(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054144
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】軌道上の環境内で動作中の宇宙船と地上電気通信デバイスとの間の通信を取り扱うための方式および装置
(51)【国際特許分類】
H04W 84/06 20090101AFI20240409BHJP
H04B 7/204 20060101ALI20240409BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20240409BHJP
H04W 28/06 20090101ALI20240409BHJP
【FI】
H04W84/06
H04B7/204
H04W56/00 130
H04W28/06 110
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024006951
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2022024211の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】62/465,945
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/490,298
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/857,073
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】519315811
【氏名又は名称】リンク グローバル、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スピーデル、タイゲ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー、アンドリュー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地上電気通信のために典型的に使用される地上電気通信デバイスの特徴および設備を使用した通信を提供する。
【解決手段】必ずしもモバイル局の修正を必要とすることなく、モバイル局の設計上の想定を超える環境内でモバイル局との通信を取り扱う多元接続トランシーバであって、地球軌道内にある多元接続トランシーバは、より大きな距離、より大きな相対運動及び/又は地上トランシーバの機能が軌道トランシーバによって実施される場合に一般的に見られる他の条件などのモバイル局の設計上の想定を超えている間は、モバイル局との通信を閉鎖する。軌道トランシーバは、フレームデータ構造を解析するデータ解析器と、軌道から地上への伝播遅延に基づいてタイミングを調節する信号タイミングモジュールと、周波数偏移器と、多元接続プロトコルを使用する地球軌道から通信することができるプログラム可能なラジオと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地上モバイル局との通信を取り扱う1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局であって、前記複数の地上モバイル局のうちのある地上モバイル局が、(1)前記地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または(2)前記地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されており、前記多元接続基地局が、
フレーム構造に従って、前記多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器であって、前記フレーム構造が、どの時間スロットが前記複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義し、前記フレーム構造が、前記多元接続基地局から前記複数の地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを備える、データ解析器と、
前記多元接続基地局と前記地上モバイル局との間の基地-モバイル間の距離に基づいて、前記地上モバイル局への伝送信号の前記フレーム構造に対する信号タイミング調節を判定する、信号タイミングモジュールであって、前記基地-モバイル間の距離が、前記制限距離を超えている、信号タイミングモジュールと、
多元接続プロトコルを使用して前記多元接続基地局から前記地上モバイル局までの通信を通信すること、および前記信号タイミング調節を考慮することができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、前記通信は、前記基地-モバイル間の距離が前記制限距離を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と前記地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または前記地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える、多元接続基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙船と地上電気通信デバイスとの間の通信を取り扱うための方式および装置に関し、より具体的には、地上電気通信のために典型的に使用される地上電気通信デバイスの特徴および設備を使用した通信に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月2日に出願された「Method for Low-Cost and Low-Complexity Inter-Satellite Link Communications within a Satellite Constellation Network for Near Real-Time,Continuous,and Global Connectivity」と題する米国仮特許出願第62/465,945号の優先権を主張するものであり、かつその非仮出願である。
【0003】
本出願は、2017年4月26日に出願された「Method for Communications Between Base Stations Operating in an Orbital Environment and Ground-Based Telecommunications Devices」と題する米国仮特許出願第62/490,298号の優先権を主張するものであり、かつその非仮出願である。
【0004】
上に引用される出願の開示全体は、あらゆる目的のために、本文書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
モバイル通信は、音声およびデータ通信、場合によってはロケーション発見特徴も搬送するために、モバイル局(mobile station、MS)と、MSが電気通信ネットワーク、インターネットなどのような他のネットワークリソースとの間で通信するためのインターフェースを提供し得るトランシーバと、の間で送信されている信号を伴う。トランシーバは、複数のトランシーバからのトラフィックを取り扱う基地トランシーバ局(base transceiver station、BTS)内の構成要素であり得る。BTSには、アンテナおよび暗号化/復号化要素も含まれ得る。アンテナは、選択的なアンテナであり得、異なるロケーションにある異なるMSは、それらのそれぞれのトランシーバに、BTSの異なるアンテナを介して通信し得る。BTSは、それらの他のネットワークリソースと通信するために、有線、無線、および/または光チャネルを有し得る。BTSは、1つ以上のトランシーバをサポートすることができ、モバイル通信をサポートするための所与の基地局は、その基地局の1つ以上のBTSを制御する基地局コントローラ(base station controller、BSC)を有し得る。
【0006】
モバイル局の例としては、モバイル電話、セルラ電話、スマート電話、および特定のBTSと通信するように備え付けられた他のデバイスが挙げられる。本明細書では、モバイル局はその名前で言及されているが、モバイル局の動作、機能、または特性は、効果的または機能的にはモバイル局であるが、現在はモバイルではない局の動作、機能、または特性でもあり得ることを理解されたい。一部の例では、モバイル局は、いくつかの接続された周辺機器を備え、セルラ接続を有するラップトップコンピュータなどの、場所から場所へと移動し得るが、動作中は静止しているポータブル局の代わりと考慮され得るか、またはモバイル局は、実装されたホームセキュリティシステム内に埋め込まれたセルラデバイスなど、静止していてもよい。必要なのは、モバイル局がモバイル通信インフラストラクチャを使用して通信することができるか、または通信するように構成されていることである。
【0007】
BTSは、基地局制御機能(base station control function、BCF)を介して、親BSCによって制御され得る。これらの要素の各々は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを使用して実装され、かつネットワーク管理および保守機能を含み得るが、基地局は、合意されたプロトコルに従ってモバイル局と通信する1つ以上のトランシーバを有するとして記載され得る。これは、BTSの合意されたプロトコルに従って動作するようにBTSを構成、適合、またはプログラムすること、ならびにMSの合意されたプロトコルに従って動作するようにMSを構成、適合、またはプログラムすることによるものであり得る。プロトコルは、トランシーバとMSとの間でデータを送信する方法、エラーを取り扱う方法、暗号化を取り扱う方法、ならびにBTSとMSとの間で制御指示およびステータスデータを送信する方法の詳細を含み得る。例えば、プロトコルの一部は、MSがBTSに接触し、MSが使用するタイミング、キャリア周波数、および他のプロトコルオプションを、BTSがMSに示す相互作用を含み得る。この相互作用は、音声データを搬送すること、テキストデータを搬送すること、他のデータを搬送すること、イントラセルハンドオーバおよび他のタスクを提供することを含み得る。
【0008】
説明を簡素化するために、本明細書の多くの例では、通信は、1つのMSとの相互作用のためのBTSとMSとの間のものであるように記載されているが、相互作用は、BTSからトランシーバ、ラジオ回路、アンテナ、MSアンテナ、MSラジオ回路、MS内のソフトウェア/ハードウェア、およびMSからBTSへの他の方向の対応するパスであり得ることを理解されたい。したがって、BTSがMSと通信している一部の例では、通信は、トランシーバを介しており、本例は、BTSが制御している可能性がある他のトランシーバに関する記述は無視する。
【0009】
BTSが使用し得るプロトコルの例としては、ガウス型最小偏移キーイング(Gaussian minimum-shift keying、GMSK)を含むGSM(登録商標)(Global System for Mobile Communication:モバイル通信用グローバルシステム、GSMアソシエーションの商標)2G+プロトコル、GMSKおよび8-PSKキーイングを含むEDGEプロトコルが挙げられる。BTSは、プロトコルで許容される無線スペクトルのスペクトルバンド内で複数のセットのキャリア周波数を使用する複数のトランシーバを取り扱うことができる。したがって、スペクトルバンドがキャリア周波数スペクトルに論理的に分割される場合、トランシーバは、それらのキャリア周波数のうちの1つ(または複数)を使用してMSと通信するチャネルを使用し得る。プロトコルは、所与のチャネルに対して、アップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルが存在し、場合によっては、キャリア周波数が互いに分離されていることを特定し得る。一部の事例では、アップリンクサブチャネルは、ダウンリンクサブチャネルのキャリア周波数に隣接するキャリア周波数を有する。一部の事例では、すべてのアップリンクサブチャネルが1つのスペクトルバンド内にあり、すべてのダウンリンクサブチャネルが別のスペクトルバンド内にある。説明を簡単にするために、チャネルは、アップリンク部分およびダウンリンク部分を有し、それらの部分がキャリア周波数内に広く分離されている場合であっても、1つのチャネルであるかのように記載される場合がある。
【0010】
一部のBTSは、周波数ホッピングを提供し得、この場合、トランシーバおよびモバイル局は一緒に、キャリア周波数からキャリア周波数に迅速にジャンプして、BTSの全体的な性能を改善する。プロトコルは、使用するホッピング系列を特定し得る。
【0011】
GSMプロトコルでは、トランシーバ-MS間の通信はフレームを伴い、各フレームは、最大8つの時間スロットを有する。8つの時間スロットで、トランシーバは最大8つのMSに方向付けられたフレームを送信し、各MSにはトランシーバのBTSによってフレーム内の一意の時間スロットが割り振られる。MSはそれらの分配された時間スロット内でそれらの伝送を送信し得、そのトランシーバと通信している各MSはどの時間スロットを使用するべきかを知っているので、同様に位置付けられたMSはそれらの分配された時間スロット内でトランシーバに通信し返すことができる。トランシーバは、8つの時間スロットすべてを使用するわけではない。
【0012】
GSMプロトコルの共通制御チャネル(Common Control Channel、CCCH)などの信号用チャネルを使用して、MSにそれらの時間スロットおよびキャリア周波数に対する割り当てを伝達することができる。例えば、一部の共通制御チャネルは、ページング(例えば、BTSからMSへのものであるPCH要求の作成)、アクセス認可(例えば、BTSからMSへのものであるAGCH)、およびセルブロードキャスト(例えば、BTSからMSへのものであるCBCH)のために、アクセス要求を作成する(例えば、MSからBTSへのものであるRACH要求を作成する)ために使用される。AGCH(Access Grant Channel:アクセス認可チャネル)は、時間スロットの割り当て/キャリアの割り当てを認可するために使用される。別のチャネルのブロードキャスト制御チャネル(Broadcast Control Channel、BCCH)は、ロケーションエリア識別子(Location Area Identity、LAI)、MSによって監視されるべき隣接セルのリスト、セル内で使用される周波数のリスト、セル識別子、電力制御インジケータ、DTXが許可されているかどうか、およびアクセス制御(すなわち、緊急通話、通話制限など)のような情報をMSに送信するために使用される場合とされない場合がある。
【0013】
BTSの例としては、セルラ電話塔、マクロセルトランシーバ、フェムトセルトランシーバ、(1つのトランシーバのみを有し得る)ピコセルなどが挙げられる。BTSは、MSと無線で通信するであろう。一部のBTSは、セルラ電話塔などと有線接続されたバックホール(BTSと他のネットワークリソースとの間のインターフェース)を有するが、一部は、マイクロ波ポイントツーポイント双方向通信チャネルなどの無線バックホールを有し得る。したがって、BTSは、MSからデータストリームを受信してそれらを処理し、かつ/またはそれらを他のネットワークリソースに転送し、ならびに他のネットワークリソースからデータストリームを受信してそれらを処理し、かつ/またはそれらをBTS-MSリンク(複数可)を介してMSに転送する、いくつかの異なるタイプの電動デバイスのうちのいずれかであり得る。この意味で、BTSはMSのアクセスポイントとして作用し、MSが電気通信ネットワーク、インターネット、プライベートネットワークなどのようなネットワークリソースにアクセスすることを可能にする。アクセスを使用して、音声通話、その他の通話、テキスティング、データ転送、動画などをルーティングすることができる。
【0014】
BTSの後ろの電気通信ネットワークは、データを適切なBTSにルーティングする方法と、BTSから受信したデータをルーティングする方法とを判定するネットワークおよびスイッチングサブシステムを含み得る。電気通信ネットワークはまた、回路接続およびパケットベースのインターネット接続、ならびにネットワーク保守サポートを取り扱うためのインフラストラクチャを有し得る。いずれの場合でも、BTSは、一部のプロトコルをMSで使用し、その他のプロトコルをバックホールで使用するように構成され得る。
【0015】
MSとBTSとの間の通信のためのプロトコルは、それらが標準化され、その結果、任意の標準MSが任意のBTSと通信することができ、レンジ要件が満たされ、メンバーシップ要件が満たされていると想定する(例えば、MSはそれ自体をBTSに対して、BTSまたはBTSが使用するサービスが、MSが権限を与えられたグループのメンバーであるか、または別様に、BTSによって提供されるサービスを使用する権限を与えられていると判定するような方法で識別する)ようなものであり得る。一部のプロトコルの例には、2G(すなわち、第2世代)ネットワークプロトコルとも呼ばれることがあるGSMプロトコルが含まれる。他の例には、GPRS(General Packet Radio Service:汎用パケットラジオサービス)、EDGE(Enhanced Data rates for GSM Evolution:GSM進化型高速データレート、またはEGPRS)、3GPP本体によって開発された3G(第3世代)UMTS標準、または第4世代(fourth-generation、4G)LTE拡張プロトコルが含まれる。
【0016】
これらのプロトコルには、スペクトルバンドの使用、タイミング、コード化、およびコンフリクト解決の規則がある。BTSは同時に多くのMSと通信しなければならない可能性があるため、利用可能な無線通信経路はプロトコルに従って分割される。所与のプロトコルは、周波数、時間、コード、またはそれらのうちの2つ以上によって分割された利用可能な無線通信経路を有し得る。これにより、複数のユーザが同じ無線通信経路を共有することができる。
【0017】
例えば、時分割多元接続(Time Division Multiple Access、TDMA)では、BTSおよび複数のMSは、期間を時間スロット(または「バースト期間」)に分割することに同意し、第1のMSが第2のMSと干渉する可能性がある場合、第1のMSには第1の時間スロットが割り振られ、第2のMSには利用可能な時間スロットのうちの異なる時間スロットが割り振られる。異なるMSは異なる時間スロットを使用するため(および、すべての当該MSが、タイミングは十分適当であることに合意しているため)、当該MSは、共通のキャリア周波数を共有することができ、それらのそれぞれの伝送は干渉しない。一例は、各フレームに対して各々576.92μs(microsecond:マイクロ秒)の8つの時間スロットがあり、そのため、第1の時間スロットに割り振られたMSが第1の時間スロット中にいくつかのビットを送信し、その時間スロットの終了時またはその前に伝送を停止し、無音を維持し、次いで次の期間の第1の時間スロット中に必要に応じて伝送を続ける可能性がある場合であろう。いつMSがBTSから何かを聴取するかを判定するために(およびいつBTSがそのデータの伝送を開始するかを判定するために)同様の割り当てが発生する。
【0018】
したがって、単一のキャリア周波数を使用して、BTSの各トランシーバは最大8つのMSと通信することができ、それらのMSへの通信はTDMAフレームにグループ化され、そのキャリア周波数チャネルを使用するダウンリンクチャネル上で伝送される。タイミングは、それらのMSの各々がそれらのそれぞれの時間スロット内で、そのキャリア周波数チャネルを使用するアップリンクチャネル上のBTSと通信し得るようなものである。これは「TDMAフレーム」と呼ばれ、そのキャリア周波数を使用する8つのMSのすべてにわたるデータレートは270.833キロビット/秒(kilobits/second、kbit/s)であり、TDMAフレーム持続期間はいずれの方向でも4.615ミリ秒(millisecond、ms)である。
【0019】
周波数分割多元接続(Frequency Division Multiple Access、FDMA)は、利用可能な無線通信経路を分割して割り当てる別の方法である。FDMAでは、無線通信経路に利用可能なまたは割り当てられたスペクトルバンド幅は、キャリア周波数によって異なるチャネルに分割される。第1のMSには1つのキャリア周波数が割り振られ、第2のMSには別のキャリア周波数が割り振られるため、両方が同時に1つのBTSと送受信することができる。
【0020】
上の例では、複数のモバイル局が同時にBTSと通信する可能性があり、BTSと特定のMSとの間の通信は、特定のMSまたはBTSからの信号で情報を送信することを含むため、無線信号の衝突が、BTSと特定のMSとに、複数の時間スロットのうちのどの時間スロットを使用するか(TDMA)、および/または複数のキャリア周波数のうちのどのキャリア周波数を使用するか(FDMA)について同意させることによって、回避される。これらは、多元接続通信の例である。
【0021】
「直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency Division Multiple Access、OFDMA)」と呼ばれる別のタイプの多元接続通信では、モバイルデバイスにはサブキャリアのサブセットが割り振られ、FDMAと比較して分配されたスペクトルをより効率的に使用するために、直交狭周波数サブチャネルがモバイルデバイスに割り振られる。
【0022】
一部の周波数割り当てでは、割り当てはチャネルブロックごとであり、チャネルブロックは双方向チャネルのセットまたはグループであり、各双方向チャネルはアップリンクサブチャネルにはアップリンクキャリア周波数を使用し、ダウンリンクサブチャネルにはダウンリンクキャリア周波数を使用する。チャネルは、各セットが共通の識別子または属性を共有するような分類のいくつかの論理に基づいて、2つ以上のチャネルのセットに一緒にグループ化され得る。
【0023】
一部のプロトコルでは、スペクトルはキャリア周波数のサブスペクトルに分割され、期間も時間スロットに分割される。典型的には、BTSは、どのMSにどのチャネルを割り当てるかを判定するためのロジックを含む。MSが使用するためのチャネルを割り振る際、BTSには、特定のキャリア周波数を使用するために特定のトランシーバが割り振られ、BTSがその特定のキャリア周波数を使用することをMSに示し、かつそのキャリア周波数を使用して、伝送/受信されたフレームからどの時間スロットを使用するかを示すこともできる。チャネルは、アップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルを備え得る。所定のトランシーバ-MS間の通信は、2つ以上のチャネル、例えば、2つ以上のキャリア周波数および/または2つ以上の時間スロットを使用する場合があるが、本明細書の多くの例では、プロトコルは、1つのキャリア周波数のみ、および1つの時間スロットのみを備えるチャネルを使用するMSに関するものとして例示されている。
【0024】
「コード分割多元接続」(Code Division Multiple Access、CDMA)と呼ばれる多元接続通信のさらに別の例では、モバイルデバイスは同じ時間スロットおよびキャリア周波数を使用することができるが、各モバイルデバイスには、BTSとの間で信号をコード化するための一意の擬似ランダムコードが割り振られるため、MSが同じキャリア周波数もしくはほぼ同じ時間、および/または同じ時間スロットを使用して同時に伝送する場合であっても、それらが使用される場合、一意のCMDAコードを適用すると、受信器が擬似ランダムコードを使用して復調のために十分適当に特定の信号を各々復号化することによって異なる受信を分離し得るのと同じ時間および周波数を複数の伝送器が占有することを可能にする。
