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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054192
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】医薬化合物の結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/46 20060101AFI20240409BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C07D211/46 CSP
A61K31/445
A61K9/48
A61P43/00 111
A61P13/12
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P29/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024015037
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2022577645の分割
【原出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】20199934.9
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522489118
【氏名又は名称】アザファロス ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】AZAFAROS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヘット, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ブラッター, フリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン, ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ランズクローナー, カイル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】実質的に非吸湿性である、及び/又は比較的高い融点を有する、医薬化合物の安定な及び/又は非潮解性の結晶形態を提供する。
【解決手段】結晶性遊離塩基であり、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.8±0.2°における反射を示し、17.8±0.2°における反射が、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射の1つである、結晶形態を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I)の結晶形態。
【化1】
【請求項2】
結晶性遊離塩基である、請求項1に記載の結晶形態。
【請求項3】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.8±0.2°における反射を示し、17.8±0.2°における反射が、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射の1つである、請求項1又は2の結晶形態。
【請求項4】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.2°、8.3±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、14.9±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.4±0.2°、22.9±0.2°及び23.3±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す、請求項3に記載の結晶形態。
【請求項5】
(a)89℃~96℃の融点を有し;及び/又は
(b)結晶形態が実質的に非吸湿性である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形態。
【請求項6】
X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.9±0.2°において反射を示し、16.9±0.2°における反射が、X線粉末回折パターンにおいて4つの最強反射の1つであり、任意選択で、結晶形態が、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、15.2±0.2°、16.1±0.2°、16.5±0.2°、18.9±0.2°、23.1±0.2°、25.5±0.2°、27.7±0.2°及び28.5±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す、請求項1又は2の結晶形態。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態を含む医薬組成物。
【請求項8】
カプセルに入れられており、任意選択で、
(a)他の成分を何ら含まないで;又は
(b)少なくとも1種の薬学的に許容できる担体と共に
カプセルに入れられている、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
治療に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態、又は請求項7若しくは8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態、又は請求項7若しくは8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態、又は請求項7若しくは8に記載の医薬組成物であって、任意選択で、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患が、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイーサックス病、サンドホフ病又はABバリアントなど)、シアリドーシス、ニーマンピック病C型及び動作時ミオクローヌス腎不全症候群などのリソソーム蓄積症、又は肥満、インスリン抵抗性、高脂血症、高コレステロール血症、多発性嚢胞腎、II型糖尿病及び慢性炎症などのメタボリックシンドロームとしてまとめて分類される疾患の1つの症状、又はパーキンソン病若しくはレビー小体認知症又はアテローム性動脈硬化などの神経変性障害である、結晶形態又は医薬組成物。
【請求項12】
化合物(I)の試料を溶媒と接触させるステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶形態を調製する方法であって、任意選択で、
(a)溶媒が、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、アニソール、水及びtert-ブチルメチルエーテル(TBME)から選択される;及び/又は
(b)化合物(I)の試料と溶媒との接触前に、化合物(I)の試料が精製され、任意選択で、化合物(I)の試料が、クロマトグラフィーを使用して精製される、
方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法を行うことによって得られる、化合物(I)の結晶形態。
【請求項14】
結晶形態を調製するための、化合物(I)の遊離塩基の使用。
【請求項15】
化合物(I)の遊離塩基を結晶化させることを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、化合物(I)の結晶形態
【化1】

に関する。本発明はまた、化合物(I)の結晶形態を作製する方法、及び化合物(I)の結晶形態を含む医薬組成物に関する。さらに、本発明は、医薬として、並びに異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置における、化合物(I)のこの結晶形態を使用する方法に関する。
【0002】
[発明に対する背景]
化合物の結晶状態は、該化合物が、医薬品目的で使用される場合、重要となり得る。これは、化合物の結晶状態の幾何形状、粒子サイズ、多形、溶媒和、又は水和が、医薬剤のろ過、流動、打錠、溶出及び生体利用率に影響を及ぼし得るからである。
【0003】
デオキシノジリマイシン誘導体は、医薬品化学及び創薬における、重要なクラスの分子である。N-(ヒドロキシエチル)-デオキシノジリマイシンは、2型糖尿病に関する抗糖尿病剤として、ミグリトールとして上市されている。ミグリトールはまた、いくつかの腸内グリコシダーゼ(マルターゼ、スクロース(sucrose)及びラクターゼ)の幅広い範囲の阻害剤としても作用する(Hillebrandら、Diabetes、1986年、35巻、A93~A93頁)(Scott及びSpencer、Drugs、2000年、59巻、521~549頁)。
【0004】
N-ブチル-デオキシノジリマイシン(ミグルスタット、ザベスカ(Zavesca)(登録商標))は、グルコシルセラミドシンターゼ(セラミドグルコシルトランスフェラーゼとも称される、EC2.4.1.80、UniProtコード:Q16739)の阻害剤として開発され、リソソーム貯蔵障害、ゴーシェ病(Plattら、J.Biol.Chem.、1994年、269巻、8362~8365頁)(Coxら、Lancet、2000年、355巻、1481~1485頁)及びニーマンピック病C型(Pinedaら Orphanet J.Rare Dis.、2018年、13巻、140頁)を有する患者を処置するために外来診療所で使用されている。
【0005】
国際公開第2015/147639号は、化合物(I)
【化2】

を含むデオキシノジリマイシンの新規な誘導体を記載しており、この誘導体は、異常レベルのサイトゾル若しくはリソソームグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質に関連する疾患の処置に有効である。化合物(I)は、グルコシルセラミドシンターゼ及び非リソソームグリコシルセラミダーゼ(GBA2、UniProtコード:Q9HCG7)の強力なデュアル阻害剤である。
【0006】
異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を処置するのに有用な治療用化合物は、錠剤の形態で投与されることが多い。このような錠剤において使用するための医薬組成物及び製剤を調製する場合、低レベルの吸湿性及び/又は低レベルの潮解性を有する治療用化合物の結晶形態を有して、これによって、該化合物が、所望の形状又はサイズに圧縮されることが可能となることが非常に望ましい。
【0007】
さらに、治療用化合物の融点が比較的高いこと(通常、約80℃超)が、分解に対する抵抗性に有利であり、これによって、治療用化合物の保管が容易になり、保管可能期間が増大し、これはいかなる医薬剤にとっても望ましい。
【0008】
医薬剤の取り扱い、製造及び保管を考慮した場合、治療用化合物が、非吸湿性であるか、又は実質的に非吸湿性であることがやはり特に有益である。医薬剤が、吸湿特性を示す場合、多くの問題、例えば、
粉砕によって物質を小さな粒子へと小さくすること、又は粉末にすることが困難;
適切な反応を妨害する、並びに最低品質及び保管可能期間の低下をもたらす望ましくない最終生成物を形成する、望ましくない水分;
製造中の軟質錠剤の生成、又は包装品内部の水分の浸透;
充填プロセスに影響を及ぼすおそれのある、コンベアへの粉末の付着;
が生じるおそれがある。
【0009】
したがって、非吸湿性であるか、又は実質的に非吸湿性である治療用化合物の結晶形態を有することが望ましい。
【0010】
化合物(I)の結晶形態は、以前に報告されてこなかった。したがって、好ましくは実質的に非吸湿性である、及び/又は比較的高い融点を有する、化合物(I)の安定な及び/又は非潮解性の結晶形態が必要である。
【0011】
[発明の概要]
第1の態様では、本発明は、化合物(I)の結晶形態
【化3】

を提供する。本明細書で定義されている各態様又は実施形態は、それとは反対のことが明確に示されていない限り、任意の他の態様(複数可)又は実施形態(複数可)と組み合わされてもよい。特に、好ましい又は有利であると示されているいずれの特徴も、好ましい又は有利と示されている他のいずれの特徴(単数又は複数)と組み合わされてもよい。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態を含む医薬組成物を提供する。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、治療に使用するための本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置に使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物に関する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、ニーマンピック病C型の処置に使用するための本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む、ヒト又は動物患者における、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患を処置する方法を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、それを必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む、ヒト又は動物患者における、ニーマンピック病C型を処置する方法を提供する。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、化合物(I)の試料を溶媒に接触させるステップを含む、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態を調製する方法を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される方法を行うことによって得られる、化合物(I)の結晶形態を提供する。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、化合物(I)の結晶形態を調製するために化合物(I)の遊離塩基の使用を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、化合物(I)の遊離塩基を結晶化させるステップを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法を提供する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、化合物(I)の遊離塩基を結晶化させるステップを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法によって得られる化合物(I)の結晶形態を提供する。
