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特開2024-54242無細胞メチル化DNAを捕捉する方法及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024054242
(43)【公開日】2024-04-16
(54)【発明の名称】無細胞メチル化DNAを捕捉する方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240409BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240409BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20240409BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6886 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017072
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2021103482の分割
【原出願日】2017-05-03
(31)【優先権主張番号】62/331,070
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(71)【出願人】
【識別番号】517304738
【氏名又は名称】シナイ ヘルス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ディニズ デ カルヴァルホ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェン シュー イー
(72)【発明者】
【氏名】シンガニア ラジャット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】100mg未満の無細胞DNAを含む試料から無細胞メチル化DNAを捕捉する方法を提供する。
【解決手段】試料をライブラリ調製に供して、それに続く無細胞メチル化DNAの配列決定を可能にするステップ、第1の量のフィラーDNAを試料に添加するステップであって、フィラーDNAの少なくとも一部がメチル化されているステップ、試料を変性させるステップ、及びメチル化ポリヌクレオチドに選択的な結合剤を用いて無細胞メチル化DNAを捕捉するステップを含む、方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100ng未満の無細胞DNAを含む試料から無細胞メチル化DNAを捕捉する方法で
あって、
a.前記試料をライブラリ調製に供して、それに続く前記無細胞メチル化DNAの配列
決定を可能にするステップ、
b.第1の量のフィラーDNAを前記試料に添加するステップであって、前記フィラー
DNAの少なくとも一部がメチル化されているステップ、
c.前記試料を変性させるステップ、及び
d.メチル化ポリヌクレオチドに選択的な結合剤を用いて無細胞メチル化DNAを捕捉
するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記捕捉された無細胞メチル化DNAを増幅し、続いて配列決定するステップを更に含
む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が50ng未満の無細胞DNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量のフィラーDNAが、約5%、10%、15%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、80%、90%又は100%メチル化フィラーDNA、好ま
しくは5%~50%、10%~40%、又は15%~30%メチル化フィラーDNAを含
み、残りが非メチル化フィラーDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の量のフィラーDNAが20ng~100ng、好ましくは30ng~100
ng、より好ましくは50ng~100ngである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料からの前記無細胞DNAと前記第1の量のフィラーDNAが一緒に、少なくと
も50ngの全DNA、好ましくは少なくとも100ngの全DNAを含む、請求項1に
記載の方法。
【請求項7】
前記フィラーDNAが50bp~800bp長、好ましくは100bp~600bp長
、より好ましくは200bp~600bp長である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラーDNAが二本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フィラーDNAがジャンクDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フィラーDNAが内在又は外来DNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィラーDNAが非ヒトDNA、好ましくはλDNAである、請求項10に記載の
方法。
【請求項12】
前記フィラーDNAがヒトDNAとのアラインメントがない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記結合剤が、メチルCpG結合ドメインを含むタンパク質である、請求項1に記載の
方法。
【請求項14】
前記タンパク質がMBD2タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)が、前記無細胞メチル化DNAを抗体を用いて免疫沈降させるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも0.05μg、好ましくは少なくとも0.16μgの前記抗体を免疫沈降の
ために前記試料に添加するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が5-MeC抗体又は5-ヒドロキシメチルシトシン抗体である、請求項15
に記載の方法。
【請求項18】
免疫沈降反応を確認するためにステップ(b)の後に第2の量の対照DNAを前記試料
に添加するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
無細胞メチル化DNAの捕捉を確認するために、ステップ(b)の後に第2の量の対照
DNAを前記試料に添加するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記試料内のDNAメチル化プロファイルを測定するための請求項1から19のいずれ
か一項に記載の方法の使用。
【請求項21】
前記プロファイルを腫瘍組織の公知のメチル化プロファイルと相関させることによって
前記試料内の癌細胞由来の無細胞DNAの存在を確認するための、請求項20に記載のD
NAメチル化プロファイルの使用。
【請求項22】
前記プロファイルを特定の組織の公知のメチル化プロファイルと相関させることによっ
て前記試料内の前記無細胞DNAの起源組織を特定するための、請求項20に記載のDN
Aメチル化プロファイルの使用。
【請求項23】
前記試料内の前記無細胞DNA内の前記癌細胞の起源組織を特定するための請求項22
に記載の使用を更に含む、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
免疫療法をモニターするための請求項20から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
自己免疫状態の診断のための請求項20から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記試料が採取された対象における細胞回転を測定するための請求項22に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、その全体を本明細書に援用する2016年5月3日に出願された米国仮特許出
願第62/331,070号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、無細胞DNAの分野、より具体的には無細胞メチル化DNAを捕捉する方法
及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
DNAメチル化は、DNAの共有結合修飾であり、クロマチン構造において重要な役割
を果たす安定な遺伝子調節機構である。ヒトにおいては、DNAメチル化は、CpGジヌ
クレオチド中のシトシン残基で主に発生する。他のジヌクレオチドとは異なり、CpGは
、ゲノム全体に均等に分布せず、その代わり、CpG島と呼ばれる短いCpGリッチDN
A領域に濃縮されている。DNAメチル化は、以下の2つの主な機序によって遺伝子を抑
制し得る:1)メチル結合ドメインタンパク質を補充し、メチル結合ドメインタンパク質
は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を補充することができる、及び2)c-MY
Cなどの転写因子(TF:transcription factor)の結合部位への
アクセスを遮断する(非特許文献1)。
【0004】
一般に、ゲノム中のCpG部位の大部分はメチル化されており、CpG島の大部分は、
正常発生中及び分化組織中で非メチル化されたままである(非特許文献1)。それでも、
正常一次組織においてDNAメチル化の組織特異的パターンを明らかにすることができる
(非特許文献2)。さらに、悪性転換中、全体的なDNA低メチル化、及びCpG島にお
ける限局的な高メチル化が頻繁に認められる(非特許文献1)。実際には、DNAメチル
化パターンは、癌患者を多数の癌タイプの中でも、グリア芽細胞腫(非特許文献3)、上
衣腫(非特許文献4)、結腸直腸(非特許文献5)、乳房(非特許文献6、7)における
予後予測因子(prognostic value)を有する臨床的に関連するサブグル
ープに層別化するのに使用された。
【0005】
正常分化及び癌などの疾患におけるその安定性及び役割のために、DNAメチル化は、
腫瘍特性及び表現状態を表すのに使用することができる良好なバイオマーカーであり、し
たがって個別化医療で高い可能性がある。多数の試料タイプが、DNAメチル化マッピン
グに、また、とりわけ新しいFFPE腫瘍組織、血球、尿、唾液、便を含めたバイオマー
カー発見に適している(非特許文献8)。より最近では、特にゲノム識別が癌(体細胞変
異)(非特許文献9)、移植片(ドナー対レシピエントDNA)(非特許文献10)、妊
娠(胎児対母DNA)(非特許文献11、12)などに存在する状況では、バイオマーカ
ーとしての循環無細胞DNA(cfDNA:cell-free DNA)の使用が加速
している。バイオマーカーとしてのcfDNAのDNAメチル化マッピングの使用は、起
源組織の同定を可能にし、癌患者を低侵襲で層別化することができるので、重大な影響を
有し得る。さらに、それは、免疫応答、神経変性疾患又は心筋梗塞のモニタリングなどの
ゲノム識別が存在しない状況において、バイオマーカーとしてのcfDNAの使用を可能
にすることができ、エピジェネティックな異常をcfDNA中に検出することができる。
【0006】
さらに、cfDNAの全ゲノムDNAメチル化マッピングを使用すると、疾患を証明す
るX線像がない初期癌の患者において循環腫瘍DNA(ctDNA:circulati
ng tumor DNA)を検出する際の重要な感度の問題を克服することができる。
既存のctDNA検出法は、変異の配列決定に基づくが、腫瘍と正常循環cfDNAを識
別するのに利用可能な反復突然変異の数が限られるため、感度が幾分限定される(非特許
文献13、14)。一方、全ゲノムDNAメチル化マッピングは、循環腫瘍DNA(ct
DNA)を正常循環無細胞DNA(cfDNA)から識別するのに使用することができる
多数のエピジェネティックな変化を活用する。例えば、上衣腫などの一部の腫瘍タイプは
、重要な反復体細胞変異なしに広範なDNAメチル化異常を有し得る(非特許文献4)。
【0007】
さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の全癌データ
は、実質的にすべての腫瘍タイプにわたって腫瘍と正常組織の間の多数のDMRを示して
いる(非特許文献15)。したがって、これらの知見によって強調されることは、癌特異
的DNAメチル化変化をctDNAから回収するのに成功したアッセイが、悪性疾患を低
配列決定関連コストで検出、分類及びモニターする極めて高感度のツールとして役立ち得
るということである。
【0008】
しかし、cfDNA中のDNAメチル化の全ゲノムマッピングは、入手可能なDNAの
量が少なく、cfDNAが200bp長未満に断片化されることから、極めて困難である
(非特許文献16)。このため、少なくとも50~100ngのDNAを必要とする従来
のMeDIP-seq(非特許文献17)、又は断片化されていないDNAを必要とする
Reduced Representation Bisulfite Sequenc
ing(RRBS)(非特許文献18)を行うことは不可能である。cfDNA中のDN
Aメチル化をマッピングする別の問題は、正常cfDNA内の目的DNAの量が少ないこ
とである(非特許文献19)。このため、少量のDNAを捕捉するのに十分な深さの配列
決定のコストが法外であるので、WGBSを行うことは非現実的である。一方、メチル化
しやすいCpGリッチな特徴部を選択的に濃縮する方法は、1つのリードで入手可能な有
用情報量を最大にし、コストを削減し、DNA損失を減少させる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sharma, S., Kelly, T. K. & Jones, P. A. Epigenetics in cancer. Carcinogenesis 31, 27-36, doi:10.1093/carcin/bgp220 (2010).
【非特許文献2】Varley, K. E. et al. Dynamic DNA methylation across diverse human cell lines and tissues. Genome Res 23, 555-567, doi:10.1101/gr.147942.112 (2013).
