(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054191
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】結晶形機能性甘味料
(51)【国際特許分類】
C07H 3/02 20060101AFI20240409BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240409BHJP
A23L 27/30 20160101ALI20240409BHJP
C13K 13/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C07H3/02 CSP
A23L27/00 E
A23L27/00 F
A23L27/30 A
C13K13/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014962
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2021196486の分割
【原出願日】2018-02-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083906
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0184905
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,キョンホン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョンジン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特定の結晶性のアルロースを提供し、また、前記結晶性アルロースを高収率および高純度で製造する方法を提供する。さらに、結晶性アルロースを含む甘味料、前記甘味料を適用した多様な食品および飲料などを提供する。
【解決手段】X線分光スペクトルにおいて15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2でピークを有するX線分光スペクトルを有するアルロース結晶を提供する。本発明のアルロース結晶は、微粉状の粉末に比べて流れ性が良く、Cakingが容易にされず保管時に安定であり、流通および取り扱いが容易な特性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルロース結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の結晶性を有する機能性糖類、その製造方法および前記結晶性糖類を含む機能性甘味料に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖およびデンプン糖に代弁される一般糖類が全世界で約65兆ウォン程度と最も大きな市場を形成しているが、全世界的に健康志向の機能性およびプレミアム製品へと消費者のニーズ(needs)が強くなるにつれ、キシリトールのような糖アルコール類、フラクトオリゴ糖のようなオリゴ糖類、そして結晶果糖のような機能性糖類、スクラロースやアスパルテームのような甘味料などの機能性甘味料市場が成長している。
【0003】
甘味を感じさせる調味料および食品添加物を総称する甘味料。数多くの甘味料のうち、砂糖、ブドウ糖、果糖などは食品中の自然成分として最も広く分布しており、加工食品の製造時にも最も広く使用されている。しかし、「砂糖」が虫歯、肥満、糖尿病などを誘発するという否定的な側面が浮き彫りになるにつれ、世界的に砂糖の代わりに使用可能な機能性代替甘味料が注目されている。
【0004】
最近、機能性甘味料として砂糖または果糖などを代替可能な糖類として注目される糖類の一つとしてアルロースがある。アルロースは、化学的または生物学的方法で製造できるが、生産物中のアルロース含有量が低いため、精製および濃縮する工程が必要である。しかし、濃縮されたシロップの場合、その適用に限界があるので、結晶粉末に対する要求が高いが、アルロースは結晶性が低くて結晶化しにくい。
【0005】
また、アルロース転換酵素または前記酵素を生産する菌株を用いた生物学的方法でアルロースを生産する場合にも、低い転換率によって、D-アルロースの純度を高めた後、結晶化しなければならず、D-アルロースの工業的利用を目的とした場合、精製工程や精製収率、結晶化収率などにおいて未解決の課題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特定の結晶性のアルロースを提供し、また、前記結晶性アルロースを高収率および高純度で製造する方法を提供することである。
