(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054236
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240409BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 H
H05K5/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016890
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2019079890の分割
【原出願日】2019-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018086577
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中澤 茉奈美
(72)【発明者】
【氏名】東海林 潤一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田村 健悟
(72)【発明者】
【氏名】益子 弘識
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地面などに電動工具を落下させた際の衝撃による制御回路基板の破損を防止する。
【解決手段】ハンドル部とその先端にバッテリ取付部102cが形成された分割式のハウジング102を有する電動工具において、分割面を跨ぐようにしてバッテリ取付部102cの上面に開口部103が形成され、スイッチパネル150が装着される。また、バッテリ取付部102cの内部に制御回路基板131が搭載される。制御回路基板131は基板ケース135を介して2分割形式のハウジング102によって挟持されるようにして保持され、制御回路基板131の下方向に直接又は間接的に支持する隆起部138を、基板ケース135と一体に構成した。衝撃時の落下によってハウジング102の特定部位104の下向きの変形が生じても、ネジ141が衝撃を受け止めるので制御回路基板131の破損が防止される。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容する胴体部と、
作業者に把持されるハンドル部と、
前記ハンドル部の端部に設けられ、前記ハンドル部より径方向に突出し、電子部品が搭載された基板を収容する収容部と、を備え、
前記基板は、前記ハンドル部の延長線上の位置から前記収容部の突出する部分にわたって前記収容部に収容され、
前記基板を直接又は間接的に支持するサポート部を設けたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記サポート部は、前記基板を収容する前記収容部と一体に構成されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記サポート部は前記収容部の略中央に設けられ、
前記基板に前記サポート部が貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記サポート部の中央には段が設けられ、前記基板は、前記段によって下面が支持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項5】
前記段は複数設けられ、
前記段の一番上にはネジを配置したことを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記基板の左右両側の縁部は、前記収容部と非接触状態にて保持されることを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記収容部の前方に、前記基板の前縁下側を支持する段差部を設けたことを特徴とする請求項5又は6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記ネジの径方向に見て、前記基板と前記ネジの間に隙間を設けたことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項9】
前記基板の上側にスイッチ素子の操作面を形成するスイッチパネルを配置し、前記スイッチパネルから延在する固定用のタブを前記ネジによって前記基板から抜けないように保持することを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項10】
前記ハンドル部の径方向に突出する部分には、前記基板と対向する位置に開口部が形成され、
前記サポート部は、前記開口部の縁部の変形を抑制することを特徴とすることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項11】
前記ハンドル部の長手方向に見て、前記サポート部は前記開口部の周縁部の一部と重なる位置に設けられることを特徴とする請求項10に記載の電動工具。
【請求項12】
前記基板は前記開口部の前記縁部と対向するように前記収容部に収容されており、
前記サポート部は、前記基板に対して前記開口部の前記縁部と反対側の前記基板を支持するよう、前記収容部と一体に構成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の電動工具。
【請求項13】
前記基板は、前記開口部の前記縁部と対向する第1面と、前記第1面に対して前記開口部の前記縁部と反対側の第2面とを有すると共に、基板ケースに収容された状態で前記収容部に収容されており、
前記サポート部は、前記第2面側から前記基板を貫通して前記基板の前記第1面側に延びるように、又は、前記第2面側から前記基板と反対側に延びて前記収容部に固定された部分に接触するように、前記基板ケースに設けられていることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項14】
前記基板は前記開口部の前記縁部と対向するように前記収容部に収容されており、
前記開口部の前記縁部と前記基板との間に前記サポート部を設けたことを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項15】
前記収容部は、バッテリを取り付けるためのバッテリ取付部を構成すると共に、前記バッテリのバッテリ側ターミナルと接続する工具側ターミナルが設けられるターミナルホルダを有し、
前記ターミナルホルダは、前記基板に対して前記縁部の反対側で前記基板に対向するように設けられ、