【0025】
実際には、CDMAはチャネルを時間によって厳密にまたは周波数によって厳密に分離しない。CDMAの使用は、信号のビットレートよりも速いチッピングレートを使用することによって、コード化なしよりも広いバンド幅にわたって拡散するスペクトル拡散信号の伝送をもたらす。したがって、各コードが時間および周波数ドメインの両方でアーティキュレーションの一部の要素を表すため、擬似ランダムコードで信号をコード化すると、TDMA/FDMAプロトコルで典型的に見られるタイミング要素と周波数要素とを置き換えることができる。CDMA通信では、MSとBTSとの間の信号伝播遅延とタイミングとが理解され、そのため、擬似ランダムコードは、いくつかのビット/チップにわたって受信信号に適用され、これらは当然ながら、時間ドメインの一部の離散化されたスパンおよび周波数ドメインの一部の離散化されたスパンの両方を占有する。
【0026】
一部の多元接続プロトコルでは、2つ以上の手法が使用される。
【0027】
GSMプロトコルのデジタルモバイルラジオ電話システムでは、MSおよびBTSは、周波数分割多元接続(FDMA)チャネルおよび時分割多元接続(TDMA)チャネルの両方にわたって通信を活用し、そのため、MSは、各キャリア周波数上での個別の時間スロットの割り振りにより、同じ伝送キャリアおよび受信キャリアを共有することができ、各キャリア周波数を個別のトランシーバもしくはトランシーバモジュールまたは論理ブロックによって取り扱うことができる。
【0028】
GSMでは、BTSは、アクセスを要求するときに時間スロットをモバイル局(MS)に割り振る役割を果たす。GSMのフレーム構造では、各TDMAフレーム内に8つの時間スロットがある。使用されるキャリア周波数の数は変化し得る。一部の地域では、一部のキャリアは多数のキャリア周波数のライセンスを受けており、それらの地域内のMSは、千個ものキャリア周波数のうちの1つ(これは、BTSもサポートすることになる)を使用するための指示を受諾するように構成されている。例えば、欧州では、GSM900MHzのスペクトルバンドは、25Mhzのスペクトルを含む。これが200kHzのキャリア周波数(例えば、各々200kHzのサブスペクトルバンド内に中心を置くキャリア周波数)に論理的に割り当てられ、トランシーバがそれらのキャリア周波数上で信号を送信する場合、125個のキャリア周波数が提供される。周波数ドメイン内でガードバンド(未使用のキャリア周波数)を使用すると、この数を低減させることがあるが、信頼性の向上または信号処理の容易さをもたらすことがある。TDMAフレームが8つの時間スロットを可能にする場合、利用可能な十分な数の論理上または実際のトランシーバを有するBTSは、同時に8*125=1000個のMSチャネルをサポートすることができる。時分割および周波数分割では、ガードスロットおよびガード周波数がそれぞれ存在し得るため、1つの分割は隣接する分割からある程度分離されている。一部のプロトコルでは、より大きなバンド幅を提供するために、2つ以上の時間スロットおよび/または2つ以上のキャリア周波数を1つのMSに割り振ることができる。
【0029】
一部の事例では、サポートされるMSのレンジ内に複数のBTSが存在し、そのため、MSのサポートはBTS間で拡散されることがあり、それらは隣接するBTSが可能な場合に同じキャリア周波数を使用することを回避するように調整する可能性がある。BTSは、これらの周波数を、当該BTSの塔全体に特定の再利用スキームを用いて拡散するようにプログラムされ得る。BTSは、他のネットワークリソースへのパイプのサイズによってサポートし得るMSの数が制限されている場合もある。一例では、BTSは1~15個のキャリア周波数を使用する(すなわち、そのトランシーバは、送信/受信フレーム内で1~15個のキャリア周波数を使用して伝送するため、8~120個のユーザを同時にどこでもサポートすることができる。
【0030】
各MSは、その機能を実施するために、典型的には、プロセッサ、メモリ、ラジオ回路、電源、ディスプレイ、入力要素などを含む。プロセッサは、所望の機能を実施するためにプログラムメモリから読み取ることができる。例えば、プログラムメモリは、データストリームを形成する方法、それをラジオ回路に渡す方法、内部クロックを読み取ってシステムクロックの値を判定し、適切に聴取および送信のタイミングをはかる方法、ならびに伝送および受信に適切な周波数を設定する方法に関する指示を有し得る。
【0031】
各BTSは、その機能を実施するために、典型的には、プロセッサ、メモリ、ラジオ回路、電源(複数可)、電気通信ネットワークとのインターフェース、診断インターフェースなどを含む。BTSのプロセッサは、所望の機能を実施するためにプログラムメモリから読み取ることができる。例えば、プログラムメモリは、データストリームを形成する方法、それをラジオ回路に渡す方法、電気通信ネットワークと通信する方法、内部クロックを読み取ってシステムクロックの値を判定し、適切に聴取および送信のタイミングをはかる方法、伝送および受信に適切な周波数を設定する方法、さまざまなMSおよびそれらの状態、ロケーション、割り当てなどを追跡し続け、場合によってはそれをローカルで利用可能なメモリに記憶する方法に関する指示を有し得る。
【0032】
上に記載される方法では、MSはBTSに接触して、いくつかのキャリア周波数のフレーム内にいくつかの時間スロットを割り当てられ、BTSはMSの割り当てをMSに通知する。BTSとMSの両方は、同じ(またはほぼ同じ)システムクロックを有するため、それらの分配された時間スロットおよびキャリア周波数内で通信する。MSに対する割り振りおよび割り振りの通信は、MSが割り当てを要求するために使用されるランダムアクセスチャネルを使用して行われ得る。GSMプロトコルでは、これはRACH処理と呼ばれる。
【0033】
GSMの例では、無線通信経路を介した通信は、TDMAフレームごとに8つの時間スロットを有する、4.61538msの持続期間のTDMAフレームに解析される。各時間スロットは、156.25ビットのデータを保つのに十分な長さである。一用途では、MSまたはBTSは、時間スロット間の8.25ビット(30.46μs)のガード時間で、546.46μsを超える時間スロット内で148ビットのデータを伝送する。GSM900バンドでは、無線通信経路は、アップリンク方向およびダウンリンク方向に各々25MHzのバンド幅を有し、アップリンクサブチャネルには890~915MHzのスペクトルバンドを使用し、ダウンリンクサブチャネルには935~960MHzのスペクトルバンドを使用して、125個のキャリア周波数(200kHz間隔で各方向に125個のキャリア周波数)を提供する。各スペクトルバンドの両側に200kHzのガード分離を有することにより、移動しているデータ用に24.6Mhzのスペクトルまたは123個のキャリア周波数が残る。次いで、かかる無線通信経路(両方向)の総容量は、時間スロット当たり156.25ビット掛けるフレーム当たり8つの時間スロット掛ける216.667フレーム/秒*123個のキャリア=33.312Mbits/秒になるであろう。
【0034】
MSはモバイルであり得ることを考慮すると、BTSがセル電話の塔に固定されているが、MSが10km離れており、100KPHで移動している間に、MSを使用して電気通信ネットワークを介して音声会話を続ける場合など、MSはBTSからある程度距離がある可能性があり、その距離は変化する可能性がある。BTSとMSとが互いに数メートル以内にあり、MSが移動していない場合、信号の伝播時間および移動によるドップラー偏移を無視することができる。MSがBTSに対して100KPHで移動している場合、場合によってはそれを無視することができるが、MSがある程度の距離離れている場合は、伝播時間を考慮する必要があり、または代わりに、1つの時間スロット内での伝送がその時間スロット内で完全に受信されないが、別の時間スロットの時間内に遅れて到達する可能性があり、これは、通信損失を引き起こすことがある。
【0035】
伝播遅延を考慮するために、伝送器は伝送を前進させたり遅らせたりして、ラジオ周波数(radio frequency、RF)信号のバーストを送信して伝播遅延を考慮し、受信器は調節された時間で割り当てられた伝送を予想する。多くのMSと1つのBTSが存在する場合、時間スロットがすべて整合されている場所がBTSであるように、MSがそれらの伝送時間を調節するものであることがしばしば有用である。同様に、BTSはその伝送を指定された時間スロット内で送信することができるが、伝播遅延を考慮して、MSは、それらが聴取するか、または伝送を受信することを予想する時間を遅延させたり前進させたりする。時間スロットまたはスロット、およびキャリア周波数(複数可)をMSに割り当てるBTSに加えて、BTSは、BTS-MS間の伝播遅延または距離をMSに示すことがある。
【0036】
GSMプロトコルを使用して動作するBTSの場合、BTSは、信号がRACH(Random Access Control Channel:ランダムアクセス制御チャネル)に到達する方法により、MS信号の伝播遅延を認識する。RACHチャネルは、MSがデータを送信するためにチャネルにアクセスする必要がある場合に使用されるアップリンクのみの時間スロットである。MSは、RACHで87ビット長の信号バーストを送信することによって、チャネルアクセスを要求する。RACHバーストは、それと次の時間スロットとの間に69.25ビットのガード期間があるように設計されている。その結果、バーストは、悪影響を与えることなく、RACHスロット内で最大69.25ビットまでスライドし得る。RACHバーストがBTSに到達すると、BTSは、信号バーストが右にスリップした(すなわち、時間内にさらに移動した)これらのガードビットの数を測定することができ、それゆえに、信号の伝播遅延を判定することができる。BTSがそのチャネル割り振りに関する情報でMSに応答すると、BTSは、「タイミング前進」(timing advance、TA)と呼ばれるものを含み、これは、MSが正しい時間スロット内でBTSに到達し、隣接する時間スロット内に流れ出ないように、その信号を前進させる必要があるビット数として表されることがある。GSMプロトコルでは、タイミング前進の値は、0~63ビットの範囲内であり得、0ビットは、往復伝播遅延なしに対応し、63ビットは、BTSから35km離れたMSで経験されるであろう伝播遅延に対応しており、無線信号は光の速度で進む。
【0037】
慎重に時間調整しないと、異なる距離で動作しているMSからの伝送が同じ時間スロット内でBTSに到達し、衝突または重畳を引き起こす場合がある。これらの衝突は、BTSの観点から干渉を作り出し、これは、通信の品質と信頼性を妨げる。ガード時間(ビットで測定され、「ガードビット」と呼ばれる)を用いて、バーストタイミングエラーが信号衝突を作り出すことを防ぐことができるが、これは、内部クロック内の小さな時間整合エラーを考慮することができるだけで、拡張された可変の伝播距離の違いを考慮することはできない。
【0038】
例えば、時間スロット間に30.461μsのガード時間(8.25ガードビット)が存在し得るため、第1のMSがBTSから4.569km(往復距離で9.138km)離れていて、第1の時間スロットが割り振られており、第2のMSがBTSのすぐ近くにあり、次の時間スロットが割り振られていた場合でも、信号の相対的な伝播遅延は干渉を引き起こさないであろう。これは、第1のMSからの信号が30.461μs遅延することになる一方、BTSはガード時間中に伝送の後半部分を受信することになり、その伝送は第2のMSの時間スロットが始まる前に終了することになるためである。多くの場合、ガード時間は短すぎて、見つけることができるすべての距離にあるMSに適応させることができない。例えば、MSが10km(往復20km)離れている場合、そのMSからBTSへの伝送の伝播遅延は33.333μs遅延することになり、これは、ガード時間を超えるため、BTSはその伝送を次の時間スロットが割り振られた別のMSからの伝送と同時に受信することになる。
【0039】
同じBTSを共有する遠位のMSに適応させるための1つの解決策は、タイミング前進機構を使用することである。GSMプロトコルは、この一例を提供する。GSMプロトコルのランダムアクセス制御チャネル(Random Access Channel、RACH)の使用など、MSとBTSとの間の初期のハンドシェイクでは、BTSはMSとBTSと間の距離を判定する。BTSは、各MSがアップリンク伝播遅延に基づいている場合、MSとBTSとの間の距離を計算する際のRACHハンドシェイク中に時間スタンプを伝送および受信し得る。
【0040】
判定された距離は、MSとBTSとの間の実際の距離ではないことがあるが、多くの目的の場合では、擬似距離で十分である。本明細書で使用される場合、「擬似距離」は、ある距離の実際の値である場合とそうでない場合がある値であるが、プロキシまたはみなし距離として使用される。すなわち、MS、BTS、または他の場所のモジュールは、値が距離であると想定し、さまざまな構成要素は、その値が実際の値に十分に近い場合にその値の使用が十分適切に機能するように設計される。極端な例として、MSとBTSが2メートル離れているが、それらの間に直接信号を妨げる何かがあり、最も近いパスが非常に多くの反射を伴う3kmのパスであると仮定する。かかる事例では、擬似距離は3kmであることになり、MSとBTSは3km分離されていると想定して動作することになる。それらの伝送が追従する信号パスは3kmであるため、それらの間の距離の値として使用すると機能する。
【0041】
概して、2つの物体の間で測定される擬似距離または距離の擬似レンジは、ラジオ周波数信号が一方の物体から他方の物体に伝播するのにかかる時間を判定することによって測定され得る実際の距離または距離のレンジとは異なる場合がある。信号の反射およびマルチパスにより、信号の発信元と受信側との間の見通し距離の線(または距離のレンジ)は、その信号の伝播距離とはわずかに異なることがあり、その場合、擬似距離(または擬似距離のレンジ)は実際の距離(または距離のレンジ)とは異なる。しかし、一貫した使用では、多くの動作は擬似距離の値だけで機能し得る。他の使用では、「擬似」を同様に使用して、推定値、想定値、近似値などを示すことができる。
【0042】
いったんBTSがMSの擬似距離を判定すると、BTSは、そのBTSのトランシーバを使用して活動中のMSの各々のパラメータおよび変数のためにBTSが維持するテーブル内に擬似距離を記憶する。BTSは、その値を、本明細書の他の場所に記載される制御メッセージでMSに通信する。次いで、MSは、「タイミング前進」を実装するようにプログラムされ、MSは、そのシステムクロックのコピーを考慮し、擬似距離に対応する伝播遅延を減算し、その伝送をスケジュールされた時間スロットの開始よりも早くBTSに送信する。RACHプロセスは、これらの値を判定するために、以下でさらに詳細に記載されるさまざまなステップを含み得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、伝播遅延を、変換係数またはその近似値としてc=3*108m/sを使用して伝播距離から計算することができ、その逆もまた同様である。GSMの270.833kbits/sなど、伝送に標準化されたビットレートがある場合、伝播遅延または距離をビット数として表すことができる。例えば、12kmの分離は80μsの往復伝播遅延をもたらし、各ビットは3.692μsで伝送されることになり、12kmの分離と80μsの伝播遅延とを、22(より正確には21.66)ビットの分離または伝播として同等に表すことができる。したがって、1「ビット」の伝播は、約555メートルの往復伝播距離および3.692μsと同等である。
【0044】
BTSとは異なる距離で動作するMSには、それらのそれぞれの通信距離に適応させるために異なるタイミング前進が割り振られる。便宜上、これは整数のビット数として表されることがある。MSの移動を考慮するために、このタイミング前進の値は、MSに通信され、いつ伝送または受信するかを判定するためにMS内のモジュールによって使用され、BTSに対して時変通信距離を有し得る移動中の標的に適応させるのに十分な周期および頻度で更新され得る。例えば、200KPHで進む高速列車でユーザがMSを使用している場合、ユーザが路上を歩いている場合よりも頻繁に距離を更新する必要がある場合がある。
【0045】
GSMプロトコルの特定の例では、タイミング前進は6ビットの値として表され、最小値は0ビットのタイミング前進を表し、最大値は63ビットのタイミング前進を表す。GSMプロトコルでは各ビットは3.692μs(および往復伝播遅延では約555メートル)に対応すると想定されているため、擬似距離が約555m/ビット*63ビット=34,965m、つまり約35kmである場合、63ビットのタイミング前進が使用されることになる。したがって、このタイミング前進の手法は、BTSから0~35kmの範囲のMSで正常に機能することになる。GSMプロトコルでは、BTSは、MSがBTSから35kmよりも遠いとBTSが判定した場合、MSからの要求に応答しないか、または当該要求を少なくとも予想しないようにプログラムされている。これは、他のより近くのBTSがある場合、またはすべてのポイントが1つ以上のBTSから35km以内にあるBTSの分布の場合には問題にならない。
【0046】
タイミング前進では、MSは、その時間スロットが始まる前に(MSのクロックタイミングから)伝送を送信し、その伝送が伝播遅延後にBTSで受信されると、BTSは、その伝送を、タイミング前進が伝播遅延に対応する時間スロット内で完全に受信する。MSは、使用するタイミング前進の量に関する値を提供されているため、これを正しく行うことができる。実際の距離、ひいては実際の伝播遅延は、擬似距離とは異なる場合があるが、多くの場合、MS-BTS間の通信には内部クロックの差、伝送器の変動などを取り扱う余裕がある程度あるため問題にはならないことに留意されたい。
【0047】
このタイミング機構は、任意のMSから35km以内に常に1つ以上のBTSがある場合に適切に機能するが、常にそうであるとは限らない。一部の地理的地域では、その地域のいずれのポイントからも35km以内にBTSを有することは実用的、実行可能、または経済的ではない可能性がある。例えば、地方、遠隔地、または島の地理的地域では、かかる間隔を有するBTSインフラストラクチャは、その土地にアクセスすることができない可能性があり、MSを有するユーザが点在し広範囲に及ぶ可能性があるため、BTSが使用されないか、または設置することができないか、もしくは電力を得ることができない可能性がある。かかる状況では、「拡張レンジ」機構を使用することができる。GSMプロトコルでは、かかる機構が可能である。
【0048】
拡張レンジ機構では、各MSには1つの代わりに、2つの連続した時間スロットが割り振られるため、MSは、1つの時間スロットの持続期間だけ伝送をBTSで遅延させることができる場合、いかなるタイミング前進も必要とすることなくBTSと通信することができる。これにより、許容されるMS-BTS間の距離(例えば、35km~120km)が増加するが、各TDMAフレームでは8つの代わりに4つの割り振り可能な時間スロットだけが利用可能であることになるため、スループットが半分に減少する。これは、データレートが低い場合、地方、遠隔地、または島のエリアにとって重要ではない可能性がある。タイミング前進機構と拡張レンジ機構との組み合わせを使用することによって、最大許容MS-BTSは、35km+85km=120kmになり得る。
【0049】
拡張レンジ機構では、各MSには、スループットを半分に減少させる追加のガード期間として時間スロット全体が分配される。これの変形例は、例えば、米国特許第5,642,355号に示されているものと同様の「ソートされた拡張レンジ機構」である。ソートされた拡張レンジ機構では、時間スロットは、「消費」されてガードビットとして使用されるが、その時間スロットは距離によってMSに割り振られ、最も近いMSが第1の時間スロットを取得し、最も遠いMSが、MSに分配された、すなわち、いずれのMSにも割り振られていない任意の「消費」された時間スロットの前の最後の時間スロットを取得する。MSの拡張レンジが伝送を拡散させるため、消費された時間スロットは必要なガードビットに使用される。実際には、これはバースト間で未使用の時間スロットを「分割」する。
【0050】
85km超の隔たりがある場合またはその他の理由で、「リング拡張レンジ」機構を使用することができる。リング拡張レンジ機構では、固定された最小距離が想定され、BTSでのタイミングは、その固定された最小距離によって調節され、BTSはすべてのMSが少なくともその距離離れていると想定するため、最小通信距離より近いMSはサポートされない。これは、米国特許第6,101,177号に示されている手法と同様である。いかなるMSの修正も必要とすることなく、タイミング前進機構を使用して得られた35kmのレンジを使用して、最小距離から最小距離プラス35kmに及ぶMS-BTS間の距離をサポートすることができる。一例では、最小距離は85kmであるが、異なる最小通信距離を使用することができる。その場合、この例では、BTSは、BTSから85km~120kmの範囲のMSをサポートすることができる。
【0051】
リング拡張レンジ機構は、割り当てられた8つの時間スロットのうちの8つを用いて使用されてもよく、BTSから85km~120kmに及ぶ距離を有するMSを取り扱うことができる。しかしながら、これは、そのエリアから送信された任意の信号バーストは、BTSがその時間スロットを視認する方法に比べてBTSに非常に早く到達するため、BTSからある程度半径方向に離れる物理的なカバレッジの隔たりを作り出す。代わりに、BTSは、エリアリングのカバレッジを提供する。リング拡張レンジ機構は、BTSとサービス用に設計されたMSとの間に湖または谷などの物理的な隔たりを有する地理的エリアで使用され得るため、MSがサポートされていないリング内側の領域を有することは問題にはならないであろう。
【0052】
GSMシステムは、アップリンクサブチャネルとダウンリンクサブチャネルとの間のTDMAフレームオフセットを用いることに留意されたい。典型的なGSMフレーム構造では、アップリンクTDMAフレーム(またはMS TxおよびBTS Rx)は、MSが同時に伝送および受信する必要がないことを確実にする目的で、ダウンリンクTDMAフレーム(またはBTS TxおよびMS Rx)から3つの時間スロットだけオフセットされる。TDMA通信の当業者には、アップリンクサブチャネルとダウンリンクサブチャネルとの間のこのオフセットは拡張された距離にわたる通信とは無関係であり、リング拡張レンジ機構内でのみアップリンクTDMAフレームで使用される時間スロット同期オフセットとは同じではないことは明らかであろう。
【0053】
リング拡張レンジ機構を拡張レンジ機構と組み合わせる場合、これを単独でまたは組み合わせて使用して、120kmの半径を超え得るBTSのカバレッジを有することができる。これらの技法は多くの場合、かかる通信が典型的には地球の曲率によって制限されるため、地上通信には十分である。例えば、地表ベースのMSとBTSトランシーバとの間の見通し線通信に距離Dを提供するためには、BTSトランシーバは、少なくともh=[SQRT(6370^2+D^2)-6370]kmの高さに装備されるべきである。D=120km、h=1130mの場合、1,130メートルは今日建設されているいかなる構造よりも高いため、塔の高さは距離よりも地上通信の制限要因の高さよりもはるかに高く、そのため、距離を仮に120km以上に拡張する技法は、セルラの音声、データ、テキスト、および同様の容量の地上通信にはそれほど有用ではないが、場合によっては、上にトランシーバを装備する大きな地質構造がある選択されたロケーションでは例外である。
【0054】