【0024】
本発明による化合物の他の好ましい実施形態は、本明細書全体、特に実施例に見られる。
【0025】
本発明者らは、安定で非潮解性の化合物(I)の結晶形態を驚くべきことに発見した。本発明は、実質的な吸湿性の欠如、及び比較的高い融点などの、追加的な有利な特性を有する。
【0026】
予想外なことに、本発明者らは、水に良好な溶解度を示す、化合物(I)の結晶形態をさらに発見した。これらの特性によって、本発明の結晶形態は、医薬組成物において使用するのに特に好適なものとなる。
【0027】
治療用化合物の結晶化は、異なる塩の使用を含むことが多い。通常、塩は、容易に結晶化を受け、得られた物質は、治療用化合物のその後の結晶化を容易にする。この理由のため、塩の使用は、治療用化合物を結晶化するための好ましい方法であることが多い。したがって、本発明者らが、化合物(I)の結晶性遊離塩基形態を発見したことは驚くべきことである。
【0028】
治療用化合物のいずれの結晶性の遊離塩基形態も、対イオンの存在を必要としないので、遊離塩基の結晶形態の粉末中の治療用化合物の濃度は、対応する塩形態中よりも通常、高く、このことは、治療用化合物を製造する費用が削減されるので、非常に有益である。
【0029】
理論によって拘泥されることを望むものではないが、本発明の結晶形態は、それらの結晶構造のために、上で議論した有利な効果を示す傾向があると考えられる。
【0030】
本発明のこれらの態様及び他の態様を、添付の図面を参照しながらこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2と呼ばれる、化合物(I)の結晶形態の偏光光学顕微鏡法を使用して得られた例示的な画像を示す図である;左:乾燥粉末として、右:パラフィン油中の分散体。
図2】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2のX線粉末回折パターンを示す図である。
図3A】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2のTG-FTIRサーモグラムを示す図である。
図3B】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図4A】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2の動的蒸気吸着(DVS)等温線を示す図である:時間の関数としての水分含量(赤色曲線)及び相対湿度(青色曲線)の変化。
図4B】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態2のDVS等温線を示す図である:相対湿度の関数としての水分含量の変化。
図5】それぞれ、アセトニトリル、アニソール又は酢酸エチルとの平衡によって得られた、形態3と呼ばれる、化合物(I)の結晶形態の偏光光学顕微鏡法を使用して得られた例示的な画像を示す図である。
図6A】アセトニトリルとの平衡によって得られた、形態3のX線粉末回折パターンを示す図である。
図6B】それぞれ、TBME、水、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル又はアニソールとの平衡によって得られた、形態3のX線粉末回折パターンを重ね合わせたものを示す図である。
図7】アセトニトリルとの平衡によって得られた、化合物(I)の2つの結晶形態のX線粉末回折パターンを重ね合わせたものを示す図である: 1)形態3(実施例3)、及び 2)形態2(実施例2)。
図8A】酢酸エチルとの平衡によって得られた、形態3のTG-FTIRサーモグラムを示す図である。
図8B】イソプロパノールとの平衡によって得られた、形態3のTG-FTIRサーモグラムを示す図である。
図8C】酢酸エチルとの平衡によって得られた、形態3のDSCサーモグラムを示す図である。
図9A】酢酸エチルとの平衡によって得られた、形態3のDVS等温線を示す図である:時間の関数としての水分含量(赤色曲線)及び相対湿度(青色曲線)の変化。
図9B】酢酸エチルとの平衡によって得られた、形態3のDVS等温線を示す図である:相対湿度の関数としての水分含量の変化。
図10】定位座標を示す、Paxinos&Franklin「The Mouse Brain Atlas、第2版」に基づく区分分けプロトコールに従って得られた、中矢状レベルの近似を示す図である。
図11】生後(PND)11日目と9週目との間のマウス体重の百分率変化率を示すグラフである。
図12】PND11~70の反復経口投与後の、グルコシルセラミドC16:0及びC18:0レベルを示すグラフである。
図13】NPC(-/-)ビヒクル及びAZ-3102処置マウスにおける、PND56~70の臨床的兆候のスコアを示す図である。
図14】NPC(-/-)ビヒクル及びAZ-3102処置マウスにおける、PND56~70の振戦スコアを示す図である。
図15】関心領域(ROI)の定義を示す図である。画像は、小脳、海馬体、脳梁及び線条体(尾状被殻)のROIの輪郭を示す。
図16】脳免疫組織化学を示す図である:NPC(+/+、野生型マウス)及びNPC(-/-)処置マウスと比較した、NCP(-/-)及びNPC(+/-)ビヒクル処置マウスにおける、カルビンジン-D28k標識を示す。
図17】化合物(I)(AZ-3102)の結晶形態の作用機序を要約した図である。
【0032】
[発明の詳細な説明]
特に定義しない限り、本発明に関連して使用されている科学用語及び技術用語は、当業者により一般に理解されている意味を有するものとする。しかし、上記の用語の意味及び範囲は、いかなる潜在的な曖昧さのある事象においても明確であるべきであり、本明細書において提供されている定義は、いかなる辞書の定義又は付帯的な定義よりも優先する。
【0033】
「a」、「an」及び「the」などの単数の前に付く語は、便宜上、使用されていることが多いが、単数のすべての場合が、明示的に又は文脈からのどちらからも特に指示がない限り、複数形を包含することが意図されていることを理解すべきである。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」は、包括的なものであることが意図されており、列挙されている要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味する。さらに、学術論文、書籍、特許、技術書類などを含めた、本開示において明記されている、参考文献はすべて、その全体が参照により、及びすべての目的のため組み込まれていることを理解すべきである。
【0034】
用語「約」は、数値データに関して本明細書において使用する場合、基礎となるパラメータの10%以内(すなわち、プラス又はマイナス10%)の値を指し、一連の値の始めの用語「約」の使用は、その値の各々を修飾している(すなわち、「約1、2及び3」とは、約1、約2及び約3を指す)。例えば、「約85℃」の温度は、75℃と95℃との間の温度を含むことができる。
【0035】
当分野における用語「融点」。用語「比較的高い融点」とは、本明細書において使用する場合、医薬組成物として製剤化するのに十分に安定な結晶形態を包含することが意図される。好ましくは、用語「比較的高い融点」は、約65℃より高い融点であることを記載する。さらにより好ましくは、融点は、約80℃より高い。
【0036】
用語「組成物」は、本明細書において使用する場合、指定した成分を指定量で含む生成物、及び指定した成分の指定量での組合せ物から直接的に又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図されている。医薬組成物に関するこのような用語は、化合物(I)の結晶形態、及び任意選択で、担体を構成する追加成分、並びに任意の2種以上の成分の組合せ物、複合体形成物又は凝集物に、或いは1つ若しくは複数の成分の解離に、或いは1つ若しくは複数の成分の他のタイプの反応又は相互作用に、直接又は間接的に起因する、任意の生成物を含む、生成物を包含することが意図されている。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の結晶形態、及び任意選択で薬学的に許容できる担体を含む、任意の組成物を包含する。「薬学的に許容できる」とは、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合しなければならず、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。
【0037】
用語「治療有効量」は、疾患を処置するため、患者に投与されると、疾患に対してこのような処置を行うのに十分な結晶形態又は医薬組成物の量を意味する。「治療有効量」は、疾患及びその重症度、並びに処置される患者の年齢及び体重に応じて様々となろう。用語「患者」(又は「対象」)には、以下に限定されないが、例えば哺乳動物などの動物が含まれる。好ましくは、患者はヒトである。
【0038】
本発明は、化合物(I)の結晶形態
【化4】

を提供する。化合物(I)の結晶形態は、任意の結晶状態にあってもよい。化合物(I)の結晶形態は、結晶性塩又は結晶性遊離塩基(非イオン化形態)であってもよい。好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、結晶性遊離塩基である。さらに、化合物(I)は、共結晶を形成することがある。
【0039】
化合物(I)の結晶形態が結晶性塩である場合、上記の化合物(I)の分子構造は、プロトン化された窒素原子を含む。
【0040】
本発明は、化合物(I)の単一結晶形態に限定されない。固体物質は、1種超の結晶形態で存在してもよい。これらの代替的な結晶形態は、多形と称される。多形はそれぞれ、結晶格子中の分子の異なる配向性及び/又はコンフォメーションを有する。それぞれの結晶状態又は「多形」は結晶構造中の差異のために、固有の一連の物理化学特性を示す。
【0041】
多形形態は、流動性及び圧縮性などの、異なる機械特性を有することがあり、これらは、化合物の工業的な特性に影響を及ぼす。化合物の保管の安定性及び期間も、多形に依存することがある。
【0042】
多形は、様々な方法で、互いに区別することができる。多形は、分光学的特性を明確に示し、分光学的特性は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法及び13С-NMR分光法を使用して決定することができる。各結晶形態が、異なった方向にX線を屈折するということを鑑みると、X線粉末回折(XPD)もまた、多形を特徴付けるために使用することができる。さらに、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TTA)などの熱的方法は、特定の多形に関する特有の情報をもたらすことができる。
【0043】
粉末X線回折の分野において周知の通り、粉末X線回折スペクトルの相対ピーク高さは、異なる結晶形態を説明するために使用することができる。したがって、「形態3」の態様では、本発明は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.8±0.2°における反射を示す化合物(I)の結晶形態を提供し、17.8±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射の1つである。好ましくは、17.8±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける3つの最強反射の1つであるか、又は17.8±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける2つの最強反射の1つである。より好ましくは、17.8±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける最強反射である。さらにより好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.8±0.1°における反射を示し、17.8±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射の1つである。好ましくは、17.8±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける3つの最強反射の1つであるか、又は17.8±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける2つの最強反射の1つである。より好ましくは、17.8±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける最強反射である。
【0044】
用語「最強反射」は、X線粉末回折パターンの最高ピークについて記述する。粉末X線回折パターンのピークの高さは、X線強度(カウント又はカウント/秒の単位)に基づいて決定される。したがって、最強反射とは、X線粉末回折パターンにおける、最も高いX線強度を示す反射のことである。例えば、図6A中に示されているX線回折パターンの最強反射は、2θ値として明記される、17.8±0.2°における反射である。
【0045】
それとは反対のことを明示的に明記しない限り、X線粉末回折パターンはすべて、約25℃において、銅K-アルファ放射線を使用して決定される。
【0046】