前記サポート部は、前記ターミナルホルダに設けられることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は落下などによる衝撃の対策を施した電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式の電動工具において、バッテリに蓄電された電気エネルギーにて駆動するコードレスタイプの電動工具が広く用いられている。ドリルやドライバ等の先端工具をモータによって回転駆動して所要の作業を行う電動工具においては、例えば特許文献1に開示されているように、バッテリを用いてモータを駆動する。モータの回転力は、動力伝達機構を介して出力軸の回転運動に変換され、先端工具を回転させる。このような電動工具は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のような電動工具では、胴体部のほぼ中央付近から軸線方向に略直交する方向に延在するハンドル部が形成され、ハンドル部の先端であって胴体部から離れた位置(反胴体部側の端部)のバッテリ取付部が設けられる。バッテリ取付部は、ハンドル部の軸線とは交差する方向に延在するもので、その下側にパック式のバッテリが装着される。バッテリ取付部の内部には、モータを制御するための制御回路基板が設けられる。また、バッテリ取付部の上面には、スイッチパネルが配置される。スイッチパネルには、モータの回転速度や打撃の強さを設定するソフトタッチ式のボタンや、出力軸近傍に設けられた照明装置の点灯スイッチ等が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手持ち式の電動工具では、作業者の不注意によって電動工具を地面などに落下させてしまう場合がある。そのため、電動工具の製造メーカは落下時の衝撃対策を施すことにより、落下してもできるだけ壊れないように改良してきた。落下時の衝撃を受ける箇所は様々な部位があるが、発明者らが衝撃対策を行う過程において、例えばバッテリ駆動の電動工具の場合、バッテリが下になる電動工具1を通常の作業位置よりも高い位置から落下させた際に、ハンドル部とバッテリ取付部との付け根付近が変形して、その下に配置される制御回路基板が破損する虞があることがわかった。このハンドル部とバッテリ取付部との接続部付近の変形は、バッテリ取付部の延在する部分の上面付近にスイッチパネルを配置するために開口部を設けた場合に、特に変形量が大きくなることもわかった。また、コードレスタイプの電動工具ではなく商用電源等を使用する電動工具も、ハンドルの端部に回路基板を収容する収容部が設けられる製品もあり、電動工具を落下させた際に収容部の変形により回路基板が破損する虞がある。特に、ハンドルよりも径方向に突出するように収容部又はバッテリ取付部が設けられ、回路基板がハンドルの長手方向の延長上から当該突出した部分にわたって配置されている場合に、収容部の変形により回路基板が破損する虞が高くなる。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、地面などに電動工具を落下させた際に、ハウジングの変形による回路基板の破損の虞を大幅に低下させた電動工具を提供することにある。
本発明の他の目的は、分割形式のハウジングによって挟持される回路基板を、落下衝撃時のハウジングの局所的な変形から保護するようにした電動工具を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、回路基板を収容する基板ケースの構造を変更することで、落下衝撃時に基板ケース内に収容される回路基板の破損を効果的に保護するようにした電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、モータと、モータを収容する胴体部と、作業者に把持されるハンドル部と、ハンドル部の端部に設けられ、ハンドル部より径方向に突出し、電子部品が搭載された基板を収容する収容部と、を備えた電動工具において、基板はハンドル部の延長線上の位置から収容部の突出する部分にわたって収容部に収容されるようにして、基板を直交方向に直接又は間接的に支持するサポート部を設けた。このサポート部は、基板を収容する収容部と一体に構成される。また、サポート部は収容部の略中央に設けられ、基板にサポート部が貫通する貫通孔を設けた。さらに、サポート部の中央に段が設けられ、その段によって基板の下面が支持される。サポート部には複数の段が設けられ、段の一番上にはネジを上下方向に配置した。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、基板の左右両側の縁部は、収容部と非接触状態にて保持される。また、収容部の前方に、基板の前縁下側を支持する段差部又は支持部を設けた。ネジの径方向に見て、基板とネジの間には隙間が設けられる。さらに、基板の上側にスイッチ素子の操作面を形成するスイッチパネルを配置し、スイッチパネルから延在する固定用のタブをネジによって保持する。ハンドル部の径方向に突出する部分には、基板と対向する位置に開口部が形成され、サポート部は、開口部の縁部の変形を抑制するようにした。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、ハウジングと、ハウジングに収容されたモータと、モータの回転力を先端工具に伝達する動力伝達機構と、モータの回転を制御する制御部を有し、ハウジングはハンドル部とその先端に形成されたバッテリ取付部を有し、バッテリ取付部はハンドル部の軸線方向と交差する方向に延在する延在部を有し、ハウジングは左右で挟持する形式であって、延在部のうち軸線方向と交差する面において挟持する分割面を跨ぐようにして開口部が形成され、延在部の反ハンドル部側にバッテリが装着される。このような構成の電動工具において、延在部の内部であってバッテリとハンドル部の間に制御部を搭載する制御回路基板を有し、制御回路基板は2分割形式のハウジングによって挟持されるようにして保持され、制御回路基板を分割面と直交方向に直接又は間接的に保持するサポート部を設けた。このサポート部は、ハンドル部の長手方向(B1方向)に見て開口部の周縁部の一部と重なる位置に設けられる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、制御回路基板は2分割形式のハウジングの分割方向の辺部に凸部が形成された容器状の基板ケースに収容され、基板ケースの凸部をハウジングの内壁に形成された凹部によって挟持されるようにして保持される。