単独またはJAK
阻害剤、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩と組み合わせた、抗
P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその
結合フラグメントを提供する。
【0067】
「トリプルネガティブ骨髄線維症患者」という用語は、本明細書中で使用される場合、
JAK2、CALRおよびMPL変異がない患者を指す。一実施形態において、本発明は
、トリプルネガティブ骨髄線維症患者の処置に使用するための、単独またはJAK阻害剤
、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩と組み合わせた、抗P-セ
レクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フ
ラグメントを提供する。
【0068】
「最良の利用可能な治療」という用語は、本明細書中で使用される場合、単剤療法とし
て、または組み合わせて、PMF、PET-MFまたはPPV-MFの処置のための20
18年3月より前に認可された市販の任意の薬剤を指す。例となる薬剤としては、ルクソ
リチニブまたは薬学的に許容されるその塩、抗腫瘍薬剤(例えば、ヒドロキシ尿素、アナ
グレリド)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン/プレドニゾロン、メチルプレ
ドニゾロン)、貧血治療調製物(例えば、エポエチン-アルファ)、免疫調節剤(例えば
、サリドマイド、レナリドミド)、プリンアナログ(例えば、メルカプトプリン、チオグ
アニン)、抗ゴナドトロピン(例えば、ダナゾール)、インターフェロン(例えば、PE
G-インターフェロン-アルファ2a、インターフェロン-アルファ)、ナイトロジェン
マスタードアナログ(例えば、メルファラン)、ピリミジンアナログ(例えば、シタラビ
ン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
「脾腫」という用語は、本明細書中で使用される場合、触知可能に肥大した脾臓(例え
ば、脾臓は、左肋骨縁(left coastal margin)下の≧5cmで触知可能である)または
画像検査(例えば、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、MRI、X線または超音
波)によって検出される肥大した脾臓を指し、「肥大した脾臓」という用語は、正常(例
えば、200cm3の正常な脾臓体積中央値)よりもサイズが大きい脾臓を指す。
【0070】
「脾腫の処置」という用語は、本明細書中で使用される場合、表5のMFに関するIn
ternational Working Group-Myeloprolifera
tive Neoplasms Research and Treatment(IW
G-MRT)およびEuropean Leukemia Net(ELN)反応基準に
よって定義されるとおり、脾腫の低減、例えば、脾臓体積の減少を意味する「脾腫の改善
」を指す。一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置、特に骨髄線維症と関連づ
けられる脾腫の処置のための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるそ
の塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリ
ザンリズマブまたはその結合フラグメントの使用を提供することもでき、結果として例え
ば、処置前のベースラインから、例えば、24週目または48週目までに、磁気共鳴断層
撮影(MRI)またはコンピューター断層撮影(CT)によって測定される脾臓体積が≧
20%、≧25%、≧30%または≧35%減少する。
【0071】
「肝腫」という用語は、本明細書中で使用される場合、触知可能に肥大した肝臓または
画像検査(例えば、コンピューター断層撮影(CT)スキャン)によって検出される肥大
した肝臓を指し、「肥大した肝臓」という用語は、正常(例えば、およそ1500cm3
の正常な肝臓体積中央値)よりもサイズが大きい肝臓を指す。
【0072】
「肝腫の処置」という用語は、本明細書中で使用される場合、上記の表のMFに関する
International Working Group-Myeloprolife
rative Neoplasms Research and Treatment(
IWG-MRT)およびEuropean Leukemia Net(ELN)反応基
準により定義されるとおり、肝腫の低減、例えば、肝腫の縮小を意味する「肝腫の改善」
を指す。したがって、一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置、特に骨髄線維
症と関連づけられる肝腫の処置のための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に許
容されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適
切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントの使用を提供し、結果として例えば
、処置前のベースラインから、例えば、24週目または48週目までに、磁気共鳴断層撮
影(MRI)またはコンピューター断層撮影(CT)によって測定される肝臓体積が≧2
0%、≧25%、≧30%または≧35%減少する。
【0073】
「血小板減少」という用語は、本明細書中で使用される場合、血液試料の臨床検査にお
ける正常より少ない血小板数を指す。「血小板減少の重症度」という用語は、本明細書中
で使用される場合、CTCAE(バージョン4.03)による、例えば、血小板減少の特
定のグレード1~4を指す。
【0074】
「血小板減少の処置」という用語は、本明細書中で使用される場合、処置前の状態と比
較してまたは最良の利用可能な治療もしくはプラセボ対照と比較して、「血小板減少を安
定化させること」または「血小板減少を改善すること」を指す。「血小板減少を安定化さ
せること」という用語は、例えば、血小板減少の重症度の上昇を予防する、すなわち、血
小板数が安定したままであることを指す。「血小板減少を改善すること」という用語は、