【非特許文献3】Sturm, D. et al. Hotspot mutations in H3F3A and IDH1 define distinct epigenetic and biological subgroups of glioblastoma. Cancer Cell 22, 425-437, doi:10.1016/j.ccr.2012.08.024 (2012).
【非特許文献4】Mack, S. C. et al. Epigenomic alterations define lethal CIMP-positive ependymomas of infancy. Nature 506, 445-450, doi:10.1038/nature13108 (2014).
【非特許文献5】Hinoue, T. et al. Genome-scale analysis of aberrant DNA methylation in colorectal cancer. Genome Res 22, 271-282, doi:10.1101/gr.117523.110 (2012).
【非特許文献6】Stirzaker, C. et al. Methylome sequencing in triple-negative breast cancer reveals distinct methylation clusters with prognostic value. Nat Commun 6, 5899, doi:10.1038/ncomms6899 (2015).
【非特許文献7】Fang, F. et al. Breast cancer methylomes establish an epigenomic foundation for metastasis. Sci Transl Med 3, 75ra25, doi:10.1126/scitranslmed.3001875 (2011).
【非特許文献8】Mikeska, T. & Craig, J. M. DNA methylation biomarkers: cancer and beyond. Genes (Basel) 5, 821-864, doi:10.3390/genes5030821 (2014).
【非特許文献9】Diaz, L. A., Jr. & Bardelli, A. Liquid biopsies: genotyping circulating tumor DNA. J Clin Oncol 32, 579-586, doi:10.1200/JCO.2012.45.2011 (2014).
【非特許文献10】Snyder, T. M., Khush, K. K., Valantine, H. A. & Quake, S. R. Universal noninvasive detection of solid organ transplant rejection. Proc Natl Acad Sci U S A 108, 6229-6234, doi:10.1073/pnas.1013924108 (2011).
【非特許文献11】Chiu, R. W. et al. Noninvasive prenatal diagnosis of fetal chromosomal aneuploidy by massively parallel genomic sequencing of DNA in maternal plasma. Proc Natl Acad Sci U S A 105, 20458-20463, doi:10.1073/pnas.0810641105 (2008).
【非特許文献12】Fan, H. C., Blumenfeld, Y. J., Chitkara, U., Hudgins, L. & Quake, S. R. Noninvasive diagnosis of fetal aneuploidy by shotgun sequencing DNA from maternal blood. Proc Natl Acad Sci U S A 105, 16266-16271, doi:10.1073/pnas.0808319105 (2008).
【非特許文献13】Newman, A. M. et al. An ultrasensitive method for quantitating circulating tumor DNA with broad patient coverage. Nat Med 20, 548-554, doi:10.1038/nm.3519 (2014).
【非特許文献14】Aravanis, A. M., Lee, M. & Klausner, R. D. Next-Generation Sequencing of Circulating Tumor DNA for Early Cancer Detection. Cell 168, 571-574, doi:10.1016/j.cell.2017.01.030 (2017).
【非特許文献15】Hoadley, K. A. et al. Multiplatform analysis of 12 cancer types reveals molecular classification within and across tissues of origin. Cell 158, 929-944, doi:10.1016/j.cell.2014.06.049 (2014).
【非特許文献16】Fleischhacker, M. & Schmidt, B. Circulating nucleic acids (CNAs) and cancer-a survey. Biochim Biophys Acta 1775, 181-232, doi:10.1016/j.bbcan.2006.10.001 (2007).
【非特許文献17】Taiwo, O. et al. Methylome analysis using MeDIP-seq with low DNA concentrations. Nat Protoc 7, 617-636, doi:10.1038/nprot.2012.012 (2012).
【非特許文献18】Gu, H. et al. Preparation of reduced representation bisulfite sequencing libraries for genome-scale DNA methylation profiling. Nat Protoc 6, 468-481, doi:10.1038/nprot.2010.190 (2011).
【非特許文献19】Hung, E. C., Chiu, R. W. & Lo, Y. M. Detection of circulating fetal nucleic acids: a review of methods and applications. J Clin Pathol 62, 308-313, doi:10.1136/jcp.2007.048470 (2009).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、100ng未満の無細胞DNAを含む試料から無細胞メチル化DNA
を捕捉する方法であって、試料をライブラリ調製に供して、それに続く無細胞メチル化D
NAの配列決定を可能にするステップ、第1の量のフィラーDNAを試料に添加するステ
ップであって、フィラーDNAの少なくとも一部がメチル化されているステップ、試料を
変性させるステップ、及びメチル化ポリヌクレオチドに選択的な結合剤を用いて無細胞メ
チル化DNAを捕捉するステップを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明の実施形態は、以下の記述及び添付図面を参照すると最も良く理解することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。少なくとも1つのエピ変異をctDNA濃度(列)、検査DMR数(行)及び配列決定深さ(x軸)の関数として検出する確率のコンピュータシミュレーション。
図1B】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。血漿cfDNAを模倣するように断片化されたHCT116細胞系由来の1~100ngの入力DNAのDNAメチル化シグナルの全ゲノムピアソン相関。各濃度は、2つの生物学的複製を有する。
図1C】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。HCT116由来の異なる濃度の入力DNAからのcfMeDIP-seqから得られるDNAメチル化プロファイル(緑のトラック)+ENCODE(ENCSR000DFS)から得られるReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)HCT116データ及びGEO(GSM1465024)から得られるWhole-Genome Bisulfite Sequencing(WGBS)HCT116データ。ヒートマップ(RRBSトラック)では、黄色はメチル化を意味し、青色は非メチル化を意味し、灰色はカバー度0を意味する。
図1D】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)細胞系MM1.S中へのCRC細胞系HCT116の段階希釈。cfMeDIP-seqを純粋HCT116 DNA(100%CRC)、純粋MM1.S DNA(100%MM)、並びにMM DNA中に希釈された10%、1%、0.1%、0.01%及び0.001%CRC DNAにおいて行った。すべてのDNAを血漿cfDNAを模倣するように断片化した。本発明者らは、観察と予想(D)DMR数及び(E)これらDMR内のDNAメチル化シグナル(RPKM単位)のほぼ完全な線形相関(r=0.99、p<0.0001)を認めた。
図1E】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)細胞系MM1.S中へのCRC細胞系HCT116の段階希釈。cfMeDIP-seqを純粋HCT116 DNA(100%CRC)、純粋MM1.S DNA(100%MM)、並びにMM DNA中に希釈された10%、1%、0.1%、0.01%及び0.001%CRC DNAにおいて行った。すべてのDNAを血漿cfDNAを模倣するように断片化した。本発明者らは、観察と予想(D)DMR数及び(E)これらDMR内のDNAメチル化シグナル(RPKM単位)のほぼ完全な線形相関(r=0.99、p<0.0001)を認めた。