サポート部は基板ケースに接するように形成されるもので、基板ケースの下面において分割方向に延びる直線状の梁部として形成できる。梁部はハウジングと一体成形にて形成すると良く、開口部の周縁部の一部と梁部の一部は、ハンドル部の長手方向(B1方向)に重なる位置に設けられる。ここで、梁部の長さは制御回路基板の幅よりも大きく形成されると好ましい。また、基板ケースには底面から上部開口に至る柱部を形成し、制御回路基板に柱部を貫通させるための貫通穴を形成するように構成しても良い。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、ハウジングのバッテリ取付部の延在部に分割面を跨ぐようにして開口部が形成される電動工具において、制御回路基板は分割方向の辺部に凸部が形成された容器状の基板ケースに収容され、基板ケースは制御回路基板の上面外縁よりも大きい上部開口を有し、基板ケースの上部開口を跨ぐようにして、梁部材が配置される。梁部材は、細長い金属板又は金属棒で構成される。また、制御回路基板とバッテリの間には、バッテリの端子部と接続するための機器側端子群を保持するバッテリターミナル部が形成され、梁部材はバッテリターミナル部に形成される凸部にて形成されるものであって、ハンドル部の長手方向(B1方向)に見て開口部の周縁部の一部と重なる位置にサポート部が設けられる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、モータを収容する胴体部と、作業者が把持するハンドル部と、ハンドル部の端部に設けられハンドル部より径方向に突出し、電子部品が搭載される基板を収容する収容部と、を備え、基板はハンドル部の延長上の位置から収容部の突出する部分にわたって収容部に収容され、収容部の突出部分には、基板と対向する位置に開口部が形成され、開口部の縁部の変形を抑制するサポート部を収容部に設けた。また、基板は縁部と対向するように収容部に収容されており、サポート部は基板に対して縁部と反対側の基板を支持するよう、収容部と一体に構成される。さらに、基板は、縁部と対向する第1面(上側開口面)と、第1面に対して縁部と反対側の第2面(底面)とを有すると共に、基板ケースに収容された状態で収容部に収容される。サポート部は、第2面側から基板を貫通して基板の第1面側に延びるように、又は、第2面側から基板と反対側に延びて収容部に固定された部分に接触するように、基板ケースに設けられる。基板は縁部と対向するように収容部に収容され、縁部と基板との間に別のサポート部を設けても良い。尚、収容部は、バッテリを取り付けるためのバッテリ取付部を構成すると共に、バッテリのバッテリ側ターミナルと接続する工具側ターミナルが設けられるターミナルホルダを有し、ターミナルホルダは、基板に対して縁部の反対側で基板に対向するように設け、サポート部はターミナルホルダに設けても良い。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、モータを収容する胴体部と、作業者が把持するハンドル部と、ハンドル部の端部に設けられ、ハンドル部より径方向に突出し、電子部品が搭載される基板を収容する収容部を備え、基板はハンドル部の延長上の位置から収容部の突出する部分にわたって収容部に収容され、収容部の突出部分には、基板と対向する位置に開口部が形成される。ここで開口部の縁部が落下による衝撃が加わって変形しても基板に接触しないように、縁部と基板との間に十分な隙間を設けるようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、落下などの衝撃が電動工具のハウジングに加わった時に、ハウジングの特定の部位が変形して回路基板に変形による押圧力が作用しても、回路基板の下に配置されたサポート部によって回路基板の変形が抑制されるので、回路基板の破損に起因する電動工具の故障を効果的に抑制できる。また、サポート部はハウジング分割面と直交する方向に延びる梁部としてハウジングと一体成形によって製造できるので、強度的に強くできる上、製造コストの上昇を抑制できる。さらに別のサポート部として、基板ケースにおいて分割面と直交する方向にある2つの辺部を繋ぐような金属板で構成するので、基板ケースを替えるだけで容易に本発明を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る電動工具1の右側面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る電動工具1の内部構造を示す縦断面図である。
【
図3】(A)は
図2のバッテリ取付部2cの部分拡大断面図であり、(B)は前後方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とサポート部の位置関係(静止時)を説明するための図であり、(C)は前後方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とサポート部の位置関係(衝撃発生時)を説明するための図である。
【
図4】
図3のA-A部の断面図であり、(B)は左右方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とサポート部たる梁部材40との位置関係(静止時)を説明するための図であり、(C)は左右方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とサポート部の位置関係(衝撃発生時)を説明するための図である。
【
図6】
図3(A)と同じバッテリ取付部2cの部分拡大断面図であって、正立状態にて落下させた衝撃が加わった際の変形状態を示す図である。
【
図8】バッテリ取付部2cによる延在部の外形を示すための上面図であり、スイッチパネル46の詳細形状を示す図である。
【
図9】本発明の第2の実施例に係るバッテリ取付部の部分拡大断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施例に係るバッテリ取付部の部分拡大断面図である。
【
図12】本発明の第4の実施例に係るハウジング2Aのバッテリ取付部の部分拡大断面図である。
【
図14】本発明の第5の実施例に係るバッテリ取付部の部分拡大断面図である。
【
図16】本発明の第6の実施例に係るバッテリ取付部の部分拡大断面図である。
【