また、本発明の目的は、結晶性アルロースを含む甘味料、前記甘味料を適用した多様な食品および飲料などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特定の結晶形のアルロースを提供し、前記結晶性アルロースを高収率および高純度で製造する方法、および前記特定の結晶性アルロースの多様な用途を提供する。
【0008】
本発明の一例によるアルロース結晶は、X線分光スペクトルにおいて15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2でピークを有するX線分光スペクトルを有するアルロース結晶であってもよい。本発明の一例において、前記X線分光スペクトルは、X線分光スペクトルにおいて15.24、18.78、30.84および28.37の回折角(2θ)±0.2で、15.24、18.78、30.84および31.87の回折角(2θ)±0.2で、または15.24、18.78、30.84および47.06の回折角(2θ)±0.2でピークを有するX線分光スペクトルを有するアルロース結晶であってもよい。前記アルロース結晶の有するX線分光スペクトルにおいてピーク
を有する回折角は、X線回折分析の結果を上位(Relative Intensity%)の主要ピークおよび形態特異的なピークを選定して表したものである。
【0009】
本発明の一例によるアルロース結晶は、DSC分析により、125.8℃±5℃のTm温度または200~220J/gの溶融エンタルピー(△H)を有することができ、前記Tmは、125.8℃±3℃であってもよい。
【0010】
本発明の一例によるアルロース結晶の短径に対する長径の長さ(マイクロメートル)の比率(=長径/短径)が1.0~8.0であってもよい。
【0011】
本発明の一例によるアルロース結晶は、前記の(1)~(5)からなる群より選択された1種以上の特性を有するアルロース結晶であってもよい:
(1)粉末X線分光スペクトル上において15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2でピークを有する粉末X線分光スペクトルを有するもの、
(2)示差走査熱量分析(DSC)により、125.8℃±5℃のTm温度を有するもの、
(3)示差走査熱量分析により、200~220J/gの溶融エンタルピー(△H)を有するもの、
(4)350μm以上、好ましくは350~2,000μmの平均長径を有するもの、および
(5)アルロース結晶の短径に対する長径の長さ(マイクロメートル)の比率(=長径/短径)が1.0~8.0の範囲であるもの。
【0012】
本発明のさらなる例は、前記の(1)~(5)からなる群より選択された1種以上の特性を有するアルロース結晶を含む甘味料組成物に関する。本発明の他の例は、前記アルロース結晶を含む食品、飲料、飼料、医薬品または化粧品を含む。
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明の一例によるアルロース結晶は、下記の(1)~(5)からなる群より選択された1種以上の特性を有するものであってもよい:
(1)粉末X線分光スペクトル上において15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2でピークを有する粉末X線分光スペクトルを有するもの、
(2)示差走査熱量分析(DSC)により、125.8℃±5℃のTm温度を有するもの、
(3)示差走査熱量分析により、200~220J/gの溶融エンタルピー(△H)を有するもの、
(4)350μm以上、350~2000μmの平均長径を有するもの、および
(5)アルロース結晶の短径に対する長径の長さ(マイクロメートル)の比率(=長径/短径)が1.0~8.0の範囲であるもの。
【0014】
本発明によるアルロース結晶は、多様な結晶化方法で得られるが、冷却法によって製造したアルロース結晶で測定した特性であってもよい。
【0015】
本発明によるアルロース結晶の粉末X線分光スペクトル分析によれば、15.24、18.78、および30.84の回折角(2θ)±0.2でピークを有する粉末X線分光スペクトルを有するものであってもよい。好ましくは、前記結晶は、15.24、18.78、30.84および28.37の回折角(2θ)±0.2で、15.24、18.78、30.84および31.87の回折角(2θ)±0.2で、または15.24、18.78、30.84および47.06の回折角(2θ)±0.2でピークを有する粉末X線分光スペクトルを有するものであってもよい。さらに詳しくは、前記X線分光スペクトル
は、X線分光スペクトルにおいて15.24、18.78、30.84、27.37、47.06および31.87の回折角(2θ)±0.2でピークを有するものであってもよい。