図1F】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。同じ希釈系列においては、公知の体細胞変異は、バックグラウンド配列決定装置及びポリメラーゼ誤り率を超える超深度(>10,000×)標的配列決定によって1/100対立遺伝子割合においてのみ検出可能である。CRC細胞系における各変異の部位に各塩基又は挿入/欠失を含むリードの割合を示す。
図1G】cfDNAのメチローム分析が少量の入力DNA中のctDNAを濃縮し、検出する高感度な手法であることを示す図である。2名の結腸直腸癌患者からの患者由来の異種移植片(PDX:patient-derived xenograft)を有するマウスの血漿中の総cfDNA(ヒト+マウス)に対する割合としてのctDNA(ヒト)の頻度。
図2】cfMeDIP-seqプロトコルの略図である。
図3A-1】配列決定飽和(sequencing saturation)分析及び品質管理を示す図である。図は、血漿cfDNAを模倣するように断片化されたHCT116 DNAからの各入力濃度に対する各複製からのcfMeDIP-seqデータを分析するBioconductorパッケージMEDIPSの飽和分析の結果を示す。
図3A-2】配列決定飽和(sequencing saturation)分析及び品質管理を示す図である。図は、血漿cfDNAを模倣するように断片化されたHCT116 DNAからの各入力濃度に対する各複製からのcfMeDIP-seqデータを分析するBioconductorパッケージMEDIPSの飽和分析の結果を示す。
図3A-3】配列決定飽和(sequencing saturation)分析及び品質管理を示す図である。図は、血漿cfDNAを模倣するように断片化されたHCT116 DNAからの各入力濃度に対する各複製からのcfMeDIP-seqデータを分析するBioconductorパッケージMEDIPSの飽和分析の結果を示す。
図3B】配列決定飽和(sequencing saturation)分析及び品質管理を示す図である。HCT116細胞系の4つの開始DNA濃度(100、10、5及び1ng)の2つの複製において手順を試験した。反応の特異性をメチル化及び非メチル化添加シロイヌナズナDNAを用いて計算した。濃縮倍率比を断片化HCT116 DNAのゲノム領域(メチル化精巣特異的H2B、TSH2B0及び非メチル化ヒトDNA領域(GAPDHプロモーター)のプライマー)を用いて計算した。水平の点線は、濃縮倍率比閾値25を示す。エラーバーは、±1s.e.m.である。
図3C】配列決定飽和(sequencing saturation)分析及び品質管理を示す図である。配列決定試料のCpG濃縮スコアは、入力対照に比べて免疫沈降試料からのゲノム領域内のCpGの堅牢な濃縮を示す。CpG濃縮スコアは、領域のCpGの相対頻度をヒトゲノムのCpGの相対頻度で除算することによって得られた。エラーバーは、±1s.e.m.である。
図4A】段階希釈からのcfMeDIP-seqからの品質管理を示す図である。MM DNA(MM1.S)中へのCRC DNA(HCT116)希釈の略図。
図4B】段階希釈からのcfMeDIP-seqからの品質管理を示す図である。各希釈の反応の特異性をメチル化及び非メチル化添加シロイヌナズナDNAを用いて計算した。
図4C】段階希釈からのcfMeDIP-seqからの品質管理を示す図である。配列決定試料のCpG濃縮スコアは、免疫沈降試料からのゲノム領域内のCpGの強力な濃縮を示す。CpG濃縮スコアは、領域のCpGの相対頻度をヒトゲノムにおけるCpGの相対頻度で除算することによって得られた。
図4D-1】段階希釈からのcfMeDIP-seqからの品質管理を示す図である。図は、各希釈ポイントからの飽和分析の結果を示す。
図4D-2】段階希釈からのcfMeDIP-seqからの品質管理を示す図である。図は、各希釈ポイントからの飽和分析の結果を示す。
図5A】cfMeDIP-seq法が膵臓腺癌患者から得られる循環cfDNA上の数千の差次的メチル化領域を同定可能であることを示す図である。実験計画。
図5B】cfMeDIP-seq法が膵臓腺癌患者から得られる循環cfDNA上の数千の差次的メチル化領域を同定可能であることを示す図である。cfMeDIP-seqを用いた膵癌(症例、n=24)対健常ドナー(対照、n=24)からの循環cfDNAのボルケーノプロット。赤い点は、多重検定補正後に有意になった窓を示す。
図5C】cfMeDIP-seq法が膵臓腺癌患者から得られる循環cfDNA上の数千の差次的メチル化領域を同定可能であることを示す図である。健常ドナー及び膵癌患者由来の血漿DNA中で同定された38,085個のDMRのヒートマップ。階層的クラスタリング方法:Ward。
図5D】cfMeDIP-seq法が膵臓腺癌患者から得られる循環cfDNA上の数千の差次的メチル化領域を同定可能であることを示す図である。血漿(症例対対照)中で同定されたDMRと原発腫瘍組織(原発腫瘍対正常組織)中で同定された癌特異的DMCの予想対観察重複の頻度を推定する順列分析。ボックスプロットは、重複の帰無分布を表す。菱形は、原発腫瘍組織と循環cfDNAからのDNAメチル化の重複の実験的に観察された数である。赤い菱形は、重複の観察数が偶然に予想よりも有意に多いことを意味する。緑の菱形は重複の観察数が偶然に予想よりも有意に少ないことを意味し、青い菱形は有意でない。本発明者らは4つの可能な重複を計算した:原発腫瘍組織における高メチル化と循環cfDNAにおける高メチル化(濃縮、P値:6.4×10-22);腫瘍組織における高メチル化と循環cfDNAにおける低メチル化(欠乏、P値:9.43×10-17);腫瘍組織における低メチル化と循環cfDNAにおける低メチル化(濃縮、P値:1.88×10-283);腫瘍組織における低メチル化と循環cfDNAにおける高メチル化(P値:0.105)。
図5E】cfMeDIP-seq法が膵臓腺癌患者から得られる循環cfDNA上の数千の差次的メチル化領域を同定可能であることを示す図である。血漿(症例対対照)中で同定されたDMRと原発腫瘍組織(原発腫瘍対正常PBMC)中で同定された癌特異的DMCの予想対観察重複の頻度を推定する順列分析。
図6A】膵臓腺癌患者(症例)由来の循環cfDNAからのcfMeDIP-seqの品質管理を示す図である。各症例試料の反応の特異性をメチル化及び非メチル化添加シロイヌナズナDNAを用いて計算した。濃縮倍率比は、利用可能なDNAの量が極めて限られたために計算されなかった。
図6B】健常ドナー(対照)由来の循環cfDNAからのcfMeDIP-seqの品質管理を示す図である。各対照試料の反応の特異性をメチル化及び非メチル化添加シロイヌナズナDNAを用いて計算した。濃縮倍率比は、利用可能なDNAの量が極めて限られたために計算されなかった。
図6C】膵臓腺癌患者(症例)由来の循環cfDNAからのcfMeDIP-seqの品質管理を示す図である。配列決定試料のCpG濃縮スコアは、免疫沈降試料からのゲノム領域内のCpGの強力な濃縮を示す。
図6D】健常ドナー(対照)由来の循環cfDNAからのcfMeDIP-seqの品質管理を示す図である。配列決定試料のCpG濃縮スコアは、免疫沈降試料からのゲノム領域内のCpGの強力な濃縮を示す。
図7A】上位百万の最も変わりやすい全ゲノム窓を用いた健常ドナー及び初期膵臓腺癌患者からの48の血漿cfDNAメチル化についてのPCAを示す図である。各窓では、データの中央値からの絶対偏差の中央値を返す堅牢な測定である平均絶対偏差(MAD:Mean Absolute Deviation)測定規準によって可変性を計算した。この場合、データは、所与の窓に対する全48試料にわたるRPKM値である。PC1対PC2(左)及びPC1対PC3(右)を示す。
図7B】各主成分の変動率。
図7C】RRBSを用いた膵臓腺癌患者由来の腫瘍対正常LCM組織のボルケーノプロット。同定された差次的メチル化CpG(DMC:Differentially Methylated CpG)の総数を示す。赤い点は、多重検定補正後に有意になった、絶対的メチル化差違(絶対的デルタベータ)>0.25の窓を示す。
図7D】各重複窓のDNAメチル化差違の有意性を示す散布図。X軸は、RRBSデータからの原発膵臓腺癌腫瘍対正常組織のlog10q値を示す。領域が腫瘍において高メチル化されている場合、有意性は正のスケールで示される。低メチル化領域は負のスケールで示される。Y軸は、cfMeDIP-seqデータからの膵臓腺癌患者対健常ドナーからの血漿cfDNAメチル化のlog10q値を示す。青い点は、どちらも有意である。赤い線は、傾向線を示す。
図7E】各重複窓のDNAメチル化差違を示す散布図。X軸は、RRBSデータからの原発膵臓腺癌腫瘍対正常組織のDNAメチル化差違を示す。Y軸は、cfMeDIP-seqデータからの膵臓腺癌患者対健常ドナーからの血漿cfDNAメチル化のDNAメチル化差違を示す。青い線は、傾向線を示す。
図7F】RRBSを用いたLCM膵臓腺癌組織対正常PBMCのボルケーノプロット。同定された差次的メチル化CpG(DMC)の総数を示す。赤い点は、多重検定補正後に有意になった、絶対的メチル化差違(絶対的デルタベータ)>0.25の窓を示す。
図7G】各重複窓のDNAメチル化差違の有意性を示す散布図。X軸は、RRBSデータからの原発膵臓腺癌腫瘍対正常PBMCのlog10q値を示す。領域が腫瘍において高メチル化されている場合、有意性は正のスケールで示される。低メチル化領域は負のスケールで示される。Y軸は、cfMeDIP-seqデータからの膵臓腺癌患者対健常ドナーからの血漿cfDNAメチル化のlog10q値を示す。青い点は、どちらも有意である。赤い線は、傾向線を示す。
図7H】各重複窓のDNAメチル化差違を示す散布図。X軸は、RRBSデータからの原発膵臓腺癌腫瘍対正常PBMCのDNAメチル化差違を示す。Y軸は、cfMeDIP-seqデータからの膵臓腺癌患者対健常ドナーからの血漿cfDNAメチル化のDNAメチル化差違を示す。
図8A】循環cfDNAメチル化プロファイルを使用して、転写因子(TF:transcription factor)フットプリントを同定し、起源組織中の活性転写ネットワークを推測できることを示す図である。複数のヒト組織にわたる健常ドナー由来のcfDNA中の低メチル化された領域(対照における低メチル化フットプリント)においてそのモチーフが(ソフトウェアHOMER20を用いて)濃縮されたすべてのTF(n=33)の発現プロファイル。発現データを遺伝子型-組織発現(GTEx:Genotype-Tissue Expression)プロジェクトから得た21。造血系において優先的に発現される幾つかのTFを同定した(PU.1、Fli1、STAT5B、KLF1)。