図18】(A)は従来のインパクト工具のバッテリ取付部202cの部分拡大断面図であり、(B)は前後方向にみたハウジング202の最大変形箇所(特定の部位234)の位置(静止時)を示す図であり、(C)は前後方向にみたハウジング202の最大変形箇所の位置とサポート部の位置関係(衝撃発生時)を示す図である。
【
図19】
図18のH-H部の断面図であり、(B)は左右方向にみたハウジング202の最大変形箇所(特定の部位234)の位置と、リブ238a、238bの位置関係(静止時)を示す図であり、(C)は左右方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とリブ238a、238bの位置関係(衝撃発生時)を示す図である。
【
図20】本発明の第7の実施例に係る電動工具101の制御回路部130の斜視図である。
【
図22】
図20の制御回路部130のハウジング102への取付状態を示す斜視図である。
【
図23】第7の実施例に係る電動工具101のバッテリ取付部102cの部分拡大断面図である。
【
図24】第7の実施例の基板ケース135の図であり、(A)は上面図であり、(B)は(A)のK-K部の断面図で有り、(C)は(A)のL-L部の断面図である。
【
図26】(A)は第7の実施例の制御回路部130の上面図であり、(B)は従来の制御回路部230の上面図である。
【
図27】第7の実施例の変形例に係る制御回路基板131のサポート部付近の部分拡大図である。
【
図28】(A)は第7の実施例におけるハウジング102の最大変形箇所から基板ケース135に伝わる応力の位置を示す図であり、(B)は従来のハウジング202の最大変形箇所から基板ケース135に伝わる応力の位置を示す図である。
【
図29】本発明の第8の実施例に係る電動工具の制御回路部130を示す断面図であり、(A)はハウジング102の分割面を通る鉛直断面図であり、(B)は(A)と直交する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る電動工具1の外観を示す側面図である。電動工具1は、充電可能なパック式のバッテリ300を電源とし、モータを駆動源として出力軸10に回転力と打撃力を与え、取付穴10aに装着され装着機構11にて保持されるドライバビット等の図示しない先端工具に回転打撃力を間欠的に伝達してねじ締めやボルト締め等の作業を行う。電動工具1のハウジング2は、モータや動力伝達機構を収容するための略円筒状の筒状の胴体部2aと、胴体部2aの略中央付近から軸線A1と略直交方向(下方)に延在するものであって、作業者が片手で把持するためのハンドル部2bと、ハンドル部2bの端部のうち、胴体部2aと反対側に位置する下方側端部(反胴体部側端部)に設けられるバッテリ取付部2cの3つの部分により構成される。ハウジング2の胴体部2aは、ハンドル部2b及びバッテリ取付部2cと共に合成樹脂材料の一体成形により製造され、モータ3の回転軸4を通る鉛直面で左右に2分割されるように構成される。組立の際には一方のハウジング2(例えば左側のハウジング)に、モータ、減速機構、インパクト機構等の組込みを行い、しかる後、他方のハウジング2(例えば右側のハウジング)を重ねて、ハウジングのネジボスに複数のネジ29a~29hで締め付ける方法が取られる。ハンドル部2b内の上部にはトリガレバー7aが前方側に突出するように配設され、トリガレバー7aの後方側には、出力軸10の回転方向を正方向又は逆方向に切り換えるための正逆切替レバー8が設けられる。ハンドル部2bの端部のうち、胴体部2aと反対側に位置する下方側端部(反胴体部側端部)には、水平方向に延在するように形成されたバッテリ取付部2cが形成され、リチウムイオン電池等の二次電池からなるバッテリ300が着脱可能に装着される。
図1の状態からバッテリ300を取り外す際には、左右両側にあるラッチボタン301を押し込みながらバッテリ300を電動工具本体に対して前方側に相対移動させる。
【0018】
ハウジング2の胴体部2aの後端側付近には、スリット状の空気取入口17bが形成され、その前方側であってロータファン15(
図2で後述)の外周付近には、空気排出用のスリット状の空気排出口17cが形成される。ハウジング2の胴体部2aの前方側にはカップ状であって、先端に出力軸10を貫通させる貫通穴5aが形成されたハンマケース5が設けられる。ハンマケース5の前方端付近の下側には、LEDを用いた照明装置9が設けられる。
【0019】
バッテリ取付部2cはバッテリ300を装着するためのレール機構と接続端子群が設けられることに加えて、内部に制御回路基板(
図2で後述)を収容する。バッテリ取付部2cの横幅は、バッテリ300の上面とほぼ同じである。バッテリ取付部2cの上面部分であってハンドル部2bの下端よりも前方部分には、第1のスイッチパネル46が設けられる。第1のスイッチパネル46には、先端工具による締め付け対象を照らすための照明装置9を点灯するためのライトスイッチ、バッテリ300の残量を表示するための電池残量表示スイッチと電池残量表示ランプ、打撃強さを表示するための強弱表示ランプが配置される。また、バッテリ取付部2cの左側面部分にも第2のスイッチパネル(図示せず)が設けられ、打撃強さ(締め付けの強さ)を調整するための強弱切替スイッチ(図示せず)が設けられる。
【0020】
図2は本実施例の電動工具1の内部構造を示す縦断面図である。モータ3は側面視で略T字状の形状を成すハウジング2の筒状の胴体部2a内に収容される。モータ3はブラシ(整流用刷子)の無いDC(直流)モータであり、4極6スロットのブラシレスDCモータである。モータ3は永久磁石を備えたロータ(回転子)3aと、3相巻線等の複数相の電機子巻線(固定子巻線)を備えたステータ(固定子)3bを含む。モータ3は、ロータ3aの永久磁石の磁力を検出してロータ位置を検出する3つのホールICより構成された位置検出素子13の出力を用いて、バッテリ等から供給される直流電圧を複数の半導体スイッチング素子14によってスイッチングされることにより動作する。モータ3の回転軸4は筒状の胴体部2aの軸線A1と同心に配置され、前側及び後側において2つの軸受16a、16bによってハウジング2に軸支される。ステータ3bの後方側には、3つの位置検出素子13や6つの半導体スイッチング素子14等を搭載するための略円環状のインバータ回路基板12が配置される。インバータ回路基板12はモータ3の外径とほぼ同径の略円環状の両面基板である。半導体スイッチング素子14は6つ設けられてインバータ回路を形成し、各相の固定子巻線への通電を切換える。半導体スイッチング素子14としてFET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)等が用いられる。インバータ回路はマイクロコンピュータ(マイコン)により制御され、位置検出素子13によるロータ3aの位置検出結果に基づいて各相の電機子巻線の通電タイミングを設定するので、高度な回転制御が容易となる。