血小板減少の重症度の軽減、すなわち、血小板数を増加させることを指す。一実施形態に
おいて、本発明は、骨髄線維症の処置、特に骨髄線維症と関連づけられる血小板減少の処
置に使用するための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩と組
み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズ
マブまたはその結合フラグメントを提供し、結果として処置前のベースラインから、例え
ば、処置の24週目または48週目までに、血小板減少を安定化させるか、または血小板
減少を改善する。
【0075】
「好中球減少」という用語は、本明細書中で使用される場合、血液試料の臨床検査にお
ける正常値より低い好中球絶対数(ANC)を指す。「好中球減少の重症度」という用語
は、本明細書中で使用される場合、例えば、CTCAE(バージョン4.03)による好
中球減少の特定のグレード1~4を指す。
【0076】
「好中球減少の処置という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば、処置前の状
態と比較してまたは最良の利用可能な治療もしくはプラセボ対照と比較して、「好中球減
少を安定化させること」または「好中球減少を改善すること」を指す。「好中球減少を安
定化させること」という用語は、例えば、好中球減少の重症度の上昇を予防することを指
す。「好中球減少を改善すること」という用語は、例えば、好中球減少の重症度の低下を
指す。一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置、特に骨髄線維症と関連づけら
れる好中球減少の処置に使用するための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に許
容されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適
切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供し、結果として処置前のベー
スラインから、例えば、処置の24週目または48週目までに、好中球減少を安定化させ
るか、または好中球減少を改善する。
【0077】
「貧血」という用語は、本明細書中で使用される場合、血液試料の臨床検査において、
男性で13.5グラム/100ml未満のヘモグロビンレベルおよび女性で12.0グラ
ム/100ml未満のヘモグロビンレベルを指す。「貧血の重症度」という用語は、本明
細書中で使用される場合、例えば、CTCAE(バージョン4.03)]による貧血の特
定のグレード1~4を指す。
【0078】
「貧血の処置」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば、処置前の状態と
比較してまたは最良の利用可能な治療もしくはプラセボ対照と比較して、「貧血を安定化
させること」または「貧血を改善すること」を指す。「貧血を安定化させること」という
用語は、例えば、貧血の重症度の上昇を予防することを指す(例えば、「輸血非依存性」
患者が「輸血依存性」患者になるのを予防することまたは貧血グレード2が貧血グレード
3になるのを予防すること)。「貧血を改善すること」という用語は、貧血の重症度の低
下またはヘモグロビンレベルの改善を指す。一実施形態において、本発明は、骨髄線維症
の処置、特に骨髄線維症と関連づけられる貧血の処置のための、単独またはルクソリチニ
ブもしくは薬学的に許容されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその
結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントの使用を提供
することができ、結果として処置前のベースラインから、例えば、処置の24週目または
48週目までに、貧血を安定化させるか、または貧血を改善する。
【0079】
「MFと関連づけられる骨髄線維化の処置」という用語は、本明細書中で使用される場
合、例えば、処置前の状態と比較してまたは最良の利用可能な治療もしくはプラセボ対照
と比較して、「骨髄線維化を安定化させること」または「骨髄線維化を改善すること」を
意味する。「骨髄線維化を安定化させること」という用語は、例えば、骨髄線維化の重症
度の上昇を予防することを指す。「骨髄線維化を改善すること」という用語は、2005
欧州コンセンサスグレード分類による、例えば、処置前のベースラインからの骨髄線維化
の重症度の低下を指す。一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置、特にMFと
関連づけられる骨髄線維化の処置のための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に
許容されるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、
適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントの使用を提供することができ、結
果として処置前のベースラインから、例えば、処置の24週目または48週目までに、骨
髄線維化を安定化させるか、または骨髄線維化を改善する。
【0080】
「骨髄線維症と関連づけられる全身症状」という用語は、本明細書中で使用される場合
、例えば、Mughal et al(Int J Gen Med. 2014 Jan 29;7:89-101)によって示される発
熱、そう痒(すなわち、かゆみ)、腹痛/不快感、体重減少、疲労、無気力、早期満腹感
、寝汗または骨の痛みなどの一般的な衰弱させる慢性の骨髄線維症の症状を指す。
【0081】
「骨髄線維症と関連づけられる全身症状の処置」という用語は、本明細書中で使用され
る場合、例えば、処置前の状態と比較したまたは最良の利用可能な治療もしくはプラセボ
対照と比較した、「骨髄線維症と関連づけられる全身症状の改善」、例えば、変更された
骨髄線維症の症状評価フォームバージョン2.0ダイアリー(変更されたMFSAF v
2.0)によって測定される合計症状スコアの減少を指す(Cancer 2011;117:4869-77;N
Engl J Med 2012; 366:799-807、その内容全体を参照によって本明細書に組み込んだも