図8B】循環cfDNAメチル化プロファイルを使用して、転写因子(TF:transcription factor)フットプリントを同定し、起源組織中の活性転写ネットワークを推測できることを示す図である。対照における低メチル化モチーフを有するすべてのTFの発現プロファイル(n=33)対全血中の33個のTFの無作為な1,000セットの発現プロファイル(GTExデータ)。
図8C】循環cfDNAメチル化プロファイルを使用して、転写因子(TF:transcription factor)フットプリントを同定し、起源組織中の活性転写ネットワークを推測できることを示す図である。膵臓腺癌患者由来のcfDNA中の低メチル化された領域(症例における低メチル化フットプリント)においてそのモチーフが濃縮されたすべてのTF(n=85)の発現プロファイル。幾つかの膵臓特異的又は膵癌関連TFを同定した。さらに、膵癌の分子サブタイプを駆動するホールマークTFも同定された。
図8D】循環cfDNAメチル化プロファイルを使用して、転写因子(TF:transcription factor)フットプリントを同定し、起源組織中の活性転写ネットワークを推測できることを示す図である。症例における低メチル化モチーフを有するすべてのTFの発現プロファイル(n=85)対正常膵臓中の85個のTFの無作為な1,000セットの発現プロファイル(GTExデータ)。
図8E】循環cfDNAメチル化プロファイルを使用して、転写因子(TF:transcription factor)フットプリントを同定し、起源組織中の活性転写ネットワークを推測できることを示す図である。症例における低メチル化モチーフを有するすべてのTFの発現プロファイル(n=85)対膵臓腺癌組織中の85個のTFの無作為な1,000セットの発現プロファイル(TCGAデータ)。
図9】免疫沈降前に、それぞれ90ng、95ng及び99ngのフィラーDNAと組み合わせた、又はフィラーDNAのない、10ng、5ng及び1ngの開始癌無細胞DNA量(n=3)を用いたcfMeDIP-seq後の添加非メチル化シロイヌナズナDNAの回収%を示す図である。使用フィラーDNAは、免疫沈降前の最終量を100ngに増加させるために、人工メチル化%と存在する非メチル化ラムダDNA%の組成が異なった。所望の添加非メチル化DNAの回収%は<1.0%であり、回収の低いほど、反応の特異性%が高くなる。
図10】免疫沈降前に、それぞれ90ng、95ng及び99ngのフィラーDNAと組み合わせた、又はフィラーDNAのない、10ng、5ng及び1ngの開始癌無細胞DNA量(n=3)を用いたcfMeDIP-seq後の添加メチル化シロイヌナズナDNAの回収%を示す図である。使用フィラーDNAは、免疫沈降前の最終量を100ngに増加させるために、人工メチル化%と存在する非メチル化ラムダDNA%の組成が異なった。所望の添加メチル化DNAの最低回収%は20%である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、異なる割合のctDNA0.001%~10%との混合物を生物情報学
的にシミュレートした(図1A、列の面)。本発明者らは、ctDNAが正常cfDNA
に比べて1、10、100、1000又は10000個のDMR(差次的メチル化領域)
を有するシナリオもシミュレートした(図1A、行の面)。次いで、リードを様々な配列
決定深さで各遺伝子座においてサンプリングした(10×、100×、1000×及び1
0000×)(図1A、x軸)。本発明者らは、癌ctDNAの存在量が少なく、カバー
度が浅いときでも、DMR数が増加すると少なくとも1つの癌特異的事象の検出確率が高
くなることを見いだした(図1A)。
【0014】
これらの難題を克服するために、本発明者らは、無細胞DNAを用いて全ゲノムDNA
メチル化マッピングを行うcfMeDIP-seq(無細胞メチル化DNA免疫沈降及び
ハイスループット配列決定)と呼ばれる新しい方法を開発した。ここで記述するcfMe
DIP-seq法は、100ngの入力DNAまで堅牢である既存の低入力MeDIP-
seq手順17の改変によって開発された。しかし、血漿試料の大部分は、100ngよ
りはるかに少ないDNAを生成する。この難題を克服するために、本発明者らは、開始D
NAの量を100ngに人為的に膨張させるために、外来λDNA(フィラーDNA)を
アダプター連結cfDNAライブラリに添加した(図2)。これは、抗体による非特異的
結合の量を最小にし、プラスチック製品との結合のために失われるDNAの量も最小にす
る。フィラーDNAは、アダプター連結cfDNAライブラリにサイズが類似したアンプ
リコンからなり、非メチル化DNA及びメチル化レベルの異なるインビトロメチル化DN
Aで構成された(図9及び図10)。異なる患者は異なる量のcfDNAを生成するので
、このフィラーDNAの添加は、実用にも役立ち、入力DNA量を100ngに規準化す
ることができる。これによって、利用可能なcfDNAの量にかかわらず、下流の手順が
すべての試料で確実に正確に同じままである。
【0015】
一態様によれば、100ng未満の無細胞DNAを含む試料から無細胞メチル化DNA
を捕捉する方法であって、
a.試料をライブラリ調製に供して、それに続く無細胞メチル化DNAの配列決定を可
能にするステップ、
b.第1の量のフィラーDNAを試料に添加するステップであって、フィラーDNAの
少なくとも一部がメチル化されているステップ、
c.試料を変性させるステップ、及び
d.メチル化ポリヌクレオチドに選択的な結合剤を用いて無細胞メチル化DNAを捕捉
するステップ
を含む、方法を提示する。
【0016】
一部の実施形態においては、この方法は、捕捉された無細胞メチル化DNAを増幅し、
続いて配列決定するステップを更に含む。
【0017】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:polymerase chain reactio
n)、続いてサンガー配列決定法などの様々な配列決定技術が当業者に知られている。I
llumina(Solexa)配列決定法、Roche454配列決定法、Ion t
orrent:Proton/PGM配列決定法、SOLiD配列決定法を含めて種々の
配列決定技術を含む、ハイスループット配列決定法としても知られる次世代配列決定(N
GS:next-generation sequencing)技術も利用可能である
。NGSは、DNA及びRNAの配列決定を以前に使用されたサンガー配列決定法よりも
はるかに迅速で安価にすることができる。一部の実施形態においては、前記配列決定は、
ショートリード配列決定に対して最適化される。
【0018】
無細胞メチル化DNAは、血流中で自由に循環しているDNAであり、DNAの様々な
公知領域でメチル化されている。試料、例えば、血漿試料は、無細胞メチル化DNAを分
析するために採取することができる。
【0019】
本明細書では「ライブラリ調製」は、リスト末端修復(list end-repai
r)、Aテーリング、アダプター連結、又は後続のDNA配列決定を可能にするために無
細胞DNA上で行われる任意の他の調製を含む。
【0020】
本明細書では「フィラーDNA」は、非コードDNAとすることができ、又はアンプリ
コンからなることができる。
【0021】
DNA試料は、例えば十分な熱を用いて、変性することができる。
【0022】
一部の実施形態においては、試料は、50ng未満の無細胞DNAを含む。
【0023】
一部の実施形態においては、第1の量のフィラーDNAは、約10%、20%、30%
、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%メチル化フィラーDN
Aを含む。好ましい実施形態においては、第1の量のフィラーDNAは、約50%メチル
化フィラーDNAを含む。
【0024】
一部の実施形態においては、第1の量のフィラーDNAは20ng~100ngである
。好ましい実施形態においては、30ng~100ngのフィラーDNA。より好ましい
実施形態においては、50ng~100ngのフィラーDNA。試料からの無細胞DNA
と第1の量のフィラーDNAが併用されるときには、少なくとも50ngの全DNA、好
ましくは少なくとも100ngの全DNAを含む。
【0025】
一部の実施形態においては、フィラーDNAは50bp~800bp長である。好まし
い実施形態においては100bp~600bp長、より好ましい実施形態においては20
0bp~600bp長。
【0026】
フィラーDNAは二本鎖である。例えば、フィラーDNAをジャンクDNAとすること
ができる。フィラーDNAを内在又は外来DNAとすることもできる。例えば、フィラー
DNAは、非ヒトDNA、好ましい実施形態においてはλDNAである。本明細書では「
λDNA」とは、腸内細菌ファージλDNAを指す。一部の実施形態においては、フィラ
ーDNAは、ヒトDNAとのアラインメントがない。
【0027】
一部の実施形態においては、結合剤は、メチルCpG結合ドメインを含むタンパク質で
ある。1種のこうした例示的なタンパク質は、MBD2タンパク質である。本明細書では
「メチルCpG結合ドメイン(MBD:Methyl-CpG-binding dom
ain)」とは、約70残基長であるタンパク質及び酵素のある種のドメインを指し、1
つ以上の対称的メチル化CpGを含むDNAに結合する。MeCP2、MBD1、MBD
2、MBD4及びBAZ2のMBDは、DNAとの結合を媒介し、MeCP2、MBD1
及びMBD2の場合には、メチル化CpGとの結合を優先的に媒介する。ヒトタンパク質
MECP2、MBD1、MBD2、MBD3及びMBD4は、メチルCpG結合ドメイン
(MBD)の各々における存在によって関連づけられる核タンパク質ファミリーを含む。
これらのタンパク質の各々は、MBD3を除いて、メチル化DNAに特異的に結合するこ
とができる。
【0028】
別の実施形態においては、結合剤は抗体であり、無細胞メチル化DNAの捕捉は、無細
胞メチル化DNAを抗体を用いて免疫沈降させることを含む。本明細書では「免疫沈降」
とは、特定の抗原(ポリペプチド、ヌクレオチドなど)に特異的に結合する抗体を用いて
、該抗原を溶液から沈降させる技術を指す。このプロセスは、特定のタンパク質又はDN
Aを試料から単離し、濃縮するのに使用することができ、抗体が手順のある時点で固体基
質に結合する必要がある。固体基質としては、例えば、磁気ビーズなどのビーズが挙げら
れる。別のタイプのビーズ及び固体基質が当該技術分野で知られている。
【0029】
例示的一抗体は5-MeC抗体である。免疫沈降手順では、一部の実施形態においては
、少なくとも0.05μgの抗体を試料に添加し、より好ましい実施形態においては、少
なくとも0.16μgの抗体を試料に添加する。免疫沈降反応を確認するために、一部の