【0021】
ハンマケース5は、内部に減速機構20とインパクト機構21を収容するものであって、ハウジング2の胴体部2aの前方側に設けられる。ハンマケース5は金属の一体品にて製造され、カップ状の底部にあたる前方部分には出力軸10を貫通させるための貫通穴5aが形成される。ハンマケース5の外側に突出する出力軸10の先端部分に、図示しない先端工具を装着又は取り外しするための装着機構11が設けられる。
【0022】
ロータ3aと軸受16aの間には、ロータファン15が回転軸4と同軸に取り付けられる。ロータファン15は、例えばプラスチックのモールドにより一体成形されるものであり、後方の内周側から空気を吸引し、前方側の半径方向外側に排出する、いわば遠心ファンである。ロータファン15によって起こされる空気流は、空気取入口17a及びインバータ回路基板12の周囲のハウジング部分に形成された空気取入口17b(
図1参照)から胴体部2aの内部に取り込まれ、主にロータ3aとステータ3bの間を通過するように前方側に流れ、ロータファン15により、ロータファン15の周囲のハウジング部分に形成された後述するスリット状の空気排出口17c(
図1参照)からハウジング2の外部に排出される。
【0023】
ロータ3aは、永久磁石によって形成される磁路を形成する。ステータ3bは、円環状の薄い鉄板の積層構造で製造され、内周側には6つのティース(図示せず)が形成され、各ティースにはエナメル線が巻かれてコイルが形成される。本実施例では、コイルをU、V、W相の3相を有するスター結線としている。
【0024】
ハウジング2のハンドル部2bは、作業者が把持するための部分であり、軸線B1に沿った略円筒形であって片手で把持するのに好適な形状とされる。ハンドル部2bの内部にはトリガスイッチ7が配置されると共に、制御回路部30から胴体部2a側へのリード線等の各種配線が収容される。ハンドル部2bから見て上方側にはモータ3や動力伝達機構(減速機構20とインパクト機構21)といいう重量物が配置されるため、ハンドル部2bと胴体部2aの接続部分の強度が十分になるように構成される。同様にして、ハンドル部2bの下方側にはバッテリ300という重量物が配置されるので、ハンドル部2bとバッテリ取付部2cの接続部分の強度が十分になるように構成される。特に、接続部分の付け根付近43a~43dの補強が成される。
【0025】
ハウジング2のバッテリ取付部2cはハンドル部2bの延長上の位置から前方向及び左右方向に突出する部分を有し、その内部にはトリガレバー7aの引き動作によってモータ3の速度を制御する機能を備えた制御回路基板31(
図3で後述)を含む制御回路部30が収容される。制御回路部30は、バッテリ300とトリガスイッチ7に複数のリード線によって電気的に接続される。また、制御回路基板31には図示しないリード線と制御回路基板31を接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられる。制御回路基板31はさらに、複数のリード線を介してインバータ回路基板12と電気的に接続される。制御回路基板31の近傍であって、バッテリ取付部2cの上面には、入力操作を行い、LED等による表示操作を行うための入出力操作部が設けられる。ここでは入出力操作部としてハウジング2に設けられる別体式のスイッチパネル46を設け、バッテリ300の残量チェックスイッチと残量表示用のLED表示装置と、照明装置9の点灯スイッチを配置した(詳細は
図8で後述)。スイッチパネル46は制御回路部30側に強固に又は緩やかに固定され、ハウジング2の分割面によって分断されるようにして配置される開口部45によって分割方向(左右方向)から挟まれるようにして保持される。開口部45はバッテリ取付部2cの突出部分に設けられている。なお、バッテリ取付部2cは基板を収容する収容部に相当する。
【0026】
インパクト機構21は遊星歯車による減速機構20の出力側に設けられるもので、スピンドル22とハンマ24を備え、後端が軸受18bによって、前端が軸受18aによって回転可能に保持される。減速機構20とインパクト機構21が、モータ3によって先端工具を駆動するための動力伝達機構を構成する。トリガレバー7aが引かれてモータ3が起動されると、正逆切替レバー8で設定された方向にモータ3が回転を始め、その回転力は減速機構20によって減速されてスピンドル22に伝達され、スピンドル22が所定の速度で回転駆動される。ここで、スピンドル22とハンマ24とはカム機構によって連結され、このカム機構は、スピンドル22の外周面に形成されたV字状のスピンドルカム溝23と、ハンマ24の内周面に形成されたハンマカム溝25と、これらのスピンドルカム溝23、25に係合するスチールボール26によって構成される。ハンマ24は、ハンマスプリング27によって常に前方に付勢されており、静止時にはスチールボール26とスピンドルカム溝23、25との係合によってアンビル28の端面とは隙間を隔てた位置にある。ハンマ24とアンビル28の対向する回転平面上の2箇所には図示しない凸部がそれぞれ対称的に形成される。
【0027】
スピンドル22が回転駆動されると、その回転はカム機構を介してハンマ24に伝達され、ハンマ24が半回転しないうちにハンマ24の凸部がアンビル28の凸部に係合してアンビル28を回転させるが、そのときの係合反力によってスピンドル22とハンマ24との間に相対回転が生ずると、ハンマ24はカム機構のスピンドルカム溝23に沿ってハンマスプリング27を圧縮しながらモータ3側へと後退を始める。そして、ハンマ24の後退動によってハンマ24の凸部がアンビル28の凸部を乗り越えて両者の係合が解除されると、ハンマ24は、スピンドル22の回転力に加え、ハンマスプリング27に蓄積されていた弾性エネルギーとカム機構の作用によって回転方向及び前方に急速に加速されつつ、ハンマスプリング27の付勢力によって前方へ移動し、その凸部がアンビル28の凸部に再び係合して一体に回転し始める。このとき、強力な回転打撃力がアンビル28に加えられるため、アンビル28の取付穴10aに装着される図示しない先端工具を介してねじに回転打撃力が伝達される。以後、同様の動作が繰り返されて先端工具からねじに回転打撃力が間欠的に繰り返し伝達され、例えば、ねじが木材等の図示しない被締め付け部材にねじ込まれる。