【0016】
上述した回折角(2θ)における回折ピーク値は、測定機器または測定条件などによる若干の測定誤差を示すこともある。具体的には、測定誤差は、±0.2、好ましくは±0.1、さらに好ましくは±0.06の範囲内であってもよい。
【0017】
本発明によるアルロース結晶は、熱分析法、具体的には、示差走査熱量分析法(DSC)で分析される。DSC分析によれば、本発明によるアルロース結晶の溶融温度(Tm)は、125.8℃±5℃、好ましくは±3.0℃、さらに好ましくは±1.0℃を有することができる。前記アルロース結晶は、DSC分析による溶融エンタルピー(△H)が200~220J/g、例えば、212.7J/gであってもよい。示差走査熱量法(DSC)は、温度勾配によって操作され、アルロース粉末試料の温度増加を維持するために提供されたエネルギーを測定したものである。結晶のDSC分析において熱容量が高いほど容易に溶けにくく、熱容量が高く、吸熱ピークの幅が狭いほど結晶が均一で硬く形成されていることを予測することができる。
【0018】
本発明によるアルロース結晶は、結晶の平均短径が50以上~1,000μmであってもよいし、好ましくは50以上~500μmであってもよいし、平均長径が350μm以上、好ましくは350~2,000μm、さらに好ましくは400μm以上~2,000μmであってもよい。
【0019】
また、本発明によるアルロース結晶の短径に対する長径の長さ(マイクロメートル)比率(=長径/短径)が、1.0~8.0、1.0~6.9、1.0~6.0、1.0~5.5、1.0~5.0、1.1~8.0、1.1~6.9、1.1~6.0、1.1~5.5、1.1~5.0、1.3~8.0、1.3~6.9、1.3~6.0、1.3~5.5、1.3~5.0、1.5~8.0、1.1~6.9、1.5~6.0、1.5~5.5、1.5~5.0、2.0~8.0、2.0~6.9、2.0~6.0、2.0~5.5、2.0~5.0であってもよい。
【0020】
本発明によるアルロース結晶に対する粉末XRDパターン分析の結果によれば、本発明によるアルロース結晶は、純粋な結晶粒子であって、長方形六面体またはこれに近接する構造を有する。本発明の結晶構造が立方晶系に近接するほど、結晶の均一度と硬さが高まるので、さらに好ましい。
【0021】
また、アルロースの結晶化工程で製造された結晶が均一であるほど、結晶の強度が高くなり、粒子割れが最小化されることで粒度分布が均一になり、これによって流れ性が向上できる。これに対し、均一度が低い場合、乾燥および移送段階で結晶粒子の割れによって微粉化され、相対的に溶けやすくて製品の品質に悪影響を及ぼす。
【0022】
本発明において、「結晶体の純度」は、アルロースの結晶の純度を意味する。本発明の結晶体の純度を含む物性は、例えば、X線粉末回折分析法、示差走査熱量計(DSC)分析法、赤外線分光(FTIR)分析、HPLC分析、LC/MS分析法などのような方法によって求められ、純度は、具体的には、HPLCクロマトグラフィーで分析することができる。
【0023】
本発明の結晶体の純度は、70重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上であってもよい。この範囲内の純度が品質保障のために好ましい。
【0024】
本発明のアルロース結晶は、微粉状の粉末に比べて流れ性が良く、Cakingが容易にされず保管時に安定であり、流通および取り扱いが容易な特性を有する。また、前記アルロース粉末は砂糖より低いカロリーを有し、甘美は砂糖と類似の特性を有するので、混合甘味料、固形混合甘味料、チョコレート、チューイングガム、インスタントジュース、インスタントスープ、顆粒、錠剤などの製造が容易かつ有利に実施できる。また、前記アルロース結晶粉末は、食飲料品、嗜好物、飼料、化粧品、医薬品などの各種組成物に含有されて使用可能であり、糖質を含有させる方法は、その製品が完成するまでの工程で、例えば、混和、ミキシング、溶解、融解、浸漬、浸透、散布、塗布、被覆、噴霧、注入、結晶化、固化などの公知の方法が適切に選択可能である。
【0025】
本発明の具体的な一例は、前記アルロース結晶粉末を含む甘味料組成物を提供することができる。甘味料組成物は、多様な含有量をアルロース結晶粉末を含むことができ、高甘味甘味料、アルロースを除いた単糖類、二糖類、糖アルコール類、食物繊維類およびオリゴ糖類からなる群より選択された1以上を追加的に含んでもよい。
【0026】