実施形態においては、本明細書に記載の方法は、ステップ(b)の後に第2の量の対照D
NAを試料に添加するステップを更に含む。
【0030】
別の例示的一抗体は、5-ヒドロキシメチルシトシン抗体である。
【0031】
別の実施形態においては、本明細書に記載の方法は、無細胞メチル化DNAの捕捉を確
認するために、ステップ(b)の後に第2の量の対照DNAを試料に添加するステップを
更に含む。
【0032】
本明細書では「対照」は、正と負の対照の両方、又は少なくとも正の対照を含むことが
できる。
【0033】
更なる一態様によれば、試料内のDNAメチル化プロファイルを測定するための本明細
書に記載の方法の使用を提供する。
【0034】
更なる一態様によれば、プロファイルを腫瘍組織の公知のメチル化プロファイルと相関
させることによって試料内の癌細胞由来の無細胞DNAの存在を確認するための本明細書
に記載の方法の使用を提供する。
【0035】
更なる一態様によれば、プロファイルを特定の組織の公知のメチル化プロファイルと相
関させることによって試料内の無細胞DNAの起源組織を特定するための本明細書に記載
のDNAメチル化プロファイルの使用を提供する。
【0036】
一部の実施形態においては、試料内の無細胞DNA内の癌細胞の起源組織を特定するた
めの本明細書に記載の使用を更に含む使用。
【0037】
更なる一態様によれば、免疫療法をモニターするための本明細書に記載の使用を提供す
る。
【0038】
更なる一態様によれば、自己免疫状態の診断のための本明細書に記載の使用を提供する
【0039】
更なる一態様によれば、試料が採取された対象における細胞回転を測定するための本明
細書に記載の使用を提供する。
【0040】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明するものであって、本明細書に開示される
本発明の広範な態様を限定するものではない。
【実施例0041】
方法
ドナー補充及び試料取得
膵臓腺癌(PDAC)患者試料をUniversity Health Networ
k BioBankから入手し、健常対照をカナダ、トロントのMount Sinai
Hospital(MSH)のFamily Medicine Centreから補
充した。患者が同意して収集された全試料を、Research Ethics Boa
rd、University Health Network及びカナダ、トロントのM
ount Sinai Hospitalからの施設承認の下に得た。
【0042】
検体処理-精製腫瘍及び正常細胞
原発性PDAC試料の場合、検体を切除後すぐに処理し、代表的な切片を使用して、診
断を確認した。新たな液体窒素凍結組織試料のレーザーキャプチャーマイクロダイセクシ
ョン(LCM:Laser capture microdissection)をLe
ica LMD7000機器上で行った。手短に述べると、気相液体窒素中で維持された
凍結組織をOCT切断媒体に包埋し、クライオトームで8μm厚切片に切り出した。切片
をPEN膜スライド(Leica)に載せ、ヘマトキシリンで軽く染色して、腫瘍領域の
顕微鏡同定を容易にした。切片を切断して核酸の劣化を最小にした同じ日にLCMを行っ
た。
【0043】
顕微解剖腫瘍細胞を重力によって無菌リボヌクレアーゼフリー微量遠心管のキャップに
収集した。約150,000~200,000個の腫瘍細胞をDNA試料用に収集し、更
なる処理まで-80℃で貯蔵した。LCMは、一般に、十分な量の精製腫瘍細胞を収集す
るのに1症例当たり1~2日かかった。Qiagen Cell Lysis Buff
erを使用して、ゲノムDNAを抽出した。スライドガラス上の非染色凍結切片を適切な
DNA抽出緩衝剤中にこすり取ることによって、組織学的に精査された対応正常参照組織
を各患者で凍結十二指腸又は胃粘膜から収集した。
【0044】
検体処理-cfDNA
EDTA及びACD血漿試料をBioBank及びカナダ、トロントのMount S
inai Hospital(MSH)のFamily Medicine Centr
eから入手した。全試料を使用まで-80℃又は気相液体窒素中で貯蔵した。無細胞DN
Aを0.5~3.5mlの血漿からQIAamp Circulating Nucle
ic Acid Kit(Qiagen)を用いて抽出した。抽出DNAを使用前にQu
bitによって定量化した。
【0045】
検体処理-PDX cfDNA
University Health NetworkのResearch Ethi
cs Boardによって認可されたようにUniversity Health Ne
twork Biobankから患者の同意の下で得られたヒト直腸結腸腫瘍組織を、コ
ラゲナーゼAを用いて単細胞に消化した。単細胞を4~6週齢NOD/SCID雄性マウ
スに皮下注射した。マウスをCO2吸入によって安楽死させた後、心臓穿刺によって採血
し、EDTA管に貯蔵した。収集血液試料から、血漿を単離し、-80℃で貯蔵した。無
細胞DNAを0.3~0.7mlの血漿からQIAamp Circulating N
ucleic Acid Kit(Qiagen)を用いて抽出した。すべての動物の作
業をUniversity Health NetworkのAnimal Care
Committeeによって認可された倫理規定に従って行った。
【0046】
RRBS
無細胞DNAが得られた同じ患者由来のLCM濃縮腫瘍及び正常試料から抽出されたゲ
ノムDNAを軽微な変更を加えたGuら、2011年18の手順に従ってRRBSに供し
た。手短に述べると、Qubitによって測定された10ngのゲノムDNAを制限酵素
MspIで消化し、次いで末端修復、Aテーリング、及びIllumina TruSe
qメチル化アダプターとのアダプター連結に供した。次いで、調製されたライブラリをZ
ymo EZ DNAメチル化キットを用いて製造者の手順に従って亜硫酸水素塩変換に
供し、続いて160bp~300bpの断片のゲルサイズ選択に供した。各精製ライブラ
リを増幅する最適サイクル数をqPCRを使用して決定し、その後、試料をKAPA H
iFi Uracil+Mastermix(Kapa Biosystems)を用い
て増幅し、AMPureビーズ(Beckman Coulter)を用いて精製した。
最終ライブラリをBioAnalyzer分析に供した後、UHN Princess
Margaret Genomic CentreにおいてIllumina HiSe
q 2000で配列決定した。
【0047】
外来腸内細菌ファージλPCR産物の調製
腸内細菌ファージλDNA(ThermoFischer Scientific)を
表1に示したプライマーを用いて増幅し、6種の異なるPCRアンプリコン産物を生成し
た。PCR反応をKAPA HiFi Hotstart ReadyMixを用いて以
下の条件で行った:95℃3分間の酵素の活性化、30サイクルの98℃20秒間、60
℃15秒間、72℃30秒間、及び72℃1分間の最終伸長。PCRアンプリコンをQI
AQuick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、ゲル上に流して、サ
イズ及び増幅を検証した。1CpG、5CpG、10CpG、15CpG及び20CpG
LのアンプリコンをCpG Methyltransferase(M.SssI)(T
hermoFischer Scientific)を用いてメチル化し、QIAQui
ck PCR精製キットを用いて精製した。PCRアンプリコンのメチル化を制限酵素H
pyCH4IV(New England Biolabs Canada)を用いて試
験し、ゲル上に流して、そのメチル化を確実にした。非メチル化(20CpGS)及びメ
チル化(1CpG、5CpG、10CpG、15CpG、20CpGL)アンプリコンの
DNA濃度をPicoGreenを用いて測定した後、50%メチル化及び50%非メチ
ル化λPCR産物と一緒に貯蔵した。
【0048】
cfMeDIP-seq
cfMeDIP-seq手順の略図を図2に示す。cfMeDIP前に、DNA試料を
Kapa Hyper Prep Kit(Kapa Biosystems)を用いて
ライブラリ調製に供した。一部変更した製造者手順に従った。手短に述べると、目的DN
Aを0.2mL PCR管に添加し、末端修復及びAテーリングに供した。アダプター連
結は、NEBNextアダプター(Illuminaキット用NEBNext Mult
iplex Oligos、New England Biolabs)を用いて最終濃
度0.181μMで従い、20℃で20分間インキュベートし、AMPure XPビー
ズを用いて精製した。溶出ライブラリをUSER酵素(New England Bio
labs Canada)で消化し、続いてMeDIP前にQiagen MinElu
te PCR Purification Kitを用いて精製した。
【0049】
調製ライブラリを貯蔵メチル化/非メチル化λPCR産物と組み合わせて、最終DNA
量100ngとし、一部変更したTaiwoら、2012年17の手順を用いてMeDI
Pに供した。MeDIPでは、Diagenode MagMeDIPキット(Cat#
C02010021)を一部変更した製造者の手順に従って使用した。0.3ngの対照
メチル化及び0.3ngの対照非メチル化シロイヌナズナDNA、(DNAの総量[cf
DNA+フィラー+対照]を100ngにするための)フィラーDNA並びに緩衝剤をア
ダプター連結DNAを含むPCR管に添加後、試料を95℃に10分間加熱し、次いです
ぐに氷水浴中に10分間置いた。各試料を2個の0.2mL PCR管に分配した。一方
は10%入力対照用であり、他方は免疫沈降に供される試料である。MagMeDIPキ
ットからの含まれる5-mCモノクローナル抗体33D3(Cat#C15200081
)を希釈抗体混合物の生成前に1:15希釈し、試料に添加した。洗浄磁気ビーズ(製造
者の指示に従う)も4℃で17時間のインキュベーション前に添加した。試料をDiag
enode iPure Kitを用いて精製し、50μlの緩衝剤C中に溶出させた。
次のステップに進む前に、反応(QC1)の成功を、添加シロイヌナズナDNAの存在を
検出するqPCRによって検証し、非メチル化添加DNAの回収%<1%及び反応の特異
性%>99%(1-[添加非メチル化対照DNAの回収/添加メチル化対照DNAの回収
]によって計算)を確認した。各ライブラリを増幅する最適サイクル数をqPCRを使用
して決定し、その後、試料をKAPA HiFi Hotstart Mastermi
xを用いて増幅し、NEBNext Multiplex Oligosを最終濃度0.