のとする)。一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置、特に骨髄線維症と関連
づけられる全身症状の処置のための、単独またはルクソリチニブもしくは薬学的に許容さ
れるその塩と組み合わせた、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切に
はクリザンリズマブまたはその結合フラグメントの使用を提供することができ、結果とし
て処置前のベースラインから、例えば、処置の24週目または48週目までに、骨髄線維
症と関連づけられる全身症状の改善をもたらす。
【0082】
本発明の任意の使用の別の実施形態において、MFと関連づけられる1つ以上の全身症
状は、(例えば、解消することによって、または強度、持続時間もしくは頻度を低減する
ことによって)緩和される。一実施形態において、全身症状の低減は、処置前のベースラ
インから、例えば、24週目または48週目までに、変更されたMFSAF v2.0に
よって評価される少なくとも≧20%、少なくとも≧30%、少なくとも≧40%または
少なくとも≧50%である。
【0083】
本発明の任意の使用の一実施形態において、抗P-セレクチン抗体、またはその結合フ
ラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントは、脾臓摘出または
脾臓照射などの放射線療法に続いて、またはその前に投与される。
【0084】
組み合わせ療法
一態様において、本発明は、MFの処置に使用するための、抗P-セレクチン抗体また
はその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供
し、前記P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、少なくとも1つのさらな
る活性剤と組み合わせて投与される。
【0085】
一実施形態において、少なくとも1つの薬剤は、非受容体型チロシンキナーゼ、ヤヌス
キナーゼ(JAK)の阻害剤である。かなりの数のサイトカインおよび増殖因子受容体は
、非受容体型チロシンキナーゼ、ヤヌスキナーゼ(JAK)を利用して、細胞外リガンド
結合を細胞内応答として伝える。例えば、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよび顆
粒球単球コロニー刺激因子はすべて、JAK2を利用する受容体を介してシグナル伝達す
ることが知られている。JAKは、重要な潜在的転写因子のファミリーであるSTAT(
転写のシグナルトランスデューサーおよびアクチベーター)を含む、増殖および生存に関
わる多くの下流経路を活性化する。
【0086】
したがって、本発明は、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切には
クリザンリズマブまたはその結合フラグメントの、少なくとも1つのJAK阻害剤、適切
にはルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩との組み合わせ使用に関する。
【0087】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK1/JAK2阻害剤
、適切にはルクソリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩またはモメロチニブもしく
は薬学的に許容されるその塩、より適切には、ルクソリチニブまたは薬学的に許容される
塩、より適切には、ルクソリチニブリン酸塩である。
【0088】
ルクソリチニブは、JAK1およびJAK2の新規の強力な選択的阻害剤である。ルク
ソリチニブは、JAK1およびJAK2を強力に阻害する[半最大(half maxi
mal)阻害濃度(IC50)0.4から1.7nM]が、200nM(JAK酵素阻害
に関する平均IC50値のおよそ100倍)で試験された場合、26のキナーゼの広範な
パネルを著しくは阻害せず(<30阻害%)、臨床的に関連する濃度ではJAK3を阻害
しない。
【0089】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK2/FLT3阻害剤
、適切にはパクリチニブもしくは薬学的に許容されるその塩またはフェドラチニブもしく
は薬学的に許容されるその塩である。
【0090】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK2V617F阻害剤
、適切にはガンドチニブ(gandotinib)または薬学的に許容されるその塩である。
【0091】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK2阻害剤、適切には
BMS-911543または薬学的に許容されるその塩である。
【0092】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK1阻害剤、適切には
イタシチニブまたは薬学的に許容されるその塩、特にイタシチニブアジピン酸塩である。
【0093】
一実施形態において、少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK2/Src阻害剤、
適切にはNS-018または薬学的に許容されるその塩である。
【0094】
一態様において、本発明は、a)クリザンリズマブまたはその結合フラグメントおよび
b)JAK1/2阻害剤、適切にはルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩を含
む、それから基本的になる、またはそれからなる分離した薬学的な組み合わせを提供する
。適切には、薬学的な組み合わせは、骨髄線維症の処置に使用するためのものである。
【0095】
一態様において、本発明は、骨髄線維症の処置に使用するための、クリザンリズマブま
たはその結合フラグメントを提供し、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントは、
ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩と組み合わせて投与され、クリザンリズ
マブまたはその結合フラグメント、およびルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその
塩は、一緒に、治療有効量で投与される。
【0096】
一態様において、本発明は、骨髄線維症の処置に使用するための、ルクソリチニブまた
は薬学的に許容されるその塩を提供し、ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩
は、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントと組み合わせて投与され、ルクソリチ
ニブまたは薬学的に許容されるその塩、およびクリザンリズマブまたはその結合フラグメ
ントは、一緒に、治療有効量で投与される。
【0097】
一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置に使用するための、抗P-セレクチ
ン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメ
ントを提供し、前記P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、少なくとも1
つのさらなる活性剤と組み合わせて投与され、前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、
HSP90阻害剤(例えば、PU-H71、ルミネスピブ、ガネテスピブ(ganatespib)
);HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタット、ギビノスタット、プラシノスタット、
ボリノスタット);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン
、デシタビン);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害
剤(例えば、MK-2206);PI3K阻害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ
(dactolisib));ヘッジホッグ阻害剤(例えば、グラスデギブ、サリデギブ(saridegi
b)、エリスモデギブ(erismodegib);SMO阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギ
ブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ(simtuzumab)、血清アミロイドPまたはモノ
クローナル抗体(例えば、フレソリムマブ(fresolimumab)、シムツズマブ);オーロラ
Aキナーゼ阻害剤(例えば、ジメチルファスジル(dimetylfasuidil)、アリセルチブ)
;TNF-アルファ調節物質(例えば、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナリドミ
ド、ポマリドミド、サリドマイド);グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン);テ
ロメラーゼ阻害剤(例えば、イメテルスタット);抗貧血薬剤(例えば、ソタテルセプト
(sotatercept)などの赤血球生成促進剤);CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾ
ール、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ネファゾドン、テリスロマイシン);お
よびCYP2C9-CYP3A4二重阻害剤(例えば、フルコナゾール);または、それ
ぞれの場合において、薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される。
【0098】
一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置に使用するための、抗P-セレクチ
ン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメ
ントを提供し、前記P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、少なくとも1
つのさらなる活性剤と組み合わせて投与され、前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、
JAK阻害剤、適切にはルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩、ならびにHS
P90阻害剤(例えば、PU-H71、ルミネスピブ、ガネテスピブ(ganatespib));
HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタット、ギビノスタット、プラシノスタット、ボリ
ノスタット);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン、デ
シタビン);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害剤(
例えば、MK-2206);PI3K阻害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ);
ヘッジホッグ阻害剤(例えば、グラスデギブ、サリデギブ、エリスモデギブ);SMO阻
害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ、血清
アミロイドPまたはモノクローナル抗体(例えば、フレソリムマブ、シムツズマブ);オ
ーロラAキナーゼ阻害剤(例えば、ジメチルファスジル(dimetylfasuidil)、アリセル
チブ);TNF-アルファ調節物質(例えば、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナ
リドミド、ポマリドミド、サリドマイド);グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン
);テロメラーゼ阻害剤(例えば、イメテルスタット);抗貧血剤(例えば、ソタテルセ
プトなどの赤血球生成促進剤);CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、クラリ
スロマイシン、イトラコナゾール、ネファゾドン、テリスロマイシン);およびCYP2