いくつかのロケーションに近い任意の場所、例えば、いくつかのロケーションから35kmもしくは85km以内、または高い塔を装備することができる120km以内に基地局を置くことが非実用的である場合など、カバレッジを広くするように基地局の塔を分布させることが実用的ではない地域の場合、衛星通信を使用することができる。典型的には、衛星通信は非常に高価であり、それゆえに、リソースの探索、探索器、捜査、および救助などのコストをサポートする用途でのみ使用される。
【0055】
本明細書において、「衛星」とは、軌道上で動作することを目標として地球から打ち上げられた人工衛星、および/または地表で全体もしくは部分的に組み立てられ、かつ/または軌道内で全体もしくは部分的に組み立てられているかにかかわらず軌道内で動作する人工衛星を指す。衛星は、1つの軌道内で組み立てられ、かつ/または動作し、別の軌道に移動することがある。衛星は、その独自の推進力手段なしで推進されているか、または動作している可能性があり、推進力を提供するために軌道内の他の物体に依存している場合とそうでない場合がある。本明細書で使用される場合、軌道内で動作し、推進力下にないときの衛星は、多かれ少なかれ安定した軌道内にある。かかる軌道は、大気抵抗のために地球の表面の上に最小距離を有する。軌道に乗せるのに十分な真空と、衛星が軌道から外れることを引き起こし得る過剰な大気との間には厳密な分割線はなく、地球の上、約400~500kmの地球低軌道(Low Earth Orbit、LEO)が実用的であることが示されているが、ナノ衛星などの特に密集した宇宙船の場合、これらの高度よりもさらに低くなる可能性がある。
【0056】
実用的な軌道の最小距離が非常に大きいことは、従来、衛星通信でまったく異なる技術が用いられたことを意味していた。一部の事例では、地表局はモバイルではなく、他の事例では、地表局はモバイルであったが、電力集約型で、重く、大きく、かつ特殊な機器を必要とした。距離に加えて、軌道内の衛星の移動に対処しなければならなかった。
【0057】
衛星と、通信にTDMAプロトコルを使用する、地球上の地表ベースの携帯型送受話器との間の通信には、多くの解決策がある。いくつかの衛星プロバイダとしては、Iridium(商標)、Globalstar(商標)、Thuraya(商標)、およびInmarsat(商標)の衛星システムが挙げられ、これらは、独自に開発された衛星電話またはユーザ端末(すなわち、物理的接続またはRF接続によって既存のモバイル電話に取り付けられるか、または接続する一意のハードウェアデバイス)に基づいている。特定のユーザ端末では、各々が他のユーザ端末と共に機能するように特別に設計され得るため、システム、衛星、および端末の設計を簡素化することができる。欠点は、高価で非現実的であり得る、すべてのエンドユーザまたは小さいグループのエンドユーザのために必要であろう特定の端末機器を必要とすることである。カスタム端末の手法はシステム設計を簡素化するが、オペレータは通信方式、電力レベル、周波数などの詳細を自由に設定することができるため、ユーザを特定のプロバイダに縛り付ける。その結果、エンドユーザは、数百から数千ドルの費用がかかり、大きく、扱いにくいアンテナを有し、かなりの電力を使用し、動作させるための月々の法外な会費を必要とする、衛星電話(または既存のモバイル電話につながるユーザ端末)を購入する必要がある可能性があり、これを2つ以上の衛星プロバイダで行わなければならない可能性がある。これが伝統的な衛星電話の市場の魅力を制限してきた。
【0058】
一例として、米国特許第8,538,327号は、衛星の位置を示すデータおよびユーザ機器の位置を示すデータに基づいて遅延測定値を算定するユーザ機器の修正例を記載している。ユーザ機器からのアップリンク通信のタイミングは、衛星まで伝送するときに、その遅延を調節する。ユーザ機器はまた、衛星の位置と速度を示すデータに基づいて周波数オフセットを算定し、それに応じてそのアップリンク信号周波数を調節して、通信システム内の動的ドップラー偏移を考慮する。当然ながら、これは、衛星通信用に設計された、地表の特定のユーザ機器を必要とする。
【0059】
別の例として、米国特許公開第2006/0246913号は、往復伝播遅延差の差を低減することを特徴とするサブカバレッジリングを使用してRF信号の伝播遅延を管理するための方式を記載している。これは、静止地球軌道(geosynchronous Earth orbit、GEO)衛星を使用して中継としての働きをし、遠隔モバイル局をそのネットワーク内の基地局に接続する。GEO衛星が伝えるはるかに大きな遅延に対処するために、リング/ゾーンの許容伝播遅延のレンジに合わせてそれ自体を構成することによって、別個の処理デバイスが別個のサブカバレッジリングまたはゾーンにサービスを提供する。モバイル局とGEO衛星との間のリンクを、電力、信号指向性、および周波数操作のための追加のユーザ端末のハードウェアの支援なしで閉鎖することはできない。
【0060】
携帯型デバイスまたはモバイルデバイスとの衛星ベースの通信のための改善されたシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0061】
環境内でのモバイル局との通信のための多元接続トランシーバは、地球軌道内で見られ得るように、必ずしもモバイル局の修正を必要とすることなく、モバイル局の設計上の想定を超える条件を取り扱う。多元接続トランシーバは、より大きな距離、より大きな相対運動、および/または地上トランシーバの機能が軌道トランシーバによって実施される場合に一般的に見られる他の条件などのモバイル局の設計上の想定を超えている間は、モバイル局との通信を閉鎖するように適合されている。軌道トランシーバは、フレームデータ構造を解析するデータ解析器と、軌道から地上への伝播遅延に基づいてタイミングを調節する信号タイミングモジュールと、周波数偏移器と、多元接続プロトコルを使用する地球軌道から通信することができるプログラム可能なラジオと、を含み得るため、通信は、地上セルラ基地局と地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または地上モバイル局にはそのように見える。
【0062】
多元接続トランシーバは、セルラ電話送受話器、スマート電話、および/または接続されたデバイスである地上モバイル局をサポートし得る。信号タイミングモジュールは、軌道に基づいて、伝送信号の周波数を地上ドップラー偏移に調節するように適合され得る。信号割り当て論理は、複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数のコード系列にわたって分布する、多元接続トランシーバの容量を、地上モバイル局を含む複数の地上モバイル局に割り当てることができる。多元接続トランシーバは、各地上モバイル局に対して、多元接続トランシーバから地上モバイル局までの距離を判定するレンジ計算器と、フレーム構造に対する伝送信号のタイミングを判定する信号タイミングモジュールと、を含み得、フレーム構造は、多元接続トランシーバから地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットと、フレーム構造内に聴取時間スロットを割り当てて、地上モバイル局からの通信を聴取する、入力信号割り当て器とを備え、聴取時間スロットは、多元接続トランシーバから地上モバイル局までの距離に基づいてタイミングがはかられ、聴取時間スロットは、複数の時間スロットのうちの1つであり、複数の時間スロットは、多元接続トランシーバからの複数の距離を有する複数の地上モバイル局からの通信を取り扱う多元接続トランシーバを考慮するように、フレーム構造内で可変的に遅延される。
【0063】
多元接続トランシーバは、複数の時間スロットを有し得、複数の時間スロットは、複数の異なる距離レンジの各々を複数のチャネルブロックの各々に割り振ることによって、多元接続トランシーバからの複数の距離を有する複数の地上モバイル局からの通信を取り扱う多元接続トランシーバを考慮するように、フレーム構造内で可変的に遅延される。異なる距離レンジは、天頂距離から最小標高距離までのスラントレンジを集合的に網羅し得、天頂距離は、地上モバイル局に対する、多元接続トランシーバを搬送する衛星の天頂位置との間の距離であり、最小標高距離は、地上モバイル局が衛星の設計フットプリントに進入するときの衛星の位置との間の距離である。異なる距離レンジは各々、おおよそ34~35キロメートルに及び得、天頂距離と低い標高距離との間の差は、210~250キロメートルである。衛星の設計フットプリントは、円形、楕円形、矩形であり、かつ/またはアンテナの機能および/もしくはアンテナビームの形状とは無関係であり得るが、多くの例では、円形として近似する。
【0064】
多元接続トランシーバは、地球軌道内での動作のために適合され、かつ地上モバイル局と通信するように構成され、データ解析器であって、データ解析器が、フレーム構造であって、どの時間スロットが複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義する、データ解析器と、各地上モバイル局に対して、多元接続トランシーバから地上モバイル局までの距離を判定するレンジ計算器と、複数の地上モバイル局を複数のチャネルブロックに割り振るチャネル割り振りモジュールであって、チャネルブロックが、地上周波数および軌道周波数オフセットを有する、チャネル割り振りモジュールと、フレーム構造に対する伝送信号のタイミングを判定する信号タイミングモジュールと、軌道周波数オフセットを用いて、地上周波数で地上モバイル局への信号を変調する、信号変調器であって、軌道周波数オフセットが、多元接続トランシーバおよび地上モバイル局の相対移動に起因して、地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、地上モバイル局が、地上周波数で信号を受信する、信号変調器と、を備える。複数のチャネルブロックは、多元接続トランシーバを搬送する衛星および地上モバイル局の相対位置に基づいて割り当てられ得、軌道周波数オフセットは、5キロヘルツの増分など、小さい増分で変化する。
【0065】
特定の実施形態では、1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局は、複数の地上モバイル局との通信を取り扱い、地上モバイル局は、地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されている。多元接続基地局は、フレーム構造に従って、多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器であって、フレーム構造が、どの時間スロットが複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義し、フレーム構造が、多元接続基地局から複数の地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを含む、データ解析器と、多元接続基地局と地上モバイル局との間の基地-モバイル間の距離に基づいて、地上モバイル局への伝送信号のフレーム構造に対する信号タイミング調節を判定する、信号タイミングモジュールであって、基地-モバイル間の距離が、制限距離を超えている、信号タイミングモジュールと、多元接続プロトコルを使用して多元接続基地局から地上モバイル局までの通信を通信すること、および信号タイミング調節を考慮することができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、通信は、基地-モバイル間の距離が制限距離を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える。
【0066】
多元接続基地局は、複数の地上モバイル局と通信するように適合され得、複数の地上モバイル局は、セルラ電話送受話器、スマート電話、および/または接続されたデバイスを備える。制限距離は、約100キロメートル、120キロメートル、またはある程度の他の距離であり得、基地-モバイル間の距離は、その制限距離を超える。多元接続プロトコルは、CDMAベースのプロトコル、LTEプロトコル、GSMプロトコル、OFDMAベースのプロトコル、FDMAベースのプロトコル、TDMAベースのプロトコル、EGPRSプロトコル、またはEDGEプロトコルのうちの1つであり得る。多元接続基地局は、地球軌道内で動作する軌道基地局であり得、制限距離は、120キロメートルであり、複数の地上モバイル局の地上モバイル局の基地-モバイル間の距離は、約500キロメートル~約750キロメートルである。別の変形例では、多元接続基地局は、地球大気内で動作可能な基地局であり、飛行機、ドローン、および/もしくはバルーンのうちの1つ以上の上または中に装備されることを含み、制限距離は、120キロメートルであり、基地-モバイル間の距離は、120キロメートルを超える。
【0067】
多元接続基地局は、複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数のコード系列にわたって分布する、多元接続基地局の容量を、地上モバイル局を含む複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理を含み得る。プログラム可能なラジオは、多元接続プロトコルを使用して地上モバイル局からの通信を聴取することができ、かつ複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、多元接続基地局から地上モバイル局までの各地上モバイル局の基地-モバイル間の距離を判定する、レンジ計算器と、地上モバイル局の基地-モバイル間の距離に基づいて、フレーム構造に対する地上モバイル局の受信信号のタイミングを判定する、受信タイミングモジュールと、フレーム構造内に聴取時間スロットを割り当てて、地上モバイル局からの通信を聴取する、入力信号割り当て器と、を含み、聴取時間スロットは、地上モバイル局の基地-モバイル間の距離に基づいてタイミングがはかられ、聴取時間スロットは、複数の時間スロットのうちの1つであり、複数の時間スロットは、複数の基地-モバイル間の距離を有する複数の地上モバイル局からの通信を取り扱う多元接続基地局を考慮するように、フレーム構造内で可変的に遅延される。
【0068】
複数の時間スロットは、複数の異なる基地-モバイル間の距離レンジの各々を複数のチャネルブロックの各々に割り振ることによって、複数の基地-モバイル間の距離を有する複数の地上モバイル局を考慮するように、フレーム構造内で可変的に遅延され得る。多元接続基地局は、地球軌道内で動作する軌道基地局であり得、複数の異なる基地-モバイル間の距離レンジは、天頂距離から最小標高距離までのスラントレンジを集合的に網羅し、天頂距離は、地上モバイル局に対する、多元接続基地局を搬送する衛星の天頂位置との間の距離であり、最小標高距離は、地上モバイル局が衛星の設計フットプリントに進入するときの衛星の位置との間の距離である。
【0069】
異なる基地-モバイル間の距離レンジは各々、おおよそ34~35キロメートルに及び得、天頂距離と最小標高距離との間の差は、210~250キロメートルである。
【0070】
衛星の設計フットプリントは、円形、楕円形、矩形などであり得、かつアンテナの機能および/もしくはアンテナビームの形状とは無関係であり得る。
【0071】
一部の変形例では、1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局は、地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されている複数の地上モバイル局との通信を取り扱う。多元接続基地局は、データ解析器であって、データ解析器が、フレーム構造であって、どの時間スロットが複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義する、フレーム構造に従って、かつ多元接続プロトコルであって、地上モバイル局が特定された周波数で信号を受信し、特定された周波数で信号を伝送することを予想する、多元接続プロトコルに従って、多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器と、複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、多元接続基地局に対する各地上モバイル局の速度に起因する各地上モバイル局のドップラー偏移を判定する、ドップラー偏移計算器と複数の地上モバイル局の各々を複数のチャネルブロック内のチャネルブロックに割り振るチャネル割り振りモジュールであって、各チャネルブロックが、地上周波数およびドップラー周波数オフセットを有する、チャネル割り振りモジュールと、ドップラー周波数オフセットを用いて、地上周波数で地上モバイル局への信号を変調する、信号変調器であって、ドップラー周波数オフセットが、多元接続基地局および地上モバイル局の相対移動に起因して、地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、地上モバイル局が、地上周波数で信号を受信する、信号変調器と、多元接続プロトコルを使用して地上モバイル局からの通信を受信すること、および地上モバイル局のドップラー周波数オフセットを考慮に入れることができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、通信は、多元接続基地局に対する地上モバイル局の速度が制限速度を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える。
【0072】
多元接続基地局に対する地上モバイル局の速度は、多元接続基地局が地球軌道内にあるという結果であり得、ドップラー周波数オフセットは、5キロヘルツの増分で変化し得る。
【0073】
多元接続基地局は、複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数のコード系列にわたって分布する、多元接続基地局の容量を、地上モバイル局を含む複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理を有し得る。
【0074】
多元接続基地局は、複数のチャネルブロックの各々について、アップリンクサブチャネルの連続スペクトルおよびダウンリンクサブチャネルの連続スペクトルを含むアップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルを提供し得る。チャネルブロックは、隣接するチャネルブロックが隣接するドップラー周波数オフセットに割り振られるように割り振られ得る。
【0075】
複数の地上モバイル局との通信を取り扱う1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局の特定の実施形態では、地上モバイル局は、地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されており、多元接続基地局は、データ解析器であって、データ解析器が、フレーム構造であって、どの時間スロットが複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義し、多元接続基地局から複数の地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを備える、フレーム構造に従って、かつ多元接続プロトコルであって、地上モバイル局が特定された周波数で信号を受信し、地上周波数で信号を伝送するとの予想で伝送し、ドップラー周波数オフセットで受信され、多元接続プロトコルが、複数のチャネルブロック内でチャネルブロックを特定し、各チャネルブロックが、指定された地上周波数および指定された時間スロットを有する、多元接続プロトコルにさらに従って、多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器と、多元接続基地局と地上モバイル局との間の基地-モバイル間の距離に基づいて、地上モバイル局への伝送信号のフレーム構造に対する信号タイミング調節を判定する、信号タイミングモジュールであって、基地-モバイル間の距離が、制限距離を超えており、各チャネルブロックには、指定された信号タイミング調節が割り振られる、信号タイミングモジュールと、複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、多元接続基地局に対する各地上モバイル局の速度に起因する各地上モバイル局のドップラー偏移を判定し、各チャネルブロックには、指定されたドップラー周波数オフセットが割り振られる、ドップラー偏移計算器と複数の地上モバイル局の各々を複数のチャネルブロック内の指定されたチャネルブロックに、チャネルブロックの指定された信号タイミング調節と指定されたドップラー周波数オフセットとに基づいて割り当てる、動的チャネル割り当て器であって、指定されたチャネルブロック内のチャネルの数が、指定された信号タイミング調節および指定されたドップラー周波数オフセットを有するか、またはそれらを有することが予想される、複数の地上モバイル局の数に対応する、動的チャネル割り当て器と、ドップラー周波数オフセットを用いて、地上周波数で地上モバイル局への信号を変調する、信号変調器であって、ドップラー周波数オフセットが、多元接続基地局および地上モバイル局の相対移動に起因して、地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、地上モバイル局が、地上周波数で信号を受信する、信号変調器と、多元接続プロトコルを使用して地上モバイル局からの通信を受信すること、および地上モバイル局のドップラー周波数オフセットを考慮に入れることができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、通信は、基地-モバイル間の距離が制限距離を超えているにもかかわらず、かつ多元接続基地局に対する地上モバイル局の速度が制限速度を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を含み得る。
【0076】
添付の図面と共に以下の詳細な説明は、本発明の性質および利点のより良い理解を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
本開示によるさまざまな実施形態を、図面を参照して記載する。
【0078】
【
図1】本発明が使用され得る一環境を例示している。
【
図3】基地トランシーバ局とモバイル局との間で使用されるフレームベースのプロトコルの一例を例示している。
【
図4】時分割プロトコルを使用する際の、伝播遅延およびタイミング前進の使用の効果の一例を示している。
【
図5】時分割プロトコルの拡張レンジ特徴の使用の一例を示している。
【
図6】時分割プロトコルでの拡張レンジ特徴の使用およびタイミング前進の使用の一例を示している。
【
図7】BTSから異なる距離にあるさまざまなMSの一例を示しており、それらの距離は少なくともほぼ判定される。
【
図8】
図7の異なる距離にあるさまざまなMSが、それらの判定された距離に基づいて、どのように時間スロットに割り振られて、ソートされた拡張レンジ通信のために提供されるかを例示している。
【
図9】同期オフセットを使用するリング方式のカバレッジエリアを例示している。
【
図10】タイミングがどのようにリング方式のために調節されるかを例示している。
【
図11】衛星フットプリントの一例、およびその衛星フットプリント内の結果として生じる距離レンジを例示している。
【
図12】リング方式、およびTDMA通信のためのソートされた拡張レンジを実装するために、異なるモバイル局に、それらの地上ロケーションに基づいて、どのように異なる時間スロットが割り振られるかの一例を示している。
【
図13】異なるキャリア周波数について、変化するリング直径でリング方式を使用することができるように、異なるモバイル局に、それらの地上ロケーション距離に基づいて、どのように異なるキャリア周波数が割り振られるかを例示している。
【
図14】衛星フットプリントがどのようにドップラー偏移ストリップに細分割され得るかを示している。