3μMまで添加した。ライブラリの増幅に使用されるPCR設定は以下の通りであった:
95℃で3分間活性化、続いて所定のサイクルの98℃20秒間、65℃15秒間及び7
2℃30秒間、並びに72℃1分間の最終伸長。増幅されたライブラリをMinElut
e PCR精製カラムを用いて精製し、次いでゲルサイズを3%Nusieve GTG
アガロースゲルを用いて選択して、アダプター二量体を除去した。配列決定に供する前に
、メチル化ヒトDNA領域(精巣特異的H2B、TSH2B)及び非メチル化ヒトDNA
領域(GAPDHプロモーター)の濃縮倍率を、無細胞DNA(ATCCから得られる細
胞系、マイコプラズマフリー)を模倣するように剪断されたHCT116細胞系DNAか
ら生成されるMeDIP-seq及びcfMeDIP-seqライブラリについて測定し
た。最終ライブラリをBioAnalyzer分析に供した後、UHN Princes
s Margaret Genomic CentreにおいてIllumina Hi
Seq 2000で配列決定した。
【0050】
フィラーDNAにおける異なるメチル化%
cfMeDIP-seqを手順のフィラー成分におけるメチル化と非メチル化ラムダD
NAの異なる%を用いて以下のように実施した。
【0051】
【表1】
【0052】
図9及び10に示すように、免疫沈降前の最終量を100ngに増加させるのに使用さ
れたフィラーDNA(ラムダDNA)は、メチル化DNAの回収の点で良好な収率を依然
として得ながら(図10)、最小回収非メチル化DNAを有するために(図9)、好まし
くは、幾らかの人工メチル化DNAをその組成物中に含むべきである(100%~15%
)。本発明者らが100%非メチル化フィラーDNAを有する、又は存在するフィラーD
NAがない試料においては、メチル化DNAの回収は本当に高いが、非メチル化DNAの
回収%も高い。これは、フィラーDNA中の追加のメチル化DNAが反応中に存在する過
剰の抗体を占有するのを助け、試料中に存在する非メチル化DNAとの非特異的結合の量
を最小にすることを示している。メチル化DNAが試料全体でどのくらい存在するかは不
明であり、これは試料ごとに大きく異なり得るので、異なる無細胞DNA試料を使用する
場合には抗体量の最適化があまり経済的でなく、又は可能でさえないことを考慮すると、
このフィラーDNAは、異なる開始量を規準化するのを助け、異なる無細胞DNA試料を
同様に処理することができ(すなわち、等量の抗体を使用する)、それでも、良好なメチ
ル化データをそれから回収することができる。
【0053】
点変異検出のための超深度標的配列決定
本発明者らは、QIAgen Circulating Nucleic Acidキ
ットを使用して、Princess Margaret Cancer Centreに
おいて初期臨床試験登録前に作成された対応腫瘍組織分子プロファイリングデータを有す
る患者由来の約20mLの血漿(4~5×10mL EDTA採血管)から無細胞DNA
を単離した。DNAを細胞系(CRC及びMM細胞系の希釈)からPureGene G
entraキットを用いて抽出し、Covaris超音波処理器を用いて約180bpに
断片化し、より大きいサイズ断片をAmpureビーズを用いて排除して、無細胞DNA
の断片サイズを模倣した。DNA塩基配列決定ライブラリを83ngの断片化DNAから
NEXTflex-96 DNA Barcodeアダプター(Bio Scienti
fic、オースティン、TX)アダプターを利用するKAPA Hyper Prep
Kit(Kapa Biosystems、ウィルミントン、MA)を用いて構築した。
既知の変異を含むDNA断片を単離するために、本発明者らは、Illumina Tr
uSeq Amplicon Cancer Panelを用いて臨床検査室によって試
験された48の遺伝子から変異ホットスポットを標的にしたビオチン化DNA捕捉プロー
ブ(xGen Lockdown Custom Probes Mini Pool、
Integrated DNA Technologies、Coralville、I
A)を設計した。バーコードライブラリをプールし、次いでカスタムハイブリッド捕捉ラ
イブラリを製造者の指示(IDT xGEN Lockdown手順バージョン2.1)
に従って適用した。これらの断片をIllumina HiSeq 2000機器を用い
て>10,000×リードカバー度まで配列決定した。得られたリードをbwa-mem
を用いて整列させ、変異をSAMtools及びmuTectバージョン1.1.4を用
いて検出した。
【0054】
腫瘍特異的特徴の数と配列決定深さによる検出確率との関係のモデル化
本発明者らは、145,000個のシミュレートされたゲノムを作製した。癌特異的メ
チル化DMRの割合は、0.001%、0.01%、0.1%、1%及び10%に設定さ
れ、それぞれ1、10、100、1000及び10000個の独立したDMRからなった
。本発明者らは、14,500個の二倍体ゲノム(100ngのDNAに相当する)をこ
れらの最初の混合物から採取し、10、100、1000及び10000リード/遺伝子
座を更に採取して、これらの深さにおける配列決定カバー度を表した。このプロセスをカ
バー度、存在量及び特徴数の各組合せで100回繰り返した。本発明者らは、パラメータ
の各組合せで少なくとも1つのDMRの検出成功頻度を推定し、確率曲線をプロットして
図1A)、配列決定深さを条件とする検出成功確率に対する特徴数の影響を視覚的に評
価した。
【0055】
膵癌患者及び健常ドナーのcfDNAからの差次的メチル化領域の計算及び可視化
24名の膵癌(PC:Pancreatic Cancer)患者及び24名の健常ド
ナーからのcfDNA試料間の差次的メチル化領域(DMR)をMEDIPS Rパッケ
ージを用いて計算した25。各試料について、BAMアラインメント(対ヒトゲノムhg
19)ファイルを使用して、MEDIPS R対象を作製した。次に、2セットの試料か
らのRPKMをt検定で比較することによってDMRを計算した。t検定からの生のp値
をBenjamini-Hochberg手順によって調節した。次いで、DMRを調節
p値が0.1未満であるすべての窓として定義した。38,085個の総DMRが見いだ
され、6,651個が膵癌患者におけるHyper、31,544個がHypoであった
。これらのDMRからのスケール付きRPKM値をヒートマップとして示した(図5C
。このヒートマップは、距離関数「ユークリッド」、列方向クラスタリングに対するクラ
スタリング関数「ward」、及び行方向クラスタリングの「average」で作成さ
れた。
【0056】
24個の膵癌組織及び5個の正常PBMCからのRRBS試料の比較
RRBSによってプロファイルされた5個の正常PBMC試料をGEOからダウンロー
ドして(受託ID GSE89473の全対照試料)、それらのメチル化プロファイルを
24個の膵癌組織RRBS試料と比較した。ダウンロードしたBEDファイルをR me
thylKitパッケージで構文解析し、処理した26。次いで、これらの5個の試料を
24名の膵癌患者からの同様に処理されたRRBS試料と比較した。カスタム機能を使用
して、24個のPC試料のうち少なくとも18個、及び5個のPBMC試料のうち4個中
に存在するCpGを抽出し、常染色体中のCpGのみが保持され、1,806,808個
のCpGのバックグラウンドセットを作製した。これらから、Benjamini-Ho
chbergで調節されたp値<0.01及びデルタベータ>0.25の基準を用いてD
MCを得た。134,021個のDMCは、膵癌においてPBMCに比べてHyperで
あることがわかった。同様に、同じq値カットオフ及びデルタベータ<-0.25を用い
て、本発明者らは179,662個のHypo DMCを得た。合計313,683個の
DMCを対応するボルケーノプロットにおいて赤い点で示し(図7F)、q値の負のlo
g10をデルタベータに対してプロットした(負のlog10q値=2における水平線は
、DMCをコールするためのq値カットオフであり、垂直点線はデルタベータカットオフ
である)。
【0057】
原発腫瘍対正常PBMCからの、並びに膵癌患者及び健常ドナーのcfDNAからの差
次的メチル化シグナルの重複の評価
順列分析を行って、血漿中で同定されたDMR(本発明者らのcfMeDIP-seq
手順に供された循環cfDNA)と原発腫瘍組織中で同定された癌特異的DMC(RRB
S)の予想対観察重複の頻度を比較した。本発明者らは、可能性のある4つの例を調べた
:Hyper DMRと重複するHyper DMC、Hypo DMRと重複するHy
per DMC、Hypo DMRと重複するHypo DMC、及び最後にHyper
DMRと重複するHypo DMC。各例では、Hyper又はHypo DMCをH
yper又はHypo DMRと重ねて、「生物学的交差」数を得た。次いで、DMCの
各セットを1,806,808個のCpGのバックグラウンドセット全体にわたって無作
為に1000回混合し、DMRの各セットと再度重複させた。これらの無作為な生物学的
交差をZスコアを用いて同じスケール上に置き、それぞれボックスプロット及び菱形で示
した(図5E)。これらのプロットにおける水平の点線は、ボンフェローニ補正から誘導
されるq値0.05に関連するカットオフZスコアである。
【0058】
24個の膵癌組織及び24個の正常組織からのRRBS試料の比較、これらの組織から
並びに膵癌患者及び健常ドナーのcfDNAからの差次的メチル化シグナルの重複の評価
5個の正常PBMC試料と比較した24個のPC試料を同じ患者由来の24個の正常組
織とも別々に比較した。バックグラウンドセット(763,874個のCpG)及びPC
中のDMC Hyper&Hypo(それぞれ34,013&11,160)を同じ方法
で計算し、これらを使用して、ボルケーノプロット(図7C)とボックスプロット(図5
D)を同様に作成した。
【0059】
24個のPC及び24個の健常cfDNA試料上のPCAプロット
本発明者らは、上位百万の最も変わりやすい全ゲノム窓を用いた24個のPC及び24
個の健常cfDNA試料についてのPCAによる目的変数なしのクラスタリング分析を行
った(図7A~B)。各窓について、可変性を平均絶対偏差(MAD)測定規準によって
計算した。これは、データの中央値から絶対偏差の中央値を返す堅牢な測定であり、デー
タは、所与の窓に対するこれら48試料にわたるRPKM値である。
【0060】
24個のPC及び24個の健常cfDNA試料において低メチル化されたモチーフに関
連するTFのGTEx発現プロファイルを有するヒートマップ
RNA-SeqデータをGTExデータベースから全ヒト遺伝子に対する組織による中
央値RPKMの形で得た(ファイルGTEx_Analysis_v6p_RNA-se
q_RNA-SeQCv1.1.8_gene_median_rpkm.gct.gz
under https://gtexportal.org/home/datas
etsから得た)。目的TFをそれらの遺伝子名と適合させ、ヒートマップ(図8A、8
