(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005425
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 11/03 20060101AFI20240110BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20240110BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F01M11/03 C
F01M5/00 H
F01M1/06 Z
F01M1/06 K
F01M11/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105601
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】田中 多聞
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 純也
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭太
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴巳
(72)【発明者】
【氏名】中馬 和幸
【テーマコード(参考)】
3G015
3G313
【Fターム(参考)】
3G015BG07
3G015BG08
3G015CA01
3G015DA04
3G015EA13
3G015FA01
3G313BC01
3G313BD02
3G313BD09
3G313BD10
3G313DA05
3G313DA15
3G313FA08
(57)【要約】
【課題】エンジン再始動時にクランク軸の軸受部の焼き付きが防止されるエンジンを提供する。
【解決手段】高低差のあるオイルクーラ給油口40とオイルクーラ排油口41のうち、高い方をクーラ高所口42とし、低い方をクーラ低所口43とし、オイルクーラ給油路40aとオイルクーラ排油路41aのうち、クーラ低所口43から導出された方をクーラ低所口油路43aとして、クーラ低所口油路43aは、クーラ高所口42の下縁42aの高さ以上の高さまで上向きに導出され、エンジン停止中、オイルクーラ19内のエンジンオイル37が少なくともクーラ高所口42の下縁42aの高さまで残留するように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン(34)と、オイルポンプ(35)と、オイルクーラ(19)を取り付けた補機取付ベース(36)と、オイルパン(34)のエンジンオイル(37)をオイルポンプ(35)から補機取付ベース(36)に供給するベース給油路(38)と、オイルクーラ(19)で冷却されたエンジンオイル(37)を補機取付ベース(36)からクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給するクランク軸給油路(39)を備えたエンジンにおいて、
補機取付ベース(36)は、オイルクーラ給油口(40)と、オイルクーラ給油口(40)から導出されたオイルクーラ給油路(40a)と、オイルクーラ排油口(41)と、オイルクーラ排油口(41)から導出されたオイルクーラ排油路(41a)を備え、
高低差のあるオイルクーラ給油口(40)とオイルクーラ排油口(41)のうち、高い方をクーラ高所口(42)とし、低い方をクーラ低所口(43)とし、オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)のうち、クーラ低所口(43)から導出された方をクーラ低所口油路(43a)として、クーラ低所口油路(43a)は、クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
図6(B)に示すように、オイルクーラ給油口(40)がクーラ高所口(42)とされ、オイルクーラ排油口(41)がクーラ低所口(43)とされ、オイルクーラ排油路(41a)がクーラ低所口油路(43a)とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンジンにおいて、
補機取付ベース(36)に取り付けられたオイルフィルタ(44)を備え、補機取付ベース(36)に供給されたエンジンオイル(37)がオイルフィルタ(44)で浄化されてオイルクーラ(19)に供給され、
補機取付ベース(36)は、オイルフィルタ給油口(45)と、オイルフィルタ給油口(45)から導出されたオイルフィルタ給油路(45a)と、オイルフィルタ排油口(46)と、オイルフィルタ排油口(46)から導出されたオイルフィルタ排油路(46a)を備え、
高低差のあるオイルフィルタ給油口(45)とオイルフィルタ排油口(46)のうち、高い方をフィルタ高所口(47)とし、低い方をフィルタ低所口(48)とし、オイルフィルタ給油路(45a)とオイルフィルタ排油路(46a)のうち、フィルタ低所口(48)から導出された方をフィルタ低所口油路(48a)として、フィルタ低所口油路(48a)は、フィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載されたエンジンにおいて、
図6(B)に示すように、オイルフィルタ給油口(45)がフィルタ高所口(47)とされ、オイルフィルタ排油口(46)がフィルタ低所口(48)とされ、オイルフィルタ排油路(46a)がフィルタ低所口油路(48a)とされている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項5】
オイルパン(34)と、オイルポンプ(35)と、オイルクーラ(19)を取り付けた補機取付ベース(36)と、オイルパン(34)のエンジンオイル(37)をオイルポンプ(35)から補機取付ベース(36)に供給するベース給油路(38)と、オイルクーラ(19)で冷却されたエンジンオイル(37)を補機取付ベース(36)からクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給するクランク軸給油路(39)を備えたエンジンにおいて、
補機取付ベース(36)は、オイルクーラ給油口(40)と、オイルクーラ給油口(40)から導出されたオイルクーラ給油路(40a)と、オイルクーラ排油口(41)と、オイルクーラ排油口(41)から導出されたオイルクーラ排油路(41a)を備え、
オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)は、いずれもオイルクーラ(19)のクーラ内最上部(19a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載されたエンジンにおいて、
補機取付ベース(36)に取り付けられたオイルフィルタ(44)を備え、補機取付ベース(36)に供給されたエンジンオイル(37)がオイルフィルタ(44)で浄化されてオイルクーラ(19)に供給され、
補機取付ベース(36)は、オイルフィルタ給油口(45)と、オイルフィルタ給油口(45)から導出されたオイルフィルタ給油路(45a)と、オイルフィルタ排油口(46)と、オイルフィルタ排油口(46)から導出されたオイルフィルタ排油路(46a)を備え、
オイルフィルタ給油路(45a)とオイルフィルタ排油路(46a)は、いずれもオイルフィルタ(44)のフィルタ内最上部(44a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、エンジン再始動時にクランク軸の軸受部の焼き付きが防止されるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンとして、オイルクーラを取り付けた補機取付ベースを備えたものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-105277号公報(
図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 エンジン再始動時にクランク軸の軸受部が焼き付くおそれがある。
特許文献1のエンジンでは、エンジン停止中、オイルクーラ内のエンジンオイルの多くが抜け落ちるため、エンジン再始動時には、エンジンオイルがオイルクーラに充満した後でなければ、クランク軸の軸受部に供給されず、供給時間が長くなると、クランク軸の軸受部が焼き付くおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、エンジン再始動時にクランク軸の軸受部の焼き付きが防止されるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
(請求項1に係る発明)
図6(B)に例示するように、補機取付ベース(36)は、オイルクーラ給油口(40)と、オイルクーラ給油口(40)から導出されたオイルクーラ給油路(40a)と、オイルクーラ排油口(41)と、オイルクーラ排油口(41)から導出されたオイルクーラ排油路(41a)を備え、
高低差のあるオイルクーラ給油口(40)とオイルクーラ排油口(41)のうち、高い方をクーラ高所口(42)とし、低い方をクーラ低所口(43)とし、オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)のうち、クーラ低所口(43)から導出された方をクーラ低所口油路(43a)として、クーラ低所口油路(43a)は、クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
(請求項5に係る発明)
図7(A)(B)に例示するように、補機取付ベース(36)は、オイルクーラ給油口(40)と、オイルクーラ給油口(40)から導出されたオイルクーラ給油路(40a)と、オイルクーラ排油口(41)と、オイルクーラ排油口(41)から導出されたオイルクーラ排油路(41a)を備え、
オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)は、いずれもオイルクーラ(19)のクーラ内最上部(19a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
(請求項1に係る発明)
《効果》 エンジン再始動時にクランク軸(13)の軸受部(13a)の焼き付きが防止される。
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)が、少なくともクーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さまで残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間でクランク軸給油路(39)を介してクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
(請求項5に係る発明)
《効果》 エンジン再始動時のクランク軸(13)の軸受部(13a)の焼き付きが防止される。
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)がオイルクーラ(19)内に充満したまま残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間でクランク軸給油路(39)を介してクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る水冷エンジンで用いるエンジンの冷却水循環経路の正面図である。
【
図3】
図3(A)は
図1の冷却水循環経路で用いるシリンダブロックの平面図、
図3(B)はシリンダヘッドの平面図、
図3(C)は
図3(B)のC-C線断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る水冷エンジンで用いる燃料供給装置と潤滑装置の側面図である。
【
図6】
図6(A)は本発明の実施形態に係る水冷エンジンで用いるシリンダブロックの側面図、
図6(B)は補機取付ベースの側面図、
図6(C)は
図6(B)のC-C線断面図、
図6(D)は
図6(B)のD-D線断面図、
図6(E)は
図6(C)のE-E線断面図、
図6(F)は
図6(D)のF-F線断面図である。
【
図7】
図7(A)は補機取付ベースの変形例の側面図、
図7(B)は
図7(A)のB-B線断面図、
図7(C)はオイル分岐パイプの変形例の側面図、
図7(D)は