例えば、前記単糖類および二糖類は、アロース、デオキシリボース、エリトルロース、ガラクトース、イドース、マンノース、リボース、ソルボース、タガトース、エリトロース、フクロース、ゲンチオビオース、ゲンチオビウロース、イソマルトース、イソマルツロース、コージビオース、ラクツロース、アルトロース、ラミナリビオース、アラビノース、ロイクロース、フコース、ラムノース、ソルボース、マルツロース、マンノビオース、マンノスクロース、メレジトース、メリビオース、メリビウロース、ニゲロース、ラフィノース、ルチノース、ルチヌロース、スタキオース、トレオース、トレハロース、トレハルロース、ツラノース、キシロビオース、フルクトース、グルコース、およびアルロースからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0027】
前記糖アルコール類は、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラクチトール、イノシトールおよびソルビトールからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記食物繊維類は、水溶性食物繊維であってもよいし、水溶性食物繊維は、ポリデキストロース、難消化性マルトデキストリンおよびペクチンからなる群より選択された1種以上であってもよい。前記オリゴ糖類は、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0028】
前記高甘味甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、シクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア甘味料(ステビオール配糖体、酵素処理ステビア)、ズルチン、ソーマチン、トマチン、ネオテーム、レバウディオサイドおよびモネリンからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0029】
本発明によるアルロース結晶の製造方法は、多様な方法で行うことができ、好ましくは、冷却法で行うことができる。本発明による冷却法の一例は、前記アルロース結晶の製造方法は、アルロース90重量%以上を含み、60~85ブリックスのアルロース溶液を20~40℃、または30~40℃、例えば、35℃の温度でゆっくり撹拌して結晶核を生成する段階、および前記溶液の温度を10℃まで冷却させて結晶を成長させる段階を含むことができる。例えば、アルロース溶液を35~10℃の温度に冷却させて過飽和状態を誘導して結晶を生成させることができる。冷却速度は、0.01~20℃/分を維持するのが良いし、冷却速度が低い場合、共結晶形成時間が長くて生産性が低下し、冷却速度が高い場合、小さい粒子サイズの結晶が形成されて結晶の回収が難しいことがある。
【0030】
前記アルロース結晶の製造方法は、アルロース90重量%以上を含み、60~85ブリ
ックスおよび電気伝導度1,000uS/cm以下であるアルロース溶液で結晶核を生成する段階、および前記溶液の温度を冷却させて結晶を成長させる段階を含むことができる。具体的には、前記アルロース結晶の製造方法は、アルロース90重量%以上を含み、80~83ブリックスのアルロース溶液を35℃の温度でゆっくり撹拌して結晶核を生成する段階、および前記溶液の温度を10℃まで冷却させて結晶を成長させる段階を含むことができる。前記方法は、溶液の温度を20~40℃、好ましくは30~35℃の範囲に増加させて、冷却途中に生成された微細結晶を再溶解する段階を1回以上追加的に含んでもよい。前記アルロース結晶の製造方法は、前記種晶(seed)を添加する工程を追加的に含んでもよい。前記種晶添加段階および再溶解段階は、それぞれ選択的に前記アルロース結晶の製造方法に含まれるか、前記2つの段階をすべて含むことができる。
【0031】
前記結晶化のためのアルロース溶液は、アルロースを90重量%以上、例えば、95重量%以上の含有量で含む高純度アルロース溶液であってもよい。前記組成物の粘度は、温度45℃で2cps~200cpsであってもよいし、電気伝導度は、1000uS/cm以下、例えば、0.01~1000uS/cm、好ましくは30uS/cm以下、例えば、0.1~30uS/cmであってもよい。前記アルロース結晶化用組成物の電気伝導度は低いほど結晶化に好ましい。前記結晶化のためのアルロース溶液は、固形分含有量が60以上~85ブリックス以下、例えば、60ブリックス超過~80ブリックス、65~85ブリックス、65~80ブリックス、または68~85ブリックスであってもよい。
【0032】
通常の場合、アルロース結晶のサイズが大きいほど物性が良くなり、使用便宜性が増加することが知られており、このような大きいサイズの結晶を製造するためには、移送工程に区分される種結晶と本結晶化工程をすべて行わなければならないが、本発明による結晶化工程は、1段階の工程でも比較的大きなサイズの結晶を高収率で容易に製造することができる。