C)を全組織にわたってスケール付けされた各TFの中央値RPKMを用いて作成した。
距離関数「manhattan」及びクラスタリング関数「average」を行方向ク
ラスタリングと列方向クラスタリングの両方に使用した。
【0061】
24個のPC及び24個の健常cfDNA試料において低メチル化されたモチーフに関
連するTFのGTEx発現プロファイルを有するバイオリンプロット
本発明者らが症例対対照における低メチル化領域において有意に濃縮されたモチーフを
検出したTFが、膵癌試料において有意に上方制御されるかどうか推定するために、本発
明者らはssGSEAスコアを検定統計量とした無作為化検定を使用した。各試料につい
て、本発明者らは、低メチル化モチーフに有意に関連することが判明した85個のTF、
及び85個のTFの無作為な1,000セットを用いてスコアを計算した(全ヒトTFの
リストをhttp://www.tfcheckpoint.org/data/にある
ファイルTFCheckpoint_download_180515.txtから得た
)。TCGA上の178名の膵臓腺癌患者からの発現レベルを使用した。
【0062】
これらのスコアの分布を関連バイオリンプロットに見ることができる(図8E)。
【0063】
次いで、ウィルコクソン順位和検定を使用して、不規則分布と観察分布を比較して、p
値<2.2e-16を得た。
【0064】
同じ分析を正常膵臓のGTExデータに対して行った(図8D)。全血のGTExデー
タに対してそのモチーフが健常ドナーからの血漿cfDNAにおける低メチル化フットプ
リントとして同定されたTF(n=33)でも分析を繰り返した(図8B)。
【0065】
結果/考察
cfDNAメチル化マッピングに適切な全ゲノム方法
ここで記述するcfMeDIP-seq法は、100ngの入力DNAまで堅牢である
既存の低入力MeDIP-seq手順17の改変によって開発された。しかし、血漿試料
の大部分は、100ngよりはるかに少ないDNAを生成する。この難題を克服するため
に、本発明者らは、開始DNAの量を100ngに人為的に膨張させるために、外来λD
NA(フィラーDNA)をアダプター連結cfDNAライブラリに添加した(図2)。こ
れは、抗体による非特異的結合の量を最小にし、プラスチック製品との結合のために失わ
れるDNAの量も最小にする。フィラーDNAは、アダプター連結cfDNAライブラリ
にサイズが類似したアンプリコンからなり、非メチル化DNA及びCpG密度の異なるイ
ンビトロメチル化DNAで構成された。異なる患者は異なる量のcfDNAを生成するの
で、このフィラーDNAの添加は、実用にも役立ち、入力DNA量を100ngに規準化
することができる。これによって、利用可能なcfDNAの量にかかわらず、下流の手順
がすべての試料で確実に正確に同じままである。
【0066】
本発明者らは、まず、cfDNAで認められたものと類似の断片サイズに剪断されたヒ
ト結腸直腸癌細胞系HCT116からのDNAを用いて、cfMeDIP-seq手順を
確認した。HCT116を選択したのは、公的DNAメチル化データが入手可能だからで
あった。本発明者らは、100ngの剪断細胞系DNAを用いた最も基準となるMeDI
P-seq手順17と10ng、5ng及び1ngの同じ剪断細胞系DNAを用いたcf
MeDIP-seq手順を同時に行った。これを2つの生物学的複製において行った。す
べての条件で、本発明者らは、99%を超える反応の特異性(1-[添加非メチル化対照
DNAの回収/添加メチル化対照DNAの回収])、及び非メチル化領域(GAPDH)
を超える公知メチル化領域(TSH2B0)の極めて高い濃縮を得た(図3B)。
【0067】
ライブラリを約3000~7000万リード/ライブラリ(表2)で飽和まで配列決定
した(図3A)。生のリードをヒトゲノムとλゲノムの両方と整列させ、λゲノムと実質
的にアラインメントがないことが判明した(表3A及び3B)。したがって、フィラーD
NAとしての外来λDNAの添加は、配列決定データの生成を妨害しなかった。最後に、
本発明者らは、免疫沈降ステップの品質管理手段としてCpG濃縮スコアを計算する25
。すべてのライブラリはCpGに対して類似の濃縮を示したが、入力対照は、予想通り、
濃縮を示さず(図3C)、極低入力(1ng)でも本発明者らの免疫沈降の有効性を確認
した。
【0068】
異なる入力DNAレベルを比較する全ゲノム相関推定によれば、MeDIP-seq(
100ng)法とcfMeDIP-seq(10、5及び1ng)法の両方が極めて堅牢
であり、ピアソン相関が任意の2つの生物学的複製間で少なくとも0.94であった(図
1B)。分析の更に示すところによれば、5及び10ngの入力DNAにおけるcfMe
DIP-seqは、従来のMeDIP-seqによって100ngで得られるメチル化プ
ロファイルを堅牢に再現することができる(少なくとも0.9のペアワイズピアソン相関
)(図1B)。1ngの入力DNAにおけるcfMeDIP-seqの性能は、100n
gにおけるMeDIP-seqよりも低下するが、それでも>0.7の強いピアソン相関
を示す(図1B)。本発明者らは、cfMeDIP-seq手順が、最も基準となるRe
duced Representation Bisulfite Sequencin
g(RRBS)及びWhole-Genome Bisulfite Sequenci
ng(WGBS)を用いたHCT116のDNAメチル化プロファイルを再現することも
認めた(図1C)。要するに、発明者らのデータが示唆するところによれば、cfMeD
IP-seqは、循環cfDNAなどの断片化された低入力DNA材料の全ゲノムメチル
化マッピングの堅牢な手順である。
【0069】
cfMeDIP-seqは、腫瘍由来のctDNAの検出で高感度を示す
cfMeDIP-seq手順の感度を評価するために、本発明者らは、結腸直腸癌(C
RC)HCT116細胞系DNAを多発性骨髄腫(MM)MM1.S細胞系DNAに段階
希釈した。どちらもcfDNAサイズを模倣するように剪断された。本発明者らは、CR
C DNAを100%、10%、1%、0.1%、0.01%、0.001%から0%に
希釈し、これらの希釈の各々についてcfMeDIP-seqを行った(図4A~D)。
本発明者らは、同じ試料における3点変異の検出のために超深度(10,000×中央値
カバー度)標的配列決定も行った。5%偽陽性率(FDR:False Discove
ry rate)閾値を用いた各CRC希釈ポイント対純粋MM DNAで同定されたD
MRの観察数は、希釈係数に基づくDMRの予想数と0.001%希釈までほぼ完全に線
形(r=0.99、p<0.0001)であった(図1D)。さらに、これらのDMR
内のDNAメチル化シグナルも、観察対予想シグナルでほぼ完全な線形性を示す(r
0.99、p<0.0001)(図1E)。それに対して、1%希釈を超えると、超深度
標的配列決定は、PCR又は配列決定誤差のために、CRC特異的変異体と偽変異体を確
実に識別することができなかった(図1F)。したがって、cfMeDIP-seqは、
癌由来のDNAの検出感度に優れ、標準手順を用いた超深度標的配列決定による変異体検
出の性能を超える。
【0070】
癌DNAは、CpGリッチ領域において頻繁に高メチル化される。cfMeDIP-
seqはメチル化CpGリッチ配列を特異的に標的にするので、本発明者らは、ctDN
Aが免疫沈降手順中に優先的に濃縮されると仮定した。これを試験するために、本発明者
らは、2名の結腸直腸癌患者から患者由来の異種移植片(PDX:patient-de
rived xenograft)を作製し、マウス血漿を収集した。腫瘍由来のヒトc
fDNAは、入力試料中の総cfDNAプール内で1%未満の頻度で存在し、免疫沈降後
2倍の存在量で存在した(図1G)。これらの結果の示唆するところによれば、ctDN
Aの偏りのある配列決定によって、cfMeDIP手順は、ctDNA検出感度を更に増
加させることができた。
【0071】
血漿cfDNAのメチローム分析は、初期膵臓腺癌患者を健常ドナーから識別する
本発明者らは、血漿cfDNAのメチローム分析を初期癌におけるctDNAの検出に
使用できるかどうか検討することにした。本発明者らは、24名の初期膵癌患者(症例)
並びに24名の年齢及び性別対応健常ドナー(対照)の手術前血漿のメチローム分析を行
った(表4A、4B及び5)。各患者について、高腫瘍純度のレーザーキャプチャー顕微
解剖(LCM:laser-capture microdissected)腫瘍試料
及び正常組織試料を調べた。cfMeDIP-seqを腫瘍及び正常組織上の循環cfD
NA及びRRBSに対して行った(図5A及び図6、表6A及び6B)。t検定及びBe
njamini-Hochberg補正を多重検定に使用して、本発明者らは、症例と対
照cfDNAの間で38,085個のDMRを得た(p<0.01、q<0.1)(図5
B~C)。
【0072】
症例と対照のcfDNAメチル化プロファイルの相違がctDNAの存在によるかどう
か評価するために、外科的切除後に同じ患者から得られた原発腫瘍及び正常組織のDNA
メチル化パターンをRRBSによってマップした。本発明者らは、腫瘍(n=24)と正
常(n=24)組織の間で45,173個の差次的メチル化CpG(DMC:diffe
rentially methylated CpG)を同定した(図7A~C)。
【0073】
それらの最初の腫瘍のメチル化プロファイルを再現する際のcfDNAメチル化プロフ
ァイルの有用性を、腫瘍中のDMCとcfDNA中のDMRの組合せ(どちらも高メチル
化、どちらも低メチル化、一方が高メチル化で他方が低メチル化)についてバックグラウ
ンドに対する濃縮を調べることによって試験した。本発明者らは、cfDNAにおける一
致方向の腫瘍特異的高メチル化及び低メチル化部位の有意な濃縮を認めたが、腫瘍特異的
高メチル化部位はcfDNA低メチル化DMRでは提示不足であった(図5D)。実際、
腫瘍中の所与の領域のDNAメチル化状態と血漿cfDNAにおけるメチル化プロファイ
ルは相関する(図7D~E)。
【0074】
最後に、特に初期の、癌患者における血漿cfDNA分子の大部分は、非腫瘍由来であ
り、血球から放出される可能性があるので14、本発明者らは、膵臓腺癌腫瘍組織と正常
末梢血単核球(PBMC:Peripheral Blood Mononuclear
Cell)のDNAメチル化差違を評価した。本発明者らは、腫瘍(n=24)とPB
MC(n=5)の間で313,683個のDMCを同定した(図7F)。本発明者らは、
cfDNAにおける一致方向の腫瘍特異的高メチル化及び低メチル化部位の有意な濃縮を
認めたが、腫瘍特異的高メチル化部位はcfDNA低メチル化DMRでは提示不足であっ
た(図5E)。ここでも、腫瘍中の所与の領域のDNAメチル化状態と血漿cfDNAに
おけるメチル化プロファイルは相関する(図7G~H)。
【0075】
要するに、これらの結果の示唆するところによれば、症例と対照の循環cfDNAメチ
ル化プロファイルの相違は、主として循環系における腫瘍由来のDNAの存在によるもの
であった(図5D~E及び図7C~H)。