C9-CYP3A4二重阻害剤(例えば、フルコナゾール);または、それぞれの場合に
おいて、薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる
活性剤である。
【0099】
本明細書中で使用される「組み合わせ」または「薬学的な組み合わせ」という用語は、
非固定の組み合わせを指し、この場合、活性剤および少なくとも1つのさらなる活性剤は
、独立して同時にまたは時間間隔内で別々に投与されてもよく、とりわけ、これらの時間
間隔は、組み合わせパートナーが協同的な、例えば、相乗的な効果を示すことを可能にす
る。「共投与」または「併用投与」などの用語は、本明細書において利用される場合、選
択された組み合わせパートナーの、それを必要とする1人の対象(例えば、患者)への投
与を包含することを意味し、薬剤が必ずしも同じ投与経路または同時に投与されるわけで
はない処置計画を含むことが意図される。
【0100】
「非固定の組み合わせ」という用語は、活性成分、例えば、1つの活性剤および少なく
とも1つのさらなる活性剤が両方、個別の要素として、同時に、または特定の時間制限な
く連続的に、のいずれかで患者に投与され、そのような投与が、患者の体内で治療有効レ
ベルの2つの化合物をもたらすことを意味する。特に、ルクソリチニブまたは薬学的に許
容されるその塩と組み合わせた、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントの言及は
、本明細書中で使用される場合(例えば、本明細書の実施形態のいずれかまたは請求項の
いずれかにおいて)、「非固定の組み合わせ」を指し、少なくとも1つのさらなる活性剤
(クリザンリズマブは除かれる)と組み合わせた、ルクソリチニブまたは薬学的に許容さ
れるその塩との言及は、本明細書中で使用される場合(例えば、本明細書の実施形態のい
ずれかまたは請求項のいずれかにおいて)、1単位剤形(例えば、カプセル、錠剤、カプ
レットもしくは微粒子)としての固定の組み合わせ、非固定の組み合わせ、または併用投
与用のキットオブパーツを指し、ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩および
1つ以上の組み合わせパートナー(さらなる「薬学的な活性成分」、「治療剤」または「
補助剤(co-agent)」とも言及される、本明細書中で明記される例えば、別の薬物)は、
独立して同時または時間間隔内で別々に投与されてもよい。
【0101】
「治療有効量」という用語は、研究者または臨床医が得ようとする組織、系または動物
(ヒトを含む)の所望の生物学的および/または医学的反応を生じさせる薬物または治療
剤の量を指す。
【0102】
投与および処置計画
一態様において、本発明は、患者における骨髄線維症、好ましくは、原発性骨髄線維症
の処置に使用するための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切には
クリザンリズマブまたはその結合フラグメントを提供し、抗P-セレクチン抗体またはそ
の結合フラグメントは、それぞれの投与(用量)において体重1kg当たり2.5mg(
2.5mg/kg)から20mg/kgの間、適切には2.5mg/kgから10mg/
kgの間の用量で患者に投与される。好ましくは、各用量は、5mg/kg、7.5mg
/kgまたは10mg/kgである。適切には、用量は、処置全体をとおして変わらない
ままである。同様に、適切には、用量は、疾患状態により調節、用量増加または用量減少
のいずれかによって決定される。
【0103】
一実施形態において、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはク
リザンリズマブまたはその結合フラグメントは、4週毎(+/-3日)に患者に投与され
る。
【0104】
迅速に治療効果を発揮するため、または定常状態濃度を達成するために、最初の2用量
が2週間(+/-3日)あけて与えられ、これに4週毎(+/-3日)に与えられるさら
なる用量が続くことが好ましく、各用量は、2.5mg/kgから20mg/kgの間で
ある。好ましくは、各用量は、5mg/kg、7.5mg/kgまたは10mg/kgで
ある。
【0105】
適切には、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズ
マブまたはその結合フラグメントは、対象の静脈内に与えられる。
【0106】
一実施形態において、本発明は、骨髄線維症の処置に使用するための、抗P-セレクチ
ン抗体またはその結合フラグメント、適切にはクリザンリズマブまたはその結合フラグメ
ントを提供し、前記抗P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、ルクソリチ
ニブ、または薬学的に許容されるその塩と組み合わせて投与される。適切には、ルクソリ
チニブは、患者の血球数に応じてJakavi(登録商標)/Jakafi(登録商標)
に関する処方情報および治療医師の判断により、1日に2回5mg、1日に2回10mg
、1日に2回15mg、1日に2回20mgまたは1日に2回25mgなどの1日に2回
5mgから1日に2回25mgの量で投与される。
【0107】
本明細書中で言及されるすべての刊行物および特許出願は、本開示の発明の概念が属す
る当業者の技術レベルを示す。すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特
許出願のそれぞれが参照により組み込まれることを具体的に、個別に示したのと同じ程度
、参照によって本明細書に組み込んだものとする。
【0108】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために記載されているが、決してその範囲を限
定することを意図せず、そのように解釈されるべきではない。
【実施例0109】
実験
1.Gata1lowマウスモデルにおいて骨髄線維症の進行を止めるためのP-セレ
クチン阻害剤SEG101(クリザンリズマブ)の使用に関する前臨床試験
【0110】
実験1:本実験では、単独またはルクソリチニブと組み合わせてモノクローナル抗体m
RB40.34を用いて、マウスのP-セレクチンを阻害して、処置がGata1low
マウスにおける加齢に伴う血栓イベントの数を減少させるかどうかを評価し、さらにP-