【
図15】MSからの擬似距離およびドップラー偏移を判定するための測定プロセスのフローチャートである。
【
図16】衛星フットプリントがどのようにレンジリング、ドップラー偏移ストリップ、ならびにレンジリングおよびドップラー偏移ストリップの両方に細分割され得るかを示している。
【
図17】衛星フットプリントのレンジリング/ドップラー偏移セルの一例を例示している。
【
図18】
図17のレンジリング/ドップラー偏移セルの、特定のキャリア周波数およびドップラーオフセットブロックへの割り振りの一例を例示している。
【
図19】BTSとMSとの間の通信におけるドップラー偏移を考慮して、周波数スペクトルをどのようにチャネルのさまざまなドップラーオフセットブロックに割り当てるかを例示している。
【
図20】セルごとのMSの予期された密度に基づいて、衛星フットプリントのセルを割り振る一例を例示している。
【
図21】
図20に例示される割り当ておよびマッピングに使用され得る例示的なチャネル割り当てを例示している。
【
図22】セットアップおよび距離判定のプロセスを例示するスイム図(swim diagram)である。
【
図23】例示的なトランシーバおよび関連する構成要素を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下の説明において、さまざまな実施形態を記載する。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、特定の構成および詳細を説明する。しかしながら、実施形態が特定の詳細なしに実施され得ることも当業者には明らかであろう。さらに、記載されている実施形態を不明瞭にしないために、周知の特徴は省略または簡素化され得る。
【0080】
本明細書に記載および提案される技法には、軌道内で動作し得る衛星または衛星の一部であり、地上BTSで使用されるように設計されたモバイル局であるモバイル局(MS)などの地表ベースのデバイス間で伝送および受信するためのトランシーバを実装する衛星ベースの基地トランシーバ局(BTS)の設計が含まれる。多くの場合、いかなる物理的な修正も、またはいかなるソフトウェアの修正でさえも必要とすることなしにMSを使用することができ、この場合、MSは、トランシーバおよびBTSと通信しており、かつBTSが地上BTSでないこと、またはより概略的には、BTSが、距離の設計上の想定よりも大きい相対距離にあること、MSが設計されるであろう相対速度よりもはるかに速い相対速度にあること、およびその他の設計上の想定など、MSの設計上の想定の範囲を超えて動作していることに気づいていない可能性がある。
【0081】
軌道トランシーバおよび地上MSでは、BTSは、BTSからMSまでの最大距離が仮に約35kmであると想定するMS設計の設計上の想定の範囲を超えていることになり、通信時のBTS-MS間の距離の時間微分などの相対運動が無視され得るか、または軌道トランシーバと比較して、経験されるであろう7.2~7.8km/sよりもはるかに小さいと想定するMS設計の設計上の想定の範囲を超えていることになる。他の設計上の想定も影響を与える可能性がある。例えば、軌道トランシーバは、衛星が反対側の地平線の最小高度を下回るまでMSに対して最小高度を超えて上昇するため、通信するための限られた時間窓を有するであろう。
【0082】
本明細書の例および詳細の多くは、あたかもそれらの設計上の想定が依然として当てはまるかのように動作するMSとの通信を閉鎖するように適合、構成、プログラムなどされる軌道トランシーバに関連するが、これらの技法を軌道の例以外にも使用することができる。例えば、スラント角が120kmを超えるほど十分高く位置するBTSのために使用することができる。例えば、BTSを1,130メートルの高度に装備することができる場合、120km以上のMSまでの見通し線(スラントレンジ)を可能にするのに十分である。飛行機、UAV、高高度ドローン、熱気バルーン、高高度バルーン、準軌道車両、スペースプレーン、山、またはさらにはいくつかの非常に大きな塔などのプラットフォームは、これらの技法の一部またはすべてが有用だと発見する条件であり得る。また、記載される技法は地表ベースのBTSであっても展開され得るが、(120kmを超えるなど)長い通信距離および/または約200KPHを超えるような高いドップラー偏移環境を作り出すプラットフォームで動作しているMSにサービスを提供するようにアンテナが向けられることは注目に値する。これは、MSが地表上、大気中、もしくは宇宙環境内で動作しており、BTSが地表上にあり、(例えば、いくつかの車両の上で)モバイルであるか、もしくは場合によっては静止しているかのいずれかである条件を含み得る。
【0083】
これらの技法は、MSが軌道内にあり、あたかも設計上の想定が真であり、BTSが地上のものであり、かつ設計上の想定が真でなくても動作し、それらのMSに適応させるように調節し得るように動作させる必要がある場合に、有用だと発見する可能性もある。例えば、MSを移動中の飛行機、または場合によっては将来の宇宙局で使用することができる。十分大きいアンテナを備えた地表上の基地局の塔は、長い距離および高いドップラー偏移などの同様の設計上の想定の違反に対処しながら、MSとの通信を閉鎖する動作を実施することができる。
【0084】
BSCおよびMSC(ホームロケーションレジスタまたはHLR、および加入者取扱いを含む)機能もまた、衛星で供給される場合があり、または軌道内に不要な機能の一部は地上で実装される。BTS、BSC、および/またはMSC機能は、必要な機能を実施するようにプログラム、構成、または適合され得る限り、従来のオフザシェルフのソフトウェア定義のラジオ、または商用グレード(もしくは独自の)ハードウェア/ソフトウェアを使用して実装され得る。
【0085】
BTSは、距離に起因する電力低減および距離に起因する飛行時間の遅延を引き起こす、BTSとMSとの間の距離が拡張されているにもかかわらず、ならびにまた、MSがBTSに対して行う可能性のある典型的な地表ベースの相対移動を超える、BTSとMSとの間のより大きな相対移動の影響にもかかわらず、その機能を提供し得る。後者はドップラー偏移を引き起こし、セル電話などの従来のMSは、場合によってはLEOで経験される7.6km/sの速度でMSに対して移動している衛星によって引き起こされるほど大きなドップラー偏移を取り扱うようには設計されていない可能性がある。これらのドップラー偏移は、衛星のフットプリント内のMSのロケーションによって変化するため、可変であるであろう。衛星の後ろのロケーションでは負のドップラー偏移が見られ、衛星の前のロケーションでは正のドップラー偏移が見られる。
【0086】
電力レベルが対処されるべきである。一例として、GSM仕様では、必要に応じて、モバイル電話が(周波数に応じて)伝送電力を1~2Wに急増させることを要求している。モバイル電話は、これをRACH上で当然のこととして行い、いったんチャネルが割り振られると、BTSは「大音量」で伝送する必要がない場合に、静かにするように命令することができる。好適なBTSアンテナの容量では、2ワットは、50cmのフォームファクタのようなアンテナを使用して500kmの高度で妥当な仰角でリンクを閉鎖するのに十分な伝送電力であり得、データ転送の速度は必要に応じて調節される。例えば、一実装例は、4G LTEなどのデータレートをサポートしようとするのではなく、2G速度および短いデータバーストを伴うナローバンドメッセージングに焦点を当て得るが、後者が可能である可能性がある。かかる方法では、より低い電力レベルおよびより高いデータレートは依然として、十分なアンテナ技術を備えた宇宙ベースの基地局によって典型的にはサポートされ得る。しかしながら、地表のデバイスの電力レベルを低くし、データレートを速くすると、宇宙セグメントの電力要件および質量要件が増加する傾向がある。
【0087】
本明細書で使用される場合、「フットプリント」とは、衛星上でBTSとの通信チャネルを閉鎖するレンジ内にある地表上のエリアを指す。本明細書の例では、円形のフットプリントが使用されているが、フットプリントは円形ではない場合があり、不明瞭な要因、地球の表面の形状、大気条件などに依存し得ることを理解されたい。一部の例では、フットプリントは、実際のフットプリントとは異なる「設計フットプリント」である。例えば、衛星は、実際には、ある程度距離が離れており、それゆえに、衛星の実際のフットプリント内にあるモバイルデバイスと通信することができる場合があるが、選択性、性能、または他の理由により、その衛星を使用するシステムは、実際のフットプリントよりも小さいフットプリント、つまり、設計フットプリントなどの、異なるフットプリントのために設計されている。設計フットプリントの境界は、衛星のすぐ下の表面のポイントを中心とし、かつ衛星が、ある特定のスラントレンジなど、設計によって網羅することになっている半径を有する、衛星によって地球上に放たれる円形または楕円形であり得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「地表」とは、MSのロケーションを指すために使用されるが、「地表」は地球の表面に限定されないことを理解されたい。MSが地表ベースであるかまたは地表上にあると記載される場合、MSは、地球の表面、水域の表面、地球の表面よりいくぶんか下もしくは水域の表面よりいくぶんか下、建物の上層階、正確には地表レベルではない構造の中、飛行機の中もしくは別様に空中であるが大気中、または同様のロケーションに立っている人物の手の中にある可能性がある。しかしながら、説明を明確にするために、MSは、軌道内にある要素と区別するために、地表上にあるとして記載され得る。これは、本明細書に記載されるシステムが軌道内にあるMSには使用可能ではないということを述べているのではない。該当する場合、別様に述べられていない限り、軌道内のMSが軌道内のBTSと通信するように特別に修正されていない場合であっても、デバイスが電気的、機械的、および別様に軌道上の使用に十分な耐久性があると想定すると、軌道内のMSをサポートすることもできる。
【0089】
本明細書で使用される場合、「軌道内にある」とは、あるロケーションにあり、地球の引力の中心に対して(多かれ少なかれ)静止している慣性フレームに対してある速度で進み、かつ軌道を容易に維持することができるように、そのロケーションで大気抵抗をほとんど経験しないことを指す。本明細書の一部の例では、軌道距離が与えられ、これは、軌道を説明するために、従来のように、地球の表面上の平均または通常のポイントからのおおよその典型的な距離を指す。「LEO」が一部の例では使用されており、これらの例は、LEOとして従来定義されているが、依然として軌道であるように考慮される範囲のいくぶんか外側にあり得る軌道に適用することができることを理解されたい。別様に示されない限り、軌道内にあるとは、火星、月、他の惑星の月、またはさらにはL1もしくはL2などの対象となるポイントなど、他の天体の周りの軌道を説明することもできる。本明細書の例の多くでは、BTSは地球の周りの軌道内にあり、MSは地上のものである。BTSとMSとが場所を交換する場合、もしくは地球軌道の代わりにBTSが飛行機、操縦者のいない自律車両、バルーンなどの中にある場合、同様の困難に遭遇する場合、またはより概略的には、距離、伝播遅延、および/もしくはドップラー偏移などの困難が、MSが典型的にはサポートもしくは経験するように設計されているものを超える条件が存在する場合、例えば、設計がMSの構築および/もしくはプログラミングに入ることを想定する場合など、他の状況のために、本明細書の教示を使用することが可能である。
【0090】
伝統的なTDMA通信システムでは、通信リンクを閉鎖する、すなわち、受信信号電力がノイズ/干渉環境よりも十分に高く、そのため、データが所望のデータレートとビットエラーレートでチャネル上を流れることができ、通信しているデバイスがいずれのエンドでも断念しないように、予想されるプロトコルに追従する条件を作り出す、タイミングと信号電力の側面がある。本明細書に記載されるように、衛星ベースのBTSは、地表ベースのBTSと共に使用するために設計された地表ベースのMSと通信することができる。衛星ベースのBTSは、MSに対して透過的でありながら、可変伝播遅延を考慮することによって、ある程度の差異の距離にわたって通信を可能にする方法で、MSとのTDMA通信を修正する。LEO内に衛星群があると、許容可能な経済的展開コストおよび妥当なサービス耐用年数で、地球の上400~500kmの軌道から、従来の地上通信技術とプロトコルとを使用するMSまでの連続接続を提供することができる。BTSは、TDMAフレーム構造に好適なタイミングを提供し、これにより、軌道レンジの通信と、必要とされるレンジの擬似距離およびドップラー偏移の軽減をサポートするチャネル割り当てまたは割り振りスキームとが可能になり、軌道干渉に起因するドップラー偏移に関連付けられた信号干渉の問題および不整合が処理される。結果として、本明細書に記載されるBTSは、宇宙船と地上電気通信デバイスとの間の通信、ならびに地上電気通信のために典型的に使用される地上電気通信デバイスの特徴および設備を使用した通信を提供することができる。これは、通信システムのラジオカバレッジのレンジを拡張させて、軌道上の宇宙船とモバイル電話または他の通信/無線デバイスとの間の通信を可能にさせ得る。BTSは、GSMセルラ通信プロトコルまたは同様の地上プロトコルを使用して軌道内で宇宙船と通信するために、従来のモバイル電話で使用される周波数および/または時間ドメイン(すなわち、TDMA、FDMA、OFDMAなど)で多元接続技法を活用する通信システムで使用され得る。
【0091】
BTSは、BTSが時間ドメインおよび周波数ドメインの両方でスライドしているRF信号を取り扱うため、TDMA、FDMA、CDMA、OFDMAなどのような時間ドメインおよび/または周波数ドメインで多元接続方式を使用する通信様式を使用して実装され得、これは、所与の伴われる距離および関係する伴われる速度を処理する必要がある。概して、別様に示されない限り、本明細書の教示を多元接続方式およびシステムのこれらの例のうちの1つ以上に適用することができ、複数のモバイル局は、BTSと通信しているか、または通信を試みており、干渉を回避するために、使用されるプロトコルは、MSが各々異なる時間スロット、キャリア周波数、および/またはコード系列を使用することによって、多元接続を提供する。したがって、多くの例は、TDMA/FDMAプロトコルを参照して記載されているが、他のプロトコルに拡張することができる。
【0092】
本明細書では、距離はキロメートル以外で表される場合があり、それらの場合では、ある特定の変換が想定される。例えば、真空中での光の速度は、距離がマイクロ秒およびミリ秒などの秒単位で表される変換係数になる場合がある。特定の状況での伝播遅延は、真空中の光の速度であり得るか、またはより長くなり得るが、文脈から、秒単位で表される伝播遅延が与えられた距離を判定する方法は当業者には明らかであろう。
【0093】
同様に、距離および/または時間がビット単位で表される場合があり、それらの場合では、ある特定のビットレートが想定される。例えば、ビットレートが270.833kbit/sの場合、「156.25ビット」で表される期間は576.92μsの期間を指すことになり、10ビットで表される距離は、10ビットを伝送すると36.92μsを占有することになり、36.92μsの期間では、信号は真空中の光の速度で5.538km(往復)の距離を進み得るため、5.538kmの距離に対応し得る。真空中の光の速度と実際の伝播速度との間の差は異なる場合があり、これが考慮される場合があるが、それらの詳細は、例示の目的のために、説明を複雑にしないように省略されることがある。
【0094】
例示的なBTSおよびその動作の説明
本発明を、本発明の特定の、ただし、必ずしも好ましいとは限らない、実施形態を参照して詳細に記載する。これらの特定の実施形態は例としてのものであり、多元接続通信システムおよび軌道機構の当業者は、本開示を読むと、他の変形例が可能であること、ならびに本開示が惑星体の表面上のMSと、その惑星体の周りのさまざまな軌道内で動作する宇宙船BTSとの間の多くのタイプの多元接続通信システムに関連することを認識するであろう。
【0095】
本明細書の多くの例では、BTSを含む衛星の軌道には500kmの高度を有する円形軌道として与えられているが、本明細書の教示はそれに応じて調節された他の軌道に適用されることを理解されたい。一部の例では、BTSはGSM BTSとして動作するか、もしくはGSM BTSの動作をシミュレートするか、または地球の表面近く、すなわち、軌道内にない地上モバイル局(MS)と通信するための機能を十分に実施する。
【0096】
本明細書の例のうちのいくつかでは、衛星のフットプリントは、MSから見たときに、衛星が最小仰角以上にある地球の表面または地球の表面近くのポイントのセットとして与えられる。本明細書で使用される場合、衛星がMSの真上にあるとき、MSは90度の仰角で衛星を「見る」(それゆえに、MSは衛星に対して天底の方向にある)。本明細書の例では、スラントレンジは90度~40度であるが、それよりも大きいまたは小さい他のスラントレンジが使用されてもよい。当業者は、本開示を読んだ後、本明細書の計算を適宜修正する方法を理解するであろう。
【0097】
地球に対して6370kmの半径を使用し、500kmの円形軌道を想定すると、仰角が90度の場合、フットプリント内のMSはBTSから500kmにある。基本的な幾何学を使用すると、地球の表面上のあるポイントから、500kmの円形軌道内の衛星は、衛星からそのポイントまでの距離が約741kmである場合、そのポイントの地平線に対して約40度の標高で現れるであろうと判定することができる。MSと衛星BTSとの間の信号の伝播遅延は距離の関数であり、軌道内の衛星までの距離は軌道半径と仰角との関数であり、これは、衛星の位置ベクトルとMSの位置ベクトルとの間の角度である。仰角が90度である場合、すなわち、衛星が頭上にあり、MSが衛星の天底の方向の表面ポイントにある場合、距離は、軌道半径と地球の半径との間の差として、またはほぼそのようにとられ得る。仰角が90度未満の場合、距離を計算することができる。接続が作り出されると予想される一部の最小仰角については、角度がかかる接続のためにサポートされる最長距離に対応するであろうと概して考慮される。40度の最小仰角では、MSと衛星BTSとの間の相互作用時間は、BTSおよび/またはMSで次のように計算され得る。40度の仰角、500kmの円形軌道の場合、地球の中心角は、ACOS(R_earth*COS(min_elev)/(R_earth+h))-min_elev=4.74度であり、式中、R_earth=6370km(地球の半径)、min_elevは最小仰角(この例では40度)であり、hは衛星高度(この例では500km)である。MSが一方の地平線上の衛星に対して40度の最小仰角から、他方の地平線上の衛星に対して40度の最小仰角まで動くのにかかる時間は、衛星が地球の表面の2*4.74=9.47度を進むのにかかる時間として算定され得る。本明細書に説明されるように、500kmの円形軌道にある衛星は、地球の表面に対して7.11km/sで移動している。そのため、この速度で地球の表面を9.47度進むのにかかる時間は秒単位で、おおよそ9.47度*円周率/180*(R_earth+h)/7.11km/s=159.86秒である。当然ながら、他の最小仰角を使用し、それに応じて計算を調節することができる。これは、MSが頭上を通過するときに、衛星フットプリントの中心をまっすぐに通って進むことを想定している。さまざまな状態で、BTSおよび/またはMSは、通信およびスケジューリングを計画および調整するために、この159.86秒という値を考慮に入れることができる。
【0098】
実際の距離は、大気効果および他の物理的相互作用に応じて異なる場合がある。この例では、次いで、BTSは、BTSとMSとの間で約500km~741kmの範囲にあるデバイスとの通信をサポートするように構成されており、それらのMSが局所地平線から40度より低い標高でBTSを見る場合、MSをサポートする必要がある。一部の実装例では、下限が軌道距離から下げられて、地表の十分上にあるMSとの通信を可能にする。例えば、MSが15,000メートルで飛行する飛行機内に位置するが、衛星が485kmの最小距離を想定している場合、そのMSをサポートすることはできない。別の例では、静止地球軌道(GEO)内の衛星がBTSを提供することがあり、この場合、最小距離は約35,786kmである。
【0099】
図1は、本発明が使用され得る一環境を例示している。そこに示されるように、地球(またはそれに関する惑星体もしくは天体)の表面102上には、モバイルであり得るか、または場合によっては携帯型もしくは静止しているが、MSとして機能し得る、いくつかのモバイル局(MS)104がある。これらのMS104は、BTS-MS間のリンク108を介して、軌道BTS106と通信する。例示されるように、BTS106の各々は、表面102に対する軌道速度、およびある程度の分離距離を有する。
【0100】
図2は、
図1の環境の追加例を例示しており、人物202は、スマート電話204(1)、ラップトップコンピュータ204(2)、およびタブレットデバイス204(N)などのモバイル局を構成する要素を含むさまざまなデバイス204を有し、これらの各々は、地上BTSと通信するように構成および/または適合されており、人物202がインターネット208および/またはインターネット接続されたリソース210に通信またはアクセスすることを所望する場合、それらはBTS206を介してそうすることができる。デバイスの他の例は、ネットワークを介して相互作用する産業用機器または家庭用機器などのユーザインターフェースのないデバイス(例えば、「モノのインターネット」デバイス)であり得る。
【0101】
図3は、TDMAなどのプロトコルまたは地上通信のために使用することもできる他のプロトコルを使用する地表-軌道間のリンク308を介して、基地トランシーバ局(BTS)306とモバイル局(MS)304との間で使用されるフレームベースのプロトコルの一例を例示している。
【0102】
本明細書の例で説明されるように、BTSは、それが単に地上セルラ通信のために構成されたMSを透過的にサポートすることを可能にするさまざまな技法を使用する。いくつかの例を記載するが、最初に、TDMAシステムのレンジ拡張のためのいくつかの方式を記載する。
【0103】
図4は、タイミング前進機構がどのように使用され得るかを例示している。理解されるべきように、タイミング図が示されている場合、タイミング図に追従する論理を備えた対応するモジュールがあることを暗に意味している。
図4はまた、時分割プロトコルを使用する際の、伝播遅延およびタイミング前進の使用の効果を示している。
【0104】
図4では、TDMAフレームの8つの時間スロットが示されている。これらは、説明を明確にするために省略されている、より大きなデータ構造の一部であり得る。MSまたはBTSがMS-BTS間の通信のために割り振られた時間スロットを有する場合、デバイスの各々は、システムクロックの各デバイスのローカルコピーを使用して、伝送をいつ開始するか、伝送をいつ停止するか、聴取をいつ開始するか、および聴取をいつ停止することができるかを判定するようにプログラムされており、これは、それらの割り振られた時間スロットに対応するであろう。
【0105】
図4では、頂部線は、MSからの伝送402を例示している。本明細書において、「Tx」は、文脈が必要とし得るように、伝送、伝送器、伝送することの略語である。同様に、「Rx」は、文脈が必要とし得るように、受信、受信器、受信することの略語である。本明細書で使用される場合、「伝送」は、伝送器から通信または信号の一部として送信されるものであり、「受信」は受信されるものである。伝送器と受信器とが同じシステム時間を有し、測定可能な伝播遅延がある場合、伝送およびその対応する受信は、同じシステム時間では発生しない。MSの観点から、伝送402を送信するプロセスは、時間スロット1内で完全に発生し、ここではMSに時間スロット1が割り振られていると想定される。分配された時間スロットの大部分を伝送402が占める場合、それは伝播遅延後にBTSでBTS Rxとして受信されると、時間スロット2の間に部分的に受信される受信404として受信される。これは望ましくない。タイミング前進では、MSは、時間スロット1が始まる前に(MSのクロックタイミングから)伝送412を送信し、それが受信414として伝播遅延後にBTSで受信されると、BTSにおいて時間スロット1内で完全に完了する。