【0033】
また、前記結晶化工程は、前記結晶成長工程において冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために、溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行うことができる。本発明による結晶化工程では、結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返し行うことができる。
【0034】
前記結晶を製造する工程において、結晶生成速度およびサイズを増加させる目的で種晶(seed)を追加的に添加することができる。
【0035】
本発明による具体的な一例において、アルロース結晶は、固形分基準で、アルロース90重量%以上で含み、全体固形分含有量が60~85ブリックスのアルロース溶液を20~40℃、好ましくは30~40℃、例えば、35℃の温度で撹拌して少量の結晶核を生成させた後、温度を時間あたり1℃ずつ減少させて温度10℃まで冷却させて結晶を成長させて製造し、選択的に冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために、溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を少なくとも1回以上繰り返すことで、アルロース結晶を製造することができる。
【0036】
本発明の一具体例において、アルロース結晶を製造する方法は、SMBクロマトグラフィー分離工程で得られたアルロース分画を第2次イオン精製する段階、前記イオン精製されたアルロース分画を濃縮する段階、前記濃縮物からアルロースを結晶化してアルロース結晶を得る段階を含み、選択的にアルロース結晶の回収工程、洗浄工程および乾燥工程を追加的に含んでもよい。
【0037】
前記アルロース結晶製造の具体例は、第1次イオン精製、SMBクロマトグラフィー分離、第2次イオン精製、濃縮および結晶化工程を含むことができ、選択的にアルロース転
換反応物を活性炭処理工程、イオン精製工程、または活性炭処理工程とイオン精製工程をすべて行うことができる。
【0038】
本発明によるアルロース結晶を製造する方法は、アルロース濃縮物溶液の温度および濃度を調節して結晶化することができ、具体的には、結晶化のために要求される過飽和状態は、アルロース溶液の温度を下げるか、またはD-アルロース溶液中のD-アルロースの濃度を変化させることによって維持できる。本発明の一具体例において、前記結晶化段階で一定間隔で試料を採取して肉眼や顕微鏡で観察するか、または試料の遠心分離から得られた上層液中の糖濃度を分析することによって結晶化の経過をモニタリングし、その結果に応じて温度またはD-アルロースの濃度を調節することができる。アルロース結晶を製造するために、アルロース濃縮溶液を冷却させて結晶化する場合、熱交換器により、10~25℃の温度範囲に急速に冷却させた後、昇温と冷却を繰り返し行って結晶成長を誘導することができる。
【0039】
本発明によるアルロース結晶を製造する方法は、前記結晶化段階で得られたアルロース結晶を多様な固液分離方法、例えば、遠心分離で回収する段階、脱イオン水で洗浄する段階、および乾燥する段階をさらに含んでもよい。前記乾燥段階は、流動層乾燥機または真空乾燥機で行われるが、これに限ることはない。前記アルロース結晶に含まれているアルロースは、固形分総含有量100重量%を基準として、94重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上または99重量%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によるアルロース結晶とその製造方法は、高収率および高純度でアルロース結晶を製造することができ、前記製造された結晶を甘味料に含ませて、多様な食品および飲料などに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施例1で得られたアルロース粉末の倍率×100で測定された光学顕微鏡写真である。
【
図2】本発明の実施例2で得られたアルロース粉末の倍率×100で測定された光学顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の実施例3で得られたアルロース粉末の倍率×100で測定された光学顕微鏡写真である。
【