図7(C)のD部拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る水冷エンジンの正面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る水冷エンジンの背面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る水冷エンジンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図10は発明の実施形態に係る水冷エンジンを説明する図で、この実施形態では、立形の4サイクル直列4気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0010】
図10に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(27)と、シリンダブロック(27)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(17)と、シリンダヘッド(17)の上部に組み付けられたヘッドカバー(17d)と、シリンダブロック(27)のクランクケース(27c)に収容されたクランク軸(13)と、クランク軸(13)の架設方向を前後方向、前後方向の一方側を前、他方を後として、シリンダブロック(27)の前側に組み付けられたギヤケース(53)と、ギヤケース(53)の前側に配置されたエンジン冷却ファン(14)と、シリンダブロック(27)の後側で、クランク軸(13)に取り付けられたフライホイール(54)を備えている。
エンジン冷却ファン(14)は、エンジン冷却風(15)を後向きに送風する。
【0011】
図3(B)に示すように、シリンダ中心軸線(16a)と平行な向きに見て、前後方向と直交するシリンダヘッド(17)の幅方向を横方向として、
図8,9に示すように、シリンダヘッド(17)の横方向の一方側に吸気マニホルド(55)を備え、他方側に排気マニホルド(56)を備えている。
このエンジンは、吸気装置と、燃料供給装置と、排気装置と、動弁装置と、連動軸と、潤滑装置と、水冷装置とを備えている。
【0012】
図10に示すように、吸気装置は、エアクリーナ(57)と、排気マニホルド(56)の上部に取り付けられた過給機(49)のエアコンプレッサ(49b)と、過給パイプ(49c)と、
図5に示す吸気マニホルド(55)を備えている。
図10に示すエアクリーナ(57)で浄化された空気は、エアコンプレッサ(49b)で圧縮され、過給パイプ(49c)から、
図5に示す吸気マニホルド(55)に過給される。
【0013】
図5に示すように、燃料供給装置は、燃料タンク(58)と、燃料サプライポンプ(59)と、コモンレール(60)と、燃料インジェクタ(61)と、エンジンECU(62)を備え、エンジンECU(62)に燃料インジェクタ(61)の電磁弁が電気的に接続され、エンジンECU(62)の制御により電磁弁が所定のタイミングで所定時間開弁され、所定の噴射時期に所定の噴射量の燃料(73)が、燃料インジェクタ(61)から各シリンダ(16)に噴射される。燃料(73)は軽油である。
ECUは電子制御ユニットの略称であり、マイコンである。
噴射時期は、クランク角度で設定され、クランク角度は、エンジンECU(62)に電気的に接続された電磁ピックアップ(63)により形成されるエンジン回転に伴うパルス信号に基づいて検出される。
【0014】
図10に示すように、排気装置は、排気マニホルド(56)と、過給機(49)の排気タービン(49d)と、排気処理装置(74)を備え、排気マニホルド(56)から排出された排気ガスは、排気タービン(49d)を駆動した後、排気処理装置(74)内のDOCとDPF(図示せず)で処理される。
DOCはディーゼル排気触媒の略称、DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称である。
【0015】
図8,9に示すように、動弁装置は、動弁カム軸(64)と、動弁カム軸(64)で駆動される吸排気弁(図示せず)を備えている。
動弁カム軸(64)はクランク軸(13)から調時伝動ギヤドレイン(図示せず)を介して連動される。
クランク軸(13)は、調時伝動ギヤドレインを介して左右一対の二次バランサ軸(65)(65)も連動する。
【0016】
図5に示すように、潤滑装置は、オイルパン(34)と、オイルストレーナ(66)と、オイルポンプ(35)と、補機取付ベース(36)と、オイルポンプ(35)から補機取付ベース(36)にエンジンオイル(37)を供給するベース給油路(38)と、ベース給油路(38)からクランク軸(13)の軸受部(13a)にエンジンオイル(37)を供給するクランク軸給油路(39)と、
図8に示すように、クランク軸給油路(39)を経て左右一対の二次バランサ軸(65)(65)の各軸受部(65a)にエンジンオイル(37)を供給する一対のバランサ軸給油路(67)(67)と排気端側の二次バランサ軸(65)の軸受部(65a)から動弁カム軸(64)の軸受部(64a)にエンジンオイル(37)を供給するカム軸給油路(68)を備えている。
補機取付ベース(36)には、オイルクーラ(19)とオイルフィルタ(44)が取り付けられている。オイルクーラ(19)は、オイルフィルタ(44)よりも高い位置に配置されている。
【0017】
図1に示すように、水冷装置は、エンジンの冷却水循環経路(1)を備えている。
エンジンの冷却水循環経路(1)は、エンジン内の水ジャケット(2)と、サーモスタット弁(3)を収容した弁収容ケース(4)と、メイン水路(5)と、ラジエータ(7)と、水ポンプ(8)と、バイパス水路(6)を備えている。
【0018】
エンジン運転中、水ジャケット(2)のエンジン冷却水の水温が所定温度よりも低い場合に生じるサーモスタット弁(3)の閉弁時は、水ジャケット(2)のエンジン冷却水(9)の全部が、ラジエータ(7)を迂回して、弁収容ケース(4)とバイパス水路(6)と水ポンプ(8)を順に介して、水ジャケット(2)に戻る。
エンジン運転中、水ジャケット(2)のエンジン冷却水(9)の水温が所定温度よりも高い場合に生じるサーモスタット弁(3)の開弁時は、水ジャケット(2)のエンジン冷却水(9)の多くが、弁収容ケース(4)とメイン水路(5)とラジエータ(7)と水ポンプ(8)を順に介して水ジャケット(2)に戻ると共に、水ジャケット(2)のエンジン冷却水(9)の一部は、ラジエータ(7)を迂回して、弁収容ケース(4)とバイパス水路(6)と水ポンプ(8)を順に介して、水ジャケット(2)に戻る。
すなわち、
図1に示すように、このエンジンは、エンジン運転中、水ポンプ(8)の圧送力で、水ジャケット(2)のエンジン冷却水(9)の所定量が、ラジエータ(7)を迂回して、弁収容ケース(4)とバイパス水路(6)と水ポンプ(8)を順に介して、水ジャケット(2)に戻るように構成されている。