【0106】
図5は、時分割プロトコルの拡張レンジ特徴の使用の一例を示している。この例の時間スロットの持続期間は、約0.28ミリ秒であり、85kmの距離を表しており、そのため、MSは、1つの時間スロットの持続期間だけ伝送をBTSで遅延させることができる場合、いかなるタイミング前進も必要とすることなくBTSと通信することができる。余分の時間スロットは、追加のガード期間として役立つ。
【0107】
図5に例示されるように、MSには、8つの時間スロットがあるが、第1(スロット0)、第3(スロット2)、第5(スロット4)、および第7(スロット6)の時間スロットのみが使用されている。例示されるように、MS1は時間スロット0の間に伝送502(0)を行い、MS2は時間スロット2の間に伝送502(2)を行い、MS3は時間スロット4の間に伝送502(4)を行い、MS4は時間スロット6の間に伝送502(6)を行う。BTSは、かかる伝送の受信を受信し、時間スロット0の開始後の任意の時間で開始し、時間スロット1の終了前の任意の時間で終了する受信504(0)を受信する(図では「(0)」として称される)。同様に、BTSは、時間スロット2の開始後で、かつ時間スロット3の終了前の任意の時間で終了する受信504(2)を受信し(「(2)」)、受信504(4)および504(6)についても同様である。
【0108】
図6は、時分割プロトコルでの拡張レンジ特徴の使用およびタイミング前進の使用の一例を示している。そこに示されるように、MS伝送602はそれらのそれぞれの時間スロットの間であり、BTSはかかる伝送を受信し、適切な時間で受信604を受信する。
図6に例示されるように、タイミング前進機構と拡張レンジ機構との組み合わせでは、最大許容MS-BTSは、35km+85km=120kmになり得る。タイミング前進機構を単独で使用するか、拡張レンジ機構を単独で使用するか、または両方を使用するかにかかわらず、BTSはどちらを使用するかを管理し得る。MSは、BTSが単に1つおきに時間スロットを割り振らないことになるため、拡張レンジ機構が使用されているかどうかさえ気づかない場合がある。例えば、MSが60km離れているとBTSが判定した場合、BTSはMSに0ビットのタイミング前進を使用する(すなわち、タイミング前進を使用しない)ように伝え、次のタイムスロットをいずれのMSにも割り振らないことがある。MSが95km離れているとBTSが判定した場合、BTSはMSに18ビットのタイミング前進を使用するように伝え、次のタイムスロットをいずれのMSにも割り振らないことがある。
【0109】
図7は、BTSから異なる距離にあるさまざまなMSの一例を示しており、それらの距離は少なくともほぼ判定される。この例では、d
A~d
Gの間のそれぞれの擬似距離を有するA~Gでラベル付けされた7つのMSがある。これは、MSがどのように距離によってソートされ得るかを例示している。
【0110】
図8は、
図7の異なる距離にあるさまざまなMSが、それらの判定された距離に基づいて、どのように時間スロットに割り振られて、ソートされた拡張レンジ通信のために提供されるかを例示している。
図8に示されるように、時間スロット0は、
図7でBTSに最も近いユーザGに割り振られ、時間ロット6は、
図7でBTSから最も遠いユーザEに割り振られる。7つの時間スロットのみが割り振られる。伝播遅延のレンジを考慮すると、さまざまなMSからの伝送802は受信804として受信され、その結果、伝送802は別の伝送802と重畳せず、受信804のすべてはTDMAフレーム期間内に受信される。
図8に例示されるように、信号バーストは、衝突および干渉を排除し得る時間スロットにわたって次第に遅延される。
【0111】
ソートされた拡張レンジ方式は、拡張レンジ機構よりもスループットが高くなるが、依然として最大120kmのレンジのMS-BTS間の距離および最大フレーム容量の7/8を許容することができる(ソートされた2つのMS間の距離の隔たりが全体で85kmを超えない限り)。一部の事例では、2つ以上の時間スロットが距離の隔たりに分けられるように割り当てられることになり、そのため、N個の時間スロットがそのように割り当てられる場合、Nは1~7であり、スループットは最大フレーム容量の1-(N/8)になることになる。時間スロットが156.25ビットである場合、隔たりを、時間スロット間に分布するビット数として割り振ることができる。この論理がBTSによって実施される場合、ソートされた拡張レンジ機構の実装例は、BTSが計算された時間スロットの割り振りを編成しているため、MSの論理または動作へのいかなる修正も必要としない。
【0112】
図9は、リング拡張レンジ機構を使用するBTSの距離レンジ、および同期オフセットを使用するリング方式のカバレッジエリアを例示している。クロスハッチされたエリアは、BTSがサポートするエリアである。すべてのMSが少なくともd
*だけ離れているとBTSが想定する場合、最小通信距離d
*よりも近いMSはサポートされない。いかなるMSの修正も必要とすることなく、タイミング前進機構を使用して得られた35kmのレンジを使用して、d
*~d
*+35kmに及ぶMS-BTS間をサポートすることができる。一例では、d
*=85kmであるが、他の最小通信距離を使用することができる。その場合、この例では、BTSは、BTSから85km~120kmの範囲のMSをサポートすることができる。
【0113】
図10は、伝送および受信のタイミング、ならびにタイミングがどのようにリング方式のために調節されるかを例示している。最小通信距離d
*は、アップリンクサブチャネル上のBTSが使用するために選択された時間スロット同期オフセットで直接スケーリングされる。MSでは、MSが時間スロット0として見る伝送1002がMSによって送信される。BTSでは、光の速度の少なくともd
*倍である伝播遅延後に受信404が受信される。光の速度のd
*倍の値がわかっているため、BTSはその時間スロットのタイミングを、あるオフセット(T_offset=2×d
*/(光の速度))分だけ単に偏移することができ、2は、MS-BTS間の往復距離を考慮し、BTSは、BTSの時間スロット0内で受信1004を受信する。
【0114】
図11は、衛星フットプリント、リングの一例、およびその衛星フットプリントのリングの結果として生じる距離レンジを例示している。衛星1102は、
図11では真横向きのフットプリント1104として例示され、上からのフットプリント1106として例示されているカバレッジフットプリントを有することになる。フットプリント1106内の異なるクロスハッチ部分は、リングを形成する、表面とBTSとの間の異なる距離レンジを示している。この例では、7つのリングがあるが、必要に応じて、より多くのまたは少ないリングが存在してもよい。この例では、リングはr
0~r
6でラベル付けされており、(擬似距離レンジであり得る)BTS-MS間の距離{500-534.4、534.4-568.9、568.9-603.3、603.3-637.7、637.7-672.1、672.1-706.6、706.6-741}(すべてkm)に対応する。これらのレンジの各々は、たまたまちょうど35km未満であり、これは、以下で説明されるように、有用な設計上の選択である。他の用途では、異なる設計上の選択を使用し得る。RACHプロセスなどの初期ハンドシェイクでは、BTS-MS間の距離が判定され、そこからMSを衛星フットプリント内のリングのうちの1つに割り振ることができる。
【0115】
以下に説明されるように、リングのうちの特定の1つに割り振られたMSはすべて、1つのキャリア周波数、またはTDMA/FDMAフレーム上で伝送されるキャリア周波数のブロックに割り振られ得るか、または他の手法がとられ得る。いくつかの実施形態では、リングは、MSが2つ以上のリング内にあり得るように重畳する場合がある。例えば、第1の2つのリングは、490~540および530~580であり得、そのため、BTSから535kmにあるMSは、これらのリングのうちのいずれかの中にあり得る。
【0116】
所望の用途に応じて、軌道BTSは、そのプロトコルおよび動作を、(1)タイミング前進方式、(2)拡張レンジ方式(利用可能なすべての時間スロットよりも少ない時間スロットを使用し、代わりに未使用の時間スロットをガードビットとして使用する)、(3)ソートされた拡張レンジ方式(利用可能なすべての時間スロットよりも少ない時間スロットを使用し、代わりに、予想される可変遅延に基づいて時間スロットが割り振られる時間スロット間に割り当てられるガードビットとして未使用のタイムスロットを使用する)、(4)リング拡張レンジ方式(カバレッジが、サポートされていない内側の円形を有するリングであるようにタイミングを偏移する)、(5)複数リング拡張レンジ方式(方式(4)と同様に、距離の異なるレンジを同時に網羅するための複数のリングと、BTS-MS間の距離に基づいてリングに割り振られたMSとを用いる)、ならびに(6)ソートされたチャネル-リング間の割り当て方式(方式(5)と同様に、かつ異なるキャリア周波数に関連付けられた異なるリングを用いて、キャリア周波数については、そのリングの距離レンジ内のMSに方式(3)を使用して時間スロットを割り当てる)、または(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、および(6)のうちの1つ以上の組み合わせに従って調節することができる。
【0117】
タイミング前進、リング、およびソートされた拡張レンジ方式
図12は、タイミング前進方式、リング拡張レンジ方式、およびソートされた拡張レンジ方式を使用するBTSの第1の例を例示している。そこでは、異なるモバイル局に、それらの地上のロケーションに基づいて異なる時間スロットを割り振って、TDMA通信のためのソートされた拡張レンジ方式を実装することができ、リング方式を使用してレンジを地上のものにする。
【0118】
この例では、衛星1202は、d*の高度で軌道に乗っており、衛星1202がd*より近いMSをサポートする必要がなく、かつBTSからある程度の最大距離dmaxだけは離れているMSをサポートする必要がないことを想定している。この例では、d*~dmaxの範囲である、BTSからの距離によってラベル付けされた5つのMS、MS1~MS5がある。MSのMS1~MS5は、時間スロット4~0にそれぞれ割り振られており、時間スロット5、6、および7は割り当てられておらず、そのため、ソートされた拡張レンジ方式をガード時間に値する3つの時間スロットで使用することができる。これは、約486ビットに対応し、MSフレーム1204に例示されている。MSとBTSとの間の距離の結果として、示されるBTSフレーム1206に示されるように、MS1~MS5の信号バーストが受信される。
【0119】
この例では、タイミング前進は、(12kmのレンジのために必要とされる)22ビットであり、リングの同期オフセットは875ビットであり、これは、約488kmの距離に対応し、そのため、d
*は約488+12=500kmである。拡張レンジのガード時間は、3つの時間スロットを使い切るが、約295kmのMS-BTS間の距離(すなわち、d
max-d
*)の完全レンジを提供する。タイミング前進のために、0~63ビットであり得る最大35kmのレンジを想定すると、ソートされた拡張レンジ方式のレンジは、表1に示されるように、ガード時間に割り当てられる時間スロットの数に応じて、約35km~約640kmであり得る。表1では、レンジは、タイミング前進の0~63ビットの完全レンジが利用可能であることを想定している。
【表1】
【0120】
このTDMAフレーム構造により、広い地理的エリアの衛星ベースの広いセルラカバレッジが可能になる。この解決策を用いても、依然として、解決が必要な動作上の問題および課題がある。まず、各フレームは、典型的なGSMフレームの潜在的なスループットのかろうじて半分以上を有する。次に、この構成では、各フレームは、(軌道の選択、スラントレンジ、周波数の使用などに応じて、解決策ごと変化する)プラスまたはマイナス約35kHzの間の可変ドップラー偏移に供される。しかしながら、ドップラー偏移の問題は、本明細書に記載される軌道上のBTSの方式および装置を使用して軽減され得る。タイミングの課題は、次の方式を用いて解決され得る。
【0121】
タイミング前進およびソートされたチャネル-リング間の割り当て方式
図13は、異なるチャネルについて、変化するリング直径でリング方式を使用することができるように、異なるモバイル局に、それらのBTSに対する地上ロケーションに基づいて、どのように異なるチャネルが割り振られるかを例示している。そこに示されるように、(約0~35kmのレンジについて)タイミング前進を使用する方式、およびソートされたチャネル-リング間の割り当て方式は、時間スロットを使い切ることなく、別の約241kmのレンジを提供し得る。ソートされたチャネル-リング間の割り当て方式では、
図11に例示されるように、衛星フットプリントがリングに分割され、各リングが個別のキャリア周波数とペアをなす。各リングは、異なる同期オフセットで動作する。
【0122】
本明細書で使用される場合、チャネルは、一群のキャリア周波数など、プロトコル内の1つ以上の特定の周波数分割を含み得る。
図13では、最も近い潜在的標的と最も遠い潜在的標的との間でサポートされる擬似距離のレンジは、241kmであり、7つの擬似距離レンジのリングに分配されている。これは、リング当たり約34kmのカバレッジレンジをもたらし、同期オフセットは、チャネルブロックまたはチャネルのセットに割り振られた異なるリングごとに異なり得る。チャネルブロック間のオフセットを約35km未満にすることによって、完全なスループットが余分なスロットガード期間の必要性を排除することによって各チャネル内で可能になり、次いで、それ自体によるタイミング前進が十分になる。
【0123】
RACH要求バーストを使用して、各MSの信号からの伝播距離を判定することができる。BTSは、報知チャネル(broadcast channel、BCCH)を使用して、RACH上のMSに、BTSがどのキャリア周波数および時間スロットをアップリンクに使用するためにそのMSに割り当てるかについて、常にまたは定期的に通知することができる。BTSは、MSがいつそのRACHバーストを伝送するかを正確に知ることになり、その時間と実際のバーストが到達する時間との間のビット数をカウントすることができる。そのビット数をチャネルビットレート(GSMの場合、270.83kbps)で除算することによって、BTSは往復伝播遅延時間を計算することができる。次いで、BTSは、光の速度を往復伝播遅延時間で除算することによって、伝播距離または擬似距離を計算する。計算された擬似距離に応じて、各MSは、特定のチャネルブロック内のチャネルへの割り振りを修飾する。例えば、
図13に示される構成では、チャネルブロックb
0内のチャネルは、500km~約534kmの擬似距離を計算したMSに割り振られ、チャネルブロックb
1内のチャネルは、軌道上のBTSから約534km~約568kmで測定された擬似距離を有するMSに割り振られ、
図11および
図13に示される他のレンジについても同様である。
【0124】
第1のチャネルブロックb
0は、
図12に示されるのと同じ量だけ伝送アップリンクフレームからオフセットされたアップリンクTDMAフレームを有する。次のチャネルブロックb
1は、チャネルブロックb
0のフレームから追加の約62ビットだけオフセットされたフレームを有する。その後、各チャネルブロックのフレームは、前のチャネルブロックと比較して追加のオフセット約62ビットを有する(すなわち、チャネルブロックb
i+1のフレームは、チャネルブロックb
iのフレームから約62ビット余分にオフセットされる)。フレームオフセットの各ビットは約555mに対応し、各リング/チャネルブロックは前のものよりもさらに約34km拡張されるため、62ビットを活用するこの構成は、各々約34kmのさまざまなカバレッジリングを作り出す。さまざまな同期オフセットを割り振ることによって、各チャネルブロックは、宇宙(および地球の表面)の異なるリングのカバレッジを示す。チャネルブロックに62ビットの増分で同期オフセットが与えられ、GSMの伝統的な実施形態が使用される場合、完全なスループットをすべてのチャネルで達成することができ、非常に拡張的なカバレッジを実現することができる。GSMのMSの修正を必要とすることなく、これを行うことができる。レンジリングの見下ろし図を
図11に示す。各レンジリングのチャネルブロックは、
図11の左のキーでこの特定の実施形態のために規定された特徴的な「距離のレンジ」によって定義される。
【0125】
ドップラー偏移の取り扱い
上の方式およびそれらの変形例はすべてのチャネルスペクトルの最大スループットを提供し得るが、BTSおよびMSの相対移動に起因して、伝送の周波数が伝送と受信とで異なることがある。ドップラー解決策を使用して、複数のMSが軌道上のBTSから同様の擬似距離レンジ内に存在するが、知覚されるキャリア周波数偏移で広い範囲のばらつきを経験し得るシナリオを考慮することができる。例えば、
図11では、同じリング/チャネルブロックb
6内に存在するように計算された2つのMSを考慮されたい。この場合、一方のMSは衛星カバレッジフットプリントの頂部前方の先端に位置決めされ、他方は衛星カバレッジフットプリントの底部先端に位置決めされる。
【0126】
図11では、衛星はチャネルブロックb
0について示されたカバレッジエリアの中心の真上(矢印の原点)にあり、「速度」とラベル付けされた矢印の方向に移動している。衛星の速度ベクトルの前の第1のMSは受信周波数内で正のドップラー偏移を経験し、衛星の速度ベクトルの後ろの第2のMSは受信周波数内で負のドップラー偏移を経験する。これらのMSに同じ周波数が割り振られている場合、衛星は、数キロヘルツ離れた(1800/1900GSMバンドの場合は最大70kHz離れた)信号バースト周波数をMSから受信し得る。さらに、隣接するチャネルを、大きく異なるドップラー偏移環境を経験するMSに割り振ると、衛星での信号干渉をもたらすことがある。
【0127】
図14は、この問題を軽減する方式について、衛星フットプリントがどのようにドップラー偏移ストリップに細分割され得るかを示している。そこに例示されるように、地球の表面1404に対してある速度で進んでいる衛星1402を想定されたい。衛星フットプリント1406は、示される速度での衛星からの眺めである。衛星フットプリント1406のベクトルのエリア1410内のMSは、衛星1402からの信号の受信周波数内で正のドップラー偏移を経験する一方、衛星フットプリント1406のベクトルのエリア1412内のMSは、衛星1402からの信号の受信周波数内で負のドップラー偏移を経験する。受信周波数内の特定のドップラー偏移を、簡素な幾何学を使用して判定することができ、ドップラー偏移のレンジについては、衛星フットプリント1406を輪郭線で区切られたストリップに分割することができ、輪郭線にはそれらのそれぞれのドップラー偏移に対する値1420が割り振られ得る。
【0128】
三次元空間では、十分な情報を考慮すると、衛星フットプリント内の任意のポイントでのドップラー偏移をBTSまたはMSによって計算することができる。そのように行う1つの方式は、すべてのベクトルが地球中心地球固定(Earth-Centered、Earth-Fixed、ECEF)座標フレームで表されることを想定し得る。これは、それが宇宙において地球をその回転軸を中心として回転させる座標系であるため、地球の回転フレームとしても知られている)。このプロセスでは、ベクトルの各々は、3つの構成要素値を有するベクトル量として扱われ、その結果、ベクトル内の各構成要素値は、ベクトルによって表される座標フレームの各次元に沿った値を表す。かかる数値は、プロセッサが操作するためにメモリに記憶され得る。
【0129】
【数1】
がECEF座標の衛星の位置ベクトルを表し、
【数2】
がECEF座標のMSの位置ベクトルを表す場合、BTSに対するMSの位置ベクトルは
【数3】
になる。同様に、
【数4】
がECEF座標の衛星の速度ベクトルを表し、
【数5】
がECEF座標のMSの速度ベクトルを表す場合、MSに対するBTSの速度ベクトルは
【数6】
である。ドップラー偏移を計算するために、MSに対するBTSの速度の構成要素の大きさ
【数7】
を、BTSに対するMSの位置の方向または単位ベクトル
【数8】
で、プロセッサがこの位置を算定し、次いで、割り振られたキャリア周波数波の波長で除算する。これを、対象となる2つのベクトルのドット積
【数9】
および
【数10】
を使用して行うことができ、かつ等式1のように記述することができ、場合によってはプログラムコードで実装することができる。
【数11】
【0130】
等式1では、Dは算定されたドップラー偏移であり、λは、キャリア周波数を光の速度で除算したときに算定され得る、キャリア周波数の波長である。
【0131】
例として、500kmの高度で赤道軌道内で動作しており、特定の瞬間(例えば、衛星に対する直接の天底が赤道と子午線との交点である)に子午線の真上にたまたまいる宇宙船を考慮されたい。同じ特定の瞬間に、静止しているMS1430は、宇宙船のほぼ海面下に位置決めされているが、(例えば、緯度と経度の位置が[0、1]として記載され得る)東経1度で赤道上に休止している。
【0132】
このシナリオでは、衛星のECEF位置座標は、おおよそ[6870km、0km、0km]である。500kmで円形軌道内にある宇宙船の速度ベクトルは、位置ベクトルにほぼ直角であり、(赤道軌道の場合)赤道と平行である。地球の表面に対する速度ベクトルの大きさを、SQRT(mu_earth/(R_e+h))-w_earth*(R_e+h)=7.11km/sとして計算することができ、式中、mu_earthは地球の引力定数(mu_earth=398658.366km
3/s
2)であり、R_eは赤道における地球の半径(R_e約6370km)であり、w_earthは地球の回転の角速度(w_earth=7.27*10
-5ラジアン/秒)であり、hは衛星の高度(この例では、h=500km)である。したがって、宇宙船のECEF速度ベクトルは、おおよそ[0km/s、7.11km/s、0km/s]である。緯度0度、東経1度で静止しているMSのECEF位置は、おおよそ[R_earth*cos(1度)、R_earth*sin(1度)、0]=[6369km、111km、0]である。したがって、宇宙船に対するこの静止しているMSのECEF位置は、[6369km、111km、0]-[6870km、0km、0km]=[-501km、111km、0]である。したがって、このMSによって宇宙船から受信される1900MHzの信号のドップラー偏移は、等式2、3、および4に示されるとおりになる。
【数12】
【0133】
上に説明されるように、RACH上のMSからBTSで受信される信号を使用して擬似距離を計算することができる。その信号を使用してMSからのドップラー偏移に近似させることもできる。BTSは、RACHがオンになっている時間スロットを知っているのと同じように、オンになっているキャリア周波数も知っている。そのため、BTSは、RACHバーストを受信すると、バースト周波数の中心を測定し、RACH上の予想される中心周波数からのオフセット(差)を計算することができる。これは、システムが経験するドップラー偏移の大きさに応じて、衛星BTSがRACH上でより広い周波数レンジで聴取する必要がある場合とない場合とがある。
【0134】