セレクチンの薬理学的阻害がGata1lowマウスにおいてpre-MFからMFへの
進行を止めるかどうか評価する。
【0111】
Gata1lowマウス(5~6か月齢)を5つの群(各群当たり8匹のマウス)に分
ける:
群1:ビヒクル処置(H2O中の2% v/v DMSO)(群3および4に対する陰
性対照)
群2:記載されているとおり(Embury SH et al, Blood 2004;104:3378-85;Kaul DK e
t al, J Clin Invest 2000;106:411-20)、市販の抗マウスP-セレクチンmAb RB
40.34(30ug/マウス/日)をマウスに与える。
群3:記載されているとおり(Zingariello M et al, Blood Cancer Journal 2017;7(6
):e572)、マウスにルクソリチニブ(H2O中の2% v/v DMSO中の45mg/
kgを1日2回、強制経口投与によって)を単独で与える。
群4:マウスに組み合わせで抗マウスP-セレクチンmAb RB40.34pおよび
ルクソリチニブを与える
群5:マウスに未分画ブタヘパリン(1.6U/日/マウス)または抗マウスE-セレ
クチンmAb(10E9.6、Pharmigen)(30ug/マウス/日)を単独で
与える(群2に対する陰性対照)。
【0112】
マウスを5日間(月曜日から金曜日)毎日処置し、2日間(土曜日および日曜日)休息
させた後、再び5日間処置する。これらの処置を1か月続ける。その時点で、マウスを屠
殺し、それらの肝臓、脾臓、心臓および腎臓を、フィブリノーゲンに対する抗体を用いた
免疫組織化学によって血栓イベントの徴候に関して分析する。相関実験には、血小板サイ
ズおよび細胞表面P-セレクチン発現のフローサイトメトリー測定、尾静脈を刺した後の
出血時間および小手術後の生存の評価が含まれる。P-セレクチンの薬理学的阻害が、G
ata1lowマウスの臓器において血栓形成を予防することが予想される。これらの効
果は、P-セレクチン阻害に特異的であり、ヘパリン/E-セレクチンおよびルクソリチ
ニブのみの群では観察されないことが予想される。抗P-セレクチン抗体によるP-セレ
クチン阻害の効果が、ルクソリチニブを加えることによって増強されることが予想される
。
【0113】
脾腫は、臨床症状および血液学的異常をもたらすPMFの主要な症状である。PMF患
者の脾臓は、造血幹細胞(HSC)および巨核球の数が増加している。MF脾臓の巨核球
は、P-セレクチンを高レベルに発現し、これが、好中球エンペリポレーシスを誘発し、
それが、脾臓微小環境を維持するMF特異的なHSCの形成を促進することが以前に証明
された増殖因子であるTGF-βの放出により疾患進行につながることが仮定される。
【0114】
実験2:本実験では、単独またはルクソリチニブと組み合わせてモノクローナル抗体m
RB40.34を用いて、マウスのP-セレクチンを阻害して、処置が、骨髄線維化の発
生を予防することによってGata1lowマウスにおける疾患進行を予防するかどうか
を評価する。
【0115】
Gata1lowマウスモデルにおいて、疾患進行は、P-セレクチン/TGF-β回
路によって維持されることが仮定される。Gata1lowマウスにおいて、脾臓での造
血は、P-セレクチンとTGF-βの間の回路によって維持され、疾患進行をもたらすこ
とが提示される。この回路は、好中球-MKエンペリポレーシスにつながるMKにおける
P-セレクチンの異常な発現によって誘発されて、TGF-β含有量が増加し、結果とし
て線維細胞が活性化される。活性化線維細胞は、場合によってP-セレクチンにより、M
Kとのペリポレーシス(peripolesis)を確立して、脾臓においてこれらの細胞の増殖を
維持する「骨髄線維症関連幹細胞ニッチ」を形成し、さらにMKおよびさらに好中球を生
じさせて、疾患進行をもたらす増幅ループを確立する。このループはまた、BMにおける
造血不全および線維化を引き起こす場合もある。
【0116】
十分に示されたマウスモデルの骨髄線維症に対するTGF-β受容体1キナーゼの阻害
の効果を考慮して、P-セレクチン阻害剤の効果をSB431542により得られる効果
と比較する。実際、TGF-βシグナル伝達の阻害とは反対に、P-セレクチンの阻害の
副作用は限定されていたため、好ましいTGF-β阻害剤である。SB431542単独
またはルクソリチニブと組み合わせて並列実験を実施する。Gata1lowマウスを、
5~6か月齢で(すなわち、pre-MFステージにおいて)処置し、MFを有すると予
想される10~12か月齢で分析する。
【0117】
実験2a:P-セレクチン阻害
Gata1lowマウス(5~6か月齢)を5つの群(各群当たり8匹のマウス)に分
ける:
群1:ビヒクル処置(H2O中の2% v/v DMSO)(群3および4に対する陰
性対照)
群2:マウスに市販の抗マウスP-セレクチンmAb RB40.34(30ug/マ
ウス/日)を与える
群3:マウスにルクソリチニブ(H2O中の2% v/v DMSO中の45mg/K
gを1日2回、強制経口投与によって)を単独で与える
群4:マウスに組み合わせで抗マウスP-セレクチンmAb RB40.34pおよび
ルクソリチニブを与える
群5:マウスに未分画ブタヘパリン(1.6U/日/マウス)または抗マウスE-セレ
クチンmAb(10E9.6、Pharmigen)(30ug/マウス/日)を単独で
与える(群2に対する陰性対照)。
【0118】
実験2b:TGF-β受容体1キナーゼ阻害
Gata1lowマウス(各群当たり8匹のマウス)を、以下の方式によりSB431
542で処置する:
群1:ビヒクル処置(H2O中の2% v/v DMSO)(陰性対照)
群2:記載されているとおり(Spangrude GJ et al, Stem Cells 2016;34:67-82;Zing
ariello M et al, Blood 2013;121:3345-63)、マウスにSB431542(60μg/
kg/日、カタログ番号S4317-5GM、Sigma-Aldrich、セントルイ
ス、MO)を与える。
群3:マウスにルクソリチニブ(H2O中の2% v/v DMSO中の45mg/k
g、1日2回、強制経口投与によって)を単独で与える
群4:マウスに組み合わせでSB431542およびルクソリチニブを与える
【0119】
5~6か月齢のマウスを5日間(月曜日から金曜日)毎日処置した後、2日間休息させ