【0019】
図1に示すように、このエンジンは、水ポンプ(8)のインペラ室(8a)の上部から水平方向または上昇方向に導出されて、バイパス水路(6)に至るエア抜き通路(10)と、サーモスタット弁(3)の弁上流側から弁下流側にエアを通過させるエア通過部(3a)を備えている。
そして、エンジン停止中に行われるラジエータ(7)の給水口(7a)からのエンジン冷却水(9)の給水中、水ポンプ(8)のインペラ室(8a)の上部に溜まろうとするエア(11)が、冷却水循環経路(1)の水位の上昇により、インペラ室(8a)の上部からエア抜き通路(10)を通過してバイパス水路(6)に押し出されると共に、バイパス水路(6)からエア通過部(3a)とメイン水路(5)を順に介して、ラジエータ(7)の給水口(7a)から押し出されるように構成されている。
【0020】
このエンジンでは、エンジン冷却水(9)の給水中、冷却水循環経路(1)の水位の上昇により、水ポンプ(8)のインペラ室(8a)の上部に溜まろうとするエア(11)がラジエータ(7)の給水口(7a)から押し出され、エア(11)がエンジンの冷却水循環経路(1)に残留し難いため、エンジン運転中、冷却水循環経路(1)でのエア(11)の循環による冷却性能の低下が起こり難く、エンジンの冷却性能が高まる。
また、このエンジンでは、エンジン運転中、冷却水循環経路(1)でのエア(11)の循環が起こり難いため、キャビテーションによる冷却水循環経路(1)の損傷が起こり難い。
【0021】
図1に示すように、この実施形態では、エア抜き通路(10)は、インペラ室(8a)から水平方向に導出され、バイパス水路(6)に至るキリ孔で形成され、エア通過部(3a)はサーモスタット弁(3)に形成されているが、この発明は、これに限定されるものではなく、エア抜き通路(10)は、インペラ室(8a)から斜め上向き或いは、垂直上向きに導出されたものであってもよく、エア通過部(3a)は弁収容ケース(4)に設けられたものであってもよい。
なお、水ポンプ(8)のポンプハウジング(8b)と、バイパス水路(6)の水路壁(6a)の終端部と、これらの間に架設されたエア抜き通路(10)の通路壁(10a)は、連続する金属素材で一体成型され、エア抜き通路(10)の通路壁(10a)にキリ孔のエア抜き通路(10)が形成されている。
【0022】
図1に示すように、このエンジンは、ラジエータ(7)の給水口(7a)に接続されたリザーブタンク(12)を備えている。
このエンジンでは、冷却水循環経路(1)にエア(11)が残留し難いため、リザーブタンク(12)内のエンジン冷却水(9)がエア(11)と交換される量が少なくなり、リザーブタンク(12)へのエンジン冷却水(9)の補給頻度を少なくできる。
【0023】
図1に示すように、ラジエータ(7)は、アッパータンク(7b)と、ロアータンク(7c)と、これらの間の横並びの立向きの放熱管(7d)を備え、アッパータンク(7b)は、メイン水路(5)を介して弁収容ケース(4)と繋がれ、ロアータンク(7c)は、戻し水路(72)で水ポンプ(8)と繋がれている。
給水口(7a)は、アッパータンク(7b)に設けられ、ラジエータキャップ(7e)で蓋されている。
【0024】
図1に示すように、ラジエータキャップ(7e)には弁機構(7f)が設けられ、エンジン運転中、温度上昇により冷却水循環経路(1)のエンジン冷却水(9)の体積が膨張し、冷却水循環経路(1)の内圧が上がると、弁機構(7f)の主圧弁が開き、冷却水循環経路(1)のエンジン冷却水(9)の一部がリザーブタンク(12)に溢れて溜まり、エンジン停止後、温度低下により、冷却水循環経路(1)の内圧が下がると、弁機構(7f)の負圧弁が開き、リザーブタンク(12)に溜まったエンジン冷却水(9)の一部が冷却水循環経路(1)に引き戻される。
【0025】
図3(A)(B)に示すように、水ジャケット(2)は、シリンダ(16)周囲のシリンダジャケット(2a)と、シリンダヘッド(17)内のヘッドジャケット(2b)を備え、
図3(A)に示すように、シリンダジャケット(2a)は前端部にジャケット入口(2c)を備え、
図3(B)に示すように、ヘッドジャケット(2b)は前端部にジャケット出口(2d)を備え、シリンダジャケット(2a)とヘッドジャケット(2b)の間に、各シリンダ(16)の周囲側で開口される複数の水浮上口(18)を備え、複数の水浮上口(18)を介して、シリンダジャケット(2a)からヘッドジャケット(2b)にエンジン冷却水(9)が浮上し、ヘッドジャケット(2b)は、複数の水浮上口(18)のうち、シリンダヘッド(17)の後端側ヘッド部分(17a)にある後端側水浮上口(18a)を臨ませた後端側ジャケット部分(2ba)を備えている。
図2に示すように、このエンジンは、水冷のオイルクーラ(19)と、ヘッドジャケット(2b)からオイルクーラ(19)へのクーラ給水パイプ(20)と、オイルクーラ(19)から水ポンプ(8)へのクーラ排水パイプ(21)を備え、クーラ給水パイプ(20)は、後端側ジャケット部分(2ba)から導出されている。
【0026】
このエンジンでは、水ポンプ(8)の吸水力がクーラ排水パイプ(21)とオイルクーラ(19)とクーラ給水パイプ(20)を順に介して後端側ジャケット部分(2ba)にかかるため、後端側水浮上口(18a)から後端側ジャケット部分(2ba)に多くのエンジン冷却水(9)が吸い上げられ、本来はエンジン冷却水(9)が浮上し難い後端側ヘッド部分(17a)の冷却性能が改善される。
また、このエンジンでは、後端側水浮上口(18a)から後端側ジャケット部分(2ba)に多くのエンジン冷却水(9)が浮上するため、この目的のために、他の水浮上口(18)の通路断面積を絞る必要が無くなり、冷却水循環経路(1)の通路抵抗を小さくすることができ、エンジンの冷却性能が高まる。
【0027】
図2に示すように、クーラ給水パイプ(20)は、後端側ジャケット部分(2ba)の上端側部分(2bb)から導出されている。
このエンジンでは、エンジンの前下がり傾斜時に、後端側ジャケット部分(2ba)の上端側部分(2bb)に溜まろうとするエア(11)や水蒸気は、クーラ給水パイプ(20)を介して吸い出されるため、後端側ジャケット部分(2ba)にエア(11)や水蒸気が停滞し難く、後端側ヘッド部分(17a)の冷却性能が高まる。
【0028】
図3(B)に示すように、横方向両側のうち、吸気ポート(22)の入口(22a)側を吸気端側、排気ポート(32)の出口(32a)側を排気端側として、後端側ジャケット部分(2ba)の吸気端側部分(2bc)からクーラ給水パイプ(20)が導出されている。