【0028】
図3(A)は
図2のバッテリ取付部2cの部分拡大断面図である。バッテリ取付部2cは、バッテリ300を取り付けるための取付部を構成すると共に、バッテリ300側のターミナル(バッテリ側ターミナル)と接続するための工具側のターミナルが設けられるターミナルホルダ50を保持する部分であり、さらに、制御回路部30を収容する収容部として機能する。制御回路部30は、上側が開口となる皿状の容器たる基板ケース35の内部に、図示しないマイコンやその他の電子素子、コネクタ等の電子部品が搭載された制御回路基板31が収容され、基板ケース35の内部が樹脂33にて充填されたものである。制御回路基板31は、開口部45と対向する第1面(上面)と、第1面に対して開口部45と反対側の第2面(底面)とを有する。樹脂33は、液体状の状態時に基板ケース35内に充填して硬化させたもので、例えばウレタン等の硬化性樹脂が用いられる。ここでは基板ケース35の上端開口部まで樹脂33を流し込んで樹脂を満たしてから硬化させることにより、樹脂33の上面(液面)が、基板ケース35の上端位置とほぼ同一となって制御回路基板31の基板ケース35の内部に位置する部分が完全に浸漬される。尚、ここで用いる硬化性樹脂は、外部からの押圧による荷重を受けた際にある程度の変形を許容する弾性力を有すると良いが、用いられる硬化性樹脂の種類は任意であり、硬化後に弾性力があるものだけなく、硬化後に硬くなって弾力性が弱いかあるいはほとんど無いような樹脂であっても良い。基板ケース35はプラスチック等の合成樹脂の一体成形によって形成されるもので、基板ケース35の外面の一部であってハウジング2の分割方向(左右方向)の辺部に左右方向に突出する小さな凸部35a、35bが形成され、さらに前方側の辺部から前方側に突出する凸部35cが形成される。凸部35cは左右方向に連続する十分な長さを有する。また、後方側の底面には凹部35eが形成され、ハウジング2の内側側壁部分に形成された上下方向に並行して延びるリブ39bによって上下方向の移動が制限される。基板ケース35はこれら凸部35a~35cがハウジング2の内側側壁部分に形成された凹部38c等に嵌合されるようにして、左右分割式のハウジング2によって挟持されことにより、ハウジング2に安定的に保持される。ターミナルホルダ50は、制御回路基板31からみて開口部45側とは反対面側(下側)に配置され、制御回路基板31と対向するように設けられる。
【0029】
ハウジング2の表面には、衝突時の衝撃を緩和するためと、作業者が把持する際の触感を良くするためと、滑り止め効果を狙って軟質層6(6c)が形成される。軟質層6は、例えばエストラマであって、合成樹脂製のハウジング2の射出成形時に表面全体を覆うようにして二層構造としたものである。基板ケース35の下側には、左右方向に延びて上面が平坦に形成された梁部材40が設けられる。梁部材40は基板ケース35の底面35dに接するようにして設けられ、前後方向に見て中央よりもやや前方側の底面に接する位置に設けられる。梁部材40は中空の四角柱状であって、ハウジング2のバッテリ取付部2cの右側側面から左側側面に渡って連続するように構成される。また、梁部材40はハウジング2と同じく合成樹脂製であって、ハウジング2と一体に成形される。梁部材40の後方側であって制御回路部30と上下方向で対向する下方側にはターミナルホルダ50が設けられる。ターミナルホルダ50は、バッテリ300(
図2参照)の接続端子(図示せず、バッテリ側ターミナル)と接触させるための複数の図示しない接続端子(工具側ターミナル)を保持するための部品であって、前側辺部に凹部51aが形成され、後側の辺部に凹部51bが形成され、これらがハウジング2に形成された凸部と嵌合することによってバッテリ取付部2cの下面部分に取りつけられる。バッテリ取付部2cにはさらにレール溝52-2とレール部53-2が形成され、レール部53-2の前端近くにはラッチ溝54-2が形成される。
【0030】
図3(B)は、制御回路部30の荷重のかかる位置や変形度合いをモデル的に記載したものであって、前後方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とサポート部たる梁部材40との位置関係(静止時)を示している。制御回路部30の形状等は簡略化して四角形にて記載している。ここで符号34は、電動工具1が正立状態でバッテリ300を下にした状態にて床等に落下した際に、制御回路部30(特に樹脂33の上面)に接触する特定の部位34の前後方向位置を示したものである。特定の部位34は、
図3(A)で矢印にて示したように、開口部45の外縁とハウジング2の分割面との交差する付近に相当し、開口部45の縁部の一部付近に相当する。ここでは、ハウジング2の変形する部位34は、衝撃が加わっていないときは
図3(B)のように制御回路部30とは隙間を隔てた位置にあるが、電動工具1が正立状態で落下して床にぶつかった瞬間に、ハンドル部2bを介して部位34に加わる強い加重36Aによって、部位34が下方に移動(変形)して制御回路部30に当たることになる。しかしながら、本実施例では、加重36Aの加わる方向に対して基板ケース35の反対側に左右方向に延びる梁部材40が位置するので、変形しようとする制御回路部30の力を梁部材40による矢印41の力のように下側から支えることになる。部位34は制御回路部30の上方に位置しており制御回路部30(樹脂33を介して制御回路基板31を保持)と対向している。また、開口部45も制御回路部30の上方に位置しており制御回路部30と対向している。
【0031】
ここで比較のために
図18を用いて従来のインパクト工具のハウジング202の形状を説明する。
図18(A)は従来のインパクト工具のバッテリ取付部202cの部分拡大断面図である。制御回路部30は、
図3で示したものと同じ部品である。ハウジング202の形状は、梁部材40が形成されないことを除いて
図3で示したハウジング2と同形状である。制御回路部30の前方側の上側に開口部45が設けられる点も
図3のハウジング2と同じである。基板ケース35は前方側に凸部35cが形成され、ハウジング202に形成された凹部238cと嵌合する。基板ケース35の後方側付近であって、左右の辺部に当接するように、ハウジング2の内側側壁部分に上下方向に並行して延びるリブ239a、239b(但し図では239aは見えない)が形成される。