好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.2°、8.3±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、14.9±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.4±0.2°、22.9±0.2°及び23.3±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す。さらにより好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.1°、8.3±0.1°、12.4±0.1°、13.6±0.1°、14.5±0.1°、14.9±0.1°、15.2±0.1°、17.2±0.1°、19.3±0.1°、21.2±0.1°、22.4±0.1°、22.9±0.1°及び23.3±0.1°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す。
【0047】
粉末X線回折スペクトルのピークの位置は、実験詳細に比較的影響を受けない。したがって、本発明の結晶性化合物は、ある特定のピーク位置を有する粉末X線回折パターンを特徴とすることができる。したがって、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.2±0.2°、17.8±0.2°、21.2±0.2°及び22.4±0.2°における反射を好ましくは特徴とする。より好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.2°、8.3±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、14.9±0.1°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、17.8±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.4±0.2°、22.9±0.2°及び23.3±0.2°の反射を特徴とする。さらにより好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.2±0.1°、17.8±0.1°、21.2±0.1°及び22.4±0.1°における反射を特徴とする。最も好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.1°、8.3±0.1°、12.4±0.1°、13.6±0.1°、14.5±0.1°、14.9±0.1°、15.2±0.1°、17.2±0.1°、17.8±0.1°、19.3±0.1°、21.2±0.1°、22.4±0.1°、22.9±0.1°及び23.3±0.1°の反射を特徴とする。
【0048】
化合物の結晶形態は、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムによって特徴付けることができる。したがって、化合物(I)の結晶形態は、「形態3」の態様では、図8Cに見られる通り、約87℃における吸熱流の発生、及び/又は約92.4℃の融点を示す、DSCサーモグラフを好ましくは特徴とする。したがって、好ましくは、「形態3」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、DSCによって決定される通り、89℃~96℃の融点を有する。好ましくは、結晶形態は、「形態3」の態様では、DSCによって決定される通り、90℃~95℃の融点を有する。さらにより好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態3」の態様では、DSCによって決定される通り、91℃~94℃の融点を有する。最も好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態3」の態様では、DSCによって決定される通り、92℃~93℃の融点を有する。
【0049】
化合物の結晶形態は、その吸湿性によって特徴付けることができる。生成物の吸湿性は、ある特定の温度において、相対湿度の関数としての、その水分含量の増加又は減少を表す。実質的に非吸湿性生成物は、相対湿度の変化の結果として、その水分含量の変化が全くないこと、又はわずかしかないことを示す。強力な吸湿性生成物では、水分含量は広く変わり得る。したがって、好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、実質的に非吸湿性である。
【0050】
化合物の結晶形態は、その熱重量分析トレースによって特徴付けることができる。したがって、好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、その熱重量分析トレースによって特徴付けることができる。一実施形態では、化合物(I)の結晶は、図8A又は図8Bに図示されている熱重量分析トレースを特徴付けられる。
【0051】
化合物の結晶形態はまた、その動的蒸気吸着(DVS)プロファイルによって特徴付けることができる。したがって、化合物(I)の結晶形態は、図9A及び9Bに見られる通り、そのDVSプロファイルによって好ましくは特徴付けることができる。好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、可逆性吸着/脱着プロファイルを有する。好ましくは、DVSプロファイルは、結晶形態の実質的に非吸湿性の性質を示す。
【0052】
実質的に非吸湿性の物質は、約25℃の温度で測定すると、約95%の相対湿度において、約2%未満の水吸収量を示す。好ましくは、水吸収量は、約25℃の温度で測定すると、約95%の相対湿度において、約1%未満である。水吸収量の値は、初期質量に比べた、約95%の相対湿度及び約25℃の温度において試験した結晶形態の質量増加を測定することによって得られる。
【0053】
したがって、化合物(I)の結晶形態は、約25℃の温度において、約95%の相対湿度で、0%~2%の水を好ましくは吸収する。さらにより好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、約25℃の温度において、約95%の相対湿度で、0%~1.5%の水を吸収する。最も好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、約25℃の温度において、約95%の相対湿度で、0%~1%の水を吸収する。
【0054】
さらに、本発明の結晶形態は、好ましくは安定である。例えば、約25℃において、酢酸エチル中で長期間のインキュベート(1週間)を行うと、図5に示されている通り、良好な品質の化合物(I)の結晶形態が生成した。
【0055】
「形態2」の態様では、本発明は、化合物(I)のさらなる結晶形態を提供する。この結晶形態(形態2)は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.9±0.2°に反射を示し、この場合、16.9±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射のうちの1つである。好ましくは、16.9±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける3つの最強反射の1つであるか、又は16.9±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける2つの最強反射の1つである。より好ましくは、16.9±0.2°における反射は、X線粉末回折パターンにおける最強反射である。さらにより好ましくは、結晶形態は、「形態2」の態様では、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.9±0.1°に反射を示し、この場合、16.9±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射のうちの1つである。好ましくは、16.9±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける3つの最強反射の1つであるか、又は16.9±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける2つの最強反射の1つである。より好ましくは、16.9±0.1°における反射は、X線粉末回折パターンにおける最強反射である。
【0056】
好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様ではX線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、15.2±0.2°、16.1±0.2°、16.5±0.2°、18.9±0.2°、23.1±0.2°、25.5±0.2°、27.7±0.2°及び28.5±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射を示す。さらにより好ましくは、「形態2」の態様では、化合物(I)の結晶形態は、2θ値として明記される、15.2±0.1°、16.1±0.1°、16.5±0.1°、18.9±0.1°、23.1±0.1°、25.5±0.1°、27.7±0.1°及び28.5±0.1°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射を示す。
【0057】
化合物(I)のこの結晶形態はまた、「形態2」の態様では、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.1±0.2°、16.5±0.2°、16.9±0.2°、18.9±0.2°及び23.1±0.2°における反射を特徴とすることができる。好ましくは、化合物(I)の結晶形態はまた、「形態2」の態様では、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.1±0.1°、16.5±0.1°、16.9±0.1°、18.9±0.1°及び23.1±0.1°における反射を特徴とすることができる。
【0058】
化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、図3Bに見られる通り、約58℃における吸熱流の発生及び約70℃の融点を示す、DSCサーモグラフを特徴とすることができる。したがって、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、67℃~74℃の融点を有する。好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、68℃~73℃の融点を有する。さらにより好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、69℃~72℃の融点を有する。最も好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、69℃~71℃の融点を有する。
【0059】
本出願の発明者らは、化合物(I)の結晶形態が、「形態2」態様において、水に特に可溶であることを驚くべきことに発見した。したがって、好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、約25℃で測定すると、約75mg/mL~約85mg/mLの水溶解度を有する。より好ましくは、結晶形態は、「形態2」の態様では、約25℃で測定すると、約78mg/mL~約82mg/mLの水溶解度を有する。最も好ましくは、化合物(I)の結晶形態は、「形態2」の態様では、約25℃で測定すると、約80mg/mLの水溶解度を有する。
【0060】
溶解度を測定するための方法;例えば、振とうフラスコ法、超音波照射、カラム溶出法及び紫外線又は可視分光法は、当分野で公知である。それとは反対のことが明示的に明記されていない限り、水溶解度は、振とうフラスコ法及び/又は超音波照射を使用して決定される。
【0061】
本発明はまた、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態を含む医薬組成物を提供する。
【0062】
通常、化合物(I)の結晶形態は、医薬組成物又は製剤の形態で、患者に投与される。このような医薬組成物は、以下に限定されないが、経口、局所(経皮を含む)及び非経口様式を含めた、任意の許容できる投与経路によって、患者に投与され得る。
【0063】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる担体及び1種又は複数の任意選択の成分によって、通常、調製される。必要な場合、又は所望の場合、得られた均一にブレンドされた混合物は、次に、慣用的な手順及び装置を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤、小型缶、カートリッジ、ディスペンサなどの形状にされ得るか、又はこれらに充填され得る。
【0064】
固形剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤などとして)で経口投与するよう意図されている場合、本発明の医薬組成物は、活性成分として、化合物(I)の結晶形態を通常、含む。好ましくは、本発明の医薬組成物は、化合物(I)の結晶形態を含み、他の成分を含まない。好ましくは、本明細書の医薬組成物は、カプセルに入れられる。好ましくは、本明細書の医薬組成物は、いかなる他の成分なしに、カプセルに入れられる。カプセルは、ゼラチンカプセル又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルとすることができる。代替的に、本発明の医薬組成物は、活性成分として化合物(I)の結晶形態、及び1種又は複数の薬学的に許容できる担体を含んでもよい。好適な薬学的に許容できる担体は、当業者により公知であると思われ、例えば、脂肪、水、生理食塩水、アルコール(例えば、エタノール)、グリセロール、ポリオール、グルコース溶液、増量剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、着色剤、調味剤又は着香剤、濃縮剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒又は可溶化剤、保管効果を実現する化学品、浸透圧を改変するための塩、コーティング剤又は抗酸化剤、ラクトース又はグルコースなどのサッカライド;トウモロコシ、コムギ又はコメのデンプン;ステアリン酸などの脂肪酸;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は無水リン酸カルシウムなどの無機塩;ポリビニルピロリドン又はポリアルキレングリコールなどの合成ポリマー;ステアリルアルコール又はベンジルアルコールなどのアルコール;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの合成セルロース誘導体、及びゼラチン、タルク、植物油及びアラビアガムなどの他の慣用的に使用される添加物、が挙げられる。