、その後、再び5日間処置する。これらの処置を、マウスが10~12か月齢に達するま
で続けた。その時点で、Spangrude GJ et al, Stem Cells 2016;34:67-82;Zingariello
M et al, Blood 2013;121:3345-63によって記載されているとおり、マウスを屠殺し、M
Fへの進行の徴候に関して分析する。
【0120】
この試験のエンドポイントは、血球数ならびに骨髄および脾臓における線維化、血管新
生、骨硬化および造血に関する病理組織学的検査を含む。
【0121】
P-セレクチンの薬理学的阻害は、遺伝子欠失により得られる結果を繰り返し、Gat
a1lowマウスにおいてMFの進行を止めることが予想される。これらの効果は、P-
セレクチン阻害に特異的であり、ヘパリン/E-セレクチン群では観察されないこと、お
よびこの効果は、ルクソリチニブによって増強されることが予想される。SB43154
2による処置の結果は、P-セレクチン阻害剤により得られる効果と類似しているが、S
B431542は、不良な毒性プロファイル(骨硬化の増加)と関連づけられることが予
想される。
【0122】
2.臨床試験
単独またはルクソリチニブと組み合わせた、クリザンリズマブの臨床試験を、例えば、
標準的な臨床実務(例えば、COMFORT-1試験と類似の例えば、プラセボ対照試験
)に従って、骨髄線維症、特に原発性骨髄線維症の患者において行う。
【0123】
重要な選択基準には、PMF、PPV-MFまたはPET-MFの診断、年齢が18歳
以上の男性または女性、肋骨縁下で測定する5cm以上の触知可能な脾臓長さを有する、
International Working Group(Cervantes et al, Blood 2
009 113:2895-2901)によって定義された高リスク(3つ以上の予後因子)または中リス
クレベル2(2つの予後因子)と分類される対象、および(1)Cervantes et al, 2009
基準による高リスクの分類;(2)肋骨縁下の10cm以上の触知可能な脾腫または(3
)症状スクリーニングフォームに関してプロトコルで定義されたスコアにより指定された
MFの活発な症状の徴候のうちの1つ以上に基づいてMFの処置が示されている対象が含
まれる。対象は、<10%の末梢芽球細胞数を有し、>20×106/LのCD34+細
胞絶対数を有し、JAK阻害剤治療未処置でなければならない。対象は、利用可能な治療
に対して難治性、抵抗性、または不耐性でなければならず、または治験責任医師の判断に
おいて利用可能な治療に対する候補ではない。
【0124】
一次有効性エンドポイント:
・MRI(または適用可能な対象においてはCTスキャン)によって測定される、ベース
ラインから24週目までにおける脾臓体積の≧35%の減少を達成している対象の割合。
【0125】
安全性および忍容性:
・安全性および忍容性は、有害事象の頻度、持続時間および重症度を監視し、理学的検査
を実施し、バイタルサイン、心電図(ECG)、血液化学的検査、血液学的検査および尿
検査の結果の変化を調べることによって評価する。
【0126】
二次有効性エンドポイント:
・1)クリザンリズマブまたは2)クリザンリズマブおよびルクソリチニブを与えられる
よう初めに無作為化された対象間における、脾臓体積のベースラインからの≧35%の減
少の維持の持続時間。
・変更されたMFSAF v2.0ダイアリーによって測定される、ベースラインから2
4週目までにおける合計症状スコアの≧50%減少を有する対象の割合。
・変更されたMFSAF v2.0ダイアリーによって測定される、ベースラインから2
4週目までの合計症状スコアの変化。
・全生存期間。
[配列表]
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
【化6-4】
【化6-5】
【化6-6】
【化6-7】
【化6-8】
【化6-9】
本明細書中で言及されるすべての刊行物および特許出願は、本開示の発明の概念が属する当業者の技術レベルを示す。すべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが参照により組み込まれることを具体的に、個別に示したのと同じ程度、参照によって本明細書に組み込んだものとする。
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
患者における骨髄線維症(MF)の処置に使用するための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[2]
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)、本態性血小板血症後骨髄線維症(PET-MF)および真性多血症後骨髄線維症(PPV-MF)を含む、請求項1に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[3]
骨髄線維症は、原発性骨髄線維症(PMF)である、請求項1または2に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[4]
生存期間中央値が、少なくとも3か月増加する、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[5]
前記患者は、前記処置に完全奏効する、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[6]
前記MFは、新規に診断されたMFである、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[7]
前記P-セレクチン抗体、またはその結合フラグメントは、少なくとも1つのさらなる活性剤と組み合わせて投与される、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[8]
前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、JAK1/JAK2阻害剤、JAK2/FLT3阻害剤、JAK2
V617F
阻害剤、JAK2阻害剤、JAK1阻害剤またはJAK2/Src阻害剤、例えば、ルクソリチニブ、または薬学的に許容されるその塩である、請求項7に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[9]
ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩は、1日に2回5mg、1日に2回10mg、1日に2回15mg、1日に2回20mgまたは1日に2回25mgなどの1日に2回5mgから1日に2回25mgの量で投与される、請求項8に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[10]
前記P-セレクチン抗体またはその結合フラグメントは、クリザンリズマブまたはその結合フラグメントである、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[11]
クリザンリズマブは、2.5mg/kgから20mg/kgの量で、特に、5mg/kgまたは7.5mg/kgの量で投与される、請求項10に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[12]
クリザンリズマブは、4週毎(+/-3日)に投与される、請求項10または11に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[13]
クリザンリズマブの最初の2用量が2週間(+/-3日)あけて与えられ、これに4週毎(+/-3日)に与えられるさらなる用量が続き、各用量は、2.5mg/kgから20mg/kgの間である、請求項11または12に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
[14]
クリザンリズマブの各用量は、5mg/kgまたは7.5mg/kgの量で投与される、請求項13に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
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前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、HSP90阻害剤(例えば、PU-H71、ルミネスピブ、ガネテスピブ(ganatespib));HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタット、ギビノスタット、プラシノスタット、ボリノスタット);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン、デシタビン);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害剤(例えば、MK-2206);PI3K阻害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ);ヘッジホッグ阻害剤(例えば、グラスデギブ、サリデギブ、エリスモデギブ);SMO阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ、血清アミロイドPまたはモノクローナル抗体(例えば、フレソリムマブ、シムツズマブ);オーロラAキナーゼ阻害剤(例えば、ジメチルファスジル(dimetylfasudil)、アリセルチブ);TNF-アルファ調節物質(例えば、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド);グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン);テロメラーゼ阻害剤(例えば、イメテルスタット);抗貧血剤(例えば、ソタテルセプトなどの赤血球生成促進剤);CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ネファゾドン、テリスロマイシン);およびCYP2C9-CYP3A4二重阻害剤(例えば、フルコナゾール);または、それぞれの場合において、薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項7~14のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。
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前記少なくとも1つのさらなる活性剤は、ルクソリチニブまたは薬学的に許容されるその塩であり、少なくとも1つの追加のさらなる活性剤が、HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタット、ギビノスタット、プラシノスタット、ボリノスタット);DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-アザシチジン、デシタビン);mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、エベロリムス);AKT阻害剤(例えば、MK-2206);PI3K阻害剤(例えば、ブパルリシブ、ダクトリシブ);ヘッジホッグ阻害剤(例えば、グラスデギブ、サリデギブ、エリスモデギブ);SMO阻害剤(例えば、ソニデギブ、ビスモデギブ);抗線維化剤、例えば、シムツズマブ、血清アミロイドPまたはモノクローナル抗体(例えば、フレソリムマブ、シムツズマブ);オーロラAキナーゼ阻害剤(例えば、ジメチルファスジル(dimetylfasudil)、アリセルチブ);TNF-アルファ調節物質(例えば、ダナゾール);免疫調節剤(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、サリドマイド);グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン);テロメラーゼ阻害剤(例えば、イメテルスタット);抗貧血薬剤(例えば、ソタテルセプトなどの赤血球生成促進剤);CYP3A4阻害剤(例えば、ケトコナゾール、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ネファゾドン、テリスロマイシン);およびCYP2C9-CYP3A4二重阻害剤(例えば、フルコナゾール);または、それぞれの場合において、薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項7~14のいずれか1項に記載の使用のための、抗P-セレクチン抗体またはその結合フラグメント。