図4】本発明の実施例1で得られたアルロース粉末の倍率×50で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図5】本発明の実施例2で得られたアルロース粉末の倍率×50で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6】本発明の実施例3で得られたアルロース粉末の倍率×50で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図7】本発明の実施例1~3で得られたアルロース結晶の赤外線分光分析(IR)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を下記の実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0043】
実施例1:アルロース結晶の製造
固形分含有量100重量%を基準としてアルロース94.6重量%を含む高純度アルロースシロップを82.6Bx(w/w%)濃度に濃縮させて、8uS/cmの電気伝導度
を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記製造された結晶化用アルロースシロップの過飽和状態になる温度35℃から徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この時、アルロース種晶を添加し、温度35℃でゆっくり撹拌して少量の結晶核を生成させた後、温度を時間あたり1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程において冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために、溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返し結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去し、1次結晶化で得られた結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記得られた1次結晶を水に溶解して、固形分含有量100重量%を基準としてアルロース99.5%のアルロース溶解液81.6Bxを製造した。
前記製造されたアルロース溶解液で前記1次結晶化方法と実質的に同様の方法で2次結晶化工程を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去し、2次結晶化で得られた最終結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記製造されたアルロース結晶の純度は下記のHPLC分析を行い、分析条件は次の通りである。
分析カラム: Biolad Aminex HPX-87C column
移動相: 水
Flow rate: 0.6ml/min
カラム温度: 80℃
検出器: RI detector
前記HLPC分析の結果、実施例1で製造したアルロース結晶のアルロースの純度は99.8重量%であり、結晶収率は62.5%であった。前記結晶収率は、結晶化のための原料アルロースシロップの固形分重量対比、回収されたアルロース結晶粉末の重量を百分率で表したものである。
【0044】
実施例2:アルロース結晶の製造
固形分含有量100重量%を基準としてアルロース94.6重量%を含む高純度アルロースシロップを82.6Bx濃度に濃縮させて、16uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記製造された結晶化用アルロースシロップの過飽和状態になる温度35℃から徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この時、アルロース種晶を添加し、温度35℃でゆっくり撹拌して少量の結晶核を生成させた後、温度を時間あたり1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程において冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために、溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1回以上繰り返し結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去し、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記製造されたアルロース結晶の純度分析は前記実施例1と同様の方法でHPLC分析を行い、実施例2で製造したアルロース結晶のアルロースの純度は99.6重量%であり、結晶収率は52.8%であった。
【0045】
実施例3:アルロース結晶の製造