【0065】
化合物(I)の結晶形態を含む医薬組成物はまた、公知の送達系及び賦形剤を使用して、経皮投与又は経粘膜内投与され得る。例えば、本医薬組成物は、プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、アザシクロアルカン-2-オンなどの浸透促進剤と混合されて、パッチ剤又は類似の送達系に配合され得る。ゲル化剤、乳化剤及び緩衝剤を含めた、追加の賦形剤もまた、使用されてもよい。
【0066】
非経口投与向け注射剤は、滅菌水溶液剤又は非水溶液剤、懸濁液剤及びエマルション剤を含む。水性溶媒には、例えば、注射用蒸留水及び/又は生理食塩水を含む。非水性溶媒の例は、エタノールなどのアルコールを含む。
【0067】
好ましくは、本医薬組成物は、1種又は複数のさらなる医薬活性剤を含む。この併用療法は、一緒に製剤化されているか(例えば、単一製剤中に一緒に包装されている)、又は個別に製剤化されている(例えば、個別の単位剤形として包装されている)かのどちらかの、さらなる医薬活性剤の1種又は複数と一緒にされた、化合物(I)の結晶形態を使用することを含む。
【0068】
健常な個体では、コアのグリコスフィンゴ脂質であるグルコシルセラミドは、リソソームにおいて、酸であるグリコシルセラミダーゼ(グルコセレブロシダーゼ又はGBA1とも呼ばれる、EC3.2.1.45、UniProtコード:P04062)によって加水分解される。さらに、細胞質に存在する非リソソームグリコシルセラミダーゼ(GBA2、UniProtコード:Q9HCG7)もまた、グルコシルセラミドを処理することができる。その結果、GBA1及びGBA2のどちらも、いくつかのリソソーム貯蔵障害において観察される、精神病理学的作用に関与している。
【0069】
リソソーム貯蔵障害を有する患者では、グリコスフィンゴ脂質生合成の欠陥又は分解が起こり、グルコシルセラミド及び/又は他のグリコスフィンゴ脂質のレベルの異常をもたらす。
【0070】
化合物(I)は、標準外のレベルのサイトゾル若しくはリソソームグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質に関連する疾患の処置に有効であることが以前に示されている(国際公開第2015/147639号)。化合物(I)の結晶形態の生体利用率は、アモルファス化合物(I)の生体利用率と同等であるので、化合物(I)の結晶形態はまた、異常レベルの細胞のグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質に関連する疾患の処置にも有効である。特に、化合物(I)の結晶形態は、異常レベルのサイトゾル若しくはリソソームグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質に関連する疾患の処置に有効である。
【0071】
実施例4に示されている通り、化合物(I)の結晶形態(形態3)は、標準外レベルのサイトゾル若しくはリソソームグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質に関連する疾患の処置に有効である。具体的には、形態3は、ニーマンピック病C型マウスにおいて、臨床的兆候を改善することが示された。
【0072】
したがって、本発明は、治療に使用するための本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0073】
本発明はまた、医薬として使用するための本明細書に記載される結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0074】
好ましくは、本発明は、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置に使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。好ましくは、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患は、ゴーシェ病(1、2及び3型)、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイーサックス病、サンドホフ病及びABバリアントなど)、シアリドーシス、ニーマンピック病C型及び動作時ミオクローヌス腎不全症候群などのリソソーム蓄積症、又は肥満、インスリン抵抗性、高脂血症、高コレステロール血症、多発性嚢胞腎、II型糖尿病及び慢性炎症などのメタボリックシンドロームとしてまとめて分類される疾患の1つの症状、又はパーキンソン病若しくはレビー小体認知症又はアテローム性動脈硬化などの神経変性障害である。さらにより好ましくは、化合物(I)の結晶形態、又は化合物(I)の結晶形態を含む医薬組成物は、GM1ガングリオシドーシス及び/又はGM2ガングリオシドーシス(テイーサックス病、サンドホフ病及びABバリアントなど)を処置するのに有用である。
【0075】
さらにより好ましくは、本発明は、ニーマンピック病C型の処置に使用するための本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明は、サンドホフ病の処置に使用するための本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0077】
本発明は、ヒト又は動物患者における、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む、方法を提供する。
【0078】
本発明は、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の症状の軽減に使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0079】
さらにより好ましくは、本発明は、ニーマンピック病C型の症状の軽減に使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0080】
本発明は、サンドホフ病の症状の軽減に使用するための、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0081】
本発明は、それを必要とする患者に、治療有効量の本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態、又は本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含む、ヒト又は動物患者における、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の症状を軽減する方法を提供する。
【0082】
化合物(I)の結晶形態(例えば、形態3)は、様々な臨床的兆候、例えば:
1)疾患関連性の体重減少;
2)振戦;及び/又は
3)失調性歩行
を改善するために使用することができる。
【0083】
実施例4において示されている通り、化合物(I)の結晶形態(例えば、形態3)は、脳に効果的に浸透する。したがって、化合物(I)の結晶形態(例えば形態3)は、脳に起因する疾患若しくは疾患症状を処置又は軽減するために使用され得る。例えば、化合物(I)の結晶形態(例えば、形態3)は、小脳プルキンエ細胞消失を予防又は低減するために使用され得る。化合物(I)の結晶形態(例えば、形態3)は、ニューロン死を予防又は低減するために使用され得る。化合物(I)の結晶形態(例えば、形態3)は、脳委縮を予防又は低減するために使用され得る。
【0084】
異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置における、化合物(I)の結晶形態の有効性の高さは、グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)及び非リソソームグルコシルセレブロシダーゼ(GBA2)に対する、化合物(I)の結晶形態の高い効力に起因していることが理解される。
【0085】
本明細書に記載される方法は、インビトロ方法であってもよく、又はインビボ方法であってもよい。
【0086】
投与は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、溶液剤などの経口投与、又は関節内、静脈内及び筋肉内注射などの注射剤などの非経口投与、坐剤、眼科用溶液剤、眼用軟膏剤、又は経皮液体調製物、軟膏剤、経皮パッチ剤、経粘膜液体調製物、経粘膜パッチ剤、吸入剤などの外部使用向け薬剤のいずれかによって行われ得る。
【0087】
経口投与では、1日用量は、一般に、1回分量で、又は2~4回の個別の分量で投与される、体重1kgあたり、約0.0001~10mg、好ましくは0.001~1mg又は0.005~5mg、及びより好ましくは0.01~0.5mgである。例えば、70kgのヒト患者の場合、経口投与のための最適な1日用量は、約0.01~30mg/日である。静脈内投与の場合、1日用量は、1日1回、又は1日2回以上で、体重1kgあたり、約0.00001~10mgで好適に投与される。さらに、経粘膜剤は、1日1回、又は1日2回以上で、体重1kgあたり、約0.0001~10mgの用量で投与される。用量は、症状、年齢及び性別などを考慮に入れることによって、個々の場合に応答して、適切に決定される。
【0088】
異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患(例えば、ニーマンピック病C型)の処置における、化合物(I)の結晶形態の効力は、非常に高く、必要な用量が比較的少ないので、化合物(I)の結晶形態は、このような疾患を処置するための公知化合物、例えば、ミグリトール(用量1200mg/kg/日)より少ない副作用しか生じない。
【0089】
本発明はまた、化合物(I)の試料を溶媒に接触させるステップを含む、本明細書に記載される結晶形態を調製する方法を提供する。好ましくは、溶媒は、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、アニソール、水及びtert-ブチルメチルエーテル(TBME)から選択される。さらにより好ましくは、溶媒は、酢酸エチル、アセトニトリル又はイソプロパノールである。好ましくは、化合物(I)の試料と溶媒との接触前に、化合物(I)の試料は、ホウ酸エステルを除去するために精製される。好ましくは、化合物(I)の試料は、クロマトグラフィーを使用して精製される。さらにより好ましくは、化合物(I)の試料は、シリカゲルクロマトグラフィーカラムを使用して精製される。さらに、及び/又は代替として、化合物(I)の試料は、メタノールとの蒸留によって精製される。
【0090】
化合物(I)の形態3の結晶形態は、以下の例示的な方法のうちのいずれか1つによって得ることができる:
1)約74mgの化合物(I)及び2.0mlのアセトニトリルの混合物を、20℃~30℃、例えば、約25℃の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る;
2)約74mgの化合物(I)及び2.0mlのアニソールの混合物を、20℃~30℃、例えば、約25℃の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る;
3)約82mgの化合物(I)及び1.0mlの酢酸エチルの混合物を、20℃~30℃、例えば、約25℃の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る;
4)約82mgの化合物(I)及び1.0mlのイソプロパノールの混合物を、20℃~30℃、例えば、約25°の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る;
5)約45mgの化合物(I)及び1.0mlの水の混合物を、20℃~30℃、例えば、約25°の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る;
6)約100mgの化合物(I)及び3.0mlのTBMEの混合物を、20℃~30℃、例えば、約25°の範囲の温度で3日間、撹拌し、次に、ろ過して、化合物(I)の結晶形態を得る。
【0091】
好ましくは、化合物(I)と溶媒との混合前に、化合物(I)の試料は、ホウ酸エステルを除去するために精製される。好ましくは、化合物(I)の試料は、クロマトグラフィーを使用して精製される。さらにより好ましくは、化合物(I)の試料は、シリカゲルクロマトグラフィーカラムを使用して精製される。さらに、及び/又は代替として、化合物(I)の試料は、メタノールとの蒸留によって精製される。
【0092】
ろ過法は、当業者に公知であり、以下に限定されないが、ろ紙によるろ過、及び焼結ガラスによるろ過が含まれる。
【0093】
本明細書に記載される化合物(I)の形態3の生成方法は、使用される試薬の同様の比を維持しながら、大規模で行うことができる。例えば、化合物(I)の形態3の結晶形態は、20℃~30℃、例えば、約25℃の範囲の温度において、3日間、化合物(I)と酢酸エチルとの混合物を、1mLに対して0.05~1gの間の比[酢酸エチルに対する化合物(I)]で撹拌し、次にろ過して、化合物(I)の結晶形態を得ることができる。
【0094】
本明細書に記載される化合物(I)の形態3を得る方法は、非常に効率が高い。本明細書に記載される方法の収率は、通常70%(最初に使用した化合物(I)の量に対して、得られた形態3の量の重量比として)より高い。好ましくは、本明細書に記載される方法の収率は75%より高い。
【0095】
好ましくは、形態2の結晶形態は、形態3の結晶形態の形成前の中間体として形成される。
【0096】