このエンジンでは、後端側ジャケット部分(2ba)の吸気端側部分(2bc)内の比較的低温のエンジン冷却水(9)がクーラ給水パイプ(20)からオイルクーラ(19)に供給されるため、オイルクーラ(19)の冷却性能が高まる。
【0029】
図3(B)に示すように、ヘッドジャケット(2b)は、シリンダボア間上に位置する複数のボア間上水路(23)のうち、シリンダヘッド(17)の後端寄りの後端寄りボア間上水路(23a)と、複数の水浮上口(18)のうち、後端寄りボア間上水路(23a)にエンジン冷却水(9)を供給する後端寄り水浮上口(18b)と、後端寄り水浮上口(18b)を臨ませた後端寄りジャケット部分(2bd)と、仕切り壁(24)を備えている。
後端寄りジャケット部分(2bd)は、後端側ジャケット部分(2ba)の前側に配置され、仕切り壁(24)は、後端寄りジャケット部分(2bd)と、後端側ジャケット部分(2ba)の間に配置されている。
このエンジンでは、後端寄り水浮上口(18b)から後端寄りジャケット部分(2bd)に浮上したエンジン冷却水(9)は、仕切り壁(24)に遮られ、後端側ジャケット部分(2ba)から導出されたクーラ給水パイプ(20)に吸い出されることなく、後端寄りボア間上水路(23a)に供給されるため、シリンダヘッド(17)の後端寄りヘッド部分(17b)の冷却性能が高まる。
なお、
図3(B)に示すように、後端寄りボア間上水路(23a)は、最後端側のシリンダ(16)とその手前のシリンダ(16)との間に位置している。
【0030】
図3(C)に示すように、このエンジンでは、仕切り壁(24)で、吸気ポート(22)の下周壁(22b)とシリンダヘッド(17)のヘッド底壁(17c)が繋がれている。
このエンジンでは、ヘッド底壁(17c)の熱が仕切り壁(24)を介して吸気ポート(22)の下周壁(22b)に放熱されるため、ヘッド底壁(17c)の冷却性能が高まる。
このエンジンでは、仕切り壁(24)によりヘッド底壁(17c)の剛性が高まる。
【0031】
図3(B)に示すように、シリンダヘッド(17)は、シリンダボア間上に位置するボア間上水路(23)と、
図4(A)に示すように、ボア間上水路(23)の横方向両側に配置されたヘッドボルトボス(25)を備え、ヘッドボルトボス(25)は、内部に挿通されるヘッドボルト(26)を備え、ヘッドボルト(26)の締結力でシリンダヘッド(17)とシリンダブロック(27)は、ヘッドガスケット(28)を間に挟んで締結されている。
シリンダヘッド(17)は、ボア間上水路(23)の横方向両側に配置された対のヘッドボルトボス(25)(25)のうち、一方のヘッドボルトボス(25)に沿う補強壁(29)と、他方のヘッドボルトボス(25)に沿う補強リブ(30)を備え、補強壁(29)で、ボア間上水路(23)の水路底壁(23b)とヘッドジャケット(2b)のジャケット天井壁(2be)が繋がれ、補強リブ(30)は、水路底壁(23b)からジャケット天井壁(2be)に向かって隆起している。
【0032】
このエンジンでは、水路底壁(23b)の熱が補強壁(29)と補強リブ(30)からボア間上水路(23)を通過するエンジン冷却水(9)に放熱されるため、水路底壁(23b)の冷却性能が高まる。
また、このエンジンでは、ヘッドボルト(26)の締結力が、補強壁(29)と補強リブ(30)を介して水路底壁(23b)に伝達されるため、ヘッドガスケット(28)のシール性が高まる。
また、このエンジンでは、補強壁(29)と補強リブ(30)により、水路底壁(23b)の剛性が高まる。
【0033】
図4(B)に示すように、補強壁(29)は、吸気ポート(22)の周壁(22c)に連結されている。
このエンジンでは、水路底壁(23b)の熱は補強壁(29)を介して吸気ポート(22)の周壁(22c)に放熱されるため、水路底壁(23b)の冷却性能が高まる。
また、このエンジンでは、吸気ポート(22)の周壁(22c)に連結された補強壁(29)により、水路底壁(23b)の剛性が高まる。
【0034】
図4(A)(C)に示すように、補強リブ(30)は、水路底壁(23b)の排気端側の水路底壁部分(23c)に配置されている。
このエンジンでは、過熱し易い排気端側の水路底壁部分(23c)の熱は、補強リブ(30)に伝導され、補強リブ(30)の上方を大量に通過するエンジン冷却水(9)に放熱されるため、排気端側の水路底壁部分(23c)の冷却性能が高まる。
【0035】
図4(A)に示すように、補強リブ(30)の隆起端面(30a)は、この補強リブ(30)を沿わせたヘッドボルトボス(25)から補強壁(29)側に向けて下り傾斜している。
このため、ヘッドボルト(26)の締結力が、補強リブ(30)を介して排気端側の水路底壁部分(23c)に伝達されると共に、排気端側の水路底壁部分(23c)の熱が、補強リブ(30)の傾斜した広い隆起端面(30a)から、補強リブ(30)の上方に流れる大量のエンジン冷却水(9)に放熱され、排気端側の水路底壁部分(23c)の冷却性能が高まる。
【0036】
図4(A)に示すように、このエンジンは、ボア間上水路(23)の水路底壁(23b)の横方向両側にシリンダジャケット(2a)からヘッドジャケット(2b)にエンジン冷却水(9)を浮上させる対の水浮上孔(31)(31)を備え、対の水浮上孔(31)(31)のうち、排気端側の水浮上孔(31)を排気端側水浮上孔(31a)とし、吸気端側の水浮上孔(31)を吸気端側水浮上孔(31b)として、
図4(A)(C)に示すように、排気端側水浮上孔(31a)は補強リブ(30)に内設され、
図4(A)(B)に示すように、吸気端側水浮上孔(31b)は、補強壁(29)に内設され、
図4(B)に示すように、吸気端側水浮上孔(31b)の水浮上孔出口(31ba)は排気ポート周壁(32b)に向けられている。
図4(B)に示すように、このエンジンでは、吸気端側水浮上孔(31b)の水浮上孔出口(31ba)から流出したエンジン冷却水(9)が排気ポート周壁(32b)に向けられるため、排気ポート周壁(32b)の冷却性能が高まる。
【0037】
図4(A)に示すように、シリンダジャケット(2a)は、隣り合うシリンダボア間に設けられたボア間水路(33)と、吸気端側のジャケット部分(2aa)と、排気端側のジャケット部分(2ab)を備え、吸気端側のジャケット部分(2aa)からボア間水路(33)を介して排気端側のジャケット部分(2ab)にエンジン冷却水(9)が送られる。