図18(B)は前後方向にみたハウジング202の最大変形箇所(特定の部位234)の位置(静止時)を示す図であり、(C)は前後方向にみたハウジング202の最大変形箇所の位置とサポート部の位置関係(衝撃発生時)を示す図である。前後方向に見ると制御回路部30は、前方の凹部238cと後方のリブ239a、239bにより保持される。また、特定の部位234は前方の凹部238cと後方のリブ239a、239bの間に位置する。ここで、インパクト工具の落下等によって、特定の部位234に矢印236方向の下向きの力が作用すると、特定の部位234が変形して制御回路部30に接触し、制御回路部30が凹部238cと後方のリブ239a、239bを支点として下向きに撓むことになる。この際下向きの力236に対して、リブ239a、239bから上向きの力240a、240bが作用する。
図3に戻り、
図3(C)と
図8(C)を比較すると一目瞭然のように、本実施例では梁部材40がハウジング202の最大変形箇所(特定の部位234)と上下方向に一致する位置にあるため、制御回路部30の変形を効果的に抑制することができる。
【0032】
図4(A)は
図3のA-A部の断面図であって、本実施例のハウジング2の形状を示す。容器状の基板ケース35は左右が壁面になっており、上部において二箇所の凸部35a、35bが水平方向に突出するように形成される。基板ケース35は制御回路基板31の後述する部位34に対向する側の面(第1面)側は開放され、第1面と反対側に位置する面(第2面)を覆っている。尚、
図3(A)のA-A断面位置が完全な平面状ではないため、凸部35a、35bの下面がハウジング2のバッテリ取付部2cの内壁面と当接していないように見えるが、
図3(A)のA-A線の位置を比較するとわかるように、実際には凸部35a、35bの下面はバッテリ取付部2cの内壁面に形成されたリブと当接する。凸部35a、35bの前後方向の大きさは、基板ケース35の長さに匹敵するような大きさではなく、
図3(A)にて点線で示したように凸部35a、35bは前方側に一部にだけ形成される。これは、制御回路基板31の重量は他の構成要素(モータ3、動力伝達機構、バッテリ300)に比べると小さいので、落下による過大な衝撃が加わらない限りさほど強度を必要としないためである。ここでは制御回路部30(又は制御回路基板31)の第1の方向(前後方向)にみて、変形する部位34と一致する1箇所に梁部材40が位置するように形成した。
【0033】
ここで比較のために
図19を用いて従来のインパクト工具のハウジング202の形状も説明する。
図19は
図18のH-H部の断面図である。ここでは基板ケース35の下側に梁部材40が形成されないため、凸部35aと35bを保持するためのリブ238a、238bがハウジング202に形成される。一方、基板ケース35の底面35dの下側は隙間となっている。
図19(B)は左右方向にみたハウジング202の最大変形箇所(特定の部位234)の位置と、凸部35aと35bを保持するリブ238a、238bの位置関係(静止時)を示す図であり、(C)は左右方向にみたハウジングの最大変形箇所の位置とリブ238a、238bの位置関係(衝撃発生時)を示す図である。この図からわかるように、特定の部位234に矢印236で示す方向に強い力が加わると制御回路部30は下方に撓む。この際、矢印236の力を受ける部分が、左右の両端部であってそれらの作用点が141a、141bとなる。
【0034】
図4(B)は、左右方向にみたハウジング2の最大変形箇所の位置とサポート部たる梁部材40との位置関係(静止時)を示す図である。梁部材40は、ハウジング2の右側部分と一体に成形された右梁部材40-1と、ハウジング2の左側部分と一体に成形された左梁部材40-2により構成され、右梁部材40-1と左梁部材40-2の接触部位は片方が凹状、片方が凸状に形成されて、接合時に凹部と凸部が嵌合するように構成される。基板ケース35の底面35dには、梁部材40-1と40-2が左右方向に連続するように接する。この状態を示すのが
図4(B)であり、電動工具の静止時(落下衝撃時でない状態)には、変形しやすい特定の部位34は制御回路部30と所定の隙間を有して非接触状態にある。電動工具1が正立状態で落下して床にぶつかった瞬間には、
図4(C)に示すようにハンドル部2bを介して加わる強い加重36Aによって、特定の部位34が下方に移動するため制御回路部30に接触する。しかしながら、本実施例では、加重36Aに加わる位置の延長線上であって基板ケース35の反対側に、左右方向に延びる梁部材40が位置するので、変形しようとする制御回路部30を梁部材40(40-1と40-2)が矢印41Aの力の向きに下側から支えることになる。ここでは制御回路部30(又は制御回路基板31)の第2の方向(左右方向)にみて、変形する部位34を含む左右全体に梁部材40(40-1と40-2)が位置するように形成した。このように梁部材40を設けたことによって制御回路部30の制御回路基板31に加わる過大な加重によって制御回路基板31が変形することを効果的に抑制できる。特に、
図4(C)の制御回路部30の撓み具合と、
図19(C)の制御回路部30撓み具合を比較すると、
図4で示す構造の方が、制御回路基板31に及ぼす撓みが大幅に少ないことが理解できるであろう。
【0035】
図5は
図3のB-B部からみた斜視断面図である。この断面位置では基板ケース35の左右両側には凸部が形成されていない。実際の制御回路基板31には、マイコンやその他の電子部品類が搭載されるが、それらの図示は省略している。基板ケース35の左右両側は、壁部37にて基板ケース35が左右方向にがたつかないように保持される。基板ケース35の下側には梁部材40(40-1、40-2)が設けられる。梁部材40は長手方向と断面形状が中空となるような筒状に形成されているが、中空でなくて中実の梁部としても良い。右梁部材40-1は右側のバッテリ取付部2c-1と一体に成形され、左梁部材40-2は左側のバッテリ取付部2c-1と一体に成形されるので、強度は十分高い。梁部材40の下側には、バッテリ300の上面が位置することになり、左右の両側にはレール溝52-1、52-2が形成される。レール溝52-1、52-2の下側には、それぞれ内側に突出するレール部53-1、53-2が形成される。レール部53-1、53-2の先端側には、ラッチ爪が係合するためのラッチ溝54-1、54-2が形成される。
【0036】
バッテリ取付部2cの上面には、バッテリ取付部2c-1と2c-2の接合面と交差するように開口部45が形成される。開口部45はスイッチパネル46(