図15は、MSからの擬似距離およびドップラー偏移を判定するための、BTSについてRACHを使用し得る測定プロセスのフローチャートである。RACHは、MSがセッション(例えば、SMSテキストを送信する、電話をかける、データを送信する)を始めたいときに示され得る。ドップラー偏移の値をたびたび測定/更新する必要はない。ドップラー偏移の値は、チャネルへのアクセスを要求し、データを送信するのにかかる時間と共に変化し、ペイロードは、典型的には、信号を送受信するためのシステムの能力を損なうほどには大きくない。それが問題になり得る事例では、BTSは予測的な変更を行い、MSが高速で移動していないと想定し得る。チャネルの割り振り/分配を調整するために擬似距離およびドップラー偏移の測定値を管理する際に、このプロセスを衛星BTSに使用することができる。
【0135】
図15のフローチャートに例示されるように、プロセスの開始時に、衛星BTSはRACHのタイミング情報をBCCHチャネル上に報知し(ステップ1501)、次いで、MSはRACHがオンになっている時間スロットを学習する(ステップ1502)。それを知ることで、MSは、BTSがMSに使用するように指示したRACHの時間スロットの間にバーストを送信する(ステップ1503)。バーストは、周波数が遅延およびオフセットされてBTSに到達する(ステップ1504)。次いで、BTSのフローは、遅延のために1つ、ドップラー偏移のために1つの2つのスレッドを有する。第1のフローでは、BTSは、バーストが遅延したビット数をカウントし(ステップ1505)、カウントしたビット数をチャネルビットレートで除算して往復遅延を算定し(ステップ1506)、次いで、往復遅延を光の2倍の速度で除算して擬似距離を算定する(ステップ1507)。第2のフローでは、BTSは、バーストの中心周波数を測定し(ステップ1508)、その中心周波数をRACHの中心周波数から減算してドップラー偏移を算定する(ステップ1509)。次いで、2つのスレッドは結合され、BTSは、MSにその擬似距離およびドップラー偏移のために構成されたチャネルを割り振るように、チャネル構成マトリクスを確認する(ステップ1510)。次いで、BTSは、チャネルが既に構成されているかどうかを確認する(ステップ1511)。「はい」の場合、BTSはMSに構成されたチャネルを割り振り(ステップ1513)、「いいえ」の場合、BTSは検出されたMSの擬似距離およびドップラー偏移環境のためのチャネルを構成し(ステップ1512)、そしてプロセスは終了する。
【0136】
BTSは各MSからドップラー偏移の知識を獲得することができるため、特定のドップラー偏移レンジを特定のチャネルに割り振ることができる。これを行う際、個々のチャネルの各々は、それ自体の、潜在的なドップラー偏移の値の特定の局所的に低減したレンジを有し得る。例えば、一部のチャネルは、チャネルが
図14に示される特定のストリップ内のMSに割り振られているため、キャリア周波数内で0~5kHzの偏移のみを経験し得るが、その他のチャネルはキャリア周波数内で25~30kHzの偏移のみを経験するであろう。ドップラーレンジは明確に定義され、各チャネルに対してより局所化されているため、チャネルの割り当ておよび割り振りの修飾子として使用され得る。この方式により、衛星フットプリント内のサービス可能なMSのセット全体にわたる幅広いドップラー偏移のばらつきを取り扱うことがはるかに簡素化される。
【0137】
戻って
図14を参照すると、その図は、衛星カバレッジフットプリントにわたるさまざまなロケーションで知覚されたドップラー偏移を例示している。直観的に言えば、速度ベクトルの方向の衛星フットプリントの半分は正のドップラー偏移を経験し、他の半分は負のドップラー偏移を経験する。より直観的でないことは、地球の曲率の幾何学が、次第に湾曲する輪郭線によって描かれた衛星フットプリントにドップラー偏移マップを作り出すことである。
【0138】
本明細書に記載される1つの手法は、上に記載されるように、チャネルブロックが事前に判定された擬似距離レンジのリングに割り当てられるのと同じように、チャネルブロックを事前に判定されたドップラー偏移ブロックに割り当てることである。キャリア周波数が特定の擬似距離レンジおよびドップラー偏移に割り振られている場合、各チャネルで経験される実際のドップラー偏移は、そのチャネルの周波数に対して一意である。この方式の実装例は、これを考慮するであろう。1つの設計では、ドップラー偏移の輪郭マップは、くだんのスペクトルの中心周波数を使用し、図では、500kmの高度の衛星および40度の仰角を有する1900MHSのGSMが想定されている。
【0139】
図14では、各破線は、各チャネルの潜在的なドップラー偏移を局所化し、ひいては、干渉を最小限に抑えるために使用されるドップラー偏移ストリップの境界を定義している。マップ上の輪郭線の曲率は、通信リンクの幾何学および通信の周波数の結果である。
【0140】
図16は、衛星フットプリントがどのようにレンジリング、ドップラー偏移ストリップ、ならびにレンジリングおよびドップラー偏移ストリップの両方に細分割され得るかを示している。例示されるように、擬似距離のレンジはリングを形成し、ドップラー偏移の輪郭はストリップを形成する。これらをグリッド(必ずしも直交グリッドまたは線形グリッドである必要はない)に重ね合わせると、衛星フットプリント1602は、第1の距離の値、第2の距離の値、第1のドップラー偏移の値、および第2のドップラー偏移の値で境界付けられたグリッドセルに分割される。したがって、これらのグリッドセルの各々は、擬似距離のレンジと、軌道上のBTSに対するドップラー偏移のレンジとの組み合わせに対応し、特定のチャネル(または特定のチャネルのセットの中の1つ)に割り振られるMSの修飾子である。
【0141】
本明細書に表される衛星フットプリントは本質的に円形であるが、それは必須ではないことに留意されたい。フットプリントは、衛星でどのアンテナが使用されているか、およびそれらがどのように構成されているかに応じて、形状がより正方形または楕円形になり得る。非円形のフットプリントは、それがフットプリント内の伝播遅延および/またはドップラー偏移環境の拡散を増加または減少させ得るという利点を提供し得る。
【0142】
このグリッドは、擬似距離のレンジと、擬似距離およびドップラー偏移チャネルブロックの修飾に対応するドップラー偏移のレンジとの組み合わせを表す。上に記載されるグリッドセルは、衛星の速度ベクトルに関して対称であることが想定されている。これは、衛星のカバレッジエリアの中心線から外れた各グリッドセルが衛星フットプリントの反対側に「ツイン」グリッドセルを有することを意味する。「ツイン」グリッドセルという用語が使用されるのは、これらのグリッドセルの両方のMSが同様の擬似距離およびドップラー偏移で動作するので、これらの2つのグリットセルが擬似距離のレンジおよびドップラー偏移のレンジに論理的に関連付けられた「バケット」を共有する(すなわち、MSは、バケットに、MSの擬似距離がそのバケットに割り振られた擬似距離のレンジ内にあるかどうか、およびMSのドップラー偏移がそのバケットに割り振られたドップラー偏移のレンジ内にあるかどうかに基づいて論理的に割り振られる)ためである。
【0143】
ある特定のMSデバイスのドップラー偏移の取り扱い
一部のプロトコルはダウンリンク信号を復調するときにドップラー偏移に対してより回復力がある場合があるが、他のプロトコルはそうでない場合がある。一部のデバイスまたは一部のプロトコルでは、2.5kHzの偏移がドップラー偏移の閾値になり得る。しかしながら、一部の低級なセルラ電話であっても、典型的にそのチャネルの中心キャリア周波数であろうものから最大20kHzのオフセットでBCCH信号を復調することができる場合がある。これは、BTSと、ローカルクロックをBTSと同期させるために使用する別の報知チャネルであるFCCH(Frequency correction channel:周波数補正チャネル)上のMSとの間の相互作用に関連し得る。この同期は最終的に、電話がその後にBCCHおよび他のダウンリンクチャネルを復調するのに必要とする情報である。したがって、上の例で使用される例示的な5kHzのストリップよりも大きいドップラー偏移ストリップを使用することができる。例えば、バケットを、いずれかの方向で少なくとも20kHzまでのより広いレンジのドップラー偏移に適応するように調節し、伸張させることができる。実際には、これは、最も高いドップラー偏移ケースが20kHz未満であるほどに衛星フットプリントが小さい場合、ドップラー偏移のバケット化の必要性を未然に防ぐことができる。これは、はるかに小さい信号バンド幅を使用するNB-IoTなどの他のプロトコルには当てはまらないことがある。NB-IoTはまた、多元接続プロトコルがLTE NB-IoTプロトコルであり、かつ制限距離が、基地-モバイル間の距離を超過する40kmである場合など、その他の違いを有する。
【0144】
チャネル割り振り
本明細書に説明されるように、BTSは、各々がそれらの独自のキャリア周波数を使用する複数のトランシーバをサポートすることができ、次に複数のトランシーバは各々、最大8つのMSをサポートすることができる。トランシーバは多くの可能なキャリア周波数のうちの1つを使用するように設定され得るため、チャネルをトランシーバに関連付けることができる。上の例では、123個の利用可能なキャリア周波数がある。これらの多くのキャリア周波数のうちのいくつかを必要に応じてMSに割り振ることができるが、それらがグリッドセルによって割り当てられている場合には、いくつかの利点を得ることができ、そのため、BTSからの同様の距離と、同じキャリア周波数(複数可)を使用する同様のドップラー偏移とを有する、同様に位置付けられたMSのバケットを戦略的に割り振ることができる。(上で説明されるように、論理的にはアップリンクサブチャネルとダウンリンクサブチャネルとを備え得る)チャネルに、複数の時間スロットのうちの1つ、および複数のキャリア周波数のうちの1つを割り振ることができる。チャネルは、チャネルのキャリア周波数およびチャネルの時間スロットなど、チャネルの割り振られた特性によってのみ識別され得るが、一部の状況では、各チャネルにチャネルラベルが与えられる。チャネルのラベルは、チャネルのキャリア周波数、チャネルの時間スロット、および場合によってはチャネルのタイミング前進、ならびにドップラー偏移をコード化し得るが、それは、ラベルが連続番号などの簡素なものであること、ならびにBTSおよび/またはMSが、割り振られた特性(例えば、チャネル1がキャリア周波数f1と時間スロット0とを使用し、チャネル2がキャリア周波数f7と時間スロット3とを使用するなど)に対するチャネル番号ラベルの記憶されたマッピングを含むことであり得る。
【0145】
図17は、衛星フットプリントのレンジリング/ドップラー偏移セルの一例を例示している。擬似距離リングとドップラー偏移ストリップとの交点は、フットプリントグリットを形成する。グリットセル、レンジリング/ドップラー偏移セルにチャネルを割り振ることができる。
【0146】
図18は、
図17のレンジリング/ドップラー偏移セルの、特定のキャリア周波数およびドップラーオフセットブロックへの割り振りの一例を例示している。論理チャネルブロックは、1つ以上のキャリア周波数および/またはそれらのキャリア周波数を使用するTDMAフレーム上の時間スロットに関連付けられ得る。
図17では、チャンネルは、任意のチャンネルラベル、この場合は1~70で示されている。それらは、下から上、すなわち、最も負のドップラー偏移から最も正のドップラー偏移の順にたまたまラベル付けされている。チャネル1~70は、8つのキャリア周波数を使用するフレーム内の8つの時間スロット、およびもう1つのキャリア周波数のためのフレーム内の6つの時間スロットの各々に割り振られたチャネルに対応し得る。
【0147】
図17の図は、衛星フットプリントのグリッドセルにどのようにチャネル番号を割り振るかを示している。フットプリントの左側のみが番号付けされて示されているが、右側のツインセルもこれらのチャネル番号に割り振られていることを理解されたい。
図18のチャネル割り当て表は、各チャネル番号が、ドップラー偏移ストリップ(D
0~D
13)およびチャネルブロック(b
0~b
6)に対応するドップラーオフセットブロックに関連付けられるか、割り当てられるか、または割り振られるチャネル割り当てスキームを例示している。他の実施形態では、チャネルの数は、MSの擬似距離およびドップラー偏移をどのように「バケット化」するかの判定によって変化し得ることに留意されたい。複数のチャネルをグリッドセルに割り振ることができる。
図17および
図18の例では、簡素化のために、グリッドセルごとに1つのチャネル番号が割り振られている。グリッドセルは衛星の速度ベクトルに関して対称であるため、グリッドセルの半分のみがチャネル割り振りで満たされる。実際の実装例では、満たされていないグリッドセルには、輪郭マップ内の反対側のグリッドセル内の同じチャネル番号が割り振られる。これは、対称的なグリッドセルが輪郭マップ上(および実世界)の異なる物理的ロケーションに存在するが、それらが軌道上のBTSからの擬似距離およびドップラー偏移の点で同じ修飾パラメータを表すためである。
【0148】
ピンチおよび摩損(Pinching and Fraying)
BTS設計の「ピンチおよび摩損」の特徴は、アップリンクサブチャネルが連続スペクトル内に存在し、かつダウンリンクサブチャネルが連続スペクトル内に存在し、ドップラー偏移が信号バンド幅以上になり得る場合には有用であるが、これらは、次の技法を実装するためにそうである必要はない。
【0149】
図18の表は、チャネル割り振りマトリクスであり、これは、軌道上のBTSがどのようにMSにチャネルを割り振るかを判定するために使用し、それらを、隣接する番号に隣接するキャリア周波数が割り振られる方法で割り振るであろう。信号バーストがRACH上で受信される場合、計算されたドップラー偏移および計算された擬似距離の推定値を使用して、適切なグリッドセルを発見し、表からMSのチャネル番号を検索することによって、どのチャネルがそのMSに割り振られるべきかを判定する。この例では、すべてのチャネルブロックがドップラー偏移の完全なレンジを経験し得る擬似距離に対応するわけではないため、すべてのチャネルブロック(
図18の列)が使用中または利用可能な同じ数の実際のチャネルを有しているわけではない。BTSは、この表のコピーを記憶し、グリッドセルに基づいてチャネル番号を割り振るときに使用するために、この表の異なるバージョンを有し得る。
【0150】
特定のドップラー偏移を有するグリッドセルの順にチャネルが割り振られるチャネル割り振りの利点が
図19に例示されている。宇宙船は予想されるドップラー偏移に基づいて活動的にチャネルを割り振るため、もはや受信周波数内の広いレンジの偏移などを考慮する必要はない。代わりに、軌道上のBTSは、ある特定のキャリア周波数で通信するように既存のMSインフラストラクチャに命令し得るが、そのチャネルでどれだけの量のドップラー偏移が予想されているかに応じて、わずかに偏移したキャリア周波数で聴取する。これは、宇宙船セグメントでの隣接するキャリア周波数の干渉を低減する。
【0151】
この特定の実施形態では、ドップラー偏移の輪郭は、5kHzごとに間隔があけられているが、他の間隔を使用することができる。したがって、MSに割り振られた各チャネルについて、衛星BTSは、当該チャネルのキャリア周波数の最大および最小ドップラー偏移の平均であるキャリア周波数で聴取し、当該チャネルに割り振られた時間スロット内のデータバーストを確認する。例えば、チャネル70にはMSが割り振られており、周波数F70および時間スロットTS70に論理的に関連付けられていると想定されたい。宇宙船上のBTSは、TS70+27.5kHzのキャリア周波数でMSからアップリンク信号を聴取することになる。この方法では、BTSによって聴取されている周波数から2.5kHz超のオフセットの信号はない。リターンリンクでは、軌道上のBTSは、TS70-27.5kHzで信号のバーストを伝送することによって、チャネル70上の信号を伝送することができ、そのため、信号は、聴取されているキャリア周波数の妥当な限度内でMSにおいて受信される。
【0152】
図19は、通信するためにMSとBTSとが使用するアップリンクキャリア周波数およびダウンリンクキャリア周波数のマップを示している。具体的には、
図19は、
図17および
図18で参照されるドップラーブロックを示しており、ドップラーブロックは、それらが保つチャネルの数に基づいてスケーリングされる幅を有する。チャネルが一部の既知のドップラー効果の機能として、キャリア周波数が増加する順に割り振られている場合、アップリンク信号は、互いに「摩損」し合い、聴取するためにBTSが選ぶチャネルを定義する。これは、軌道上のBTSでの干渉を軽減する。ダウンリンク伝送周波数を「摩損」する代わりに、「ピンチ」して、信号がMSに到達するときに適切なキャリア周波数を有することを確実にする。ドップラーブロックはアップリンク周波数およびダウンリンク周波数の両方で参照され、これは、各チャネルがアップリンクおよびダウンリンクの構成要素を有することを暗に意味していることに留意されたい。他の変形例も可能である。
【0153】
図19は、軌道上のBTSが、MSによって伝送される周波数に対してわずかに摩損した周波数で聴取することを示している。これは、新しいチャネル割り当てスキームの結果であり、MSと通信する際のドップラー偏移の干渉および複雑さを低減する。ダウンリンク動作では、宇宙船はより多くの「ピンチ」チャネルで伝送し、そのため、標的のMSに到達する信号は正しい周波数である。チャネルブロックは、
図17および
図18で参照されるドップラーブロックとして表されており、それらが保つチャネルの数によってスケーリングされる幅を有する。
【0154】
同様に、チャネルは信号周波数の降順でドップラーブロックに分配され得ることを留意されよう。この方式では、BTSの観点からの受信信号および伝送信号の効果を逆にすることになる。この技法がMSからのアップリンク信号を閉鎖する能力を強化するのに実際に役立つ可能性があると想定することは妥当である。これは、アップリンク信号が
図19に示されるように、「摩損」される代わりに、「ピンチ」されることになるためである。「ピンチ」の量はかなりよく理解されているため、軌道上のBTSは、この事実を活用して、各アップリンクチャネルをBTSが「聴取」するバンド幅を賢く狭めることになる。これは、受信したアップリンク信号が200kHz未満で分離される(GSMと同様)ことを意味することになる。この場合、軌道上のBTSは、理論上は、ノイズを低減するために、より狭いチャネルで聴取することができる。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態は、アップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルの両方のBTSで「摩損」または「ピンチ」されたチャネルを好む場合がある。これに応じるために、実装者は、アップリンク信号周波数が増加し、ダウンリンク信号周波数が減少するチャネルを割り振ることになる。これは、BTSのアップリンク受信機能およびダウンリンク伝送機能に対して「摩損」されたチャネルをもたらすことになる。逆に、アップリンク信号周波数が減少し、ダウンリンク信号周波数が増加するチャネルは、BTSのアップリンク受信機能およびダウンリンク送信機能に対して「ピンチ」されたチャネルをもたらすことになる。
【0156】
図19はチャネルをボックスとして、ドップラーブロックごとに1つ例示しているが、摩損またはピンチされた
図19のボックスは、1つ以上のキャリア周波数および1つ以上の時間スロットに対応し得ることを理解されたい。例えば、ドップラーブロックD
9の例では、
図18は、そのドップラーブロックによって網羅されるストリップ内のセルにチャネル50~56が割り振られていることを示している。チャネル50~56は、1つのキャリア周波数のフレーム内の7つの時間スロット、7つの異なるキャリア周波数のフレーム内の1つの時間スロット、またはいくつかの他の構成を表し得る。
【0157】
ロケーションの発見
BTSとMSと間のデータ通信に加えて、BTSを、ロケーションを発見するために、すなわち、MSの地理的ロケーションを少なくともほぼ、またはさまざまな用途(例えば、遠隔捜査および救済の動作をサポートする)に十分な解像度で判定するために使用することができる。衛星がMSを通過する場合、その衛星のBTSは(上で説明されるように)MSのグリッドセル(実際には一対のツイングリッドセル)を判定する。別の衛星が同じMSを通過する場合、その第2の衛星のBTSは、その第2の衛星のフットプリント内の一対のグリッドセルを判定する。第2の衛星が第1の衛星とは異なる軌道内にある場合、その擬似距離のレンジリングおよびドップラー偏移の輪郭ストリップの対称線は、第1の衛星のものとは多少異なる。BTSは、衛星フットプリントのスケールでMSが移動していないか、またはわずかに移動しただけで、2つの対のグリッドセルが、ある衛星の1つのグリッドセルが他の衛星の1つのグリッドセルと重畳するようなものであり、他の2つのグリッドセルが重畳していない場合を想定しており、このことから、BTSは、可能性の高いMSのロケーションを判定することができる。
【0158】
これは、単独で使用されても、他のロケーション発見システムとの組み合わせで使用されてもよい。
【0159】
ソフトウェア定義のラジオ、密度による動的割り当て
BTSは、本明細書に記載されるさまざまな機能を実施する。BTSは、商用のソフトウェア定義のラジオで実装されても、本明細書に提供される特定の機能でプログラムもしくは構成されてもよい。ソフトウェア定義のラジオは、BTSチャネル割り当てスキームのチャネル構成の周りで偏移するように、軌道内で再プログラムされ得る。これは、地表上のMSが均等に分布していない場合に価値があるであろう。例えば、
図20に例示されるように、BTSが接続されたMSのマッピングもしくは予期されたMSのマッピングを有する場合、またはBTSが特定のドップラー偏移レンジを示しており、かつ同様の擬似距離内で動作しているMSからその要求の大部分を取得している場合、BTSはより多くのチャネルを有するより混雑したグリッドセルを好む場合がある。したがって、ドップラー偏移および擬似レンジのデータを使用して、チャネル割り当てを比例配分することができる。
図20の右側は、各グリッドセルについて、どれだけ多くのチャネルがそのグリッドセルに割り当てられ得るかを示す図である。衛星フットプリントが衛星の速度ベクトルに関して対称であるという想定で、半円のみが示されている。
【0160】
図21は、
図20に例示される割り当ておよびマッピングに使用され得るチャネル割り当て表の一例を例示しており、チャネル分配は、チャネル割り当てスキームを用いて順序付けられたチャネルでマップされる。グリッドセルにサービスを提供するチャネルを再構成するために、そのチャネルのトランシーバは、伝送TDMAフレームとは異なる時間スロット同期オフセットで再構成され、トランシーバは、アップリンクキャリアおよびダウンリンクキャリアでそれぞれ受信および伝送するための、トランシーバの構成された周波数オフセットの更新を取得する。チャネルが再構成され、チャネル割り当てスキームに再マップされると、それらのチャネルは、示されるように、チャネル割り当て表の右下隅から左上隅までカウント順(昇順または降順)にとどまり得る。チャネル割り当て表は、ソフトウェア定義のラジオを制御するプロセッサがチャネル割り当て表に従って周波数およびタイミングを設定し得るように、アクセス可能なコンピュータ可読メモリに記憶され得る。
【0161】
チャネルのブロックへの再マッピングに加えて、軌道上のソフトウェア定義のラジオもそのブロックマッピングを再構成し得る。例えば、MSが密集して詰まっている場合、BTSは、特定の地理的エリアのサービス、特にスループットを改善するために、擬似距離およびドップラー偏移のより細かい間隔でチャネル割り当てスキームを再構成することができる。さらに、軌道上のBTSは、擬似距離およびドップラー偏移の最小測定値および最大測定値にそれぞれ基づいて、そのチャネルの最小および最大の時間スロット同期オフセットおよびドップラー補償を設定することができる。これにより、BTSは、その衛星フットプリントのグリッドセルをより緻密に定義し、より効率的にチャネルを割り振ってMSの高密度ポケットにサービスを提供することができる。ドップラーブロックの間隔がより細かいと、各チャネルでのドップラー偏移の影響がさらに低減する一方、擬似距離のレンジリングの間隔をより細かくすると、より密集して詰まったMSにサービスを提供するために、より具体的なリングロケーションでの潜在的なスループットが増加する。