ボア間水路(33)は、ボア間天井壁(33a)とその直下の第一横断壁(33b)の間に設けられた第一横断水路(33c)と、第一横断壁(33b)とその直下の第二横断壁(33d)の間に設けられた第二横断水路(33e)を備えている。
第一横断壁(33b)の吸気端側壁部分(33ba)が吸気端側のジャケット部分(2aa)に向けて下り傾斜することにより、第一横断水路(33c)の入口下部(33ca)が吸気端側のジャケット部分(2aa)に向けて下向きに傾斜し、第二横断水路(33e)の入口上部(33ea)が吸気端側のジャケット部分(2aa)に向けて下向きに傾斜するように構成されている。
【0038】
このエンジンでは、
図3(A)に示すように、シリンダジャケット(2a)の前端側のジャケット入口(2c)は、前端側のシリンダ(16)の前面の横方向中央部に臨み、吸気端側のジャケット部分(2aa)の通路断面積は、排気側のジャケット部分(2ab)の通路断面積よりも広く、
図3(B)に示すように、ヘッドジャケット(2b)の前端側のジャケット出口(2d)は、排気端側に偏って配置されているため、吸気端側のジャケット部分(2aa)からボア間水路(33)を介して排気端側のジャケット部分(2ab)にエンジン冷却水(9)が送られる。
【0039】
このエンジンでは、吸気端側のジャケット部分(2aa)の下寄りにある低温のエンジン冷却水(9)が、第一横断水路(33c)の入口下部(33ca)と第二横断水路(33e)の入口上部(33ea)の傾斜に沿って上向きに導入されるため、シリンダボア間の冷却性能が高まる。
【0040】
図4(A)に示すように、ボア間水路(33)は、第二横断壁(33d)とその直下の第三横断壁(33f)の間に設けられた第三横断水路(33g)を備えている。
第二横断壁(33d)の吸気端側壁部分(33da)が吸気側のジャケット部分(2aa)に向けて下り傾斜することにより、第二横断水路(33e)の入口下部(33eb)が吸気端側のジャケット部分(2aa)に向けて下向きに傾斜すると共に、第三横断水路(33g)の入口上部(33ga)が吸気端側のジャケット部分(2aa)に向けて下向きに傾斜するように構成されている。
このエンジンでは、吸気端側のジャケット部分(2aa)の下寄りにある低温のエンジン冷却水(9)が、第二横断水路(33e)の入口下部(33eb)と第三横断水路(33g)の入口上部(33ga)の傾斜に沿って上向きに導入されるため、シリンダボア間の冷却性能が高まる。
【0041】
図4(A)に示すように、このエンジンでは、吸気端側水浮上孔(31b)よりも排気端側水浮上孔(31a)の方が、最小通路断面積が大きく形成されている。
このエンジンでは、吸気端側のジャケット部分(2aa)からボア間水路(33)を介して排気端側水浮上孔(31a)に導入されるエンジン冷却水(9)の流れが促進されるため、シリンダボア間の冷却性能が高まる。
なお、ボア間水路(33)は、第三横断壁(33f)とその直下の第四横断壁(33h)の間に設けられた第四横断水路(33k)を備えている。第四横断水路(33k)は水平な向きで形成されている。
【0042】
図5に示すように、このエンジンは、オイルパン(34)と、オイルポンプ(35)と、オイルクーラ(19)を取り付けた補機取付ベース(36)と、オイルパン(34)のエンジンオイル(37)をオイルポンプ(35)から補機取付ベース(36)に供給するベース給油路(38)と、オイルクーラ(19)で冷却されたエンジンオイル(37)を補機取付ベース(36)からクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給するクランク軸給油路(39)を備えている。
【0043】
図6(B)に示すように、このエンジンでは、補機取付ベース(36)は、オイルクーラ給油口(40)と、オイルクーラ給油口(40)から導出されたオイルクーラ給油路(40a)と、オイルクーラ排油口(41)と、オイルクーラ排油口(41)から導出されたオイルクーラ排油路(41a)を備えている。
高低差のあるオイルクーラ給油口(40)とオイルクーラ排油口(41)のうち、高い方をクーラ高所口(42)とし、低い方をクーラ低所口(43)とし、オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)のうち、クーラ低所口(43)から導出された方をクーラ低所口油路(43a)として、クーラ低所口油路(43a)は、クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている。
クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さ以上の高さとは、クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さと同じ高さか、またはより高い高さをいう。
【0044】
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)が、少なくともクーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さまで残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間でクランク軸給油路(39)を介してクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
【0045】
図6(B)に示すように、このエンジンでは、オイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)のうち、クーラ高所口(42)から導出された方をクーラ高所口油路(42c)として、横方向と平行な向きに見て、クーラ高所口油路(42c)がクーラ高所口(42)から下向きに導出され、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)は、クーラ高所口(42)からクーラ高所口油路(42c)とフィルタ低所口油路(48a)とオイルフィルタ(44)とベース給油路(38)を順に介してオイルパン(34)側に流れ落ちるため、クーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さまでしか残留しない。
【0046】