図1参照)を設けるために形成されるもので、ハウジング2のハンドル部2b(2b-1、2b-2)の付け根付近よりも前側近傍に配置される。このようにハンドル部2b(2b-1と2b-2)とバッテリ取付部2c(2c-1、2c-2)の付け根43d付近の近傍に開口部45を設けると、開口部45の付け根43dに近い部分(特定の部位34)の強度が他の部位に比べて低下してしまう。電動工具1が正立状態で落下して床にぶつかった場合、バッテリ300が先に床に当たることが多く、その際、モータ3や動力伝達機構等の重量物の落下による加重がハンドル部2bを介してバッテリ取付部2cに加わるため、特定の部位34が加重によって一番多く変形する。この変形の様子を示すのが
図6である。
【0037】
図6は
図3(A)と同じバッテリ取付部2cの部分拡大断面図であって、正立状態にて落下させた衝撃が加わった際の状況を示す図である。本実施例のようにバッテリ取付部2cの水平方向に延在する延在部から、直交する上方に延在するハンドル部2bが形成される場合であって、延在部の上面にスイッチパネル46(
図1参照)用の開口部45が形成される場合、落下による衝撃を受けると特定の部位34が下側に押しやられるようにして変形する。これはハウジング2のバッテリ取付部2cに大きい開口部45があるためであり、開口部45のうちハンドル部2bからの衝撃が伝わる部分に一番近くて、かつ、強度的に弱い部分の変形が一番大きくなってしまうためである。この結果、
図6中の34cのように開口部45の中央後方側縁部が下方に変形して沈み込み、部位34が樹脂33の内部に押し込まれる。このように変形すると、制御回路部30を下方に曲げる力が作用する。制御回路基板31に加わる力には、圧縮応力と曲げ応力があるが、圧縮応力よりも曲げ応力の加わる方が基板が割れる虞が高くなる。曲げ応力は、制御回路基板31の中心に近い部分に力が掛かると破損の虞が高くなる。よって、電動工具1の落下時の衝撃で制御回路基板31の中心に近い部分が曲げられると壊れてしまうことがある。これに対して本実施例では梁部材40が基板ケース35の下方であって、特定の部位34の直下に形成されるので、特定の部位34に応力が加わっても、制御回路部30を曲げるような変形が抑制されるので、制御回路基板31が曲げられることに起因する制御回路基板31に搭載された電子部品の破損を効果的に抑制できる。
【0038】
図7は
図6のC-C断面図であり、正立状態にて落下させた衝撃が加わった際の衝撃の状態を示す図である。衝撃によって変形する特定の部位34は、左右分割式のハウジング2の接合面付近であり、
図7に示すように左右方向にみて中央の分割面付近が下向きの凸状に変形する(図中33a)。ここでも、変形する部位34の下方であって、基板ケース35の下側には梁部材40(40-1、40-2)が配置されるので、制御回路部30を曲げるような変形(部位34の変形)が抑制され、制御回路基板31に加わる曲げ力を抑制できる。
【0039】
図8はバッテリ取付部2cの延在部を示す上面図であり、スイッチパネル46を示す図である。ハンドル部2bの付け根付近の外縁形状は略円形であり、その付け根付近よりも前方側と、右方側と、左方側に平面状に延在する延在部が形成される。スイッチパネル46は前方側に延在する延在部のほぼ中央付近に配置されるものである。スイッチパネル46はハウジング2に形成された開口部45に配置されるが、制御回路基板31を収容する基板ケース35は、開口部45の真下になるように配置すると、配線的にも組立的にも有利である。スイッチパネル46は合成樹脂製であり、そこにはソフトタッチスイッチによるスイッチ類と点灯手段が設けられる。ライトスイッチ47は、照明装置9の照射モードを設定するスイッチであり、一定時間(例えば2分)だけトリガレバー7aの操作の有無に関係なく点灯させる連続照射モードと、トリガレバー7aの操作があったら点灯させてトリガレバー7aを離したら短い時間(例えば10秒)で消灯するスイッチ連動照射モードがある。ライトスイッチ47を押す毎に、連続照射モード→スイッチ連動照射モード→消灯が切り替わり、連続照射モードの時はLED48aが点灯し、スイッチ連動照射モードの時はLED48bが点灯し、照明装置9が消灯の時は、LED48a、48bのいずれも点灯しない。スイッチパネル46の右側には、ここではロゴが表示されているだけで他のスイッチ類が設けられていない。しかしながら、バッテリの残量をチェックするためのスイッチと複数のLEDを設けても良いし、締め付けモードを切り替えるための締め付けモード切替スイッチと複数のLEDを設けても良い。スイッチパネル46はハウジング2とは別体部品にて製造され、制御回路基板31に接続されるようにして固定され、分割式のハウジング2の開口部45にてスイッチパネル46の外縁部分が挟持される。
【0040】
図8においては、楕円で囲む付近が落下時の衝撃で変形しやすい特定の部位34である。これに対して梁部材40の設けられる位置は点線にて示す位置になる。
図8により特定の部位34を上面から透視したら、梁部材40の内部領域に含まれる位置関係にあることが理解できよう。また、矩形の点線で示された梁部材40の占める領域は、スイッチパネル46の占める領域と部分的に重なるように位置づけられるので、特定の部位34に対する落下時の衝撃対策となる上に、スイッチパネル46の操作時に、スイッチパネル46に加わる押圧力の影響が制御回路部30に及んで制御回路基板31を変形させようとする加重に対しても効果的に対抗できる。このように、製品の落下によりハウジング2の一部、特に特定の部位34が変形した際に、ハウジング2によって制御回路基板31が押し込まれて破損することを防止できる。
【0041】
以上説明したように、本実施例ではハウジング2のバッテリ取付部2cの内側部分であって、分割面に直交する方向に延びる梁部材40を形成し、制御回路基板31を収容する基板ケース35の底面35d(制御回路基板31の第2面側)を保持するようにしたので、電動工具1を誤って落下させてしまった際に、制御回路基板31が破損してしまう可能性を大幅に減らすことができる。また、ハウジング2の射出成形の型を変更するだけで梁部材40を形成することができ、しかも制御回路基板31や基板ケース35は従来の形状のままで良いので、本願発明の適用も容易である。特に、制御回路部30がハンドル部2bからバッテリ取付部2c(収容部)のハンドル部2bより径方向に突出した突出部分にわたって配置されている構成、すなわち、部位34に対して前後又は左右両側でバッテリ取付部2cに支持されている構成で有効である。制御回路部30が突出部分のみに収容(支持)されている構成では部位34によって制御回路部30が押されても撓む虞は少ないためである。