固形分含有量100重量%を基準としてアルロース91.5重量%を含む高純度アルロースシロップを81.2Bx濃度に濃縮させて、21uS/cmの電気伝導度を有する結晶化用アルロースシロップを製造した。前記製造された結晶化用アルロースシロップの過飽和状態になる温度35℃から徐々に温度10℃まで冷却させて結晶を成長させた。この時、アルロース種晶を添加し、温度35℃でゆっくり撹拌して少量の結晶核を生成させた後、温度を時間あたり1℃ずつ減少させて結晶を成長させ、前記結晶成長工程において冷却途中に生成された微細結晶を再溶解するために、溶液の温度を30~35℃まで高めて微細結晶を溶解する工程を行った。前記結晶成長工程と微細結晶溶解工程を少なくとも1
回以上繰り返し結晶化を行った。ここで製造されたアルロース結晶は、遠心脱水によって母液を除去し、結晶を冷却水で洗浄した後、乾燥して回収した。
前記製造されたアルロース結晶の純度分析は前記実施例1と同様の方法でHPLC分析を行い、実施例3で製造したアルロース結晶のアルロースの純度は99.6重量%であり、結晶収率は34%であった。
【0046】
前記実施例1~3のアルロース結晶の製造によれば、結晶化原料であるアルロースの純度が低いほど、アルロース以外の他の成分が純粋アルロースの結晶成長を妨げる不純物として作用するため、結晶原液のアルロースの純度に応じて結晶収率の差が発生した。具体的には、実施例1において、アルロースシロップを2回の結晶化工程で得られた結晶が、1回の結晶化工程を行った実施例2に比べて、アルロース結晶の純度および結晶収率が高くなった。結晶化原液のアルロースの純度が高い実施例1および実施例2が、相対的に低い純度の結晶化原液を用いた実施例3に比べて、アルロース結晶の純度および結晶収率が高くなった。
【0047】
実施例4:アルロース結晶の特性分析
4-1:結晶粒度分布の分析
実施例1と3で得られたアルロース結晶の粒度分布はMeshごとの標準網篩を用いて確認した。標準網篩のMesh sizeは20、30、40、60、80、100meshを用いており、標準網篩の孔のサイズに結晶粒子のサイズ分布を測定した。
各メッシュ(mesh)ごとの標準網篩の孔サイズは850、600、425、250、180、150μmである。各サンプルごとに100gの重量を取って、Meshサイズごとの標準網篩に入れて、3分間振動を加えて標準網篩を通過させた。各meshサイズごとに篩に残っているサンプルの重量を測って百分率値を表1に記載した。下記の表1にて、各メッシュごとの粒度分布は粒子の重量%を数値で表した。
【0048】
【0049】
前記表1に示すように、実施例1のアルロース結晶は、粒子分布が90.2重量%集中して非常に狭い分布を示し、実施例3のアルロース結晶は、40↑で最も多い分布を示すものの、80↑、60↑、40↑、および30↑で均等に分布して粒子分布が広く広がっていることを確認した。実施例1のように、長径/短径の比率が小さくて硬い結晶粒子であるほど、製品の微粉含有量が相対的に低く、均一な粒度分布を有していることを確認した。また、長径/短径の比率が大きくて低い均一度の粒子であるほど、乾燥および移送過程で粒子割れによって微粉化され、粒度が不均一になって広い範囲の粒度分布を有することができる。
【0050】
4-2:結晶形態および結晶粒子サイズの分析
実施例1~3で得られたアルロース結晶の倍率×100で測定された光学顕微鏡写真を
図1~
図3に示した。実施例1~3で得られたアルロース結晶の倍率×100で測定された走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図4~
図6に示した。
また、実施例1~3で得られたアルロース結晶9つの試料に対して長径(縦)および短径(横)を測定し、粒子径の比率(=長径/短径)を得て、下記の表1に示した。具体的には、5つの結晶に対して、短径の長さ(μm)を1基準で、長径の長さ(μm)の比率を示した。
【0051】
【0052】
図4~
図6に示すように、本発明によるアルロース結晶は、長方形六面体またはこれに近接した結晶構造を有する。前記表2に示す結晶の短径の長さ(μm)を1基準で示す長径の長さ(μm)の比率は、実施例1の場合は平均1.6、実施例2の結晶は平均4.3、および実施例3の結晶は平均7.6であって、相対的に実施例1の結晶が実施例2と3の結晶よりそれぞれの結晶面が均一に成長して正方形に近い斜方晶系の結晶形態を形成している。また、結晶面が均一に成長するほど長径/短径の比率が減少する傾向を示すことを確認することができた。これは、結晶化原料のアルロースの純度が低いほど、アルロース以外の他の成分が純粋アルロースの結晶成長を妨げる不純物として作用するため、結晶の形状に影響を及ぼしたものと解釈される。
【0053】
実施例5:示差走査熱量計法(DSC)分析
実施例1~3で得られたアルロース結晶のDSC分析を行い、具体的なDSC分析条件は次の通りである。