図6(B)に示すクーラ高所口油路(42c)は、横方向と平行な向きに見て、クーラ高所口(42)から上向きに導出すると共に、クーラ低所口油路(43a)とクーラ高所口(42)の下縁(42a)の高さ以上の高さまで上向きに導出してもよく、この場合には、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)は、クーラ高所口(42)の下縁(42a)と同じの高さか、その高さを越えるクーラ低所口油路(43a)の上向き導出端の下縁の高さまで残留させることができる。
【0047】
図6(B)(C)に示すように、クーラ高所口(42)は、横方向に向けられた水平なパイプ(42b)のうち、補機取付ベース(36)に差し込まれたパイプ基端部(42ba)内に設けられている。
図6(B)に示すように、横方向と平行な向きに見て、クーラ低所口油路(43a)は、クーラ低所口(43)から上向きに導出された後、クランク軸給油路(39)の油路入口(39a)まで下向きに導出されている。
【0048】
図6(B)に示すように、オイルクーラ給油口(40)がクーラ高所口(42)とされ、オイルクーラ排油口(41)がクーラ低所口(43)とされ、オイルクーラ排油路(41a)がクーラ低所口油路(43a)とされている。
エンジン運転中、オイルポンプ(35)の圧送力でオイルクーラ(19)内を通過するエンジンオイル(37)は、オイルクーラ(19)の冷却で比重を増しながらオイルクーラ(19)内をスムーズに下降するため、オイルポンプ(35)の圧送の負担を小さくできる。
【0049】
図6(C)~(F)に示すように、オイルクーラ(19)は、エンジンオイル(37)を通過させるオイル通過層(19b)と、エンジン冷却水(9)を通過させる水通過層(19c)が交互に重なって構成され、
図6(E)に示すように、オイル通過層(19b)にオイル区画壁(19ba)が、
図6(F)に示すように、水通過層(19c)に水区画壁(19ca)がそれぞれ設けられている。
オイル通過層(19b)では、後上側のオイルクーラ給油口(40)から導入されたエンジンオイル(37)がオイル区画壁(19ba)の前側で下後向きに反転し、後下側のオイルクーラ排油口(41)から排出される。
水通過層(19c)では、前下側のオイルクーラ給水口(70)から導入されたエンジン冷却水(9)が水区画壁(19ca)の後側で上前向きに反転し、前上側のオイルクーラ排水口(71)から排出される。
【0050】
図5に示すように、このエンジンは、補機取付ベース(36)に取り付けられたオイルフィルタ(44)を備え、補機取付ベース(36)に供給されたエンジンオイル(37)がオイルフィルタ(44)で浄化されてオイルクーラ(19)に供給される。
図6(B)(C)に示すように、補機取付ベース(36)は、オイルフィルタ給油口(45)と、オイルフィルタ給油口(45)から導出されたオイルフィルタ給油路(45a)と、オイルフィルタ排油口(46)と、オイルフィルタ排油口(46)から導出されたオイルフィルタ排油路(46a)を備えている。
高低差のあるオイルフィルタ給油口(45)とオイルフィルタ排油口(46)のうち、高い方をフィルタ高所口(47)とし、低い方をフィルタ低所口(48)とし、オイルフィルタ給油路(45a)とオイルフィルタ排油路(46a)のうち、フィルタ低所口(48)から導出された方をフィルタ低所口油路(48a)として、フィルタ低所口油路(48a)は、フィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている。
フィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さ以上の高さとは、フィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さと同じ高さか、またはより高い高さをいう。
【0051】
図6(C)に示すように、このエンジンでは、オイルフィルタ給油路(45a)とオイルフィルタ排油路(46a)のうち、フィルタ高所口(47)から導出された方をフィルタ高所口油路(47b)として、フィルタ高所口油路(47b)がフィルタ高所口(47)から横水平方向に導出され、エンジン停止中、オイルフィルタ(44)内のエンジンオイル(37)は、フィルタ高所口(47)からフィルタ高所口油路(47b)とベース給油路(38)を順に介してオイルパン(34)側に流れ落ち、フィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さまでしか残留しない。
【0052】
フィルタ高所口油路(47b)は、横方向と平行な向きに見て、フィルタ高所口(47)から上向きに導出してもよく、この場合には、エンジン停止中、オイルフィルタ(44)内のエンジンオイル(37)は、フィルタ高所口(47)の下縁(47a)と同じ高さか、その高さを越えるフィルタ高所口油路(47b)の上向き導出端の下縁の高さまで残留させることができる。
【0053】
図6(C)に示すように、フィルタ高所口(47)は、補機取付ベース(36)の横方向に向けられた水平なフィルタ高所口油路(47b)の油路出口(47c)に設けられている。
図6(C)に示すように、フィルタ高所口油路(47b)は、ベース給油路(38)の油路出口(38a)に接続されている。
図6(B)に示すように、フィルタ低所口油路(48a)は、フィルタ低所口(48)から上向きに導出された後、上向きのクーラ高所口油路(42c)に接続されている。
【0054】
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルフィルタ(44)内のエンジンオイル(37)が、少なくともフィルタ高所口(47)の下縁(47a)の高さまで残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間でクランク軸給油路(39)を介してクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
【0055】
図6(B)に示すように、オイルフィルタ給油口(45)がフィルタ高所口(47)とされ、オイルフィルタ排油口(46)がフィルタ低所口(48)とされ、オイルフィルタ排油路(46a)がフィルタ低所口油路(48a)とされている。
このエンジンでは、エンジン運転中、オイルポンプ(35)の圧送力でオイルフィルタ(44)内を通過するエンジンオイル(37)は、オイルフィルタ(44)内を自重で下降するため、オイルポンプ(35)の圧送の負担を小さくできる。
【0056】