好ましくは、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.1±0.2°、16.5±0.2°、16.9±0.2°、18.9±0.2°及び23.1±0.2°の反射を特徴とする形態2の結晶形態は、X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.2±0.2°、17.8±0.2°、21.2±0.2°及び22.4±0.2°における反射を特徴とする形態3の結晶形態の形成前の中間体として形成される。
【0097】
本発明はまた、本明細書に記載される方法を行うことによって得られる、化合物(I)の結晶形態を提供する。
【0098】
本発明はまた、化合物(I)の結晶形態を調製するために化合物(I)の遊離塩基の使用を提供する。
【0099】
本発明はまた、化合物(I)の遊離塩基を結晶化させるステップを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法を提供する。
【0100】
本発明はまた、化合物(I)の遊離塩基を結晶化させるステップを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法によって得られる化合物(I)の結晶形態を提供する。
【0101】
他の利点のうち、化合物(I)の結晶形態の形成は、化合物(I)を精製するのに有用であると考えられる。例えば、本明細書に記載される方法によって得られた化合物(I)の結晶形態は、90%より高い、通常、95%より高い純度を有する。
【0102】
上述の詳細説明は、説明及び例示によって提示され、添付の特許請求の範囲を限定することが意図されるものではない。本明細書において例示されている現在、好ましい実施形態における多数の変形形態が、当業者に明白であり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に依然としてある。
【0103】
本発明は、以下の条項においてさらに開示される:
1. 化合物(I)の結晶形態。
【化5】
【0104】
2. 結晶性遊離塩基である、条項1の結晶形態。
【0105】
3. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.8±0.2°において反射を示し、17.8±0.2°における反射が、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射のうちの1つである、条項1又は条項2の結晶形態。
【0106】
4. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、4.1±0.2°、8.3±0.2°、12.4±0.2°、13.6±0.2°、14.5±0.2°、14.9±0.2°、15.2±0.2°、17.2±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.4±0.2°、22.9±0.2°及び23.3±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す、条項3の結晶形態。
【0107】
5. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、17.2±0.2°、17.8±0.2°、21.2±0.2°及び22.4±0.2°における反射を特徴とする、条項1~4のいずれか1つの結晶形態。
【0108】
6. 89℃~96℃の融点を有する、条項1~5のいずれか1つの結晶形態。
【0109】
7. 92℃~93℃の融点を有する、条項1~6のいずれか1つの結晶形態。
【0110】
8. 実質的に非吸湿性である、条項1~7のいずれか1つの結晶形態。
【0111】
9. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.9±0.2°において反射を示し、16.9±0.2°における反射が、X線粉末回折パターンにおける4つの最強反射のうちの1つである、条項1又は条項2の結晶形態。
【0112】
10. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、15.2±0.2°、16.1±0.2°、16.5±0.2°、18.9±0.2°、23.1±0.2°、25.5±0.2°、27.7±0.2°及び28.5±0.2°のうちの1つ又は複数において、1つ又は複数の反射をさらに示す、条項9の結晶形態。
【0113】
11. X線粉末回折パターンにおいて、2θ値として明記される、16.1±0.2°、16.5±0.2°、16.9±0.2°、18.9±0.2°及び23.1±0.2°における反射を特徴とする、条項1、2、9又は10のいずれか1つの結晶形態。
【0114】
12. 67℃~74℃の融点を有する、条項9~11のいずれか1つの結晶形態。
【0115】
13. 69℃~71℃の融点を有する、条項9~12のいずれか1つの結晶形態。
【0116】
14. 75mg/mL~85mg/mLの水溶解度を有する、条項9~13のいずれか1つの結晶形態。
【0117】
15. 条項1~14のいずれか1つの結晶形態を含む医薬組成物。
【0118】
16. カプセルに入れられている、条項15の医薬組成物。
【0119】
17. 他の成分を何ら含まないでカプセルに入れられている、条項16の医薬組成物。
【0120】
18. 少なくとも1種の薬学的に許容できる担体を含む、条項15又は条項16の医薬組成物。
【0121】
19. 治療に使用するための、条項1~14のいずれか1つの結晶形態、又は条項15~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0122】
20. 医薬として使用するための、条項1~14のいずれか1つの結晶形態、又は条項15~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0123】
21. 異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患の処置に使用するための、条項1~14のいずれか1つの結晶形態、又は条項15~18のいずれか1つの医薬組成物。
【0124】
22. 異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患が、ゴーシェ病、ファブリー病、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス(テイーサックス病、サンドホフ病及びABバリアントなど)、シアリドーシス、ニーマンピック病C型及び動作時ミオクローヌス腎不全症候群などのリソソーム蓄積症、又は肥満、インスリン抵抗性、高脂血症、高コレステロール血症、多発性嚢胞腎、II型糖尿病及び慢性炎症などのメタボリックシンドロームとしてまとめて分類される疾患の1つの症状、又はパーキンソン病若しくはレビー小体認知症又はアテローム性動脈硬化などの神経変性障害である、条項21の使用のための結晶形態又は医薬組成物。
【0125】
23. 疾患が、GM1ガングリオシドーシス又はGM2ガングリオシドーシス(テイーサックス病、サンドホフ病又はABバリアントなど)である、条項21又は条項22の使用のための結晶形態又は医薬組成物。
【0126】
24. ヒト又は動物患者における、異常レベルのグルコシルセラミド及び/又は一層高いレベルのグリコスフィンゴ脂質を含む疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の条項1~14のいずれか1つの結晶形態、又は条項15~18のいずれか1つの医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
【0127】
25. 化合物(I)の試料を溶媒に接触させるステップを含む、条項1~8のいずれか1つの結晶形態を調製する方法。
【0128】
26. 溶媒が、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、アニソール、水及びtert-ブチルメチルエーテル(TBME)から選択される、条項25の方法。
【0129】
27. 化合物(I)の試料と溶媒との接触前に、化合物(I)の試料が精製される、条項25又は条項26の方法。
【0130】
28. 化合物(I)の試料が、クロマトグラフィーを使用して精製される、条項27の方法。
【0131】
29. 化合物(I)の試料が、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して精製される、条項28の方法。
【0132】
30. 精製後に、化合物(I)の試料がホウ酸エステルを含まない、条項27~29のいずれか1つの方法。
【0133】
31. 条項9~14のいずれか1つの結晶形態が、条項1~8のいずれか1つの結晶形態の形成前に、中間体として形成される、条項25~30のいずれか1つの方法。
【0134】
32. 条項25~31のいずれか1つの方法を行うことにより得られる、化合物(I)の結晶形態。
【0135】
33. 結晶形態を調製するための、化合物(I)の遊離塩基の使用。
【0136】
34. 化合物(I)の遊離塩基を結晶化させることを含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法。
【0137】
35. 条項34の方法によって得られる、化合物(I)の結晶形態。
【0138】
36. 以下のステップ:
I. 精製カラムに化合物(I)を添加して、化合物(I)の精製済み試料を生成するステップ;
ii. 化合物(I)の精製済み試料に溶媒を加え、溶媒中の化合物(I)の懸濁液を生成するステップ;
iii. 溶媒中の化合物(I)の懸濁液を撹拌し、化合物(I)の結晶形態を生成するステップ;及び
iv. 化合物(I)の結晶形態を分離し、化合物(I)の結晶形態の純粋な試料を生成するステップ
を含む、化合物(I)の結晶形態を調製する方法。
【0139】
37. 化合物(I)の精製済み試料が、ホウ酸エステルを含まない、条項36の方法。
【0140】
38. 溶媒が、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、アニソール、水及びtert-ブチルメチルエーテル(TBME)から選択される、条項36又は37の方法。
【0141】
39. ステップiiが、25~35℃の間の温度で行われる、条項36~38のいずれか1つの方法。
【0142】
40. ステップ(iii)における撹拌が、20~35℃の間の温度で行われる、条項36~39のいずれか1つの方法。
【0143】
41. ステップ(iii)における撹拌が、少なくとも1時間行われる、条項36~40のいずれか1つの方法。
【0144】
42. ステップ(iii)における撹拌が、少なくとも16時間行われる、条項41の方法。
【0145】
実験のセクション
示差走査熱量測定(DSC)は、TA Instruments Q2000の機器を用いて行った(密閉したアルミニウム製試料パン又は蓋にピンホールを有するアルミニウム製試料パン、昇温速度20K/分)。融点は、ピーク最大値として理解される。
【0146】
動的蒸気吸着(DVS)測定は、ProUmid(以前の「Projekt Messtechnik」)、August-Nagel-Str.23、89079Ulm(ドイツ)製のSPS11-100n「Sorptions Pruefsystem」を用いて行った。約5mg~20mgの試料をアルミニウム製試料パンに入れた。1時間あたり5%の湿度変化率を使用した。適用した測定プログラムは、以下の通りに記載することができる:
試料をマイクロ天秤の上部のアルミニウム製又は白金製ホルダーに置き、予め規定した湿度プログラムを開始する前に、50%の相対湿度(RH)で平衡にした。
(1)50%RHで2時間
(2)50→0%RH(5%/時);0%RHで5時間
(3)0→95%RH(5%/時);95%RHで5時間
(4)95→0%RH(5%/時);0%RHで5時間
(5)0→95%RH(5%/時);95%RHで5時間
(6)95→50%RH(5%/時);50%RHで2時間
【0147】
粉末X線回折は、Cu-Kα放射線で操作するMythen1K検出器を装備した、Stoe Stadi P回折計を用いて実施した。この機器を用いた測定は、40kVの管電圧及び40mAの管出力での透過で行った。曲面状のGeモノクロメータにより、Cu-Kα放射線を用いる試験が可能となる。以下のパラメータを設定した:0.02° 2θのステップサイズ、12秒のステップ時間、1.5~50.5° 2θの走査範囲、及び1° 2θ検出ステップ(ステップ走査での検出器モード)。典型的な試料調製に関すると、約10mgの試料を、2枚のアセテートホイル間に置き、Stoe透過試料ホルダーに装着した。測定中は試料を回転させた。試料調製及び測定はすべて、周囲空気雰囲気(約25℃)中で行った。
【0148】
おおよその溶解度は、約10mgの化合物に溶媒を徐々に添加し、その後に、短時間、振とう及び/又は超音波照射することによって決定した。物質が少なくとも、合計で10mlの溶媒の添加によって溶解しない場合、この溶解度は、<1mg/mlとして表示する。実験は、約25℃で行った。
【0149】
熱重量測定(TG-FTIR)は、Bruker FTIR分光計ベクター22に連結した、Netzsch Thermo-Microbalance TG209を用いて実施した(ピンホールを有する試料パン、N雰囲気、昇温速度10℃/分)。
【0150】
[実施例]
以下の非限定な実施例により、本発明がさらに例示される。
【0151】
実施例1 - 結晶性塩の形成
化合物(I)の結晶形態を得る試みで、化合物(I)に関する、ハイスループット塩スクリーニングプログラムを、6種の異なる条件下、表1に特定されている16種の様々な塩形成剤を用いて行った。
【0152】
最初のスクリーニング実験は、アセトン中の化合物(I)の0.05M溶液を、石英製96-マイクロタイタープレートの各ウェルに加え、次いで、0.1Mの濃度の塩形成剤保存溶液を添加することによって行った。溶媒を、室温において、窒素流下、各ウェルから蒸発させた。ウェル中の固体残留物は、偏光光学顕微鏡法によって検討した。
【表1】
【0153】
この初期実験の目的は、化合物(I)と塩形成剤とが1:1の比を得ることであるが、光学顕微鏡法検討により、結晶形態の形成に好適な実験条件のいくつかが明らかになった。例えば、ベンゼンスルホン酸、塩酸、DL-マンデル酸、L-酒石酸、リン酸及び硫酸と混合された化合物(I)は、結晶性残留物を形成した。
【0154】