【0162】
軌道上の処理では、既知の衛星の速度を活用して、衛星フットプリントの運動、ひいては、衛星がサービスを提供するMSに対する擬似距離およびドップラー偏移の輪郭を予測することもできる。これは、衛星BTSが、どの擬似距離バケットおよびドップラー偏移バケットが近い将来にチャネル分配を必要とし、どれが必要としないかを予測することを可能にすることになり、予測可能性は、チャネル分配スキームの再構成のより正確な実行を可能にするであろう。チャネル再構成に関連付けられたある程度のリード時間があるため、予測可能性を大いに活用して、そのチャネルのダウン時間が制限されることを確実にすることができる。例えば、このチャネル再構成のリード時間を考慮するために、軌道上のBTSは、MSにサービスを提供しているキャリア周波数が再構成されるために突然サービスを停止する必要がないように、1つ以上のチャネルを「ジャグリング」するか、または確保しておくことができる。チャネルは周波数の昇順または降順で構成されなければならないため、再構成は時折、ドミノ効果が作り出し、チャネル割り当てスキームでのこの重要な周波数順を維持するために多くのチャネルを再構成することを必要とする場合がある。例えば、GSMスペクトル内の80個のチャネルへのアクセスを有する軌道上のGSM BTSを考慮されたい。チャネルが1~124でラベル付けされていると想定すると、すべての奇数チャネル(すなわち、1、3、5、7など)がMSにサービスを提供するように構成され得る一方、すべての偶数チャネル(すなわち、2、4、6、8など)は「ジャグリング」されるか、または確保され得る。再構成の必要性が発生すると、軌道上のBTSは、「ジャグリング」されたチャネルを再構成することができ、すでに構成されている他の62個のチャネルのうちの1つでサービスを妨げる必要はない。構成されたチャネルがもはやMSにサービスを提供していない場合、そのチャネルを確保または「ジャグリング」されたチャネルセットに循環させることができ、プロセス自体は、一貫したサービスを維持し、チャネルのダウン時間を制限することを繰り返す。
【0163】
軌道上のBTSは、MSの擬似距離、ドップラー偏移、および他のデータ(すなわち、GPS)のリアルタイム測定値を使用して、かかるネットワークのサービスの品質をさらに強化するようにプログラムされ得る。例としては、経時的に収集された大きなデータセットおよび(MSの比較的静的なロケーションに基づく)多くの衛星パスに基づいたチャネルの再割り当てまたは偏移、ならびに現在の宇宙船の直前にこのロケーションを通過した宇宙船によって、またはさらには現在の宇宙船によって検知されたMS分布の変化に基づくより動的なリアルタイム偏移があげられる。
【0164】
上に記載される動的チャネル割り当てはまた、特定のチャネルを、衛星が全体を通過する特定のMSまたは地理的ロケーションのために取っておくことができる方法で行われ得る。換言すると、ある特定のチャネルのドップラー偏移および擬似距離の構成は、経時的にプロットされる場合、ある特定のMSまたは地理的ロケーションが通過コースにわたって経験したドップラー偏移および擬似距離の環境に一致するある程度滑らかな関数によって記載される。この実施形態は、地表上にあるある特定のMSがより長い期間(例えば、数秒ではなく数分)にわたって衛星とのロックされたリンクを維持する必要があるか、または当該リンクから利益を得る条件下では戦略的であり得る。
【0165】
接続されたMSが「クランプ」で、場合によっては遠隔地域で動作している、
図20に例示される事例を考慮されたい。メモとして、マップは、擬似距離バケットおよびドップラー偏移バケットが衛星の速度ベクトルに関して対称であるため、衛星フットプリントの半分しか示していない。宇宙船は、これらのユーザから擬似距離およびドップラー偏移のデータを収集する場合、そのチャネル割り当てスキームでチャネル分配を戦略的に比例配分し、この比例配分に基づいて、そのチャネルを、それらのサービス構成を偏移させるように再プログラムすることができる。このような技法は、予測データ分析ソフトウェアを活用することもできる。軌道上のBTSは、過去のMSデータとGPSナビゲーションデータとを密接に結合させて、そのフットプリント内の顧客の密集したポケットをどこでいつ横切るかを予測することができる。実際にサービスを提供されているMSからのGPSデータを使用して、チャネルの予測分析および割り当て、ならびに追跡アプリケーションをさらに強化することもできる。これにより、かかるネットワークのサービス品質を増加させることを推し進めることができる。
【0166】
図22は、RACHプロセスでMSのパラメータを判定するためのプロセスを例示している。MSアップリンクバーストからの伝播遅延を測定することによって、BTSは、各MSが正しい時間にバーストを伝送するために必要なタイミング前進を計算することができる。RACHプロセスは、(1)MSがBTS上に居座るときにBCCHを聴取すること、(2)MSのユーザがテキストメッセージをタイプして「送信」を強く押すこと、(3)MSが、BCCH上に提供された情報を使用して、RACH上にバーストを送信することによって、チャネルへのアクセスを要求すること、(4)BTSが、チャネル割り振りを検索し、チャネル割り振りおよびタイミング前進(ビット単位)で応答すること、ならびに(5)MSが、タイミング前進を使用して、割り振られた時間スロットに対してバーストを前進させ、割り振られた周波数キャリアを使用すること、であり得る。
【0167】
図22に例示されるより概略的な事例では、MSは、コールセットアップを実施するために専用の信号用チャネルの割り当てを要求し、信号用チャネルの割り当て後に、TMSI(IMSI)および最後のLAIを含むMOCのコールセットアップの要求がVLRに転送される。VLRは、トリプルのHLRを介してACを要求する(必要であれば)。次いで、VLRは、認証、暗号化開始、IMEI確認(任意選択)、およびTMSI再割り当て(任意選択)を始める。このすべてがプロセスのキャンセルを必要とするエラーを引き起こさなかった場合、MSはセットアップ情報(要求された加入者の番号および詳細なサービスの説明)をMSCに送信し、MSCは(要求されたサービスおよび数を取り扱うことができるかどうか(またはコールセットアップをさらに処理させない制限があるかどうか)を(加入者データから)確認するようにVLRに要求する。
【0168】
コールが取り扱われるべきであるとVLRが示す場合、MSCはトラフィックチャネルをMSに割り振るようにBSCに命令し、BSCはトラフィックチャネルTCHをMSに割り振る。次いで、MSCは、要求された番号(着呼側)への接続をセットアップする。
【0169】
一実施形態によれば、本明細書に記載される技法は、ファームウェア、メモリ、他のストレージ、または組み合わせのプログラム指示に従って本技法を実施するようにプログラムされた1つのまたは汎用化されたコンピューティングシステムによって実装される。本技法を実装するためにハードワイヤード論理および/またはプログラム論理が組み込まれたデスクトップコンピュータシステム、携帯型コンピュータシステム、ハンドヘルドデバイス、ネットワークデバイス、または任意の他のデバイスなどの専用コンピューティングデバイスを使用することができる。
【0170】
例えば、
図23は、本発明の一実施形態が実装され得るコンピュータシステム2300を例示しているブロック図である。コンピュータシステム2300は、バス2302または情報を通信するための他の通信機構、および情報を処理するためにバス2302と連結されたプロセッサ2304を含む。プロセッサ2304は、例えば、汎用マイクロプロセッサであり得る。
【0171】
コンピュータシステム2300はまた、プロセッサ2304によって実行される情報および指示を記憶するためにバス2302に連結された、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)または他の動的ストレージデバイスなどのメインメモリ2306を含む。メインメモリ2306もまた、プロセッサ2304によって実行される指示の実行中に、一時的変数または他の中間物を記憶するために使用され得る。かかる指示は、プロセッサ2304にアクセス可能な非一時的ストレージ媒体に記憶されると、コンピュータシステム2300を、指示で特定された動作を実施するようにカスタマイズされた専用マシンにレンダリングする。
【0172】
コンピュータシステム2300は、プロセッサ2304の静的情報および指示を記憶するための、バス2302に連結されたリードオンリーメモリ(read only memory、ROM)2308または他の静的ストレージデバイスをさらに含む。情報および指示を記憶するために、磁気ディスクまたは光ディスクなどのストレージデバイス2310が提供され、バス2302に連結される。
【0173】
コンピュータシステム2300は、バス2302を介して、情報をコンピュータのユーザに表示するためのコンピュータモニタなどのディスプレイ2312に連結され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス2314は、情報および命令選択をプロセッサ2304に通信するためにバス2302に連結される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報および命令選択をプロセッサ2304に通信するため、ならびにディスプレイ2312上でカーソルの移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御2316である。この入力デバイスは、典型的には、第1の軸(例えば、x)および第2の軸(例えば、y)の2つの軸に2つの自由度を有し、これにより、デバイスは平面内の位置を特定することができる。
【0174】
コンピュータシステム2300は、カスタマイズされたハードワイヤード論理、1つ以上のASICもしくはFPGA、ファームウェア、および/またはコンピュータシステムとの組み合わせでコンピュータシステム2300を専用マシンにするか、もしくはそのようにプログラムするプログラム論理を使用して、本明細書に記載される技法を実装することができる。一実施形態によれば、本明細書の技法は、プロセッサ2304がメインメモリ2306に含まれる1つ以上の指示の1つ以上の系列を実行することに応答して、コンピュータシステム2300によって実施される。かかる指示は、ストレージデバイス2310などの別のストレージ媒体からメインメモリ2306に読み込まれ得る。メインメモリ2306に含まれる指示の系列の実行は、プロセッサ2304に本明細書に記載されるプロセスステップを実施させる。代替の実施形態では、ソフトウェア指示の代わりに、またはそれらとの組み合わせで、ハードワイヤード回路を使用することができる。
【0175】
本明細書で使用される場合、「ストレージ媒体」という用語は、マシンを特殊な様式で動作させるデータおよび/または指示を記憶する任意の非一時的媒体を指す。かかるストレージ媒体は、不揮発性媒体および/または揮発性媒体を含み得る。例えば、不揮発性媒体としては、ストレージデバイス2310などの光ディスクまたは磁気ディスクが挙げられる。揮発性媒体としては、メインメモリ2306などの動的メモリが挙げられる。例えば、ストレージ媒体の一般的な形態としては、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、もしくは任意の他の磁気データストレージ媒体、CD-ROM、任意の他の光データストレージ媒体、穴のパターンを有する任意の物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、NVRAM、任意の他のメモリチップ、またはカートリッジが挙げられる。
【0176】
ストレージ媒体は、伝送媒体とは異なるが、伝送媒体と共に使用され得る。伝送媒体は、ストレージ媒体間で情報を転送することに関与する。例えば、伝送媒体としては、バス2302を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバが挙げられる。伝送媒体は、ラジオ波および赤外線のデータ通信中に発生するものなど、音波または光波の形態をとる場合もある。
【0177】
媒体のさまざまな形態は、実行用に1つ以上の指示の1つ以上の系列をプロセッサ2304に搬送することを伴い得る。例えば、指示は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスクまたはソリッドステートドライブで行われ得る。遠隔コンピュータは、その動的メモリに指示をロードし、それらの指示を、ネットワーク接続を介して送信することができる。コンピュータシステム2300のローカルのモデムまたはネットワークインターフェースは、データを受信することができる。バス2302はデータをメインメモリ2306に搬送し、そこからプロセッサ2304が指示を探して実行する。メインメモリ2306によって受信された指示は、任意選択で、プロセッサ2304による実行の前後いずれかで、ストレージデバイス2310に記憶され得る。
【0178】
コンピュータシステム2300はまた、バス2302に連結された通信インターフェース2318を含む。通信インターフェース2318は、ローカルネットワーク2322に接続されたネットワークリンク2320に連結する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース2318は、データ通信接続を対応するタイプの電話線に提供するための統合サービスデジタル通信ネットワーク(integrated services digital network、ISDN)カード、ケーブルモデム、衛星モデム、またはモデムであり得る。無線リンクを実装することもできる。任意のかかる実装例では、通信インターフェース2318は、さまざまタイプの情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送信および受信する。
【0179】
ネットワークリンク2320は、典型的には、データ通信を1つ以上のネットワークを介して他のデータデバイスに提供する。例えば、ネットワークリンク2320は、接続を、ローカルネットワーク2322を介してホストコンピュータ2324に、またはインターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider、ISP)2326によって動作されるデータ機器に提供し得る。次にISP2326は、ここでは一般的に「インターネット」2328と呼ばれるワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを介してデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク2322およびインターネット2328は共に、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を使用する。コンピュータシステム2300との間でデジタルデータを搬送する、さまざまなネットワークを介した信号ならびにネットワークリンク2320上および通信インターフェース2318を介した信号は、伝送媒体の形態の例である。
【0180】
コンピュータシステム2300は、ネットワーク(複数可)、ネットワークリンク2320、および通信インターフェース2318を介して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、サーバ2330は、インターネット2328、ISP2326、ローカルネットワーク2322、および通信インターフェース2318を介して、アプリケーションプログラムの要求されたコードを伝送することができる。受信されたコードは、受信されたときにプロセッサ2304によって実行され得、かつ/またはストレージデバイス2310もしくは後で実行するための他の不揮発性ストレージデバイスに記憶され得る。
【0181】
本明細書に記載されるプロセスの動作は、別様に本明細に示されていないか、または別様に文脈によってはっきりと否定されていない限り、任意の好適な順で実施され得る。本明細書に記載されるプロセス(または変形例および/もしくはそれらの組み合わせ)は、実行可能な指示で構成された1つ以上のコンピュータシステムの制御下で実施され得、かつ1つ以上のプロセッサ上で、ハードウェアによって、またはそれらの組み合わせで集合的に実行するコード(例えば、実行可能な指示、1つ以上のコンピュータプログラム、もしくは1つ以上のアプリケーション)として実装され得る。コードは、例えば、1つ以上のプロセッサによって実行可能な複数の指示を含むコンピュータプログラムの形態でコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶され得る。コンピュータ可読ストレージ媒体は、非一時的であってもよい。
【0182】
別様に具体的に述べられていないか、または別様に文脈によってはっきりと否定されていない限り、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」または「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」という形態の表現などの接続的な言語は、項目、用語などがAもしくはBもしくはC、またはAおよびBおよびCのセットの任意の非空のサブセットのいずれかであり得ることを提示するために概して使用されるものとして文脈によって別様に理解される。例えば、3つの部材を有する例示的なセットの例では、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」ならびに「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」という接続的な表現は、次のセット{A}、{B}、{C}、{A、B}、{A、C}、{B、C}、{A、B、C}のうちのいずれかを指す。したがって、かかる接続的な表現は概して、Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つが各々存在することをある特定の実施形態が必要とすることを暗に意味することを意図するものではない。
【0183】
本明細書に提供される任意の例およびすべての例、または例示的な言語(例えば、「などの(such as)」)の使用は、単に、本発明の実施形態をより明らかにすることを意図するものであり、別様に主張されていない限り、本発明の範囲を限定することを引き起こさない。本明細書のいかなる言語も、任意の主張されていない要素が本発明の実践に不可欠であるとして示されるように解釈されるべきではない。
【0184】
前述の明細書では、本発明の実施形態は、実装例の間で変化し得る非常に多くの具体的詳細を参照して記載されている。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく、例示的な意味で見なされる。本発明の範囲の唯一のおよび排他的な指標、ならびに本出願人が本発明の範囲とすることを意図するものは、かかる特許請求の範囲が発行する、任意のその後の補正を含む特定の形式において、本出願から発行される特許請求の範囲のセットの文字どおりの範囲および同等の範囲である。
【0185】
本開示を読んだ後に当業者がさらなる実施形態を思い描く可能性がある。他の実施形態では、上に開示される発明の組み合わせまたは副組み合わせを有利に行うことができる。例示のために、構成要素の配置例が示されており、組み合わせ、追加、再配置などが本発明の代替の実施形態で企図されることを理解されたい。したがって、本発明を例示的な実施形態に関して記載してきたが、非常に多くの修正例が可能性であることを当業者は認識するであろう。
【0186】
例えば、本明細書に記載されるプロセスを、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、および/またはそれらの任意の組み合わせを使用して実装することができる。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく、例示的な意味で見なされる。しかしながら、特許請求の範囲に記載される本発明のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな修正例および変更をそれらに行うことができること、ならびに本発明が以下の特許請求の範囲の範囲内のすべての修正例および同等物を網羅することを意図するものであることは明らかである。
【0187】
本明細書に引用される出版物、特許出願、および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が個々におよび具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
[項目1]
複数の地上モバイル局との通信を取り扱う1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局であって、前記複数の地上モバイル局のうちのある地上モバイル局が、(1)前記地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または(2)前記地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されており、前記多元接続基地局が、
フレーム構造に従って、前記多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器であって、前記フレーム構造が、どの時間スロットが前記複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義し、前記フレーム構造が、前記多元接続基地局から前記複数の地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを備える、データ解析器と、
前記多元接続基地局と前記地上モバイル局との間の基地-モバイル間の距離に基づいて、前記地上モバイル局への伝送信号の前記フレーム構造に対する信号タイミング調節を判定する、信号タイミングモジュールであって、前記基地-モバイル間の距離が、前記制限距離を超えている、信号タイミングモジュールと、
多元接続プロトコルを使用して前記多元接続基地局から前記地上モバイル局までの通信を通信すること、および前記信号タイミング調節を考慮することができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、前記通信は、前記基地-モバイル間の距離が前記制限距離を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と前記地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または前記地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える、多元接続基地局。
[項目2]
前記複数の地上モバイル局と通信するようにさらに適合されており、前記複数の地上モバイル局が、セルラ電話送受話器、スマートフォン、接続されたデバイスを備える、項目1に記載の多元接続基地局。
[項目3]
前記制限距離が、120キロメートルであり、前記基地-モバイル間の距離が、120キロメートルを超える、項目1または2に記載の多元接続基地局。
[項目4]
前記多元接続プロトコルが、LTEプロトコルであり、前記制限距離が、100キロメートルであり、前記基地-モバイル間の距離が、100キロメートルを超える、項目1または2に記載の多元接続基地局。