装備名: DSC[differential scanning calorimetry]
製造会社: Perkin Elmer
方法: 30~250℃、10℃/min昇温、N2 gas purge(基準方法:ASTM D 3418参照)
前記アルロース結晶のDSC分析の結果を下記の表3に示した。
【0054】
【0055】
前記DSC分析の結果、実施例1の結晶においてTm値が最も高く、熱容量も最も高く測定された。結晶のDSC分析において熱容量が高いほど容易に溶けにくく、熱容量が高くて吸熱ピークの幅が狭いほど結晶が均一で硬く形成されていることを予測することができる。前記実施例1~3の熱容量と吸熱ピークのエンタルピー値を考慮する時、実施例1
の結晶が相対的にさらに均一で硬く形成されていることを確認した。
【0056】
実施例6:赤外線吸収(IR)スペクトル分析
前記製造されたアルロース結晶を確認すべく、実施例1~3の結晶に対して赤外線吸収(IR)スペクトル分析を行い、測定条件は次の通りである。
分析機器: TENSOR II with Platinum ATR、製造会社;Bruker(German)
検出器: highly sensitive photovoltaic MCT
detector with liquid nitrogen cooling
スキャン(Scan)回数: 64 scans at 20kHz
スキャン(Scan)範囲: 800-4,000cm
-1 and averaged at 4cm
-1 resolution
赤外線吸収(IR)スペクトル分析の結果によれば、本発明によるアルロース結晶に対する赤外線分光スペクトル分析の結果によれば、アルロース分子構造内に官能基-OHとC-O-C、C-C、C-OHなどから構成されていて、アルロース分子だけの固有の構造特性を有することを確認可能で、これにより、実施例1~3の結晶は同一のアルロース結晶であることを確認した。前記IR分析スペクトルを
図7に示した。
【0057】
実施例7:X線回折分析法(XRD)分析
実施例1~3で得られたアルロース結晶を下記の具体的な分析条件によりX線回折分析法を行い、実施例1~3で得られたアルロース結晶のX線回折分析の結果を上位(Relative Intensity%)の5つのピークおよび形態特異的なピークを選定して表4に示した。
分析機器: D/MAX-2200 Ultima/PC
製造会社: Rigaku International Corporation(Japan)
X-ray sauce system target:sealed tube Cu
管電圧:45kV / 管電流:200mA
Scan range: 5~80°2θ
Step size: 0.01°
Scan speed:5°/min
【0058】
【0059】
前記表4に示すように、実施例1で得られたアルロース結晶は、粉末X線分光スペクトル上において2θ値が15.24、18.78および30.84;15.24、18.78、30.84、および28.37;または15.24、18.78、30.84および31.87;で特異的なピークを有することを確認した。
X線分光スペクトル上において、実施例1~3の結晶が同一範囲のAngle 2-T
heta degree値を有することからみて、同一の結晶格子構造をなしていることを確認した。ただし、実施例1の結晶が、実施例2と3の結晶とは外形的な結晶の形態がやや相異して結晶格子の配向性の差があり得、これによってIntensity%値の差が生じると類推することができる。
【0060】
実施例8:アルロース結晶の流れ性の測定
アルロース結晶の流れ性を分析すべく、前記実施例1と実施例3の結晶粉末の安息角を測定した。
具体的には、実施例1と3の結晶粉末を、完全平面の基準板上に20cmで一定の高さに固定された漏斗を通して一定の体積を通過させて、水平面と山のように積まれて滑り落ちない傾斜面を基準として、3つの異なる地点で安息角を測定した。
実施例1で得られる結晶の安息角は42.6°、43.3°、42.2°±0.2°であり、平均値は42.7±0.2°であり、実施例3で得られた結晶の安息角は46.0°、45.3°、46.2°±0.2°であり、平均値は45.8°±0.2°であった。安息角は水平面に粉末の自然落下によって作られた形状であり、これは、流れ性に多くの影響を及ぼす。一般に安息角が小さければ、粉末の流れ性が良いと判断することができる。前記アルロース結晶の安息角の測定方法と同様の方法で砂糖(平均粒径420μm)と結晶果糖(平均粒径341μm)の安息角を測定した結果、砂糖の安息角の平均値は41.2°±0.2°であり、結晶との安息角の平均値は41.8°±0.2°であった。前記砂糖と結晶果糖の安息角と比較する時、アルロース結晶果糖もこれらと同等程度の粉末の流れ性を有することを確認した。