さらなるスクリーニング実験では、6種の溶媒系、すなわちアセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール-水(3:1)混合物及びアセトン/水(9:1)混合物を選択した。スラリーを平衡にするため、200μLの溶媒を各ウェル中の残留物に加えた。そのように調製したマイクロタイタープレートを、室温(約25℃)において、1日間、400rpmでかき混ぜた。次に、溶媒を窒素流下で蒸発させて、得られた固体残留物を偏光光学顕微鏡法によって検討した。
【0155】
光学顕微鏡法の検討に基づいて、塩になる可能性に関する糸口が、ベンゼンスルホン酸、ゲンチジン酸、塩酸、L-乳酸、D-マンデル酸、リン酸、L-酒石酸及びトルエンスルホン酸の場合に見出された。最も有望な糸口のいくつかを、50~200mgのスケール(スケールアップ実験)で経過観察実験のために選択した。
【0156】
すべての試験条件に関するスケールアップ実験により、化合物(I)のアモルファス形態又は化合物(I)の液晶塩(liquid crystalline salt)が形成した。顕微鏡試験により、多くの場合、複屈折があることが明らかになった一方、得られた混合物のろ過は不可能であり、いずれの実験でも固体物質を回収することができなかった。
【0157】
要約すると、塩形成剤を用いた実験はすべて、化合物(I)の結晶形態を生成しなかった。
【0158】
実施例2 - 形態2の結晶形態
実施例1における実験は、有用な結晶性物質をもたらさなかったので、化合物(I)の遊離塩基形態を検討した。
【0159】
化合物(I)は、シリカゲルカラムを使用して精製しホウ酸エステルを除去し、その後にアセトニトリル中で短時間(約1~5分間)、平衡にした。アセトニトリル中の精製化合物(I)の溶解度は、5mg/mL~8mg/mLの間と求まった。他の溶媒中での精製化合物(I)の溶解度も試験し、表2に提示する。これらの値は、約10mgの固体化合物(I)に少量の一定分量の溶媒を添加し、室温(約25℃)で短時間、振とう/超音波処理することによって決定した。
【表2】
【0160】
アセトニトリル中の短時間(約1~5分)の平衡から生じた化合物(I)の形態2の結晶形態を、偏光光学顕微鏡法、粉末X線回折(PXRD)実験、TG-FTIR、示差走査熱量測定(DSC)及び動的蒸気吸着(DVS)によって試験した。
【0161】
偏光光学顕微鏡法の検討の結果が図1に示されている一方、PXRDパターンが、図2に図示されている。化合物(I)のこの形態2の結晶形態は、16.1±0.2°、16.5±0.2°、16.9±0.2°、18.9±0.2°及び23.1±0.2°の2θ値において最強反射を示す。
【0162】
アセトニトリル中での短時間の平衡から得られた、化合物(I)の形態2の結晶形態の熱重量分析による物性評価の結果(TG-FTIRサーモグラム)を、図3Aに見ることができる一方、DSCの結果は、図3Bに示されている。これらの結果により、この試料は約0.5%の水を含有し、この水は、約120℃までの昇温時に放出されることが明らかにされる。より高い温度では、熱分解が観察される。DSCにより、2つの顕著な吸熱事象があることが明らかになった。約70℃のピーク温度及び約54J/gのエンタルピーでの最初の強力な吸熱があり、81℃のより弱いシグナル及び約3J/gのエンタルピーが続く。
【0163】
さらに、結晶性遊離塩基試料の挙動を、様々な水蒸気圧下で検討した。高い相対湿度では、試料は、約18%の水を吸収した。しかし、吸収された水の大部分は、相対湿度が50%RHに戻ると放出された。DVS測定からの結果が、図4A及び4Bに提示されている。
【0164】
実施例2の部分として得られた化合物(I)の結晶形態の特徴の要約が、表3に提示されている。
【表3】
【0165】
化合物(I)の得られた形態2の結晶形態は、低い安定性を有しており、約1~5分間の温度上昇(約30℃超)に曝露させると、化合物(I)のさらなる形態3の結晶形態に遷移した。代替的に、溶媒(例えば、アセトン)中、5分間より長く約25℃で平衡にすると、形態2は形態3に遷移した。化合物(I)のこのようなさらなる遊離塩基形態3は、良好な安定性及び特有の一連の物理化学特性を有した。
【0166】
実施例3 - 形態3
独立して、化合物(I)の安定な結晶形態を、様々な個々の溶媒中で、例えば、それぞれ、アセトニトリル、酢酸エチル、イソプロパノール、アニソール、水又はTBME中、室温(約25℃)において、精製化合物(I)の懸濁液平衡実験から得た。
【0167】
特に、化合物(I)の形態3の結晶形態は、以下の実験方法によって得られた:
1)約74mgの化合物(I)を2.0mlのアセトニトリルに加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した;
2)約74mgの化合物(I)を2.0mlのアニソールに加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した;
3)約82mgの化合物(I)を1.0mlの酢酸エチルに加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した;
4)約82mgの化合物(I)を1.0mlのイソプロパノールに加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した;
5)約45mgの化合物(I)を1.0mlの水に加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した;
6)約100mgの化合物(I)を3.0mlのTBMEに加え、この懸濁液を室温(約25℃)において3日間、撹拌し、次にろ過した。
【0168】
化合物(I)は、ホウ酸エステルを除去するため、溶媒を添加する前に、シリカゲルカラムを使用して精製した。
【0169】
得られた化合物(I)の結晶形態は、偏光光学顕微鏡法、粉末X線回折、TG-FTIR、DSC及びDVSによって特徴付けた。
【0170】
選択溶媒に関する偏光光学顕微鏡法検討の結果が、図5に提示されている。
【0171】
アセトニトリルとの懸濁液平衡実験から得られた化合物(I)の形態3の結晶形態のPXRDパターンが、図6Aに示されている。他の溶媒との懸濁液平衡実験から得られた化合物(I)の形態3の結晶形態のPXRDパターンを重ね合わせたものが、図6Bに示されている。化合物(I)のこの結晶形態は、17.2±0.2°、17.8±0.2°、21.2±0.2°及び22.4±0.2°の2θ値において最強反射を示す。これは化合物(I)の結晶形態を得るために、様々な溶媒を使用したにも関わらず一致する。
【0172】
比較するため、図7は、実施例2(形態2)及び本実施例(形態3)において得られた結晶形態のPXRDパターンの重ね合わせたものを示している。この2つの結晶形態は、異なるPXRDパターンを有する。
【0173】
化合物(I)の形態3の結晶形態の例示的なTG-FTIR特徴付け実験の結果が、図8A(酢酸エチル)及び8B(イソプロパノール)に示されている。
【0174】
図8Aにより、酢酸エチルとの平衡によって得られた、化合物(I)の形態3の結晶形態の試料は、40℃で数日間、真空下で乾燥したにも関わらず、約0.7%の酢酸エチルを含有したことが明らかである。酢酸エチルは、約100℃~200℃の間で放出される。より高い温度では、熱分解が観察される。
【0175】
イソプロパノール中の化合物(I)の懸濁液から得られた形態3の試料(及び、室温において、空気中で乾燥)は、最初のイソプロパノールの含有率が、0.5%未満であったことを、驚くべきことに示している(図8Bを参照されたい)。
【0176】
酢酸エチルとの平衡によって得られた化合物(I)の形態3の結晶形態の試料に関する例示的なDSC測定が、図8Cに図示されており、約92℃において、約103J/gのエンタルピーを伴う鋭い吸熱溶融ピークを示す。したがって、この実施例の部分として得られる化合物(I)の形態3の結晶形態は、実施例2からの結晶形態(形態2)よりも高い融点を有する。
【0177】
さらに、酢酸エチルとの平衡によって得られた化合物(I)の形態3の結晶形態の試料の挙動を、様々な水蒸気圧下で検討した。95%という最高の相対湿度では、試料は、約1.2%の水を吸収し、それは、相対湿度が50%RHに戻ると放出された。DVS測定からの結果が、図9A及び9Bに示されている。吸収された水の量は少なく、水の吸着は可逆的である。すなわち、化合物(I)のこのような形態3の結晶形態は、非吸湿性であるか、又は実質的に非吸湿性である。
【0178】
実施例3の部分として得られた化合物(I)の形態3の結晶形態の特徴の要約が、表4に提示されている。
【表4】
【0179】
実施例4 - ニーマンピック病C型(NPC)に罹患しているマウスへの化合物(I)の結晶形態の投与効果
実施例において、AZ-3102-00は、形態3の化合物(I)に関する名称である。
【0180】
本検討の目的
この検討の目的は、強制経口投与を使用して、AZ-3102-00の予想される薬理学的に活性な用量で、幼若NPC1(NPC(-/-))マウス(P11~P70)の処置を評価すること、並びにPK及び起こり得る神経病理学を特徴付ける組織学的マーカーを算定することであった。
【0181】
検討設計
この検討に含ませた38匹のマウスのうち、30匹のNPC(-/-)ノックアウト(KO)マウス、4匹のNPC(+/-)ヘテロ接合マウス及び4匹のNPC(+/+)野生型(WT、Balb/c)マウスが存在した。NPC1(-/-)マウスは、第1の2つの膜貫通ドメインが無傷状態にある、13の膜貫通ドメインのうちの11を欠失しているタンパク質の早発的切断を有する。ニーマンピックC1型遺伝子(Npc1m1N)の潜性NIHアレルに対するホモ接合NPC1(-/-)マウスは、スフィンゴミエリナーゼ及びグルコセレブロシダーゼ活性(JAX#003092)のデュアル欠乏を示す。動物は、BALB/c OlaHsdバックグラウンドで生育された。
【0182】
24匹のNPC1(-/-)マウスを、生後11日目(P11)から生後70日目(P70)まで、AZ-3102-00を強制経口投与することにより処置した。年齢の一致する対照マウスは、ビヒクルにより処置された6匹のNPC(-/-)及び4匹のNPC(+/-)マウスを含み、4匹のNPC(+/+)マウスが、AZ-3102-00の投与を受けた。P70における最後の処置後に、以下の時間点:30分間、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間時に、NPC(-/-)マウス(時間点あたり、n=4)を、600mg/kgのペントバルビタールのIP注射により安楽死させた。対照マウスもまた、最後の処置(時間は重要ではない)後に犠牲にした。終末部血液を、EDTAコーティングされている管に、心臓穿刺によって採取した。血漿を遠心分離(室温で10分間、3000×g)によって採集し、50μLの一定分量の血漿を、1.5mLの管に移送して、ドライアイスで凍結させ、-80℃で保管した。
【0183】
経心腔的潅流後に、脳を取り出し二等分にした。右側の半脳を事後固定し、さらなる免疫組織学的分析のため、クリオモルドに埋包した。左の半脳は、さらなる分析のため、ドライアイスで凍結した。
【0184】
脳を冷凍切片にした(それぞれ、5つの切片を有する12のレベル)。次に、2つの脳領域における、ミクログリア(MAC1)及び星状膠細胞(GFAP)の定量的免疫蛍光標識するために、動物あたり5つの切片を使用した。
【0185】
試験システム、及び試験システムの妥当性
ニーマンピック病C型(NPC)は、NPC1及びNPC2遺伝子における変異を伴う常染色体潜性神経変性障害であり、エステル化されていないコレステロール及びグリコスフィンゴ脂質(GSL)の蓄積を特徴とする。ニーマンピック病C型の症例のほぼ95%が、NPC1遺伝子における遺伝子変異によって引き起こされて、C1型と称され、5%が、NPC2遺伝子における変異によって引き起こされて、C2型と称される。ニーマンピック病C1型及びC2型の臨床兆候は、個々の遺伝子がどちらも、後期エンドソーム又はリソソームから、脂質、特にコレステロールの排出に関与しているので、類似している。NPC1遺伝子は、細胞内部の膜に位置するタンパク質をコードし、細胞内のコレステロール及び脂質の移動に関与している。このタンパク質の欠乏は、細胞膜内の脂質及びコレステロールの異常な蓄積をもたらす。NPC2遺伝子は、コレステロールに結合してこれを輸送するタンパク質をコードする。ニーマンピックC1型遺伝子の潜性NIHアレルに対するホモ接合マウスは、スフィンゴミエリナーゼとグルコセレブロシダーゼ活性とのデュアル欠乏を示す。変異体マウスは、体重が減少し始め、約7週齢において、振戦及び失調性歩行を示し始める。体重減少は続き、振戦及び運動失調症は、約12~14週齢に死亡するまで、一層、重症になる。肝臓及び脾臓もまた、肥大し、小脳中のプルキンエ細胞が、深刻に消耗される。マウスにおけるこれらの兆候の一部は、ヒトニーマンピック病C型患者の兆候と類似する。
【表5】
【0186】
化合物調製:
各投与機会において、分注することが必要な場合、用量製剤を一定分量に分割した。
【表6】
【0187】
試験物品の必要量を秤量し、Elix水(w/w)に溶解して、pHを酸性pHに調節した。さらなる賦形剤は添加しなかった。
【0188】
試験物品の比重、又は試験物品の純度/組成に関して補正は行わなかった。
【0189】
各用量の調製後、保有分の溶液を本検討の終了時に分析するために凍結した。
【0190】
方法開発及び検証検討に関連して以前に行われた安定性試験により、この検討において使用した以下の括弧内の濃度において同じ条件下で調製して保管した場合、光から保護して室温において少なくとも24時間、冷蔵(2~8℃)されて少なくとも8日間、及び本検討(0.01~2mg/mL)において使用した括弧内の濃度において、冷凍庫(≦-15℃)で少なくとも3週間、ビヒクル中では安定であることが実証された。
【0191】
動物管理
動物の収容設備
動物は、Rettenmaierによって供給された標準げっ歯類用床において、個別の換気ケージに収容した。各ケージには、最大5匹のマウスを入れた。飼育室の温度は、20~24℃に維持し、相対湿度を45~65%に維持した。動物は、一定の光サイクル(12時間の明/暗)の下で収容した。乾燥させて、ペレット化した標準品げっ歯類用飼料(Altromin)、及び通常の水道水を動物に自由摂取させた。担当の獣医師の指導に基づいてウェットフードを動物に与えた。
【0192】