図7(A)(B)に示す補機取付ベース(36)の変形例は、次の通りである。
補機取付ベース(36)のオイルクーラ給油路(40a)とオイルクーラ排油路(41a)は、いずれもオイルクーラ(19)のクーラ内最上部(19a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている。
【0057】
オイルクーラ(19)のクーラ内最上部(19a)の高さ以上の高さとは、オイルクーラ(19)のクーラ内最上部(19a)の高さと同じ高さか、またはより高い高さをいう。
【0058】
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルクーラ(19)内のエンジンオイル(37)がオイルクーラ(19)内に充満したまま残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間でクランク軸給油路(39)を介してクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
【0059】
図7(A)(B)に示すように、オイルフィルタ給油路(45a)とオイルフィルタ排油路(46a)は、いずれもオイルフィルタ(44)のフィルタ内最上部(44a)の高さ以上の高さまで上向きに導出されている。
【0060】
このエンジンでは、エンジン停止中、オイルフィルタ(44)内のエンジンオイル(37)がオイルフィルタ(44)内に充満したまま残留するため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)がクランク軸給油路(39)を介して短時間でクランク軸(13)の軸受部(13a)に供給され、その焼き付きが防止される。
【0061】
図7(A)(B)に示す補機取付ベース(36)の変形例の他の構成は、
図6(A)~(F)に示す補機取付ベース(36)の基本例と同じである。
図7(A)(B)中、
図6(A)~(F)と同一の要素には、同一の符号を付しておく。
【0062】
図5に示すように、このエンジンでは、シリンダブロック(27)の吸気端側の後寄りに補機取付ベース(36)が取り付けられ、
図9に示すように、補機取付ベース(36)の後側から導出されたオイル分岐パイプ(50)と、シリンダブロック(27)の後端壁(27a)内を横断する後端壁横断油路(27b)と、過給機(49)の軸受部(49a)にエンジンオイル(37)を供給する過給機給油パイプ(51)を備え、補機取付ベース(36)のエンジンオイル(37)が、オイル分岐パイプ(50)と、後端壁横断油路(27b)と、過給機給油パイプ(51)を順に介して過給機(49)の軸受部(49a)に供給されるように構成されている。
【0063】
このエンジンでは、補機取付ベース(36)から最短経路で過給機(49)の軸受部(49a)にエンジンオイル(37)が供給されるため、エンジン始動時に、エンジンオイル(37)が短時間で過給機(49)の軸受部(49a)に供給され、その焼き付きが防止される。
また、このエンジンでは、エンジンオイル(37)の粘度が高くなるエンジンの冷間始動時には、始動直後にシリンダブロック(27)の後端壁(27a)内を横断する後端壁横断油路(27b)内を通過するエンジンオイル(37)がエンジンの燃焼熱により温められ、低粘度となり、エンジンオイル(37)が遅滞なく過給機(49)の軸受部(49a)に供給されるため、冷間始動時にも過給機(49)の軸受部(49a)の焼き付きが防止される。
【0064】
図8~
図10に示すように、このエンジンでは、過給機(49)の軸受部(49a)から過給機排油パイプ(69)が導出され、過給機(49)の軸受部(49a)を潤滑したエンジンオイル(37)は、過給機排油パイプ(69)を介してオイルパン(34)に戻る。
オイル分岐パイプ(50)と、過給機給油パイプ(51)と、過給機排油パイプ(69)は、いずれもエンジン外装配管で、後端壁横断油路(27b)はエンジン内部油路である。
【0065】
図6(B)に示すように、補機取付ベース(36)のオイルクーラ排油路(41a)からオイル分岐パイプ(50)にエンジンオイル(37)が分岐されている。
このエンジンでは、オイルクーラ(19)で冷却されたエンジンオイル(37)が過給機(49)の軸受部(49a)に供給されるため、過給機(49)の回転数が高くなるエンジン高回転時にも、過給機(49)の軸受部(49a)の焼き付きが防止される。
【0066】
図7(C)に示すオイル分岐パイプ(50)の変形例の構造は、次の通りである。
図7(C)に示すオイル分岐パイプ(50)には、
図7(D)に示す逆止弁(52)が取り付けられ、オイル分岐パイプ(50)から補機取付ベース(36)へのエンジンオイル(37)の逆流が阻止されている。
このエンジンでは、エンジン停止中、
図9に示すオイル分岐パイプ(50)と、後端壁横断油路(27b)と、過給機給油パイプ(51)内のエンジンオイル(37)が補機取付ベース(36)側に抜け落ちないため、エンジン再始動時にエンジンオイル(37)が短時間で過給機(49)の軸受部(49a)に供給され、過給機(49)の軸受部(49a)の焼き付きが防止される。
なお、
図9に示すオイル分岐パイプ(50)は、オイルクーラ(19)よりも流路上流側のオイルフィルタ排油口(46)から導出されている。
【0067】
図7(C)に示すオイル分岐パイプ(50)の変形例は、
図6(B)に示す補機取付ベース(36)の基本例と組み合わせる他、
図7(A)に示す補機取付ベース(36)の変形例と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
(13)…クランク軸、(13a)…軸受部、(19)…オイルクーラ、(19a)…クーラ内最上部、(34)…オイルパン、(35)…オイルポンプ、(36)…補機取付ベース、(37)…エンジンオイル、(38)…ベース給油路、(39)…クランク軸給油路、(40)…オイルクーラ給油口、(40a)…オイルクーラ給油路、(41)…オイルクーラ排油口、(41a)…オイルクーラ排油路、(42)…クーラ高所口、(42a)…下縁、(43)…クーラ低所口、(43a)…クーラ低所口油路、(44)…オイルフィルタ、(44a)…フィルタ内最上部、(45)…オイルフィルタ給油口、(45a)…オイルフィルタ給油路、(46)…オイルフィルタ排油口、(46a)…オイルフィルタ排油路、(47)…フィルタ高所口、(47a)…下縁、(48)…フィルタ低所口、(48a)…フィルタ低所口油路。