【0076】
血漿cfDNAメチロームは、腫瘍関連活性転写因子ネットワークの推定を可能にする
症例と対照の間のDMRは、腫瘍由来のDMRでは高度に濃縮されるので(図5D~E
)、本発明者らは、cfDNAメチロームが腫瘍特異的又は組織関連活性転写因子に関連
したモチーフの濃縮を明らかにすると仮定した。これらのcfDNAメチロームを使用し
て、これらのDNA分子の起源組織における活性転写ネットワークを推測することができ
た。TFの大部分が標的配列のDNAメチル化状態に基づく可変の結合を示すので28
活性転写ネットワークを推測するために、本発明者らは、cfDNA中のDMRが転写因
子(TF)フットプリントの濃縮を明らかにし得るかどうか検討した。モチーフ分析をH
OMERソフトウェア20を用いて低メチル化DMRに対して、健常ドナー(図8A)と
膵癌患者(図8C)で別々に行って20、潜在的TFフットプリントを明らかにした。
【0077】
本発明者らは、膵臓腺癌症例に比べて健常ドナーにおいて33個のモチーフを低メチル
化フットプリントとして同定し、健常ドナーに比べて膵臓腺癌症例において85個のモチ
ーフを低メチル化フットプリントとして同定した。
【0078】
健常ドナーにおいて低メチル化フットプリントとして同定された33個のモチーフのう
ち、本発明者らは、PU.1、Fli1、STAT5B及びKLF1を含めて、造血系統
において優先的に発現される幾つかのTFを同定した(図8A~B)。
【0079】
同様に、膵臓腺癌症例において低メチル化フットプリントとして同定された85個のモ
チーフのうち、本発明者らは、RBPJL、PTF1a、Onecut1(HNF6)及
びNR5A2を含めて、膵臓において優先的に発現される幾つかのTFを同定した(図8
C~D)。膵臓腺癌症例において低メチル化フットプリントとして同定されたTFモチー
フは、TCGAからの膵臓腺癌患者においても頻繁に過剰発現された(図8E)。さらに
、本発明者らは、膵癌の各分子サブタイプのドライバーとして以前に同定されたTFに対
応する、膵臓腺癌症例における幾つかの低メチル化フットプリントを同定することができ
24。これらには、c-MYC及びHIF1a(扁平上皮サブタイプドライバー)、N
R5A2、MAFA、RBPJL及びNEUROD1(ADEXドライバー)並びに最後
にFOXA2及びHNF4A(膵臓前駆細胞サブタイプ)が含まれた。
【0080】
要するに、これらの結果の示唆するところによれば、循環cfDNAのメチローム分析
を使用して、差次的メチル化TFフットプリントに基づく腫瘍内の活性転写ネットワーク
を推測することができ、健常ドナーと癌患者の間の免疫細胞集団の全身的シフトを同定で
きる可能性がある。
【0081】
ここで、発明者らは、循環無細胞DNAなどの超低入力、断片化DNAに適した新規全
ゲノムDNAメチル化法を示す。本発明者らは、cfMeDIP-seqが低レベルの入
力DNAにおいて極めて堅牢であり、ライブラリの迅速な作製を可能にすることを示すこ
とができた。さらに、本発明者らの方法はメチル化DNAの濃縮に依拠するので、ライブ
ラリを飽和まで配列決定するには、約3000万~7000万リード/ライブラリしか必
要でなく、全ゲノム配列決定を不要にし、関連コストをかなり削減する。比較的低コスト
に加えて短い所要時間によって、cfMeDIP-seqを臨床現場に素早く移すことが
できる。
【0082】
さらに、cfMeDIP-seqは、ゲノム情報ではなくエピジェネティック情報に依
拠するので、非悪性疾患の広範なセットにおいて組織損傷を非侵襲的にモニターするのに
使用できる可能性がある。例えば、それを使用して、感染に対する、又は癌免疫療法後の
、免疫応答をモニターすることができ、心筋梗塞後の循環中の心臓DNA、又は神経変性
疾患初期の脳DNAをモニターすることができる。
【0083】
最後に、腫瘍学に関連して、複数の癌タイプが臨床的に異なるサブグループを有するこ
とが判明した。これらのサブグループは、多数の癌タイプの中でも、グリア芽細胞腫
上衣腫、結腸直腸、乳房6、7及び膵癌24における予後予測因子を有する異なるD
NAメチル化プロファイルによって層別化することができる。最近のデータの示唆すると
ころによれば、膵癌患者を幾つかの機序によって駆動される4つのサブグループに層別化
することができる24:扁平上皮、膵臓前駆細胞、免疫原性、及び内分泌外分泌異常分化
(ADEX:aberrantly differentiated endocrin
e exocrine)。膵癌患者の循環cfDNAメチロームにおいては、本発明者ら
は、これらのサブタイプを駆動するTFからの低メチル化フットプリントを同定すること
ができた。例えば、本発明者らは、扁平上皮サブタイプにおいて濃縮された2つの経路M
YC及びHIF1アルファ(低酸素誘導因子1-アルファ)を同定した24。本発明者ら
は、前駆細胞サブタイプにおいて濃縮された2つのTF、HNF4A及びFOXA2を同
定することもできた24。最後に、本発明者らは、ADEXサブタイプにおいて濃縮され
た3つのTF、NR5A2、RBPJL及びMAFAを同定することもできた24。これ
が示唆するところによれば、cfMeDIP-seqは、癌患者を低侵襲手法で層別化す
るバイオマーカーとして使用することもできた。
【0084】
本発明を特定の実施形態に関して記述した。本発明の精神及び範囲内にありながら変化
及び変更を加え得ることは、当業者に明白であろう。本明細書に開示される特定の実施形
態は、保護範囲を限定することを意図したものではなく、保護範囲は、特許請求の範囲に
よってのみ決定されるべきである。本明細書に開示されるすべての刊行物及び参考文献を
参照によりその全体を援用する。
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
【表8】
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
参考文献
【0095】
【表11】
【0096】
【表12】
【0097】
【表13】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3A-1】
図3A-2】
図3A-3】
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D-1】
図4D-2】
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
更なる一態様によれば、試料が採取された対象における細胞回転を測定するための本明細書に記載の使用を提供する。
一態様において、本発明は以下を提供する。
[項目1]
100ng未満の無細胞DNAを含む試料から無細胞メチル化DNAを捕捉する方法であって、
a.前記試料をライブラリ調製に供して、それに続く前記無細胞メチル化DNAの配列決定を可能にするステップ、
b.第1の量のフィラーDNAを前記試料に添加するステップであって、前記フィラーDNAの少なくとも一部がメチル化されているステップ、
c.前記試料を変性させるステップ、及び
d.メチル化ポリヌクレオチドに選択的な結合剤を用いて無細胞メチル化DNAを捕捉するステップ
を含む、方法。
[項目2]
前記捕捉された無細胞メチル化DNAを増幅し、続いて配列決定するステップを更に含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記試料が50ng未満の無細胞DNAを含む、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記第1の量のフィラーDNAが、約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%メチル化フィラーDNA、好ましくは5%~50%、10%~40%、又は15%~30%メチル化フィラーDNAを含み、残りが非メチル化フィラーDNAである、項目1に記載の方法。
[項目5]
前記第1の量のフィラーDNAが20ng~100ng、好ましくは30ng~100ng、より好ましくは50ng~100ngである、項目1に記載の方法。
[項目6]
前記試料からの前記無細胞DNAと前記第1の量のフィラーDNAが一緒に、少なくとも50ngの全DNA、好ましくは少なくとも100ngの全DNAを含む、項目1に記載の方法。
[項目7]
前記フィラーDNAが50bp~800bp長、好ましくは100bp~600bp長、より好ましくは200bp~600bp長である、項目1に記載の方法。
[項目8]
前記フィラーDNAが二本鎖である、項目1に記載の方法。
[項目9]
前記フィラーDNAがジャンクDNAである、項目1に記載の方法。
[項目10]
前記フィラーDNAが内在又は外来DNAである、項目1に記載の方法。
[項目11]
前記フィラーDNAが非ヒトDNA、好ましくはλDNAである、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記フィラーDNAがヒトDNAとのアラインメントがない、項目1に記載の方法。
[項目13]
前記結合剤が、メチルCpG結合ドメインを含むタンパク質である、項目1に記載の方法。
[項目14]
前記タンパク質がMBD2タンパク質である、項目13に記載の方法。
[項目15]
ステップ(d)が、前記無細胞メチル化DNAを抗体を用いて免疫沈降させるステップを含む、項目1に記載の方法。
[項目16]
少なくとも0.05μg、好ましくは少なくとも0.16μgの前記抗体を免疫沈降のために前記試料に添加するステップを含む、項目15に記載の方法。
[項目17]
前記抗体が5-MeC抗体又は5-ヒドロキシメチルシトシン抗体である、項目15に記載の方法。
[項目18]
免疫沈降反応を確認するためにステップ(b)の後に第2の量の対照DNAを前記試料に添加するステップを更に含む、項目15に記載の方法。
[項目19]
無細胞メチル化DNAの捕捉を確認するために、ステップ(b)の後に第2の量の対照DNAを前記試料に添加するステップを更に含む、項目1に記載の方法。
[項目20]
前記試料内のDNAメチル化プロファイルを測定するための項目1から19のいずれか一項に記載の方法の使用。
[項目21]
前記プロファイルを腫瘍組織の公知のメチル化プロファイルと相関させることによって前記試料内の癌細胞由来の無細胞DNAの存在を確認するための、項目20に記載のDNAメチル化プロファイルの使用。
[項目22]
前記プロファイルを特定の組織の公知のメチル化プロファイルと相関させることによって前記試料内の前記無細胞DNAの起源組織を特定するための、項目20に記載のDNAメチル化プロファイルの使用。
[項目23]
前記試料内の前記無細胞DNA内の前記癌細胞の起源組織を特定するための項目22に記載の使用を更に含む、項目21に記載の使用。
[項目24]
免疫療法をモニターするための項目20から23のいずれか一項に記載の使用。
[項目25]
自己免疫状態の診断のための項目20から23のいずれか一項に記載の使用。
[項目26]
前記試料が採取された対象における細胞回転を測定するための項目22に記載の使用。
【外国語明細書】