同定
古典的な耳標によって、動物に連続番号を付与した。
【0193】
ケージはそれぞれ、検討番号、動物の性別、個々の登録番号(IRN)、誕生日、及び処置群の割り当てを表示する色付きカードによって識別した。各動物の遺伝子型(トランスジェニック又は野生型)は、トランスジェニック構築物に特異的なPCRによって求めた。各マウスは、検討の開始前に、耳の生検から分離したDNAを使用して遺伝子型解析を行った。
【0194】
群の割り当て
明らかに良好な健康状態にある動物だけを本検討に含ませた。群の割り当ての無作為化は、ケージごとに行った。動物は、すべての処置群の動物を含む、異なる開始群(コホート)に割り当てた。開始群中の動物数は、同じ年齢及び均質な取り扱いを確保するよう限定した。
【0195】
健康状態及びケージ側面からの観察
本検討の実施前に、個々の動物のそれぞれの健康状態を評価した。本検討の間、毎日観察を行い、任意の注目すべきケージ側面からの観察を記録し、さらなる行為(例えば、安楽死)に関して決定する検討管理者及び担当獣医に直ちに報告した。
【0196】
体重及び健康状態は、最初の1週間は毎日、及びその後は1週間に1回、記録した。
【0197】
早発的終了及び人道的エンドポイント
早発的に安楽死させなければならない動物はいなかった。
【0198】
物質及び方法:
動物
【表A】
【0199】
処置
24匹のNPC1(-/-)マウス(群D~I)は、生後11日目(P11)から生後70日目(P70)まで、AZ-3102-00を強制経口投与(10mL/kg)により処置した。投与は、P11からP25まで、1.5mg/kgで開始し、次いで、P26からP70まで、3mg/kgである。対照マウスは、ビヒクルにより処置された6匹のNPC1(-/-)及び4匹のNPC(+/+)マウスを含み、4匹のNPC(+/+)マウスが、AZ-3102-00の投与を受けた(群A~C)。
【0200】
P70における最後の処置後に、NPC(-/-)マウス(時間点あたり、n=4;群D~I)を以下の時間点:30分間、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間に、600mg/kgのペントバルビタールのIP注射により安楽死させた。対照マウス(群A、B及びC)もまた、最後の処置(時間は重要ではない)後に犠牲にした。
【表7】

組織のサンプリング
P70における最後の処置の30分(群D)、1時間(+/-5分間、群E)、2時間(+/-5分間、群F)、4時間(+/-5分間、群G)、8時間(+/-5分間、群H)及び24時間(+/-5分間、群I)(すべて時間が、重要である)後に、腹腔内注射によって安楽死させた。
【0201】
群Aの6匹のNPC1(-/-)、処置した群Bの4匹のNPC(+/-)、及び対照として働く群Cの4匹のNPC(+/+)マウスもまた、P70(最後の処置後のほぼ2時間時)に安楽死させた。
【0202】
マウスは、ペントバルビタール(600mg/kg、体重1グラムあたり、用量10μL)の腹腔内注射によって、最後に安楽死させた。
【0203】
血液サンプリング
胸郭を開き、23ゲージのニードルを用いて、心臓穿刺によって血液を採取した。ニードルを取り外し、血液を試料管(ミニコレクト(MiniCollect)(登録商標)K2EDTA(エチレンジアミン四酢酸カリウム))に移送した。管を完全に反転させて、EDTAの均質な分布を促し、凝血を防止した。血液試料を室温(22℃)で10分間、3000×gで遠心分離にかけた。50μLの一定分量の血漿を予め標識した1.5mlのLoBind Eppendorf管に移送し、ドライアイスで凍結させて、-80℃で保管した。
【0204】
潅流
次に、動物を0.9%生理食塩水により経心潅流した。この目的のため、0.9%の生理食塩水を含むボトルに連結した23ゲージのニードルを左心室に挿入した。肺と肝臓の間の胸部大動脈を止血鉗子によりクランプして、心臓から腹部への血流を遮断したが、脳への血流は許した。右心室をハサミで開いた。マノメータにより制御したエアコンプレッサに溶液ボトルを接続することによって、潅流溶液を100~120mmHgの一定圧力に維持した。頭蓋骨表面が青白くなり、血液の代わりの潅流溶液だけが右心室から排出されるまで潅流を継続した。
【0205】
脳のサンプリング
潅流後、頭蓋骨を開き、脳を注意深く取り除き、冷却表面で2等分した。左半球を秤量し、ドライアイスで急速凍結し、-80℃で保管した。右半球は、リン酸緩衝液(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドに室温で2時間、浸漬することによって、固定した。
【0206】
組織学
組織調製
マウスの右半分の脳を、新しく調製したPB(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドに室温で2時間、浸漬することによって固定した。この後、この半球を15%スクロース/PBSに移し、沈めるまで4℃に保管して、凍結保護を確実にした。次に、組織ブロックを必要に応じて切り揃え、クリオモルドに移し、OCT媒体に埋包し、ドライアイスで冷却したイソペンタン中で凍結し、超低温冷凍庫(-80℃の目標温度に設定)に保管した。
【0207】
切片化
連続する5枚の低温切片を、Leicaクリオトームで、10μmの厚さで矢面方向に裁断した。レベルあたり次の25枚の切片を廃棄した。この収集スキームを、12レベルに関して繰り返し、例えば、脳が、年齢又は遺伝子型が若いためにより小さい場合、修正して、正しいレベルから収集してもよい。合計で、12×5=60の切片を収集した。切片化のレベルは、brain atlas of Paxinos and Franklin(「The Mouse Brain in Stereotaxic Coordinates」、第2版、2001年)に準拠して選択した。切片の収集は、正中線から外側に約0.2mmのレベルで開始し、半球全体に拡張して、目標領域を介した系統的な無作為サンプリングを確実にした(図10及び15)。切片は-20℃で保管した。脳のほぼ全体を切片化し、そうして、すべての切片を収集すると、残りの組織ブロックは廃棄した。
【0208】
免疫蛍光法Exp3531(カルビンジン-D28k)
各インキュベートに関し、マウスごとに5つの切片の一様な体系的な無作為セットを選択した(レベル2、4、6、8、10からそれぞれ1つの切片);体系的な無作為サンプリングに関する情報に関しては、以下のリンクをたどること:http://www.stereology.info/sampling/
すべての工程は、特に言及しない限り、室温でダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水pH7.2~7.8(PBS)中で実施した。
【0209】
1. 低温切片を45分間、空気乾燥し、PBS中で10分間、洗浄した。
2. 非特異的結合部位は、多湿チャンバ中、0.1% TritonX-100/PBS中の10%正常ロバ血清(Jackson Immuno Research)で60分間、ブロッキングした。
3. 切片をPBS中で、それぞれ3×5分間、洗浄した。
4. 切片を、多湿チャンバ中、4℃で一晩かけて、1%正常ロバ血清/PBS中の一次抗体と共にインキュベートした。
モルモットポリクローナル抗体対カルビンジン-D28k(Synaptic Systems、214005)1:1000
5.切片をPBS中で、それぞれ3×5分間、洗浄した。
6. 切片を、多湿チャンバ(光から保護)中、60分間、1%正常ロバ血清/PBS中の二次抗体と共にインキュベートした。
ロバ抗モルモット(H+L)、Cy3-コンジュゲート(Jackson ImmunoResearch、706-165-148)、1:500
7. 切片をPBS中(光から保護)で、それぞれ3×5分間、洗浄した。
8. 切片を15分間、DAPI作業溶液と共にインキュベートした(光から保護)。
9. 切片をPBS中(光から保護)で、2×5分間、洗浄した。
10. 切片をddHO中(光から保護)で、5分間、洗浄した。
11. 切片をMowiol及びカバーガラスで覆った(光から保護)。
【0210】
イメージング
Zeiss Axiocam506mono及びHitachi 3CCD HV-F202SCLカメラ及びZeiss ZEN 2.3ソフトウェアを装備した、高開口レンズ付きのZeiss自動化顕微鏡AxioScan Z1で、染色した切片の全スライドスキャンを記録した。
【0211】
定量
画像解析は、Image Pro10(Media Cybernetics)で行った。最初に、標的領域(小脳及び海馬又は脳梁及び線条体)を、画像上の関心領域(ROI)を作図することによって特定した。追加のROIは、しわ、気泡、又は測定を妨害するいかなる他の人工物も除外する。この後、特定した領域内で、免疫蛍光法を定量的に評価した。
【0212】
定量に関すると、本発明者らは、必要な場合、バックグラウンド補正を使用し、適切な閾値処理及び形態学的フィルタリング(サイズ、形状)によって、免疫反応性対象物を検出した。次に、様々な対象物の特徴:それらの中で、ROIサイズに基づく累積対象物領域の百分率(免疫反応性領域;これは、免疫反応性に差異が存在するかどうかを示す、最も包括的なパラメータである)、ROIサイズに正規化した対象物の数(対象物の密度)、特定した対象物の平均シグナル強度(平均強度;これは、標的タンパク質の細胞発現レベルに差異があるかどうかを示すものである)、及び上記閾値の対象物のサイズを定量した。標的化された対象物のパラメータが、試験の実施中に一旦、規定されると、定量的画像解析を自動的に実施し、結果は操作者に無関係であり、完全に再現可能である。
【0213】
生データを構造化して、Excelでソートし、次に、統計解析及びグラフを調製するため、GraphPad Prismに移した。Prismのグラフは、検討報告書の一部であり、ソートした生データを含む表を、質の確認を実施した後、最終報告書に添付する。
【0214】
マウス血漿及び脳組織中のAZ-3102及びグルコシルセラミドの測定
最初に、500nMの内部標準グルコシルセラミドC17:0(GlcCer C17:0)及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル/超純水/メタノール(90:5:5)の溶液を用いて、血漿試料のタンパク質沈殿を行った。室温で5分間、混合した後、試料を5分間、遠心分離し(13,000rpm、20℃)、50μLの上清をシリコン処理されているMTP96ウェルプレートに移送した。
【0215】
ファストプレプ(FastPrep24)(商標)マイクロチューブホモジナイザーを使用して、0.1%ギ酸を含む超純水:メタノール(1:1)の溶液(組織各1グラムあたり、4mL)で脳組織をホモジナイズした。次に、タンパク質沈殿のため、組織ホモジネートを、500nMのGlcCer C17:0及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル/超純水/メタノール(90:5:5)の溶液と混合した。室温で5分間、インキュベートした後、試料を5分間、遠心分離し(13000rpm、20℃)、50μLの上清をシリコン処理されているMTP96ウェルプレートに移送した。
【0216】
AZ-3102の測定
タンパク質沈殿のため、血漿試料を最初に、50ng/mLのAZ-3101(内部標準)を含有するアセトニトリルの溶液と混合した。室温で5分間、インキュベートした後、試料を5分間、遠心分離(13000rpm、4℃)し、0.1%ギ酸を含む超純水で上清を10倍に希釈した。
【0217】
ファストプレプ24(商標)マイクロチューブホモジナイザー(MP Biomedicals、米国)を使用して、0.1%ギ酸を含む超純水:メタノール(1:1)の溶液(組織各1グラムあたり、4mL)中で脳組織をホモジナイズした。タンパク質を沈殿するため、脳ホモジネートを10ng/mLのAZ-3101(内部標準)を含有するアセトニトリルの溶液と混合した。室温で5分間、インキュベートした後、試料を5分間、遠心分離(13000rpm、4℃)し、0.1%ギ酸を含む超純水で上清を10倍に希釈した。
【0218】
希釈後の血漿及び脳組織の上清を、自動化試料インジェクタ(SIL-30、Shimadzu、米国)によって、Agilent LCシステム(Agilent、米国)に注入した。40℃の温度に保持した逆相XBridge BEH C8カラム(2.1×50mm、2.5μmの粒子サイズ;Waters、米国)で、0.800mL/分の流速で、移動相Bの直線グラジエントを使用する液体クロマトグラフィーによって分析対象を分離した。移動相Aは、0.1%ギ酸を含む超純水からなった。移動相Bは、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルとした。取得は、Turboイオンスプレーインターフェースを装備したAPI5500トリプル四重極質量分析計(AB Sciex、米国)を使用して、ポジティブイオン化モードで達成した。データを較正し、アナリスト(Analyst)(商標)データシステム(AB Sciex、バージョン1.6.3)を使用して定量した。AZ-3102に関するLLOQは、それぞれ、血漿試料中に0.2ng/mLであり、脳中では2ng/gであった。
【0219】
グルコシルセラミドの測定
最初に、500nMの内部標準グルコシルセラミドC17:0(GlcCer C17:0)及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル/超純水/メタノール(90:5:5)の溶液を用いて、血漿試料のタンパク質沈殿を行った。室温で5分間、混合した後、試料を5分間、遠心分離し(13,000rpm、20℃)、50μLの上清をシリコン処理したMTP96ウェルプレートに移送した。
【0220】
ファストプレプ24(商標)マイクロチューブホモジナイザーを使用して、0.1%ギ酸を含む超純水:メタノール(1:1)の溶液(組織各1グラムあたり、4mL)で脳組織をホモジナイズした。次に、タンパク質沈殿のため、組織のホモジネートを500nMのGlcCer C17:0及び0.1%ギ酸を含有するアセトニトリル:超純水:メタノール(90:5:5)の溶液と混合した。室温で5分間、インキュベートした後、試料を5分間、遠心分離し(13000rpm、20℃)、50μLの上清をシリコン処理されているMTP96ウェルプレートに移送した。
【0221】