[項目5]
前記多元接続プロトコルが、LTE-IoTプロトコルであり、前記制限距離が、40キロメートルであり、前記基地-モバイル間の距離が、40キロメートルを超える、項目1または2に記載の多元接続基地局。
[項目6]
前記多元接続プロトコルが、CDMAベースのプロトコル、LTEプロトコル、GSM(登録商標)プロトコル、OFDMAベースのプロトコル、FDMAベースのプロトコル、TDMAベースのプロトコル、EGPRSプロトコル、またはEDGEプロトコルのうちの1つである、項目1から3のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目7]
前記多元接続基地局が、地球の軌道内で動作する軌道基地局である、項目1から6のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目8]
前記制限距離が、120キロメートルであり、前記複数の地上モバイル局の地上モバイル局の基地-モバイル間の距離が、約500キロメートル~約750キロメートルである、項目7に記載の多元接続基地局。
[項目9]
前記多元接続基地局が、地球大気内で動作可能な基地局であり、飛行機、ドローン、および/もしくはバルーンのうちの1つ以上の上または中に装着されることを含む、項目1から6のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目10]
前記制限距離が、120キロメートルであり、前記基地-モバイル間の距離が、120キロメートルを超える、項目9に記載の多元接続基地局。
[項目11]
複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数の符号系列にわたって分布する、前記多元接続基地局の容量を、前記地上モバイル局を含む前記複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理をさらに備える、項目1から10のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目12]
前記プログラム可能なラジオがさらに、多元接続プロトコルを使用して前記地上モバイル局からの通信を聴取することができ、前記多元接続基地局が、
前記複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、前記多元接続基地局から前記地上モバイル局までの距離である、前記各地上モバイル局の基地-モバイル間の距離を判定する、レンジ計算器と、
前記地上モバイル局の前記基地-モバイル間の距離に基づいて、前記フレーム構造に対する前記地上モバイル局の受信信号のタイミングを判定する、受信タイミングモジュールと、
前記フレーム構造内に聴取時間スロットを割り当てて、前記地上モバイル局からの通信を聴取する、入力信号割り当て器と、をさらに備え、前記聴取時間スロットが、前記地上モバイル局の前記基地-モバイル間の距離に基づいてタイミングがはかられ、前記聴取時間スロットが、複数の時間スロットのうちの1つであり、前記複数の時間スロットが、複数の基地-モバイル間の距離を有する前記複数の地上モバイル局からの通信を取り扱う前記多元接続基地局を考慮するように、前記フレーム構造内で可変的に遅延される、項目1に記載の多元接続基地局。
[項目13]
前記複数の時間スロットが、複数の異なる基地-モバイル間の距離レンジの各々を複数のチャネルブロックの各々に割り当てることによって、複数の基地-モバイル間の距離を有する前記複数の地上モバイル局を考慮するように、前記フレーム構造内で可変的に遅延される、項目12に記載の多元接続基地局。
[項目14]
前記多元接続基地局が、地球の軌道内で動作する軌道基地局であり、前記複数の異なる基地-モバイル間の距離レンジが、天頂距離から最小標高距離までのスラントレンジを集合的に網羅し、前記天頂距離が、地上モバイル局に対する、前記多元接続基地局を保持する衛星の天頂位置との間の距離であり、前記最小標高距離が、前記地上モバイル局が前記衛星の設計フットプリントに進入するときの前記衛星の位置との間の距離である、項目13に記載の多元接続基地局。
[項目15]
前記複数の異なる基地-モバイル間の距離レンジが各々、おおよそ34~35キロメートルに及び、前記天頂距離と前記最小標高距離との間の差が、210~250キロメートルである、項目14に記載の多元接続基地局。
[項目16]
前記衛星の設計フットプリントが、円形、楕円形、矩形であり、アンテナの機能および/もしくはアンテナビームの形状とは無関係であるか、またはアンテナの機能および/もしくはアンテナビームの形状である、項目14または15に記載の多元接続基地局。
[項目17]
複数の地上モバイル局との通信を取り扱う1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局であって、地上モバイル局が、(1)前記地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または(2)前記地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されており、前記多元接続基地局が、
データ解析器であって、どの時間スロットが前記複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義する、フレーム構造に従って、かつ前記地上モバイル局が特定された周波数で信号を受信し、特定された周波数で信号を伝送することを予想する、多元接続プロトコルに従って、前記多元接続基地局によって受信されたデータを解析する、データ解析器と、
前記複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、前記多元接続基地局に対する前記各地上モバイル局の速度に起因する前記各地上モバイル局のドップラー偏移を判定する、ドップラー偏移計算器と
前記複数の地上モバイル局の各々を複数のチャネルブロック内のチャネルブロックに割り振るチャネル割り振りモジュールであって、各チャネルブロックが、地上周波数およびドップラー周波数オフセットを有する、チャネル割り振りモジュールと、
前記ドップラー周波数オフセットを用いて、前記地上周波数で前記地上モバイル局への信号を変調する、信号変調器であって、前記ドップラー周波数オフセットが、前記多元接続基地局および前記地上モバイル局の相対移動に起因して、前記地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、前記地上モバイル局が、前記地上周波数で前記信号を受信する、信号変調器と、
前記多元接続プロトコルを使用して前記地上モバイル局からの通信を受信すること、および前記地上モバイル局の前記ドップラー周波数オフセットを考慮に入れることができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、前記通信は、前記多元接続基地局に対する前記地上モバイル局の速度が前記制限速度を超えているにもかかわらず、地上セルラ基地局と前記地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または前記地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える、多元接続基地局。
[項目18]
前記多元接続基地局に対する前記地上モバイル局の速度は、前記多元接続基地局が地球の軌道内にあるという結果であり、前記ドップラー周波数オフセットが、5キロヘルツの増分で変化する、項目17に記載の多元接続基地局。
[項目19]
前記複数の地上モバイル局と通信するようにさらに適合されており、前記複数の地上モバイル局が、セルラ電話送受話器、スマートフォン、接続されたデバイスを備える、項目17または18に記載の多元接続基地局。
[項目20]
前記多元接続基地局が、地球の軌道内で動作する軌道基地局である、項目17から19のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目21]
前記多元接続基地局が、地球大気内で動作可能な基地局であり、飛行機、ドローン、および/もしくはバルーンのうちの1つ以上の上または中に装着されることを含む、項目17から19のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目22]
複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数の符号系列にわたって分布する、前記多元接続基地局の容量を、前記地上モバイル局を含む前記複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理をさらに備える、項目17から21のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目23]
前記複数のチャネルブロックの各々が、アップリンクサブチャネルの連続スペクトルおよびダウンリンクサブチャネルの連続スペクトルを含むアップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルを有し、前記チャネルブロックは、隣接するチャネルブロックが隣接するドップラー周波数オフセットに割り振られるように割り振られる、項目17から22のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目24]
複数の地上モバイル局との通信を取り扱う1つ以上のトランシーバを有する多元接続基地局であって、地上モバイル局が、(1)前記地上モバイル局から制限距離内にあり、かつ/または(2)前記地上モバイル局に対して制限速度未満で移動している、地上セルラ基地局との基地局通信を予想するように構成されており、前記多元接続基地局が、
フレーム構造に従って、かつ多元接続プロトコルにさらに従って、前記多元接続基地局によって受信されたデータを解析するデータ解析器であって、前記フレーム構造は、どの時間スロットが前記複数の地上モバイル局のうちのどれに割り当てられるかを定義し、前記多元接続基地局から前記複数の地上モバイル局までの距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを備え、前記多元接続プロトコルは、前記地上モバイル局が特定された周波数で信号を受信し、地上周波数で信号を伝送するとの予測で伝送し、ドップラー周波数オフセットで受信され、前記多元接続プロトコルが、複数のチャネルブロック内でチャネルブロックを特定し、各チャネルブロックが、指定された地上周波数および指定された時間スロットを有する、データ解析器と、
前記多元接続基地局と前記地上モバイル局との間の基地-モバイル間の距離に基づいて、前記地上モバイル局への伝送信号の前記フレーム構造に対する信号タイミング調節を判定する、信号タイミングモジュールであって、前記基地-モバイル間の距離が、前記制限距離を超えており、各チャネルブロックには、指定された信号タイミング調節が割り振られる、信号タイミングモジュールと、
前記複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、前記多元接続基地局に対する前記各地上モバイル局の速度に起因する前記各地上モバイル局のドップラー偏移を判定し、各チャネルブロックには、指定されたドップラー周波数オフセットが割り振られる、ドップラー偏移計算器と
前記複数の地上モバイル局の各々を前記複数のチャネルブロック内の指定されたチャネルブロックに、前記チャネルブロックの指定された信号タイミング調節と指定されたドップラー周波数オフセットとに基づいて割り当てる、動的チャネル割り当て器であって、前記指定されたチャネルブロック内のチャネルの数が、指定された信号タイミング調節および指定されたドップラー周波数オフセットを有するかまたはそれらを有することが予想される、前記複数の地上モバイル局の数に対応する、動的チャネル割り当て器と、
前記ドップラー周波数オフセットを用いて、前記地上周波数で前記地上モバイル局への信号を変調する信号変調器であって、前記ドップラー周波数オフセットが、前記多元接続基地局および前記地上モバイル局の相対移動に起因して前記地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、前記地上モバイル局が、前記地上周波数で前記信号を受信する、信号変調器と、
前記多元接続プロトコルを使用して前記地上モバイル局からの通信を受信すること、および前記地上モバイル局の前記ドップラー周波数オフセットを考慮に入れることができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、前記通信は、前記基地-モバイル間の距離が前記制限距離を超えているにもかかわらず、かつ前記多元接続基地局に対する前記地上モバイル局の速度が前記制限速度を超えているにもかかわらず、前記通信が地上セルラ基地局と前記地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または前記地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、を備える、多元接続基地局。
[項目25]
前記多元接続基地局に対する前記地上モバイル局の速度は、前記多元接続基地局が地球の軌道内にあるという結果であり、前記ドップラー周波数オフセットが、5キロヘルツの増分で変化する、項目24に記載の多元接続基地局。
[項目26]
前記複数の地上モバイル局と通信するようにさらに適合されており、前記複数の地上モバイル局が、セルラ電話送受話器、スマートフォン、接続されたデバイスを備える、項目24または25に記載の多元接続基地局。
[項目27]
前記多元接続基地局が、地球の軌道内で動作する軌道基地局である、項目24から26のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目28]
前記多元接続基地局が、地球大気内で動作可能な基地局であり、飛行機、ドローン、および/もしくはバルーンのうちの1つ以上の上または中に装着されることを含む、項目24から26のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
[項目29]
複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数の符号系列にわたって分布する、前記多元接続基地局の容量を、前記地上モバイル局を含む前記複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理をさらに備える、項目24から28のいずれか一項に記載の多元接続基地局。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元接続トランシーバであって、前記多元接続トランシーバと、第1の地上モバイル局を少なくとも含む複数の地上モバイル局との間の地球軌道-地上経路である部分を少なくとも有する通信経路に沿って通信するように構成され、
前記第1の地上モバイル局が第1の特定された周波数で信号を受信し、第2の特定された周波数で信号を伝送することを予想する、多元接続プロトコルに従って、前記多元接続トランシーバによって受信されたデータを解析する、データ解析器と、
前記複数の地上モバイル局の各地上モバイル局について、前記通信経路における第2の通信経路要素に対する前記通信経路における第1の通信経路要素の速度に起因するそのそれぞれのドップラー偏移を判定する、ドップラー偏移計算器と、
前記複数の地上モバイル局の各々を複数のチャネルブロック内のチャネルブロックに割り振るチャネル割り振りモジュールであって、各チャネルブロックが、地上周波数およびドップラー周波数オフセットを有する、チャネル割り振りモジュールと、
前記ドップラー周波数オフセットを用いて、前記地上周波数で前記第1の地上モバイル局への信号を変調する、信号変調器であって、前記ドップラー周波数オフセットが、前記第1の通信経路要素および記第2の通信経路要素の相対移動に起因して、前記第1の地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、前記第1の地上モバイル局が、前記地上周波数で前記信号を受信する、信号変調器と、
前記多元接続プロトコルを使用して前記第1の地上モバイル局からの通信を受信すること、および前記第1の地上モバイル局の前記ドップラー周波数オフセットを考慮に入れることができる、プログラム可能なラジオであって、そのため、前記通信は、前記第2の通信経路要素に対する前記第1の通信経路要素の速度が制限速度を超えていようとも、地上セルラ基地局と前記第1の地上モバイル局との間の通信と互換性があるか、または前記第1の地上モバイル局にはそのように見える、プログラム可能なラジオと、
を備える多元接続トランシーバ。
【請求項2】
前記第2の通信経路要素に対する前記第1の通信経路要素の前記速度は、前記第1の通信経路要素または前記第2の通信経路要素が地球の周りの軌道内にあるという結果であり、前記ドップラー周波数オフセットが、5キロヘルツの増分で変化する、請求項1に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項3】
前記複数の地上モバイル局と通信するようにさらに適合されており、前記複数の地上モバイル局が、セルラ電話送受話器、スマートフォン、および/または接続されたデバイスを備える、請求項1または2に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項4】
前記多元接続トランシーバが、地球の周りの軌道内で動作する軌道基地局である、請求項1から3のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項5】
前記多元接続トランシーバが、地球大気内で動作可能な基地局であり、飛行機、ドローン、および/またはバルーンのうちの1または複数の上または中に装着されることを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項6】
前記多元接続トランシーバは、1または複数のアンテナを使用して、地球の第1の表面上で動作する基地局であり、前記1または複数のアンテナは、地上で動作する地上モバイル局にサービスを提供するように方向付けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項7】
前記1または複数のアンテナは、地球の第2の表面上のアンテナを含む、かつ/または地球の周りの軌道におけるアンテナを含む、請求項6に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項8】
複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数の符号系列にわたって分布する、前記多元接続トランシーバの容量を、前記第1の地上モバイル局を含む前記複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項9】
前記複数のチャネルブロックの各々が、アップリンクサブチャネルの第1の連続スペクトルおよびダウンリンクサブチャネルの第2の連続スペクトルを含むアップリンクサブチャネルおよびダウンリンクサブチャネルを有し、前記チャネルブロックは、隣接するチャネルブロックが隣接するドップラー周波数オフセットに割り振られるように割り振られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項10】
地球の周りの軌道内で動作するように適合され、第1の地上モバイル局を含む地上モバイル局と通信するように構成される多元接続トランシーバであって、
フレーム構造に従って、前記多元接続トランシーバによって受信されたデータを解析するデータ解析器であって、前記フレーム構造は、どの時間スロットがどの地上モバイル局に割り当てられるかを定義する、データ解析器と、
各地上モバイル局について、前記多元接続トランシーバから前記地上モバイル局までの通信距離を判定するレンジ計算器と、
複数の地上モバイル局を複数のチャネルブロックに割り振るチャネル割り振りモジュールであって、各チャネルブロックが、地上周波数および軌道周波数オフセットを有する、チャネル割り振りモジュールと、
前記フレーム構造に対する伝送信号のタイミングを判定する信号タイミングモジュールと、
前記軌道周波数オフセットを用いて、前記第1の地上モバイル局への信号を前記地上周波数で変調する信号変調器であって、前記軌道周波数オフセットが、前記多元接続トランシーバおよび前記地上モバイル局の相対移動に起因して、前記地上モバイル局に伝送される信号における予想されたドップラー偏移に少なくともほぼ対応し、そのため、前記地上モバイル局が、前記地上周波数で前記信号を受信する、信号変調器と、
(1)前記多元接続トランシーバの位置、(2)前記フレーム構造に対する前記伝送信号の前記タイミング、および(3)前記軌道周波数オフセットまたは前記予想されたドップラー偏移から、前記第1の地上モバイル局の位置を判定する位置発見モジュールと、
を備える、多元接続トランシーバ。
【請求項11】
前記位置発見モジュールは、第2の多元接続トランシーバから取得された位置情報をさらに使用して、前記第1の地上モバイル局の前記位置を判定し、前記多元接続トランシーバを使用した位置発見は、前記第1の地上モバイル局の前記位置のグリッドセルのペアを判定し、前記第2の多元接続トランシーバから取得された前記位置情報は、前記グリッドセルのペアのうちどのグリッドセルが前記第1の地上モバイル局の前記位置に対応するかを判定する、請求項10に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項12】
前記フレーム構造は、前記多元接続トランシーバから前記第1の地上モバイル局までの第1の通信距離に起因する可変伝送遅延をもたらすゼロまたは非ゼロの時間スロット同期オフセットを各々が有する複数のスロットを含む、請求項10または11に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項13】
前記フレーム構造内に聴取時間スロットを割り当てて、前記第1の地上モバイル局からの通信を聴取する、入力信号割り当て器をさらに備え、前記聴取時間スロットが、前記多元接続トランシーバと前記第1の地上モバイル局との間の前記通信距離に基づいてタイミングがはかられ、前記聴取時間スロットが、複数の時間スロットのうちの1つであり、前記複数の時間スロットが、前記多元接続トランシーバからの複数の通信距離を有する前記複数の地上モバイル局からの通信を取り扱う前記多元接続トランシーバを考慮するように、前記フレーム構造内で可変的に遅延される、請求項10から12のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項14】
前記信号タイミングモジュールは、地球軌道からの地上ドップラー偏移に基づいて、前記伝送信号の周波数を調節するようにさらに適合され、前記地球軌道は、地球の周りの軌道である、請求項10から13のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項15】
複数の時間スロット、複数のキャリア周波数、複数の直交サブキャリア、および/または複数の符号系列にわたって分布する、前記多元接続トランシーバの容量を、前記第1の地上モバイル局を含む前記複数の地上モバイル局に割り当てるための信号割り当て論理をさらに備える、請求項10から14のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【請求項16】
前記多元接続トランシーバは地球の周りの軌道内にあり、前記複数のチャネルブロックは、前記第1の地上モバイル局と前記多元接続トランシーバを保持する衛星の相対位置に基づいて割り当てられる、請求項10から15のいずれか一項に記載の多元接続トランシーバ。
【外国語明細書】