脳試料中のグルコシルセラミドC16:0(GlcCer C16:0)、グルコシルセラミドC18:0(GlcCer C18:0)及びグルコシルセラミドC24:1(GlcCer C24:1)の濃度を、多重反応モニタリングモード(MRM)でのHPLC-MS/MS検出によって定量した。ガラクトシル-セラミド異性体とグルコシル-セラミド異性体とを区別するため、Advanced Materials Technology製のHALO HILICカラム(150×4.6mm、2.7μm)を使用しながら、上清をHPLC-MS/MSによって分析した。MS/MS取得は、Turboイオンスプレーインターフェースを装備したAPI4000トリプル四重極(Applied Biosystems、米国)を使用して、ポジティブイオン化モードで達成した。GlcCer C16:0及びGlcCer C18:0の分析は、移動相A:94.5%のアセトニトリル、2.5%のメタノール、2.5%の超純水及び0.5%のギ酸中の5mMの酢酸アンモニウム、及び移動相B:超純水及び0.1%ギ酸でのグラジエントを使用して行った。GlcCer 16:0、GlcCer 18:0及びGlcCer 24:1に関する、脳試料中のLLOQは、それぞれ、組織1gあたり、25、1,250及び381.5pmolであった。
【0222】
統計学
統計解析は、GraphPad Prism9で行った。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)又は平均値+平均値の標準誤差として表す。
【0223】
インビボ:群間の差異は、反復測定に関する二元配置ANOVA、次いでボンフェローニ又はダネットの事後解析で検定した。
【0224】
組織学:nが少ないため、データの分布を検定することができず、したがって、正規分布であると仮定した。群間の差異は、一元配置ANOVA、次いでダネットの事後検定解析により検定した。群A(NPC-/-、ビヒクル処置)を一対比較のための参照群として使用した。
【0225】
結果
体重
図11は、PND11と9週目との間の体重の変化率を示す。グラフは、最初の処置の週の間の毎日、及びこれ以降、毎週測定した、群あたりの体重[g]の進展を表す。
【0226】
結果は、平均体重増加率によって示される通り、動物の一般的な健康状態が、AZ-3102によって妨げられないこと、及びAZ-3102により処置された両方の性別のNPC(-/-)マウスが、NPC(-/-)未処置動物よりも体重が増加したことを示している。
【表8】
【0227】
グルコシルセラミドレベル
図12は、PND11~70の反復経口投与後の、グルコシルセラミドC16:0及びC18:0レベルを示す。
【0228】
AZ-3102により処置されたマウスは、脳中のグルコシルセラミドC16:0及びC18:0のレベルが増加したことを示している。
【0229】
臨床的兆候
臨床スコア及び人道的エンドポイントの定義
臨床的兆候を、検討の終了まで、P45において開始して、毎日、モニタリングした(以下の表9のテンプレートに従う)。パラメータ「体重減少」、「一般的な健康」、「臨床所見」及び「細胞系に特異的な所見」を記録し、スコアスケールに準拠して点数を付けた。このスコアの合計を評価に使用した。
【表9】

【0230】
振戦スコア
【表10】
【0231】
図13は、すべての領域にわたるPND56~70の全臨床的兆候スコア、及びNPC(-/-)ビヒクル及びAZ-3102処置マウスのそれぞれの処置群ごとの要約を示す。左側:低いスコアは緑色で、高いスコアは赤色で、グラデーションで視覚化した動物及び処置群ごとの合計スコア。右側:閾値数字に到達したスコアの要約。7より大きな閾値スコアは、処置群の場合、めったに発生しない。しかし、未処置群は、検討過程の間により高い数の総スコアを有した。
【0232】
結果は、NPC(-/-)ビヒクル処置マウスは、NPC(-/-)AZ-3102処置動物に比べて、総合的な臨床的兆候が悪化(より大きなスコア)を有したことを示している。これは、図13においてさらに示されている:右側では、例えば、8より高いスコアは、NPC(-/-)AZ-3102処置動物に比べて、NPC(-/-)ビヒクル処置群に一層、頻繁に観察された。これらのスコアを検討すると、本発明者らは、振戦の始まり、期間及び強度もまた、AZ-3102による処置によっても低下したことを見出した(図14)。1匹のNPC(-/-)ビヒクル処置動物を除くすべての場合において、振戦が高いレベルで観察された一方、AZ-3102により、24匹の試験動物のうちの1匹を除くすべての動物において、このような高いレベルの振戦が本質的になくなった。
【0233】
図14は、NPC(-/-)ビヒクル及びAZ-3102処置マウスにおける、生後56~70日目の振戦スコアを示す。ピンク色(=薄灰色)の棒は、高いレベルの振戦の出現及び期間を表す一方(スコア5)、緑色(=暗灰色)棒は、わずか又は中度の振戦の出現及び期間を表す。未処置群における1匹のマウスを除き、他のマウスはすべて、高レベルの振戦(5匹のマウスのうちの4匹)を示した。対照的に、AZ-3102処置群における1匹のマウスだけが、高レベルの振戦を有した(24匹のうちの1匹)。考えられる振戦スコア:0:振戦はない、1:協調不能はわずか、振戦はわずか~中度;5:振戦のレベルが高い、非協調運動;10:立ち直り反射が低下(このスコアに到達した動物はいない)。
【0234】
組織学的結果
標的領域の定義
標的領域は、後の蛍光標識の定量的分析のため、関心領域(ROI)を定義することによって、手作業で輪郭を描いた。
【0235】
定量分析の読み出し値
以下に示されている表は、4つの標準読み出し値を特徴付ける。
【0236】
領域サイズ[mm]:これらのデータは、標的領域の範囲に及ぶ脳切片あたりの平均面積を示している。この情報は、適切なサンプリングであることを確認するために重要である。この情報はまた、一部の動物モデルの表現型の一部である、脳委縮を特定する一助となる。
【0237】
免疫反応性領域[%]:上記閾値の免疫反応性対象物(例えば:細胞体、神経突起、プラーク)に及ぶ範囲であるROIの割合:これは、免疫反応性に総合的な差異が存在するかどうかを示す、最も包括的なパラメータである。
【0238】
対象物の密度[mmあたりの対象物の数]:標的領域のサイズに正規化した、上記閾値の免疫反応性対象物の数;これは、ニューロン密度の変化を検出するのにとりわけ、有用である。
【0239】
対象物強度[a.u.]:上記閾値の免疫反応性対象物のピクセルの平均輝度;これは、標的タンパク質の細胞発現レベルに差異が存在するかどうかを示す。
【0240】
対象物のサイズ[μm]:上記閾値の免疫反応性対象物のサイズ;これは、ミクログリアの活性化又はプラークの成長の差異を検出するのに有用である。
【0241】
カルビンジン-D28k
カルビンジン-D28kの免疫蛍光をモルモットポリクローナル抗体により検出し、シグナルを、小脳及び海馬体において定量した。NCP(-/-)マウスは、NCP(+/-)及びNPC(+/+)マウスに比べて、カルビンジン-D28k標識が強力に低下したことを示す。試験物品による処置によって、すべての読み出し値において、小脳中のカルビンジン-D28kが顕著に増加した。群での顕著な差異が海馬では検出されなかったので、すべての効果は、領域特異的である。
【0242】
図16は、脳免疫組織化学の結果を示す:NPC(+/+、野生型マウス)及びNPC(-/-)処置マウスと比較した、NCP(-/-)及びNPC(+/-)ビヒクル処置マウスにおける、カルビンジン-D28k標識。グラフは、マウスあたり5つの脳切片における、ROI内で測定した免疫蛍光シグナルの平均値を表す(群あたり、n=2~4)。データは、一元配置ANOVA及びダネットの事後検定試験によって解析した。棒グラフは、群の平均値+SEMを表す。棒グラフは、群の平均値+SEMを表す。Adj.P-値:<0.001。
【0243】
本発明者らは、プルキンエ細胞に対するカルビンジン-D28kマーカーを使用する、免疫組織学的技法を使用し、AZ-3102処置が、ビヒクル処置NPC(-/-)マウスに比べて、小脳プルキンエ細胞消失を顕著に制限したことを見出した(図16)。
【0244】
結論
AZ-3102は、様々なリソソーム貯蔵障害のために開発された、新規な経口低分子である。AZ-3102の固有の作用機序は、グルコシルセラミドシンターゼ(GCS)、非リソソームグルコシルセレブロシダーゼ(GBA2)に対するその高い効力、及びその脳への浸透特性にある。AZ-3102は、ニーマンピック病C型のマウスモデルで調査され[1、2]、NPC遺伝子の潜性NIHアレルのホモ接合マウスは、ほぼ7週齢において、体重が減少し始め、振戦及び失調性歩行を示し始める[3]。疾患の重症度は、顕著な小脳プルキンエ細胞消失に関連しており、人道的エンドポイントに達する(通常は、12~14週齢)まで臨床的兆候が悪化する[3]。本検討では、本発明者らは、NPC(-/-)、NPC(-/+)及びWT(NPC(+/+);Balb/c)に、出生後(PND)の11日目~70日目までAZ-3102を毎日、経口投与して検討し、その薬物動態(PK)特性、グルコシルセラミド(GlcCer C16:0、GlcCer C18:0)をモジュレートする能力、及び臨床的兆候を改善する能力を算定した。さらに、本発明者らは、神経病理学と一致するプルキンエ細胞に対する免疫組織化学マーカーに対する治療効果も試験した。PND11~70に、AZ-3102を毎日、繰り返し経口投与した後、平均体重増加率によって示される通り、動物の一般的な健康状態が、AZ-3102によって妨げられず、AZ-3102により処置された、両方の性別のNPC(-/-)マウスが、NPC(-/-)未処置動物よりも体重が増加した(図11)。AZ-3102は、高い脳:血漿中曝露となることを実証し(表8)、AZ-3102標的関与と一致し、全脳ホモジネートから測定されたGlcCer種は、ビヒクル処置動物と比較して、GlcCer16:0の場合、2倍、及びGlcCer 18:0の場合、ほぼ9倍、増加した。これらの2種のGlcCer種は、AZ-3102にやはり応答すると思われる、他のGlcCer種の代表となる可能性が高い。AZ-3102が、一般的な健康及び神経病理学のさらに具体的な兆候に影響を及ぼすほど十分に脳中濃度に到達するかどうかを評価するため、様々な臨床的兆候を測定した(表9)。観察期間にわたり合計した場合、これらのスコアは、PND56~70の健康の図式を提示する。図13は、経時的に観察されたコホートあたりの各動物のグラフによる概略である。このグラフでは、NPC(-/-)ビヒクル処置マウスは、NPC(-/-)AZ-3102処置動物に比べて、総合的な臨床的兆候の悪化(より高いスコア)を有した。これは、(図13:右側)においてさらに定量され、この場合、例えば、8より高いスコアは、NPC(-/-)AZ-3102処置動物に比べて、NPC(-/-)ビヒクル処置群において、一層、頻繁に観察された。これらのスコアを検討すると、本発明者らは、振戦の始まり、期間及び強度もまた、AZ-3102による処置によって低下した(図14)。1匹のNPC(-/-)ビヒクル処置動物を除くすべての場合において、高いレベルで振戦が観察された一方、AZ-3102は、24匹の試験動物のうちの1匹を除くすべての動物において、このような高いレベルの振戦が実質的になくなった。本発明者らは、プルキンエ細胞に対するカルビンジン-D28kマーカーを使用する、免疫組織学的技法を使用し、AZ-3102処置は、ビヒクル処置NP-C(-/-)マウスに比べて、小脳プルキンエ細胞消失を顕著に制限したことを見出した(図16)。ニューロン死、特にプルキンエ細胞及び脳委縮が、ニーマンピック病C型の顕著な特徴となるので、上記の知見は、人間におけるこの疾患との関連性を有している[4]。小脳の機能は、運動にとって重要であるので、臨床的兆候の改善、及び振戦の高いレベルでの有意な低下は、小脳のプルキンエ細胞の生存の結果である可能性が高い。
【0245】
要約すると、GCS及びGbA2の両方の、経口利用可能な非常に強力な(nM)阻害剤であるAZ-3102は、NPC(-/-)及び野生型動物の脳を賦活化することができた。さらに、AZ-3102は、ビヒクル処置動物に比べて、GlcCer種のモジュレートにより明確に示される通り、脳内においてこれらの酵素を阻害し、臨床的兆候を改善し、高いレベルの振戦を有意に低下させ、及び小脳のプルキンエ細胞の消失を制限した。
【0246】
1. Loftus,S.Kら、Murine model of Niemann-Pick C disease:mutation in a cholesterol homeostasis gene.Science、1997年、277巻(5323号):232~5頁。
2. Zervas,M.,K.Dobrenis及びS.U.Walkley,Neurons in Niemann-Pick disease type C accumulate gangliosides as well as unesterified cholesterol and undergo dendritic and axonal alterations. J Neuropathol Exp Neurol、2001年、60巻(1号):49~64頁。
3. Santiago-Mujica,E.ら、Hepatic and neuronal phenotype of NPC1-/- mice.Heliyon.Heliyon、2019年、5巻(3号)。
4. Vanier,M.T.、Niemann-Pick disease type C. Orphanet Journal of Rare Diseases、2010年、5巻(1号):16頁。
【0247】
実施例5 - サンドホフ病に罹患しているマウスへの化合物(I)の結晶形態の投与効果(変異によるマウスHexb遺伝子[Hexb(-/-)]の撹乱)
サンドホフ病に罹患しているマウスに、治療有効量のAZ-3102を投与した。初期データは、ニーマンピック病C型の処置と同様に、罹患動物の臨床的兆候が改善されたことを示している。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
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図12
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図16
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【外国語明細書】